【文献】
ISRN Veterinary Science,2011年,Vol.2011,pp.1〜7,Article ID851593
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の溶液を−200℃以上10℃以下に保持する工程を含む、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の架橋物の製造方法であって、
前記架橋物は、以下の性質を有する:該架橋物の濃度が1質量%(固形分)になるように生理食塩水中に分散させて調製された混合物を、50℃にて72時間保存した後の残存率が20%以上である、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の架橋物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、格別に断らない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
【0030】
[カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の架橋物の製造方法]
本発明の一実施形態に係るカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またの架橋物(以下、単に「架橋物」ともいう)。の製造方法は、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の溶液を−200℃以上10℃以下に保持する工程を含む。
【0031】
本発明において、「カルボキシメチル基」とは、「−CH
2−CO
2H」または「−CH
2−CO
2−」で表される基のことをいう。また、本実施形態に係る製造方法で使用する原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、後述する方法にて製造されたものであることができる。
【0032】
<本実施形態に係る製造方法のメカニズム>
本実施形態に係る製造方法では、前記保持する工程によって、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を構成する糖鎖同士の距離が短くなる結果、該糖鎖を構成する官能基同士(例えば、カルボキシル基同士、水酸基同士、N−アセチル基同士、カルボキシル基と水酸基、水酸基とアミノ基、アミノ基とカルボキシル基)の間に水素結合が生じる。その結果、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を構成する糖鎖同士が水素結合を介して強く結合することにより、熱安定性が高まると推測される。
【0033】
また、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を構成する糖鎖同士が水素結合を介して結合することにより、3次元網目構造が構築されると推測される。本実施形態に係る架橋物は、この3次元網目構造の中に水を取り込むことにより、後述する水膨張性ゲルを形成することができる。
【0034】
特に、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、カルボキシメチル基を有している分、ヒアルロン酸および/またはその塩と比較して、ヒアルロン酸骨格の一構成単位中により多くのカルボキシル基を有する。すなわち、該一構成単位中において水素結合に関与することができるカルボキシル基が、ヒアルロン酸および/またはその塩よりも多いため、前記保持する工程において、より多くの水素結合を形成することができると推測される。
【0035】
したがって、本実施形態に係る架橋物は、室温にて、後述する優れた熱安定性を有する。すなわち、本実施形態に係る架橋物が有する水素結合は、室温では破壊され難い。なお、本発明において、「室温」とは、25℃以上30℃以下の温度を意味する。
【0036】
<保持温度>
前記保持する工程において、前記溶液の温度を調整することにより、本実施形態に係る架橋物を用いて得られる水膨潤性ゲルの硬さを調整することができる。例えば、本実施形態に係る製造方法では、水素結合をより多く形成し、より硬く熱安定性がより高い水膨潤性ゲルの原料となる架橋物を得ることができる点で、前記溶液を保持する工程を−1℃以下で行うことがより好ましく、−10℃以下で行うことがさらに好ましく、一方、−30℃以上で行うことが好ましい。また、柔軟性を有する水膨潤性ゲルの原料となる架橋物を得ることができる点で、前記溶液を前記保持する工程を0℃以上10℃以下で行うことがより好ましく、1℃以上10℃以下で行うことがさらに好ましい。なお、水膨潤性ゲルは硬いほど(すなわち、ゲルの膨潤度が低いほど)、耐酵素分解性が高くなる傾向がある。よって、前記溶液を保持する工程を10℃以下で行うことにより、膨潤度が低く、耐酵素分解性が高い水膨潤性ゲルを得ることができる。
【0037】
<保持時間>
本実施形態に係る製造方法では、前記保持する工程における前記溶液の保持温度や、前記溶液を所定の保持温度に保持するための装置の種類に応じて、前記保持する工程を、1秒間以上400時間以下の時間で行うことができ、熱安定性および耐酵素分解性をより高めるためには、30時間以上の時間行うことが好ましく、一方、300時間以下の時間であってもよく、96時間以下の時間行うことができる。
【0038】
<溶液中の原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の濃度>
本実施形態に係る製造方法では、水素結合をより確実に形成して熱安定性をより高くすることができる点で、前記溶液における原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の濃度は1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量以上%であることがより好ましく、一方、25質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
<溶液のpH>
本実施形態に係る製造方法では、水素結合をより確実に形成して熱安定性をより高くすることができる点で、前記原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の溶液のpHは3以下(0以上3以下の範囲)であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましく、1以下であってもよい。
【0040】
前記保持する工程において、原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の溶液のpHが3以下である場合、原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩に含まれるカルボキシル基が酸型(−CO
2H)になるため、該カルボキシル基同士および該カルボキシル基と他の官能基(例えば、水酸基、アミノ基等)の間で水素結合がより構築されやすくなるため、熱安定性がより優れていると推測される。
【0041】
なお、前記溶液のpHを酸性(pH7未満)に調整するために使用する酸は、該溶液のpHを酸性に調整できる酸であれば、いずれの酸を使用することができる。酸の使用量を低減できる観点から、該酸は例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸、クエン酸等の有機酸を使用することができる。
【0042】
<溶媒>
本実施形態に係る製造方法では、原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を溶解させる溶媒は、水、および水と混和する水溶性有機溶媒との混和物であることができる。
【0043】
水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等を挙げることができ、これらを単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0044】
<膨潤溶解>
原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の溶液の分子量の低下を抑え、かつ、原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を衛生的に保つために、原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を溶媒に溶解させて溶液を調製する際、例えば0℃以上20℃以下の温度にて5時間以上48時間以下保持することにより、該原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を膨潤させて溶解させることが好ましい。
【0045】
<洗浄工程>
本実施形態に係る製造方法では、副生成物を除去することができる点(特に、前記溶液が酸を含む場合、該酸を除去してpHを高めることができる点)で、前記保持する工程により、前記架橋物を含む組成物が得られ、前記組成物を水で洗浄して、前記架橋物を得る工程(前記架橋物の単離)をさらに含むことができる。
【0046】
前記洗浄する工程で使用する洗浄液は、例えば、水および水と水溶性有機溶媒との混合液を使用することができる。ここで、水溶性有機溶媒は、前記修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の溶解性が低いものであればよい。前記洗浄する工程において、洗浄液の温度を30℃以下(通常0℃以上25℃以下、好ましくは3℃以上、より好ましくは4℃以上)にすることにより、前記保持する工程において形成された水素結合を維持することができるため、最終的に得られる本実施形態に係る組成物の特性(熱安定性、水膨潤性)を維持することができる。
【0047】
<繰り返し処理>
本実施形態に係る製造方法では、水素結合をより確実に形成させて熱安定性をより高めることができる点で、前記保持する工程と、前記組成物を水で洗浄して、架橋物以外の不純物を除去する工程との組み合わせを1回以上繰り返すことが好ましく、通常、2回以上5回以下繰り返すことができる。
【0048】
[原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩]
<原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の分子量>
本実施形態に係る原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は、分子量が通常4,000以上400万以下である。本発明において、原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の分子量は、以下の方法にて測定することができる。
【0049】
ゲル濾過カラムを用いて、分子量が既知である複数の(精製)ヒアルロン酸(基準物質)を液体クロマトグラフィー分析することで、それらの保持時間より検量線を作成する。同様に、測定対象である原料修飾ヒアルロン酸を液体クロマトグラフィー分析し、前記検量線を用いて分子量を求めることで、原料修飾ヒアルロン酸の分子量を求めることができる。
【0050】
前記液体クロマトグラフィー分析に使用することができる液体クロマトグラフィー分析装置としては、例えば、Waters Alliance 2690 HPLC Separations Module(Waters社製)、Waters Alliance 2695 HPLC Separations Module(Waters社製)、1200 Series(Agilent社製)が挙げられる。また、液体クロマトグラフィー分析に使用することができるカラムとしては、例えば、shodex社製 配位子交換クロマトグラフィー用カラム(配位子交換モード+サイズ排除モード)、型名「SUGAR KS−801」、「SUGAR KS−802」、「SUGAR KS−803」、「SUGAR KS−804」、「SUGAR KS−805」、「SUGAR KS−806」、「SUGAR KS−807」や、TOSOH製 サイズ排除クロマトグラフィーカラム、型名「TSKgel GMPW」が挙げられる。
【0051】
本実施形態に係る製造方法では、水素結合をより確実に得ることができる点で、前記原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量が30万以上であることが好ましく、50万以上であることがより好ましい(通常300万以下、200万以下であることができる)。
【0052】
本発明において、カルボキシル基を有する修飾ヒアルロン酸および/またはその塩のヒアルロン酸を構成する2糖単位に対するカルボキシメチル化率(以下、単に「カルボキシメチル化率」ともいう。)は、
1H−NMRスペクトルにおいて、ヒアルロン酸骨格中のC−2位に結合するN−アセチル基のメチル基(−CH
3)のプロトンを示すピーク(2ppm付近に発現)の積算値に対する、カルボキシメチル基(−CH
2−CO
2Hまたは−CH
2−CO
2−)中のメチレン基(−CH
2−)のプロトンを示すピーク(3.8ppm以上4.2ppm以下の範囲に発現)の積算値の割合(%)で表される。
【0053】
本発明において、「ヒアルロン酸を構成する2糖単位」とは、ヒアルロン酸を構成する、隣り合って結合する2糖(グルクロン酸およびN−アセチルグルコサミン)で構成される1単位をいい、「ヒアルロン酸を構成する2糖単位に対するカルボキシメチル化率」とは、該1単位に対する、該1単位に含まれるカルボキシメチル基の数であり、より具体的には、該1単位を100%とした場合、該1単位に対する、該1単位に含まれるカルボキシメチル基の数の割合(%)をいう。
【0054】
<原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩のカルボキシメチル化率>
本実施形態に係る製造方法では、水素結合をより確実に形成して熱安定性をより高くすることができる点で、前記原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩のカルボキシメチル化率が1%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、一方、通常400%以下であり、200%以下であることができる。
【0055】
<収率>
本実施形態に係る製造方法では、前記保持する工程により、前記架橋物を含む組成物が得られ、前記組成物を水で洗浄して、前記架橋物を得る工程をさらに含む場合、前記組成物の質量に対する、前記架橋物の質量が30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。なお、前記収率は、本願実施例に示される方法により算出することができる。
【0056】
[原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法]
本実施形態に係る製造方法において、原料であるカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩(以下、「原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩」ともいう。)は、例えば、温度が30℃以下の含水溶媒中で、原料ヒアルロン酸および/またはその塩をハロ酢酸および/またはその塩と反応させる工程によって得ることができる。
【0057】
上記反応させる工程において、反応液(含水溶媒)中に原料ヒアルロン酸および/またはその塩の少なくとも一部(好ましくは、ヒアルロン酸および/またはその塩の全部または大部分)とハロ酢酸および/またはその塩とが溶解した状態で該ヒアルロン酸および/またはその塩と該ハロ酢酸および/またはその塩とを反応させることができる。この場合、ヒアルロン酸および/またはその塩とハロ酢酸および/またはその塩とが溶解している点で、前記反応液は目視にて透明であってもよい。
【0058】
<原料ヒアルロン酸および/またはその塩>
本発明において、「ヒアルロン酸」とは、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの二糖からなる繰り返し構成単位を1以上有する多糖類をいう。また、「ヒアルロン酸の塩」としては、特に限定されないが、食品または薬学上許容しうる塩であることが好ましく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0059】
ヒアルロン酸は、基本的にはβ−D−グルクロン酸の1位とβ−D−N−アセチル−グルコサミンの3位とが結合した2糖単位を少なくとも1個含む2糖以上のものでかつβ−D−グルクロン酸とβ−D−N−アセチル−グルコサミンとから基本的に構成され、2糖単位が複数個結合したものである。該糖は不飽和糖であってもよく、不飽和糖としては、非還元末端糖、通常、グルクロン酸の4,5位炭素間が不飽和のもの等が挙げられる。
【0060】
原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を製造するために使用するヒアルロン酸および/またはその塩(原料ヒアルロン酸および/またはその塩)は、動物等の天然物(例えば鶏冠、さい帯、皮膚、関節液などの生体組織など)から抽出されたものでもよく、または、微生物、動物細胞もしくは植物細胞を培養して得られたもの(例えばストレプトコッカス属の細菌等を用いた発酵法)、化学的または酵素的に合成されたものなどを使用することができる。
【0061】
原料ヒアルロン酸および/またはその塩としては、当該粗抽出物および精製物のいずれを用いてもよいが、精製物、具体的には、カルボキシメチル化が円滑に進行できる点で、純度が90%(質量比)以上の原料ヒアルロン酸および/またはその塩を用いることが好ましい。
【0062】
<原料ヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量>
原料ヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量は通常、カルボキシメチル化を円滑に行うことができる点で、4,000以上400万以下であることが好ましく、300万以下であることがより好ましい。なお、原料ヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量は、下記の方法にて測定することができる。
【0063】
<分子量の測定方法>
即ち、約0.05gの(精製)ヒアルロン酸類(本品)を精密に量り、0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液に溶かし、正確に100mLとした溶液及びこの溶液8mL、12mL並びに16mLを正確に量り、それぞれに0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液を加えて正確に20mLとした溶液を試料溶液とする。この試料溶液および0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液につき、日本薬局方(第十六改正)一般試験法の粘度測定法(第1法毛細管粘度測定法)により30.0±0.1℃で比粘度を測定し(式(A))、各濃度における還元粘度を算出する(式(B))。還元粘度を縦軸に、本品の換算した乾燥物に対する濃度(g/100mL)を横軸にとってグラフを描き、各点を結ぶ直線と縦軸との交点から極限粘度を求める。ここで求められた極限粘度をLaurentの式(式(C))に代入し、平均分子量を算出する(Torvard C Laurent,Marion Ryan, and Adolph Pietruszkiewicz,” Fractionation of hyaluronic Acid”, Biochemina et Biophysica Acta.,42,476−485(1960)、四方田千佳子、「ヒアルロン酸ナトリウム製剤のSEC−MALLSによる分子量評価」、国立衛研報、第121号,030−033(2003))。
(式A)比粘度={(試料溶液の所要流下秒数)/(0.2mol/L塩化ナトリウム溶液の所要流下秒数)}−1
(式B)還元粘度(dL/g)=比粘度/(本品の換算した乾燥物に対する濃度g/100mL))
(式C)極限粘度(dL/g)=3.6×10
−4M
0.78
M:平均分子量
【0064】
<原料ヒアルロン酸および/またはその塩の含有量>
原料ヒアルロン酸および/またはその塩において、ヒアルロン酸および/またはその塩の含有量は、原料ヒアルロン酸および/またはその塩の純度の指標であり、ヒアルロン酸および/またはその塩の含有量が多いほど、原料ヒアルロン酸および/またはその塩の純度が高いといえる。
【0065】
本発明において、原料ヒアルロン酸および/またはその塩におけるヒアルロン酸の含有量は、カルバゾール硫酸法(例えば日本薬局方)にて測定されたグルクロン酸定量値から算出された値である。
【0066】
カルバゾール硫酸法は、ホウ酸ナトリウム・硫酸溶液中にヒアルロン酸水溶液を加えて混和し、ヒアルロン酸を加熱分解した後冷却し、カルバゾール・エタノール溶液を加えて混和し、加熱後放冷した試料液の吸光度(530nm)を測定する方法である。同様に処理したD−グルクロノラクトンを用いて検量線を作成し、D−グルクロノラクトン換算値を算出した後、1.102を乗じてグルクロン酸定量値を求める。得られたグルクロン酸定量値に(ヒアルロン酸類の分子量/グルクロン酸の分子量)を乗じてヒアルロン酸類の含有量を算出する。
【0067】
<カルボキシメチル化>
本発明において、「修飾ヒアルロン酸および/またはその塩」とは、少なくとも一部に有機基が導入されているヒアルロン酸および/またはその塩のことをいい、ヒアルロン酸および/またはその塩とは異なる構造を有する。また、本発明において「有機基」とは、炭素原子を有する基のことをいう。
【0068】
したがって、本発明において、「カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩」とは、少なくとも一部にカルボキシメチル基が導入されているヒアルロン酸および/またはその塩のことをいう。
【0069】
より具体的には、原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩では、例えば、ヒアルロン酸(下記式(1)参照)を構成する水酸基(下記式(1)において、ヒアルロン酸を構成するN−アセチルグルコサミンのC−4位、C−6位、ならびに、ヒアルロン酸を構成するグルクロン酸のC−2位、C−3位)の少なくとも一部の水酸基の水素原子が、−CH
2−CO
2Hおよび/または−CH
2−CO
2−で表される基)で置換されていることができる。すなわち、原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩では、これらの位置にある水酸基のうち1または2以上の位置にある水酸基の水素原子が、−CH
2−CO
2Hおよび/または−CH
2−CO
2−で表される基で置換されていてもよい。
【0070】
【化1】
(式中、nは1以上7,500以下の数を示す。)
【0071】
原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩は例えば、下記式(2)で表される化合物であることができる。
【0072】
【化2】
(式中、R
1〜R
5は独立して、水酸基、−CH
2−CO
2H、または−CH
2−CO
2−で表される基を表し(ただし、R
1〜R
5がいずれも水酸基を表す場合を除く。)nは1以上7,500以下の数を示す。)
【0073】
<pH>
本実施形態に係る製造方法において、水酸基の求核性を高めることができる点で、前記原料ヒアルロン酸および/またはその塩とハロ酢酸および/またはその塩との反応は塩基性条件下で行われることが好ましく、反応液(含水溶媒)のpHが9以上(9以上14以下、好ましくは10以上14以下、より好ましくは11以上14以下)であることがより好ましい。
【0074】
なお、この場合、反応液を塩基性に調整するために、塩基性電解質を反応液中で使用することができる。塩基性電解質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を効率良く得ることができる点で、反応液中の塩基性電解質の濃度は例えば、0.2モル/L以上10モル/L以下であり、好ましくは、0.5モル/L以上であり、8モル/L以下である。
【0075】
また、この場合、前記含水溶媒における前記ヒアルロン酸の濃度が0.05g/mL以上0.5g/mL以下であることが好ましい。
【0076】
<ハロ酢酸および/またはその塩>
本実施形態に係る原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法において、ハロ酢酸および/またはその塩は、カルボキシメチル基を原料ヒアルロン酸および/またはその塩に導入するために使用される。
【0077】
ハロ酢酸は例えば、モノハロ酢酸および/またはその塩であることができ、より具体的には、クロロ酢酸および/またはその塩、または、ブロモ酢酸またはその塩であることが好ましい。ハロ酢酸の塩は例えば、クロロ酢酸のアルカリ金属塩および/またはブロモ酢酸のアルカリ金属塩であることが好ましく、クロロ酢酸ナトリウムおよび/またはブロモ酢酸ナトリウムであることがより好ましい。
【0078】
<反応温度>
ハロ酢酸および/またはその塩として、ブロモ酢酸および/またはその塩を使用する場合、低分子化の進行を抑制できる点で、反応液の温度を10℃以下(例えば、0℃を超えかつ10℃以下)で反応を行うことが好ましい。
【0079】
例えば、高分子量(例えば80万以上)であり、かつ、高いカルボキシメチル化率(例えば50%以上、好ましくは50%以上200%以下))の原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を製造するためには、ハロ酢酸および/またはその塩として、ブロモ酢酸および/またはその塩を使用して、反応液の温度を10℃以下(例えば、0℃を超えかつ10℃以下)で反応を行うことが好ましい。
【0080】
<ハロ酢酸および/またはその塩の使用量>
ハロ酢酸および/またはその塩の使用量は通常、原料ヒアルロン酸および/またはその塩の使用量の10%以上500%以下(質量比)であり、50%以上200%以下(質量比)あることが好ましい。
【0081】
<含水溶媒>
本実施形態に係る原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法において、原料ヒアルロン酸および/またはその塩の溶解性が高い点から、前記含水溶媒は、水、または水溶性有機溶媒と水との混合液であることが好ましい。
【0082】
含水溶媒が水溶性有機溶媒と水との混合液である場合、すなわち、含水溶媒が水および水溶性有機溶媒の両方を含む場合、ヒアルロン酸の溶解性を高めることができる点で、該混合液中における水溶性有機溶媒の割合は60v/v%以下(0v/v%を超えて60v/v%以下)であることが好ましく、40v/v%以下(0v/v%を超えて40v/v%以下)であることがより好ましい。
【0083】
水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等を挙げることができ、これらを単独でまたは組み合わせて使用することができる。このうち、イソプロパノール、エタノール等の炭素原子数1、2または3の低級アルコールが好ましい。
【0084】
<反応温度>
前記反応において、カルボキシル化を円滑に進行でき、かつ、分子量の低下を抑制できる点から、反応液の温度は通常30℃以下(好ましくは0℃を超えかつ30℃以下)であることが好ましく、10℃以下(好ましくは0℃を超えかつ30℃以下)であることがより好ましい。特に、反応液の温度を10℃以下とすることにより、高分子量(80万以上)の原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を容易に得ることができる。
【0085】
例えば、ハロ酢酸および/またはその塩としてクロロ酢酸および/またはその塩を使用する場合、カルボキシメチル化が円滑に進行でき、かつ、得られる原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の褐変を抑えることができる点で、前記反応における反応液の温度は通常(好ましくは0℃を超えかつ30℃以下)であることができ、1℃以上30℃以下であることが好ましい。
【0086】
また、例えば、ハロ酢酸および/またはその塩としてブロモ酢酸および/またはその塩を使用する場合、カルボキシメチル化が円滑に進行でき、得られる原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の褐変および分子量の低下を抑えることができる点で、前記反応における反応液の温度は通常10℃以下(好ましくは0℃を超えかつ10℃以下)であることができ、1℃以上10℃以下であることが好ましい。
【0087】
<反応時間>
前記反応において、カルボキシル化を円滑に進行でき、かつ、分子量の低下を抑制できる点から、反応時間は通常30分以上100時間以下であることが好ましく、60分以上60時間以下であることがより好ましい。
【0088】
[架橋物]
本発明の一実施形態に係る架橋物は、上記実施形態に係る架橋物の製造方法によって得られる。本実施形態に係る架橋物は、水膨潤性を有することができる。
【0089】
本発明において「水膨潤性」とは、水を取り込んで膨潤する性質のことをいい、一般に、水を取り込んでゲル状になる性質のことをいう。本実施形態に係る架橋物は、前記保持する工程によって生じた官能基同士の水素結合によって形成される3次元網目構造を有し、該3次元網目構造の中に水を取り込むことにより膨潤して、ゲルを構成することができる。
【0090】
なお、本実施形態に係る架橋物は、原料である原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩(カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩)と同様の化学構造式、平均分子量およびカルボキシメチル化率を有するものの、上述した水素結合の形成に起因して、原料修飾ヒアルロン酸および/またはその塩とは異なる物理的性質(後述する水膨張性および熱安定性)を有する。
【0091】
したがって、本実施形態に係る架橋物(カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩)は、平均分子量が30万以上であり、かつ、カルボキシメチル化率が1%以上であることができる。また、本実施形態に係る架橋物(カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩)は、上述した式(2)で示される構造を有する。
【0092】
<膨潤度>
本発明の一実施形態に係る架橋物は、水膨潤性を有し、水に対する膨潤度が10倍以上250倍以下(質量比)である。
【0093】
なお、本発明において、「ゲル」とは、三次元網目構造を有する高分子をいい、「水膨潤性ゲル」とは、三次元網目構造の内部に水を取り込んで保持する膨潤体のことをいい、より具体的には、桐山ロート用の濾紙No.707上に1時間置いたときに該濾紙から水が流出しない性質を有する高分子をいう。また、本発明において、「膨潤度」とは、水膨潤性ゲルにおいて、架橋物の質量に対する水の質量(架橋物と水との質量比)を意味する。
【0094】
より安定して水を保持できる点で、本実施形態に係る架橋物の膨潤度は、20倍以上(質量比)であることがより好ましく、一方、300倍以下(質量比)であることがより好ましく、250倍以下(質量比)であることがさらに好ましく、200倍以下(質量比)であってもよく、硬いゲルである場合、例えば100倍以下(質量比)であってもよく、50倍以下(質量比)であることが好ましい。
【0095】
<可逆的な水膨潤性>
本実施形態に係る架橋物の特徴のひとつとして、可逆的な水膨潤性を有することが挙げられる。本発明において、「可逆的な水膨潤性」とは、水を加えると膨潤してゲルになり、ゲルを乾燥させて水を除去すると固体になる性質を有し、かつ、ゲルから固体への変化および固体からゲルへの変化を繰り返すことができる性質をいう。なお、本実施形態に係る架橋物の可逆的な水膨潤性は、該架橋物を加熱したり、または、該架橋物を塩基性条件下に曝したりしない限り、維持することができる。
【0096】
本実施形態に係る架橋物が可逆的な水膨潤性を有することにより、ゲルから固体への変化および固体からゲルへの変化を何度も繰り返すことができるため、取扱性に優れている。
【0097】
<保存安定性>
本実施形態に係る架橋物は固体であるため、固体として保存が可能である。ヒアルロン酸や本実施形態に係る架橋物等の多糖類は通常、水が存在する状態(例えば、水溶液やゲルの状態)で保存するよりも、固体の状態で保存するほうが、分解を抑制することができる。このため、本実施形態に係る架橋物を固体として保存する場合、保存安定性に優れている。
【0098】
<耐酵素分解性>
本実施形態に係る架橋物は耐酵素(ヒアルロニダーゼ)分解性を有する。より具体的には、本実施形態に係る架橋物の濃度が0.1質量%(固形分)になるように50mMリン酸緩衝液中に分散させて調製された混合物を、ヒアルロニダーゼ(5単位/架橋物1mgあたり)存在下で40℃にて24時間保存した後の残存率が1%以上であることが好ましく、10%以上100%以下の範囲内であることがより好ましい。なお、耐酵素分解性は例えば、本願実施例に示される方法により測定することができる。
【0099】
本実施形態に係る架橋物が耐酵素分解性に優れている原因のひとつとして、本実施形態に係る架橋物がカルボキシメチル基を含有することが挙げられる。本実施形態に係る架橋物がカルボキシメチル基を含有することにより、ヒアルロニダーゼが、本実施形態に係る架橋物に含まれるヒアルロン酸骨格を認識しづらくなるため、耐酵素分解性が向上すると推測される。
【0100】
なお、本実施形態に係る架橋物がカルボキシメチル基を含有することは、例えば、架橋物の
1H−NMRスペクトル解析において、3.8ppm以上4.2ppm以下に現れるピークの存在により同定することができる。
【0101】
<熱安定性>
本実施形態に係る架橋物は熱安定性に優れている。より具体的には、本実施形態に係る架橋物の濃度が1質量%(固形分)になるように生理食塩水中に分散させて調製された混合物を、50℃にて72時間保存した後の残存率が20%以上であることが好ましく、96時間保存した後の残存率が20%以上(さらには168時間保存した後の残存率が20%以上)であることがより好ましい。なお、熱安定性は例えば、本願実施例に示される方法により測定することができる。
【0102】
本実施形態に係る架橋物によれば、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含むことにより、ヒアルロン酸および/またはその塩と比較して、水素結合に関与できるカルボキシル基を多く含むため、熱安定性により優れている。
【0103】
また、本実施形態に係る架橋物の熱安定性は、上述した水素結合に起因しているため、当該熱安定性は経時的に緩やかに低下する。より具体的には、本実施形態に係る架橋物は、生体内に存在する熱(例えば37℃〜40℃前後)によって徐々に水素結合が解離する性質を有するため、適度な熱安定性を有する。
【0104】
[水膨潤性ゲル]
<架橋物の含有量>
本発明の一実施形態に係る水膨潤性ゲルは、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の架橋物と、水と、を含み、前記架橋物の含有量が固形分換算で0.4質量%以上(0.5質量%以上であってもよい。)10質量%以下である。
【0105】
本実施形態に係る水膨潤性ゲルに含まれる水の割合は、本実施形態に係る水膨潤性ゲルを乾燥させて水を除去する前後の質量差に対する、本実施形態に係る水膨潤性ゲルの乾燥前の質量より算出することができる。なお、本実施形態に係る水膨潤性ゲルの乾燥(水の除去)は、例えば、真空乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥により行うことができる。
【0106】
熱安定性により優れている点で、本実施形態に係る水膨潤性ゲルのpHは3以上8以下であることが好ましい。
【0107】
<熱安定性>
本実施形態に係る水膨潤性ゲルは、熱安定性に優れている。より具体的には、本実施形態に係る水膨潤性ゲルは、50℃にて72時間保存した後の残存率が20%以上であることが好ましく、96時間保存した後の残存率が20%以上(さらには168時間保存した後の残存率が20%以上)であることがより好ましい。
【0108】
<耐酵素分解性>
本実施形態に係る水膨潤性ゲルは、耐酵素分解性に優れている。より具体的には、本実施形態に係る水膨潤性ゲルは、ヒアルロニダーゼ(5単位/ゲル1mLあたり)存在下で40℃にて24時間保存した後の残存率が1%以上であることが好ましく、10%以上100%以下の範囲内であることがより好ましい。
【0109】
[医療材料]
本発明の一実施形態に係る医療材料は、上記実施形態に係る架橋物(例えば、水膨潤性ゲル)を含む。本実施形態に係る医療材料が、上記実施形態に係る架橋物を含むことにより、耐酵素分解性および熱安定性に優れており、固体にて保存が可能であるため、保存安定性に優れている。
【0110】
特に、本実施形態に係る医療材料が、上記実施形態に係る水膨潤性ゲルを含むことにより、上記実施形態に係る水膨潤性ゲルの可逆的な水膨潤性に起因して、使用時に上記実施形態に係る架橋物に水を加えて水膨潤性ゲルを調製することができるため、取扱性に優れている。
【0111】
本実施形態に係る医療材料は、一般に生体内適合性が求められる用途に使用することができる。当該用途としては、例えば、膝関節注射剤、癒着防止剤、皮下注射剤、薬物徐放剤、薬理活性物質の担体、創傷被覆材、人工皮膚、外科手術用縫合糸、止血剤、人工臓器、医療用具、医療器具が挙げられる。
【0112】
<膝関節注射剤>
本実施形態に係る医療材料は例えば、膝関節注射剤として使用されることができる。本実施形態に係る医療材料が上記実施形態に係る水膨潤性ゲルを含む場合、適度な弾力性、適度な熱安定性および優れた耐酵素分解性に優れている。このため、本実施形態に係る医療材料を例えば、膝関節注射剤として使用する場合、上記実施形態に係る水膨潤性ゲルが生体内である程度の期間分解されずに残存し、その後、生体内で分解されるため、組織同士の癒着を防止することができ、かつ、安全性に優れている。
【0113】
例えば、上記実施形態に係る水膨潤性ゲルが例えば、平均分子量が30万以上200万以下であり、かつ、カルボキシメチル化率が1%以上である、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩を含む場合、適度な柔軟性を有するため、膝関節に注入した際に、良好な感触をもたらすことができる。
【0114】
<成形体>
本実施形態に係る医療材料は、上記実施形態に係る架橋物を含むため、適用部位に応じて成形することができ、例えば、ゲル状、シート状、フィルム状、粒子状、繊維状、スポンジ状、チューブ状であることができ、外科手術に使用することができる。より具体的には、シート状またはフィルム状の本実施形態に係る医療材料を患部に貼付することができる。また、本実施形態に係る医療材料が上記実施形態に係る水膨潤性ゲルを含む場合、例えば、内視鏡手術において、ゲル状の本実施形態に係る医療材料を、内視鏡を用いて患部に容易に注入することができるため、癒着防止剤として好適に用いることができる。
【0115】
<癒着防止剤・皮下注射剤>
本実施形態に係る医療材料に含まれる上記実施形態に係る架橋物(例えば、水膨潤性ゲル)は、適度な熱安定性および優れた耐酵素分解性に優れている。このため、本実施形態に係る医療材料を例えば、癒着防止剤、皮下注射剤として使用する場合、上記実施形態に係る水膨潤性ゲルが生体内である程度の期間分解されずに残存し、その後、生体内で分解されるため、組織同士の癒着を防止することができ、かつ、安全性に優れている。
【0116】
<薬物徐放剤>
本実施形態に係る医療材料は例えば、薬物徐放剤として使用されることができる。本実施形態に係る医療材料が上記実施形態に係る水膨潤性ゲルを含む場合、保水性、適度な熱安定性および優れた耐酵素分解性に優れている。このため、本実施形態に係る医療材料を例えば、薬物徐放剤として使用する場合、上記実施形態に係る水膨潤性ゲルが生体内である程度の期間分解されずに残存し、その後、生体内で分解されるため、薬物の徐放を補助する作用を有し、かつ、安全性に優れている。
【0117】
なお、本実施形態に係る医療材料には、必要に応じて、増量剤、結合剤、滑沢剤、保存剤、酸化防止剤、香料、甘味料、酸味料、賦形剤等を配合することができる。また、ビタミンC、ビタミンB2、ビタミンB12、ビタミンE等のビタミン類、核酸、コンドロイチン硫酸、コラーゲン等の栄養成分、鉄、亜鉛等のミネラル成分等の各種栄養成分を配合することもできる。
【0118】
[化粧料]
本発明の一実施形態に係る化粧料は、上記実施形態に係る架橋物(例えば、水膨潤性ゲル)を含む。
【0119】
<保水効果>
また、本実施形態に係る架橋物は、該架橋物を構成するカルボキシル基に起因して、高い保水効果を有する。より具体的には、本実施形態に係る架橋物に含まれるカルボキシル基が水と水素結合を構成するため、該カルボキシル基に起因して、優れた保水力を発揮すると推測される。このため、例えば皮膚等の生体組織において高い保水効果を有する。したがって、本実施形態に係る架橋物を例えば化粧料の成分として使用することにより、高い保湿効果を奏することができる。
【0120】
したがって、本実施形態に係る化粧料に含まれる上記実施形態に係る架橋物は、高い保水効果、適度な熱安定性および優れた耐酵素分解性に優れているため、化粧料として使用する場合、生体内で徐々に分解するため、高い保湿作用が長く持続する。また、本実施形態に係る化粧料が上記実施形態に係る水膨潤性ゲルを含む場合、ゲルとして適度な弾力性を有するため、化粧料に配合した場合、ゲル特有の触感を生じさせることができるうえ、ゲルの中に有効成分を配合することにより、有効成分を徐放させることができる。
【0121】
本実施形態に係る架橋物(例えば、水膨潤性ゲル)は、生体組織の表面に塗布または接触して摂取させてもよいし、特に、顔、腕、手指、足、関節などの皮膚に塗布または接触させるのが好ましい。
【0122】
本実施形態に係る化粧料の態様は特に限定されないが、例えば、皮膚用化粧料が挙げられる。上記実施形態に係る架橋物を皮膚用化粧料に使用することにより、適度な粘度を有し、かつ、保水効果が高いため、皮膚に潤いを付与し、皮膚のかさつき感を改善することができる。
【0123】
本実施形態に係る皮膚用化粧料の態様としては、例えば、洗顔料、洗浄料、化粧水(例えば、美白化粧水)、クリーム(例えば、バニシングクリーム、コールドクリーム)、乳液、美容液、パック(例えば、ゼリー状ピールオフタイプ、ペースト状拭き取りタイプ、粉末状洗い流しタイプ)、クレンジング、ファンデーション、口紅、リップクリーム、リップグロス、リップライナー、頬紅、シェービングローション、アフターサンローション、デオドラントローション、ボディローション(ハンドケアローション、フットケアローションを含む)、ボディオイル、石鹸、入浴剤が挙げられる。
【0124】
本実施形態に係る化粧料にはさらに、以下の成分が配合されていてもよい。前記成分としては、例えば、カチオン化多糖類(例えば、カチオン化ヒアルロン酸、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化澱粉、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化デキストラン、カチオン化キトサン、カチオン化ハチミツ等)、アニオン界面活性剤(例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等)、非イオン界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体等)、陽イオン界面活性剤(例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等)、両性界面活性剤(例えば、アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、イミダゾリニウムベタイン、卵黄レシチン、大豆レシチン等)、油分(例えば、シリコーン、シリコーン誘導体、流動パラフィン、スクワラン、ミツロウ、カルナバロウ、オリーブ油、アボガド油、ツバキ油、ホホバ油、馬油等)、保湿剤(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸、アセチル化ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ジメチルシラノール、セラミド、ラウロイルグルタミン酸ジフィトステリルオクチルドデシル、フィトグリコーゲン、加水分解卵殻膜、トレハロース、グリセリン、アテロコラーゲン、ソルビトール、マルチトール、1,3−ブチレングリコール等)、高級脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ベヘニン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等)、高級アルコール(例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、バチルアルコール等)、多価アルコール(例えば、グリセリン、ジグリセリン、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンチレングリコール等)、増粘剤(例えば、セルロースエーテル、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、パルミチン酸デキストリン等)、両性高分子樹脂化合物(例えば、ベタイン化ジアルキルアミノアルキルアクリレート共重合体等)、カチオン性高分子樹脂化合物(例えば、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体カチオン化物、ポリジメチルジアリルアンモニウムハライド型カチオン性ポリマー等)、防腐剤(例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール等)、酸化防止剤(例えば、トコフェノール、BHT等)、金属封鎖剤(例えば、エデト酸塩、エチドロン酸塩等)、紫外線吸収剤(例えば、ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、メトキシ桂皮酸誘導体等)、紫外線反射剤(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等)、タンパク質加水分解物(例えば、ケラチンペプチド、コラーゲンペプチド、大豆ペプチド、コムギペプチド、ミルクペプチド、シルクペプチド、卵白ペプチド等)、アミノ酸(例えば、アルギニン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、ヒドロキシプロリン、システイン、セリン、L−テアニン等)、天然物エキス(クジンエキス、カジルエキス海草エキス、ユーカリエキス、ローヤルゼリーエキス、ローズマリーエキス、ブナの木エキス等)、その他の機能性成分(コエンザイムQ10、アルブチン、ポリクオタニウム51、エラスチン、白金ナノコロイド、パルミチン酸レチノール、パンテノール、アラントイン、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム、L−アスコルビン酸2−グルコシド、エラグ酸、コウジ酸、リノール酸、トラネキサム酸等)、リン脂質ポリマー、香料、色素が挙げられる。
【0125】
[美容用材料]
本発明の一実施形態に係る美容用材料は、上記実施形態に係る架橋物(例えば、水膨潤性ゲル)を含む。本実施形態に係る美容用材料を、例えば、顔、頭、首、胸部、腹部、臀部、背中、腰、上肢、下肢に注射することにより、美容上の効果(例えば、豊胸、美顔、美脚等、外観をより良くするため)を奏するために使用することができる。本実施形態に係る美容用材料は優れた耐酵素分解性、適度な熱安定性を有する。
【0126】
[実施例]
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0127】
<実施例1:カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸(原料修飾ヒアルロン酸)の調製>
30mlのサンプル瓶に水酸化ナトリウム1.04gを秤り取った後、水12mlを添加して溶解させた。次に、分子量が175万のヒアルロン酸2.0gを添加し溶解させた後、モノブロモ酢酸3.62gを添加して溶解させて、1℃で16時間静置した。その後、200mlビーカーにエタノール80mlを入れ、該反応液を撹拌しながら添加した。その後、400メッシュのろ布で沈殿を回収した後、10%塩化ナトリウム水溶液40mlを添加して沈殿を溶解させた。さらに、8%塩酸水溶液でpHを調製した後、エタノール100mlで3回洗浄した後、減圧濾過し、55℃で3時間減圧乾燥することにより、実施例1のカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸を得た。
【0128】
実施例1で得られたカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸は、分子量が106万であり、カルボキシメチル化率が99%であった。なお、実施例1ないし3では、カルボキシメチル化率を、後述する方法により測定および算出した。
【0129】
<実施例2:カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸(原料修飾ヒアルロン酸)の調製>
1000mLのビーカーを使用して、水酸化ナトリウム42.6gを秤り取り、水240mLを添加して溶解させた後、分子量が180万のヒアルロン酸40.0gを添加し溶解させた後、モノブロモ酢酸72.4gを添加して溶解させて4℃で16時間溶解させた。その後、10%食塩水を添加してヒアルロン酸の濃度が3質量%になるまで反応液を希釈した後、塩酸を用いて反応液のpHを6.3に調整し、10%食塩水の3倍量のエタノールを添加して、沈殿物を生じさせた。この沈殿物を70%エタノールで2回、90%エタノールで1回洗浄して得られた残渣を室温で24時間減圧乾燥することにより、実施例2のカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸を得た。
【0130】
実施例2で得られたカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸は、分子量が122万であり、カルボキシメチル化率が99%であった。
【0131】
<実施例3:カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸(原料修飾ヒアルロン酸)の調製>
実施例2で使用した反応スケールの1/4の反応スケールとし、かつ、反応時間を3時間にした以外は、実施例2と同様の処理を行って、実施例3のカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸を得た。
【0132】
実施例3で得られたカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸は、分子量が126万であり、カルボキシメチル化率が59%であった。
【0133】
<カルボキシメチル化率の測定および算出>
なお、実施例1ないし3で得られたカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸のカルボキシメチル化率は、以下の方法にて
1H−NMRスペクトルの積算値より求めた。
(試料調製)
試料7mgと内部標準物質4,4−ジメチル−4−シラペンタンスルホン酸ナトリウム(DSS)1mgを重水0.7mlに溶かし、NMR試料管に移し入れ、キャップした。
(測定条件)
装置:Varian NMR system 400NB型(バリアンテクノロジーズジャパンリミテッド)
観測周波数:400MHz
温度:30℃
基準:DSS(0ppm)
積算回数:64回
(解析方法)
1H−NMRスペクトルの2.0ppm付近に現れるヒアルロン酸のN−アセチル基(CH
3)のピークと、3.8ppm以上4.2ppm以下の範囲に現れるカルボキシメチル基のメチレン基(−CH
2―)のピークを積分した。積分値から下記の式より、修飾ヒアルロン酸を構成するヒアルロン酸の2糖繰り返し単位毎に結合しているカルボキシメチル基の数を、カルボキシメチル化率(CM化率)を求めた。
CM化率=(3.8ppm以上4.2ppm以下の範囲に現れるピークの積分値/2)/(2.0ppmのピークの積分値/3)
【0134】
<実施例4:カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸の架橋物の調製>
実施例1で得られたカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸を、表1に示す各条件にて処理を行った。まず、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸が表1に示す各濃度になるように該修飾ヒアルロン酸及び各添加物の添加量を調整し、、4℃で20時間保存し膨潤溶解させて、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸を含む溶液を調製した。この溶液を−18℃で16時間保持した。次いで、この溶液を25℃の流水で10分間洗浄して、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸の架橋物を含む組成物(実験番号1ないし4)を得た。なお、実験番号3における溶液のpHは0.1であり、実験番号14ないし17における溶液のpHは0.2であり、実験番号1、2、5ないし9、23および25における溶液のpHは0.7であり、実験番号4における溶液のpHは0.9であった。
【0135】
なお、表1に示される収率は、以下の方法により測定された値である。すなわち、表1に示す各条件で得られた前記組成物をそれぞれ、濃度が1質量%になるように純水中に分散させてゲルを調製し、該ゲルを1℃にて24時間静置した後、1質量%水酸化ナトリウム水溶液でpH6に中和した。次いで、残留物(ゲル)をろ紙上に吸引濾過により回収した後、蒸留水で洗浄し、秤量済みのシャーレに広げて減圧乾燥し、その後、シャーレの質量を測定して、シャーレの質量の変化分から残留物(架橋物)の質量(固形分)を算出した。収率を以下の式(3)により算出した。
収率(%)=残留物(架橋物)の質量/組成物の質量(固形分)×100 ・・・(3)
【0136】
また、実施例1ないし3のカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸あるいはヒアルロン酸(未修飾)を使用して、上記と異なる条件(保持温度、添加物の濃度、原料ヒアルロン酸の濃度)にてカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸の架橋物を含む組成物(実験番号5ないし25)を得、該組成物を用いて上記の方法と同様の方法により、ゲルを調製した。また、該架橋物を用いて、後述する方法にて、熱安定性試験および耐酵素分解性試験を行った。その結果をあわせて表1に示す。なお、実験番号8では、溶液を4℃で20時間保持した後、25℃で47時間さらに保持した。また、実験番号9では、溶液を−18℃で20時間にて保持した後、25℃で47時間さらに保持した。
【0137】
<試験例1:熱安定性試験>
表1に示す各条件で得られたカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸の架橋物をそれぞれ、濃度が1質量%(固形分)になるように生理食塩水中に分散させて混合物を調製し、該混合物を50℃にて7日間静置した。保存物を420メッシュのナイロンストレイナーで吸引ろ過により回収した後、蒸留水で洗浄し、次いで、秤量済みのシャーレ上に広げて減圧乾燥した。その後、シャーレの質量を測定して、シャーレの質量の変化分から残留物の質量を算出した。架橋物の質量および残留物の質量から、熱安定性試験における残存率を以下の式(4)により算出した。
熱安定性試験における残存率(%)=残留物の質量/架橋物の質量(固形分)×100 ・・・(4)
【0138】
<試験例2:耐酵素分解性試験>
表1に示す各条件で得られたカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸の架橋物それぞれ10mgを、50mMリン酸緩衝液に分散させて9mLの混合物を調製し、ヒアルロニダーゼ(シグマ社、bovine testes由来)50単位(1mL)を添加して、濃度が0.1質量%(固形分)、5単位/架橋物1mgのヒアルロニダーゼを含む10mLの混合物とした後、該混合物を40℃にて24時間静置した。次いで、この保存物を420メッシュのナイロンストレイナーで吸引ろ過により回収した後、蒸留水で洗浄し、次いで、秤量済みのシャーレ上に広げて減圧乾燥した。その後、シャーレの質量を測定して、シャーレの質量の変化分から残留物の質量を算出した。耐酵素分解性試験における残存率を以下の式(5)により算出した。
耐酵素分解性試験における残存率(%)=残留物の質量/架橋物の質量(固形分)×100 ・・・(5)
【0140】
表1の実験番号1ないし24によれば、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の架橋物は、水膨潤性ゲルを形成する性質を有すること、ならびに、水に対する膨潤度が10倍以上250倍以下(質量比)であることが理解できる。なお、表1に示されるように、実験番号23の混合物は熱安定性試験において5日で消失した。
【0141】
また、表1の実験番号1ないし24によれば、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の架橋物と、水と、を含み、該架橋物の含有量が固形分換算で0.4質量%以上10質量%以下である、水膨潤性ゲルは、優れた耐酵素分解性および適度な熱安定性を有することが理解できる。
【0142】
一方、市販されている架橋ヒアルロン酸Synvisc(Genzyme社)およびRestylane(Q−Med社)について、耐酵素分解性試験を行った。より具体的には、Synviscはゲル1.25g(ヒアルロン酸10mg含有)、Restylaneはゲル0.5g(ヒアルロン酸10mg含有)を50mMリン酸緩衝液に分散させ9mLとなるように調製し、50mMリン酸緩衝液に溶解させたヒアルロニダーゼ50単位(1mL)を添加して混合物10mLを調製し、該混合物の耐酵素分解性を上記試験例2の方法と同様の方法で測定したところ、残存率はいずれも0%であり、耐酵素分解性に劣ることが確認された。また、実験番号25(比較例1)の架橋物の残存率は0%であった。実験番号25(比較例1)の架橋物はヒアルロン酸の架橋物であるため、耐酵素分解性に劣ることが理解できる。
【0143】
<配合例1:化粧水>
本配合例では、以下に記す処方にて、実施例1の実験番号1で得られた架橋物を配合した化粧水を調製した。
架橋物 0.2%
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1%
加水分解ヒアルロン酸 0.1%
加水分解ヒアルロン酸アルキル(C12−13)グリセリル 0.1%
コラーゲンペプチド 0.1%
1,3−ブチレングリコール 5.0%
グリセリン 3.0%
イソステアリルアルコール 0.1%
酢酸トコフェロール 0.1%
POE(20)ソルビタンモノラウリル酸エステル 0.5%
POE(15)ラウリルアルコールエーテル 0.5%
ピロリドンカルボン酸亜鉛 0.1%
エチルパラベン 0.1%
メチルパラベン 0.15%
エタノール 5.0%
香料 適量
精製水 残量
【0144】
<配合例2:乳液>
本配合例では、以下に記す処方にて、実施例1の実験番号1で得られた架橋物を配合した乳液を調製した。
架橋物 0.3%
ペンチレングリコール 5.0%
グリセリン 3.0%
スクワラン 5.0%
ステアリン酸 0.5%
ステアリルアルコール 2.0%
ワセリン 4.0%
ステアリン酸ソルビタン 1.0%
POE(10)モノステアリン酸エステル 1.0%
カルボキシビニルポリマー 0.5%
ポリクオタニウム−51 0.1%
メチルパラベン 0.15%
プロピルパラベン 0.1%
水酸化カリウム 0.1%
BHT 0.02%
EDTA−2ナトリウム 0.02%
香料 適量
精製水 残量
【0145】
<配合例3:クリーム>
本配合例では、以下に記す処方にて、実施例1の実験番号2で得られた架橋物を配合したクリーム(エモリエントクリーム)を調製した。
架橋物 0.5%
ポリエチレングリコール 4.0%
1,3−プロパンジオール 6.0%
スクワラン 11.0%
ジメチコン 1.0%
セタノール 6.0%
ステアリン酸 2.0%
水添ココグリセリル 4.0%
トリカプリリン 8.0%
モノステアリン酸グリセリン 3.0%
POE(20)セチルアルコールエーテル 2.0%
コエンザイムQ10 0.03%
セラミド 0.1%
ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム 0.1%
EDTA−2ナトリウム 0.02%
プロピルパラベン 0.1%
メチルパラベン 0.15%
香料 適量
精製水 残量
【0146】
<配合例4:美容液>
本配合例では、以下に記す処方にて、実施例1の実験番号2で得られた架橋物を配合した美容液(美白保湿エッセンス)を調製した。
架橋物 0.8%
ヒアルロン酸ナトリウム 0.2%
加水分解ヒアルロン酸 0.1%
1,3−ブチレングリコール 5.0%
グリセリン 1.5%
POEソルビタンモノステアリン酸エステル 1.0%
ソルビタンモノステアリン酸エステル 0.5%
キサンタンガム 0.2%
アルギン酸ナトリウム 0.2%
カルボキシビニルポリマー 0.2%
水酸化カリウム 0.1%
オリーブ油 0.2%
トコフェロール 0.1%
EDTA−2ナトリウム 0.02%
アルギニン 0.15%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05%
アルブチン 0.2%
パルミチン酸レチノール 0.2%
クジンエキス 0.2%
海藻エキス 0.2%
トラネキサム酸 0.1%
エラスチン 0.1%
コラーゲン 0.1%
リン酸アスコルビン酸マグネシウム 0.1%
クエン酸ナトリウム 1.0%
クエン酸 0.1%
プロピルパラベン 0.1%
メチルパラベン 0.15%
香料 適量
精製水 残量
【0147】
<配合例5:美容液パック>
本配合例では、以下に記す処方にて、実施例1の実験番号1で得られた架橋物を配合した美容液パック(ペースト状ピールオフタイプ)を調製した。
架橋物 0.5%
ポリ酢酸ビニルエマルジョン 17.0%
ポリビニルアルコール 11.0%
ソルビトール 5.0%
ポリエチレングリコール400 5.0%
スクワラン 2.5%
POEソルビタンモノステアリン酸エステル 1.0%
酸化チタン 4.0%
タルク 8.0%
エタノール 8.0%
メチルパラベン 0.15%
香料 適量
精製水 残量
【0148】
<配合例6:洗顔料>
本配合例では、以下に記す処方にて、実施例1の実験番号1で得られた架橋物を配合した洗顔料(クレンジングフォーム)を調製した。
架橋物 0.2%
カチオン化ヒアルロン酸 0.1%
(キユーピー株式会社製、ヒアロベール)
グリセリン 10.0%
ポリエチレングリコール400 15.0%
ジプロピレングリコール 10.0%
ラウロイルグルタミン酸ナトリウム 20.0%
POE(2)モノステアリン酸エステル 5.0%
パーム脂肪酸グルタミン酸ナトリウム 8.0%
アルキルベタイン 2.0%
EDTA−2ナトリウム 0.02%
プロピルパラベン 0.1%
メチルパラベン 0.15%
香料 適量
精製水 残量
【0149】
<配合例7:サンスクリーン>
本配合例では、以下に記す処方にて、実施例1の実験番号1で得られた架橋物を配合したサンスクリーン(乳液)を調製した。
架橋物 0.2%
1,3−ブチレングリコール 3.0%
ジプロピレングリコール 3.0%
シクロメチコン 5.0%
ジメチコン 5.0%
セタノール 1.0%
ワセリン 1.0%
メトキシケイヒ酸オクチル 5.0%
酸化チタン 2.0%
酸化亜鉛 2.0%
ステアリン酸ソルビタン 1.0%
POE(20)ソルビタンモノステアリン酸エステル 1.0%
フェノキシエタノール 0.8%
メチルパラベン 0.1%
香料 適量
精製水 残量
【0150】
<配合例8:リップクリーム>
本配合例では、以下に記す処方にて、実施例1の実験番号1で得られた架橋物を配合したリップクリームを調製した。
架橋物 0.1%
マイクロクリスタリンワックス 1.5%
セレシン 12.0%
スクワラン 10.0%
デカメチルテトラシロキサン 10.0%
リンゴ酸ジイソステアリル 5.0%
キャンデリラロウ 2.0%
ワセリン 8.0%
ヒドロキシステアリン酸グリセリル 2.0%
メントール 0.05%
流動パラフィン 1.0%
酢酸トコフェロール 0.1%
トコフェロール 0.05%
プロピルパラベン 0.1%
香料 適量
精製水 残量
【0151】
<配合例9:シャンプー>
本配合例では、以下に記す処方にて、実施例1の実験番号1で得られた架橋物を配合したシャンプーを調製した。
架橋物 0.2%
カチオン化ヒアルロン酸 0.1%
(キユーピー株式会社製、ヒアロベール)
POE(20)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 11.0%
ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム 10.0%
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 4.0%
ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド 2.0%
EDTA−2ナトリウム 0.1%
安息香酸ナトリウム 0.2%
フェノキシエタノール 0.8%
メチルパラベン 0.1%
香料 適量
精製水 残量
【0152】
<配合例10:ヘアコンディショナー>
本配合例では、以下に記す処方にて、実施例1の実験番号1で得られた架橋物を配合したヘアコンディショナーを調製した。
架橋物 0.3%
カチオン化ヒアルロン酸 0.2%
(キユーピー株式会社製、ヒアロベール)
ステアリルアルコール 4.0%
セタノール 1.5%
ヒドロキシエチルウレア 1.0%
アミノプロピルジメチコン 1.5%
ジメチコン 0.5%
加水分解シルク 1.0%
1,3−ブチレングリコール 1.0%
グリセリン 3.0%
2−エチルヘキサン酸セチル 2.0%
ミリスチン酸イソセチル 0.4%
L−アルギニン 0.1%
トレハロース 0.1%
ソルビトール 0.1%
ケラチンペプチド 0.1%
POE(4)ステアリルエーテル 1.0%
ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド 3.0%
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 0.2%
安息香酸ナトリウム 0.3%
フェノキシエタノール 0.8%
メチルパラベン 0.1%
香料 適量
精製水 残量
【0153】
<配合例11:ソフトカプセル>
本配合例では、以下に記す処方にて、実施例1の実験番号1で得られた架橋物を配合したソフトカプセルを調製した。
架橋物 20%
オリーブ油 35%
ミツロウ 5%
中鎖脂肪酸トリグリセリド 5%
ゼラチン 25%
グリセリン 10%
【0154】
<配合例12:散剤>
本配合例では、以下に記す処方にて、実施例1の実験番号1で得られた架橋物を配合した散剤(顆粒剤)を調製した。
架橋物 10%
乳糖 60%
トウモロコシデンプン 25%
ヒプロメロース 5%
【0155】
<配合例13:ソフトカプセル>
本配合例では、以下に記す処方にて、実施例1の実験番号1で得られた架橋物を配合した錠剤を調製した。
架橋物 25%
乳糖 24%
結晶セルロース 20%
トウモロコシデンプン 15%
デキストリン 15%
二酸化ケイ素 1%
【0156】
<配合例14:ゼリー飲料>
本配合例では、以下に記す処方にて、実施例1の実験番号1で得られた架橋物を配合したスパウトパウチ入り白桃ゼリー飲料を調製した。
架橋物 0.20%
キサンタンガム 1.00%
カラギーナン 0.5%
デキストリンアルコール 3.0%
スクラロース 1%
4倍濃縮白桃果汁 5.00%
クエン酸 0.60%
クエン酸ナトリウム 0.20%
L−アスコルビン酸 0.10%
ピーチ香料 0.20%
精製水 残量
【0157】
<実施例3:癒着防止剤>
実施例1の実験番号2で得られた架橋物を厚さ1mmのフィルム状に圧延して成型し、滅菌処理後、シート状の癒着防止剤を得た。
【0158】
<実施例4:皮下注射剤>
実施例1の実験番号2で得られた架橋物(固形分換算1%)の乾燥物を、0.9%NaClを含む注射用水で膨潤させ、1mLの注射器に無菌充填し、滅菌処理後、皮下注射剤を得た。
【0159】
<実施例5:薬物徐放剤>
実施例1の実験番号2で得られた架橋物(固形物換算2%)の乾燥物を、0.9%NaCl、0.001%プロスタグランジンE1を含む注射用水で膨潤させ、滅菌処理後、3mLの注射器に無菌充填し、薬物徐放剤を得た。
【0160】
<実施例6:膝関節注射剤>
実施例1の実験番号2で得られた架橋物(固形物換算0.8%)の乾燥物を、0.9%NaClを含む注射用水で膨潤させ、滅菌処理後、2mLの注射器に無菌充填し、膝関節注射剤を得た。
カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸の架橋物の製造方法は、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の溶液を−200℃以上10℃以下に保持する工程を含む。