特許第5736237号(P5736237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736237
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】映像伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/173 20110101AFI20150528BHJP
   H04N 21/24 20110101ALI20150528BHJP
【FI】
   H04N7/173 630
   H04N21/24
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2011-118075(P2011-118075)
(22)【出願日】2011年5月26日
(65)【公開番号】特開2012-249005(P2012-249005A)
(43)【公開日】2012年12月13日
【審査請求日】2014年1月7日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】小田 周平
(72)【発明者】
【氏名】小山 智史
(72)【発明者】
【氏名】黒住 正顕
(72)【発明者】
【氏名】青木 勝典
(72)【発明者】
【氏名】山本 真
【審査官】 赤穂 州一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−086751(JP,A)
【文献】 国際公開第02/032082(WO,A1)
【文献】 特開2007−329708(JP,A)
【文献】 特開2000−183814(JP,A)
【文献】 特開2005−210634(JP,A)
【文献】 特開2009−206627(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/108379(WO,A1)
【文献】 特開2007−335994(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/095868(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/054442(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/10 − 7/173
H04N 21/00 −21/858
H04N 5/76 − 5/956
G11B 20/10 −20/16
G11B 27/00 −27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号を圧縮符号化してエンコードデータを生成し、前記エンコードデータを変調し無線伝送路を介して受信装置へ送信する映像伝送装置において、
前記送信されたエンコードデータに対する確認応答のACKを含むデータを、前記受信装置から受信して復調する受信復調部、前記受信装置により送信されたデータについての電波の電界強度を測定する電界強度測定部、前記電界強度測定部により測定された電界強度に基づいて変調方式を決定する変調方式決定部、及び、前記変調方式決定部により決定された変調方式に従ってエンコードデータを変調し、無線伝送路へ送信する変調送信部、を有する送信部と、
前記送信部の変調方式決定部により新たな変調方式が決定され、前記新たな変調方式に切り替わる場合、前記切り替え前の現在の変調方式、前記切り替え後の変調方式、及び、前記送信部の電界強度測定部により測定された電界強度に基づいて、エンコードレートを決定する中間ドライバと、
前記エンコードレートにて映像信号を圧縮符号化し、エンコードデータを生成するエンコーダと、を備え、
前記中間ドライバは、
前記変調方式に基づいて、送信可能な最大レートを算出し、前記切り替え後の変調方式における送信可能な最大レートが、前記切り替え前の現在の変調方式における送信可能な最大レート以下の場合に、
前記切り替え後の変調方式における送信可能な最大レート以下のエンコードレートで圧縮符号化するための指示を前記エンコーダに出力し、前記指示を前記エンコーダに出力してから、前記指示によりエンコードレートが低下したエンコードデータを前記送信部の変調送信部にて変調可能な所定時間が経過した後に、前記新たな変調方式に切り替えるための指示を前記送信部の変調送信部に出力し、
前記切り替え後の変調方式における送信可能な最大レートが、前記切り替え前の現在の変調方式における送信可能な最大レートよりも高い場合に、
前記新たな変調方式に切り替えるための指示を前記送信部の変調送信部に出力し、前記送信部の変調送信部から、前記新たな変調方式に切り替わったことを示す変調方式切替完了を入力した後に、または、前記指示を前記送信部の変調送信部に出力してから、前記指示により前記新たな変調方式に切り替わる所定時間が経過した後に、前記切り替え後の変調方式における送信可能な最大レート以下のエンコードレートで圧縮符号化するための指示を前記エンコーダに出力する、ことを特徴とする映像伝送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の映像伝送装置において、
前記中間ドライバは、
前記送信部の電界強度測定部により測定された電界強度が所定の閾値よりも小さい場合、前記送信部の変調送信部に、前記変調及び送信を停止させると共に前記エンコードデータを破棄させ、前記送信部の電界強度測定部により測定された電界強度が所定の閾値以上の場合、前記送信部の変調送信部に、前記変調及び送信を再開させる、ことを特徴とする映像伝送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の映像伝送装置において、
さらに、位置情報測定部及びエンコードレート決定部を備え、
前記位置情報測定部は、当該映像伝送装置の位置を測定して位置情報を生成し、
前記エンコードレート決定部は、位置情報とエンコードレートとが対応して格納されたテーブルを有し、前記位置情報測定部により生成された位置情報、前記テーブルに格納された位置情報及びエンコードレート、並びに前記送信部の変調送信部にて用いている現在の変調方式に基づいて、エンコードレートを決定する、ことを特徴とする映像伝送装置。
【請求項4】
請求項に記載の映像伝送装置において、
前記エンコードレート決定部は、
前記位置情報測定部により生成された位置情報が前記テーブルに格納されているか否かを判定し、前記位置情報が格納されていない場合、前記現在の変調方式に基づいて、現在の送信可能な最大レートを算出し、前記現在の送信可能な最大レートを前記位置情報に対応するエンコードレートとして前記テーブルに格納し、前記位置情報が格納されている場合、前記位置情報に対応するエンコードレートを前記テーブルから読み出す、ことを特徴とする映像伝送装置。
【請求項5】
請求項に記載の映像伝送装置において、
前記エンコードレート決定部は、
前記現在の変調方式に基づいて、現在の送信可能な最大レートを算出し、前記テーブルから読み出した、前記位置情報に対応するエンコードレートと、前記現在の送信可能な最大レートとを比較し、前記読み出したエンコードレートが前記現在の送信可能な最大レート以下の場合、前記エンコーダに、前記読み出したエンコードレートにて圧縮符号化を行わせる、ことを特徴とする映像伝送装置。
【請求項6】
請求項に記載の映像伝送装置において、
前記エンコードレート決定部は、
前記読み出したエンコードレートが前記現在の送信可能な最大レートよりも高い場合、所定時間経過後に、または、前記現在の送信可能な最大レートが所定のレートにまで高くなった後に、前記エンコーダに、前記読み出したエンコードレートにて圧縮符号化を行わせる、ことを特徴とする映像伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANにより映像データを伝送する映像伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信に関する各種手順を標準化した規格としてIEEE802.11が知られており、この規格に従った一連の伝送方式を利用した映像伝送装置が広く普及している。この伝送方式を利用して、ウェブカメラにより撮影されたライブ映像を、無線LANにより遠隔地から伝送することが一般に行われている。ライブ映像の動画データは大容量であるため、ライブ映像を伝送する際には、人間の目に感知し難い高周波映像成分を削減する符号化処理が行われ、ライブ映像のデータ圧縮処理が行われることが多い。
【0003】
無線LANにより映像データを伝送するシステムでは、搬送波対ノイズ比(C/N比)によって、周波数帯域あたりの伝送可能なビットレート(伝送レート)が変化する。すなわち、無線LANにより映像データを伝送する送受信装置間の距離、または送受信装置間内の電波伝搬を妨げる障害物の有無によって、無線伝送路の伝搬状況が変化し、伝送レートが変動する。
【0004】
このような無線伝送路において、送信装置が、固定の圧縮率(エンコードレート)で映像データを符号化し、一定の伝送レートのままで映像データを送信している場合に、無線伝送路の伝搬状況が変化し伝送レートが低下したときには、全ての映像データを送信することができなくなる。この場合、受信装置は、映像データを良好に受信することができないから、画面表示される映像は乱れてしまう。
【0005】
また、IEEE802.11に規定する無線LANでは、CSMA(Carrier Sense Multiple Access)方式により、複数の映像伝送装置が、同じチャンネルの無線伝送路を共有して映像データを伝送する。各映像伝送装置は、無線伝搬路上での混信を避けるために、他の映像伝送装置が映像データを送信しているときに、映像データの送信を一時的に停止し、送信する映像データを待機させる。しかし、このような無線伝送路の伝搬状況では、各映像伝送装置において伝送レートは低下してしまう。
【0006】
このような問題を解決するために、無線伝送路の伝搬状況に応じて、適応的に映像データの圧縮率を変更する手法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この手法では、映像伝送装置は、無線伝送路の伝搬状況が劣化した場合、伝送レートを下げ、良化した場合、伝送レートを上げる。また、エンコードレートが伝送レート以下になるように、エンコードレートを制御する。これにより、映像データの伝送エラーを低減することができ、無線伝送路の伝搬状況が変化した場合であっても、映像データを良好に伝送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−329708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の手法では、伝送レートが変化してからエンコードレートを制御するため、無線伝送路の伝搬状況が変化して伝送レートが低下した場合、エンコードレートが切り替わるまでの間、映像データが欠損して伝送できないことがあり、その期間の映像が途切れてしまうという問題があった。また、特許文献1には、CSMA方式によって、複数の映像伝送装置が同じチャンネルの無線伝送路を共有して映像データを伝送する場合、同時送信時に伝送レートが低下してしまうという状況に対し、エンコードレートをどのように具体的に制御するかについて、明示的な記載がない。
【0009】
そこで、本発明は前記課題を鑑み、その目的は、無線伝送路の伝搬状況に応じて伝送レートが変化したり、同一伝送路にて同時送信が発生し伝送レートが低下したりした場合であっても、映像データの伝送を無瞬断で継続することが可能な映像伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明による映像伝送装置は、映像信号を圧縮符号化してエンコードデータを生成し、前記エンコードデータを変調し無線伝送路を介して受信装置へ送信する映像伝送装置において、前記送信されたエンコードデータに対する確認応答のACKを含むデータを、前記受信装置から受信して復調する受信復調部、前記受信装置により送信されたデータについての電波の電界強度を測定する電界強度測定部、前記電界強度測定部により測定された電界強度に基づいて変調方式を決定する変調方式決定部、及び、前記変調方式決定部により決定された変調方式に従ってエンコードデータを変調し、無線伝送路へ送信する変調送信部、を有する送信部と、前記送信部の変調方式決定部により新たな変調方式が決定され、前記新たな変調方式に切り替わる場合、前記切り替え前の現在の変調方式、前記切り替え後の変調方式、及び、前記送信部の電界強度測定部により測定された電界強度に基づいて、エンコードレートを決定する中間ドライバと、前記エンコードレートにて映像信号を圧縮符号化し、エンコードデータを生成するエンコーダと、を備え、前記中間ドライバが、前記変調方式に基づいて、送信可能な最大レートを算出し、前記切り替え後の変調方式における送信可能な最大レートが、前記切り替え前の現在の変調方式における送信可能な最大レート以下の場合に、前記切り替え後の変調方式における送信可能な最大レート以下のエンコードレートで圧縮符号化するための指示を前記エンコーダに出力し、前記指示を前記エンコーダに出力してから、前記指示によりエンコードレートが低下したエンコードデータを前記送信部の変調送信部にて変調可能な所定時間が経過した後に、前記新たな変調方式に切り替えるための指示を前記送信部の変調送信部に出力し、前記切り替え後の変調方式における送信可能な最大レートが、前記切り替え前の現在の変調方式における送信可能な最大レートよりも高い場合に、前記新たな変調方式に切り替えるための指示を前記送信部の変調送信部に出力し、前記送信部の変調送信部から、前記新たな変調方式に切り替わったことを示す変調方式切替完了を入力した後に、または、前記指示を前記送信部の変調送信部に出力してから、前記指示により前記新たな変調方式に切り替わる所定時間が経過した後に、前記切り替え後の変調方式における送信可能な最大レート以下のエンコードレートで圧縮符号化するための指示を前記エンコーダに出力する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明による映像伝送装置は、前記中間ドライバが、前記送信部の電界強度測定部により測定された電界強度が所定の閾値よりも小さい場合、前記送信部の変調送信部に、前記変調及び送信を停止させると共に前記エンコードデータを破棄させ、前記送信部の電界強度測定部により測定された電界強度が所定の閾値以上の場合、前記送信部の変調送信部に、前記変調及び送信を再開させる、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明による映像伝送装置は、さらに、位置情報測定部及びエンコードレート決定部を備え、前記位置情報測定部が、当該映像伝送装置の位置を測定して位置情報を生成し、前記エンコードレート決定部が、位置情報とエンコードレートとが対応して格納されたテーブルを有し、前記位置情報測定部により生成された位置情報、前記テーブルに格納された位置情報及びエンコードレート、並びに前記送信部の変調送信部にて用いている現在の変調方式に基づいて、エンコードレートを決定する、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明による映像伝送装置は、前記エンコードレート決定部が、前記位置情報測定部により生成された位置情報が前記テーブルに格納されているか否かを判定し、前記位置情報が格納されていない場合、前記現在の変調方式に基づいて、現在の送信可能な最大レートを算出し、前記現在の送信可能な最大レートを前記位置情報に対応するエンコードレートとして前記テーブルに格納し、前記位置情報が格納されている場合、前記位置情報に対応するエンコードレートを前記テーブルから読み出す、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明による映像伝送装置は、前記エンコードレート決定部が、前記現在の変調方式に基づいて、現在の送信可能な最大レートを算出し、前記テーブルから読み出した、前記位置情報に対応するエンコードレートと、前記現在の送信可能な最大レートとを比較し、前記読み出したエンコードレートが前記現在の送信可能な最大レート以下の場合、前記エンコーダに、前記読み出したエンコードレートにて圧縮符号化を行わせる、ことを特徴とする。
【0021】
また、本発明による映像伝送装置は、前記エンコードレート決定部が、前記読み出したエンコードレートが前記現在の送信可能な最大レートよりも高い場合、所定時間経過後に、または、前記現在の送信可能な最大レートが所定のレートにまで高くなった後に、前記エンコーダに、前記読み出したエンコードレートにて圧縮符号化を行わせる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、映像データの伝送を無瞬断で継続することができ、ライブ映像は途切れることがない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態による送信装置(映像伝送装置)を含む伝送システムの全体構成を示す概略図である。
図2】送信装置の無線LAN物理層による送信処理を示すフローチャートである。
図3】本発明の第1の実施形態(実施例1)による送信装置の構成を示すブロック図である。
図4】実施例1の中間ドライバによるエンコードレート及び変調方式に関する処理を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2の実施形態(実施例2)による送信装置の構成を示すブロック図である。
図6】実施例2のエンコードレート算出部によるエンコードレート算出処理を示すフローチャートである。
図7】本発明の第3の実施形態(実施例3)による送信装置の構成を示すブロック図である。
図8】実施例3のエンコードレート算出部によるエンコードレート算出処理を示すフローチャートである。
図9】本発明の第4の実施形態(実施例4)による送信装置の構成を示すブロック図である。
図10】実施例4の位置−送信レートテーブル保持部によるエンコードレート及び変調方式に関する処理を示すフローチャートである。
図11】本発明の第5の実施形態(実施例5)による送信装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔全体システム〕
まず、本発明の実施形態による送信装置(映像伝送装置)を含む伝送システムについて説明する。図1は、伝送システムの全体構成を示す概略図である。この伝送システムは、送信装置1及び受信装置2を備えて構成され、無線LANによりライブ映像伝送を行う。送信装置1は、映像信号を入力し、エンコード及び変調等の処理を行い、無線にてデータを受信装置2へ送信し、受信装置2からACK等を受信する。受信装置2は、送信装置1から送信されたデータを受信し、復調及びデコード等の処理を行い、元の映像信号に復元して出力する。また、受信装置2は、データを正常に受信した場合にはACKを送信装置1へ送信し、必要に応じてその他のデータを送信装置1へ送信する。
【0025】
送信装置1は、エンコーダ11、中間ドライバ12及び無線LAN物理層(送信部)13を備えている。尚、後述する実施例1〜5の送信装置1−1〜1−5は、図1と基本的に同じ機能を有する構成部を備えているが、図1の各構成部に加えて新たな機能を有する場合もあるし、図1の各構成部の機能のうち、一部の機能を有しない場合もあり、また、処理内容が異なる場合もある。
【0026】
エンコーダ11は、映像信号である映像ベースバンド信号を入力すると共に、中間ドライバ12からエンコードレート指示を入力し、エンコードレート指示が示すエンコードレートに従って、映像信号の圧縮符号化を行い、エンコードデータを生成する。
【0027】
中間ドライバ12は、エンコーダ11からエンコードデータを入力し、入力したエンコードデータを無線LAN物理層13に出力する。また、中間ドライバ12は、無線LAN物理層13から変調方式切替情報、電界強度等の受信情報を入力し、受信情報に基づいてエンコードレートを算出し、エンコードレート指示をエンコーダ11に出力する。ここで、中間ドライバ12は、下位層である無線LAN物理層13の実装に伴う差異を吸収し、どのような種類の無線LAN物理層13であっても、エンコーダ11からみると同一の物理層であるかのように見せかけるためのインターフェースである。したがって、中間ドライバ12は、実装される無線LAN物理層13の種類に応じて、入力する受信情報が異なり処理内容も異なる。これは、無線LAN物理層13が各メーカから提供されるものであり、無線LAN物理層13の種類によって、変調方式の決定手法及び外部へ出力される情報等が異なるからである。
【0028】
無線LAN物理層13は、中間ドライバ12からエンコードデータを入力し、エンコードデータをパケット化し、シーケンス番号を付加して変調し、無線にて受信装置2へ送信する。この場合、無線LAN物理層13は、入力したエンコードデータを送信バッファに格納し、無線伝送路の伝搬状況による実際の伝送レートに応じて送信バッファからエンコードデータを読み出し、前述の処理を行い送信する。また、無線LAN物理層13は、送信したデータに対するACKを受信装置2から受信する。これにより、無線LAN物理層13は、送信したデータが、受信装置2により正しく受信されたことを認識することができる。
【0029】
送信装置1と受信装置2との間の無線伝送路の伝搬状況によっては、送信装置1から送信されたデータにノイズが加算される場合があり、受信装置2は、送信装置1からのデータを正常に受信できないこともあり得る。この場合、受信装置2は、ACKを送信装置1へ送信することができない。
【0030】
受信装置2は、無線LAN物理層21、中間ドライバ22及びデコーダ23を備えている。無線LAN物理層21は、送信装置1により送信されたデータを受信し、データをパケット単位に復調し、復調したパケットのシーケンス番号に基づいて、データが連続して正常に到着しているか否かを判定する。また、無線LAN物理層21は、復調したパケットのフレームチェックシーケンス(FCS)部に基づいて、パケット内のデータが壊れていないか否かを判定する。無線LAN物理層21は、データが正常に到着しており、かつ、パケット内のデータが正常であると判定した場合、受信確認応答のパケットとしてACKを送信装置1へ送信すると共に、正常に受信したデータ(エンコードデータ)を中間ドライバ22に出力する。
【0031】
中間ドライバ22は、無線LAN物理層21からエンコードデータを入力し、入力したエンコードデータをデコーダ23に出力する。ここで、中間ドライバ22も送信装置1に備えた中間ドライバ12と同様に、下位層である無線LAN物理層21の実装に伴う差異を吸収し、どのような種類の無線LAN物理層21であっても、デコーダ23からみると同一の物理層であるかのように見せかけるためのインターフェースである。
【0032】
デコーダ23は、中間ドライバ22からエンコードデータを入力し、圧縮符号化されたエンコードデータの復号を行い、元の映像信号である映像ベースバンド信号を生成し、出力する。
【0033】
〔送信装置の無線LAN物理層による送信処理〕
次に、図1に示した送信装置1の無線LAN物理層13による送信処理について説明する。図2は、その送信処理を示すフローチャートである。送信装置1の無線LAN物理層13は、中間ドライバ12からエンコードデータを入力し、エンコードデータをパケット化し、パケット化したデータにシーケンス番号を付加する(ステップS201)。そして、無線LAN物理層13は、シーケンス番号を付加したパケットを変調して送信する(ステップS202)。無線LAN物理層13は、受信装置2から送信されるACKを待つ。
【0034】
受信装置2は、パケットを受信し復調すると、データに付加されたシーケンス番号に基づいて、パケットの連続性を判定すると共に、パケットのFCS部に基づいて、受信したパケットが壊れていないことを判定し、パケットが正常に到着しており、かつ、受信したパケットが正常であると判定した場合、ACKを送信装置1へ返信する。また、受信装置2は、パケットが正常に到着していない、または、受信したパケットが正常でないと判定した場合、ACKの返信を行わない。
【0035】
送信装置1の無線LAN物理層13は、送信したパケットに対するACKを受信装置2から受信したか否かを判定し(ステップS203)、ACKを受信したと判定した場合(ステップS203:Y)、処理を終了し、次のパケットに対してステップS201の処理を行う。このように、無線LAN物理層13は、ステップS201〜ステップS203にて、パケットを送信し、受信装置2からACKを受信すると、次のパケットを送信し、ACKの受信を待つ処理を繰り返す。
【0036】
無線LAN物理層13は、ステップS203において、所定時間待ってもACKを受信していないと判定した場合(ステップS203:N)、後述するステップS206によりパケットを再送した回数と、所定の再送最大回数とを比較し、再送回数が再送最大回数以上であるか否かを判定する(ステップS204)。無線LAN物理層13は、ステップS204において、再送回数が再送最大回数以上でないと判定した場合(ステップS204:N)、パケットを再送するために、所定のランダム時間の間待機する(ステップS205)。ここで、所定のランダム時間は、前回にパケットを再送したときよりも長い時間とする。つまり、無線LAN物理層13は、ステップS205において、パケットの再送に伴い、前回のパケットを再送したときに待機した時間よりも長い時間を、今回のパケットを再送するための所定のランダム時間に設定し、その所定のランダム時間の間待機する。そして、無線LAN物理層13は、同一のパケットを受信装置2へ再送し(ステップS206)、ステップS203へ移行する。このように、無線LAN物理層13は、受信装置2からのACKを、パケット送信後または再送後所定時間内に受信せず、同一パケットの再送回数が所定の最大再送回数に達していない場合、同一のパケットを受信装置2へ再送する。
【0037】
無線LAN物理層13は、ステップS204において、再送回数が再送最大回数以上であると判定した場合(ステップS204:Y)、再送処理をしてもACKを受信することができないと判断し、所定のタイムアウト処理を行い(ステップS207)、処理を終了する。
【0038】
尚、無線LAN物理層13が、図2に示した送信処理を行っても、パケットを受信装置2へ正常に送信することができない場合、すなわち、再送処理によってもパケットが回復しない場合、エンコーダ11は、無線LAN物理層13に対しそのパケットを再送させるために、そのパケットに対応するエンコードデータを、中間ドライバ12を介して無線LAN物理層13に再度出力するようにしてもよい。また、無線LAN物理層13は、送信したパケットに含まれるデータを訂正するための誤り訂正データを含む誤り訂正パケットを生成し、受信装置2へ送信するようにしてもよい。この場合、受信装置2の無線LAN物理層21は、送信装置1から誤り訂正パケットを受信し、誤り訂正パケットに含まれる誤り訂正データを用いて、正常でないと判定したデータの訂正を行う。
【0039】
以下、図1に示した送信装置1がライブ映像伝送を行う具体例について、実施例1〜5を挙げて詳細に説明する。実施例1は、RSSI(Received Signal Strength Indication:受信信号強度)に基づいて決定した変調方式の切替情報に従って、エンコードレートを制御する例である。実施例2は、送信バッファに一時的に保持されているデータの量に従って、エンコードレートを制御する例である。実施例3は、ACKタイムアウト期間中送信できなかったデータの量(ACKが想定通りに返信された場合に送信できていたと予想されるデータ量)に従って、エンコードレートを制御する例である。実施例4は、GPS(Global Positioning System)等により取得した送信装置の位置情報に従って、エンコードレートを制御する例である。実施例5は、実施例1〜4の変形例であり、実施例1〜4における送信装置のエンコーダと無線LAN物理層とが一体化されておらず、別々の装置として構成され、無線LAN物理層が、無線LANアクセスポイントまたは無線LANブリッジ装置として外部に設置される場合の例である。
【0040】
〔実施例1〕
まず、実施例1について説明する。実施例1は、前述のとおり、RSSIに基づいて決定した変調方式の切替情報に従って、エンコードレートを制御する例である。
【0041】
図3は、実施例1による送信装置の構成を示すブロック図である。この送信装置1−1は、エンコーダ11、中間ドライバ12−1及び無線LAN物理層13−1を備えている。エンコーダ11は、図1に示したエンコーダ11と同様に、映像信号を入力すると共に、中間ドライバ12からエンコードレート指示を入力し、エンコードレート指示が示すエンコードレートに従って映像信号の圧縮符号化を行い、エンコードデータを生成し、エンコードデータを、中間ドライバ12−1を介して無線LAN物理層13−1に出力する。これにより、エンコードレートに従った一定量のエンコードデータが、常に生成され出力される。
【0042】
中間ドライバ12−1は、エンコーダ11からエンコードデータを入力し、入力したエンコードデータを無線LAN物理層13に出力する。また、中間ドライバ12−1は、無線LAN物理層13−1から変調方式切替情報、電界強度及び受信データを入力し、変調方式切替情報が示す切り替え後の変調方式について、送信可能な最大レートを算出する。そして、中間ドライバ12−1は、変調方式切り替え後の送信可能な最大レートが現在の送信可能な最大レート以下であると判定した場合、無線LAN物理層13−1にて実際に変調方式が変更される前に、エンコードレートが変調方式切り替え後の送信可能な最大レート以下になるように、エンコードレート指示をエンコーダ11に出力する。一方、中間ドライバ12−1は、変調方式切り替え後の送信可能な最大レートが現在の送信可能な最大レートよりも高いと判定した場合、無線LAN物理層13−1にて実際に変調方式が変更された後に、エンコードレートが変調方式切り替え後の送信可能な最大レート以下になるように、エンコードレート指示をエンコーダ11に出力する。また、中間ドライバ12−1は、電界強度に基づいて、無線伝送路が完全に遮蔽されたと判断した場合、無線LAN物理層13−1に、変調及び送信処理を停止させ、入力及び保持したエンコードデータを破棄させる。一方、中間ドライバ12−1は、電界強度に基づいて、無線伝送路が回復したと判断した場合、無線LAN物理層13−1に、変調及び送信処理を再開させる。
【0043】
図4は、中間ドライバ12−1によるエンコードレート及び変調方式に関する処理を示すフローチャートである。中間ドライバ12−1は、無線LAN物理層13−1から変調方式切替情報を入力したか否かを判定し(ステップS401)、変調方式切替情報を入力していないと判定した場合(ステップS401:N)、ステップS408へ移行する。一方、中間ドライバ12−1は、ステップS401において、変調方式切替情報を入力したと判定した場合(ステップS401:Y)、変調方式切替情報が示す切り替え後の変調方式について、この変調方式に対応する誤り訂正のための冗長データ量及び伝送プロトコルヘッダ量等を用いて所定の除算処理を行うことにより、送信可能な最大レートを算出する(ステップS402)。尚、送信可能な最大レートの算出手法は既知であるから、ここでは詳細な説明を省略する。
【0044】
中間ドライバ12−1は、変調方式切り替え後の送信可能な最大レートと、現在の送信可能な最大レート(以前に変調方式切替情報を入力したときに算出した、変調方式切り替え後の送信可能な最大レート)とを比較する(ステップS403)。そして、中間ドライバ12−1は、ステップS403において、変調方式切り替え後の送信可能な最大レートが現在の送信可能な最大レート以下であると判定した場合(ステップS403:≦)、エンコードレートが変調方式切り替え後の送信可能な最大レート以下になるように、エンコードレート指示をエンコーダ11に出力し(ステップS404)、所定時間経過後、変調方式切替指示を無線LAN物理層13−1に出力する(ステップS405)。ここで、変調方式切替指示が出力されるタイミングを示す所定時間とは、エンコードレート指示が出力されてからの時間であり、エンコーダ11のエンコードレートを低下させた後に、無線LAN物理層13−1の変調方式が実際に切り替えられ、エンコードレートが低下したエンコードデータに対し、切り替え後の変調方式が適用可能な時間をいう。
【0045】
このように、変調方式切り替え後の送信可能な最大レートが現在の送信可能な最大レート以下であると判定した場合、無線LAN物理層13−1にて実際に変調方式が変更される前に、エンコーダ11のエンコードレートが変更される。したがって、変調方式切り替えに伴って送信レートが低下する場合、エンコードレートが低下した後に送信レートが低下する。これにより、データ欠損を防ぐことができ、データを送信することができなくなるという不具合を解消することができる。また、受信装置2において、映像が途切れることがない。
【0046】
中間ドライバ12−1は、変調方式切り替え後の送信可能な最大レートが現在の送信可能な最大レートよりも高いと判定した場合(ステップS403:>)、変調方式切替指示を無線LAN物理層13−1に出力する(ステップS406)。これにより、無線LAN物理層13−1において、実際に変調方式が切り替えられ、無線LAN物理層13−1から変調方式切替完了が中間ドライバ12−1に出力される。そして、中間ドライバ12−1は、無線LAN物理層13−1から変調方式切替完了を入力した後、エンコードレートが変調方式切り替え後の送信可能な最大レート以下になるように、エンコードレート指示をエンコーダ11に出力する(ステップS407)。
【0047】
中間ドライバ12−1は、ステップS401、ステップS405またはステップS407から移行して、無線LAN物理層13−1から入力した電界強度と所定の閾値とを比較し(ステップS408)、電界強度が閾値よりも小さいと判定した場合(ステップS408:<)、無線伝送路が完全に遮蔽される等して通信できる伝搬状況ではない、すなわち送信可能な最大レートが0になったと判断し、破棄指示を無線LAN物理層13−1に出力する(ステップS409)。これにより、無線LAN物理層13−1は、破棄指示に基づいて、変調及び送信処理を停止し、入力したエンコードデータを送信バッファに保持することなく破棄すると共に、送信バッファに保持していたエンコードデータを破棄する。
【0048】
中間ドライバ12−1は、ステップS408において、電界強度が閾値以上であると判定した場合(ステップS408:≧)、データ破棄指示の出力により、無線LAN物理層13−1において変調処理等が停止しているか否かを判定する(ステップS410)。中間ドライバ12−1は、ステップS410において、データ破棄指示の出力により、無線LAN物理層13−1において変調処理等が停止していると判定した場合(ステップS410:Y)、無線伝送路の伝搬状況が改善したと判断し、処理再開指示を無線LAN物理層13−1に出力する(ステップS411)。これにより、無線LAN物理層13−1は、処理再開指示に基づいて、入力したエンコードデータに対する変調及び送信処理を再開する。一方、中間ドライバ12−1は、ステップS410において、データ破棄指示の出力済みの状態ではなく、無線LAN物理層13−1において変調処理等が停止していないと判定した場合(ステップS410:N)、処理を終了し、ステップS401へ戻って処理を繰り返す。
【0049】
このように、無線伝送路が途切れた場合には、エンコードデータは送信バッファに保持されることなく破棄され送信が停止するから、無線伝送路が回復した際に、エンコードデータに対する変調及び送信処理が再開され、受信装置2において、迅速にライブ映像の復号が再開される。
【0050】
尚、前述のとおり、中間ドライバ12−1は、無線LAN物理層13−1により決定された変調方式を含む変調方式切替情報を入力する。これに対し、無線LAN物理層13−1が変調方式を決定する機能を有さない場合には、中間ドライバ12−1が、無線LAN物理層13−1から入力した電界強度に基づいて、変調方式を決定するようにしてもよい。また、中間ドライバ12−1が、送信可能な最大レートを算出するようにしたが、無線LAN物理層13−1が、送信可能な最大レートを算出し、中間ドライバ12−1が、無線LAN物理層13−1から、送信可能な最大レートを直接入力するようにしてもよい。
【0051】
図3に戻って、無線LAN物理層13−1は、変調・送信部131−1、受信・復調部132、電界強度測定部133及び変調方式決定部134を備えている。変調・送信部131−1は、エンコードデータを送信する際に一時的に保持する送信バッファを備えており、中間ドライバ12−1からエンコードデータを入力すると共に、変調方式決定部134から変調方式切替情報を入力し、入力したエンコードデータを送信バッファに格納し、無線伝送路の伝搬状況による実際の伝送レートに応じて送信バッファからエンコードデータを読み出し、エンコードデータをパケット化してシーケンス番号を付加し、変調方式切替情報が示す変調方式に従ってデータを変調し、変調方式に対応した所定の冗長度の誤り訂正符号を付加し、無線にて受信装置2へ送信する。また、変調・送信部131−1は、中間ドライバ12−1から変調方式切替指示を入力し、変調方式決定部134から入力した変調方式切替情報が示す変調方式に切り替え、切り替え後の変調方式に従ってデータを変調する。そして、変調・送信部131−1は、変調方式切替完了を中間ドライバ12−1に出力する。また、変調・送信部131−1は、受信・復調部132からACKを入力し、送信したデータが受信装置2により正しく受信されたことを認識する。この場合、変調・送信部131−1は、ACKを入力した後に、次のデータ(パケット)を送信する。
【0052】
受信・復調部132は、受信装置2により送信されたACK等のデータを受信し、受信したACK等のデータを復調し、ACKを変調・送信部131−1に出力すると共に、ACK以外のデータを受信データとして中間ドライバ12−1に出力する。また、受信・復調部132は、復調前の受信データを電界強度測定部133に出力する。
【0053】
電界強度測定部133は、受信・復調部132から復調前の受信データを入力し、復調前の受信データに基づいて、C/N比等の電界強度を測定し、測定した電界強度を変調方式決定部134及び中間ドライバ12−1に出力する。
【0054】
変調方式決定部134は、電界強度測定部133から電界強度を入力し、所定の変換方式テーブルを用いて、入力した電界強度に対応する変調方式を新たな変調方式に決定する。そして、変調方式決定部134は、変調方式が変わった場合、変調方式切替情報を中間ドライバ12−1及び変調・送信部131−1に出力する。変換方式テーブルには、例えばC/N比等の電界強度と変調方式とが対になって格納されており、電界強度に基づいて変調方式が一義的に決定される。
【0055】
尚、変調方式決定部134は、C/N比に基づいて変調方式を決定するだけでなく、ACKの非到着頻度、FCS部のエラー情報等に基づいて、変調方式を決定するようにしてもよい。この場合、受信・復調部132が、ACKの非到着頻度、FCS部のエラー情報等を生成し、変調方式決定部134は、受信・復調部132からACKの非到着頻度、FCS部のエラー情報等を入力し、例えば、ACKの非到着頻度が高い場合、送信可能な最大レートが一層低くなる変調方式に決定する。また、変調方式決定部134における変調方式を決定するアルゴリズムは、無線LAN標準化方式にて規定されておらず、無線LAN物理層13−1の実装により異なるものである。実施例1は、無線LAN物理層13−1により決定される変調方式に従って、中間ドライバ12−1がエンコードレートを決定するものであり、どのようなアルゴリズムで変調方式が決定されても適用可能である(実施例2〜5においても同様)。
【0056】
また、前記実施例1では、中間ドライバ12−1は、変調方式切り替え後の送信可能な最大レートが現在の送信可能な最大レートよりも高いと判定した場合、変調方式切替指示を無線LAN物理層13−1に出力し、無線LAN物理層13−1から変調方式切替完了を入力した後、エンコードレート指示をエンコーダ11に出力するようにした。これに対し、変調方式切替指示を無線LAN物理層13−1に出力し、所定時間経過後(実際に変調方式が切り替わる時間を待った後)、エンコードレート指示をエンコーダ11に出力するようにしてもよい。
【0057】
また、無線LAN物理層13−1の変調方式決定部134の前後に遅延部を設け(変調方式決定部134と中間ドライバ12−1との間に第1の遅延部、変調方式決定部134と変調・送信部131−1との間に第2の遅延部を設け)、中間ドライバ12−1は、変調方式切り替え後の送信可能な最大レートが現在の送信可能な最大レート以下であると判定した場合、第1の遅延部に、変調方式決定部134から入力した変調方式切替情報を、即座に中間ドライバ12−1に出力させるようにし、第2の遅延部に、変調方式決定部134から入力した変調方式切替情報を、所定時間経過後に変調・送信部131−1に出力させるようにする。一方、中間ドライバ12−1は、変調方式切り替え後の送信可能な最大レートが現在の送信可能な最大レートよりも高いと判定した場合、第1の遅延部に、変調方式決定部134から入力した変調方式切替情報を、所定時間経過後に中間ドライバ12−1に出力させるようにし、第2の遅延部に、変調方式決定部134から入力した変調方式切替情報を、即座に変調・送信部131−1に出力させるようにする。この場合、中間ドライバ12−1は、図4に示したステップS404〜ステップS407の処理を行わない。また、変調・送信部131−1は、変調方式切替情報を入力すると、その変調方式に即座に切り替える。
【0058】
以上のように、実施例1の送信装置1−1によれば、中間ドライバ12−1が、変調方式切り替え後の送信可能な最大レートを算出し、この最大レートが現在の送信可能な最大レート以下であると判定した場合、エンコードレートが変調方式切り替え後の送信可能な最大レート以下になるように、エンコードレート指示をエンコーダ11に出力し、所定時間経過後、変調方式切替指示を無線LAN物理層13−1に出力するようにした。これにより、無線LAN物理層13−1にて実際に変調方式が変更されて送信レートが低下する前に、エンコーダ11のエンコードレートを低下させることができる。したがって、変調方式切り替えに伴って送信レートが低下する場合、エンコードレートが低下した後に送信レートが低下し、エンコードレートよりも送信レートが低くなるという状態を回避することができるから、データ欠損を防ぐことができ、データを送信することができなくなるという不具合を解消することができる。つまり、映像データの伝送を無瞬断で継続することができ、ライブ映像は途切れることがない。
【0059】
一方、中間ドライバ12−1が、この最大レートが現在の送信可能な最大レートよりも高いと判定した場合、変調方式切替指示を無線LAN物理層13−1に出力して変調方式が実際に切り替わった後に、エンコードレートが変調方式切り替え後の送信可能な最大レート以下になるように、エンコードレート指示をエンコーダ11に出力するようにした。これにより、無線LAN物理層13−1にて実際に変調方式が変更されて送信レートが高くなった後に、エンコーダ11のエンコードレートを高くすることができる。したがって、変調方式切り替えに伴って送信レートが高くなる場合、送信レートが高くなった後にエンコードレートが高くなり、エンコードレートが送信レートよりも高くなるという状態を回避することができるから、データ欠損を防ぐことができ、データを送信することができなくなるという不具合を解消することができる。つまり、映像データの伝送を無瞬断で継続することができ、ライブ映像は途切れることがない。尚、実施例1による受信装置2は、従来の無線LAN標準化方式に従った構成でよい(実施例2〜5においても同様)。
【0060】
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。実施例2は、前述のとおり、送信バッファに一時的に保持されているデータの量に従って、エンコードレートを制御する例である。
【0061】
図5は、実施例2による送信装置の構成を示すブロック図である。この送信装置1−2は、エンコーダ11、中間ドライバ12−2、無線LAN物理層13−2及びエンコードレート算出部14を備えている。エンコーダ11は、実施例1と同様の処理を行い、映像信号を入力すると共に、エンコードレート算出部14からエンコードレート指示を入力し、圧縮符号化を行ってエンコードデータを生成し、中間ドライバ12−1を介して無線LAN物理層13−2に出力する。
【0062】
中間ドライバ12−2は、エンコーダ11からエンコードデータを入力し、入力したエンコードデータを無線LAN物理層13−2に出力する。また、中間ドライバ12−2は、無線LAN物理層13−2から変調方式切替情報、電界強度及び受信データを入力し、入力した変調方式切替情報をエンコードレート算出部14に出力する。また、中間ドライバ12−2は、入力した電界強度を用いて、図4に示したステップS408〜ステップS411の処理を行い、無線伝送路が完全に遮蔽される等して通信できる伝搬状況ではないと判断した場合、無線LAN物理層13−2に、入力したエンコードデータ及び保持していたエンコードデータを破棄させ、無線伝送路の伝搬状況が改善したと判断した場合、無線LAN物理層13−2に、変調及び送信処理を再開させる。
【0063】
エンコードレート算出部14は、中間ドライバ12−2から変調方式切替情報を入力すると共に、無線LAN物理層13−2からバッファデータ量(送信バッファに一時的に保持されているデータの量)を入力し、変調方式切替情報及びバッファデータ量に基づいてエンコードレートを算出し、エンコーダ11に出力する。
【0064】
図6は、エンコードレート算出部14によるエンコードレート算出処理を示すフローチャートである。まず、エンコードレート算出部14は、中間ドライバ12−2から変調方式切替情報を入力すると共に、無線LAN物理層13−2からバッファデータ量を入力する(ステップS601)。そして、エンコードレート算出部14は、変調方式切替情報が示す切り替え後の変調方式について、この変調方式に対応する誤り訂正のための冗長データ量及び伝送プロトコルヘッダ量等を用いて所定の除算処理を行うことにより、送信可能な最大レートを算出し(ステップS602)、バッファデータ量の時間的変化を求めて送信バッファ内データレートを算出する(ステップS603)。そして、エンコードレート算出部14は、以下の数式によりエンコードレートを算出し(ステップS604)、エンコードレート指示をエンコーダ11に出力する(ステップS605)。
(数式1)
エンコードレート=送信可能な最大レート−送信バッファ内データレート・・・(1)
これにより、エンコーダ11は、エンコードレート算出部14からのエンコードレート指示に従って、所定のレート内に収まるように圧縮符号化を行う。
【0065】
ここで、データの送信中に変調方式が切り替わり、送信可能な最大レートが現在のエンコードレートより低くなると、無線LAN物理層13−2の送信バッファにデータが一時的に保持される。この場合、エンコードレート算出部14は、送信可能な最大レートが低くなるから、前記数式(1)により、以前よりも低いエンコードレートを算出し、エンコードレート指示をエンコーダ11に出力する。これにより、エンコーダ11により出力されるエンコードデータの量は少なくなり、無線LAN物理層13−2が送信バッファからデータを読み出して送信するに従って、送信バッファに保持されるデータの量が減少する。このとき、エンコードレート算出部14は、送信バッファ内データレートが低くなるから、前記数式(1)により、以前よりも高いエンコードレートを算出し、エンコードレート指示をエンコーダ11に出力する。これにより、エンコーダ11により出力されるエンコードデータは多くなる。
【0066】
このように、変調方式が切り替わり、送信可能な最大レートが現在のエンコードレートより低い場合、送信バッファから送信すべきデータを送信できるようにエンコードレートは一旦下げられ、送信バッファ内のデータが送信されながら、送信バッファ内のデータの量が減少するに従って、徐々にエンコードレートが上がっていく。これにより、エンコードレート算出部14が前記数式(1)によりエンコードレートを算出し、エンコーダ11のエンコードレートを制御することで、所定の時間内に全てのデータを送ることができ、受信装置2において映像が途切れることなく、ライブ映像を良好に伝送することが可能となる。
【0067】
図5に戻って、無線LAN物理層13−2は、変調・送信部131−2、受信・復調部132、電界強度測定部133及び変調方式決定部134を備えている。変調・送信部131−2は、エンコードデータを送信する際に一時的に保持する送信バッファを備えており、中間ドライバ12−2からエンコードデータを入力すると共に、変調方式決定部134から変調方式切替情報を入力し、実施例1と同様に、入力したエンコードデータを送信バッファに格納し、無線伝送路の伝搬状況による実際の伝送レートに応じて送信バッファからエンコードデータを読み出し、エンコードデータをパケット化してシーケンス番号を付加し、変調方式切替情報が示す変調方式に従ってデータを変調し、変調方式に対応した所定の冗長度の誤り訂正符号を付加し、無線にて受信装置2へ送信する。また、変調・送信部131−2は、受信・復調部132からACKを入力し、送信したデータが受信装置2により正しく受信されたことを認識する。この場合、変調・送信部131−2は、ACKを入力した後に、データを送信する。また、変調・送信部131−2は、送信バッファに保持されているデータの量を算出し、バッファデータ量としてエンコードレート算出部14に出力する。
【0068】
受信・復調部132、電界強度測定部133及び変調方式決定部134は、実施例1と同様であるから、説明を省略する。
【0069】
尚、無線LAN物理層13−2の変調・送信部131−2に備えた送信バッファ内に一時的に保持されるデータには、無線LAN伝送方式よりも上位の通信方式により処理される再送データも含まれる。すなわち、無線伝送路でデータが失われた場合、送信バッファ内にデータが保持されるから、エンコードレート算出部14は、送信バッファ内データレートが高くなり、前記数式(1)により、以前よりも低いエンコードレートを算出し、エンコーダ11により出力されるエンコードデータの量は少なくなる。これにより、全体の送信レートが無線伝送路の送信可能な最大レートを超えることがなくなり、データ欠損を防ぐことができると共に、送信バッファを用いて、失われたデータの再送が行われる。
【0070】
また、本実施例2によらず、一般に、受信装置2は、デコードを開始する前に一旦データを保持するための受信バッファを備えており、ある程度の量のエンコードデータを受信バッファに保持した後にデコードを開始する。送信装置1−2において、変調方式が切り替わり、送信可能な最大レートが低下した場合であっても、この受信バッファにある程度の量のエンコードデータを保持する期間内に(受信バッファが空になる前に)、送信装置1−2のエンコードレート算出部14が、エンコードレートを制御し、無線LAN物理層13−2の変調・送信部131−2が、データを送信することができるときには、受信装置2において映像が途切れることなく、ライブ映像を伝送することが可能となる。
【0071】
また、中間ドライバ12−2は、エンコードレート算出部14を備えるようにしてもよいし、無線LAN物理層13−2の変調・送信部131−2は、バッファデータ量を、中間ドライバ12−2を介してエンコードレート算出部14に出力するようにしてもよい。
【0072】
また、無線LANでは、CSMA方式により、複数の送信装置1−2及び複数の受信装置2が同一の無線伝送路を共有してデータを伝送する。第1の送信装置1−2がデータを伝送している間は、無線伝送路を共有する他の送信装置1−2はデータを伝送することができない。すなわち、無線伝送路の伝搬状況に加え、他の送信装置1−2の伝送状況によっても、第1の送信装置1−2の送信レートは変化する。他の送信装置1−2がデータを伝送している間、第1の送信装置1−2において伝送すべきデータは、無線LAN物理層13−2の変調・送信部131−2に備えた送信バッファに一時的に保持される。そうすると、送信バッファ内にデータが保持されるから、エンコードレート算出部14は、送信バッファ内データレートが高くなり、前記数式(1)により、以前よりも低いエンコードレートを算出し、エンコーダ11により出力されるエンコードデータの量は少なくなる。これにより、エンコードレートは、無線伝送路の伝搬状況に見合った値になるから、受信装置2において映像が途切れることなく、ライブ映像を伝送することが可能となる。
【0073】
以上のように、実施例2の送信装置1−2によれば、エンコードレート算出部14が、変調方式切替情報に基づいて、送信可能な最大レートを算出し、送信バッファ内のバッファデータ量の時間的変化を求めて送信バッファ内データレートを算出し、前記数式(1)によりエンコードレートを算出するようにした。そして、エンコーダ11が、エンコードレート算出部14により算出されたエンコードレートに従って、圧縮符号化を行いエンコードデータを生成するようにした。これにより、変調方式が切り替わり、送信可能な最大レートが現在のエンコードレートより低くなる場合、送信バッファから送信すべきデータを送信できるようにエンコードレートは一旦下げられ、送信バッファ内のデータが送信されながら、送信バッファ内のデータが減少するに従って、徐々にエンコードレートが上がっていく。つまり、送信バッファに一時的に保持されているデータ量を考慮してエンコードレートが制御され、無線伝送路の伝搬状況による送信可能な最大レートの変化に追従するだけでなく、他の送信装置1−2の伝送状況によって変化する送信レートにも追従するから、データ欠損を防ぎ、映像データの伝送を無瞬断で継続することができ、ライブ映像は途切れることがない。
【0074】
〔実施例3〕
次に、実施例3について説明する。実施例3は、前述のとおり、ACKタイムアウト期間中送信できなかったデータの量(ACKが想定通りに返信された場合に送信できていたと予想されるデータ量)に従って、エンコードレートを制御する例である。
【0075】
図7は、実施例3による送信装置の構成を示すブロック図である。この送信装置1−3は、エンコーダ11、中間ドライバ12−3、無線LAN物理層13−3、仮想送信量カウント部15及びエンコードレート算出部19を備えている。エンコーダ11は、実施例1,2と同様の処理を行い、生成したエンコードデータを、中間ドライバ12−3を介して無線LAN物理層13−3に出力する。中間ドライバ12−3は、実施例2と同様であるから、説明を省略する。
【0076】
エンコードレート算出部19は、中間ドライバ12−3から変調方式切替情報を入力すると共に、仮想送信量カウント部15から仮想送信量(ACKが想定通りに返信された場合に送信できていたと予想されるデータの量)を入力し、変調方式切替情報及び仮想送信量に基づいてエンコードレートを算出し、エンコーダ11に出力する。
【0077】
図8は、エンコードレート算出部19によるエンコードレート算出処理を示すフローチャートである。まず、エンコードレート算出部19は、中間ドライバ12−3から変調方式切替情報を入力すると共に、仮想送信量カウント部15から仮想送信量を入力する(ステップS801)。そして、エンコードレート算出部19は、変調方式切替情報が示す切り替え後の変調方式について、この変調方式に対応する誤り訂正のための冗長データ量及び伝送プロトコルヘッダ量等を用いて所定の除算処理を行うことにより、送信可能な最大レートを算出する(ステップS802)。そして、エンコードレート算出部19は、以下の数式によりエンコードレートを算出し(ステップS803)、エンコードレート指示をエンコーダ11に出力する(ステップS804)。
(数式2)
エンコードレート=送信可能な最大レート−仮想送信量 ・・・(2)
これにより、エンコーダ11は、エンコードレート算出部19からのエンコードレート指示に従って、所定のレート内に収まるように圧縮符号化を行う。
【0078】
ここで、無線伝送路の伝搬状況により、送信装置1−3から受信装置2へデータが正常に伝送されなかった場合、または、他の送信装置1−3がデータを伝送中の場合、受信装置2からACKが返信されないことがある。この場合、後述する仮想送信量カウント部15において、仮想送信量がカウントされる。エンコードレート算出部19は、仮想送信量が大きくなるから、前記数式(2)により、以前よりも低いエンコードレートを算出し、エンコードレート指示をエンコーダ11に出力する。これにより、エンコーダ11により出力されるエンコードデータの量は少なくなる。したがって、エンコードレート算出部19は、送信できなかったデータ量である仮想送信量に従って、前記数式(2)により、本来想定していたレートよりもエンコードレートを下げることで、エンコーダ11のエンコードレートを制御するようにしたから、データの欠損を防ぎ、所定の時間内に全てのデータを送ることができ、受信装置2において映像が途切れることなく、ライブ映像を伝送することが可能となる。
【0079】
図7に戻って、無線LAN物理層13−3は、変調・送信部131−3、受信・復調部132、電界強度測定部133及び変調方式決定部134を備えている。変調・送信部131−3は、エンコードデータを送信する際に一時的に保持する送信バッファを備えており、中間ドライバ12−3からエンコードデータを入力すると共に、変調方式決定部134から変調方式切替情報を入力し、実施例1,2と同様に、入力したエンコードデータを送信バッファに格納し、無線伝送路の伝搬状況による実際の伝送レートに応じて送信バッファからエンコードデータを読み出し、エンコードデータをパケット化してシーケンス番号を付加し、変調方式切替情報が示す変調方式に従ってデータを変調し、変調方式に対応した所定の冗長度の誤り訂正符号を付加し、無線にて受信装置2へ送信する。また、変調・送信部131−3は、受信・復調部132からACKを入力し、送信したデータが受信装置2により正しく受信されたことを認識する。この場合、変調・送信部131−3は、ACKを入力した後に、データを送信する。また、変調・送信部131−3は、データを送信してからACKを所定時間内に入力しない場合、ACK未受信を仮想送信量カウント部15に出力する。
【0080】
受信・復調部132、電界強度測定部133及び変調方式決定部134は、実施例1,2と同様であるから、説明を省略する。
【0081】
仮想送信量カウント部15は、無線LAN物理層13−3の変調・送信部131−3からACK未受信を入力すると、仮に、受信・復調部132においてACKを受信し、変調・送信部131−3においてACKを想定通りに入力していたならば、送信していたと予想されるデータ量(ACKが想定通りに返信された場合に送信できていたと予想されるデータの量)を仮想送信量としてカウントし、仮想送信量をエンコードレート算出部19に出力する。
【0082】
尚、無線LAN物理層13−3は、仮想送信量カウント部15を備えるようにしてもよいし、仮想送信量カウント部15は、仮想送信量を、中間ドライバ12−3を介してエンコードレート算出部19に出力するようにしてもよい。また、中間ドライバ12−3は、エンコードレート算出部19を備えるようにしてもよい。
【0083】
また、無線LAN標準化方式では、複数パケットのACKをまとめて返信するブロックACK方式が規定されている。この場合も同様に、仮想送信量カウント部15は、ブロックACK内で確認応答がなかったパケットのデータ量を仮想送信量としてカウントし、エンコードレート算出部19に出力する。これにより、前述と同様の手法にて、エンコードレートを制御することができる。
【0084】
以上のように、実施例3の送信装置1−3によれば、仮想送信量カウント部15が、ACK未受信を入力し、ACKが想定通りに返信された場合に送信できていたと予想されるデータの量を仮想送信量としてカウントし、エンコードレート算出部19が、変調方式切替情報に基づいて、送信可能な最大レートを算出し、前記数式(2)により、送信可能な最大レート及び仮想送信量からエンコードレートを算出するようにした。そして、エンコーダ11が、エンコードレート算出部19により算出したエンコードレートに従って、圧縮符号化を行いエンコードデータを生成するようにした。これにより、無線伝送路の伝搬状況により、送信装置1−3から受信装置2へデータが正常に伝送されなかったり、他の送信装置1−3によりデータが伝送中であったりして、受信装置2からACKが返信されない場合、エンコードレートは一旦下げられ、ACKが返信された場合、エンコードレートは上がる。つまり、無線伝送路の伝搬状況、または、無線伝送路を共有する他の送信装置1−3の伝送状況により変化する送信レートに追従して、エンコードレートを制御することができ、データ欠損を防ぎ、受信装置2において映像が途切れることなく、ライブ映像を伝送することが可能となる。
【0085】
〔実施例4〕
次に、実施例4について説明する。実施例4は、前述のとおり、GPS等により取得した送信装置の位置情報に従って、エンコードレートを制御する例である。尚、実施例4では、受信装置2は移動することのない固定局であることを前提とする。
【0086】
図9は、実施例4による送信装置の構成を示すブロック図である。この送信装置1−4は、エンコーダ11、中間ドライバ12−4、無線LAN物理層13−4、位置情報測定部16及び位置−送信レートテーブル保持部(エンコードレート決定部)17を備えている。エンコーダ11は、実施例1〜3と同様の処理を行い、生成したエンコードデータを、中間ドライバ12−4を介して無線LAN物理層13−4に出力する。
【0087】
中間ドライバ12−4は、エンコーダ11からエンコードデータを入力し、入力したエンコードデータを無線LAN物理層13−4に出力する。また、中間ドライバ12−4は、位置−送信レートテーブル保持部17からエンコードレート指示を入力し、入力したエンコードレート指示をエンコーダ11に出力する。また、中間ドライバ12−4は、無線LAN物理層13−4から変調方式切替情報、電界強度及び受信データを入力し、変調方式切替情報が示す切り替え後の変調方式について、送信可能な最大レートを算出する。そして、中間ドライバ12−4は、図4に示したステップS401〜ステップS407の処理を行い、エンコードレート指示をエンコーダ11に出力する。また、中間ドライバ12−4は、入力した電界強度を用いて、図4に示したステップS408〜ステップS411の処理を行い、無線伝送路が完全に遮蔽される等して通信できる伝搬状況ではないと判断した場合、無線LAN物理層13−4に、入力したエンコードデータ及び保持していたエンコードデータを破棄させ、無線伝送路の伝搬状況が改善したと判断した場合、無線LAN物理層13−4に、変調及び送信処理を再開させる。尚、中間ドライバ12−4は、通常、図4に示したステップS401〜ステップS407の処理により生成したエンコードレート指示をエンコーダ11に出力し、位置−送信レートテーブル保持部17からエンコードレート指示を入力した場合に、入力したエンコードレート指示をエンコーダ11に出力する。
【0088】
位置情報測定部16は、GPS等を利用して現在の送信装置1−4の位置を測定し、位置情報を生成して位置−送信レートテーブル保持部17に出力する。位置−送信レートテーブル保持部17は、所定のテーブルを保持しており、位置情報測定部16から送信装置1−4の位置情報を入力すると共に、後述する変調方式決定部137から現在の変調方式を入力する。そして、位置−送信レートテーブル保持部17は、入力した位置情報に対応する送信レート(エンコードレート)をテーブルから読み出し、エンコードレート指示を、中間ドライバ12−4を介してエンコーダ11に出力する。この場合、位置−送信レートテーブル保持部17は、エンコードレートが現在の送信可能な最大レートよりも高い場合、所定時間経過後に、エンコードレート指示を出力する。また、位置−送信レートテーブル保持部17は、入力した位置情報に対応する送信レート(エンコードレート)がテーブルに存在しない場合、入力した現在の変調方式について、実施例1の中間ドライバ12−1と同様に、現在の送信可能な最大レートを算出し、現在の送信可能な最大レートを、位置情報に対応する送信レート(エンコードレート)としてテーブルに格納する。ここで、テーブルには、位置情報及びこの位置情報に対応する送信レート(エンコードレート)等が格納されており、位置情報は、基準位置を中心とした所定範囲を示す情報である。
【0089】
また、位置−送信レートテーブル保持部17は、送信装置1−4の移動による位置情報の変化に伴い、テーブルから読み出した第1の位置情報に対応するエンコードレートよりも、その後に読み出した第2の位置情報に対応するエンコードレートの方が低くなっている場合、第2の位置情報に対応するエンコードレートよりも一層低いエンコードレートを決定し、エンコードレート指示を中間ドライバ12−4に出力し、所定時間経過した後、決定したエンコードレートに相当する送信可能な最大レートの変調方式を決定し、変調方式指示を後述する変調方式決定部137に出力する。これにより、変調方式決定部137は、位置−送信レートテーブル保持部17から変調方式指示を入力し、その変調方式に決定する。
【0090】
図10は、位置−送信レートテーブル保持部17によるエンコードレート及び変調方式に関する処理を示すフローチャートである。まず、位置−送信レートテーブル保持部17は、位置情報測定部16から送信装置1−4の位置情報を入力すると共に、変調方式決定部137から現在の変調方式を入力し(ステップS1001)、現在の変調方式に対応する誤り訂正のための冗長データ量及び伝送プロトコルヘッダ量等を用いて所定の除算処理を行うことにより、現在の送信可能な最大レートを算出する(ステップS1002)。
【0091】
位置−送信レートテーブル保持部17は、テーブルに、位置情報に対応するエンコードレートが存在するか否かを判定し(ステップS1003)、位置情報に対応するエンコードレートが存在すると判定した場合(ステップS1003:Y)、テーブルから位置情報に対応するエンコードレートを読み出し、新たなエンコードレートを決定する(ステップS1004)。一方、位置−送信レートテーブル保持部17は、ステップS1003において、位置情報に対応するエンコードレートが存在しないと判定した場合(ステップS1003:N)、ステップS1002にて算出した現在の送信可能な最大レートを、位置情報に対応するエンコードレートとし、テーブルに格納する(ステップS1005)。
【0092】
位置−送信レートテーブル保持部17は、ステップS1004から移行して、新たに決定したエンコードレートと、現在の送信可能な最大レートとを比較し(ステップS1006)、決定したエンコードレートが現在の送信可能な最大レート以下であると判定した場合(ステップS1006:≦)、エンコードレート指示を、中間ドライバ12−4を介してエンコーダ11に出力する(ステップS1007)。これにより、無線伝送路の伝搬状況が悪化して実際に送信可能な最大レートが低下する前に、エンコーダ11のエンコードレートは速やかに低くなり、データ送信量が減少するから、データの欠落を防ぐことができ、映像が途切れ難い伝送を実現できる。
【0093】
一方、位置−送信レートテーブル保持部17は、ステップS1006において、決定したエンコードレートが現在の送信可能な最大レートよりも高いと判定した場合(ステップS1006:>)、所定時間経過後に、エンコードレート指示を、中間ドライバ12−4を介してエンコーダ11に出力する(ステップS1008)。これにより、エンコーダ11のエンコードレートは、送信バッファからデータが送信されるのを待った後に高くなるから、データ欠損を防ぎ、映像が途切れることのない伝送を実現できる。
【0094】
尚、位置−送信レートテーブル保持部17は、ステップS1008の処理の代わりに、さらに位置情報が更新され、現在の変調方式から算出した現在の送信可能な最大レートが所定のレート(例えば、決定したエンコードレートに近い所定値)にまで高くなるのを待ってから、テーブルから読み出したエンコードレートのエンコードレート指示を出力するようにしてもよい。
【0095】
位置−送信レートテーブル保持部17は、ステップS1005、ステップS1007またはステップS1008から移行して、送信装置1−4の移動による位置情報の変化に伴い、ステップS1004にてテーブルから読み出したエンコードレートが低下しているか否かを判定する(ステップS1009)。例えば、位置−送信レートテーブル保持部17は、所定時間の間、テーブルから読み出した複数のエンコードレート及び読み出した時間に基づいて、時間的に低下傾向にあるか否かを判定する。位置−送信レートテーブル保持部17は、ステップS1009において、エンコードレートが低下していると判定した場合(ステップS1009:Y)、そのときの位置情報に対応するエンコードレートよりも一層低い最低値のエンコードレートを決定する(ステップS1010)。例えば、位置−送信レートテーブル保持部17は、そのときの位置情報に対応するエンコードレートから所定値を減算し、減算結果の最低値をエンコードレートに決定する。
【0096】
位置−送信レートテーブル保持部17は、ステップS1010にて決定した最低値のエンコードレートのエンコードレート指示を、中間ドライバ12−4を介してエンコーダ11に出力する(ステップS1011)。また、位置−送信レートテーブル保持部17は、所定時間経過した後、ステップS1010にて決定した最低値のエンコードレートに相当する送信可能な最大レートの変調方式を決定し(ステップS1012)、変調方式指示を無線LAN物理層13−4に出力し(ステップS1013)、処理を終了してステップS1001へ移行する。例えば、位置−送信レートテーブル保持部17は、最低値のエンコードレートと、送信可能な最大レートの変調方式とが対応したテーブルを用いて、変調方式を決定する。
【0097】
ここで、送信可能な最大レートが低くなる位置に送信装置1−4が近づいた場合には、位置−送信レートテーブル保持部17は、まず、エンコードレートを低い値に制御し、その後に、無線LAN物理層13−4に対し変調方式を直接変更するようにした。一般に、送信可能な最大レートが低くなる位置に近づくことで、電界強度の低下に伴うパケットロスが発生するが、位置−送信レートテーブル保持部17の処理により、そのパケットロスを低減することができ、映像が途切れる可能性を低く抑えることが可能となる。
【0098】
一方、位置−送信レートテーブル保持部17は、ステップS1009において、エンコードレートが低下していないと判定した場合(ステップS1009:N)、処理を終了してステップS1001へ移行する。
【0099】
尚、位置情報及びこれに対応するエンコードレートがテーブルに存在している場合に、位置−送信レートテーブル保持部17は、ステップS1006において、テーブルから読み出したエンコードレートが現在の送信可能な最大レートよりも高いと判定した場合(ステップS1006:>)、テーブルに格納されているエンコードレートを、このエンコードレート以下である現在の送信可能な最大レートに更新するようにしてもよい。これにより、無線伝送路の伝搬状況が最も悪化している場合に合わせたテーブルが生成され、一層映像が途切れ難い制御を行うことが可能となる。
【0100】
図9に戻って、無線LAN物理層13−4は、変調・送信部131−4、受信・復調部132、電界強度測定部133及び変調方式決定部137を備えている。変調・送信部131−4は、エンコードデータを送信する際に一時的に保持する送信バッファを備えており、中間ドライバ12−4からエンコードデータを入力すると共に、変調方式決定部137から変調方式切替情報を入力し、実施例1〜3と同様に、入力したエンコードデータを送信バッファに格納し、無線伝送路の伝搬状況による実際の伝送レートに応じて送信バッファからエンコードデータを読み出し、エンコードデータをパケット化してシーケンス番号を付加し、変調方式切替情報が示す変調方式に従ってデータを変調し、変調方式に対応した所定の冗長度の誤り訂正符号を付加し、無線にて受信装置2へ送信する。また、変調・送信部131−4は、受信・復調部132からACKを入力し、送信したデータが受信装置2により正しく受信されたことを認識する。この場合、変調・送信部131−4は、ACKを入力した後に、データを送信する。
【0101】
変調方式決定部137は、電界強度測定部133から電界強度を入力し、所定の変換方式テーブルを用いて、入力した電界強度に対応する変調方式を新たな変調方式に決定すると共に、位置−送信レートテーブル保持部17から変調方式指示を入力し、変調方式指示が示す変調方式を新たな変調方式に決定する。そして、変調方式決定部137は、変調方式が変わった場合、変調方式切替情報を中間ドライバ12−4及び変調・送信部131−4に出力すると共に、現在の変調方式を位置−送信レートテーブル保持部17に出力する。受信・復調部132及び電界強度測定部133は、実施例1〜3と同様であるから、説明を省略する。
【0102】
尚、実施例4は、実施例1の構成を基本とし、さらに位置情報測定部16及び位置−送信レートテーブル保持部17を備え、GPSにより取得した位置情報に従って、予めエンコードレートを制御するものである。これに対し、実施例4の変形例は、実施例2,3の構成を基本とし、さらに位置情報測定部16及び位置−送信レートテーブル保持部17を備えるようにしてもよい。
【0103】
また、位置−送信レートテーブル保持部17は、エンコードレート指示を、中間ドライバ12−4を介してエンコーダ11に出力するようにしたが、中間ドライバ12−4を介することなく、エンコーダ11に直接出力するようにしてもよい。また、中間ドライバ12−4は、位置情報測定部16及び位置−送信レートテーブル保持部17を備えるようにしてもよい。
【0104】
以上のように、実施例4の送信装置1−4によれば、位置−送信レートテーブル保持部17が、送信装置1−4の位置情報に対応するエンコードレートをテーブルから読み出し、エンコードレート指示を、中間ドライバ12−4を介してエンコーダ11に出力する際に、テーブルから読み出したエンコードレートと、現在の変調方式から算出した現在の送信可能な最大レートとを比較し、読み出したエンコードレートが現在の送信可能な最大レート以下の場合、即座にエンコードレート指示を出力し、読み出したエンコードレートが現在の送信可能な最大レートよりも高い場合、所定時間経過後に、エンコードレート指示を出力するようにした。これにより、無線伝送路の伝搬状況が悪化して実際に送信可能な最大レートが低下する前に、エンコードレートを低下させてデータ送信量を減少させることができる。したがって、データ欠損を防ぎ、受信装置2において映像が途切れることなく、ライブ映像を伝送することが可能となる。
【0105】
〔実施例5〕
次に、実施例5について説明する。実施例5は、前述のとおり、実施例1〜4の変形例であり、実施例1〜4における送信装置1−1〜1−4のエンコーダ11と無線LAN物理層13−1〜13−4とが一体化されておらず、別々の装置として構成され、無線LAN物理層13−1〜13−4が、無線LANアクセスポイントまたは無線LANブリッジ装置として外部に設置される場合の例である。
【0106】
図11は、実施例5による送信装置(送信システム)の構成を示すブロック図である。この送信装置1−5は、エンコーダ20及び無線LANアクセスポイント18を備えて構成される。エンコーダ20は、実施例1のエンコーダ11及び中間ドライバ12−1、実施例2,3の中間ドライバ12−2,12−3及びエンコードレート算出部14,19、または、実施例4の中間ドライバ12−4、位置情報測定部16及び位置−送信レートテーブル保持部17のうちのいずれかの実施例の構成部を備えている。エンコーダ20は、映像信号を入力し、所定のエンコードレートにて圧縮符号化してエンコードデータを生成し、例えばイーサネット(登録商標)等の有線媒体を介して、無線LANアクセスポイント18へ送信する。また、エンコーダ20は、無線LANアクセスポイント18から電界強度及び変調方式切替情報等を受信し、送信可能な最大レートを算出し、実施例1〜4と同様にしてエンコードレートを求め、エンコードデータを生成する。
【0107】
無線LANアクセスポイント18は、無線LAN物理層13−5を備えており、具体的には、実施例1の無線LAN物理層13−1、実施例2の無線LAN物理層13−2、実施例3の無線LAN物理層13−3及び仮想送信量カウント部15、または、実施例4の無線LAN物理層13−4のうちのいずれかの実施例であってエンコーダ20の実施例に対応した構成部を備えている。無線LAN物理層13−5は、実施例1〜4の無線LAN物理層13−1〜13−4のいずれかと同様の機能を有する。無線LANアクセスポイント18は、エンコーダ20からエンコードデータを受信し、無線LANプロトコルにより受信装置2へ送信し、無線LAN用ACK等を受信する。また、無線LANアクセスポイント18は、電界強度を測定し、変調方式を決定する等の処理を行い、電界強度及び変調方式切替情報等を、有線媒体を介してエンコーダ20へ送信する。
【0108】
尚、エンコーダ20は、中間ドライバ12−1〜12−4等を備えるようにしたが、無線LANアクセスポイント18は、エンコーダ20の代わりに、エンコーダ11以外の中間ドライバ12−1〜12−4等を備えるようにしてもよい。この場合、エンコーダ20は、無線LANアクセスポイント18からエンコードレート指示を受信する。
【0109】
以上のように、実施例5の送信装置1−5によれば、無線LAN物理層13−5をエンコーダ20の外部に設置された無線LANアクセスポイント18内に設けるようにした。この場合も、実施例1〜4と同様に、無線伝送路の伝搬状況に応じて伝送レートが変化したり、同一伝送路にて同時送信が発生し伝送レートが低下したりしたときであっても、映像データの伝送を無瞬断で継続することができ、ライブ映像は途切れることがない。
【符号の説明】
【0110】
1 送信装置
2 受信装置
11,20 エンコーダ
12,22 中間ドライバ
13 無線LAN物理層(送信部)
14,19 エンコードレート算出部
15 仮想送信量カウント部
16 位置情報測定部
17 位置−送信レートテーブル保持部
18 無線LANアクセスポイント
21 無線LAN物理層(受信部)
22 中間ドライバ
131 変調・送信部
132 受信・復調部
133 電界強度測定部
134,137 変調方式決定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11