(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記混合水溶液は、上記糖の濃度(無水物換算)が40〜65%(w/w)で、上記アミノ酸の濃度(無水物換算)が2〜10%(w/w)であり、液温70〜130℃で12〜72時間加熱してなる請求項1記載の乳化剤。
上記アミノ酸が、グリシン、アラニン、バリン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン及びフェニルアラニンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載の乳化剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、水相部に油脂を乳化又は可溶化させてなる、油脂の分離しない油脂食品において、乳化剤あるいは界面活性剤を全く使用することなく、かつ、食物アレルギーの原因となるアレルゲンを含む可能性のある食品を全く使用することなく、安心して摂食することができる油脂食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、糖とアミノ酸とを含有する混合水溶液を加熱し得られた褐変反応物が、油脂乳化能を有すること、また50%(w/w)以上の糖存在下で、油脂を可溶化できることを知見した。また、該褐変反応物を用いて製造した可溶化物や乳化物は、これらを水性調味液に高濃度に含有させても、油脂が安定に分散されること、さらに、pH変化や、熱等に強く、無機塩が高濃度に存在しても可溶化能又は乳化能が損なわれないという新たな知見を得て、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下に示す褐変反応物、油脂食品及び乳化食品を提供するものである。
(1)糖とアミノ酸の混合水溶液を加熱してなり、pH2.9〜4.7、Brix25〜65%(w/w)である褐変反応物。
(2)上記混合水溶液は、上記糖の濃度(無水物換算)が40〜65%(w/w)で、上記アミノ酸の濃度(無水物換算)が2〜10%(w/w)であり、液温70〜130℃で12〜72時間加熱してなる上記(1)の褐変反応物。
(3)上記アミノ酸が、グリシン、アラニン、バリン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン又はフェニルアラニンからなる群より選ばれる少なくとも1種である上記(1)又は(2)の褐変反応物。
(4)上記アミノ酸が上記グリシンであり、1%(w/w)水希釈液の10mm透明セルにおける光波長430nmの吸光度が0.38〜3.53である上記(3)記載の褐変反応物。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかの褐変反応物に、油脂を添加し乳化するか又は油脂を添加し可溶化してなる油脂食品。
(6)上記(1)〜(4)のいずれかの褐変反応物が、水を添加して褐変反応物水溶液とされているか又は糖水溶液を添加して糖濃度45%(w/w)以下の褐変反応物・糖混合水溶液とされており、該褐変反応物水溶液又は該褐変反応物・糖混合水溶液に、油脂を添加し乳化してなる上記(5)の油脂食品。
(7)上記褐変反応物水溶液又は上記褐変反応物・糖混合水溶液における上記褐変反応物の濃度が5〜50%(w/w)であり、上記褐変反応物水溶液又は上記褐変反応物・糖混合水溶液1重量部に対し上記油脂0.01〜1.5重量部を添加し乳化してなる上記(6)の油脂食品。
(8)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の褐変反応物が、糖水溶液を添加して糖濃度50%(w/w)以上の褐変反応物・糖混合水溶液とされており、該褐変反応物・糖混合水溶液に油脂を添加し可溶化してなる上記(5)の油脂食品。
(9)上記褐変反応物・糖混合水溶液における上記褐変反応物の濃度が5〜50%(w/w)で上記糖濃度が50〜80%(w/w)であり、上記褐変反応物・糖混合水溶液1重量部に対し上記油脂0.01〜2.5重量部を添加し可溶化してなる上記(8)の油脂食品。
(10)上記(5)〜(9)のいずれかの油脂食品を水性溶液と混和してなる乳化食品。
(11)米菓用調味液、ドレッシング又はタレである上記(10)の乳化食品。
【発明の効果】
【0010】
(1)本発明の褐変反応物を用いれば、乳化安定剤又は界面活性剤を全く使用することなく、また、動植物由来のタンパク質や、肉類を熱水抽出して得た水溶性タンパク質を主成分とする抽出物を全く使用することなく、長期間にわたって油脂が分離することのない油脂食品を容易に得ることができる。
【0011】
(2)本発明の油脂食品は、糖、アミノ酸及び食用油脂等、食品の基本的な調味成分を使用して得るものであるから、食品の調味に多用しても該食品の風味に影響を与えることが少ない。また、動植物由来のタンパク質を全く使用することがないので、アレルギー疾患を有する人でも、安心して摂食することができる。
【0012】
(3)本発明の褐変反応物は、乳化能あるいは可溶化能が非常に優れている。本発明の褐変反応物に油脂を混和する際に、例えば、45%(w/w)以下の糖存在下においては、ホモジナイザー等の高速撹拌機を用いることにより容易に、水相部に油脂を乳化することができる。また、反対に例えば50%(w/w)以上の糖存在下においては、ホモジナイザー等の高速撹拌機を用いることなく、すなわち人為的あるいは穏やかな機械的撹拌により容易に、水相部に油脂を均一に可溶化することができる。
【0013】
(4)本発明の油脂食品は、任意の割合の水性溶液に均一に乳化又は可溶化し、しかもpH変化や、熱等に強く、無機塩が高濃度に存在しても乳化能又は可溶化能が損なわれないため、ドレッシングや焼肉用タレ等、様々な乳化食品に応用することができる。
【0014】
(5)さらに、本発明の油脂食品を用いて得られる乳化食品は、耐熱性を有しているため、調理や殺菌のための加熱処理に対しても、熱変性等による乳化分離を起こすことがない。また、高濃度の塩を含有しても、分散した油滴は極めて安定であるために、食品加工への適性は極めて高いものである。すなわち、しょうゆやソース等の含塩調味液あるいは加熱工程を経て製品となる各種の食品に応用しても、水相部に分散した油滴が油脂食品中に安定に保持されるので、従来より知られている食品加工における種々の問題点を解決することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明の褐変反応物について、好ましい実施形態に基づき以下に詳述する。
本発明の褐変反応物は、糖とアミノ酸の混合水溶液を加熱してなり、pH2.9〜4.7、Brix25〜65%(w/w)である褐変反応物である。
上記糖としては、還元糖を用いる。該還元糖としては、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、グリセルアルデヒド等の単糖類;マルトース(麦芽糖)、ラクトース(乳糖)、アラビノース等のオリゴ糖類;デキストリン、水飴等の水溶性の糖類を挙げることができ、これらを単独で又は組み合わせて用いることができ、あるいは果糖ブドウ糖液糖等の異性化糖として用いることもできる。
【0016】
上記アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン及びフェニルアラニンが好ましく挙げられるほか、アスパラギン酸、リジン等も用いることができる。本発明においては、これらのアミノ酸の少なくとも1種を用いる。これらのうち、グリシン、セリン、スレオニン、メチオニン及びフェニルアラニンは、特に乳化能及び可溶化能が優れているので好ましい。
【0017】
上記アミノ酸の中でも、グリシン及びセリンは、入手が容易な上、乳化能及び可溶化能が極めて優れているので特に好ましく、グリシンが最も好ましい。また、フェニルアラニンは、乳化能及び可溶化能が高い上に、吸光度が低い(メイラード反応が進行しても褐変反応物の色が薄い)ため、幅広い種類の食品へ応用しやすい点で特に有用である。
【0018】
また、上記グリシンを用いる場合については、本発明の褐変反応物は、1%(w/w)水希釈液の10mm透明セルにおける光波長430nmの吸光度が、0.3以上であることが好ましく、0.38〜3.53がより好ましい。上記範囲を満たすことにより、優れた乳化能及び可溶化能を一層確実に奏させることができる。
【0019】
また、本発明の褐変反応物は、pHが2.9〜4.7であり、3.2〜4.2であることが好ましく、3.4〜3.7であることがさらに好ましい。褐変反応物のpHが上記値を上回る場合は、メイラード反応の進行が十分でないことの指標となり、得られる褐変反応物は、期待する乳化能及び可溶化能を示さない。一方、上記値を下回る場合は、反応が過剰に進行したことにより、不溶性の析出物が生じ、乳化能及び可溶化能は弱くなる。
【0020】
本発明の褐変反応物は、固形分(乾物換算;本発明では「Brix」という。)が25〜65%(w/w)であり、40〜50%がより好ましい。なお、Brixが25〜65%(w/w)のとき、残部35〜75%(w/w)は水分である。Brixが上記範囲を越える、あるいは、下回る場合は、メイラード反応の進行が十分でないか、あるいは過剰に進行したことを表し、得られる褐変反応物は、期待する乳化能及び可溶化能を示さない。
【0021】
以下に、本発明の褐変反応物の好ましい製造方法について説明する。以下の好ましい製造方法によれば、pH2.9〜4.7、Brix25〜65%(w/w)である本発明の褐変反応物を、より確実に得ることができる。
まず、第一工程として、上記糖と上記アミノ酸を水に溶解して混合水溶液を調製する。この際、上記糖の濃度(無水物換算)は、混合水溶液の全量に対して40〜65%(w/w)が好ましく、45〜55%(w/w)がより好ましい。上記アミノ酸の濃度(無水物換算)は、混合水溶液の全量に対して2〜10%(w/w)が好ましく、3〜7%(w/w)がより好ましい。なお、混合水溶液から上記糖及び上記アミノ酸を除いた残部は水である。
【0022】
次いで、第二工程として、糖とアミノ酸とを溶解した上記混合水溶液を加熱する。その加熱温度は、液温70〜130℃が好ましく、80〜100℃がより好ましい。加熱時間は、12〜72時間が好ましく、24〜48時間がより好ましい。上記混合水溶液を加熱すると、該混合水溶液は、無色透明な状態(初発)から次第に黒褐色に変化する(ここで得られた溶液が「褐変反応物」である)。この変化は、糖とアミノ酸がアミノカルボニル反応により縮合することでメラノイジンが形成されることによる。
【0023】
本発明の褐色反応物は、乳化能及び可溶化能が非常に優れており、特に食品分野における乳化剤又は界面活性剤の代替品として有用である。その他、食品への黒色の付与、香りの付与、コク味の付与、抗酸化力を有するメラノイジンの機能性の付与等の用途にも用いることができる。
【0024】
次に、本発明の油脂食品について詳述する。
本発明の油脂食品は、糖及びアミノ酸から調製した本発明の褐変反応物並びに油脂を主要成分とする。また、必要により、水性溶液を添加する。
【0025】
本発明の油脂食品全量中における本発明の褐変反応物の含有量は、乳化又は可溶化する油脂の量にもよるが、好ましくは5〜75%(w/w)、より好ましくは6〜50%の範囲から選択する。5%より少ないと、乳化又は可溶化の安定性が低くなる場合がある。75%より多くても、乳化ないし可溶化の安定性は大きく変わらない。
【0026】
また、本発明の油脂食品全量中における上記油脂の含有量は、油脂食品の用途に応じて適宜選択することができ、特に制限されるものではないが、例えば0.3〜70%(w/w)の範囲から選択することができる。上限の70%を越えた場合には、乳化ないし可溶化の安定性が低くなる場合がある。
【0027】
上記油脂としては、食用に供することができる任意の油脂が挙げられ、例えば、綿実油、胡麻油、菜種油、大豆油、パーム油、ヤシ油、オリーブ油等の植物性油脂;豚脂、牛脂、鶏油、鯨油、魚油等の動物性油脂;オレンジオイル、レモンオイル、ユズオイル、パブリカオイル等の精油;及びマスタードオイル等のスパイスオイル等が挙げられる。これらは、単独あるいは併用して用いることができる。なお、豚脂、牛脂等常温で固形の油脂を用いる場合は、該油脂の融点以上の温度条件下において用いる必要がある。
【0028】
上記水性溶液としては、しょうゆ、ソース、みりん、酒類、食酢、果汁、野菜汁、果肉ペースト(ジャム、ケチャップ等)、食塩、糖類、有機酸類、アミノ酸類、呈味性核酸類、節類抽出液、動植物エキス、香料(フレーバー)、香辛料、着色料、栄養強化剤(ビタミン)、保存料又は増粘性物質等の各種食品素材を、それ自体が水性溶液の形態であるものはそのまま用いることができ、また、それ自体が水性溶液の形態でないものは、適宜の濃度で水又は水性溶液の形態の食品素材に含有させて用いることができる。水性溶液は、一種又は二種以上を用いることができる。本発明の油脂食品において水性溶液を用いる場合は、後述の褐変反応物・糖混合水溶液又は褐変反応物水溶液に含有させて用いることができる。
【0029】
本発明の油脂食品は、本発明の褐変反応物に、油脂を添加し乳化するか又は油脂を添加し可溶化してなる。
【0030】
以下に、本発明の褐変反応物に、油脂を添加し乳化してなる本発明の油脂食品の好ましい製造方法について説明する。
【0031】
本発明の褐変反応物は、そのままでも十分な乳化能を示すが、乳化能をより安定させるためには、本発明の褐変反応物に糖水溶液を添加し、褐変反応物・糖混合水溶液を調製する。該糖水溶液に使用する糖としては、前記本発明の褐変反応物を調製する際に用いることができるものとして挙げたものを用いることができるほか、みりん、蜂蜜、水飴、液状糖液等の糖を含有する食品素材を用いてもよい。
【0032】
上記褐変反応物・糖混合水溶液に占める糖濃度(無水物換算)は、50%(w/w)未満が好ましく、45%以下がより好ましい。糖濃度が高くなれば、それだけ乳化能が安定することになるが、糖濃度が45%を超える場合、特に50%を超える場合は、該褐変反応物・糖混合水溶液の粘度が高くなりすぎ、油脂を加えて乳化させる際の撹拌が極めて困難となるため適さない。一方、乳化能をより安定させる観点からは、該褐変反応物・糖混合水溶液に占める糖濃度は、5%(w/w)以上であることが好ましい。
【0033】
上記褐変反応物・糖混合水溶液に占める本発明の褐変反応物の濃度は、5〜75%(w/w)が好ましく、6〜50%がより好ましい。本発明の褐変反応物の濃度が5%を下回る場合、油脂を安定に乳化できないおそれがある。本発明の褐変反応物の濃度が75%を越えても、油脂の乳化安定性はそれ以上は大きく向上しない。
【0034】
なお、本発明の褐変反応物は、糖水溶液を添加せずにそのまま用いてもよく、糖水溶液ではなく水を添加して褐変反応物水溶液として用いてもよい。糖を含有しない該褐変反応物水溶液は、本発明の褐変反応物を10%(w/w)以上含有することが、より安定に油脂を乳化する観点から好ましい。
【0035】
次いで、上記褐変反応物・糖混合水溶液又は本発明の褐変反応物若しくは上記褐変反応物水溶液に油脂を加えて乳化する。
この際、上記褐変反応物・糖混合水溶液又は本発明の褐変反応物若しくは上記褐変反応物水溶液、及び油脂の量は、得られる油脂食品全量に対し、本発明の褐変反応物の量が好ましくは5〜50%(w/w)、より好ましくは15〜50%となるように選択することが望ましい。本発明の褐変反応物の量が5%未満では、十分な乳化能を示すことができず、油脂と水相部が分離しやすいので好ましくない。
【0036】
また、油脂を添加する際には、上記褐変反応物・糖混合水溶液又は本発明の褐変反応物若しくは上記褐変反応物水溶液1重量部に対し、油脂を0.01〜1.5重量部とすることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜1.0重量部とする。
【0037】
上記褐変反応物・糖混合水溶液又は本発明の褐変反応物若しくは上記褐変反応物水溶液に油脂を加えて撹拌する際には、ホモジナイザー等の高速撹拌機を用いる必要がある。高速撹拌機は、上記褐変反応物・糖混合水溶液又は本発明の褐変反応物若しくは上記褐変反応物水溶液と油脂とを高速撹拌することができればよく、各種食品に広く用いられているものから、適宜選択することができるが、好ましくは10,000rpm以上の回転数で撹拌できるものを用い、前記回転数において、油脂が均質に分散するのに必要な十分な時間撹拌を行う。より好ましくは回転数14,000〜20,000rpmにおいて、5〜60秒間高速撹拌を行う。例えば16,000rpmにおいて30秒間高速撹拌を行えば、油脂は均質に分散する。
【0038】
以下に、油脂を添加し可溶化してなる本発明の油脂食品の好ましい製造方法について説明する。
【0039】
まず、本発明の褐変反応物に糖水溶液を添加して、褐変反応物・糖混合水溶液を調製する。このとき、該混合水溶液に占める糖濃度(無水物換算)は、50%(w/w)以上が好ましく、50〜80%(w/w)がより好ましい。糖濃度が50%未満であると、油脂を安定に分散できないおそれがある。ここで使用できる糖は、前記乳化状態の本発明の油脂食品において用いることができるものと同様である。
また、該褐変反応物・糖混合水溶液に占める本発明の褐変反応物は、5〜50%(w/w)が好ましく、10〜20%がより好ましい。本発明の褐変反応物の濃度が5%を下回る場合、可溶化率(全油脂食品に占める、可溶化できる最大油脂量)が低く、油脂が安定に分散できないおそれがある。5%〜20%の範囲では、本発明の褐変反応物の濃度に比例して可溶化率は増大し、可溶化率は最大で約70%(w/w)までに増大する。一方、本発明の褐変反応物の濃度が20%を越えるよう添加しても、可溶化率約70%を越えて大きく向上させるのは困難で経済性に見合った効果は得難く、このことは褐変反応物の濃度が50%を越えるとより顕著になる。
【0040】
次いで、上記褐変反応物・糖混合水溶液に、撹拌しつつ、好ましくは50%(w/w)以上の糖存在下で、該混合水溶液1重量部に対し食用油脂を0.01〜2.5重量部、好ましくは0.01〜2.0重量部加えて、油脂を可溶化する(可溶化率は、最大で約70%(w/w)となる)。
【0041】
ここでの撹拌は、高度な乳化装置を必要とせず、スプーンや撹拌棒等による人為的撹拌、又は通常の簡単な撹拌装置、例えば、市販の万能混合撹拌装置や蒸気ジャケット付ニーダー等による穏やかな機械的撹拌よって行うことができる。機械的撹拌を行う場合は、1000rpm以下の回転数が好ましく、油脂がより均一に混ざることから、600rpm以下の回転数であることがさらに好ましい。前記回転数において、油脂が均質に分散するのに必要な十分な時間撹拌を行う。撹拌の時間は特に限定されることはないが、前記回転数において1分間以上撹拌することにより、油脂を均一に分散することができる。このような穏やかな撹拌によっても、非常に簡単に可溶化状態の本発明の油脂食品を得ることができる。むしろ、乳化食品の製造に一般に必要とされている高度な乳化装置、例えばホモジナイザー等の前記の高速撹拌機による撹拌は、上記褐変反応物・糖混合水溶液の粘度が高いため適さない。
【0042】
このようにして、従来公知の乳化安定剤あるいは界面活性剤を全く使用することなく、長期間にわたって油脂が分離することのない油脂の分離しない乳化状態あるいは可溶化状態の油脂食品を得ることができる。
【0043】
乳化状態あるいは可溶化状態の本発明の油脂食品は、該油脂食品に含まれる糖、油脂及び水性溶液並びに本発明の褐変反応物の量を適宜選択して、本発明の油脂食品自体をドレッシング、米菓用調味液、タレ等の乳化食品とすることも可能である。しかしながら、より安定に乳化又は可溶化された食品とするためには、上述の好ましい製造方法により、一定量の糖及び本発明の褐変反応物を含む本発明の油脂食品を製造した後、それを適宜水性溶液に混和して、所望の乳化食品とすることが望ましい。
【0044】
乳化状態あるいは可溶化状態の本発明の油脂食品は、任意の割合の水性溶液に極めて容易に分散し、乳化度が高く、しかもその乳化が安定な乳化食品とすることができる。該水性溶液としては、本発明の油脂食品に用いることができるものとして挙げたものを使用することができる。該乳化食品中における本発明の油脂食品の量は、乳化食品の種類に応じて適宜選択することができるが、例えば5〜95%(w/w)の範囲から選択することができる(なお、残部が水性溶液である)。
【0045】
本発明の油脂食品を上記水性溶液に混和する方法は特に制限されず、前記乳化状態あるいは可溶化状態の本発明の油脂食品を製造する際に採用できるものとして挙げた人為的撹拌又は穏やかな機械的撹拌でも十分混和可能である。また、前記乳化状態の本発明の油脂食品を製造する際に採用できるものとして挙げた高速撹拌でもよい。
【0046】
なお、上記水性溶液の割合を多くして、油脂の稀薄な乳化食品とする場合には、水と油脂の比重差に基づく油滴の浮上分離が起こりやすくなるため、キサンタンガムやローカストビーンガム等のような増粘性の安定剤をあらかじめ水性溶液に溶解して用いることが好ましい。これにより、長期間にわたって、油滴が浮上分離しない安定な乳化食品を得ることができる。
【0047】
このようにして得られた乳化食品は、必要により加熱して風味を整えたり、又は殺菌して製品とすることができる。
【0048】
上記水性溶液として、例えば、しょうゆを主要成分とし、これにみりん、酒類(清酒、ワイン等)、食酢、砂糖、香辛料等の付随する成分を適宜添加し、調理した調味液を用いれば、油脂を均質に安定に含有する米菓用調味液、ドレッシング、タレ(例えば焼肉用)等の乳化食品が得られる。
【0049】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0050】
(褐変反応物の調製)
グルコース10kgとグリシン1kgを水10リットルに添加して水溶液を調製し、液温85℃で、表1記載の各時間加熱し、褐変反応物を得た。得られた褐変反応物それぞれについて、pH、Brix、吸光度及び物性を調べた。なお、吸光度は、下記(色の測定法)にしたがって測定した。それらの結果を表1に示す。
【0051】
(色の測定法)
色に濁りがあると正確な測定ができないため、すべての区分において水で適宜希釈した後、0.45ミクロンフィルターで濾過し、その透過光を測定した。また、色の測定は、レシオビーム分光光度計U−1100型spectro photometer(日立ハイテク社製)を用い、10mm透明セルにおける光波長430nmの吸光度で測定した。表1に示す結果は、測定値を100倍(重量基準)水希釈液に換算した値である。
【0052】
【表1】
【0053】
表1の結果から、褐変反応物の得る際には、加熱時間12時間以上で急激に色が濃色化し、100倍水希釈後の430nmにおける吸光度が、0.38以上となり、反応が十分に進行していることがわかる。一方、加熱時間が72時間を越えると、不溶性析出物の沈殿が発生し、96時間となるとその量が多くなることがわかる。このようなことから、加熱時間は、12〜72時間が好ましく、24〜48時間がより好ましいことがわかる。
【実施例2】
【0054】
(褐変反応物の調製)
果糖ブドウ糖液糖(糖濃度75%(w/w))13.5kgとグリシン1kgを水6.5リットルに添加して糖濃度(無水物換算)約50%(w/w)、グリシン濃度(無水物換算)約5%(w/w)の水溶液を調製した。該水溶液を液温93〜98℃で24時間加熱して、pH約3.5、Brix約50%(w/w)の褐変反応物を調製した。
【0055】
(褐変反応物水溶液を用いた乳化状態の油脂食品の調製)
次いで、上記褐変反応物に水を加えて撹拌し、褐変反応物の濃度が10、30、50、100%(w/w)となる褐変反応物の水溶液をそれぞれ得た(なお、褐変反応物濃度100%水溶液としては、水を加えず上記褐変反応物をそのまま用いた)。各濃度の水溶液1重量部に対し、食用油脂が1重量部となるよう加え(乳化後の褐変反応物の終濃度が5、15、25、50%(w/w))、ホモジナイザー(DIAX900;ハイドルフ社製)により高速撹拌(16,000rpmで30秒間処理)し、乳化状態の本発明の油脂食品を得た。
褐変反応物の乳化能を評価するため、乳化状態の油脂食品の濁度測定及び乳化状態の肉眼観察を行った。濁度は、ホモジナイザーによって高速撹拌直後の乳化状態の油脂食品、及び、冷暗所にて1週間静置後の乳化状態の油脂食品を、水で適宜希釈し測定した。濁度はコロナ濁度計UT−11(日立ハイテク社製)を用いて測定し、1000倍(w/w)希釈液に換算して求めた。なお、濁度が高い値を示すほど、均一に乳化していることを表している。これらの結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
表2に示すとおり、褐変反応物は、10%(w/w)以上(終濃度5%以上)の濃度において、優れた乳化能を示し、乳化状態とされた油脂食品は長時間保存後においても油脂が浮上分離しないことがわかる。
【実施例3】
【0058】
(乳化状態の油脂食品の調製)
実施例2で得られた褐変反応物に果糖水溶液又は水を添加し、褐変反応物濃度が20%(w/w)で、糖濃度が下記表3記載の値の褐変反応物・糖混合水溶液を調製した。
次いで、該褐変反応物・糖混合水溶液1重量部に対し、食用油脂を1重量部加えて(褐変反応物の終濃度が10%(w/w))、ホモジナイザーにより油脂を均一に混合し、乳化状態の油脂食品を得た。得られた乳化状態の油脂食品の濁度を、実施例2と同様にして測定した。その結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
表3に示すとおり、褐変反応物は水の存在下で優れた乳化能を有し、乳化処理すると容易に乳化状態の油脂食品が得られ、該油脂食品は非常に安定で、しかも乳化度が高い特徴を有することがわかる。また、このような効果は、上記乳化処理の際に、糖を添加して介在させることにより高まる。
【実施例4】
【0061】
(褐変反応物の調製)
グルコース10kgとグリシン1kgを水10リットルに添加して糖濃度(無水物換算)約50%(w/w)、グリシン濃度(無水物換算)約5%(w/w)の水溶液を調製した。該水溶液を液温93〜98℃で24時間加熱して、pH約3.5、Brix約50%(w/w)の褐変反応物を調製した。
【0062】
(可溶化状態の油脂食品の調製)
上記の褐変反応物に、糖水溶液を混和し、褐変反応物濃度が20%(w/w)で、糖濃度が下記表4記載の値である褐変反応物・糖混合水溶液を得た。該褐変反応物・糖混合水溶液1重量部に対し、食用油脂が1重量部となるようスプーンで撹拌しつつ添加し、油脂が均一に混合した可溶化状態の油脂食品を得た。
【0063】
得られた各油脂食品の性状(油脂分離の有無)を、目視にて確認した。また、各油脂食品を所定量取り、これを水に添加し、スプーンで均一に撹拌して0.2%(w/w)水希釈液(乳化液)を調製し、コロナ濁度計UT−11(日立ハイテク社製)により該乳化液の濁度を調べた。それらの結果を表4に示す。なお、乳化液の濁度が高いほど、油脂が均一に分散し、可溶化能が高いことを表している。
【0064】
【表4】
【0065】
表4の結果から、褐変反応物・糖水溶液における糖濃度が50%(w/w)以上であるときは、油脂が浮上分離することがない安定な可溶化状態の油脂食品を、人為的撹拌によって得られることがわかる。
【実施例5】
【0066】
(褐変反応物の濃度が与える油脂可溶化率への影響)
グルコース10kgとグリシン1kgを水10リットルに添加して糖濃度(無水物換算)約50%(w/w)、グリシン濃度(無水物換算)約5%(w/w)の水溶液を調製した。該水溶液を液温93〜98℃で24時間加熱して、pH約3.5、Brix約50%(w/w)の褐変反応物を調製した。
【0067】
次いで、上記褐変反応物に糖水溶液を添加して、表5記載の褐変反応物濃度及び糖濃度60%(w/w)の褐変反応物・糖混合水溶液を調製した。
得られた褐変反応物・糖水溶液をスプーンで撹拌しつつ、可溶化することができる最大量のサラダ油を加えて可溶化して、油脂が均一に分散した可溶化状態の油脂食品を得た。
当該油脂食品の油脂量(可溶化率)を表5に示す。なお、可溶化率は、褐変反応物・糖水溶液の混合水溶液に可溶化することができる油脂の最大量を、油脂食品中の重量パーセント濃度(w/w)で表したものである。
【0068】
【表5】
【0069】
表5の結果から、褐変反応物を用いると油脂を可溶化でき、褐変反応物・糖混合水溶液中の褐変反応物濃度が5%(w/w)であるときは可溶化率31%(w/w)、そして褐変反応物が20%であるときは可溶化率70%を達成できることがわかる。なお、糖濃度60%では、褐変反応物の濃度を20%より高くしても、可溶化率を70%より増大することは難しいことが判明している。
【実施例6】
【0070】
(アミノ酸の違いによる褐変反応物の乳化能の違い)
グルコース50gと下記表6に示す各種アミノ酸5gを水50ミリリットルに添加して水溶液を調製し、該水溶液を液温80℃で48時間加熱し、各種褐変反応物を得た。得られた各種褐変反応物の吸光度及び、pH、Brixを測定した(なお、吸光度の測定方法は実施例1と同様とした)。
該褐変反応物1重量部に対し、食用油脂1重量部を加え、ホモジナイザーにより油脂を均一に混合し、乳化状態の油脂食品を得た。得られた油脂食品を、水で適宜希釈した後、コロナ濁度計UT−11(日立ハイテク社製)を用いて濁度を測定し、1000倍(w/w)水希釈液に換算した濁度を求めた。これらの結果を表6に示す。
【0071】
【表6】
【0072】
表6に示すとおり、乳化能を有する褐変反応物は各種アミノ酸を用いて得られること、及び、アミノ酸の種類の違いにより、油脂の乳化能に違いがあることがわかる。アミノ酸として、グリシン、アラニン、バリン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン又はフェニルアラニンを用いた場合、油脂を水相部により均一に乳化分散することができる褐変反応物を得ることができることがわかる。特に、グリシン、セリン、スレオニン、メチオニン又はフェニルアラニンを用いた場合、乳化能が極めて優れる褐変反応物を得ることができることがわかる。
【実施例7】
【0073】
(褐変反応物の調製)
グルコース10kgとグリシン1.5kgを水10リットルに添加して糖濃度(無水物換算)約50%(w/w)、グリシン濃度(無水物換算)約7%(w/w)の水溶液を調製した。該水溶液を液温85℃で60時間加熱して、pH約3.5、Brix約50%(w/w)、10mm透明セルにおける光波長430nmの吸光度3.53の褐変反応物を調製した。なお、吸光度の測定は、実施例1と同様にして行った。
【実施例8】
【0074】
(ドレッシングの製造)
水300mlにグルコース300gを加えて溶解した後、さらにグリシン30gを加えて撹拌し、液温85℃で24時間加熱することで、褐変反応物(pH3.25、Brix55.16%(w/w)、1%(w/w)水希釈液の10mm透明セルにおける光波長430nmの吸光度1.35)を得た。
【0075】
上記褐変反応物15gに水約135ミリリットルを加えて150mlとし、サラダ油(日清オイリオ社製)140gを添加後、ホモジナイザーにて高速撹拌し、サラダ油が均一に分散した乳化状態の油脂食品を得た。
次いで、表7に示す配合表に基づく割合で、水220mlに、キサンタンガム、しょうゆ、醸造酢、食塩、グルタミン酸ナトリウム(MSG)、砂糖、及びオニオンエキス(日研フード社製)を加えて加熱混合したものを、上記油脂食品に加えて混合し、乳化食品であるドレッシング(本発明品)を得た。該ドレッシングは、室温で2ヶ月間保存しても、全く油脂の分離がなく、油脂がドレッシング中に均一に分散され安定であった。
【0076】
【表7】
【実施例9】
【0077】
(ドレッシングの製造)
水14mlにグルコース24gを加えて溶解した後、さらにグリシン2gを加えて撹拌し、液温85℃で60時間加熱することで、褐変反応物(pH3.38、Brix61.3%(w/w)、1%(w/w)水希釈液の10mm透明セルにおける光波長430nmの吸光度3.43)を得た。
上記褐変反応物を用い、実施例8記載の方法でドレッシング(本発明品)を調製した。該ドレッシングは、室温で2ヶ月間保存しても、全く油脂の分離がなく、油脂がドレッシング中に均一に分散され安定であった。
【実施例10】
【0078】
(可溶化状態のゴマ風味油脂食品の製造)
グルコース10kgとグリシン1kgを水10リットルに添加して糖濃度(無水物換算)約50%(w/w)、グリシン濃度(無水物換算)約5%(w/w)の水溶液を調製した。該水溶液を液温93〜98℃で24時間加熱して、pH約3.5、Brix約50%(w/w)の褐変反応物を調製した。
【0079】
上記褐変反応物に糖水溶液を添加して、該褐変反応物10%(w/w)、糖濃度60%(w/w)の褐変反応物・糖混合水溶液を調製した。次いで、該褐変反応物・糖混合水溶液1重量部に対し、胡麻油1重量部を加えてスプーンで撹拌して可溶化し、油脂が均一に分散したゴマ風味油脂食品を得た。この油脂食品は、室温で2ヶ月間保存しても、全く油脂の分離がなく、安定であった。
【実施例11】
【0080】
(可溶化状態のユズ風味油脂食品の製造)
グルコース10kgとグリシン1kgを水10リットルに添加して砂糖濃度(無水物換算)約50%(w/w)、グリシン濃度(無水物換算)約5%(w/w)の水溶液を調製した。該水溶液を液温85℃で24時間加熱して、pH約3.5、Brix約50%(w/w)の褐変反応物を調製した。
【0081】
上記褐変反応物に、みりん50ml、砂糖50gの糖水溶液を添加して、褐変反応物濃度10%(w/w)、糖濃度約70%(w/w)の褐変反応物・糖混合水溶液を調製した。次いで、該褐変反応物・糖混合水溶液1重量部に対しユズオイル(曽田香料社製)0.02重量部を加えてスプーンで撹拌して可溶化し、ユズ風味油脂食品を得た。この油脂食品は、室温で2ヶ月間保存しても、全く油脂の分離がなく、安定であった。
【実施例12】
【0082】
(乳化型米菓用調味液の製造)
果糖ブドウ糖液糖(糖濃度75%(w/w))13.5kgとグリシン1kgを水6.5リットルに添加して糖濃度(無水物換算)約50%(w/w)、グリシン濃度(無水物換算)約5%(w/w)の水溶液を調製した。該水溶液を液温93〜98℃で24時間加熱して、pH約3.5、Brix約50%(w/w)の褐変反応物を調製した。
【0083】
次いで、褐変反応物20gに水飴80g(糖濃度75%(w/w))を混合し均一化して、糖濃度60%(w/w)の褐変反応物・糖混合水溶液とした。該褐変反応物・糖混合水溶液をスプーンで撹拌しつつ、該褐変反応物・糖水溶液1重量部に対し、サラダ油0.9重量部及びユズオイル0.1重量部を混合し、ユズベース可溶化物を得た。
【0084】
上記ユズベース可溶化物80gに、下記表8記載の水性調味液約760gを混和して、スプーンで撹拌して、乳化型米菓用調味液を得た。この調味液は、2ヶ月間室温で保存しても、ユズ風味を濃厚に有し、油脂の分離がなく、安定なものであった。
【表8】
【実施例13】
【0085】
(ユズ風味を濃厚に有する煎餅の製造)
通常の煎餅の製造法にしたがって、生地を整形し、素焼きしたものを、実施例12で得られた乳化型米菓用調味液につけた。次いで、該生地を引き上げ、メッシュの回転円筒内に入れて余分な調味液を振切りし、素焼きの生地の表面に調味液を塗布した。次いで、常法により温度80℃で乾熱乾燥し、調味液の水分を蒸発させ、ユズ風味を濃厚に有する煎餅を得た。
【実施例14】
【0086】
(ユズ風味ポン酢しょうゆの製造)
果糖ブドウ糖液糖(糖濃度75%(w/w))13.5kgとグリシン1kgを水6.5リットルに添加して砂糖濃度(無水物換算)約50%(w/w)、グリシン濃度(無水物換算)約5%(w/w)の混合水溶液を調製した。この混合水溶液を液温93〜98℃で24時間加熱して、pH約3.5、Brix約50%(w/w)の褐変反応物を調製した。
当該褐変反応物3gに、みりん50ml、砂糖50gを加えて混合して、褐変反応物3%(w/w)、糖濃度約70%(w/w)の褐変反応物・糖混合水溶液とした。該褐変反応物・糖混合水溶液にユズオイル(曽田香料社製)2gを加え、スプーンで撹拌して、ユズオイルが均一に分散した可溶化状態の油脂食品を得た。
当該油脂食品に、下記表9に示す配合表に基づく割合で、ユズ果汁、しょうゆ、酢、昆布だし、MSG、及び水を徐々に加えて混合し、油脂食品を用いた乳化食品である調味料(実施例14)を得た。比較例として、上記油脂食品を含まない調味料(比較例1)を、実施例14と同様の方法で調整した。
【0087】
【表9】
【0088】
次に、実施例14及び比較例1の調味料について、35℃で35日間及び90日間保存後、パネル5名による官能評価試験を行った。官能評価の結果を下記表10に示す。
【0089】
【表10】
【0090】
本発明の油脂食品を用いてなる調味料は、ユズオイルが均一に分散し、乳化されたことによって香気成分が保持された結果、比較例に比べて良好な香りを有することが確認された。特に90日間の保存後において、その差は顕著であった。