(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734868
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】積層された電気的に着色可能な窓
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20150528BHJP
E06B 9/24 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
C03C27/12 N
C03C27/12 L
E06B9/24 C
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-540779(P2011-540779)
(86)(22)【出願日】2009年12月1日
(65)【公表番号】特表2012-511498(P2012-511498A)
(43)【公表日】2012年5月24日
(86)【国際出願番号】US2009066255
(87)【国際公開番号】WO2010068525
(87)【国際公開日】20100617
【審査請求日】2012年11月30日
(31)【優先権主張番号】12/333,676
(32)【優先日】2008年12月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】クワク, ビュン−スン, レオ
(72)【発明者】
【氏名】ハース, ディーター
(72)【発明者】
【氏名】バンゲルト, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナ, ネティ, エム.
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン, ヴィンフリート
【審査官】
吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−092695(JP,A)
【文献】
特開平06−003638(JP,A)
【文献】
再公表特許第2003/006391(JP,A1)
【文献】
特開昭62−115416(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/057459(WO,A1)
【文献】
特開2003−002676(JP,A)
【文献】
特開2002−153984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00 − 27/12
C03B 33/02 − 33/037
B28D 5/00
G02F 1/15
E06B 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種々の寸法や機能を有する電気的着色可能窓ガラスの製造方法であって、
大型の定形ガラス基板を準備し、
前記大型定形のガラス基板上に複数の電気的着色可能薄膜装置を作成し、
各電気的着色可能部品は前記複数の電気的着色可能薄膜装置の1個を含むと定義して、前記大型定形のガラス基板を複数の電気的着色可能部品に切断し、
複数の窓ガラス部品を準備し、
前記複数の電気的着色可能部品の各1個を対応する前記複数の窓ガラス部品の1個と合致させ、
合致された電気的着色可能部品と窓ガラス部品をそれぞれ積層することにより合致された電気的着色可能部品を窓ガラス部品に付着させること
を含む方法。
【請求項2】
前記積層の期間、前記電気的着色可能薄膜装置は、前記複数の窓ガラス部品の前記対応する1個と面している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記積層の期間、前記電気的着色可能薄膜装置は、前記複数の窓ガラス部品の前記対応する1個とは逆方向を向いている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記窓ガラス部品は、熱処理されたガラス部品、着色ガラス部品、積層されたガラス部品、あるいは高強度ガラス部品を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電気的着色可能薄膜装置は、エレクトロクロミック装置、懸濁微粒子装置、またはポリマー分散液晶装置である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記作成工程は、前記大型定形ガラス基板上への薄膜の真空蒸着を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記作成工程は、前記大型定形ガラス基板上への薄膜のプラズマ蒸着を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記作成工程は、前記大型定形ガラス基板を加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の電気的着色可能部品は、種々の寸法の部品を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
種々の寸法や機能を有する電気的着色可能窓ガラスの製造方法であって、
多数の同一の大型の定形ガラス基板を準備し、
前記多数の大型定形ガラス基板上へ複数の電気的着色可能薄膜装置を作成し、
各電気的着色可能部品は前記複数の電気的着色可能薄膜装置の内の1個を含むと定義して、前記多数の大型定型ガラス基板を複数の電気的着色可能部品に切断し、
複数の窓ガラス部品を準備し、
前記複数の電気的着色可能部品の1個をそれぞれ前記複数の窓ガラス部品の対応する1個と合致させ、
合致された電気的着色可能部品と窓ガラス部品のそれぞれを積層することにより合致された電気的着色可能部品を窓ガラス部品に付着させること
を含む方法。
【請求項11】
前記窓ガラス部品は種々の寸法を持つガラス部品を含む、請求項1または10に記載の方法。
【請求項12】
前記窓ガラス部品は種々の厚さを持つガラス部品を含む、請求項1または10に記載の方法。
【請求項13】
窓ガラス部品と;
ガラス基板と;
前記ガラス基板上に形成されたエレクトロクロミック薄膜装置と;
前記エレクトロクロミック薄膜装置と前記窓ガラスの間に積層体を含み、前記積層体により前記エレクトロクロミック薄膜装置が前記窓ガラスに付着されている、電気的着色可能窓。
【請求項14】
前記積層体が、ポリビニル・ブチラール及びエチレン酢酸ビニールからなる群から選択される接着剤を含む、請求項13に記載の電気的着色可能窓。
【請求項15】
大型定形ガラス基板に複数の電気的着色可能薄膜装置を作成する第1システムと、
各電気的着色可能部品は前記複数の電気的着色可能薄膜装置の1個を含むと定義して、前記大型の定形ガラス基板を複数の電気的着色可能部品に切断する第2システムと、
前記複数の電気的着色可能部品の各1個は、複数の窓ガラス部品の対応する1個と合致させ、合致された電気的着色可能部品と窓ガラス部品を積層する第3システム
を含む、種々の寸法や機能を有する電気的着色可能窓ガラスの形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に電気的に着色可能な窓に関し、特に、多種の窓寸法および機能に合致可能であり、高い収率、高い処理能力で安価に製造可能な、電気的に着色可能な窓の改良された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートウインドウは、制御可能な光学的、熱的透過率特性を持った装置を含む複合ガラス製品である。上記装置は、一般的に,ガラス表面に直接堆積あるいは積層によって形成された層形状である。所謂スマートウインドウをビルディングに取り付けると、窓の光学的、熱的性質を調整することによって、内部の明るさや温度を調節する機会が得られる。エレクトロクロミック装置、懸濁微粒子装置(SPD)、ポリマー分散液晶(PDLC)装置は、いずれもスマートウインドウに含まれる装置の例である。これら特殊な装置の光透過率は電気的に調節可能であり、これら装置を含むスマートウインドウは、電気的に着色可能な窓として知られている。
【0003】
エレクトロクロミック装置は,現在、スマートウインドウやバックミラーや美術館の展示物の保護ガラスを含む一連の製品に含まれている。エレクトロクロミック装置は、装置を横切って印加された電圧に応答して光学的(および熱的)透過率特性が変化する装置である。透明状態と半透明な状態(ここで、透過光は色のついた)の間を電気的に切替えるエレクトロクロミック装置が構成されている。さらに、透明状態と反射状態の間を切替わるある種の遷移金属水素化物エレクトロクロミック装置も作られている。エレクトロクロミック装置の機能に関するより詳しい議論は、Granqvist. C. -G., Nature Materials, v5, N2, Feb. 2006, p89-90.に見いだされる。エレクトロクロミック装置は、現段階では、スマートウインドウに使用するための最も前途有望な電気的着色可能装置である。
【0004】
SPDあるいはPDLC装置もまた、スマートウインドウに組み入れられる。SPDは、多数の顕微鏡的な微粒子及び透明電極の懸濁液を膜の両側に含む薄膜を有する装置である。粒子はランダムに配向され、薄膜の透過率を減少させる。しかしながら、電界がフィルムを横切って印加されると、粒子は電界とともに整列し、薄膜の光学的透過率を増加させる。PDLCはプラスチック薄膜上の透明導電体の間に挟持された液晶層からなる。液晶粒子は,層中にランダムに配向し、光を分散するのでこの層は半透明である。然し、液晶層を横切って電界が印加されると、結晶は整列し光学的に透明な薄膜となる。透明性の度合いは,液晶層を横切って印加される電圧によって制御される。
【0005】
エレクトロクロミック装置がスマートウインドウに組み入れられると、エレクトロクロミック装置が少なくとも10年、好ましくは30年以上の保証された寿命時間を持つことが必要となる。しかし、エレクトロクロミック装置を大気中の酸素や水にさらすと、装置の性能を劣化させ、寿命時間を減少させる。エレクトロクロミック装置を絶縁ガラスユニット(IGU)の内面上に組み込むと、30年以上に亘って満足な性能を発揮するために必要な保護された環境を提供できる。SPD及びPDLC装置もまたIGUによって保護された環境の利益を受けることができる。
【0006】
スマートウインドウは一般にIGUの環境にある。電気的に着色可能な装置220を含むIGU100を
図1−3に示す。制御装置と電源190が電気的着色可能装置220に電気リード線195によって取り付けられている。
図3は、4隅がフレーム340によって離間し、4隅がすべて封着材350によって封着された2枚のガラス板210,330からなる、原寸に比例していないIGUの断面を示している。内部の容積380はアルゴンなどの不活性ガスで満たされ、熱的絶縁と非酸化性の環境とされている。電気的着色可能装置220は、IGU内に外面のガラス210(外に向いたガラス)上に、その内面に向いた表面上に組み込まれる。外側に向いたガラス210の内表面の上面図である
図2を参照されたい。IGU内の不活性な環境は電気的着色可能装置220の性能に影響を与えない。
【0007】
IGUの外側のガラス部品210は、着色され、積層され、強化され、熱強化されている。上述のように、IGUにエレクトロクロミック装置220が組み込まれると、外側のガラス210は、熱的応力にさらされる。さらに、外側ガラス210も着色されると、このことがガラス中の熱的応力を増加させる。結果的に、強化されたまたは熱強化ガラスがしばしば指定され必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在、電気的着色可能装置を含むスマートウインドウの製造に内在する考え方は、すべてのガラスの機能である着色装置、色/着色、厚さ、強度、サイズ等を一枚の板ガラスに包含させることである。然し、この考え方は、種々の機能に対する製造の要求が互いに矛盾する結果、統合可能な機能に限界があり、柔軟性の無い価格の高い製造工程につながる。例えば、強化ガラスと電気的着色可能エレクトロクロミック装置からなるスマートウインドウの製造工程の問題を考えると様々な寸法の窓が必要とされる。二つの機構、即ち、強化ガラスとエレクトロクロミック装置の製造工程上の要件は、ガラスのサイズ設定を含む統合プロセスとは相いれないものである。これは、第1に、ガラスが強化されると強化されたガラスは種々のサイズに切断することができないため、そして、もし、エレクトロクロミック装置を、ガラスの強化処理前にガラス上に成膜すると、エレクトロクロミック装置がガラスの強化に必要な工程に耐えられないからである。従って、ガラスは、エレクトロクロミック装置の層を成膜する前に、切断し、強化しなければならない。このことは、製造装置に対して種々のサイズのガラス板を取り扱うことを要求するので、高価な製造設備が必要となり製造工程のコストも上昇する。さらに、種々のサイズの基板を取り扱うことは、収率にマイナスの影響を与える。例えば、種々のサイズのガラス板は、成膜用のチャンバ内で種々の電界分布を与え、このことが成膜された層の均一性に悪影響を与えるかもしれない。(このことは、イオン化された種を含む、例えば、プラズマ強化成膜の場合顕著である。)その他の例は、種々の厚さのガラスと成膜されたエレクトロクロミック装置とを組み合わせる場合である。エレクトロクロミック装置の複数層を、最も典型的な薄膜成膜法で成膜する時と同じように、基板温度を制御することが望ましい。しかし、異なる板厚のガラスは、加熱、冷却の速度が異なり、厚さの厚いガラスでは処理能力が低く、製造工程の均一性を制御することは困難となる。明らかに、スマートウインドウの製造において、より柔軟で互換性があり、安価で収率が高く、処理能力の高い製造工程が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施の形態は、(1)複数のガラスの機能を複数のガラス部品に分配し、(2)ガラス部品を組み合わせるガラス積層技術を利用し機能性を強化した統合ガラス製品とする、という構想に基づいている。このようなアプローチは希望する種々の機能性のために工程要件が相容れないおよび/または性能を妥協するような場合に特に有効である。ここに、窓のサイズや機能が大きく変わっても対応可能な電気的着色可能な窓ガラスの製造方法が提供されている。この方法は、電気的着色可能装置を窓ガラスと別個に独立に作成し、そして、最後に電気的着色可能装置を窓ガラスに積層することを含む。このようなアプローチは、電気的着色可能装置の作成時の工程に柔軟性を与えると共に、窓ガラスの仕様に関しても大きな柔軟性を与える。これらの概念および方法はコスト低減に有効であり、高収率で高い処理量の電気的着色可能装置の製造法を可能にする。ここに記載した方法を用いて作成された電気的着色可能窓ガラスは、IGU、あるいは他の種類の建築用ガラスに組み入れられる。
【0010】
本発明の実施の形態のアプローチによって電気的着色可能装置は標準サイズで標準厚の基板上に作成可能であり、単一寸法のガラス基板に全薄膜工程が施される。この方法は良好な工程管理ができ、高い生産量や高収率、高容量生産に適した安定な生産環境を与える。個々の電気的着色可能装置を基板から切断した後にのみ、異なったサイズの基板を扱う必要性が出てくる。
【0011】
本発明の態様によれば、種々のサイズ、機能性を有する電気的に着色可能な窓ガラスの製造方法は、
(a)大型定形のガラス基板を用意し、(b)大型定形ガラス基板上に複数の電気的着色可能な薄膜装置を作製し、(c)各電気的着色可能部品が前記複数の電気的着色可能薄膜装置の1個を含むと定義して、大型定形ガラス基板を複数の電気的着色可能部品に切断し、(d)複数の窓ガラス部品を用意し、(e)複数の電気的着色可能部品のそれぞれを、対応する複数の窓ガラス部品の一つと合致させ、(f)合致されたそれぞれの電気的着色可能部品を窓ガラス部品と積層させる。積層によって電気的着色可能装置は、ガラス基板と窓ガラス部品の間に挟まれるか、あるいは積層部の表面に配置される。電気的着色可能装置はエレクトロクロミック装置であるが、しかし、電気的着色可能装置は、SPD、PDLCあるいは、ガソクロミック装置であってもよい。電気的着色可能装置は,典型的には薄膜装置であり、工程の要請する設備を用いて製造される。工程の要請は、基板のロボットによる操作、真空中での処理工程、プラズマ処理工程、および/または基板加熱などがある。ガラス部品は、加熱され、強化され、着色され、積層され、高強度化されるなどの処理を施され、種々の寸法あるいは厚さの中から選択される。
【0012】
さらに、本発明の実施の形態の製造方法は、最終的な電気的着色可能装置の寸法に関わらず、標準の大型定形のガラス基板を用いる生産ラインに載せるという構想に基づく。従って、本発明のさらなる態様は、種々の寸法や機能を持つ電気的着色可能窓ガラスの製造方法は、(a)多数の同じ大型定形ガラス基板を用意し、(b)多数の大型定形ガラス基板上に複数の電気的着色可能薄膜装置を作り、(c)各電気的着色可能部品が複数の電気的着色可能薄膜装置の一つを含むと定義して、多数の大型定形のガラス基板を対応する複数の電気的着色可能部品に切断し、(d)複数の窓ガラス部品を用意し、(e)複数の電気的着色可能部品のそれぞれ一つを、複数の窓ガラス部品の対応する一つの窓ガラス部品と合致させ、そして、(f)合致された電気的着色可能部品と窓ガラス部品をそれぞれ積層することを含む。
【0013】
本発明のさらなる態様によれば、電気的着色可能窓ガラスは:窓ガラス部品;ガラス基板;ガラス基板上に形成されたエレクトロクロミック薄膜装置;及びエレクトロクロミック薄膜装置と窓ガラスの間の積層体を含み、積層体により、エレクトロクロミック薄膜装置が窓ガラスに取り付けられる。積層体は、ポリビニル・ブチラール(PVB)とエチレン酢酸ビニル(EVA)を含むことができる。
【0014】
本発明の別の態様によれば、種々の寸法や機能を持つ電気的着色可能窓ガラスの製造装置は、大型定形のガラス基板上に複数の電気的着色可能薄膜装置を作成する第1のシステムと、大型定形ガラス基板を複数の電気的着色可能薄膜装置の一つをそれぞれ含む複数の電気的着色可能部品に切断する第2のシステムと、複数の電気的着色可能部品の一つは対応する複数の窓ガラス部品の一つと合致され、合致された電気的着色可能部品と窓ガラス部品とを積層する第3のシステムを有する。この装置は積層された部品のそれぞれからIGUを組み立てる第4のシステムを有する。
【0015】
本発明の上記の態様あるいはその他の態様は,添付図面を参照して本発明の実施形態の以下の説明を見ることによって当業者に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、電気的着色可能装置を取り入れた絶縁ガラスユニットの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の絶縁ガラスユニットの外部ガラス窓枠の内面の平面図であり、電気的着色可能装置を示している。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態による構成を有する
図1の絶縁ガラスユニットの断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態による構成を有する
図1の絶縁ガラスユニットの断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態による電気的着色可能装置を有する絶縁ガラスユニットの製造のフローチャートである。
【
図7】
図7は本発明の実施形態による電気的着色可能装置を有する絶縁ガラスユニットの作成装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
当業者にとって本発明を実行できるように本発明の実例となるように用意された図面を参照して本発明を以下に詳細に記述する。以下の図面および例は本発明の範囲を単独の実施形態に制限することは意図せず、記載あるいは図示した要素を一部または全部入れ替えることによってその他の実施形態も可能であることに注意されたい。さらに、本発明のある要素は部分的または全面的に既知の部品によって実行可能であり、そうした本発明の理解に必要な既知の部品の部分は説明する。然し、そうした既知の部品の部分で本発明に抵触しない場合、詳細な説明は省く。本明細書において、単独の要素部品の実施形態は,それが限定していると考えるべきで無く、むしろ、本発明は,特に具体的に断らない限り、複数の同様な部品を含む実施形態を包含すると解釈すべきである。さらに、出願人は,明細書あるいは請求の範囲の用語が、特に具体的に規定しない限り、非普遍的で特殊な意味を指していることは無い。さらに、本発明は、本発明の中で図示して参照した既知の部品の現在および未来の相当品を包含する。
【0018】
一般に、本発明の実施形態は、(1)複数のガラスの機能を複数のガラス部品に分配し、(2)ガラス部品を組み合わせて、機能性が向上した統合ガラス製品とするガラス積層技術を利用する、という構想に基づいている。ここに用意された例は機能の異なった2枚のガラス部品の積層技術を示している。しかし、この構想は異なった機能の3枚ないしそれ以上のガラス部品の積層にも応用可能である。
【0019】
本発明の実施形態は、電気的着色可能装置が窓ガラスと独立に作成され、その後窓ガラスが電気的着色可能装置に積層される電気的着色可能窓の別の製造方法を示唆する。この方法は、電気的着色可能装置の製造の工程条件の選択に自由度を与え、窓ガラスの機能の選択の自由度も大きく、窓の寸法も自由に選択できる。こうした構想や方法は、IGUといった建築用ガラスへ組み入れるための廉価な電気的着色可能窓の製造を可能とする。詳細な説明のために用意された例は薄膜のエレクトロクロミック電気的着色可能装置を示しているが、然し、この構想はSPDやPDLC装置を含むその他の電気的着色可能装置に対しても応用可能である。
【0020】
図4は、例えば
図1のIGUといったIGUに組み込まれた本発明の実施形態によって製造された原寸に比例していない電気的着色可能窓ガラスを示している。電気的着色可能装置420はガラス基板460上に形成されている。電気的着色可能装置420を有するガラス基板460は、外部ガラス部品410(本文では、窓ガラスと呼称されている)と積層されている。電気的着色可能装置420は、積層構造中では外部ガラス部品410から反対に向いている。積層層470は、ポリビニルブチラール(PVB)およびエチレン酢酸ビニール(EVA)といった結合剤を含む。積層工程は真空積層工程によることが好ましい。真空積層工程は、外部ガラス部品410と電気的着色可能装置420を積み重ね、結合剤を間に挟んで真空バッグに入れ、積み重ねた板材に均一な圧力が印加されるように真空バッグを真空に引いて、その後バッグは高温高圧力の炉またはオートクレーブ中に入れられる。工程温度および圧力は電気的着色可能装置の種類に依存する。エレクトロクロミック装置に関しては、温度は通常125℃から175℃の範囲である。温度範囲はより広く取られる場合もあるが、中心温度は約150℃である。圧力は、最大で20bar(またはそれ以上)であり、典型的な圧力は約13barである。この工程は、積層工程において、電気的着色可能装置の損傷を防止するように制御される。真空バッグを用いることは、電気的着色可能装置420に損傷を与えずに均一な圧力を付与する方法の一例である。電気的着色可能装置420に損傷を与えずに圧力と温度を付与するその他の方法も使用可能である。
【0021】
図5は、
図4の構造の別の構造を示す。
図5では、積層構造中で電気的着色可能装置が外部ガラス部品410に向いており、電気的着色可能装置420が積層体470と接触している。この実施形態において、積層工程は上述の真空積層工程か、あるいは、積層体が中間的な温度でロール加圧され、その後、高温、高圧の真空積層炉または、オートクレーブ中に入れられて最終的な積層を行う。(中間温度でのロール加圧は、高温加圧より装置により均一な圧力を与え、従って、接着強度や物理的な外観がより良好となると期待できる。)
【0022】
電気的着色可能装置がエレクトロクロミック装置である場合、上述のように、環境酸化剤に対する装置の保護を考慮しなければならない。この保護は、装置をIGUに組みこむことによって達成される。あるいは、又はそれに加えて、Kwak et al.の米国特許出願番号第12/134,437号に記載されているように、カプセル層に包む方法がある。このようなカプセル層は、望ましくない酸化剤の拡散防止層として作用する。
【0023】
図6は、本発明の実施形態による電気的着色可能窓ガラスの製造のフローチャートである。この方法は次の工程で構成される。大型定形のガラス基板(610)を用意し; 大型定形ガラス基板(620)上に複数の電気的着色可能薄膜装置(630)を形成し; 各電気的着色可能部品は複数の電気的着色可能薄膜装置(630)の1個を含むと定義して、大型定形ガラス基板を複数の電気的着色可能部品に切断し; 寸法が異なり種々の性質を持つ複数の窓ガラス部品(640)を用意し; 複数の電気的着色可能部品の1個をそれぞれ対応する複数の窓ガラス部品(650)の1個とを合致させ; 合致された電気的着色可能部品と窓ガラス部品(660)をそれぞれ積層し; そして、(必要に応じて)種々の寸法や機能(670)の複数の絶縁ガラスユニット(IGU)を作成する。
【0024】
電気的着色可能装置は、エレクトロクロミック装置といった薄膜装置である。そして、この装置は、例えば、基板のロボットハンドリング、真空中での処理、プラズマ処理、および/または基板加熱などが必要な工程を用いて製造される。薄膜エレクトロクロミック装置とそのような装置の製造方法の詳細は、Kwak et al.の米国特許出願第12/134,437号に見られる。関連する薄膜堆積工程の例は、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、およびプラズマ強化蒸着技術などを含む真空蒸着技術を含む。薄膜成膜時には基板を加熱することが望ましい。窓ガラス部品は、加熱され、強化され、着色され、積層され、高強度とされ、そして、種々の寸法や厚さから選択される。電気的着色可能装置の形成は、別々の基板上で行われるので、装置の処理や窓ガラス部品の仕様に極めて大きな自由度がある。例えば、窓ガラス部品を用意するとき、板ガラスを望みの寸法に切断し強化する。複数の電気的着色可能装置が、大型ガラス基板上に効率的に製造され、その後、個々の装置は板ガラスから切断される。強化された部品と装置は積層されて、IGUに集積するために適した電気的着色可能窓が形成される。
【0025】
電気的着色可能部品はすべて同じサイズでも良いし異なったサイズでも良い。
図6の工程630を参照されたい。換言すれば、電気的着色可能装置を有するガラス基板は、基板上に形成された電気的着色可能部品によって、複数の同一サイズの部品に切断されるか、あるいは、複数の異なったサイズの部品に切断される。窓ガラス部品はすべて電気的着色可能窓ガラスの仕様に従って、電気的着色可能部品に対応するサイズに整えられる。
図6の工程640および650を参照されたい。一般に、電気的着色可能部品は
図2〜5に示すように、窓ガラス部品より小さいか、又は同じサイズである。(
図4に示す装置の代替実施形態では、ガラス基板460は窓ガラス部品410と同一サイズであり、窓枠340がガラス基板460の表面に配置されている。ただし、電気的着色可能装置420は、窓枠340および封止剤350の内側に合致するように、窓ガラス部品410より小さいものでなくてはならない。)
【0026】
さらに、本発明の実施形態に拠れば、
図6に示す工程の流れは、複数の同一の大型定形基板が処理される電気的着色可能窓の製造工程に拡張することができる。従って、種々のサイズや機能を持つ電気的着色可能窓ガラスの製造方法は、多数の同一の大型定形のガラス基板を準備し; 多数の大型定形ガラス基板上に複数の電気的着色可能薄膜装置を作成し; 各電気的着色可能部品は複数の電気的着色可能薄膜装置の1個を含むと定義して、多数の大型定形ガラス基板を複数の電気的着色可能部品に切断し; 複数の窓ガラス部品を準備し; 複数の電気的着色可能部品の1個をそれぞれ対応する複数の窓ガラス部品の1個と合致させ; 合致された電気的着色可能部品の1個と窓ガラス部品をそれぞれ積層し; そして(必要に応じて)サイズや機能の異なる複数の絶縁ガラスユニット(IGU)を作成することを含む。製造工程は、複数の同一サイズの基板の連続処理法、および、処理が平行できる場合、複数の同一サイズの基板の平行処理法の両方を含む。
【0027】
図7は、本発明のある実施形態による種々のサイズや機能を持つ電気的着色可能窓ガラスおよびIGUの製造のための装置の概要を示している。
図7の装置は、例えば、
図6に示す工程の流れに沿ってIGUを作成するために用いられる。
図7の装置は4つのシステムからなる。第1システム720は、大型定形ガラス基板上に複数の電気的着色可能薄膜装置を作成する。第2システム730は、各電気的着色可能部品は複数の電気的着色可能薄膜装置の1個を含むと定義して、大型の定形ガラス基板を複数の電気的着色可能部品に切断する。第3システム760は、複数の電気的着色可能部品の各1個は対応する複数の窓ガラス部品の内の1個と合致しているので、互いに合致した電気的着色可能部品と窓ガラス部品の中の対応する1個とを積層する。第4システム770は前記各積層体からIGUを構成する。
図7の点線は、大型定形の標準サイズのガラス(点線の上)を取り扱う装置を示し、種々の異なったサイズの小型のガラス部品(点線の下)を取り扱う装置を示す。
【0028】
本発明の製造方法は、懸濁した粒子を用いる装置(SPD)、ポリマー分散液晶(PDLC)装置および、ガソクロミック装置を使用して光透過率を制御するIGUにも適用可能である。
【0029】
本発明は、特にその実施形態を参照して記載したが、本願の範疇を離れずに、形状や詳細を修正可能であることは当業者にとって明らかであろう。添付した請求の範囲が変更や改良を包含することを意図している。下記の請求項により本願が定義される。