【実施例】
【0080】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。なお、合成した多孔質シリカ粒子の特性値については、下記の方法により測定した。
【0081】
[粒子形状]
粒子形状は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)(日本電子社製「JSM6700」)を用いて、5万倍で観察することで確認した。
【0082】
[体積平均径及び変動係数]
体積平均径は、レーザードップラー法を用いた粒度分布計(大塚電子株式会社製「ゼータ電位・粒径測定システム ELSZ−2」)を用いて測定した。また、変動係数は、同装置で測定した体積平均径及び標準偏差から、下記式(1)によって求めた。なお、下記式(1)中の標準偏差は、下記式(2)で求めた。また、下記式(2)中のd84%は体積粒度分布における84%径を表し、d16%は体積粒度分布における16%径を表す。
【0083】
【数2】
【0084】
[細孔径分布のピーク]
細孔径分布のピークは、細孔分布測定装置(株式会社島津製作所「ASAP2020」)を用いて測定して得られた細孔分布のピーク値とした。
【0085】
[比表面積]
比表面積は、細孔分布測定装置(株式会社島津製作所「ASAP2020」)を用いてBET法により測定した。
【0086】
(調製例1:多孔質シリカ粒子(1)の合成)
温度計、攪拌羽根を備えた500mLの4口フラスコに、メタノール213.2g、純水61.3g及び28質量%アンモニア水27.4gを仕込み、攪拌により均一に混合し(B液)、内温を20℃に保った。また、別の容器でテトラメトキシシラン(以下、「TMOS」と略記する。)34.3g、メタノール45.1g及びオクチルアミン6.5gを均一に混合した(A液)。フラスコ内を20℃に保って撹拌しながら、を120分かけてB液中へ注入した。A液の注入終了後、20℃で60分間反応を継続した。反応終了後、反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄して沈殿物を取り出した。
【0087】
上記で得られた沈殿物にメタノール200gを加えて撹拌混合し懸濁液を得た。この懸濁液を10,000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを廃棄して沈殿物をメタノール洗浄した。このメタノール洗浄をさらに2度繰り返した。このようにして得られた沈殿物を120℃で6時間乾燥させて白色粉末を得た。得られた白色粉末を電気炉に入れ、空気雰囲気下、25℃から2℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、600℃で3時間焼成した。焼成した粉末を冷却した後、乳鉢で粉砕することで、白色の多孔質シリカ粒子12.5gを得た。得られた多孔質シリカ粒子を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察したところ、粒子形状は球状であった。また、得られた多孔質シリカ粒子(1)の細孔径分布のピークは1.5nmであり、BET法による比表面積は43m
2/gであった。
【0088】
上記で得られた多孔質シリカ粒子5gをイソプロパノール44.5gと混合し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散後、分散液に酢酸0.5g及びヘキサメチルジシラザン(以下、「HMDS」と略記する。)0.5gを加え、湿式ジェットミル(株式会社常光製「ナノジェットバル JN−10」)を用いて、処理圧力130MPaにて30分間分散した。得られた分散液を、温度計、攪拌羽根を備えた200mLの4口フラスコに仕込み、60分間加熱還流した。反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。沈殿物にイソプロパノール50gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、分散液をNo.5C濾紙と桐山ロート(有限会社桐山製作所製)を用いてろ過し、固形分7.9質量%の多孔質シリカ粒子(1)の分散液を得た。
【0089】
上記で得られた多孔質シリカ粒子(1)の分散液中の多孔質シリカ粒子(1)の体積平均径は102nmであり、変動係数は28%であった。
【0090】
(合成例2:多孔質シリカ粒子(2)の合成)
温度計、攪拌羽根を備えた500mLの4口フラスコに、メタノール213.2g、純水61.3g及び28質量%アンモニア水27.4gを仕込み、攪拌により均一に混合し(B液)、内温を20℃に保った。また、別の容器でTMOS34.3g、メタノール45.1g及びデシルアミン39.3gを均一に混合した(A液)。フラスコ内を20℃に保って撹拌しながら、A液を120分かけてB液中へ注入した。A液の注入終了後、20℃で60分間反応を継続した。反応終了後、反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄して沈殿物を取り出した。
【0091】
上記で得られた沈殿物にメタノール200gを加えて撹拌混合し懸濁液を得た。この懸濁液を10,000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを廃棄して沈殿物をメタノール洗浄した。このメタノール洗浄をさらに2度繰り返した。このようにして得た沈殿物を120℃で6時間乾燥させて白色粉末を得た。得られた白色粉末を電気炉に入れ、空気雰囲気下、25℃から2℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、600℃で3時間焼成した。焼成した粉末を冷却した後、乳鉢で粉砕することで、白色の多孔質シリカ粒子12.1gを得た。得られた多孔質シリカ粒子を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察したところ、粒子形状は球状であった。また、得られた多孔質シリカ粒子(2)の細孔径分布のピークは1.8nmであり、BET法による比表面積は757m
2/gであった。
【0092】
上記で得られた多孔質シリカ粒子5gをイソプロパノール44.5gと混合し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散後、分散液に酢酸0.5g及びHMDS0.5gを加え、湿式ジェットミル(株式会社常光製「ナノジェットバル JN−10」)を用いて、処理圧力130MPaにて30分間分散した。得られた分散液を、温度計、攪拌羽根を備えた200mLの4口フラスコに仕込み、60分間加熱還流した。反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。沈殿物にイソプロパノール50.0gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、分散液をNo.5C濾紙と桐山ロート(有限会社桐山製作所製)を用いてろ過し、固形分7.8質量%の多孔質シリカ粒子(2)の分散液を得た。
【0093】
得られた多孔質シリカ粒子(2)の分散液中の多孔質シリカ粒子(2)の体積平均径は148nmであり、変動係数は28%であった。
【0094】
(合成例3:多孔質シリカ粒子(3)の合成)
温度計、攪拌羽根を備えた500mLの4口フラスコに、メタノール213.2g、純水61.3g及び28質量%アンモニア水27.4gを仕込み、攪拌により均一に混合し(B液)、内温を20℃に保った。また、別の容器でTMOS34.3g、メタノール45.1g及びラウリルアミン9.3gを均一に混合した(A液)。フラスコ内を20℃に保ちながら、A液を120分かけてB液中へ注入した。A液の注入終了後、20℃で60分間反応を継続した。反応終了後、反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄して沈殿物を取り出した。
【0095】
上記で得られた沈殿物にメタノール200gを加えて混合し懸濁液を得た。この懸濁液を10,000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを廃棄して沈殿物をメタノール洗浄した。このメタノール洗浄をさらに2度繰り返した。このようにして得た沈殿物を120℃で6時間乾燥させて白色粉末を得た。得られた白色粉末を電気炉に入れ、空気雰囲気下、25℃から2℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、600℃で3時間焼成した。焼成した粉末を冷却した後、乳鉢で粉砕することで、白色の多孔質シリカ粒子12gを得た。得られた多孔質シリカ粒子を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察したところ、粒子形状は球状であった。また、得られた多孔質シリカ粒子(3)の細孔径分布のピークは1.8nmであり、BET法による比表面積は216m
2/gであった。
【0096】
上記で得られた多孔質シリカ粒子5gをイソプロパノール44.5gと混合し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散後、分散液に酢酸0.5g及びHMDS0.5gを加え、湿式ジェットミル(株式会社常光製「ナノジェットバル JN−10」)を用いて、処理圧力130MPaにて30分間分散した。得られた分散液を、温度計、攪拌羽根を備えた200mLの4口フラスコに仕込み、60分間加熱還流した。反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。沈殿物にイソプロパノール50gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、分散液をNo.5C濾紙と桐山ロート(有限会社桐山製作所製)を用いてろ過し、固形分7.9質量%の多孔質シリカ粒子(3)の分散液を得た。
【0097】
得られた多孔質シリカ粒子(3)の分散液中の多孔質シリカ粒子(3)の体積平均径は139nmであり、変動係数は22%であった。
【0098】
(合成例4:多孔質シリカ粒子(4)の合成)
合成例3で得られた焼成後の多孔質シリカ粒子5gをイソプロパノール44.5gと混合し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散後、分散液に酢酸0.5g及びHMDS2.1gを加え、湿式ジェットミル(株式会社常光製「ナノジェットバル JN−10」)を用いて、処理圧力130MPaにて30分間分散した。得られた分散液を、温度計、攪拌羽根を備えた200mLの4口フラスコに仕込み、60分間加熱還流した。反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。沈殿物にイソプロパノール50gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、分散液をNo.5C濾紙と桐山ロート(有限会社桐山製作所製)を用いてろ過し、固形分8.0質量%の多孔質シリカ粒子(4)の分散液を得た。
【0099】
得られた多孔質シリカ粒子(4)の分散液中の多孔質シリカ粒子(4)の体積平均径は127nmであり、変動係数は32%であった。
【0100】
(合成例5:多孔質シリカ粒子(5)の合成)
合成例3で得られた焼成後の多孔質シリカ粒子5gをイソプロパノール44.5gと混合し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散後、分散液に酢酸0.5g及びHMDS0.03gを加え、湿式ジェットミル(株式会社常光製「ナノジェットバル JN−10」)を用いて、処理圧力130MPaにて30分間分散した。得られた分散液を、温度計、攪拌羽根を備えた200mLの4口フラスコに仕込み、60分間加熱還流した。反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。沈殿物にイソプロパノール50gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、分散液をNo.5C濾紙と桐山ロート(有限会社桐山製作所製)を用いてろ過し、固形分8.0質量%の多孔質シリカ粒子(5)の分散液を得た。
【0101】
得られた多孔質シリカ粒子(5)の分散液中の多孔質シリカ粒子(5)の体積平均径は110nmであり、変動係数は33%であった。
【0102】
(比較合成例1:シリカ粒子の合成)
温度計、攪拌羽根を備えた500mLの4口フラスコに、メタノール213.2g、純水61.3g及び28質量%アンモニア水27.4gを仕込み、攪拌により均一に混合し(B液)、内温を20℃に保った。また、別の容器でTMOS34.3g及びメタノール45.1gを均一に混合した(A液)。フラスコ内を20℃に保って撹拌しながら、A液を120分かけてB液中へ注入した。注入終了後、20℃で60分間反応を継続した。反応終了後、反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄して沈殿物を取り出した。
【0103】
上記で得られた沈殿物にメタノール200gを加えて撹拌混合し懸濁液を得た。この懸濁液を10,000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを廃棄して沈殿物をメタノール洗浄した。このメタノール洗浄をさらに2度繰り返した。このようにして得た沈殿物を120℃で6時間乾燥させて白色粉末を得た。得られた白色粉末を電気炉に入れ、空気雰囲気下、25℃から2℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、600℃で3時間焼成した。焼成した粉末を冷却した後、乳鉢で粉砕することで、白色のシリカ粒子13.3gを得た。得られた粒子を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察したところ、粒子形状は球状であった。
【0104】
上記で得られたシリカ粒子5gをイソプロパノール44.5gと混合し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散後、分散液に酢酸0.5g及びHMDS0.5gを加え、湿式ジェットミル(株式会社常光製「ナノジェットバル JN−10」)を用いて、処理圧力130MPaにて30分間分散した。得られた分散液を、温度計、攪拌羽根を備えた200mLの4口フラスコに仕込み、60分間加熱還流した。反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。沈殿物にイソプロパノール50gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、分散液をNo.5C濾紙と桐山ロート(有限会社桐山製作所製)を用いてろ過し、固形分8.2質量%のシリカ粒子の分散液を得た。なお、このシリカ粒子は、その表面に細孔を有しない中実シリカであり、BET法による比表面積は29m
2/gであった。
【0105】
上記で得られたシリカ粒子の分散液中のシリカ粒子の体積平均径は118nmであり、変動係数は27%であった。
【0106】
(比較合成例2:中空シリカ粒子の表面修飾)
中空シリカ粒子(一次粒子径100nm、空隙率60%、比表面積160m
2/g)5gをイソプロパノール44.5gと混合し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散後、分散液に酢酸0.5g及びHMDS0.5gを加え、湿式ジェットミル(株式会社常光製「ナノジェットバル JN−10」)を用いて、処理圧力130MPaにて30分間分散した。得られた分散液を、温度計、攪拌羽根を備えた200mLの4口フラスコに仕込み、60分間加熱還流した。反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。沈殿物にイソプロパノール50gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、分散液をNo.5C濾紙と桐山ロート(有限会社桐山製作所製)を用いてろ過し、固形分7.5質量%の中空シリカ粒子の分散液を得た。
【0107】
上記で得られた中空シリカ粒子の分散液中の中空シリカ粒子の体積平均径は196nmであり、変動係数は37%であった。さらに、得られた中空シリカ粒子を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察したところ、凝集体及び中空シリカ粒子の殻が破壊された粒子が見られた。なお、この中空シリカについては粒子が破壊されているため、比表面積は未測定とした。
【0108】
(比較合成例3:多孔質シリカ粒子(6)の合成)
温度計、攪拌羽根を備えた300mLの4口フラスコに、n−ヘプタン68.4g及びビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム10.7gを仕込み、25℃で攪拌しながら溶解させた後、15質量%コロイダルシリカ水分散液(日産化学工業株式会社製「スノーテックス20」)20.6g及びメチルトリエトキシシラン2.9gをフラスコ内に投入した。続いて、28質量%アンモニア水1.6gを5分間かけてフラスコ内に滴下した後、25℃で20時間攪拌を継続し、反応液を得た。反応液を12,000rpmで30分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。沈殿物にメタノール100gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、分散液を12,000rpmで30分間遠心分離し、上澄み液を廃棄し、沈殿物を得た。引続き、この工程を2度繰り返し、沈殿物を得た。沈殿物に純水100gを加え、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散した後、10,000rpmで10分間遠心分離し、上澄みとして固形分2.5質量%のシリカ粒子の分散液100gを得た。この操作をシリカ粒子の沈殿物が無くなるまで繰り返し行い、固形分0.12質量%のシリカ粒子の分散液を2,000g得た。
【0109】
上記で得られたシリカ粒子の分散液2,000gを限外ろ過によりシリカ濃度が3質量%になるまで濃縮した後、メタノールを加え、限外ろ過を用いて溶媒置換し、固形分2.0質量%のシリカ粒子のメタノール分散液とした。温度計、攪拌羽根を備えた300mLの4口フラスコに、シリカ粒子のメタノール分散液75g、ギ酸1.5g及びメチルトリメトキシシラン(以下、「MTMS」と略記する。)0.075gを加え、3時間加熱還流した。その後、イソプロパノールを加え、限外ろ過により溶媒置換し、シリカ粒子のイソプロパノール分散液を得た。このシリカ粒子のイソプロパノール分散液(シリカ粒子として1.5g)にHMDS0.6gを加え、4時間加熱還流した。続いて、限外ろ過を用いてイソプロパノールを加えながら溶媒置換し、表面修飾された多孔質シリカ粒子(6)の分散液を得た(固形分4.3質量%)。得られた多孔質シリカ粒子(6)の分散液中の多孔質シリカ粒子(6)の体積平均径は23nmであった。さらに、分散液から分散媒を120℃で30分間乾燥して得られた多孔質シリカ粒子(6)の細孔径分布のピークは1.8nmであり、BET法による比表面積は236m
2/gであった。
【0110】
(比較合成例4:多孔質シリカ(7)の合成)
温度計、攪拌羽根を備えた500mLの4口フラスコに、メタノール213.2g、純水61.3g及び28質量%アンモニア水27.4gを仕込み、攪拌により均一に混合し(B液)、内温を20℃に保った。また、別の容器でTMOS34.3g、メタノール45.1g及びラウリルアミン9.3gを均一に混合した(A液)。フラスコ内を20℃に保ちながら、A液を120分かけてB液中へ注入した。A液の注入終了後、20℃で60分間反応を継続した。反応終了後、反応液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を廃棄して沈殿物を取り出した。
【0111】
上記で得られた沈殿物にメタノール200gを加えて混合し懸濁液を得た。この懸濁液を10,000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを廃棄して沈殿物をメタノール洗浄した。このメタノール洗浄をさらに2度繰り返した。このようにして得た沈殿物を120℃で6時間乾燥させて白色粉末を得た。得られた白色粉末を電気炉に入れ、空気雰囲気下、25℃から2℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、600℃で3時間焼成した。焼成した粉末を冷却した後、乳鉢で粉砕することで、白色の多孔質シリカ粒子12gを得た。得られた多孔質シリカ粒子を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察したところ、粒子形状は球状であった。
【0112】
上記で得られた多孔質シリカ粒子5gをイソプロパノール44.5gと混合し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「US−600T」)を用いて、出力300Wで5分間分散後、湿式ジェットミル(株式会社常光製「ナノジェットバル JN−10」)を用いて、処理圧力130MPaにて30分間分散した。得られた分散液をNo.5C濾紙と桐山ロート(有限会社桐山製作所製)を用いてろ過し、固形分7.9質量%の多孔質シリカ粒子(7)の分散液を得た。この多孔質シリカ粒子(7)の分散液は、静置するとすぐに沈降した。
【0113】
上記の合成例1〜5及び比較合成例1〜4で得られたシリカ粒子の特性値についても表1に示す。なお、比較合成例4については、シリカ粒子が凝集したため、シリカ粒子の特性値を測定していない。
【0114】
【表1】
【0115】
上記の合成例1〜5及び比較合成例1〜4で得られた各種シリカ粒子を配合した活性エネルギー線硬化性組成物を下記の通り調製した。
【0116】
(実施例1)
合成例1で得られた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部(多孔質シリカ粒子(1)57質量部含有)、6官能ウレタンアクリレート(1モルのイソホロンジイソシアネートに2モルのペンタエリスリトールトリアクリレートを反応させたもの)1,200質量部、光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア754」;オキシフェニル酢酸系光重合開始剤:2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルと2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルとの混合物)60質量部及びイソプロパノール4,118質量部を均一に混合して、反射防止膜用組成物(1)を得た。
【0117】
(実施例2)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、合成例2で得られた多孔質シリカ粒子(2)の分散液731質量部(多孔質シリカ粒子(2)57質量部含有)を用いて、イソプロパノール4,118質量部を4,109質部に変更した他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(2)を得た。
【0118】
(実施例3)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、合成例3で得られた多孔質シリカ粒子(3)の分散液722質量部(多孔質シリカ粒子(3)9質量部含有)を用いた他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(3)を得た。
【0119】
(実施例4)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、合成例4で得られた多孔質シリカ粒子(4)の分散液713質量部(多孔質シリカ粒子(4)57質量部含有)を用いて、イソプロパノール4,118質量部を4,127質量部に変更した他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(4)を得た。
【0120】
(実施例5)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、合成例5で得られた多孔質シリカ粒子(5)の分散液713質量部(多孔質シリカ粒子(5)57質量部含有)を用いて、イソプロパノール4,118質量部を4,127質量部に変更した他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(5)を得た。
【0121】
(比較例1)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、比較合成例1で得られたシリカ粒子の分散液695質量部(シリカ粒子57質量部含有)を用いて、イソプロパノール4,118質量部を4,145質量部に変更した他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(6)を得た。
【0122】
(比較例2)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、比較合成例2で得られた中空シリカ粒子の分散液760質量部(中空シリカ粒子57質量部含有)を用いて、イソプロパノール4,118質量部を4,080質量部に変更した他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(7)を得た。
【0123】
(比較例3)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、比較合成例3で得られた多孔質シリカ粒子(6)の分散液1326質量部(多孔質シリカ粒子(6)57質量部含有)を用いて、イソプロパノール4118質量部を3514質量部に変更した他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(8)を得た。
【0124】
(比較例4)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、比較合成例4で得られた多孔質シリカ粒子(7)の分散液722質量部(多孔質シリカ粒子(7)57質量部含有)を用いた他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(9)を得た。なお、この例では、活性エネルギー線硬化性組成物の調製中に多孔質シリカ粒子(7)が凝集、沈降して、均一な反射防止膜用組成物が得られなかった。
【0125】
(比較例5)
実施例(1)で用いた多孔質シリカ粒子(1)の分散液722質量部に代えて、イソプロパノール665質量部(イソプロパノール合計4,783質量部)を用いた他は実施例1と同様に行い、反射防止膜用組成物(10)を得た。
【0126】
[反射率測定用の硬化塗膜の作製]
上記で得られた反射防止膜用組成物(1)〜(8)及び(10)を、それぞれ厚さ2mmの黒色ABS板上に、ワイヤーバーコーター#22を用いて塗工し、25℃で1分間乾燥した後、60℃の乾燥機で5分間乾燥した。その後、紫外線硬化装置(空気雰囲気下、160Wメタルハライド灯、紫外線照射量2kJ/m
2)を用いて硬化させ、黒色ABS板上に硬化塗膜を作製した。なお、比較例4で得られた反射防止膜用組成物(9)については、組成物中の多孔質シリカ粒子が凝集、沈降したため、硬化塗膜の作製を行わなかった。
【0127】
[反射率の測定]
上記で得られた硬化塗膜について、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「U−4100形」)を用いて、開始波長800nm〜終了波長350nmをスキャンスピード300nm/分で走査し、サンプリング間隔0.50nmの測定条件で反射率を測定した。なお、反射率は、最も反射率が低い部分(ボトム)とした。反射率の測定結果は、表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
[断面形状観察用の反射防止フィルムの作製]
上記で得られた反射防止膜用組成物(1)〜(8)及び(10)を、それぞれ厚さ188μmの表面易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」と略記する。)上に、ワイヤーバーコーター#22を用いて塗工し、25℃で1分間乾燥した後、60℃の乾燥機で5分間乾燥した。その後、紫外線硬化装置(空気雰囲気下、メタルハライド灯、紫外線照射量2kJ/m
2)を用いて硬化させ、反射防止フィルムを作製した。なお、比較例4で得られた反射防止膜用組成物(9)については、組成物中の多孔質シリカ粒子が凝集したため、硬化塗膜の作製を行わなかった。
【0130】
[反射防止フィルムの断面観察]
上記で得られた反射防止フィルムをウルトラミクロトームで超薄切片を作製し、透過電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JEM−2200FS」)を使用し、加速電圧200kVで、5万倍又は10万倍で観察した。観察結果は下記の通りであった。
【0131】
(反射防止膜用組成物(1)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)と反対側の表面に多孔質シリカ粒子(1)がほぼ単層で配列した層が厚さ約100nmで形成されていた。
【0132】
(反射防止膜用組成物(2)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)と反対側の表面に多孔質シリカ粒子(2)がほぼ単層で配列した層が厚さ約150nmで形成されていた。断面写真は、
図1に示す。なお、写真左側が基材側である。
【0133】
(反射防止膜用組成物(3)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)と反対側の表面に多孔質シリカ粒子(3)がほぼ単層で配列した層が厚さ約140nmで形成されていた。断面写真は、
図2に示す。なお、写真左側が基材側である。
【0134】
(反射防止膜用組成物(4)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)と反対側の表面に多孔質シリカ粒子(4)がほぼ単層で配列した層が厚さ約140nmで形成されていた。断面写真は、
図3に示す。なお、写真右側が基材側である。
【0135】
(反射防止膜用組成物(5)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)と反対側の表面に多孔質シリカ粒子(5)がほぼ単層で配列した層が厚さ約140nmで形成されていた。断面写真は、
図4に示す。なお、写真左側が基材側である。
【0136】
(反射防止膜用組成物(6)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)と反対側の表面にシリカ粒子がほぼ単層で配列した層が厚さ約120nmで形成されていた。
【0137】
(反射防止膜用組成物(7)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)と反対側の表面に中空シリカ粒子が偏析した層が場所によって厚さが異なるものの、厚さ200〜500nmで形成されていた。また、塗膜中にも粒子の凝集や破壊された粒子が数多く見られた。断面写真は、
図5に示す。なお、写真左側が基材側である。
【0138】
(反射防止膜用組成物(8)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)と反対側の表面に多孔質シリカ粒子(6)が偏析した層が場所によって厚さが異なるものの、厚さ約20〜75nmで形成されており、特に、最も基材から遠い塗膜最表面にはシリカ粒子がほぼ単層で配列した層が厚さ約20nmで形成されていた。
【0139】
(反射防止膜用組成物(10)を用いた反射防止フィルムの断面観察結果)
PETフィルム(基材)上に均質な塗膜が形成されていた。
【0140】
上記の結果から、実施例1〜5の本発明の反射防止膜用組成物(1)〜(5)を用いた反射防止フィルムの反射防止層に相当する硬化塗膜の反射率は3.0〜3.4%と、比較例1〜3及び5のものの3.7〜4.2%と比較して低いことが分かった。また、この低反射である理由として、その塗膜の断面観察から、低屈折率層は、反射防止を効率的に実現できるとされる100nm付近である100〜150nmの膜厚を有する多孔質シリカ粒子が一層配列した低屈折率層が形成されていることが分かった。
【0141】
一方、比較例1は、シリカ粒子表面に細孔を有しない中実シリカ粒子を用いた例であるが、塗膜表面にシリカ粒子が一層配列した厚さ約120nmの層が形成されたが、反射率が3.7%と高かった。
【0142】
比較例2は、中空シリカ粒子を用いた例であるが、シリカ粒子の凝集を解膠するために、湿式ジェットミルで分散した時点で中空シリカ粒子の殻が破壊する問題があることが分かった。この中空シリカ粒子の殻が破壊により、中空シリカ粒子が低屈折率を示さないため、反射率が4.0%と高かった。
【0143】
比較例3は、本願発明で用いる多孔質シリカ粒子の体積平均径の下限である80nmを下回る23nmのものを用いた例であるが、多孔質シリカ粒子が塗膜表面に偏析するものの、厚さ約20〜75nmで形成されており、場所によって厚さが大きく異なる問題があることが分かった。また、反射率も4.0%と高かった。
【0144】
比較例5は、多孔質シリカ粒子等の低屈折率物質を用いなかったため、反射率が4.2%と高かった。