(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書においては、以下のように定義する。
微細パターンないし反転パターンとは、幅、長さおよび高さ(深さ)のうち最小の寸法が1nm〜100μmである1つ以上の凸部および/または凹部からなる形状をいう。
硬化物とは、光硬化性薄膜に光を照射して、光硬化性薄膜に含まれる光硬化性化合物の一部または全部を硬化させたものをいう。
(メタ)アクリロイルオキシ基は、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基をいう。
(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートをいう。
【0014】
<微細パターンを表面に有する物品の製造方法>
本発明の微細パターンを表面に有する物品の製造方法は、下記の方法(I)または下記の方法(II)である。
【0015】
方法(I):下記の工程(a)、工程(b)、工程(c)、工程(d)および工程(e)を有する方法。
(a)
図1に示すように、塗工用組成物20を硬質基材10の表面に塗布する工程。
(b)
図1に示すように、工程(a)の後、後述する方法によって測定される粘度が10000mPa・s以上となるように塗工用組成物20を高粘度化し、硬質モールド30の反転パターン32(凹部)の深さB以下の厚さAの光硬化性薄膜22を形成する工程。
(c)
図1に示すように、工程(b)の後、微細パターン26の反転パターン32を表面に有する硬質モールド30と、硬質基材10との間に、光硬化性薄膜22を挟んだ状態にて光を照射し、光硬化性薄膜22を硬化させて硬化物24とする工程。
(d)
図1に示すように、工程(c)の後、硬化物24から硬質モールド30を分離して、硬化物24からなる微細パターン26(凸部)を表面に有する物品を得る工程。
(e)
図1に示すように、工程(d)の後、硬化物24からなる微細パターン26をレジストパターンとしてエッチングを行い、硬質基材10の表面に微細パターン12を直接形成する工程。
【0016】
方法(II):下記の工程(a’)、工程(b’)、工程(c)、工程(d)および工程(e)を有する方法。
(a’)
図1に示すように、粘度が10000mPa・s以上の光硬化性化合物と溶媒とを含む塗工用組成物20を硬質基材10の表面に塗布する工程。
(b’)
図1に示すように、工程(a’)の後、塗工用組成物20から溶媒を除去し、硬質モールド30の反転パターン32(凹部)の深さB以下の厚さAの光硬化性薄膜22を形成する工程。
(c)
図1に示すように、工程(b’)の後、微細パターン26の反転パターン32を表面に有する硬質モールド30と、硬質基材10との間に、光硬化性薄膜22を挟んだ状態にて光を照射し、光硬化性薄膜22を硬化させて硬化物24とする工程。
(d)
図1に示すように、工程(c)の後、硬化物24から硬質モールド30を分離して、硬化物24からなる微細パターン26(凸部)を表面に有する物品を得る工程。
(e)
図1に示すように、工程(d)の後、硬化物24からなる微細パターン26をレジストパターンとしてエッチングを行い、硬質基材10の表面に微細パターン12を直接形成する工程。
【0017】
〔方法(I)〕
(工程(a))
硬質基材10の表面に塗工用組成物20を塗布する。
【0018】
硬質基材10は、硬質材料からなる基材である。硬質材料は、ヤング率が30GPa以上の材料であることが好ましい。軟質基材(たとえば、樹脂フィルム等)の場合、光硬化性化合物20の粘度が低くても、残膜28の厚さが不均一になりにくく、かつ微細パターン26(凸部)や残膜28に気泡が混入しにくい、すなわち本発明における課題が存在しないため、本発明における基材からは除外する。
硬質材料としては、単結晶シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン、窒化珪素、窒化アルミニウム、石英、ガラス、シリコンカーバイド、サファイア、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、金属(アルミニウム、ニッケル、銅等)、金属酸化物(アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等)、およびこれらの基材の表面に酸化物層、金属層(クロム、アルミニウム、ニッケル、モリブデン、タンタル、タングステン、ITO、酸化錫、金、銀、銅、白金、チタン等を主成分とするもの)を形成したもの等が挙げられる。
【0019】
硬質基材10は、塗工用組成物20との密着性に優れる点から、表面処理されていてもよい。表面処理としては、プライマー塗布処理、オゾン処理、紫外線洗浄処理、プラズマエッチング処理、コロナ処理等が挙げられる。プライマーとしては、シランカップリング剤、アルコキシシラン、シラザン等が挙げられる。
硬質基材10および硬質モールド30のうち少なくとも一方は、光重合開始剤が作用する波長の光を40%以上透過する材料とする。
【0020】
塗工用組成物20は、光硬化性化合物を含み、必要に応じて含フッ素界面活性剤、光重合開始剤、溶媒、他の添加剤を含む。
【0021】
光硬化性化合物としては、硬化速度が速く、硬化物の透明性が高い点から、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物が好ましい。
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(以下、(メタ)アクリレート系化合物とも記す。)としては、1分子あたり(メタ)アクリロイルオキシ基を1〜6個有する化合物が好ましく、硬化物が硬くなり過ぎない点から、1分子あたり(メタ)アクリロイルオキシ基を1〜3個有する化合物が特に好ましい。
【0022】
(メタ)アクリレート系化合物は、比較的低分子の化合物(以下、アクリレート系モノマーと記す。)であってもよく、繰り返し単位を有する比較的高分子量の化合物(以下、(メタ)アクリレート系オリゴマーと記す。)であってもよい。
(メタ)アクリレート系化合物としては、(メタ)アクリレート系モノマーの1種以上からなるもの、(メタ)アクリレート系オリゴマーの1種以上からなるもの、(メタ)アクリレート系モノマーの1種以上と(メタ)アクリレート系オリゴマーの1種以上とからなるものが挙げられる。
【0023】
塗工用組成物20は、離型性の点から、含フッ素界面活性剤を含むことが好ましい。
含フッ素界面活性剤としては、フッ素含有量が10〜70質量%の含フッ素界面活性剤が好ましく、フッ素含有量が10〜40質量%の含フッ素界面活性剤がより好ましい。含フッ素界面活性剤は、水溶性であってもよく、脂溶性であってもよい。
【0024】
含フッ素界面活性剤としては、アニオン性含フッ素界面活性剤、カチオン性含フッ素界面活性剤、両性含フッ素界面活性剤、またはノニオン性含フッ素界面活性剤が好ましく、光硬化性組成物における相溶性、および硬化樹脂における分散性の点から、ノニオン性含フッ素界面活性剤がより好ましい。
【0025】
塗工用組成物20は、光硬化性の点から、光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤、α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α−アシルオキシムエステル、ベンジル−(o−エトキシカルボニル)−α−モノオキシム、アシルホスフィンオキシド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジアルキルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシピバレート等が挙げられ、感度および相溶性の点から、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤またはベンゾフェノン系光重合開始剤が好ましい。
【0026】
塗工用組成物20は、粘度を低く調整しやすい点から、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、ケトン類、アルコール類、環式エーテル類、エステル類等が挙げられる。
塗工用組成物20は、光増感剤、重合禁止剤、樹脂、金属酸化物微粒子、炭素化合物、金属微粒子、他の有機化合物等の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0027】
塗工用組成物20の粘度は、1000mPa・s以下が好ましく、200mPa・s以下がより好ましい。粘度が1000mPa・s以下であれば、塗工用組成物20の塗布性が良好となり、また、均一な厚さの塗膜を形成しやすい。塗工用光硬化性組成物20の粘度は、塗膜の形状の安定性の点からは、1mPa・s以上が好ましい。
塗工用組成物20の粘度は、塗布前にE型粘度計によって測定した、工程(a)における温度と同じ温度(たとえば、室温(25℃))における粘度である。
【0028】
塗工用組成物20の塗布方法としては、インクジェット法、ポッティング法、スピンコート法、ロールコート法、キャスト法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法等が挙げられる。
【0029】
塗工用組成物20の塗布量は、塗工用組成物20を高粘度化した際に、反転パターン32(凹部)の深さB以下の厚さAの光硬化性薄膜22を形成できる程度の厚さとすることが好ましい。
【0030】
塗工用組成物20の塗布は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。また、塗工用組成物20が感光しない環境(イエロールーム等)で行うことが好ましい。また、空気中で行ってもよく、窒素雰囲気、二酸化炭素雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。
【0031】
(工程(b))
塗工用組成物20を高粘度化し、光硬化性薄膜22を形成する。
【0032】
高粘度化の方法としては、加熱処理、光照射等が挙げられる。たとえば、加熱処理の場合、塗工用組成物20に含まれる溶媒が揮発し、かつ塗工用組成物20に含まれる光硬化性化合物の一部が硬化することによって、塗工用組成物20が高粘度化する。
高粘度化は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。また、空気中で行ってもよく、窒素雰囲気、二酸化炭素雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。
【0033】
塗工用組成物20の高粘度化は、下記の方法によって測定される粘度が10000mPa・s以上となる光硬化性薄膜が形成されるような条件(温度、時間等)と同じ条件にて行う。
工程(c)において硬質モールド30と硬質基材10との間に光硬化性薄膜22を挟む際の温度と同じ温度(たとえば、室温(25℃))にて、たて10mm、よこ10mmの石英板を光硬化性薄膜に0.2μm/秒の一定速度で押し付けながら押し付ける圧力の時間変化を測定し、下式(1)から粘度を求める。
粘度[Pa・s]=1×10
6[Pa]×t[s] ・・・(1)。
ただし、tは、押し付ける圧力が1MPaに到達するまでの時間である。
【0034】
前記粘度が10000mPa・s以上となるように塗工用組成物20を高粘度化すれば、形成される光硬化性薄膜22の粘度もおよそ10000mPa・s以上となることが推定される。このような高粘度の光硬化性薄膜22であれば、残膜28の厚さの均一性が高くなりやすく、かつ微細パターン26(凸部)や残膜28に気泡が混入しにくい。前記粘度は、12000mPa・s以上が好ましい。前記粘度は、硬質モールド30の反転パターン32(凹部)に光硬化性化合物が充填されやすい点からは、4500000000mPa・s以下が好ましい。
【0035】
高粘度化の条件は、具体的には下記の手順にて、本工程の前にあらかじめ決定しておくことが好ましい。
厚さ525μmの4インチシリコン基板の表面に、塗工用組成物をスピンコート法によって塗布し、所定の条件(温度、時間等)にて高粘度化を行う。塗工用組成物の塗膜の厚さは、高粘度化後の光硬化性薄膜の厚さが90nm以上になるようにあらかじめ調整する。
光硬化性薄膜付きのシリコン基板を、ロードセル分解能:10N、プレス軸の移動分解能:50nmのナノインプリント装置に取り付ける。
ナノインプリント装置のモールド取付けステージに、石英板(たて:10mm、よこ:10mm、厚さ:1mm、微細パターンなし)を取り付ける。
工程(c)において硬質モールド30と硬質基材10との間に光硬化性薄膜22を挟む際の温度と同じ温度(たとえば、室温(25℃))にて、石英板を光硬化性薄膜に0.2μm/秒の一定速度で押し付けながら、ロードセルが検出した圧力の時間変化を0.1秒間隔で測定する。
時間に対する圧力のグラフを作成し、圧力が上昇し始めてから、圧力が1MPaに到達するまでの時間tを読み取り、前記式(1)から所定の条件(温度、時間等)にて高粘度化を行った後の光硬化性薄膜の粘度を求める。
【0036】
光硬化性薄膜22の厚さAは、硬質モールド30の反転パターン32(凹部)の深さB以下であり、深さBの90%以下が好ましい。厚さAが深さB以下であれば、反転パターン32(凹部)に充填されない余分な光硬化性化合物が少なくなるため、残膜28の厚さRを薄くでき、また、残膜28の厚さRの均一性がさらに向上する。厚さAは、光硬化性薄膜22のすべてが反転パターン32(凹部)に充填され、残膜28が形成されないとき(すなわち、理想的なナノインプリントリソグラフィ法が行われたとき)に、レジストパターンとして必要な高さCを有する微細パターン26(凸部)を形成できるような必要最低限の厚さ(理論膜厚)以上が好ましく、微細パターン26(凸部)を面内均一に形成する点からは、理論膜厚の110%以上がより好ましい。
厚さAは、光硬化性薄膜22の厚さを3箇所で測定し、これら厚さを平均したものである。
【0037】
(工程(c))
硬質モールド30と硬質基材10との間に、光硬化性薄膜22を挟んだ状態にて光を照射し、光硬化性薄膜22を硬化させて硬化物24とする。
【0038】
硬質モールド30は、硬質材料からなる基材である。硬質材料は、ヤング率が30GPa以上の材料であることが好ましい。軟質モールド基材(たとえば、樹脂フィルムからなるモールド等)の場合、光硬化性化合物20の粘度が低くても、残膜28の厚さが不均一になりにくく、かつ微細パターン26(凸部)や残膜28に気泡が混入しにくい、すなわち本発明における課題が存在しないため、本発明におけるモールドからは除外する。
硬質材料としては、硬質基材10の材料と同様のものが挙げられる。
硬質モールド30および硬質基材10のうち少なくとも一方は、光重合開始剤が作用する波長の光を40%以上透過する材料とする。
【0039】
硬質モールド30は、表面に反転パターン32を有する。反転パターンは、物品の表面の微細パターン26に対応した反転パターンである。
反転パターン32は、微細な凹部を有する。凹部としては、モールドの表面に延在する溝、表面に点在する孔等が挙げられる。
【0040】
溝の形状としては、直線、曲線、折れ曲がり形状等が挙げられる。溝は、複数が平行に存在して縞状をなしていてもよい。
溝の、長手方向に直交する方向の断面形状としては、長方形、台形、三角形、半円形等が挙げられる。
孔の形状としては、三角柱、四角柱、六角柱、円柱、三角錐、四角錐、六角錐、円錐、半球、多面体等が挙げられる。
【0041】
溝の幅は、1nm〜100μmが好ましく、1nm〜10μmがより好ましく、10nm〜500nmが特に好ましい。溝の幅とは、長手方向に直交する方向の断面における上辺の長さを意味する。
孔の幅は、1nm〜100μmが好ましく、1nm〜10μmがより好ましく、10nm〜500nmが特に好ましい。孔の幅とは、開口部が細長い場合、長手方向に直交する方向の断面における上辺の長さを意味し、そうでない場合、孔の開口部における最大長さを意味する。
凹部の深さBは、1nm〜100μmが好ましく、1nm〜10μmがより好ましく、10nm〜500nmが特に好ましい。
反転パターンが密集している領域において、隣接する凹部間の間隔は、1nm〜100μmが好ましく、1nm〜10μmがより好ましく、10nm〜500nmが特に好ましい。隣接する凹部間の間隔とは、凹部の断面の上辺の終端から、隣接する凹部の断面の上辺の始端までの距離を意味する。
前記各寸法は、3箇所で測定した寸法を平均したものである。
凹部の最小寸法は、1nm〜100μmが好ましく、1nm〜10μmがより好ましく、10nm〜500nmが特に好ましい。最小寸法とは、凹部の幅、長さおよび深さのうち最小の寸法を意味する。
【0042】
硬質モールド30から光硬化性薄膜22に加わる圧力は、1MPa以上が好ましく、2MPa以上がより好ましい。圧力が2MPa以上であれば、残膜28の厚さRの均一性がさらに向上する。硬質モールド30から光硬化性薄膜22に加わる圧力は、硬質基材10や硬質モールド30の耐久性の点から、50MPa以下が好ましい。
【0043】
硬質モールド30と硬質基材10との間への光硬化性薄膜22の挟みこみは、大気圧下で行うことが好ましい。大気圧下で行うことによって、減圧のための大掛かりな装置が不要となり、また、工程(c)の時間が短縮され、また、光硬化性薄膜22に含まれる成分の揮発が抑えられる。
【0044】
光硬化性薄膜22に照射される光としては、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、放射線等が挙げられる。
紫外線の光源としては、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧または高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等が挙げられる。
光の照射は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。また、空気中で行ってもよく、窒素雰囲気、二酸化炭素雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。
【0045】
(工程(d))
硬化物24から硬質モールド30を分離して、硬化物24からなる微細パターン26を表面に有する物品を得る。
【0046】
硬化物24から硬質モールド30を分離する方法としては、真空吸着によって双方を固定して片方を離す方向で移動させる方法、機械的に双方を固定して片方を離す方向で移動させる方法等が挙げられる。
硬化物24から硬質モールド30を分離した後、硬化物24をさらに硬化させてもよい。硬化の方法としては、加熱処理、光照射等が挙げられる。
【0047】
(工程(e))
硬化物24からなる微細パターン26をレジストパターンとしてエッチングを行い、硬質基材10の表面に微細パターン12を直接形成する。
【0048】
エッチングの方法としては、公知の方法が挙げられ、ハロゲン系ガスを用いたエッチング法が好ましい。
エッチングの後、硬質基材10の微細パターン12の表面に残ったレジストを除去することが好ましい。除去方法としては、剥離液等によるウエット処理、酸素プラズマ等によるドライ処理、レジストの熱分解を促す温度での熱処理等が挙げられる。
【0049】
〔方法(II)〕
(工程(a’))
硬質基材10の表面に塗工用組成物20を塗布する。
【0050】
硬質基材10としては、方法(I)における硬質基材10と同様のものが挙げられる。
塗工用組成物20は、光硬化性化合物および溶媒を含み、必要に応じて含フッ素界面活性剤、光重合開始剤、他の添加剤を含む。
溶媒、含フッ素界面活性剤、光重合開始剤、他の添加剤としては、方法(I)において例示したものと同様のものが挙げられる。
【0051】
光硬化性化合物としては、方法(I)において例示したものと同様のものが挙げられ、粘度を10000mPa・s以上に調整しやすい点から、(メタ)アクリレート系オリゴマーが好ましい。
(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、繰り返し単位を2個以上有する鎖(ポリウレタン鎖、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、ポリカーボネート鎖等)と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する分子構造の(メタ)アクリレート系オリゴマーが挙げられ、硬化後の膜の柔軟性や表面硬度の調整が容易であること、さらに硬質基材との密着性に優れるという点から、ウレタン結合と2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーがより好ましく、ウレタン結合と6〜10個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーがさらに好ましい。
【0052】
光硬化性化合物の粘度は、10000mPa・s以上であり、12000mPa・s以上が好ましい。粘度が10000mPa・s以上であれば、残膜28の厚さの均一性が高くなり、かつ微細パターン26(凸部)や残膜28に気泡が混入しにくい。光硬化性化合物の粘度は、硬質モールド30の反転パターン32(凹部)に光硬化性化合物が充填されやすい点からは、4500000000mPa・s以下が好ましい。
光硬化性化合物の粘度は、E型粘度計によって測定した、工程(c)において硬質モールド30と硬質基材10との間に光硬化性薄膜22を挟む際の温度と同じ温度(たとえば、室温(25℃))における粘度である。また、塗工用組成物20が2種類以上の光硬化性化合物を含む場合は、これら光硬化性化合物の混合物の粘度とする。
【0053】
塗工用組成物20の粘度は、1000mPa・s以下が好ましく、200mPa・s以下がより好ましい。粘度が1000mPa・s以下であれば、塗工用組成物20の塗布性が良好となり、また、均一な厚さの塗膜を形成しやすい。塗工用組成物20の粘度は、塗膜の形状の安定性の点からは、1mPa・s以上が好ましい。
塗工用組成物20の粘度は、塗布前にE型粘度計によって測定した、工程(a’)における温度と同じ温度(たとえば、室温(25℃))における粘度である。
塗工用組成物20の塗布は、方法(I)における塗布と同様に行えばよい。
【0054】
(工程(b’))
塗工用組成物20から溶媒を除去し、光硬化性薄膜22を形成する。
【0055】
除去方法としては、加熱処理等が挙げられる。加熱処理等によって塗工用組成物20に含まれる溶媒を揮発、除去し、塗工用組成物20を高粘度化すれば、形成される光硬化性薄膜22の粘度も、光硬化性化合物の粘度、すなわち10000mPa・s以上となることが推定される。このような高粘度の光硬化性薄膜22であれば、残膜28の厚さが不均一になりにくく、かつ微細パターン26(凸部)や残膜28に気泡が混入しにくい。
【0056】
光硬化性薄膜22の厚さAは、硬質モールド30の反転パターン32(凹部)の深さB以下であり、深さBの90%以下が好ましい。厚さAが深さB以下であれば、反転パターン32(凹部)に充填されない余分な光硬化性化合物が少なくなるため、残膜28の厚さRを薄くでき、また、残膜28の厚さRの均一性がさらに向上する。厚さAは、光硬化性薄膜22のすべてが反転パターン32(凹部)に充填され、残膜28が形成されないとき(すなわち、理想的なナノインプリントリソグラフィ法が行われたとき)に、レジストパターンとして必要な高さCの微細パターン26(凸部)を形成できるような必要最低限の厚さ(理論膜厚)以上が好ましく、微細パターン26(凸部)を面内均一に形成する点からは、理論膜厚の110%以上がより好ましい。
厚さAは、光硬化性薄膜22の厚さを3箇所で測定し、これら厚さを平均したものである。
【0057】
(工程(c)〜(e))
工程(c)〜(e)は、方法(I)と同様に行えばよい。
【0058】
(作用効果)
以上説明した本発明の微細パターンを表面に有する物品の製造方法にあっては、工程(b)または工程(b’)において、塗工用組成物を高粘度化し、高粘度の光硬化性薄膜22を形成しているため、基材およびモールドとして硬質材料(シリコン、石英、ガラス等)からなるものを用いて大気圧下にてナノインプリントリソグラフィ法によって微細パターン26を形成しても、硬質モールド30の凸部が押し付けられた部分に形成される光硬化性化合物の硬化物24からなる残膜28の厚さの均一性が高くなり、かつ光硬化性化合物の硬化物24からなる微細パターン26(凸部)や残膜28に気泡が混入しにくい。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
例1〜3
は参考例であり、例6、7は実施例であり、例4、5、8〜10は比較例である。
【0060】
(光硬化性化合物および塗工用組成物の粘度)
E型粘度計としてモジュラーレオメーター(Anton Paar社製、Physica MCR301)を用い、光硬化性化合物および塗工用組成物の粘度を測定した。25mmコーンプレートを用い、温度:25℃、せん断速度:10[1/s]における粘度を測定した。
【0061】
(光硬化性薄膜の粘度)
厚さ525μmの4インチシリコン基板の表面に、塗工用組成物をスピンコート法によって塗布し、実際の工程(b)における高粘度化の条件と同じ条件(温度、時間)にて高粘度化を行った。塗工用組成物の塗膜の厚さは、高粘度化後の光硬化性薄膜の厚さが90nm以上になるようにあらかじめ調整した。
光硬化性薄膜付きのシリコン基板を、ロードセル分解能:10N、プレス軸の移動分解能:50nmのナノインプリント装置に取り付けた。
ナノインプリント装置のモールド取付けステージに、石英板(たて:10mm、よこ:10mm、厚さ:1mm、微細パターンなし)を取り付けた。
25℃において、石英板を光硬化性薄膜に0.2μm/秒の一定速度で押し付けながら、ロードセルが検出した圧力の時間変化を0.1秒間隔で測定した。
時間に対する圧力のグラフを作成し、圧力が上昇し始めてから、圧力が1MPaに到達するまでの時間tを読み取り、前記式(1)から光硬化性薄膜の粘度を求めた。
【0062】
(光硬化性薄膜の厚さ)
高粘度化した直後の光硬化性薄膜の厚さを、卓上膜厚測定システム(フィルメトリクス社製、F20)を用いて測定した。
【0063】
(色ムラ)
工程(d)の直後に、微細パターン側から物品に白色光を照射しながら物品を目視で観察し、色ムラの有無を下記の基準にて官能評価した。
○:ムラ模様が見られない。
×:ムラ模様が見られる。
【0064】
(気泡)
工程(d)の直後に、微細パターン側から物品を目視で観察し、視認可能な気泡の混入の有無を下記の基準にて評価した。
○:気泡がまったく見られない。
×:気泡が1つ以上見られる。
【0065】
(充填率)
工程(d)の直後に、物品の表面における、光硬化性化合物の硬化物からなる微細パターン(凸部)の高さCを、原子間力顕微鏡(SIIナノテクノロジ社製、L−trace)を用いて測定し、下式(2)から充填率を求めて、硬質モールドの反転パターン(凹部)をどの程度忠実に転写できたかを下記の基準にて評価した。
充填率[%]=物品の微細パターン(凸部)の高さC[nm]/硬質モールドの反転パターン(凹部)の深さB[nm]×100 ・・・(2)。
【0066】
(エッチング量)
工程(e)の直後に、物品を割断して得られた断面を、走査電子顕微鏡(日立製作所社製、S4300)を用いて観察し、硬質基材のエッチング量(凹部の深さ)のばらつきを下記の基準にて評価した。
○:ばらつきが10nm未満である。
×:ばらつきが10nm以上である。
【0067】
〔例1〕
塗工用組成物として、PAK−01−200(東洋合成工業社製、アクリル系紫外線硬化性樹脂液)を用意した。溶媒を含まないPAK−01の粘度(25℃)は約60mPa・s(カタログ値)であり、工程(b)と同じ条件にて高粘度化した後の光硬化性薄膜の粘度(25℃)は39500mPa・sであった。
【0068】
(工程(a))
4インチシリコン基板(SUMCO社製、厚さ:525μm、<1.0.0>面 片面ミラーウエハ CZ法、ヤング率:130GPa)の表面に、PAK−01−200をスポイトで滴下し、スピンコーター(ミカサ社製、1H−DX2)を用い、25℃にて、3000rpmで20秒間のスピンコートを行い、塗膜を形成した。
【0069】
(工程(b))
塗膜付きシリコン基板をホットプレート上にて160℃で10分間加熱し、塗膜を脱溶媒し、かつ樹脂を変質させ、高粘度の光硬化性薄膜を得た。光硬化性薄膜の厚さは120nmであった。
【0070】
(工程(c))
光硬化性薄膜に対して、ライン/スペースの微細パターンを有する石英モールド(パターンエリアサイズ:8mm×8mm、ラインの線幅:100nm、スペースの溝幅:100nm、ピッチ:200nm、溝深さ:200nm、外形サイズ:11mm×11mm、厚さ:1.0mm、ヤング率:72GPa)を、ナノインプリント装置(東芝機械社製、ST50)を用い、大気圧下、25℃にて、4MPaの圧力で40秒間押し付けて密着させ、その状態のまま紫外線(200mJ/cm
2)を照射した。
【0071】
(工程(d))
石英モールドを剥がし取り、レジストパターン付きシリコン基板を得た。色ムラ、気泡、充填率の評価を行った。
【0072】
(工程(e))
レジストパターン付きシリコン基板に対して、CF
4とO
2の1:1混合ガス(流量比)を用いて100nmの深さでエッチングを行った。エッチング終了後、シリコン基板の表面に残存するレジストを酸素プラズマで除去した。エッチング量の評価を行った。
【0073】
〔例2〕
塗工用組成物として例1と同じPAK−01−200を用意した。工程(b)と同じ条件にて高粘度化した後の光硬化性薄膜の粘度(25℃)は12000mPa・sであった。
【0074】
(工程(a)〜(b))
例1と同様に塗膜を形成した後、塗膜付きシリコン基板をホットプレート上にて140℃で10分間加熱し、塗膜を脱溶媒し、かつ樹脂を変質させ、高粘度の光硬化性薄膜を得た。光硬化性薄膜の厚さは150nmであった。
【0075】
(工程(c)〜(e))
例1と同様に工程(c)〜(e)を行った。
【0076】
〔例3〕
(工程(a)〜(b))
例2と同様に工程(a)〜(b)を行った。
【0077】
(工程(c)〜(e))
工程(c)における圧力を4MPaから2MPaに変更した以外は、例1と同様に工程(c)〜(e)を行った。
【0078】
〔例4〕
塗工用組成物として例1と同じPAK−01−200を用意した。工程(b)と同じ条件にて高粘度化した後の光硬化性薄膜の粘度(25℃)は3600mPa・sであった。
【0079】
(工程(a)〜(b))
例1と同様に塗膜を形成した後、塗膜付きシリコン基板をホットプレート上にて120℃で10分間加熱し、塗膜を脱溶媒し、かつ樹脂を変質させ、高粘度の光硬化性薄膜を得た。光硬化性薄膜の厚さは170nmであった。
【0080】
(工程(c)〜(e))
例1と同様に工程(c)〜(e)を行った。
【0081】
〔例5〕
塗工用組成物として例1と同じPAK−01−200を用意した。工程(b)と同じ条件にて高粘度化した後の光硬化性薄膜の粘度(25℃)は750mPa・sであった。
【0082】
(工程(a)〜(b))
例1と同様に塗膜を形成した後、塗膜付きシリコン基板をホットプレート上にて80℃で2分間加熱し、塗膜を脱溶媒し、高粘度の光硬化性薄膜を得た。光硬化性薄膜の厚さは196nmであった。
【0083】
(工程(c)〜(e))
例1と同様に工程(c)〜(e)を行った。
【0084】
【表1】
【0085】
〔例6〕
バイヤル容器(内容積:30mL)に、U−6H(新中村化学工業社製、ウレタンメタクリレート系反応性オリゴマー、分子量:1047、官能基数:6、粘度(50℃):70000mPa・s(カタログ値)、粘度(25℃):5058000mPa・s(実測値)、硬化後の鉛筆硬度:4H)の1.00g、S420(AGCセイミケミカル社製、ノニオン性含フッ素界面活性剤)の0.02g、IRGACURE907(BASFジャパン社製、光重合開始剤)の0.03gをはかりとり、さらに、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、関東化学社製、電子工業用試薬)の18.18gを加え、充分な撹拌を行ない、塗工用組成物1を得た。塗工用組成物1の粘度(25℃)は1.5mPa・sであった。
【0086】
バイヤル容器(内容積:20mL)に、2−プロパノール(純正化学社製、電子工業用試薬)の9g、KBM−503(信越化学工業社製、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)の40μL、テトラエトキシシラン(東京化成工業社製、特級試薬)の60μL、酢酸水溶液(関東化学社製、特級、20質量%水溶液)の1gをはかりとり、充分な撹拌を行ない、プライマーを調製した。
【0087】
4インチシリコン基板(SUMCO社製、厚さ:525μm、<1.0.0>面 片面ミラーウエハ CZ法、ヤング率:130GPa)の表面に、プライマーをスポイトで滴下し、スピンコーター(ミカサ社製、1H−DX2)を用い、4000rpmで20秒間のスピンコートを行い、その後、ホットプレート上にて130℃で10分間の熱処理を行った。
【0088】
(工程(a’))
プライマー塗布処理を行ったシリコン基板の表面に、塗工用組成物1をスポイトで滴下し、スピンコーター(ミカサ社製、1H−DX2)を用い、25℃にて、3000rpmで20秒間のスピンコートを行い、塗膜を形成した。
【0089】
(工程(b’))
塗膜付きシリコン基板をホットプレート上にて70℃で2分間加熱し、塗膜を脱溶媒し、高粘度の光硬化性薄膜を得た。光硬化性薄膜の厚さは110nmであった。
【0090】
(工程(c))
光硬化性薄膜に対して、ライン/スペースの微細パターンを有する石英モールド(パターンエリアサイズ:20mm×20mm、ラインの線幅:60nm、スペースの溝幅:60nm、ピッチ:120nm、溝深さ:130nm 外形サイズ:20mm×20mm、厚さ:6.35mm、ヤング率:72GPa)を、ナノインプリント装置(東芝機械社製、ST50)を用い、大気圧下、25℃にて、4MPaの圧力で40秒間押し付けて密着させ、その状態のまま紫外線(1000mJ/cm
2)を照射した。
【0091】
(工程(d))
石英モールドを剥がし取り、レジストパターン付きシリコン基板を得た。色ムラ、気泡、充填率の評価を行った。
【0092】
(工程(e))
レジストパターン付きシリコン基板に対して、CF
4とO
2の1:1混合ガス(流量比)を用いて100nmの深さでエッチングを行った。エッチング終了後、シリコン基板の表面に残存するレジストを酸素プラズマで除去した。エッチング量の評価を行った。
【0093】
〔例7〕
U−6HをU−324A(新中村化学工業社製、ウレタンアクリレート系反応性オリゴマー、分子量:350〜1300、官能基数:6〜10、粘度(40℃):20000mPa・s(カタログ値)、粘度(25℃):128500mPa・s(実測値)、硬化後の鉛筆硬度:7H)に変更した以外は、例6と同様にして行った。
【0094】
〔例8〕
U−6Hの1.00gを、EA−1020(新中村化学工業社製、NKオリゴ、ビスフェノールA型エポキシアクリレート)の0.65gおよびA−HD−N(新中村化学工業社製、NKエステル、2官能アクリレート)の0.35gの混合物(粘度(25℃):1000mPa・s(実測値))に変更した以外は、例6と同様にして行った。
【0095】
〔例9〕
U−6Hの1.00gを、A−DPH(新中村化学工業社製、NKエステル、多官能アクリレート)の0.6gおよびA−NPG(新中村化学工業社製、NKエステル、2官能アクリレート)の0.4gの混合物(粘度(25℃):100mPa・s(実測値))に変更した以外は、例6と同様にして行った。
【0096】
〔例10〕
U−6Hの1.00gを、A−DCP(新中村化学工業社製、NKエステル、2官能アクリレート)の0.7gおよびA−NPGの0.3gの混合物(粘度(25℃):50mPa・s(実測値))に変更した以外は、例6と同様にして行った。
【0097】
【表2】