特許第5733564号(P5733564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5733564反射防止膜用組成物、それを用いた物品及び反射防止フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733564
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】反射防止膜用組成物、それを用いた物品及び反射防止フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/11 20150101AFI20150521BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20150521BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   G02B1/10 A
   B32B9/00 Z
   G09F9/00 313
【請求項の数】7
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2011-38295(P2011-38295)
(22)【出願日】2011年2月24日
(65)【公開番号】特開2012-173698(P2012-173698A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2013年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】山科 洋三
(72)【発明者】
【氏名】高野 聖史
(72)【発明者】
【氏名】所 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】羽山 秀和
(72)【発明者】
【氏名】田淵 穣
(72)【発明者】
【氏名】出口 朋枝
【審査官】 川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−191023(JP,A)
【文献】 特開2006−299126(JP,A)
【文献】 特開2009−120416(JP,A)
【文献】 特開2006−308832(JP,A)
【文献】 特開2009−040967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/11
B32B 9/00
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積平均径が80〜150nmの範囲であり、変動係数が0〜40%の範囲であり、表面に細孔を有する多孔質シリカ粒子(A)及びバインダー樹脂(B)を含有する反射防止膜用組成物であって、前記多孔質シリカ粒子(A)がシラザン化合物(C)で表面修飾されており、前記多孔質シリカ粒子(A)100質量部に対して、シラザン化合物(C)を0.3〜60質量部で修飾したもので、多孔質シリカ粒子(A)がテトラアルコキシシラン、アルキルアミン及びアルコールを均一に混合した液(A液)に、アンモニア水、アルコール及び水を均一に混合した液(B液)を注入して、テトラアルコキシシランを加水分解及び縮合反応させて得られたものであることを特徴する反射防止膜用組成物。
【請求項2】
前記シラザン化合物(C)が、ヘキサメチルジシラザンである請求項1記載の反射防止膜用組成物。
【請求項3】
前記アルキルアミンが、炭素原子数6〜18のアルキル基を有するアミン化合物である請求項記載の反射防止膜用組成物。
【請求項4】
前記アルコールが、メタノール、エタノール及びプロパノールからなる群から選ばれる少なくとも1種であるアルコールである請求項記載の反射防止膜用組成物。
【請求項5】
前記テトラアルコキシシランが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びテトラプロポキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種であるテトラアルコキシシランである請求項1〜4のいずれか1項記載の反射防止膜用組成物。
【請求項6】
基材上に、請求項1〜のいずれか1項記載の反射防止膜用組成物を塗工して形成した反射防止膜を有することを特徴とする物品。
【請求項7】
基材フィルムの少なくとも一面に、請求項1〜のいずれか1項記載の反射防止膜用組成物を塗工して形成した反射防止膜を有することを特徴とする反射防止フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品への像の映り込みを防止する反射防止膜を形成するのに適した反射防止膜用組成物に関する。また、該反射防止膜用組成物で形成された反射防止膜を有する物品に関し、特に液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OELD)、プラズマディスプレイ(PDP)、表面電界ディスプレイ(SED)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の画像表示装置の表示画面の表面に外光が反射することによって生じるコントラストの低下や像の映り込みを防止する反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)等の画像表示装置の表示画面の表面は平滑であるため、外光が反射しやすく、この外光の反射によって、表示画面のコントラストが低下したり、像が映り込んだりして、表示された内容が見づらくなるという問題があった。この外光の反射を防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するように設計された反射防止フィルムを画像表示装置の最表面に配置されている。
【0003】
反射防止フィルムとしては、通常、光学干渉が生じるように基材又は基材表面に設けられたハードコート層、帯電防止層等のコーティング層の屈折率よりも低い屈折率を有する物質からなる低屈折率層を基材又はコーティング層上に設けたものが一般的である。低屈折率層は、反射防止を効率的に実現できることから、100nm程度の膜厚である必要があり、精密な膜厚制御が必要となる。そこで、従来は、膜厚制御が比較的容易な化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法等の蒸着法により低屈折率層を形成することが行われてきた。しかしながら、蒸着法により低屈折率層を形成する場合、成膜を真空中でおこなうため、生産性が低く、大量生産に適していないという問題があった。
【0004】
一方、低屈折率層の形成方法として、中空シリカ粒子等の低屈折率物質を含有する塗材を基材に塗布する方法がある。この方法では、生産性が高く、大量生産にも適している利点はあるが、蒸着法に比べ膜厚制御が困難である問題があった。さらに、低屈折率層の下に高屈折率層を設ける場合には、2回の塗布、乾燥、硬化工程が必要となり、生産性が低下する問題があった。
【0005】
そこで、1回の塗布、乾燥、硬化工程により、低屈折率層を高屈折率層の上に同時に形成することが検討されており、例えば、屈折率が1.50以下の低屈折率微粒子とバインダー樹脂を含有する硬化性組成物を透明プラスチックフィルム基材上に塗工して乾燥厚みが1.0〜40μmの硬化層が形成されてなる光学フィルムであって、硬化層の基材とは反対側の表面部分に低屈折率微粒子が偏在している光学フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1の実施例では、低屈折率微粒子として平均粒子径40nmの中空シリカ粒子を用いているが、このような平均粒子径を有する中空シリカ粒子は凝集しやすく、低屈折率微粒子を含有する低屈折率層の膜厚を、反射防止を効率的に実現できる100nm程度の膜厚に精密に制御することが困難であった。
【0006】
また、中空シリカ粒子の凝集を解消するために、中空シリカ粒子に有機溶媒と表面修飾剤を加えて湿式ジェットミルで強力に分散させて、中空シリカ粒子表面に表面修飾剤を反応付加させて表面修飾した中空シリカ粒子が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、中空シリカ粒子の殻は薄く、機械的強度を有していないため、湿式ジェットミル等を用いて強力に分散すると、中空シリカ粒子の殻が割れて、バインダー樹脂が中空シリカ粒子の内部に浸入し、もはや低屈折率を有さなくなる問題があった。また、中空シリカ粒子を配合した塗材を塗工する際に、グラビアコーター、ロールコーター等の圧力が加わる塗工装置を用いた場合にも、中空シリカ粒子の殻が割れる問題があった。
【0007】
そこで、基材上への1回の塗布、乾燥、硬化工程により、低屈折率層を高屈折率層の上に同時に形成でき、該低屈折率層が反射防止を効率的に実現できる100nm程度の膜厚を有するように膜厚制御でき、圧力が加わる塗工装置を用いた場合にも、低屈折率物質が破壊されないものが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−86764号公報
【特許文献2】特開2009−107857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、基材上への1回の塗布、乾燥、硬化工程により、低屈折率層を高屈折率層の上に同時に形成でき、該低屈折率層の膜厚が反射防止を効率的に実現できるように膜厚制御され、塗工装置に依らずに反射防止膜の形成が可能な反射防止膜用組成物を提供することである。また、該反射防止膜用組成物で形成された反射防止膜を有する物品、特に反射防止フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究した結果、特定の範囲の体積平均径及び変動係数を有し、かつシラザン化合物で、特定の範囲の修飾量で表面修飾された多孔質シリカ粒子を低屈折率粒子として配合した組成物を用いることで、基材上への1回の塗布、乾燥、硬化工程により、低屈折率層を高屈折率層の上に同時に形成できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、体積平均径が80〜150nmの範囲であり、変動係数が0〜40%の範囲であり、表面に細孔を有する多孔質シリカ粒子(A)及びバインダー樹脂(B)を含有する反射防止膜用組成物であって、前記多孔質シリカ粒子(A)がシラザン化合物(C)で表面修飾されており、前記多孔質シリカ粒子(A)100質量部に対して、シラザン化合物(C)を0.3〜60質量部で修飾したもので、多孔質シリカ粒子(A)がテトラアルコキシシラン、アルキルアミン及びアルコールを均一に混合した液(A液)に、アンモニア水、アルコール及び水を均一に混合した液(B液)を注入して、テトラアルコキシシランを加水分解及び縮合反応させて得られたものであることを特徴する反射防止膜用組成物に関する。また、該反射防止膜用組成物で形成された反射防止膜を有する物品、特に反射防止フィルムに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の反射防止膜用組成物は、使用している低屈折率物質である多孔質シリカ粒子の機械的物性が高いことから、調製時に高い力が加わる分散処理をしても、塗工時に塗材に圧力が加わる塗工装置を用いても、多孔質シリカ粒子が破壊することがないため、調製時及び塗工時に反射防止性が低下することない利点がある。したがって、物品表面に反射防止膜を形成する際に、あらゆる塗工方法が用いることができ、安定した優れた反射防止性を有する反射防止膜を物品表面に形成することができる。
【0013】
特に、基材をフィルムとして、本発明の反射防止膜用組成物で反射防止膜を形成した反射防止フィルムは、その最表面に反射防止を効率的に実現できるように膜厚制御された低屈折率層を形成されるため、優れた反射防止性を有する。したがって、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OELD)、プラズマディスプレイ(PDP)、表面電界ディスプレイ(SED)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の画像表示装置の表示画面の表面に外光が反射することによって生じるコントラストの低下や像の映り込みを防止する反射防止フィルム用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施例2の反射防止膜用組成物で形成した反射防止膜の断面の電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)による5万倍での観察写真である。
図2図2は、実施例3の反射防止膜用組成物で形成した反射防止膜の断面の電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)による5万倍での観察写真である。
図3図3は、実施例4の反射防止膜用組成物で形成した反射防止膜の断面の電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)による10万倍での観察写真である。
図4図4は、実施例5の反射防止膜用組成物で形成した反射防止膜の断面の電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)による5万倍での観察写真である。
図5図5は、比較例2の反射防止膜用組成物で形成した反射防止膜の断面の電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)による5万倍での観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の反射防止膜用組成物は、体積平均径が80〜150nmの範囲であり、変動係数が0〜40%の範囲であり、表面に細孔を有する多孔質シリカ粒子(A)及びバインダー樹脂(B)を含有する反射防止膜用組成物であって、前記多孔質シリカ粒子がシラザン化合物(C)で表面修飾されており、前記多孔質シリカ粒子(A)100質量部に対して、シラザン化合物(C)を0.3〜60質量部で修飾したものである。
【0016】
本発明の反射防止膜用組成物は、前記バインダー樹脂(B)からなる塗膜表面に多孔質シリカ粒子(A)が実質的に単層で並んだ反射防止層として形成することが可能である。なお、本発明においては、前記多孔質シリカ粒子(A)からなる反射防止層及び実質的にバインダー樹脂(B)のみからなる塗膜層の両方を含んだものを反射防止膜という。
【0017】
前記多孔質シリカ粒子(A)からなる反射防止層を100nm程度の効率的に反射防止できる膜厚とするために、多孔質シリカ粒子の体積平均径が80〜150nmの範囲が好ましく、90〜120nmの範囲がより好ましい。
【0018】
また、前記多孔質シリカ粒子(A)からなる反射防止層の膜厚は、より均一である方が好ましいことから、多孔質シリカ粒子の粒度分布は狭い方が好ましい。そのために、前記多孔質シリカ粒子(A)の粒度分布を示す指数である変動係数(CV)は、0〜40%の範囲であるが、0〜35%の範囲がより好ましい。また、前記多孔質シリカ粒子(A)の製造のしやすさを考慮すると、変動係数の下限は5%が好ましく、10%がより好ましく、15%がさらに好ましく、20%が特に好ましい。なお、変動係数とは、下記式(1)によって算出されるものであり、下記式(1)中の標準偏差は、下記式(2)で算出されるものである。また、下記式(2)中のd84%は体積粒度分布における84%径を表し、d16%は体積粒度分布における16%径を表す。
【0019】
【数1】
【0020】
上記のような体積平均径及び変動係数を有する多孔質シリカ粒子(A)の製造方法としては、例えば、アルキルアミン存在下で、アンモニアを触媒として用い、水及びアルコール中でテトラアルコキシシランを加水分解及び縮合反応させて、多孔質シリカ粒子を得る方法が挙げられる。
【0021】
前記多孔質シリカ粒子(A)の原料となるテトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、反応性が高いことからテトラメトキシシランが好ましい。また、これらのテトラアルコキシシランは、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0022】
前記多孔質シリカ粒子(A)の製造で用いるアルキルアミンとしては、炭素原子数6〜18のアルキル基を有するアミン化合物が好ましい。具体例としては、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、テトラデシルアミン、オレイルアミン等が挙げられる。これらのアルキルアミンは、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。このアルキルアミンはシリカ粒子の表面に細孔を作るいわゆる鋳型として働くため、その種類及び添加量によって、細孔の数や大きさを制御することが可能である。また、アルキルアミンは、後述するアンモニアとともにテトラアルコキシシランの加水分解及び縮合反応の触媒としても作用する。
【0023】
前記多孔質シリカ粒子(A)の製造で用いるアンモニアは、テトラアルコキシシランの加水分解及び縮合反応の触媒として作用する。用いるアンモニアは、アンモニア水として加えても、反応溶液中にアンモニアを気体で導入しても良いが、使用量をコントロールしやすいことから、アンモニア水で用いるのが好ましい。
【0024】
前記多孔質シリカ粒子(A)の製造で溶媒として用いるアルコールとしては、水と混和するものが好ましい。さらに、アルコキシシランとアルコールの交換反応により反応系が複雑化することを防止する観点から、使用するテトラアルコキシシランのアルコキシ部位と同数の炭素原子数を有するものが特に好ましい。具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。
【0025】
前記多孔質シリカ粒子(A)の製造で溶媒として用いる水としては、反応系中に不純物が混入することを極力避けるため、純水を用いることが好ましい。
【0026】
上記の材料を用いて、多孔質シリカ粒子(A)を製造する方法について説明する。本発明の多孔質シリカ粒子(A)の製造方法は、下記の工程を経ることが好ましい。また、工程2と3の間に、酸性化合物を用いてアルキルアミン及び残留するアンモニアを中和する工程を加えても良い。
【0027】
(工程1)
テトラアルコキシシランの加水分解・縮合工程
(工程2)
シリカ粒子の洗浄工程
(工程3)
シリカ粒子の乾燥工程
(工程4)
シリカ粒子の焼成工程
【0028】
上記の工程1は、テトラアルコキシシランの加水分解及び縮合させ、シリカ粒子を形成する工程である。この工程では、下記のA液、B液の2つの液を調製し、B液を撹拌しながら、そこへA液を注入する方法が好ましい。
【0029】
(A液)
テトラアルコキシシラン、アルキルアミン及びアルコールを均一に混合した液
(B液)
アンモニア水、アルコール及び水を均一に混合した液
【0030】
前記A液の各成分の比率としては、テトラアルコキシシランとアルキルアミンとのモル比が1/0.05〜1/5の範囲であることが、細孔を表面に有し、かつ一次粒子が球状である粒子を得るために好ましい。
【0031】
前記B液中の各成分の比率としては、アンモニアと水とのモル比が1/1〜1/20の範囲であることが、細孔を表面に有し、かつ一次粒子が球状である粒子を得るために好ましい。さらに、アンモニア水を用いて反応操作を容易にできることから、アンモニアと水のモル比が1/2.5〜1/20であることがより好ましい。
【0032】
前記A液とB液の比率としては、テトラアルコキシシランとアンモニアとのモル比が1/0.2〜1/10の範囲であることが、細孔を表面に有し、かつ一次粒子の体積平均径を80〜150nmの範囲にあり、かつ球状である粒子を得るために好ましい。
【0033】
前記A液及びB液の混合時の温度としては、5〜80℃の範囲が、反応原料の反応系への溶解性及び一次粒子が球状である粒子を得るために好ましい。
【0034】
前記B液へのA液の注入時間としては、0〜240分の範囲が好ましい。ここでいう0分とは、A液をB液へ一括で投入することを表す。また、A液の注入後、5〜80℃の温度範囲で、10分以上さらに撹拌反応することが好ましい。この工程1によって、多孔質シリカ粒子の元となるシリカ粒子が得られる。
【0035】
上記の工程1で得られたシリカ粒子を洗浄するのが工程2である。工程2では、例えば、まず、工程1で得られた反応溶液からシリカ粒子を遠心分離し、シリカ粒子を取り出す。このシリカ粒子にアルコールを加えて撹拌して懸濁液とし、この懸濁液を遠心分離してシリカ粒子を取り出す。この工程を数回行うことで、アルコールによって得られたシリカ粒子を洗浄する。この際使用するアルコールは、前記A液及びB液の調製に用いたアルコールと同種のものが好ましい。なお、シリカ粒子を反応溶液及びアルコール懸濁液から取り出す方法としては、遠心分離に限られず、例えば、限外ろ過を用いても構わない。また、限外ろ過装置を使用し、連続的に洗浄工程を実施しても構わない。
【0036】
工程2で洗浄したシリカ粒子には、アルキルアミンが残留しているため、これを抽出・洗浄してもよい。抽出・洗浄することにより、後の焼成工程4においてアルキルアミンが除去される際に粒子を破壊することを防ぐことができる。この工程では、アルキルアミンを抽出しやすくするため酸を用いることが好ましい。この際、用いる酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等が挙げられる。これらの酸の中でも、中和塩が水溶性であることから、無機酸が好ましい。
【0037】
また、酸によってアルキルアミンを抽出する際には、水の他、アルコール存在下で行うことが好ましい。この際、用いるアルコールとしては、前記A液及びB液で用いたアルコールと同種のものが好ましい。さらに、アルキルアミンの抽出は、加熱して行うことが好ましく、その温度範囲としては、抽出効率が高いことから、使用するアルコールの沸点付近であることが好ましい。
【0038】
遠心分離によって、工程2で洗浄したシリカ粒子から溶媒を除去した後、乾燥するのが工程3である。工程3の乾燥工程での乾燥温度は、60〜150℃の範囲が好ましく、80〜130℃の範囲がより好ましい。
【0039】
工程3で乾燥したシリカ粒子に残留する有機物をすべて除去するために行うのが、工程4の焼成工程である。焼成工程の条件としては、焼成温度は400〜1,000℃の範囲が好ましく、500〜800℃の範囲がより好ましい。また、焼成時間としては、30分以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましい。この焼成工程を行うことで、シリカ粒子に残留する有機物をすべて除去できるため、シリカ粒子表面に細孔を有する多孔質シリカ粒子(A)とすることができる。
【0040】
焼成後、粒子が凝集している場合には粉砕することが好ましい。粉砕に用いる粉砕機としては、ボールミル、ビーズミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、エッジミル、製粉ミル、ハンマーミル、乳鉢、ペレットミル、乾式又は湿式ジェットミル、縦軸インパクタ(VSI)ミル、ウィリーミル、ローラーミル等が挙げられる。これらの中でも後述する多孔質シリカ粒子(A)の表面修飾と粒子の粉砕を同時に効率的に行うことができる湿式ジェットミルが好ましい。
【0041】
本発明に用いる多孔質シリカ粒子(A)は、シラザン化合物を表面修飾剤として表面修飾したものである。この表面修飾により、多孔質シリカ粒子(A)の表面に存在するシラノール基の水酸基をシラザン化合物により表面修飾して疎水基と置換することができる。前記シラザン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン等が挙げられる。
【0042】
また、多孔質シリカ粒子(A)の表面をシラザン化合物により表面修飾する際に、触媒を用いることが好ましい。この触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類などが挙げられる。これらの中でも、多孔質シリカ粒子(A)の分散液の製造安定性や保存安定性が良好となることから、酸触媒(無機酸類、有機酸類)が用いられる。無機酸では塩酸、硫酸など、有機酸ではメタンスルホン酸、シュウ酸、フタル酸、マロン酸、酢酸が好ましく、酢酸が特に好ましい。
【0043】
また、この表面修飾を行う方法としては、例えば、表面修飾剤を溶媒に溶解させた溶液に多孔質シリカを浸漬し、必要に応じて加熱する方法が挙げられる。この表面修飾に用いる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0044】
前記多孔質シリカ粒子(A)の表面修飾の際の表面修飾剤の使用量は、多孔質シリカ粒子(A)が二次凝集せず、一次粒子として安定なものとするために、前記多孔質シリカ粒子100質量部に対して、シラザン化合物を0.3〜60質量部の範囲であるが、0.5〜50質量部の範囲が好ましい。
【0045】
さらに、上記の表面修飾を行う際に同時に多孔質シリカ粒子(A)の凝集した粒子を粉砕して一次粒子状態の分散液とすることが好ましい。
【0046】
上記の工程1〜4及び表面修飾を経ることで、本発明で用いる多孔質シリカ粒子(A)を得ることができる。得られた多孔質シリカ粒子の粒子形状、体積平均径、変動係数、細孔径分布のピーク及び比表面積は、下記の測定方法により測定できる。
【0047】
[粒子形状]
粒子形状は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)(例えば、日本電子社製「JSM6700」)を用いて観察することで確認できる。
【0048】
[体積平均径及び変動係数]
体積平均径は、レーザードップラー法を用いた粒度分布計(例えば、大塚電子株式会社製「ゼータ電位・粒径測定システム ELSZ−2」)を用いて測定できる。また、変動係数は、同装置で測定した体積平均径及び標準偏差から、上記式(1)によって求められる。
【0049】
[細孔径分布のピーク]
細孔径分布のピークは、細孔分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所「ASAP2020」)を用いて測定でき、得られた細孔径分布のピーク値である。
【0050】
[比表面積]
比表面積は、細孔分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所「ASAP2020」)を用いてBET法により測定できる。
【0051】
上記の測定方法により、本発明で用いる多孔質シリカ粒子(A)の粒子形状、平均粒子径、平均細孔径及び比表面積を測定することができる。上記の工程1〜4を経て製造された多孔質シリカ粒子(A)は、ほぼ球形の外観を有し、体積平均径は、アンモニアの使用量を調整することで制御することができ、80〜150nmの範囲のものを得ることができる。また、多孔質シリカ粒子(A)の平均細孔径及び比表面積は、アルキルアミンの種類及び使用量により制御することができ、平均細孔径については、0.3〜4nmの範囲のものが得られ、比表面積については、40〜900m/gの範囲のものが得られる。
【0052】
本発明の反射防止膜用組成物は、前記多孔質シリカ粒子(A)及びバインダー樹脂(B)を含有する。前記多孔質シリカ粒子(A)と前記バインダー樹脂(B)の混合層が低屈折率層を形成するため、前記バインダー樹脂(B)としては、低屈折率の塗膜を形成するものが好ましく、具体的には1.30〜1.60の屈折率を有するものが好ましい。また、前記バインダー樹脂(B)の具体例としては、ポリ酢酸ビニルとその共重合樹脂、エチレン−酢酸共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、マレイン酸系樹脂、環化ゴム系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸樹脂等の溶剤可溶性樹脂;フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;活性エネルギー線硬化性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、比較的低温で塗膜形成ができ、短時間で塗膜が形成できることから生産性も高い活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましい。
【0053】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、後述する活性エネルギー線硬化性樹脂(b1)の他、活性エネルギー線硬化性単量体(b2)も含まれ、それぞれ単独で用いてもよいが、併用しても構わない。
【0054】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂(b1)は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、アクリル(メタ)アクリレート樹脂、マレイミド基を有する樹脂等が挙げられる。
【0055】
ここで用いるウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、脂肪族ポリイソシアネート化合物又は芳香族ポリイソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られるウレタン結合と(メタ)アクリロイル基とを有する樹脂が挙げられる。
【0056】
前記脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等が挙げられ、また、芳香族ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0057】
一方、水酸基を有するアクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の3価のアルコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、あるいは、これらのアルコール性水酸基の一部をε−カプロラクトンで変性した水酸基を有するモノ及びジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の1官能の水酸基と3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、あるいは、該化合物をさらにε−カプロラクトンで変性した水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物;ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン−ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等のブロック構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物;ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等のランダム構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0058】
上記した脂肪族ポリイソシアネート化合物又は芳香族ポリイソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物との反応は、ウレタン化触媒の存在下、常法により行うことができる。ここで使用し得るウレタン化触媒は、具体的には、ピリジン、ピロール、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミンなどのアミン類、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィンなどのホフィン類、ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫などの有機錫化合物、オクチル酸亜鉛などの有機金属化合物が挙げられる。
【0059】
これらのウレタン(メタ)アクリレート樹脂の中でも特に脂肪族ポリイソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られるものが硬化塗膜の透明性に優れ、かつ、活性エネルギー線に対する感度が良好で硬化性に優れることから好ましい。また、前記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、(メタ)アクリロイル基を複数有する多官能(メタ)アクリレート化合物が、硬化塗膜の硬度に優れることから好ましい。
【0060】
次に、不飽和ポリエステル樹脂は、α,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物、芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物、及び、グリコール類の重縮合によって得られる硬化性樹脂であり、α,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸、及びこれらのエステル等が挙げられる。芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸及びこれらのエステル等が挙げられる。脂肪族あるいは脂環族飽和二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、グルタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びこれらのエステル等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、エチレングリコールカーボネート、2,2−ジ−(4−ヒドロキシプロポキシジフェニル)プロパン等が挙げられ、その他にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の酸化物も同様に使用できる。
【0061】
次に、エポキシビニルエステル樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるものが挙げられる。
【0062】
また、マレイミド基を有する樹脂としては、N−ヒドロキシエチルマレイミドとイソホロンジイソシアネートとをウレタン化して得られる2官能マレイミドウレタン化合物、マレイミド酢酸とポリテトラメチレングリコールとをエステル化して得られる2官能マレイミドエステル化合物、マレイミドカプロン酸とペンタエリスリトールのテトラエチレンオキサイド付加物とをエステル化して得られる4官能マレイミドエステル化合物、マレイミド酢酸と多価アルコール化合物とをエステル化して得られる多官能マレイミドエステル化合物等が挙げられる。これらの活性エネルギー線硬化性樹脂(b1)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0063】
前記活性エネルギー線硬化性単量体(b2)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、数平均分子量が150〜1000の範囲にあるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、数平均分子量が150〜1000の範囲にあるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールペンタ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族アルキル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングルリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリスチリルエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、2−マレイミドエチル−エチルカーボネート、2−マレイミドエチル−プロピルカーボネート、N−エチル−(2−マレイミドエチル)カーバメート、N,N−ヘキサメチレンビスマレイミド、ポリプロピレングリコール−ビス(3−マレイミドプロピル)エーテル、ビス(2−マレイミドエチル)カーボネート、1,4−ジマレイミドシクロヘキサン等のマレイミド類などが挙げられる。
【0064】
これらの中でも特に硬化塗膜の硬度に優れることから、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートが好ましい。これらの活性エネルギー線硬化性単量体は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0065】
本発明で用いる前記バインダー樹脂(B)に対する前記多孔質シリカ粒子(A)の配合量は、本発明の反射防止膜用組成物の塗膜表面に多孔質シリカ粒子の単層を形成できる量であればよく、本発明の反射防止膜用組成物の基材への塗工量に応じて、調整することが好ましい。例えば、バインダー樹脂(B)100質量部に対し多孔質シリカ粒子(A)4.75質量部を添加すると、厚さ5μmのハードコートの表面100nmに多孔質シリカ粒子(A)からなる単層が形成できる量に相当する。
【0066】
本発明の反射防止膜用組成物を用いて、その表面に反射防止膜を形成し得る物品の基材としては、その材質として金属、ガラス、プラスチック等からなるものが挙げられ、その表面形状としては像が映り込む滑らかな面を有するものが挙げられる。これらの基材の少なくとも一面に、前記反射防止膜用組成物を塗工して形成した反射防止膜を有するものが、本発明の物品となる。
【0067】
本発明の反射防止フィルムは、基材をフィルムとして、その少なくとも一面に、前記反射防止膜用組成物を塗工して形成した反射防止膜を有するものである。ここで、前記反射防止膜用組成物として、前記バインダー樹脂(B)に活性エネルギー線硬化性樹脂を用いた場合の製造方法について説明する。まず、前記反射防止膜用組成物を基材フィルムに塗工した後、反射防止膜用組成物を硬化することにより塗膜である反射防止膜を形成するために活性エネルギー線を照射する。この活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。活性エネルギー線として紫外線を照射して硬化塗膜とする場合には、前記活性エネルギー線硬化性組成物に光重合開始剤を添加し、硬化性を向上することが好ましい。また、必要であればさらに光増感剤を添加して、硬化性を向上することもできる。一方、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤や光増感剤を用いなくても速やかに硬化するので、特に光重合開始剤や光増感剤を添加する必要はない。
【0068】
前記光重合開始剤としては、分子内開裂型光重合開始剤及び水素引き抜き型光重合開始剤が挙げられる。分子内開裂型光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステル等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル等が挙げられる。
【0069】
一方、水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が挙げられる。
【0070】
また、前記光増感剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン類、o−トリルチオ尿素等の尿素類、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。
【0071】
これらの光重合開始剤及び光増感剤の使用量は、反射防止膜用組成物中の不揮発成分100質量部に対し、各々0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.3〜7質量部がさらに好ましい。
【0072】
さらに、本発明の反射防止膜用組成物には、用途、特性等の目的に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、粘度や屈折率の調整、あるいは、塗膜の色調の調整やその他の塗料性状や塗膜物性の調整を目的に各種の配合材料、例えば、各種有機溶剤、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油樹脂、フッ素樹脂等の各種樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、カーボン、酸化チタン、アルミナ、銅、シリカ微粒子等の各種の有機又は無機粒子、重合開始剤、重合禁止剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、防錆剤、スリップ剤、ワックス、艶調整剤、離型剤、相溶化剤、導電調整剤、顔料、染料、分散剤、分散安定剤、シリコーン系、炭化水素系界面活性剤等を配合することができる。
【0073】
上記の各配合成分中、有機溶媒は、本発明の反射防止膜用組成物の溶液粘度を適宜調整する上で有用であり、特に薄膜コーティングを行うためには、膜厚を調整することが容易となる。ここで使用できる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0074】
ここで有機溶媒の使用量は、用途や目的とする膜厚や粘度によって異なるが、硬化成分の全質量に対して、質量基準で、0.5〜4倍量の範囲であることが好ましい。
【0075】
本発明の反射防止膜用組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、上記の通り、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線であるが、具体的なエネルギー源又は硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線、又は走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。装置が簡便なことから、紫外線を発生する装置を用いることが好ましい。
【0076】
本発明の反射防止フィルムで用いる前記基材フィルムは、フィルム状でもシート状でもよく、その厚さは、20〜500μmの範囲が好ましい。また、前記基材フィルムの材質としては、透明性の高い樹脂が好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン−1等のポリオレフィン系樹脂;セルロースアセテート(ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸セルロース等のセルロース系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリビニルアルコール;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリスチレン;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂;ノルボルネン系樹脂(例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア」)、変性ノルボルネン系樹脂(例えば、(JSR株式会社製「アートン」)、環状オレフィン共重合体(例えば、三井化学株式会社製「アペル」)などが挙げられる。さらに、これらの樹脂からなる基材を2種以上貼り合わせたものを用いても構わない。
【0077】
本発明の反射防止膜用組成物の基材への塗工方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、キスコーター、シャワーコーター、ホイーラーコーター、スピンコーター、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー、アプリケーター、バーコーター等を用いた塗工方法が挙げられる。これらの中でも、グラビアコーター、ロールコーター等の圧力が加わる塗工装置を用いた場合にも、本発明で用いる多孔質シリカ粒子(A)は破壊されることがないため、塗工により反射防止性が低下することなく安定した反射防止性を有する反射防止フィルムを得ることができる。
【0078】
また、本発明の反射防止膜用組成物中に有機溶媒を含む場合は、反射防止膜用組成物を基材フィルムへの塗工した後、活性エネルギー線を照射する前に、有機溶媒を揮発させ、また、前記多孔質シリカ(A)を塗膜表面に偏析させるために、加熱又は室温乾燥することが好ましい。加熱乾燥の条件としては、有機溶剤が揮発する条件であれば、特に限定しないが、通常は、温度50〜100℃の範囲で、時間は1〜10分の範囲で加熱乾燥することが好ましい。
【0079】
上記のように操作することで、本発明の反射防止フィルムが得られる。
【実施例】
【0080】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。なお、合成した多孔質シリカ粒子の特性値については、下記の方法により測定した。
【0081】
[粒子形状]
粒子形状は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)(日本電子社製「JSM6700」)を用いて、5万倍で観察することで確認した。
【0082】
[体積平均径及び変動係数]
体積平均径は、レーザードップラー法を用いた粒度分布計(大塚電子株式会社製「ゼータ電位・粒径測定システム ELSZ−2」)を用いて測定した。また、変動係数は、同装置で測定した体積平均径及び標準偏差から、下記式(1)によって求めた。なお、下記式(1)中の標準偏差は、下記式(2)で求めた。また、下記式(2)中のd84%は体積粒度分布における84%径を表し、d16%は体積粒度分布における16%径を表す。
【0083】
【数2】
【0084】
[細孔径分布のピーク]
細孔径分布のピークは、細孔分布測定装置(株式会社島津製作所「ASAP2020」)を用いて測定して得られた細孔分布のピーク値とした。
【0085】
[比表面積]
比表面積は、細孔分布測定装置(株式会社島津製作所「ASAP2020」)を用いてBET法により測定した。
【0086】
(調製例1:多孔質シリカ粒子(1)の合成)
温度計、攪拌羽根を備えた500mLの4口フラスコに、メタノール213.2g、純水61.3g及び28質量%アンモニア水27.4gを仕込み、攪拌により均一に混合し(B液)、内温を20℃に保った。また、別の容器でテトラメトキシシラン(以下、「TMOS」と略記する。)34.3g、メタノール45.1g及びオクチルアミン6.5gを均一に混合した(A液)。フラスコ内を20℃に保って撹拌しながら、を120分かけてB液中へ注入した。A液の注入終了後、20℃で60分間反応を継続した。反応終了後、反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄して沈殿物を取り出した。
【0087】
上記で得られた沈殿物にメタノール200gを加えて撹拌混合し懸濁液を得た。この懸濁液を10,000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを廃棄して沈殿物をメタノール洗浄した。このメタノール洗浄をさらに2度繰り返した。このようにして得られた沈殿物を120℃で6時間乾燥させて白色粉末を得た。得られた白色粉末を電気炉に入れ、空気雰囲気下、25℃から2℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、600℃で3時間焼成した。焼成した粉末を冷却した後、乳鉢で粉砕することで、白色の多孔質シリカ粒子12.5gを得た。得られた多孔質シリカ粒子を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察したところ、粒子形状は球状であった。また、得られた多孔質シリカ粒子(1)の細孔径分布のピークは1.5nmであり、BET法による比表面積は43m/gであった。
【0088】
上記で得られた多孔質シリカ粒子5gをイソプロパノール44.5gと混合し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散後、分散液に酢酸0.5g及びヘキサメチルジシラザン(以下、「HMDS」と略記する。)0.5gを加え、湿式ジェットミル(株式会社常光製「ナノジェットバル JN−10」)を用いて、処理圧力130MPaにて30分間分散した。得られた分散液を、温度計、攪拌羽根を備えた200mLの4口フラスコに仕込み、60分間加熱還流した。反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。沈殿物にイソプロパノール50gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、分散液をNo.5C濾紙と桐山ロート(有限会社桐山製作所製)を用いてろ過し、固形分7.9質量%の多孔質シリカ粒子(1)の分散液を得た。
【0089】
上記で得られた多孔質シリカ粒子(1)の分散液中の多孔質シリカ粒子(1)の体積平均径は102nmであり、変動係数は28%であった。
【0090】
(合成例2:多孔質シリカ粒子(2)の合成)
温度計、攪拌羽根を備えた500mLの4口フラスコに、メタノール213.2g、純水61.3g及び28質量%アンモニア水27.4gを仕込み、攪拌により均一に混合し(B液)、内温を20℃に保った。また、別の容器でTMOS34.3g、メタノール45.1g及びデシルアミン39.3gを均一に混合した(A液)。フラスコ内を20℃に保って撹拌しながら、A液を120分かけてB液中へ注入した。A液の注入終了後、20℃で60分間反応を継続した。反応終了後、反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄して沈殿物を取り出した。
【0091】
上記で得られた沈殿物にメタノール200gを加えて撹拌混合し懸濁液を得た。この懸濁液を10,000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを廃棄して沈殿物をメタノール洗浄した。このメタノール洗浄をさらに2度繰り返した。このようにして得た沈殿物を120℃で6時間乾燥させて白色粉末を得た。得られた白色粉末を電気炉に入れ、空気雰囲気下、25℃から2℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、600℃で3時間焼成した。焼成した粉末を冷却した後、乳鉢で粉砕することで、白色の多孔質シリカ粒子12.1gを得た。得られた多孔質シリカ粒子を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察したところ、粒子形状は球状であった。また、得られた多孔質シリカ粒子(2)の細孔径分布のピークは1.8nmであり、BET法による比表面積は757m/gであった。
【0092】
上記で得られた多孔質シリカ粒子5gをイソプロパノール44.5gと混合し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散後、分散液に酢酸0.5g及びHMDS0.5gを加え、湿式ジェットミル(株式会社常光製「ナノジェットバル JN−10」)を用いて、処理圧力130MPaにて30分間分散した。得られた分散液を、温度計、攪拌羽根を備えた200mLの4口フラスコに仕込み、60分間加熱還流した。反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。沈殿物にイソプロパノール50.0gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、分散液をNo.5C濾紙と桐山ロート(有限会社桐山製作所製)を用いてろ過し、固形分7.8質量%の多孔質シリカ粒子(2)の分散液を得た。
【0093】
得られた多孔質シリカ粒子(2)の分散液中の多孔質シリカ粒子(2)の体積平均径は148nmであり、変動係数は28%であった。
【0094】
(合成例3:多孔質シリカ粒子(3)の合成)
温度計、攪拌羽根を備えた500mLの4口フラスコに、メタノール213.2g、純水61.3g及び28質量%アンモニア水27.4gを仕込み、攪拌により均一に混合し(B液)、内温を20℃に保った。また、別の容器でTMOS34.3g、メタノール45.1g及びラウリルアミン9.3gを均一に混合した(A液)。フラスコ内を20℃に保ちながら、A液を120分かけてB液中へ注入した。A液の注入終了後、20℃で60分間反応を継続した。反応終了後、反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄して沈殿物を取り出した。
【0095】
上記で得られた沈殿物にメタノール200gを加えて混合し懸濁液を得た。この懸濁液を10,000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを廃棄して沈殿物をメタノール洗浄した。このメタノール洗浄をさらに2度繰り返した。このようにして得た沈殿物を120℃で6時間乾燥させて白色粉末を得た。得られた白色粉末を電気炉に入れ、空気雰囲気下、25℃から2℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、600℃で3時間焼成した。焼成した粉末を冷却した後、乳鉢で粉砕することで、白色の多孔質シリカ粒子12gを得た。得られた多孔質シリカ粒子を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察したところ、粒子形状は球状であった。また、得られた多孔質シリカ粒子(3)の細孔径分布のピークは1.8nmであり、BET法による比表面積は216m/gであった。
【0096】
上記で得られた多孔質シリカ粒子5gをイソプロパノール44.5gと混合し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散後、分散液に酢酸0.5g及びHMDS0.5gを加え、湿式ジェットミル(株式会社常光製「ナノジェットバル JN−10」)を用いて、処理圧力130MPaにて30分間分散した。得られた分散液を、温度計、攪拌羽根を備えた200mLの4口フラスコに仕込み、60分間加熱還流した。反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。沈殿物にイソプロパノール50gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、分散液をNo.5C濾紙と桐山ロート(有限会社桐山製作所製)を用いてろ過し、固形分7.9質量%の多孔質シリカ粒子(3)の分散液を得た。
【0097】
得られた多孔質シリカ粒子(3)の分散液中の多孔質シリカ粒子(3)の体積平均径は139nmであり、変動係数は22%であった。
【0098】
(合成例4:多孔質シリカ粒子(4)の合成)
合成例3で得られた焼成後の多孔質シリカ粒子5gをイソプロパノール44.5gと混合し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散後、分散液に酢酸0.5g及びHMDS2.1gを加え、湿式ジェットミル(株式会社常光製「ナノジェットバル JN−10」)を用いて、処理圧力130MPaにて30分間分散した。得られた分散液を、温度計、攪拌羽根を備えた200mLの4口フラスコに仕込み、60分間加熱還流した。反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。沈殿物にイソプロパノール50gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、分散液をNo.5C濾紙と桐山ロート(有限会社桐山製作所製)を用いてろ過し、固形分8.0質量%の多孔質シリカ粒子(4)の分散液を得た。
【0099】
得られた多孔質シリカ粒子(4)の分散液中の多孔質シリカ粒子(4)の体積平均径は127nmであり、変動係数は32%であった。
【0100】
(合成例5:多孔質シリカ粒子(5)の合成)
合成例3で得られた焼成後の多孔質シリカ粒子5gをイソプロパノール44.5gと混合し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散後、分散液に酢酸0.5g及びHMDS0.03gを加え、湿式ジェットミル(株式会社常光製「ナノジェットバル JN−10」)を用いて、処理圧力130MPaにて30分間分散した。得られた分散液を、温度計、攪拌羽根を備えた200mLの4口フラスコに仕込み、60分間加熱還流した。反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。沈殿物にイソプロパノール50gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、分散液をNo.5C濾紙と桐山ロート(有限会社桐山製作所製)を用いてろ過し、固形分8.0質量%の多孔質シリカ粒子(5)の分散液を得た。
【0101】
得られた多孔質シリカ粒子(5)の分散液中の多孔質シリカ粒子(5)の体積平均径は110nmであり、変動係数は33%であった。
【0102】
(比較合成例1:シリカ粒子の合成)
温度計、攪拌羽根を備えた500mLの4口フラスコに、メタノール213.2g、純水61.3g及び28質量%アンモニア水27.4gを仕込み、攪拌により均一に混合し(B液)、内温を20℃に保った。また、別の容器でTMOS34.3g及びメタノール45.1gを均一に混合した(A液)。フラスコ内を20℃に保って撹拌しながら、A液を120分かけてB液中へ注入した。注入終了後、20℃で60分間反応を継続した。反応終了後、反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄して沈殿物を取り出した。
【0103】
上記で得られた沈殿物にメタノール200gを加えて撹拌混合し懸濁液を得た。この懸濁液を10,000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを廃棄して沈殿物をメタノール洗浄した。このメタノール洗浄をさらに2度繰り返した。このようにして得た沈殿物を120℃で6時間乾燥させて白色粉末を得た。得られた白色粉末を電気炉に入れ、空気雰囲気下、25℃から2℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、600℃で3時間焼成した。焼成した粉末を冷却した後、乳鉢で粉砕することで、白色のシリカ粒子13.3gを得た。得られた粒子を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察したところ、粒子形状は球状であった。
【0104】
上記で得られたシリカ粒子5gをイソプロパノール44.5gと混合し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散後、分散液に酢酸0.5g及びHMDS0.5gを加え、湿式ジェットミル(株式会社常光製「ナノジェットバル JN−10」)を用いて、処理圧力130MPaにて30分間分散した。得られた分散液を、温度計、攪拌羽根を備えた200mLの4口フラスコに仕込み、60分間加熱還流した。反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。沈殿物にイソプロパノール50gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、分散液をNo.5C濾紙と桐山ロート(有限会社桐山製作所製)を用いてろ過し、固形分8.2質量%のシリカ粒子の分散液を得た。なお、このシリカ粒子は、その表面に細孔を有しない中実シリカであり、BET法による比表面積は29m/gであった。
【0105】
上記で得られたシリカ粒子の分散液中のシリカ粒子の体積平均径は118nmであり、変動係数は27%であった。
【0106】
(比較合成例2:中空シリカ粒子の表面修飾)
中空シリカ粒子(一次粒子径100nm、空隙率60%、比表面積160m/g)5gをイソプロパノール44.5gと混合し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散後、分散液に酢酸0.5g及びHMDS0.5gを加え、湿式ジェットミル(株式会社常光製「ナノジェットバル JN−10」)を用いて、処理圧力130MPaにて30分間分散した。得られた分散液を、温度計、攪拌羽根を備えた200mLの4口フラスコに仕込み、60分間加熱還流した。反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。沈殿物にイソプロパノール50gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、分散液をNo.5C濾紙と桐山ロート(有限会社桐山製作所製)を用いてろ過し、固形分7.5質量%の中空シリカ粒子の分散液を得た。
【0107】
上記で得られた中空シリカ粒子の分散液中の中空シリカ粒子の体積平均径は196nmであり、変動係数は37%であった。さらに、得られた中空シリカ粒子を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察したところ、凝集体及び中空シリカ粒子の殻が破壊された粒子が見られた。なお、この中空シリカについては粒子が破壊されているため、比表面積は未測定とした。
【0108】
(比較合成例3:多孔質シリカ粒子(6)の合成)
温度計、攪拌羽根を備えた300mLの4口フラスコに、n−ヘプタン68.4g及びビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム10.7gを仕込み、25℃で攪拌しながら溶解させた後、15質量%コロイダルシリカ水分散液(日産化学工業株式会社製「スノーテックス20」)20.6g及びメチルトリエトキシシラン2.9gをフラスコ内に投入した。続いて、28質量%アンモニア水1.6gを5分間かけてフラスコ内に滴下した後、25℃で20時間攪拌を継続し、反応液を得た。反応液を12,000rpmで30分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。沈殿物にメタノール100gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、分散液を12,000rpmで30分間遠心分離し、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。引続き、この工程を2度繰り返し、沈殿物を得た。沈殿物に純水100gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、10,000rpmで10分間遠心分離し、上澄みとして固形分2.5質量%のシリカ粒子の分散液100gを得た。この操作をシリカ粒子の沈殿物が無くなるまで繰り返し行い、固形分0.12質量%のシリカ粒子の分散液を2,000g得た。
【0109】
上記で得られたシリカ粒子の分散液2,000gを限外ろ過によりシリカ濃度が3質量%になるまで濃縮した後、メタノールを加え、限外ろ過を用いて溶媒置換し、固形分2.0質量%のシリカ粒子のメタノール分散液とした。温度計、攪拌羽根を備えた300mLの4口フラスコに、シリカ粒子のメタノール分散液75g、ギ酸1.5g及びメチルトリメトキシシラン(以下、「MTMS」と略記する。)0.075gを加え、3時間加熱還流した。その後、イソプロパノールを加え、限外ろ過により溶媒置換し、シリカ粒子のイソプロパノール分散液を得た。このシリカ粒子のイソプロパノール分散液(シリカ粒子として1.5g)にHMDS0.6gを加え、4時間加熱還流した。続いて、限外ろ過を用いてイソプロパノールを加えながら溶媒置換し、表面修飾された多孔質シリカ粒子(6)の分散液を得た(固形分4.3質量%)。得られた多孔質シリカ粒子(6)の分散液中の多孔質シリカ粒子(6)の体積平均径は23nmであった。さらに、分散液から分散媒を120℃で30分間乾燥して得られた多孔質シリカ粒子(6)の細孔径分布のピークは1.8nmであり、BET法による比表面積は236m/gであった。
【0110】
(比較合成例4:多孔質シリカ(7)の合成)
温度計、攪拌羽根を備えた500mLの4口フラスコに、メタノール213.2g、純水61.3g及び28質量%アンモニア水27.4gを仕込み、攪拌により均一に混合し(B液)、内温を20℃に保った。また、別の容器でTMOS34.3g、メタノール45.1g及びラウリルアミン9.3gを均一に混合した(A液)。フラスコ内を20℃に保ちながら、A液を120分かけてB液中へ注入した。A液の注入終了後、20℃で60分間反応を継続した。反応終了後、反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄して沈殿物を取り出した。
【0111】
上記で得られた沈殿物にメタノール200gを加えて混合し懸濁液を得た。この懸濁液を10,000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを廃棄して沈殿物をメタノール洗浄した。このメタノール洗浄をさらに2度繰り返した。このようにして得た沈殿物を120℃で6時間乾燥させて白色粉末を得た。得られた白色粉末を電気炉に入れ、空気雰囲気下、25℃から2℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、600℃で3時間焼成した。焼成した粉末を冷却した後、乳鉢で粉砕することで、白色の多孔質シリカ粒子12gを得た。得られた多孔質シリカ粒子を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察したところ、粒子形状は球状であった。
【0112】
上記で得られた多孔質シリカ粒子5gをイソプロパノール44.5gと混合し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散後、湿式ジェットミル(株式会社常光製「ナノジェットバル JN−10」)を用いて、処理圧力130MPaにて30分間分散した。得られた分散液をNo.5C濾紙と桐山ロート(有限会社桐山製作所製)を用いてろ過し、固形分7.9質量%の多孔質シリカ粒子(7)の分散液を得た。この多孔質シリカ粒子(7)の分散液は、静置するとすぐに沈降した。
【0113】
上記の合成例1〜5及び比較合成例1〜4で得られたシリカ粒子の特性値についても表1に示す。なお、比較合成例4については、シリカ粒子が凝集したため、シリカ粒子の特性値を測定していない。
【0114】
【表1】
【0115】
上記の合成例1〜5及び比較合成例1〜4で得られた各種シリカ粒子を配合した活性エネルギー線硬化性組成物を下記の通り調製した。
【0116】
(実施例1)
合成例1で得られた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部(多孔質シリカ粒子(1)57質量部含有)、6官能ウレタンアクリレート(1モルのイソホロンジイソシアネートに2モルのペンタエリスリトールトリアクリレートを反応させたもの)1,200質量部、光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア754」;オキシフェニル酢酸系光重合開始剤:2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルと2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルとの混合物)60質量部及びイソプロパノール4,118質量部を均一に混合して、反射防止膜用組成物(1)を得た。
【0117】
(実施例2)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、合成例2で得られた多孔質シリカ粒子(2)の分散液731質量部(多孔質シリカ粒子(2)57質量部含有)を用いて、イソプロパノール4,118質量部を4,109質部に変更した他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(2)を得た。
【0118】
(実施例3)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、合成例3で得られた多孔質シリカ粒子(3)の分散液722質量部(多孔質シリカ粒子(3)9質量部含有)を用いた他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(3)を得た。
【0119】
(実施例4)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、合成例4で得られた多孔質シリカ粒子(4)の分散液713質量部(多孔質シリカ粒子(4)57質量部含有)を用いて、イソプロパノール4,118質量部を4,127質量部に変更した他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(4)を得た。
【0120】
(実施例5)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、合成例5で得られた多孔質シリカ粒子(5)の分散液713質量部(多孔質シリカ粒子(5)57質量部含有)を用いて、イソプロパノール4,118質量部を4,127質量部に変更した他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(5)を得た。
【0121】
(比較例1)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、比較合成例1で得られたシリカ粒子の分散液695質量部(シリカ粒子57質量部含有)を用いて、イソプロパノール4,118質量部を4,145質量部に変更した他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(6)を得た。
【0122】
(比較例2)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、比較合成例2で得られた中空シリカ粒子の分散液760質量部(中空シリカ粒子57質量部含有)を用いて、イソプロパノール4,118質量部を4,080質量部に変更した他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(7)を得た。
【0123】
(比較例3)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、比較合成例3で得られた多孔質シリカ粒子(6)の分散液1326質量部(多孔質シリカ粒子(6)57質量部含有)を用いて、イソプロパノール4118質量部を3514質量部に変更した他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(8)を得た。
【0124】
(比較例4)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、比較合成例4で得られた多孔質シリカ粒子(7)の分散液722質量部(多孔質シリカ粒子(7)57質量部含有)を用いた他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(9)を得た。なお、この例では、活性エネルギー線硬化性組成物の調製中に多孔質シリカ粒子(7)が凝集、沈降して、均一な反射防止膜用組成物が得られなかった。
【0125】
(比較例5)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、イソプロパノール665質量部(イソプロパノール合計4,783質量部)を用いた他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(10)を得た。
【0126】
[反射率測定用の硬化塗膜の作製]
上記で得られた反射防止膜用組成物(1)〜(8)及び(10)を、それぞれ厚さ2mmの黒色ABS板上に、ワイヤーバーコーター#22を用いて塗工し、25℃で1分間乾燥した後、60℃の乾燥機で5分間乾燥した。その後、紫外線硬化装置(空気雰囲気下、160Wメタルハライド灯、紫外線照射量2kJ/m)を用いて硬化させ、黒色ABS板上に硬化塗膜を作製した。なお、比較例4で得られた反射防止膜用組成物(9)については、組成物中の多孔質シリカ粒子が凝集、沈降したため、硬化塗膜の作製を行わなかった。
【0127】
[反射率の測定]
上記で得られた硬化塗膜について、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「U−4100形」)を用いて、開始波長800nm〜終了波長350nmをスキャンスピード300nm/分で走査し、サンプリング間隔0.50nmの測定条件で反射率を測定した。なお、反射率は、最も反射率が低い部分(ボトム)とした。反射率の測定結果は、表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
[断面形状観察用の反射防止フィルムの作製]
上記で得られた反射防止膜用組成物(1)〜(8)及び(10)を、それぞれ厚さ188μmの表面易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」と略記する。)上に、ワイヤーバーコーター#22を用いて塗工し、25℃で1分間乾燥した後、60℃の乾燥機で5分間乾燥した。その後、紫外線硬化装置(空気雰囲気下、メタルハライド灯、紫外線照射量2kJ/m)を用いて硬化させ、反射防止フィルムを作製した。なお、比較例4で得られた反射防止膜用組成物(9)については、組成物中の多孔質シリカ粒子が凝集したため、硬化塗膜の作製を行わなかった。
【0130】
[反射防止フィルムの断面観察]
上記で得られた反射防止フィルムをウルトラミクロトームで超薄切片を作製し、透過電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JEM−2200FS」)を使用し、加速電圧200kVで、5万倍又は10万倍で観察した。観察結果は下記の通りであった。
【0131】
(反射防止膜用組成物(1)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)と反対側の表面に多孔質シリカ粒子(1)がほぼ単層で配列した層が厚さ約100nmで形成されていた。
【0132】
(反射防止膜用組成物(2)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)と反対側の表面に多孔質シリカ粒子(2)がほぼ単層で配列した層が厚さ約150nmで形成されていた。断面写真は、図1に示す。なお、写真左側が基材側である。
【0133】
(反射防止膜用組成物(3)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)と反対側の表面に多孔質シリカ粒子(3)がほぼ単層で配列した層が厚さ約140nmで形成されていた。断面写真は、図2に示す。なお、写真左側が基材側である。
【0134】
(反射防止膜用組成物(4)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)と反対側の表面に多孔質シリカ粒子(4)がほぼ単層で配列した層が厚さ約140nmで形成されていた。断面写真は、図3に示す。なお、写真右側が基材側である。
【0135】
(反射防止膜用組成物(5)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)と反対側の表面に多孔質シリカ粒子(5)がほぼ単層で配列した層が厚さ約140nmで形成されていた。断面写真は、図4に示す。なお、写真左側が基材側である。
【0136】
(反射防止膜用組成物(6)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)と反対側の表面にシリカ粒子がほぼ単層で配列した層が厚さ約120nmで形成されていた。
【0137】
(反射防止膜用組成物(7)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)と反対側の表面に中空シリカ粒子が偏析した層が場所によって厚さが異なるものの、厚さ200〜500nmで形成されていた。また、塗膜中にも粒子の凝集や破壊された粒子が数多く見られた。断面写真は、図5に示す。なお、写真左側が基材側である。
【0138】
(反射防止膜用組成物(8)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)と反対側の表面に多孔質シリカ粒子(6)が偏析した層が場所によって厚さが異なるものの、厚さ約20〜75nmで形成されており、特に、最も基材から遠い塗膜最表面にはシリカ粒子がほぼ単層で配列した層が厚さ約20nmで形成されていた。
【0139】
(反射防止膜用組成物(10)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)上に均質な塗膜が形成されていた。
【0140】
上記の結果から、実施例1〜5の本発明の反射防止膜用組成物(1)〜(5)を用いた反射防止フィルムの反射防止層に相当する硬化塗膜の反射率は3.0〜3.4%と、比較例1〜3及び5のものの3.7〜4.2%と比較して低いことが分かった。また、この低反射である理由として、その塗膜の断面観察から、低屈折率層は、反射防止を効率的に実現できるとされる100nm付近である100〜150nmの膜厚を有する多孔質シリカ粒子が一層配列した低屈折率層が形成されていることが分かった。
【0141】
一方、比較例1は、シリカ粒子表面に細孔を有しない中実シリカ粒子を用いた例であるが、塗膜表面にシリカ粒子が一層配列した厚さ約120nmの層が形成されたが、反射率が3.7%と高かった。
【0142】
比較例2は、中空シリカ粒子を用いた例であるが、シリカ粒子の凝集を解膠するために、湿式ジェットミルで分散した時点で中空シリカ粒子の殻が破壊する問題があることが分かった。この中空シリカ粒子の殻が破壊により、中空シリカ粒子が低屈折率を示さないため、反射率が4.0%と高かった。
【0143】
比較例3は、本願発明で用いる多孔質シリカ粒子の体積平均径の下限である80nmを下回る23nmのものを用いた例であるが、多孔質シリカ粒子が塗膜表面に偏析するものの、厚さ約20〜75nmで形成されており、場所によって厚さが大きく異なる問題があることが分かった。また、反射率も4.0%と高かった。
【0144】
比較例5は、多孔質シリカ粒子等の低屈折率物質を用いなかったため、反射率が4.2%と高かった。
図1
図2
図3
図4
図5