(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部を培養槽とし且つ前記培養槽に作用極及び参照電極を収容する内側容器と、前記内側容器の一部又は全部を収容すると共に、前記内側容器との間を対極槽とし且つ前記対極槽に対極を収容する外側容器と、前記培養槽の培養液と前記対極槽の電解液とを仕切るイオン交換膜を備え、前記培養槽は前記対極槽の上に配置されており、前記作用極と前記対極は水平な板状の電極であって上下に並べられて平行に配置されると共に、前記参照電極は前記作用極に設けられた孔を上から貫通して前記作用極と前記対極との間に計測部を配置していることを特徴とする電気培養装置。
前記外側容器は市販のバイアル瓶の瓶本体であり、前記内側容器の上端開口にフランジを設け、前記瓶本体の口に前記フランジと内蓋を載せて外蓋で挟み、前記内蓋には前記作用極のリード線と前記参照電極を差し込む孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電気培養装置。
前記内側容器内を密閉蓋によって密閉すると共に、前記作用極と前記参照電極を前記密閉蓋によって支持し、前記培養槽がユニット化されていることを特徴とする請求項1記載の電気培養装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1〜
図7に、本発明の電気培養装置の実施形態の一例を示す。なお、
図1は
図2のI−I線の沿う断面図である。電気培養装置1は、内部を培養槽2とし且つ培養槽2に作用極3及び参照電極4を収容する内側容器5と、内側容器5の一部又は全部を収容すると共に、内側容器5との間を対極槽6とし且つ対極槽6に対極7を収容する外側容器8と、培養槽2の培養液9と対極槽6の電解液10とを仕切るイオン交換膜11を備えている。
【0015】
内側容器5は、例えばシリコーンゴム製の成型品であり、安価に製造可能である。また、材料にシリコーンゴムを使用することで、内側容器5が耐熱性になる。ただし、必ずしもシリコーンゴム製の成型品に限られるものではなく、例えばガラス製容器、シリコーン以外の樹脂製容器等でも良い。本実施形態の内側容器5は外側容器8の形状に対応する円筒形状を成しており、上端開口にはフランジ5aが形成されている(
図3)。また、内側容器5の内周面には段部5bが設けられており、段部5bよりも上部が薄肉、下部が厚肉となっている。段部5bは作用極3を配置したい高さに設けられている。本実施形態では、内側容器5の上下方向ほぼ中央位置に段部5bが設けられている。ただし、内側容器5の形状はこのような形状に限るものではなく、外側容器8内に培養槽2を形成することができる形状であれば円筒形状以外の形状を採用しても良いし、また、段部5bを設けなくても良い。なお、段部5bを設けない場合には、作用極3のリード線3aによって作用極3を培養液9中に吊り下げるようにすることが好ましく、この場合にはリード線3aの長さを調節して作用極3の高さを調節することができる。
【0016】
内側容器5の下端開口はイオン交換膜11によって塞がれている。イオン交換膜11としては、例えばナフィオン膜等の使用が可能であるが、これに限られない。本実施形態では、ナフィオン膜のうち、ナフィオン膜117を使用している。イオン交換膜11は内側容器5の下端面に例えば接着剤を使用して直接固着されている。ただし、イオン交換膜11を固着する手段はこれに限られない。また、内側容器5の下端面に対してイオン交換膜11を取り外し可能に取り付け、イオン交換膜11を交換可能にしても良い。
【0017】
本願発明者らは、シリコーンゴム成型品の内側容器5にナフィオン膜117を接着剤を使用して無劣化で固着できることを確認した。接着剤としてシリコーン接着剤(信越化学工業株式会社、一液型RTVゴム、KE−44−T)を使用した。接着剤はナフィオン膜117を張った状態で内側容器5の下端面との間に気泡が残らない程度の量だけ塗布することが好ましい。接着剤を塗布した内側容器5の下端面にナフィオン膜117を接触させた状態で約1日乾燥させた後、内側容器5の下端面の周囲に沿ってナフィオン膜117を円形に切断し、ナフィオン膜117の余分な部分を除去した。シリコーン接着剤の乾燥後、内側容器5内に培養液を貯めて漏れを2週間検証したが、培養液の漏れは認められなかった。
【0018】
内側容器5のフランジ5aには、対極槽6内に配置される対極7のリード線7aを外に引き出す線孔が設けられている。本実施形態では、対極7のリード線7aを2本設けているので、2つの線孔5cが設けられている。各線孔5cはリード線7aに対応する位置に設けられている。
【0019】
内側容器5内には培養液9が貯められており、培養槽2となっている。内側容器5は培養槽2に例えば10〜15mL程度の培養液9を貯えるように設計されている。
【0020】
内側容器5内は内蓋12によって密閉されている。内蓋12は、例えばPPS樹脂(ポリフェニレンスルファイド)製の成型品であり、安価に製造可能である。ただし、必ずしもPPS樹脂製の成型品に限られるものではなく、その他の樹脂製品でも良い。内蓋12は内側容器5の形状に合わせて円板形状を成しており、フランジ12aが設けられている(
図4)。フランジ12aを内側容器5のフランジ5aに密着させることで内側容器5内を密閉することができる。なお、内蓋12を別の材料で形成する等して内蓋12自体によって内側容器5内を密閉することができない場合等には、内蓋12のフランジ12aと内側容器5のフランジ5aとの間にパッキンを設けるようにしても良い。
【0021】
内蓋12には、参照電極4を差し込む電極孔12bと、バブリングチューブ13やサンプリングチューブ14等の付属品類を必要に応じて差し込む取付孔と、作用極3のリード線3aを引き出す線孔が設けられている。本実施形態では、付属品類としてバブリングチューブ13とサンプリングチューブ14を使用するので、2つの取付孔12c,12dが設けられている。ただし、取付孔を設ける数は2つに限るものではなく、使用する付属品類の数に応じて適宜変更可能である。また、取付孔を多めに設けておき、使わない取付孔をプラグ等で塞ぐようにしても良い。この場合には、使用する付属品類の数が増えた場合にも柔軟に対応することができる。また、本実施形態では、作用極3のリード線3aを2本設けているので、2つの線孔12eが設けられている。各孔12b,12c,12d,12eは参照電極4,バブリングチューブ13,サンプリングチューブ14,リード線3aが互いに干渉しない位置に設けられている。また、2つの線孔12eは、作用極3の2本のリード線3aに対応する位置に設けられている。
【0022】
また、内蓋12のフランジ12aには、対極槽6内に配置される対極7のリード線7aを外に引き出す線孔が設けられている。本実施形態では、対極7のリード線7aを2本設けているので、2つの線孔12fが設けられている。各線孔12fはリード線7aに対応する位置に設けられている。
【0023】
作用極3は板状の電極である。本実施形態では、内側容器5の横断面形状に合わせて円板(円形の板)電極を使用している(
図5)。ただし、作用極3として使用する電極板の形状は必ずしも円形に限るものではなく、他の形状の電極板を使用しても良い。本実施形態では、作用極3としてチタン板に白金めっきを施した電極板を使用している。ただし、これに限られるものではなく、例えば炭素電極板等の使用も可能である。作用極3の直径は、内側容器5の段部5bの内径よりも若干大きくなっている。
【0024】
作用極3は培養槽2の培養液9中に沈められており、内側容器5の段部5bの上に載せられている。作用極3にはリード線3aが接続されており、リード線3aの先端は例えばポテンシオスタット15(
図8)に接続されている。リード線3aは内蓋12の線孔12eから内側容器5の外へと引き出されている。リード線3aと内蓋12の間(線孔12eの隙間)は内蓋12の弾力性によってシールされている。本実施形態では2本のリード線3aが設けられている。
【0025】
作用極3には、参照電極4を貫通させる電極孔3bと、必要に応じて内側容器5内に差し込まれたバブリングチューブ13やサンプリングチューブ14等の付属品類を貫通させる貫通孔が設けられている。電極孔3bは内蓋12の電極孔12bに対向する位置に設けられている。また、貫通孔は内蓋12の取付孔に対応する位置に設けられている。本実施形態では2つの取付孔12c,12dが設けられているので、これらに対向する位置に2つの貫通孔3c,3dが設けられている。電極孔3bは参照電極4の外径よりも若干大きく形成されており、参照電極4を貫通させた場合に隙間を生じさせる。また、貫通孔3c,3dはバブリングチューブ13やサンプリングチューブ14の外径よりも若干大きく形成されており、各チューブ13,14を貫通させた場合に隙間を生じさせる。培養槽2の参照電極4よりも下の部分でガスが発生した場合、これらの隙間から参照電極4の上に逃がすことができる。
【0026】
参照電極4は内蓋12の電極孔12bから内側容器5内に差し込まれ、作用極3の電極孔3bを貫通し、その計測部(液絡部)を作用極3の下側、即ち作用極3と対極7との間に配置させている。参照電極4の計測部は培養液9中に浸されている。参照電極4は内蓋12の弾力性によって内蓋12に係止されている。また、参照電極4と内蓋12との間(電極孔12bの隙間)は内蓋12の弾力性によってシールされている。参照電極4は例えばポテンシオスタット15に接続されている。参照電極4としては、例えばビー・エー・エス株式会社製の商品名RE−1Bの使用が可能である。ただし、これ以外の参照電極4の使用も可能である。
【0027】
バブリングチューブ13は内蓋12の第1の取付孔12cから内側容器5内に差し込まれ、作用極3の第1の貫通孔3cを貫通し、その先端を内側容器5の底部近傍に到達させている。バブリングチューブ13は内蓋12の弾力性によって係止されている。また、バブリングチューブ13と内蓋12との間(取付孔12cの隙間)は内蓋12の弾力性によってシールされている。バブリングチューブ13は例えばガスコントローラ16(
図8)に接続されている。
【0028】
サンプリングチューブ14は内蓋12の第2の取付孔12dから内側容器5内に差し込まれ、作用極3の第2の貫通孔3dを貫通し、その先端を作用極3の下側に配置させている。サンプリングチューブ14は内蓋12の弾力性によって係止されている。また、サンプリングチューブ14と内蓋12との間(取付孔12dの隙間)は内蓋12の弾力性によってシールされている。
【0029】
本実施形態では、サンプリングチューブ14の上端に逆止弁17を接続している。逆止弁17は、内側容器5内から外へのガスの流出を許容し、外から内へのガスの流入を禁止するものである。即ち、培養槽2内で発生したガスや、培養槽2内に供給されたガスを内側容器5の外に逃がして培養槽2の圧力を所定値以下に抑えている。逆止弁17はサンプリングチューブ14に対して脱着可能であり、培養液9のサンプリングを行う場合等にはサンプリングチューブ14から外される。ただし、必ずしも逆止弁17をサンプリングチューブ14に接続する必要はなく、例えば内蓋12に専用の孔を設けて当該孔に逆止弁17を取り付けるようにしても良い。また、例えば内側容器5内を密閉する必要がない場合等には逆止弁17を設けなくても良い。
【0030】
外側容器8は、例えばガラス製の容器である。ただし、必ずしもガラス製に限られるものではなく、樹脂製等でも良い。本実施形態の外側容器8は内側容器5の形状に対応する有底の円筒形状を成している。また、外側容器8の内径は内側容器5の外径よりも若干大きく形成されており、内側容器5を入れ子状に収容することができる。ただし、外側容器8の口8aは内側容器5のフランジ5aよりも細くなっており、外側容器8内に内側容器5を挿入すると、内側容器5のフランジ5aが外側容器8の口8a上に載ることになり、内側容器5が外側容器8内に落下せず、外側容器8内の上側部分に内側容器5が配置されることになる。外側容器8内には電解液10が貯められており、対極槽6となっている。これにより、培養槽2の下に対極槽6が配置される。
【0031】
外側容器8として市販のバイアル瓶の瓶本体(
図6(B))を使用することが好ましく、なかでも水質検査瓶の使用が最も好ましい。そのため、外側容器8として市販品を利用できるように内側容器5や内蓋12を設計することが好ましい。内蓋12は市販のバイアル瓶のパッキンに代えて使用される。一方、市販のバイアル瓶の外蓋18(
図6(A))はそのまま使用される。即ち、外側容器8の口8aの上に内側容器5のフランジ5aと内蓋12のフランジ12aを載せて外蓋18で挟み付けることで、外側容器8に内側容器5と内蓋12を組み付けることができると共に、培養槽2及び対極槽6を密閉することができる。なお、市販のバイアル瓶としては、例えば日電理化硝子株式会社製目盛付バイアル(水質検査瓶)110mLの使用が可能であるが、これに限られない。
【0032】
外側容器8として市販のバイアル瓶を利用することで、外側容器8を安価に入手することが可能となり、装置の製造コストを安くすることができる。また、外側容器8の入手が容易であり、例えば外側容器8を破損した場合等に再入手が容易で便利である。さらに、バイアル瓶の外蓋18を瓶本体(外側容器8)に締め付けることで培養槽2や対極槽6を簡単に密封することができる。
【0033】
対極7は板状の電極である。本実施形態では、外側容器8の横断面形状に合わせて円板(円形の板)電極を使用している(
図7)。ただし、対極7として使用する電極板の形状は必ずしも円形に限るものではなく、他の形状の電極板を使用しても良い。本実施形態では、対極7としてチタン板に白金めっきを施した電極板を使用している。ただし、これに限られるものではなく、例えば炭素電極板等の使用も可能である。対極7の直径は、外側容器8の内径よりも若干小さくなっている。
【0034】
対極7は対極槽6の電解液10中に沈められており、例えば外側容器8の底面上に載せられている。対極7にはリード線7aが接続されており、リード線7aの先端は例えばポテンシオスタット15に接続されている。リード線7aは内側容器5のフランジ5aの線孔5c及び内蓋12のフランジ12aの線孔12fから外側容器8の外へと引き出されている。リード線7aと内蓋12の間(線孔12fの隙間)は内蓋12の弾力性によってシールされている。本実施形態では2本のリード線7aが設けられている。
【0035】
なお、必ずしも対極7を外側容器8の底面上に載せる必要はなく、対極7のリード線7aによって電解液10中に吊り下げるようにしても良い。この場合には、リード線7aの長さを調節して対極7の高さを調節することができる。
【0036】
作用極3と対極7は水平に設けられている。また、作用極3と対極7とは上下に並べて配置されている。さらに、参照電極4は作用極3に設けられた電極孔12bを上から貫通して作用極3と対極7との間に計測部を配置している。このような電極配置にすることで、市販のバイアル瓶をそのまま利用し易い構造となる。
【0037】
本実施形態の外側容器8は透明であり、内側容器5は半透明であり、対極槽6や培養槽2を外部から観察可能である。
【0038】
次に、電気培養装置1の組み付けについて説明する。
【0039】
内蓋12に作用極3のリード線3aを組み付け、更に、参照電極4、バブリングチューブ13、サンプリングチューブ14を組み付けておく。一方、外側容器8内に電解液10を所定量入れて対極槽6を形成し、対極槽6に対極7を沈める。また、予め下端開口にイオン交換膜11を固着させて塞いでおいた内側容器5内に培養液9を入れて培養槽2を形成する。
【0040】
そして、外側容器8内に内側容器5を挿入し、外側容器8の口8aに内側容器5のフランジ5aを載せる。次に、内蓋12に組み付けた参照電極4等を内側容器5内に挿入し、内側容器5のフランジ5aの上に内蓋12のフランジ12aを載せる。このとき、対極7のリード線7aを線孔5c,線孔12fに通し、内蓋12の外に引き出しておく。なお、内側容器5内に参照電極4等を挿入して内側容器5のフランジ5aの上に内蓋12のフランジ12aを重ねてからこれらを外側容器8内に挿入しても良い。
【0041】
その後、外側容器8の口8aに外蓋18をねじ込んで取り付け、外側容器8の口8aと外蓋18とでフランジ5a,12aを挟み付けることで、培養槽2と対極槽6が密閉され、電気培養装置1が組み付けられる。
【0042】
外蓋18はリング状を成しており、その内側から参照電極4、バブリングチューブ13、サンプリングチューブ14、逆止弁17、各リード線3a,7aを突出させている。
【0043】
電気培養を行う場合には、培養槽2に微生物を入れた後、各電極3,4,6のリード線をポテンシオスタット15に接続し、通電を行う。必要に応じてバブリングチューブ13からバブリングを行いながら電気培養を行う。培養槽2は密閉されているので、嫌気生物に対してしても電気培養を行うことができる。
【0044】
電気培養装置を分解する場合には、各電極3,4,6のリード線をポテンシオスタット15から外すと共に、バブリングチューブ13をガスコントローラ16から外した後、外蓋18を回して外側容器8の口8aから外せばよい。外蓋18を外すことで、内蓋12に組み付けた参照電極4等、内側容器5を取り外すことができる。
【0045】
本発明の電気培養装置1は、培養槽2と対極槽6とを上下に配置し、且つ作用極3と対極7とを水平な板状の電極として上下に並べ、作用極3を貫通させるようにして当該作用極3と対極7との間に参照電極4の計測部を配置するようにしているので、培養槽2と対極槽6の容量を小さくすることが可能となり、装置全体を小型化することができる。即ち、上下,左右,前後方向(互いに垂直な3方向)に小型化できる。
【0046】
ここで、作用極3と対極7との間の電位勾配の部分的な偏りを防止して電位勾配を全体的に均一にし、電気培養を効率よく行うためには、作用極3と対極7とを平行に配置することが望ましい。また、作用極3の電位制御を良好に行うためには、参照電極4の計測部を作用極3と対極7との間であってできるだけ作用極3に近い位置に配置することが望ましい。本発明では、作用極3と対極7の上記平行配置と、参照電極4の上記配置を可能にしながら、培養槽2と対極槽6の容量を互いに垂直な3方向に小さくすることができる。
【0047】
電気培養装置1は、多検体用電気培養ユニットとしての使用に適している。即ち、電気培養装置1を小型化できるので、複数の電気培養装置1を並べて使用するのに適している。多検体用電気培養ユニットとしての使用例を
図8に示す。この例では、4つの電気培養装置1を使用している。
【0048】
恒温槽22に入れられた各電気培養装置1はマルチチャンネルポテンシオスタット15に接続されている。この実施形態ではポテンシオスタット15としてマルチチャンネルのポテンシオスタット15を1台使用しているが、例えばシングルチャンネルのポテンシオスタット15を4台使用しても良い。なお、図中符号19はポテンシオスタット15を図示しないコンピュータに接続するための装置である。また、図では電気培養装置1とポテンシオスタット15とを接続する配線(リード線)を各電気培養装置1毎に1本ずつ記載しているが、実際には3本ずつ(各電極毎)になっている。また、各電気培養装置1へはガスコントローラ16からガスを供給しているが、必ずしもガスを供給しなくても良い。
【0049】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0050】
例えば、上述の説明では、外側容器8として市販のバイアル瓶の瓶本体を使用していたが、バイアル瓶の瓶本体以外の市販の容器を使用しても良い。例えば、市販のビーカー等の使用も可能である。また、外側容器8として市販の容器以外の専用容器を使用しても良い。
【0051】
また、上述の説明では、外側容器8の形状を有底の円筒形状、内側容器5を円筒形状としていたが、各容器5,8の形状はこれらに限られるものではない。例えば、外側容器8を有底の四角筒形状、内側容器5を四角筒形状等としても良く、その他の形状にしてしも良い。
【0052】
また、上述の説明では、外側容器8内に内側容器5を全部収容するようにしていたが、必ずしも内側容器5を全部収容する必要はなく、内側容器5の一部を収容するようにしても良い。即ち、対極槽6の上に培養槽2を設けることができれば、内側容器5の一部を外側容器8から突出させるようにしても良い。
【0053】
また、培養槽2をユニット化しても良い。この場合の実施形態を
図9〜
図13に示す。なお、上述の実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。また、
図9は
図10のIX−IX線の沿う断面図である。本実施形態では、内側容器5内を密閉蓋20によって密閉すると共に、作用極3と参照電極4を密閉蓋20によって支持し、培養槽2をユニット化している。
【0054】
密閉蓋20は、例えばPPS樹脂製の成型品であり、安価に製造可能である。ただし、必ずしもPPS樹脂製の成型品に限られるものではなく、その他の樹脂製品でも良い。密閉蓋20の周縁は下側に折り返されており、内側容器5のフランジ5aに外側から嵌り込んで内側容器5内を密閉することができる。なお、密閉蓋20を別の材料で形成する等して密閉蓋20自体によって内側容器5内を密閉することができない場合等には、密閉蓋20と内側容器5のフランジ5aとの間にパッキンを設けるようにしても良い。
【0055】
密閉蓋20には、参照電極4を差し込む電極孔20bと、バブリングチューブ13やサンプリングチューブ14等の付属品類を必要に応じて差し込む取付孔と、作用極3のリード線3aを引き出す線孔が設けられている。本実施形態では、付属品類としてバブリングチューブ13とサンプリングチューブ14を使用するので、2つの取付孔20c,20dが設けられている。ただし、取付孔を設ける数は2つに限るものではなく、使用する付属品類の数に応じて適宜変更可能である。また、取付孔を多めに設けておき、使わない取付孔をプラグ等で塞ぐようにしても良い。この場合には、使用する付属品類の数が増えた場合にも柔軟に対応することができる。また、本実施形態では、作用極3のリード線3aを2本設けているので、2つの線孔20eが設けられている。各孔20b,20c,20d,20eは参照電極4,バブリングチューブ13,サンプリングチューブ14,リード線3aが互いに干渉しない位置に設けられている。また、2つの線孔20eは、作用極3の2本のリード線3aに対応する位置に設けられている。
【0056】
本実施形態では、外側容器8として例えば市販のビーカーを使用している。外側容器8として市販のビーカーを使用することで、外側容器8を安価に入手することが可能となり、装置の製造コストを安くすることができる。また、外側容器8の入手が容易であり、例えば外側容器8を破損した場合等に再入手が容易で便利である。
【0057】
次に、電気培養装置1の組み付けについて説明する。
【0058】
密閉蓋20に作用極3のリード線3aを組み付け、更に、参照電極4、バブリングチューブ13、サンプリングチューブ14を組み付けておく。また、予め下端開口にイオン交換膜11を固着させて塞いでおいた内側容器5内に培養液9を入れて培養槽2を形成しておく。そして、参照電極4、バブリングチューブ13、サンプリングチューブ14を内側容器5に挿入し、内側容器5のフランジ5aに密閉蓋20を嵌め込む(
図12)。これにより、内側容器5内が密閉されると共に、参照電極4、バブリングチューブ13、サンプリングチューブ14が密閉蓋20によって支持されることになり、培養槽2がユニット化される。
【0059】
一方、外側容器8内に電解液10を入れて対極槽6を形成し、対極槽6に対極7を沈めておく。その後、培養槽ユニット21を外側容器8内に挿入し、外側容器8の口8aに内側容器5のフランジ5aを載せる(
図13)。このとき、対極7のリード線7aを外側容器8の口8aとフランジ5aとの間から外に引き出しておく。これにより、電気培養装置1が組み付けられる。なお、本実施形態では、外側容器8の口8aに培養槽ユニット21を載せただけであり、口8aとフランジ5aの間をシールしていないが、口8aとフランジ5aの間をシールして対極槽6を密閉するようにしても良い。
【0060】
電気培養を行う場合には、密閉蓋20を外して培養槽2に微生物を入れた後、密閉蓋20を閉める。その後、各電極3,4,6のリード線をポテンシオスタット15に接続し、通電を行う。必要に応じてバブリングチューブ13からバブリングを行いながら電気培養を行う。培養槽2は密閉されているので、嫌気生物に対してしても電気培養を行うことができる。
【0061】
電気培養装置1を分解する場合には、各電極3,4,6のリード線をポテンシオスタット15から外すと共に、バブリングチューブ13をガスコントローラ16から外した後、外側容器8から培養槽ユニット21を取り出し、内側容器5のフランジ5aから密閉蓋20を外せば良い。
【0062】
この実施形態の電気培養装置1も、上述の電気培養装置1と同様に、装置を互いに垂直な3方向に小型化することが容易である。また、培養槽2が予めユニット化されているので、外側容器8への組み付けが容易である。また、培養槽2をユニット化することで、培養中における対極槽6の交換や培養槽2の移動が容易になる。また、培養槽2の培養液9の乾燥を防止することができるので、培養液9の量を少なくすることができ、培養槽2をより一層小さくし易く装置を小型化し易くなる。また、大気中でも嫌気培養が可能になる。さらに、培養槽2側を使い捨てにし易くすることができる。