特許第5733517号(P5733517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733517
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】復調方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/14 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
   H04L27/14 Z
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-111269(P2011-111269)
(22)【出願日】2011年5月18日
(65)【公開番号】特開2012-244330(P2012-244330A)
(43)【公開日】2012年12月10日
【審査請求日】2014年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147728
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 信司
(72)【発明者】
【氏名】水野 光太郎
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−164151(JP,A)
【文献】 特開2009−071811(JP,A)
【文献】 特開平08−237317(JP,A)
【文献】 特開平10−271180(JP,A)
【文献】 特開2006−140570(JP,A)
【文献】 特開2006−060725(JP,A)
【文献】 特開2007−013621(JP,A)
【文献】 特開2003−069658(JP,A)
【文献】 特開2006−325127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンボルデータによってデジタル変調された入力信号を復調する復調方法であって、
前記入力信号を検波して検波信号を生成する検波ステップと、
前記検波信号を前記シンボルデータの1シンボル分だけ遅延させて遅延信号を生成する遅延ステップと、
前記検波信号のアナログ信号レベルと前記遅延信号のアナログ信号レベルとの差分がゼロになるタイミングをゼロクロスタイミングとして検出するタイミング検出ステップと、
前記ゼロクロスタイミングにおける前記検波信号のアナログ信号レベルを、複数の前記ゼロクロスタイミングについて取得し、取得した前記検波信号のアナログ信号レベルを順次平均化して平均値を出力する平均化ステップと、
前記ゼロクロスタイミングにおける前記検波信号のアナログ信号レベルの平均値に基づいて判定閾値を得てこれを保持する判定閾値保持ステップと、
前記検波信号のアナログ信号レベルと前記判定閾値との比較に基づいて前記検波信号が示す現在シンボル値を復調出力として出力する出力ステップと、を含むことを特徴とする復調方法。
【請求項2】
前記入力信号に含まれるプリアンブルデータを検出するプリアンブル検出ステップを更に含み、
前記判定閾値保持ステップにおいては、前記プリアンブルデータが前記プリアンブル検出ステップにおいて検出された時点において前記判定閾値を保持することを特徴とする請求項1に記載の復調方法。
【請求項3】
前記タイミング検出ステップは、
前記検波信号のアナログ信号レベルと前記遅延信号のアナログ信号レベルとの差分を算出して当該差分を示す減算信号を生成する減算ステップと、
前記減算信号が示す差分の正負を表示する正負表示信号を生成する正負表示信号生成ステップと、
前記正負表示信号の正負の変化時点を検出して当該変化時点を前記ゼロクロスタイミングとする変化時点検出ステップと、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の復調方法。
【請求項4】
前記プリアンブルデータは、論理値交互パターンデータからなることを特徴とする請求項2又は3に記載の復調方法。
【請求項5】
前記入力信号は、周波数偏移変調、振幅偏移変調、及び位相偏移変調のうちのいずれか1つのデジタル変調処理が施された信号であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の復調方法。
【請求項6】
シンボルデータによってデジタル変調された入力信号を復調する復調装置であって、
前記入力信号を検波して検波信号を生成する検波回路と、
前記検波信号を前記シンボルデータの1シンボル分だけ遅延させて遅延信号を生成する遅延回路と、
前記検波信号のアナログ信号レベルと前記遅延信号のアナログ信号レベルとの差分がゼロになるタイミングをゼロクロスタイミングとして検出するタイミング検出回路と、
前記ゼロクロスタイミングにおける前記検波信号のアナログ信号レベルを、複数の前記ゼロクロスタイミングについて取得し、取得した前記検波信号のアナログ信号レベルを順次平均化して平均値を出力する平均化回路と、
前記ゼロクロスタイミングにおける前記検波信号のアナログ信号レベルの平均値に基づいて判定閾値を得てこれを保持する判定閾値保持回路と、
前記検波信号のアナログ信号レベルと前記判定閾値との比較に基づいて前記検波信号が示す現在シンボル値を復調出力として出力する出力回路と、を含むことを特徴とする復調装置。
【請求項7】
前記入力信号に含まれるプリアンブルデータを検出するプリアンブル検出回路を更に含み、
前記判定閾値保持回路は、前記プリアンブルデータが前記プリアンブル検出回路によって検出された時点において前記判定閾値を保持することを特徴とする請求項6に記載の復調装置。
【請求項8】
前記タイミング検出回路は、
前記検波信号が示す値と前記遅延信号が示す値との差分を算出して当該差分を示す減算信号を生成する減算器と、
前記減算信号が示す差分の正負を表示する正負表示信号を生成する正負表示信号生成回路と、
前記正負表示信号の正負の変化時点を検出して当該変化時点を前記ゼロクロスタイミングとする変化時点検出回路と、を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の復調装置。
【請求項9】
前記プリアンブルデータは、論理値交互パターンデータからなることを特徴とする請求項7又は8に記載の復調装置。
【請求項10】
前記入力信号は、周波数偏移変調、振幅偏移変調、及び位相偏移変調のうちのいずれか1つのデジタル変調処理が施された信号であることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1つに記載の復調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンボルデータによってデジタル変調された入力信号を復調する復調方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば周波数偏移変調(FSK:frequency shift keying)方式などのデジタル変調方式によってデータ通信を行なう方法が知られている。また、FSK方式による信号伝送においては、例えば送信機や受信機の局部発振器の発振周波数のずれ等に起因して、受信装置における周波数検波信号の周波数に偏倚すなわち周波数オフセットが生じることも知られている。受信装置においては、周波数検波信号の周波数と所定の閾値とを比較してその比較結果に基づいてデータ値を判定するので、周波数オフセットが生じた場合にはデータ値の正確な判定ができなくなる。故に、一般的に、受信装置は周波数オフセットを除去するための例えば自動周波数制御(AFC:Automatic Frequency Control)などの周波数オフセット除去部を備えている。例えば特許文献1には、フィルタによって入力信号の直流オフセットを除去して得られたゼロクロスパルスを用いて当該入力信号のゼロクロス点を検出することによって周波数オフセットを除去する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−298541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている構成の場合、直流オフセットの無い状態になるまでに一定の時間を要するので、周波数オフセットの除去処理が遅れてしまうという問題がある。
【0005】
また、その他の従来技術として、FIRフィルタ(Finite Impulse Response Filter)から構成されるローパスフィルタで周波数検波信号を平滑化して得られた振幅平均値をデータ値判定閾値として、当該周波数検波信号のデータ値判定を行なう方法も知られている。しかし、かかる方法の場合には以下の問題がある。すなわち、判定閾値を求めるために平均値を算出するので、その算出までには、周波数検波信号を表す波形における少なくとも2シンボル分の期間を必要とする。また、精度の高い判定閾値を求めるために平均値算出期間を増加させる場合には、2シンボル単位でしか算出期間を増やすことができない。故に、判定閾値の算出に長時間を要するという問題があった。また、例えば受信信号のいわゆるプリアンブル部分を用いて判定閾値を算出する場合において、当該プリアンブル部分のデータ長が短いときには、精度の高い判定閾値を求めることができず、データ値の誤判定を招くという問題があった。
【0006】
本発明は上記した如き問題点に鑑みてなされたものであって、デジタル変調信号を正確に復調することができる信号復調方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による復調方法は、シンボルデータによってデジタル変調された入力信号を復調する復調方法であって、前記入力信号を検波して検波信号を生成する検波ステップと、前記検波信号を前記シンボルデータの1シンボル分だけ遅延させて遅延信号を生成する遅延ステップと、前記検波信号のアナログ信号レベルと前記遅延信号のアナログ信号レベルとの差分がゼロになるタイミングをゼロクロスタイミングとして検出するタイミング検出ステップと、前記ゼロクロスタイミングにおける前記検波信号のアナログ信号レベルを、複数の前記ゼロクロスタイミングについて取得し、取得した前記検波信号のアナログ信号レベルを順次平均化して平均値を出力する平均化ステップと、前記ゼロクロスタイミングにおける前記検波信号のアナログ信号レベルの平均値に基づいて判定閾値を得てこれを保持する判定閾値保持ステップと、前記検波信号のアナログ信号レベルと前記判定閾値との比較に基づいて前記検波信号が示す現在シンボル値を復調出力として出力する判定出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明による復調装置は、シンボルデータによってデジタル変調された入力信号を復調する復調装置であって、前記入力信号を検波して検波信号を生成する検波回路と、前記検波信号を前記シンボルデータの1シンボル分だけ遅延させて遅延信号を生成する遅延回路と、前記検波信号のアナログ信号レベルと前記遅延信号のアナログ信号レベルとの差分がゼロになるタイミングをゼロクロスタイミングとして検出するタイミング検出回路と、前記ゼロクロスタイミングにおける前記検波信号のアナログ信号レベルを、複数の前記ゼロクロスタイミングについて取得し、取得した前記検波信号のアナログ信号レベルを順次平均化して平均値を出力する平均化回路と、前記ゼロクロスタイミングにおける前記検波信号のアナログ信号レベルに基づいて判定閾値の平均値を得てこれを保持する判定閾値保持回路と、前記検波信号のアナログ信号レベルと前記判定閾値との比較に基づいて前記検波信号が示す現在シンボル値を復調出力として出力する判定出力回路と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による復調方法及び装置によれば、デジタル変調信号を正確に復調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例である復調装置の構成を示すブロック図である。
図2】復調装置に入力される信号のフレームフォーマットを示す図である。
図3】判定閾値設定処理ルーチンを示すフローチャートである。
図4】判定閾値設定処理において現れる信号を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施例について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1には、本発明の実施例である復調装置10の構成が示されている。復調装置10は、例えば無線信号受信端末(図示せず)に含まれ得る。また、復調装置10は、ハードウェア構成としてもよいが、例えばマイクロプロセッサによって実行されるソフトウェアによって等価的に構成し得る。
【0013】
周波数検波器1は、入力信号F1を周波数検波して、その周波数に応じた信号レベルの周波数検波信号F2を出力する。入力信号F1は、例えばFSK方式などのデジタル変調方式によって変調された無線若しくは有線信号である。
【0014】
遅延回路2は、周波数検波信号F2を1シンボル分だけ遅延させて遅延信号F3を出力する。周波数検波信号F2が例えば正弦波である場合には、1シンボル分の遅延は正弦波の半周期分の遅延に相当する。1シンボルデータは、例えば正弦波のように半周期毎に所定レベルと交差する波形の当該半周期分に相当する部分といえる。遅延回路2は、例えばN段シフトレジスタで構成され得る。ここで、Nは1シンボル当たりのサンプリング回数であり、正の整数である。サンプリング周波数をFs、シンボル周波数をFsymとすると、N=Fs/Fsymの関係となる。
【0015】
減算器3は、周波数検波信号F2のアナログ信号レベルと、遅延信号F3のアナログ信号レベルとの差分を求め、当該差分を示す減算信号F4を出力する。減算信号F4は、例えば、周波数検波信号F2のアナログ信号レベルから遅延信号F3のアナログ信号レベルを減算して得られた値を示すものである。
【0016】
正負表示信号生成回路4は、減算信号F4のアナログ信号レベルの正負符号を判別して、その判別結果を表示する正負表示信号F5を出力する。正負表示信号F5は、例えば、当該判別した符号が負であることを信号レベル”0”によって表示し、当該判別した符号が正であることを信号レベル”1”によって表示する矩形波である。
【0017】
変化時点検出回路5は、正負表示信号F5の正負符号の変化時点を検出して、その変化時点を示すパルスを含む変化時点表示信号F6を生成する。以下、当該検出時点をゼロクロスタイミングとも称する。正負符号の変化時点は、例えば、正負表示信号F5の波形の立ち上がり/立下りエッジを検出することにより、検出される。
【0018】
減算器3、正負表示信号生成回路4及び変化時点検出回路5からなる構成(以下、タイミング検出回路と称する)の動作により、周波数検波信号F2のアナログ信号レベルと遅延信号F3のアナログ信号レベルとの差分がゼロになるタイミング(以下、ゼロクロスタイミングと称する)を検出している。換言すれば、タイミング検出回路は、周波数検波信号F2のアナログ信号レベルと遅延信号F3のアナログ信号レベルとが一致するタイミングを検出している。更に換言すれば、タイミング検出回路は、周波数検波信号F2の波形と遅延信号F3の波形とが交差するタイミングを検出している。なお、当該タイミング検出回路は、周波数検波信号F2の信号レベルの電圧値と遅延信号F3の信号レベルの電圧値とを検出して、その電圧値の差分を求めることによってゼロクロスタイミングを直接的に検出する構成であっても良い。
【0019】
平均化回路6は、検出パルス信号F6のパルス発生時点において周波数検波信号F2のアナログ信号レベルを順次取得し、当該取得した値の平均値を算出する。平均化回路6は、当該平均値を示す平均値信号F7を出力する。なお、平均化回路6は、値を1つしか取得していない時点においては、当該1つの値をそのまま出力する。
【0020】
プリアンブル検出回路7は、入力信号F1に含まれるいわゆるプリアンブルを検出したことを示すプリアンブル検出信号F8を判定閾値保持回路8に供給する。リアンブルは公知の方法によって検出することができる。例えば、復調装置10の内部で検出しても良いし、復調装置10の後段で検出することもできる。
【0021】
判定閾値保持回路8は、プリアンブル検出信号F8が供給された時点において、平均値信号F7のアナログ信号レベルをスライスレベルすなわち判定閾値として保持し、当該判定閾値を示すスライスレベル信号F9を出力する。
【0022】
判定出力回路9は、周波数検波信号F2のアナログ信号レベルの現在値と、判定閾値保持回路8から出力されるスライスレベル信号F9が示す判定閾値との比較に基づいて現在シンボル値F10を出力する。判定出力回路9は、例えば、周波数検波信号F2のアナログ信号レベルの現在値がスライスレベル信号F9が示す判定閾値よりも大きい場合には現在シンボル値F10として”1”を出力し、周波数検波信号F2のアナログ信号レベルの現在値がスライスレベル信号F9が示す判定閾値よりも小さい場合には現在シンボル値F10として”0”を出力する。
【0023】
図2には、入力信号F1のフレームフォーマットが示される。データの前にはプリアンブルが設けられている。プリアンブルは、論理値”1”と論理値”0”とが交互に現れる例えば”1010・・・・”などの論理値交互パターンデータすなわち繰り返しパターンデータからなる。
【0024】
図3及び図4を参照しつつ、復調装置10における判定閾値設定処理の動作について説明する。
【0025】
先ず、周波数検波器1は、入力信号F1を周波数検波して、その周波数に応じた値を周波数検波信号F2として出力する(ステップS1)。入力信号F1のフレームフォーマットにおけるプリアンブルは例えば”1010・・・・”などの論理値交互パターンデータからなるので、周波数検波信号F2は図4に示されるように例えば正弦波となる。
【0026】
次に、遅延回路2は、周波数検波信号F2を1シンボル分だけ遅延させて遅延信号F3を出力する(ステップS2)。
【0027】
図4に示されるように、例えば正弦波である周波数検波信号F2は、正弦波の半サイクル分だけ遅延する。
【0028】
次に、減算器3は、周波数検波信号F2のアナログ信号レベルから遅延信号F3のアナログ信号レベルを減算して減算信号F4を出力する(ステップS3)。以下、減算信号F4が”0”レベルと交差するポイントQ1〜Q7をゼロクロスポイントQ1〜Q7と称する。
【0029】
次に、正負表示信号生成回路4は、減算信号F4のアナログ信号レベルの正負符号を判別して、その判別結果を表示する正負表示信号F5を出力する(ステップS4)。
【0030】
図4に示されるように、例えば、正負表示信号F5は矩形波であり、当該判別した符号が負であれば正負表示信号F5の信号レベルは”0”であり、当該判別した符号が正であれば正負表示信号F5の信号レベルは”1”である。
【0031】
次に、変化時点検出回路5は、正負表示信号F5の正負符号の変化時点を検出して、その検出時点を示すパルスを含む変化時点表示信号F6を生成する(ステップS5)。図4に示されるように、変化時点表示信号F6は、正負表示信号F5が示す正負の各変化時点T1〜T7を示すパルスを含む。なお、図4に示されるT1〜T7の各々はゼロクロスタイミングであり、当該パルスはゼロクロスタイミングを示す。
【0032】
次に、平均化回路6は、検出パルス信号F6のパルス発生の各時点T1〜T7における周波数検波信号F2のアナログ信号レベル(以下、中点推定値と称する)P1〜P7を順次取得する。そして、平均化回路6は、中点推定値を取得する度に当該取得した中点推定値の平均値を算出する(ステップS6)。平均化回路6は、例えば中点推定値P2まで取得した場合には、時刻T2に時点において中点推定値P1及びP2の平均値を算出する。また、例えば、中点推定値P7まで取得した場合には、時刻T7に時点において中点推定値P1〜P7の平均値を算出する。平均化回路6は、当該平均値を示す平均値信号F7を出力する。なお、平均化回路6は、中点推定値P1しか取得していない場合には、時刻T1に時点において中点推定値P1を平均値信号F7として出力する。図4に示されるように、中点推定値P1〜P7の各々は同一の値なので、平均値信号F7は、平均値算出の初期段階から一定の平均値を示している。
【0033】
次に、プリアンブル検出回路7は、入力信号F1に含まれるプリアンブルを検出したときにプリアンブル検出信号F8を判定閾値保持回路8に供給する(ステップS7)。判定閾値保持回路8は、プリアンブル検出信号F8が供給された時点において、平均値信号F7が示す値を判定閾値として保持し、この判定閾値を示すスライスレベル信号F9を出力する(ステップS8)。つまり、プリアンブルが検出された時点における平均値信号F7の値を判定閾値として判定閾値保持回路8が保持して、その判定閾値を示すスライスレベル信号F9を出力する。プリアンブルの検出時点は、プリアンブルの検出方法によって、時刻T1、T2、・・・、T7のいずれともなり得る。つまり、プリアンブル検出回路7は、例えば、時刻T1の時点でプリアンブルを検出したと判定しても良いし、時刻T7の時点でプリアンブルを検出したと判定しても良い。
【0034】
かかる処理により、判定閾値の設定には、例えば”1010・・・・”などの論理値交互パターンデータからなるプリアンブルの少なくとも一部が用いられ、プリアンブルの後に続く不規則なパターンデータは用いられない。これによって、適切な判定閾値を設定し、周波数検波信号が示す後続のデータ値を適切に判定し得る。
【0035】
判定出力回路9は、周波数検波信号F2により示される現在値がスライスレベル信号F9により示される値よりも大きい場合には現在シンボル値F10として例えば”1”を出力し、周波数検波信号F2により示される現在値がスライスレベル信号F9により示される値よりも小さい場合には現在シンボル値F10として例えば”0”を出力する。スライスレベル信号F9を用いることにより、周波数オフセットをキャンセルすることができ、正しいデータ値判定を行なうことができる。
【0036】
上記したように、本実施例の復調装置10においては、判定閾値の決定に際して、先ず、周波数検波信号F2を1シンボル分だけ遅延させて遅延信号F3を生成する。そして、周波数検波信号F2から遅延信号F3を減算して減算信号F4を生成する。論理値交互パターンデータからなるプリアンブル部分についての減算信号F4のゼロクロスポイントQ1〜Q7は1シンボル毎に発生する。故に、1シンボル毎に周波数検波信号F2の中点推定値P1〜P7が順次取得される。それ故、最低1シンボルあれば適切な判定閾値を設定することができる。また、中点推定値の平均値から判定閾値を求めるに際して、中点推定値の取得数を1シンボル単位で増加させることができる。故に、本実施例の復調装置10によれば、入力信号F1のプリアンブルが短い場合であっても、周波数オフセットをキャンセルするための適切なデータ値判定閾値すなわち判定閾値を算出して周波数検波信号F2が表すデータ値を正確に判定することができる。また、入力信号F1を受信してから短時間でデータ値を正確に判定することができる。
【0037】
なお、本実施例においては、判定閾値の設定のために用いるデータを”プリアンブル”としたが、必ずしも”プリアンブル”と称されるデータでなくとも良い。つまり、例えば”1010・・・・”などからなる論理値交互パターンデータであれば、判定閾値の設定のために用いることができる。
【0038】
また、本実施例においては、周波数検波信号F2が正弦波である場合の例であるが、これに限られず、1シンボルの大きさが一定の波形である場合には、本発明を適用して同様の効果を奏することができる。例えば、半周期の大きさが一定である例えば矩形波や三角波などの波形が考えられる。また、本実施例においては、周波数検波信号F2を1シンボル分だけ遅延させたが、例えば3シンボル分などの奇数シンボル分だけ遅延させても同様の効果を奏することができる。
【0039】
また、本実施例においては、周波数偏移変調(FSK)における周波数検波信号の処理について説明したが、振幅偏移変調(ASK:Amplitude Shift Keying)におけるAM検波信号や、位相偏移変調(PSK:Phase-Shift Keying)における位相検波信号についても、変調信号としての元のシンボルデータのプリアンブルが上記したような論理値交互パターンデータからなる場合には、本発明を適用して同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 周波数検波器
2 遅延回路
3 減算器
4 正負表示信号生成回路
5 変化時点検出回路
6 平均化回路
7 プリアンブル検出回路
8 判定閾値保持回路
9 判定出力回路
10 復調装置
図1
図2
図3
図4