特許第5734285号(P5734285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5734285薄片状基材およびマグヘマイトの層を含む磁性顔料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734285
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】薄片状基材およびマグヘマイトの層を含む磁性顔料
(51)【国際特許分類】
   C09C 3/06 20060101AFI20150528BHJP
   C09C 1/28 20060101ALI20150528BHJP
   C09C 1/30 20060101ALI20150528BHJP
   C09C 1/40 20060101ALI20150528BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20150528BHJP
   C09D 11/02 20140101ALI20150528BHJP
   C01G 49/00 20060101ALI20150528BHJP
   C01G 49/06 20060101ALI20150528BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20150528BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20150528BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20150528BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20150528BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   C09C3/06
   C09C1/28
   C09C1/30
   C09C1/40
   C09D7/12
   C09D11/02
   C01G49/00 A
   C01G49/06 B
   A61K8/19
   A61K8/26
   A61K8/29
   A61K8/25
   A61Q1/00
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-516544(P2012-516544)
(86)(22)【出願日】2010年6月8日
(65)【公表番号】特表2012-530821(P2012-530821A)
(43)【公表日】2012年12月6日
(86)【国際出願番号】EP2010003430
(87)【国際公開番号】WO2010149266
(87)【国際公開日】20101229
【審査請求日】2013年6月5日
(31)【優先権主張番号】09008389.0
(32)【優先日】2009年6月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】清水 海万
(72)【発明者】
【氏名】野口 民生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 富美子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 幸隆
(72)【発明者】
【氏名】矢沢 雅彦
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−516688(JP,A)
【文献】 特開2004−204209(JP,A)
【文献】 特開平07−196944(JP,A)
【文献】 特表2003−525315(JP,A)
【文献】 特開昭49−128027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 3/06
A61K 8/19
A61K 8/25
A61K 8/26
A61K 8/29
A61Q 1/00
C01G 49/00
C01G 49/06
C09C 1/28
C09C 1/30
C09C 1/40
C09D 7/12
C09D 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの平行な主要面を有する透明で薄片状の均質に構成された基材と、マグヘマイトを含む被覆とを含む、磁性顔料であって、
基材が、Al、5重量%までのTiOを含有するAl、SiO、20重量%までの水酸化ケイ素を含有するSiO、ガラスまたはホウケイ酸塩でできており、
マグヘマイト被覆が、唯一の鉄化合物としてマグヘマイトを含有する単一の層であり且つ基材上に直接位置している
磁性顔料
【請求項2】
基材が100nmから1000nmの間の平均厚を有する、請求項1に記載の磁性顔料。
【請求項3】
1つまたは複数の誘電体被覆をマグヘマイト被覆の上に更に含む、請求項1または2に記載の磁性顔料。
【請求項4】
マグヘマイト被覆が少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物でドープされている、請求項1から3のいずれか一項に記載の磁性顔料。
【請求項5】
アルカリ土類金属酸化物が、Mg、Ca、SrおよびBaの酸化物またはこれらの混合物の群から選択される、請求項に記載の磁性顔料。
【請求項6】
アルカリ土類金属酸化物がMgOである、請求項4または5に記載の磁性顔料。
【請求項7】
アルカリ土類金属酸化物の含有量が、マグヘマイト被覆の重量に基づいて0.01から0.1重量%未満の間である、請求項4から6のいずれか一項に記載の磁性顔料。
【請求項8】
金色の干渉色を示す、請求項1から7のいずれか一項に記載の磁性顔料。
【請求項9】
以下の工程:
(a)2つの平行な主要面を有する透明で薄片状の均質に構成された基材から構成された粒子を水に分散させる工程、ただし、該基材が、Al、5重量%までのTiOを含有するAl、SiO、20重量%までの水酸化ケイ素を含有するSiO、ガラスまたはホウケイ酸塩でできており、
(b)2から4の間にpH値を調整し、そのpH値を一定に保持する工程、
(c)依然としてそのpH値を一定に保持しながら、水溶性鉄化合物を添加する工程、
(d)pHを5.5から7.5の間の値に上昇させる工程、
(e)場合により、そのpH値を一定に保持しながらアルカリ土類金属化合物の水溶液を添加する工程、
(f)場合により、得られた生成物を洗浄および濾過する工程、
(g)100℃から250℃の間の温度で1から10時間の間の時間で乾燥する工程、あるいはその代わりに
(h)350℃から450℃の間の温度で5から30分間の間の時間で焼成する工程
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の顔料の製造方法。
【請求項10】
不活性ガス雰囲気下で実施される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
工程(e)のアルカリ土類金属化合物が、更なる水溶性鉄化合物を同時に添加しながら添加される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
工程(c)で添加される鉄化合物が鉄(III)化合物であり、工程(e)で添加される鉄化合物が少なくとも鉄(II)化合物を含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
アルカリ土類金属化合物がマグネシウム化合物である、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
インク、塗料、ワニス、被覆組成物、プラスチック、ホイル、紙、セラミックス、ガラス、化粧品および医薬製剤を着色するため、レーザーマーキングするため、ならびに多様な溶媒含有量の顔料調製物を着色するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の顔料の使用。
【請求項15】
インクが印刷インクである、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
請求項1から8のいずれか一項に記載の顔料を含む製品。
【請求項17】
機密保護製品である、請求項16に記載の製品。
【請求項18】
銀行券、小切手、パスポート、本人確認書類、スマートカード、運転免許証、株券、債券、小切手保証カード、タックスバンダロール、切手、チケット、クレジットカード、デビットカード、テレホンカード、くじ券、ギフト券、包装材、装飾材、ブランド製品または機密保護が必要なその他の製品である、請求項17に記載の機密保護製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの平行な主要面(major surfaces)を有する透明で薄片状の均質に構成された(homogeneously composed)基材と、マグヘマイト(maghemite)を含む被覆とを含む磁性顔料、前記顔料の製造方法、ならびにこれらの使用に関する。
【0002】
本発明の磁性顔料は、顔料の磁気特性、特に磁場において配向する能力、ならびに際立つ彩色(coloristic)性を適度に組み合わせることができる装飾および機密保護用途(security applications)に特に有用であるが、顔料の磁気特性または彩色特性のいずれかが興味を引き得る別の分野において使用することもできる。
【0003】
磁気記録媒体に好ましく使用される針状磁性顔料の他に、薄片状磁性顔料は、それ自体多様な用途において長い間知られている。
【0004】
US3,926,659は、TiOもしくはZrOまたはこれらの水和物で場合により被覆され、ガンマ鉄酸化物(マグヘマイト)であり得る均一な鉄含有層をその上に有する、雲母顔料を開示する。後者の場合において、顔料は、家庭用磁石または記憶用磁石(磁気記録媒体)の製造のための合成樹脂において有用であることが記載されている。これらの顔料の彩色特性は、その上にあるガンマ鉄酸化物層の適用により僅かにシフトされている、TiOまたはZrO層により生じる干渉色に主に起因する。これらの本体色(body color)は、ガンマ鉄酸化物層の層厚によって、肌色(flesh colored)からチョコレート色(chocolate brown)である。
【0005】
この種類の顔料は、まさに、機密保護用途に使用可能であるための魅力的な彩色特性も十分に良好な磁気特性も示さず、ここで際立った色効果、ならびに磁気効果は、著しい機密保護の特徴を作り出すことに不可欠である。
【0006】
DE10065761A1において、薄片状磁性粒子が記載されており、これは、多層であり、AlまたはAlとSiOの混合相を含むコア、非晶質SiOの中間層および鉄を含有するシェルを含み、とりわけ後者は、マグヘマイトであり得る。これらの粒子は、水溶液中でのその単離のために核酸またはタンパク質と反応することができる無機または有機カップリング剤で被覆されている。これらの顔料は、水中での懸濁および水溶性ケイ酸塩化合物(silicatic compounds)の添加によるアルミニウム粉末で作製されているので、そのコアは均質な組成物ではなく、むしろアルミニウムとケイ素の混合酸化物であり、場合により残部はアルミニウム金属である。加えて、コア物質が少なくとも部分的に分解するので、粒子の平板状の形状およびその平滑面は、得られた顔料において維持されていない場合がある。更に、製造方法の制御は困難であり、それは水中でのアルミニウム粉末の反応がそれ自体極めて発熱性であり、後に続く鉄化合物との反応も危険だからである(テルミット法)。
【0007】
これらの顔料の彩色特性は記載されておらず、機密保護用途におけるこれらの使用も記載されていない。
【0008】
EP341002B1において、光学的可変性を有する薄膜構造が開示され、これは、基材およびその上の多層薄膜金属誘電体干渉被覆を含み、金属誘電体干渉被覆は、コバルトニッケル合金などの磁気特性ならびに反射特性を有する物質の反射金属層を含む。
【0009】
同様の種類の顔料、すなわち光学的可変磁性顔料は、EP686675B1にも記載されている。これらの顔料は、第1強磁性層、シリカ、アルミナまたはこれらの水和物の第2層、金属または黒色金属酸化物の第3層、場合により無色または有色金属酸化物の第4層で被覆されている、層状非強磁性金属基材でできている。
【0010】
最後の2つの文献に記載されている顔料は、磁気により異なる方向に配向されたとき三次元効果をもたらし、観察角度に応じて異なる色を示すので(光学的可変性)、機密保護用途に使用することができる。これらは、組み込まれている金属層によって、強い遮蔽特性を示す。
【0011】
大部分の既知の機密保護用途、特に銀行券(bank notes)、身分証明書などには上記に記述された特性が必要であるが、必要であれば更なる透明性を可能にし、著しい光学的可変特性を有することなく有用な彩色を示す、より洗練された効果(smarter effects)も求められる。特に、深みのある金色(profound golden color)は、大部分の文化において常に価値があると考えられ、価値のある物品、例えば銀行券などにおいて極めて望ましい。そのような金色と強い磁気効果との組合せ、および単に単一の顔料を使用したはっきりと目に見える三次元効果などの利点は、当該技術において高く評価されよう。
【0012】
したがって、本発明の目的は、磁場において容易に配向されて三次元効果をもたらすために十分に強い磁気特性を示し、純粋な金と同様の金色干渉色を示し、また、一方でのある程度の透明性を他方での快適な遮蔽力と組み合わせて示す顔料、これらの顔料の経済的な製造方法、ならびにこれらの使用を提供することである。
【0013】
本発明の目的は、2つの平行な主要面を有する透明で薄片状の均質に構造された基材と、マグヘマイトを含む被覆とを含む磁性顔料によって達成される。
【0014】
加えて、本発明の目的は、そのような磁性顔料の製造方法であって、
(a)2つの平行な主要面を有し、場合により少なくとも1つの誘電体層で被覆されている、透明で薄片状の均質に構成された基材から構成された粒子を水に分散させる工程、
(b)2から4の間にpHを調整し、そのpHを一定に保持する工程、
(c)依然としてそのpHを一定に保持しながら、水溶性鉄化合物を添加する工程、
(d)そのpHを5.5から7.5の間の値に上昇させる工程、
(e)場合により、そのpHを一定に保持しながらアルカリ土類化合物の水溶液を添加する工程、
(f)場合により、得られた生成物を洗浄および濾過する工程、
(g)100℃から250℃の間の温度で1から10時間の間の時間で乾燥する工程、あるいは代わりに
(h)350℃から450℃の間の温度で5から30分間の間の時間で焼成する工程
を含む方法によって達成される。
【0015】
更に、本発明の目的は、インク、塗料、ワニス、被覆組成物、プラスチック、ホイル(foils)、紙、セラミックス、ガラス、化粧品および医薬製剤を着色する(pigmenting)ため、レーザーマーキングするため、ならびに多様な溶媒含有量の顔料調製物を着色するための前記顔料の使用によっても達成される。
【0016】
本発明の第1の目的は、均質の組成であり、互いに平行である2つの主要面を有し、その上にマグヘマイトを含む被覆を有する、透明で薄片状の基材を含む磁性顔料を提供することによって達成される。
【0017】
本発明の意味における薄片状の基材は、まさに両方とも粒状基材の主要面を構成し、互いに平行である上面および下面を有する粒状基材である。
【0018】
本発明の意味における平行は、幾何学的な意味において厳密に平行であるばかりでなく、主要面が平滑および平面である、ならびに幾何学的な平行面に対して偏角(angle of deviation)が15°を超えない、という意味において実質的に平行であることも意味する。主要面の長さおよび幅における伸張範囲(extension)が、薄片状粒子の最大寸法(粒径)を構成する。主要面の間の差の長さ(length difference)が薄片状基材の厚さを構成する。一般に、本発明の薄片状基材の厚さは、その粒径よりもかなり小さい。通常、それぞれの単一の薄片状基材の粒径と厚さの間の比(アスペクト比)は、少なくとも2、好ましくは≧20であるが、1000以上、例えば20,000までであってもよい。
【0019】
本発明の意味における透明は、可視光線を実質的に伝導(transmit)する、すなわち入射可視光放射の少なくとも90%を伝導する場合の薄片状基材である。
【0020】
本発明の磁性顔料の基材は、組成が均質であり、すなわち、基材の各位置において単一化合物または化合物の混合物または混合酸化物のいずれかによる同じ物質で構成されている。特に、単一の基材粒子内において異なる物質の特別な領域または勾配がない。
【0021】
上記に記載された種類の薄片状基材粒子は、通常、一般的な天然基材粒子、例えば雲母、タルクまたは他の層状ケイ酸塩(phyllosilicates)を使用することにより入手可能ではない。最後の物質は、物質の外側面が平面および平滑ではなく、層パッケージ(package)の内部に段を示すように、互いに重ね合わさって層になっている幾つかの層から構成される。したがって、平面であり極めて平滑な表面は、これらの物質により達成されない場合がある。
【0022】
対照的に、Al、SiO、ガラスまたは様々な(different)ホウケイ酸塩の基材などの合成的に製造された基材物質を、粒子の厚さ、ならびに外側面の平滑度を正確に制御することによって、最善には、最終的に粒子の厚さの変動および粒径の偏差を制御することにもよって、製造することができる。したがって、合成的に製造された透明物質の基材は、本発明において好ましい。
【0023】
本発明の顔料の基材は、好ましくは、Al、基材の重量に基づいて5重量%までのTiOを含有するAl、SiO、基材の重量に基づいて20重量%までの水酸化ケイ素を含有するSiO、ガラスまたはホウケイ酸塩でできている。特に、好ましいものは、Alまたは5重量%までのTiOを含有するAlの基材であり、以下においてこれら両方とも二酸化アルミニウムフレークと呼ばれる。SiOまたは20重量%までの水酸化ケイ素を含有するSiOの薄片状基材粒子は、以下においてシリカフレークと呼ばれる。
【0024】
本発明の顔料に用いられる基材は、100から1000nmの間、好ましくは150から500nmの間、最も好ましくは200から400nmの間の平均厚を有する。基材粒子の厚さの偏差は、好ましくは10%を超えず、対応する基材粒子の製造方法により制御することができる。
【0025】
基材の最大寸法に対応する、基材粒子の平均直径、すなわち粒径は、通常、5から200μmの間、特に5から150μmの間、最も好ましくは10から100μmの間である。狭い粒径分布が特に有利である。粒径分布は、微粉砕(milling)プロセスまたは分級プロセスまたはその両方により制御することができる。
【0026】
上記に記載された種類の透明基材は、マグヘマイト被覆を例えば雲母基材上に示す磁性顔料と比較したとき、より高い彩度、より鮮明な干渉色および驚くべきことにより高い磁性も本発明の磁性顔料に付与する。
【0027】
以下においてマグヘマイト被覆と呼ばれる、マグヘマイト(ガンマ鉄酸化物)を含む被覆は、透明基材の主要面の1つのみの上の被覆であってもよいが、好ましくは、透明で薄片状の基材の全ての外側面がマグヘマイト被覆で被覆されるように、透明基材をまさに封入する(encapsulate)。マグヘマイト被覆は基材表面の各単一点において同じ厚さを示す必要はなく、更にはマグヘマイト被覆により完全に被覆されていない幾つかの小さい基材表面領域が存在する場合があることは、言うまでもないことである。この種の制限は、技術的製造の側面に起因し、本発明の意図を傷つけない。一般に、本発明の磁性顔料におけるマグヘマイト被覆の厚さは、20〜400nm、好ましくは30〜300nm、最も好ましくは50〜200nmの範囲である。
【0028】
マグヘマイト被覆は、好ましくはマグヘマイトを含む単一層である。本発明の特に好ましい実施態様において、マグヘマイト被覆は、マグヘマイトである単独の鉄化合物のみを含有する単一層である。それにもかかわらず、マグヘマイト被覆が、マグヘマイトの他に様々な鉄化合物、例えば微量含有量(minor contents)のマグネタイト(Fe)またはヘマタイト(アルファ鉄酸化物)などを含むこともできる、本発明の実施態様もある。最後の2つは、単一化合物または組合せとして、マグヘマイト被覆(層)の重量に基づいて、合計で最大25重量%の含有量でマグヘマイト被覆に存在することができる。
【0029】
加えて、マグヘマイト被覆を少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物でドープ(dope)することが好ましい。この目的に適したアルカリ土類金属酸化物は、Mg、Ca、SrおよびBaの酸化物またはこれらの混合物である。特に好ましいものは、MgOのドーピングである。
【0030】
上記に記述されたアルカリ土類金属酸化物、特にMgOは、マグヘマイト被覆の重量に基づいて、好ましくは0.01から0.1重量%未満までの間の含有量でマグヘマイト被覆に存在する。これらは、鉄成分と混合酸化物を形成せず、特にフェライトを形成せず、それはこれらの含有量がはるかに少なすぎるからである。代わりに、これらはアルカリ土類金属酸化物それ自体、例えばMgOとしてマグヘマイト被覆に存在する。アルカリ土類金属酸化物のドーピングは、改善された分散性、より良好な光沢、より明澄な色ならびに熱および風化に対する改善された安定性を本発明の磁性顔料に付与する。更に、顔料の干渉色は、マグヘマイト層にアルカリ土類金属酸化物ドーピングを含有しない本発明の磁性顔料と比較すると、アルカリ土類金属酸化物がドーピングとしてマグヘマイト被覆に存在する場合、驚くことに、より明澄であるばかりでなく、高い彩度も達成することができる。
【0031】
したがって、マグヘマイト被覆がアルカリ土類金属酸化物でドープされる本発明の実施態様が好ましい。アルカリ土類金属酸化物として、MgOが特に好ましい。
【0032】
最も好ましいものは、磁性顔料の基材物質が、アルカリ土類金属酸化物ドーピングとしてMgOおよび鉄成分としてマグヘマイトを単独で含有し好ましくは更なる成分を含有しないマグヘマイト被覆である基材を封入する単一被覆をその上に有する、上記に定義された二酸化アルミニウムフレークである本発明の実施態様である。
【0033】
最後の場合において、マグヘマイト被覆は、基材上に直接位置している。また、二酸化アルミニウムフレークと異なる上記に記述された他の基材フレークでも、この実施態様が好ましい。それにもかかわらず、本発明の磁性顔料の彩色特性を適合させる(adapt)ため、および/または基材粒子の表面特性を改善するため、および/または様々な媒体における顔料の付着(application)特性を改善するため、用いられる更なる被覆(層)が存在し得る。そのために、透明基材フレークを、マグヘマイト被覆による基材粒子の被覆の前に、少なくとも1つの誘電体被覆で被覆することができる。追加的にまたは代替的に、マグヘマイト被覆を1つまたは複数の誘電体被覆でその上に上塗りすることもできる。
【0034】
誘電体被覆の物質として、誘電体金属酸化物または金属水和物被覆が本発明において一般に使用される。これらを或る状況下で着色することもできるが、これらは、無色の金属酸化物または金属酸化物の水和物またはこれらの混合物から、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化セリウム(cer oxide)、二酸化ケイ素および二酸化アルミニウムまたはこれらの水和物などの、Ti、Zr、Zn、Sn、Ce、SiおよびAlの酸化物または水和物から有利に構成される。
誘電体層が、マグヘマイト被覆の下で基材フレーク上に直接位置している場合、誘電体層に使用される物質は、基材に使用される物質と同一ではない(それぞれ、シリカフレークおよび二酸化アルミニウムフレークについて)ことは、言うまでもないことである。
【0035】
マグヘマイト層に加えて用いられるこれらの誘電体被覆の厚さは、それらが使用される目的に依存する。新規マグヘマイト顔料の干渉色を或る要求に適合させる必要がある場合、誘電体層の厚さは、大部分の場合において20から300nmの間であり、それは、これらの状況下では、そのまま干渉層として作用する、それ自体光学的に活性な層として作用するからである。これは、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムまたは二酸化亜鉛の層が用いられる場合に、特に達成される。これらが基材粒子の表面品質の改善のため、または分散性(dispersebility)、耐光性などだけに関して特定の塗布媒体(application media)に磁性顔料を適合させるために使用される場合、厚さは、また、20nm未満、特に1から15nmの間、好ましくは2から10nmの間であり得る。後者の場合では、誘電体層そのままでは、顔料系全体にどのような干渉も付与せず、マグヘマイト層または基材の特性を改善するだけである。ここで、特に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウムおよび/または酸化スズの層が使用される。当然のことながら、干渉付与層、ならびに付着特性の改善のための層を本発明の1つの実施態様の範囲内において一緒に使用することができる。
【0036】
上記に記載された無機誘導体層に追加的にまたは代替的に、例えば様々な有機シラン、有機チタン酸塩、有機ジルコン酸塩の有機物質の薄被覆を、様々な塗布媒体における付着能力を改善するために、本発明の磁性顔料の表面に付着させることもできる。そのような被覆は、効果顔料の技術において知られており、したがってこれらの付着は、当業者の通常の技能の範囲内である。
【0037】
上記に記述された本発明において用いることができる、有機または無機の性質いずれかの効果顔料のいわゆる「後処理」の例は、以下の文献:EP0632109、US5,759,255、DE4317019、DE3929423、DE3235017、EP0492223、EP0342533、EP0268918、EP0141174、EP0764191、WO98/13426またはEP0465805において見出すことができ;これらの内容は、参照として本発明に含める。
【0038】
好ましくは、本発明の磁性顔料の可視色(visible color)は、金色であり、最も好ましくは、異なる視角から見たときに、カラーフロップ(color flop)を全くまたはほとんど示さない(すなわち、「光学的に可変」ではない)純金と同様の深みのある金色である。本発明の磁性顔料の可視色は、干渉層(複数可)の干渉色をマグヘマイト層(マグヘマイト被覆)の吸収色と組み合わせた結果である。このために、干渉層(または、適用可能であれば複数の層)の厚さを、金色の干渉が達成されるように透明薄片状基材の厚さに適合させる必要がある。最も重要な干渉層は、場合により上記に記載された様々な誘電体被覆と組み合わせた、マグヘマイト被覆である。加えて、基材粒子も、使用される物質、これらの厚さに起因して、ならびにこれらの平面、平滑および平行の表面に起因して、顔料全体の干渉に寄与する。特に、基材粒子の平均厚が、上記に記載された150から500nmの好ましい範囲内である場合、基材粒子の影響は、特に重要である。基材粒子の厚さおよびマグヘマイト被覆の厚さ、場合により他の誘電体層被覆の厚さが上記に記載された一般的範囲内で選択される場合、金色干渉色を達成するために適した厚さを選択することは、当業者の技能の範囲内である。他方では、層の厚さに応じて黄色と暗褐色の間であるマグヘマイト層の吸収色も、考慮する必要がある。顔料の干渉色およびマグヘマイト層の吸収色が互いに非常に近い場合、最も好ましくはこれらが両方とも金色の色相を示す場合、本発明の磁性顔料の得られた彩色特性にとって、大きな利点である。その場合、顔料全体における有意な色の移動(color travel)は見られないかもしれないが、本発明の磁性顔料の金色の干渉色および金色の吸収色は、深みのある金色の色相の可視色が達成される程度に重複し、これは異なる組成の「金色」顔料を付着させることによって模倣することはできない。加えて、本発明の磁性顔料は、銀行券用紙などの白色基材物質に被覆されたときでもはっきりと目に見える著しい色効果を示すために、高度な透明性を十分に高い遮蔽力と組み合わせて示し、加えて、非常に良好な磁気特性も示す。
【0039】
本発明の更なる目的は、信頼性があり、経済的であり、制御が容易である、上記に記述された磁性顔料の製造方法である。
【0040】
したがって、以下の工程:
(a)2つの平行な主要面を有し、場合により少なくとも1つの誘電体層で被覆されている、透明で薄片状の均質に構造された基材から構成された粒子を水に分散させる工程、
(b)2から4の間にpH値を調整し、pH値を一定に保持する工程、
(c)依然としてpH値を一定に保持しながら、水溶性鉄化合物を添加する工程、
(d)pHを5.5から7.5の間の値に上昇させる工程、
(e)場合により、pH値を一定に保持しながら、アルカリ土類金属化合物の水溶液を添加する工程、
(f)場合により、得られた生成物を洗浄および濾過する工程、
(g)100℃から250℃の間の温度で1から10時間の間の時間で乾燥する工程、あるいはその代わりに
(h)350℃から450℃の間の温度で5から30分間の間の時間で焼成する工程
を含む方法が見出される。
【0041】
透明で薄片状の基材として、好ましくは、Al、SiO、ガラスまたは様々なホウケイ酸塩から構成される合成基材が用いられる。特に、二酸化アルミニウムフレーク、シリカフレーク、ガラスフレークまたは様々なホウケイ酸塩のフレークが使用され、ここで二酸化アルミニウムフレークおよびシリカフレークは、上記記載のように定義される。
【0042】
既に前記に記載されたように、これらのフレークは、形状、厚さ、厚さ偏差、表面の平滑度、平面の表面および粒径分布の良好な制御を伴って製造することができる。これらの条件が良好に満たされるほど、色および磁気に関して、得られた顔料の品質および信頼性が良好になる。
【0043】
例えば、上記に記述された二酸化アルミニウムフレークは、EP763573A2に記載された方法により製造することができ、このことが好ましい。これらの基材フレークは、少量の二酸化チタンを含有し、続く誘電体層によるまたはマグヘマイト被覆による被覆手順を容易にする。これらはMerck KGaA、Germanyから商標名Xirallic(登録商標)で市販されている。しかし、JP-A 111239/1982により知られている、10μmを超える粒子直径を有し、5〜10のアスペクト比(粒子直径/厚さ)を有する六角形フレークの形態のα−Al、JP-B-72572/1991に開示されている、0.5〜3μmの平均粒子直径を有するα−Alフレークなどの二酸化アルミニウムフレーク、またはJP-A 39362/1992に記載されている、c軸に対して垂直の平面が平板に成長している六方晶系の微細平板状粒子の形態の酸化アルミニウムも、本発明の磁性顔料の透明基材粒子として有用である。
【0044】
本発明の磁性顔料の製造のために透明基材として使用することができるシリカフレークは、例えばWO93/08237に記載されている。ここで、特に、可溶性または不溶性着色剤を添加することなくケイ酸塩前駆体物質により作製されたシリカフレークが、好ましい。これらは、好ましくは、エンドレスベルト(endless belt)を前駆体物質(ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムなど)で被覆すること、乾燥した後に得た膜を固化すること、得られた固体膜を酸で処理すること、洗浄すること、最後に膜をベルトから分離することにより製造され、それによって所望のシリカフレークが製造される。この種類の基材は、純粋なシリカフレークとして、または少なくとも1つの誘電体被覆を有する場合、Merck KGaA、Germanyから商標名Colorstream(登録商標)として入手可能である。この種類のシリカフレークは、本発明に好ましく使用される。
【0045】
平面で且つ平滑な表面、上記に記載された比較的小さな厚さ、ならびに厚さおよび粒径の小さな偏差に関して所望の特性を有するガラスまたは様々なホウケイ酸塩の透明基材フレークも、市場において市販されている。
【0046】
上記に記述された基材粒子は、少なくとも1つの誘電体層により場合によりプレコートされていてもよい。このために、真珠光沢顔料および効果顔料の当該技術において一般に既知の手順を用いることができる。特に、湿式化学被覆手順が好ましく、特に好ましいものは、無機出発物質を使用する湿式化学被覆法であり、それはこれらの方法が、取扱および制御が容易であり、それ自体封入基材粒子をもたらすからである。
【0047】
一般に、誘電体層、特に誘電体金属酸化物または金属酸化物水和物の層で基材粒子を被覆する湿式被覆法は、以下のように実施される。基材粒子を水に懸濁し、1つまたは複数の加水分解され得る金属塩を、加水分解に適しており、金属酸化物または金属酸化物の水和物が二次沈殿の事象なしに小板(platelet)上に直接沈殿するように選択されたpH値で添加する。そのpH値を、通常、塩基および/または酸の同時計量添加により一定に保持する。続いて、顔料を分離し、洗浄し、乾燥し、望ましい場合は焼成し、存在する特定の被覆に対する焼成温度を最適化することが可能である。一般に、焼成温度は、250から1000℃の間、好ましくは350から900℃の間である。望ましい場合、個別の被覆の付着に続いて、顔料を分離し、乾燥し、望ましい場合は、沈殿による更なる層の付着のために再懸濁する前に焼成することができる。本発明の磁性顔料の製造方法において、誘電体層(複数可)をマグヘマイト層が付着される直前に基材粒子に付着させる場合、ならびに誘電体層(複数可)をマグヘマイト被覆に付着させる場合、焼成工程を完全に省くこともできる。
【0048】
完全性のために、誘電体層の被覆を、ガス相被覆により流動層反応器で実施することもでき、ここで、例えば、真珠光輝(lustre)顔料を調製するために、EP0045851およびEP0106235において提案されている技術を適宜に使用することが可能である。しかし、上記に記載された湿式被覆法が明らかに好ましい。
【0049】
例えば上記に記載された湿式化学法を使用して、二酸化ケイ素層による透明基材粒子の被覆を、以下に記載される手順により達成することができる。ケイ酸カリウムまたはナトリウム溶液を、被覆される物質の懸濁液に計量導入し(metered into)、約50〜100℃に加熱する。pH値を、HCl、HNOまたはHSOなどの希鉱酸の同時添加により約6〜9で一定に保持する。所望の層厚のSiOに達するとすぐに、ケイ酸塩溶液の添加を停止する。続いてそのバッチを約0.5時間撹拌する。
【0050】
二酸化チタン層の付着について、好ましいものは、US3,553,001に記載されている技術である。チタン塩水溶液を、被覆される物質の懸濁液にゆっくりと加え、約50〜100℃に加熱し、約0.5〜5の実質的に一定のpH値を、塩基、例えばアンモニア水溶液またはアルカリ金属水酸化物水溶液の同時計量添加により維持する。TiO沈殿物の所望の厚さに達するとすぐに、チタン塩溶液および塩基の両方の添加を停止する。
【0051】
この技術は、滴定法とも呼ばれ、過剰量のチタン塩を避けるという事実によって注目される。これは、水和TiOによる均一な被覆に必要であり且つ被覆される粒子の利用可能な表面積により単位時間あたり受け取ることができる単位時間あたりの量のみを加水分解に供給することによって達成される。したがって、被覆される表面に沈殿しない水和二酸化チタン粒子は生成されない。
【0052】
真珠光沢顔料の製造のための薄片状基材粒子の湿式化学被覆の方法は、例えば以下の文献において記載されている。DE1467468、DE1959988、DE2009566、DE2214545、DE2215191、DE2244298、DE2313331、DE2522572、DE3137808、DE3137809、DE3151343、DE3151354、DE3151355、DE3211602およびDE3235017。
【0053】
プレコートされていてもいなくても、マグヘマイト層での上記に記述された透明基材粒子の被覆では、以下の手順が好ましく適用される。
【0054】
基材粒子を水に懸濁する。好ましくは、懸濁液を75℃〜85℃の温度に加熱する。得られた懸濁液のpH値を、水性懸濁液への酸の添加により、2から4の間の値に調整し、一定に保持する。その後、可溶性鉄化合物を、依然としてそのpH値を一定に保持しながら、懸濁液にゆっくりと計量導入する。可溶性鉄化合物の添加を完了した後、pHを5.5から7.5の間の値、好ましくは6.5から7.5の間の値に上昇させる(アルカリ土類金属酸化物をマグヘマイト層に組み込むべき場合)。このために、アルカリ土類金属化合物の水溶液を、そのpH値を一定に保持しながら、懸濁液にゆっくりと計量導入し、懸濁液を、好ましくは更に0.5時間撹拌下に保持し、次に場合により濾過し、洗浄する。有利には、アルカリ土類金属化合物の添加を、少なくとも1つの水溶性鉄化合物、特に鉄(II)化合物の更なる添加と組み合わせる。好ましくは、鉄(II)化合物、ならびに鉄(III)化合物をアルカリ土類金属化合物と同時に添加する。得られた顔料を分離し、100℃から250℃の間の中温で1時間から10時間の間の時間、あるいは350℃と450℃の間の温度で5から30分間の間の短時間のいずれかにより乾燥する。場合により、得られた顔料を、粒径分布を制限するために分級することができる。
【0055】
上記に記載された方法は、好ましくは不活性ガス雰囲気下、例えば窒素、アルゴンなどを使用して実施される。
【0056】
更に、上記に既に記載されているように、用いられている場合では、アルカリ土類金属化合物を、更なる水溶性鉄化合物を懸濁液に同時計量導入している間に、被覆される基材に付着させる場合が有利である。最後の場合において、まず最初の工程で添加される水溶性鉄化合物は、有利には鉄(III)化合物、例えばFe(NOであり、一方、可溶性アルカリ土類金属化合物に加えて用いられる水溶性鉄化合物は、少なくとも鉄(II)化合物、例えばFeSO7HOを含み、場合によりFe(NOなどの鉄(III)化合物を含むこともできる。
【0057】
一般に以下の水溶性鉄化合物を使用することができる。FeSO、FeCl、Fe(NH(SO、Fe(NO、Fe(SO、FeCl、FeNH(SOまたはFe(NO;FeSOおよびFe(NOが特に好ましい。
【0058】
アルカリ土類金属化合物として、Mg、Ca、Sr、Baの水溶性化合物またはこれらの混合物を使用することができる。アルカリ土類金属塩の種類は特に限定されない。好ましくは、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物またはハロゲン化物を、これらが水溶性である限り、使用することができる。好ましいアルカリ土類金属化合物には、MgSO、Mg(NO、MgCl、MgBr、MgI、Mg(OH)、CaCl、CaBr、Ca(OH)およびCaIが含まれる。
【0059】
MgOがマグヘマイト層のドーピングに最も好ましいアルカリ土類金属酸化物であるので、上記に記述されたマグネシウム化合物が最も好ましく、特にMgSOである。
【0060】
マグヘマイト被覆におけるアルカリ土類金属酸化物の含有量は非常に小さく、通常、マグヘマイト層の重量に基づいて1重量%以下、好ましくは0.01から0.1重量%未満の間である。
【0061】
アルカリ土類金属酸化物のそのような小さな含有量は、マグヘマイト層内に混合酸化物の形成をもたらさず、むしろアルカリ土類金属酸化物、特にMgOでドープされたマグヘマイト層がこの方法によってもたらされる。
【0062】
既に前記に記載されたように、ドーピングは、より良好な分散性、光沢、より明澄な干渉色または熱および風化に対する改善された安定性を、本発明の磁性顔料に付与するばかりでなく、得られた顔料の彩度も改善し、このことはむしろ予測することができなかった。
【0063】
基材物質およびマグヘマイト被覆が、金色干渉色および上述のようにそれに非常に類似した黄色−金色の吸収色を示すように互いに適合される場合、カラーフロップを全くまたは僅かしか示さず、それぞれの視角において純粋な可視金色を示し、高い彩度を示し、白色表面に被覆されたときにはっきりと目に見えるための十分に高い遮蔽力を示す、非常に魅力的な有色顔料を達成することができる。加えて、これらの非常に魅力的な色特性は、三次元のデザインを達成するための、磁場における本発明の磁性顔料の配向を可能にする非常に良好な磁気挙動を伴う。
【0064】
更に、少なくとも彩色特性は、マグヘマイト被覆をアルカリ土類金属酸化物でドープすることによって更に改善することができる。
【0065】
上記に記述された特性を有する本発明の磁性顔料は、価値のある洗練された物体における使用に役立つ。
【0066】
したがって、インク、塗料、ワニス、被覆組成物、プラスチック、ホイル、紙、セラミックス、ガラス、化粧品および医薬製剤を着色するため、レーザーマーキングするため、ならびに多様な溶媒含有量の顔料調製物を着色するために本発明の磁性顔料を使用することが、本発明の1つの目的である。
【0067】
特に機密保護用途に関して、顔料含有媒体の最も一般的な付着方法は印刷インクにおけるものであるので、本発明の磁性顔料を印刷インクに使用することが好ましい。これらには、磁性顔料の実際の粒径に応じて、ほんの幾つか挙げると、スクリーン印刷インク、凹版印刷インクなどのグラビア印刷インク、オフセット印刷インク、フレキソ印刷インク、ならびにインクジェット印刷インクを含む印刷操作に通常使用される全種類の印刷インクが含まれ得る。
【0068】
本発明の更なる目的は、また、本発明の磁性顔料を含有する製品である。一般に、本発明の顔料を、本発明の顔料の特性の1つ、すなわち彩色特性または磁気特性またはこれらの両方を活かすことができるあらゆる製品に適用することができる。
【0069】
特に、本発明の顔料を装飾および機密保護製品において極めて有利に使用することができ、それはこれらの際立つ特性が両方の領域において非常に望ましいからである。
【0070】
本発明の意味における機密保護製品は、例えば、銀行券、小切手、パスポート、本人確認書類、スマートカード、運転免許証、株券、債券、小切手保証カード、タックスバンダロール(tax banderol)、切手、チケット、クレジットカード、デビットカード、テレホンカード、くじ券、ギフト券、包装材、装飾材、ブランド製品または機密保護が必要な任意のその他の製品である。
【0071】
本発明の磁性顔料を有機はもとより無機の着色剤および顔料、ならびに特に任意の種類の効果顔料と混合して使用できることは、言うまでもないことである。有機顔料および着色剤は、例えば、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、多環式顔料、カチオン性、アニオン性または非イオン性着色剤である。無機着色剤および顔料は、例えば、白色顔料、有色顔料、黒色顔料または効果顔料である。適切な効果顔料の例は、金属効果顔料、真珠光沢顔料または干渉顔料であり、これらは、一般に、雲母、ガラス、Al、Fe、SiOなどの単または多被覆小板に基づいている。これらの顔料の構造および特定の性質の例は、とりわけ、RD471001またはRD472005に開示されており、これらの開示は参照として本明細書に含める。
【0072】
加えて、本発明の磁性顔料と混合して使用することができる更なる着色剤は、任意の種類の発光着色剤および/または顔料、ならびにホログラム顔料またはLCP(液晶ポリマーに基づいた顔料)である。本発明の磁性顔料を、一般的に使用され、市販されている顔料および充填剤とあらゆる所望の混合比で使用することができる。他の顔料および着色剤を伴う本顔料の使用における制限は、混合物が本発明の顔料の磁気特性または彩色特性を大きく妨害または制限する場合においてのみ設けられる。
【0073】
本発明は、以下の例においてより詳細に記載されるが、これらに制限されるべきではない。
【0074】
例1:
100gの二酸化アルミニウムフレーク(微量含有量のTiOを有し、平均厚が220nm、平均粒子直径が18μmのAl)を脱イオン水に懸濁する。懸濁液を撹拌しながら80℃に加熱する。窒素ガスを反応容器の中にゆっくりと加える。pH値を、酸性化合物(HCl、約15重量%)を懸濁液に計量導入することにより、3.0に調整し、一定に保持する。依然としてpH値を一定に保持しながら、Fe(NO溶液(100mlの脱イオン水中5.65gのFe(NO9HO)を懸濁液に加える。pH値を、塩基性組成物(NaOH、約30重量%)を懸濁液に添加することにより約7.0に上昇させる。そのpH値を一定に保持しながら、Mg成分および少なくともFe成分の水溶液(1000mlの脱イオン水中243gのFeSO7HO、108gのMgSO7HOおよび16gのFe(NO9HO)を懸濁液にゆっくりと計量導入し、次にこれを撹拌しながら更に30分間保持する。得られた顔料を濾過により分離し、脱イオン水で洗浄し、オーブン中で200℃で約4時間乾燥する。
【0075】
得られた顔料は、鮮明な光輝性を有する強い金色および高い磁気を示す。基材上の鉄酸化物層の構造は、粉末X線回折および熱分析(TG/DTA)によりガンマ鉄酸化物(マグヘマイト)であることを確認した。
【0076】
例2:
MgSO7HOを懸濁液に添加しない以外は、例1の手順を繰り返す。
【0077】
得られた顔料は、金色の光輝色および非常に良好な磁気特性を示す。
【0078】
比較例1:
雲母(平均粒子直径が20μm、平均厚が450nm)を透明基材として二酸化アルミニウムフレークの代わりに使用する以外は、例1の手順を繰り返す。
【0079】
得られた顔料は、低い彩度の黄色を帯びた色および弱い磁気を示す。
【0080】
彩色特性の測定:
例1および2、ならびに比較例1で得たそれぞれの顔料の0.5gを9.5gの標準NC−アクリレートラッカー(カタログにより(per catalogue)Merck KGaAより入手可能)と混合する。得られた混合物を通常の黒色/白色紙ストリップにバーコーターで被覆し、乾燥する。
【0081】
試料の彩色特性を、Minolta CR−300装置(Konica Minolta Holdings,Inc.の製品)を使用して、紙ストリップの黒色プレコート領域で測定する。彩色結果は下記の通りである。
【0082】
【表1】
【0083】
表1の結果から、マグヘマイト層内にMgOのドーピングを有する例1の顔料が、高い光輝および高い彩度の非常に強い金色を示すことが、明らかに認められる。例2の顔料の彩色結果は、例1と比較したときにそれぞれの場合において多少低いが、依然として、良好な彩度を有する明確で鮮明な金色の干渉色を示すために十分である。対照的に、比較例1の試料は、ただ低い彩度および光輝の淡い黄色を帯びた色を示すだけである。
【0084】
磁気特性の測定:
例1、2および比較例1において得られた試料の磁気特性を振動磁力計(VSM−5型、Toei Industry Co.,Ltd.の製品)および標準手続き(室温で10kOeの磁場)を使用して測定した。
【0085】
対応する結果は下記の通りである。
【0086】
【表2】
【0087】
表2に示された結果は、例2の試料と比較して全く同程度の例1の試料の磁気特性を示し、一方、比較例1の雲母に基づいた磁気顔料の磁気挙動は、本発明のアルミナに基づいた磁気顔料よりもかなり弱い。