特許第5736284号(P5736284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736284
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】精密移動装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 5/44 20060101AFI20150528BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   B23Q5/44 Z
   B23Q17/24 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-205380(P2011-205380)
(22)【出願日】2011年9月20日
(65)【公開番号】特開2013-66952(P2013-66952A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2014年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】境 久嘉
【審査官】 齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−205292(JP,A)
【文献】 特開平06−347207(JP,A)
【文献】 特開昭57−056703(JP,A)
【文献】 特開2003−232612(JP,A)
【文献】 特開2003−035512(JP,A)
【文献】 特開2000−055617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 5/44
B23Q 17/24
G01B 11/00
21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに支持されて所定の移動方向に沿って移動可能な移動体と、前記移動体に継手を介して接続された駆動体と、前記駆動体を前記移動方向に沿って進退駆動する駆動機構と、前記ベースに対する前記移動体の変位を検出する変位検出器とを有し、
前記継手は、前記移動体に接続されかつ前記移動方向と直交する移動側対向面と、前記駆動体に接続されかつ前記移動側対向面に対向する駆動側対向面と、前記移動側対向面および駆動側対向面の間に形成される静圧隙間に流体を供給する流体供給路と、前記静圧隙間から前記流体を排出する流体排出路と、を有する給排静圧継手であり、
前記変位検出器は、光軸が前記移動方向に沿ったレーザ光路を有するレーザ干渉計であり、前記レーザ光路を通るレーザ光は、前記駆動体ないし前記駆動側対向面を貫通しかつ前記移動側対向面で反射されることを特徴とする精密移動装置。
【請求項2】
請求項1に記載した精密移動装置において、
前記駆動体は、内部をレーザ光路として利用可能な管状の駆動ロッドであることを特徴とする精密移動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した精密移動装置において、
前記駆動側対向面には、前記駆動体を貫通する前記レーザ光路と前記静圧隙間とを気密状態に仕切り、かつ前記レーザ光路の光軸に対して傾斜配置された透明板を有することを特徴とする精密移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密移動装置に関し、測定装置や工作機械などの載物テーブルあるいはコラム等を高精度で移動し位置決めする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精密な運動精度が要求される精密位置決めシステムや、精密測定機器および工作機械など、精密移動装置においては、精緻に仕上げられた案内レール面精度を損なうことなく、移動対象の運動精度に反映させるための工夫が施されている。
このような精密移動装置では、移動対象であるテーブル等の移動体に、駆動機構による駆動力を伝達する際に、駆動源からの振動等を伝達することなく、かつ所期の送り方向のみの推力を伝達することが求められる。このような伝達機構の一つとして優れた効果を示すものに、一対の高精密な平面間に流体を供給して静圧隙間を形成する静圧継手がある。
なかでも、例えば静圧隙間の外周部に流体を供給しつつ中央部で流体を排出する給排静圧軸受あるいは真空圧バランス型静圧空気軸受では、圧縮方向及び引張方向に強い剛性を確保することができ、このような高剛性の静圧軸受を用いた駆動機構により、高精度直動テーブルの幾何運動精度の高度化を図る構成が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、駆動体であるロッドから推力のみが空気静圧継手を介して移動体であるテーブルに非接触で伝達され、駆動源からの振動の伝達等を回避できるとともに、テーブルの高い運動精度の実現が可能となる。さらに、ロッドからの推力軸をテーブルの重心近傍に通すことにより、加減速駆動時においてもテーブルの運動精度を維持することが可能となる。
さらに、特許文献1の静圧継手では、ロッド側にヨーイング方向の運動誤差を吸収するジンバル機構に支持されたスラスト板が設けられ、テーブル側はピッチング方向の運動誤差を吸収する同様のジンバル機構により支持される構成とすることで、継手を介してテーブルの移動方向以外の力の伝達が生じないようにされている。
【0004】
ところで、精密移動装置では、高精度化の要件として、駆動機構ないし移動体の高い幾何運動精度に加えて、移動体の送り方向の位置を正確に検出し制御することが重要となる。
このような機能として、精密移動装置にレーザ干渉計を設置し、移動体の送り方向の位置を検出する技術が知られている(特許文献2参照)。
特許文献2では、テーブルの下方に送りねじ軸を用いたスライダ駆動機構が設置され、テーブルの側方にレーザ干渉計による位置検出機構が設置される。この際、レーザ干渉計の光源からテーブル端部に至るレーザ光路は、ベローズを用いた伸縮性の筒体によって囲われ、内部を減圧されており、レーザ光路における空気の影響を排除して更なる高精度化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−205292号公報
【特許文献2】特開2000−55617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1の精密移動装置に、特許文献2に記載の位置検出機構を、単に組み合わせた場合、次のような問題がある。
特許文献1の精密移動装置による精密位置決めにおいては、精密位置決めの対象が、測定軸であるレーザ干渉計のレーザ光軸が上にあることに加え、駆動軸線上にあることが望ましい。しかし、特許文献2のレーザ干渉計のレーザ光路を、特許文献1のロッドおよび空気静圧継手による駆動軸と同一軸線上に配置することは難しく、いわゆるオフセットが避けられない。
このようなことから、特許文献1の精密移動装置による高精度化を図っても、特許文献2のようなレーザ干渉計による高精度な位置検出機構と組み合わせることができず、実際の高精度移動および位置決めに十分な効果が得られない可能性がある。
【0007】
さらに、特許文献2では、レーザ光路における媒質の影響を解消するべく、光路を減圧するためにベローズを用いるが、ベローズの端部はテーブルに気密接続する必要があり、特許文献1のようにジンバル機構による推力軸線のぶれを解消しても、ベローズによる影響を受けてしまい、高精度化の効果が損なわれる可能性がある。
【0008】
本発明の主な目的は、高精度な移動が行えるとともに、高精度な位置検出に基づく高精度な位置決めが可能な精密移動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ベースに支持されて所定の移動方向に沿って移動可能な移動体と、前記移動体に継手を介して接続された駆動体と、前記駆動体を前記移動方向に沿って進退駆動する駆動機構と、前記ベースに対する前記移動体の変位を検出する変位検出器とを有し、
前記継手は、前記移動体に接続されかつ前記移動方向と直交する移動側対向面と、前記駆動体に接続されかつ前記移動側対向面に対向する駆動側対向面と、前記移動側対向面および駆動側対向面の間に形成される静圧隙間に流体を供給する流体供給路と、前記静圧隙間から前記流体を排出する流体排出路と、を有する給排静圧継手であり、
前記変位検出器は、光軸が前記移動方向に沿ったレーザ光路を有するレーザ干渉計であり、前記レーザ光路を通るレーザ光は、前記駆動体ないし前記駆動側対向面を貫通しかつ前記移動側対向面で反射されることを特徴とする。
【0010】
このような構成では、駆動機構により駆動体を駆動することで、駆動体および継手を介して移動体が移動される。継手として、給排静圧継手を用いることで、駆動源からの振動の影響を回避し、かつ移動方向のみの駆動による高精度な移動が行われる。
移動体の移動は変位検出器により検出される。変位検出器は、レーザ干渉計による高精度を有するとともに、駆動体を貫通するレーザ光路によりオフセット誤差を回避できるため、移動体の位置決め精度を高めることができる。
【0011】
本発明において、給排静圧継手で用いる流体としては、空気その他の気体のほか、液体も利用可能である。ただし、空気を用いれば、確保が容易であるうえ、漏洩しても問題が生じない。
本発明において、駆動機構としては、モータ等の動力源と、動力を駆動体に伝達する伝達機構とを有するものが利用でき、このような伝達機構としては動作の連続性が高い摩擦ローラを用いることが望ましい。但し、他の伝達機構を用いることも可能である。
【0012】
本発明において、前記駆動体は、内部をレーザ光路として利用可能な管状の駆動ロッドであることが望ましい。
このような構成では、レーザ光路を駆動ロッドの中心軸位置に合わせることにより、駆動体の移動軸線および位置検出軸線を移動体の移動方向に一致させることができる。
【0013】
本発明において、前記駆動側対向面には、前記駆動体を貫通する前記レーザ光路と前記静圧隙間とを気密状態に仕切り、かつ前記レーザ光路の光軸に対して傾斜配置された透明板を有することが望ましい。
このような構成では、静圧隙間の気圧とは関わりなく駆動体内のレーザ光路の減圧状態を設定することができる。このため、レーザ光路に要求される高真空に対して静圧隙間の圧力が高い場合、すなわち流体が気体でも気圧が高い場合、あるいは流体として液体を用いる場合、静圧隙間の流体がレーザ光路内に流入することが回避できる。
ここで、透明板は、レーザ光軸に対して傾斜されているため、レーザ干渉計の測定にあたって不必要な反射光を返す可能性を解消することができる。
なお、本発明において、透明板で静圧隙間と駆動体内のレーザ光路とを仕切ることは必須ではなく、例えば静圧隙間が十分に減圧される場合、あるいはレーザ光路の真空度が低い場合など、静圧隙間と駆動体内のレーザ光路とを通気状態とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態の全体構成を示す模式図。
図2】前記第1実施形態の要部を示す断面図。
図3】本発明の第2実施形態の全体構成を示す模式図。
図4】本発明の第3実施形態の要部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1および図2には、本発明の第1実施形態が示されている。
図1において、本実施形態の精密移動装置1は、ベース2上にテーブル機構3、駆動機構4、レーザ干渉計5を備えている。
ベース2は、安定した基礎上に固定され、上面が水平に形成されている。
【0016】
テーブル機構3は、移動体であるテーブル31を支持するものであり、ベース2に固定されたガイドレール32を有する。
テーブル31の下面にはガイド軸受33が形成され、テーブル31はガイド軸受33およびガイドレール32を介してベース2に支持されている。
ガイドレール32は、所定の移動方向(テーブル31を移動させる所期の方向)に連続して形成され、上面が水平かつ平滑とされている。
ガイド軸受33は、空気を噴出してガイドレール32の上面との間に静圧隙間を形成する空気静圧軸受であり、テーブル31の荷重によりプリロードを得ている。
テーブル31は、テーブル機構3により移動自在に支持され、前述した移動方向へ滑らかに移動可能である。
【0017】
駆動機構4は、駆動体であるロッド41を駆動するものであり、ベース2に固定されたケーシング42を有する。
ロッド41は、前述したテーブル31の移動方向に延びる中空管状の長尺部材であり、両端(図1右側の基端および同左側の先端)がケーシング42から突出されている。ロッド41の先端は、継手6を介してテーブル31の側面に接続されている。継手6については後に詳述する。
ケーシング42は、ロッド41を貫通させかつロッド41の外周と滑らかに摺動するロッドガイド43を2箇所に有し、これらのロッドガイド43で支持されることでロッド41はテーブル31の移動方向のまま支持され、かつ長手方向に自由に移動可能とされている。
【0018】
ケーシング42には、ロッド41を挟むように駆動ローラ44および従動ローラ45が設置されている。
駆動ローラ44は、図示しないモータ等の動力源から回転力を伝達されて正逆両方向に回転可能であり、ロッド41の周面に圧接されることで回転力を伝達し、ロッド41を長手方向に駆動可能である。
従動ローラ45は、ケーシング42に自由に回転可能に支持されているものであり、駆動ローラ44の反対側からロッド41に圧接され、駆動ローラ44のロッド41に対する圧接力に見合った圧接力をロッド41に加えることで、ロッド41の撓みあるいはロッド41に他方向への無用な力を生じないようにされている。
このような駆動機構4により、ロッド41は、その長手方向(移動方向)の任意位置へと進出あるいは後退することが可能である。
【0019】
レーザ干渉計5は、本発明の変位検出器であり、受光素子およびスプリッタ等の基本構成が収容された干渉計本体51を有し、この干渉計本体51には光ファイバ52を介して外部のレーザ光源53が接続されている。
干渉計本体51の発光部分54は、金属製のベローズ55を介してロッド41の基端に接続されている。前述の通りロッド41は長手方向に進退し、干渉計本体51に対して距離が変動するが、ベローズ55が伸縮することで、ロッド41と干渉計本体51との接続が維持される。
【0020】
ベローズ55の内部およびロッド41の中空部は互いに連通され、これらの一連の空間によりレーザ光路56が形成される。
発光部分54から出射されるレーザ光は、レーザ光路56を通ってロッド41の先端の継手6まで達し、反射されてレーザ光路56を通り干渉計本体51に戻って受光されるようになっている。
測定精度を高めるために、レーザ光路56内は高真空状態まで減圧される。ベローズ55は、ロッド41の移動に伴って長手方向には伸縮可能であるが、金属製とされて径方向には所定の剛性が確保されており、内外の気圧差が大きくても圧壊することはない。
【0021】
図2において、継手6は、テーブル31およびロッド41を接続するものであり、テーブル31に接続される移動側部材61と、ロッド41の先端に接続される駆動側部材62とを有する。
移動側部材61および駆動側部材62は、それぞれ金属製の円盤状に形成され、一方の表面が高精度の平面となるように研磨されている。これにより、移動側部材61の表面には移動側対向面63が形成され、駆動側部材62の表面には駆動側対向面64が形成されている。
【0022】
移動側部材61は、水平な回動軸71を介して支持部材73に支持され、この支持部材73はテーブル31の側面に固定されている。これにより、移動側のジンバル機構が形成され、移動側部材61および移動側対向面63はピッチング方向に揺動可能である。
駆動側部材62は、垂直な回動軸72を介して支持部材74に支持され、この支持部材74はロッド41の先端に固定されている。これにより、駆動側のジンバル機構が形成され、駆動側部材62および駆動側対向面64はヨーイング方向に揺動可能である。
【0023】
継手6において、移動側部材61および駆動側部材62は互いに向かい合わせに配置され、移動側対向面63および駆動側対向面64の間には後述する流体によって静圧隙間65が形成される。
通常、テーブル31は所定の移動方向へ移動可能であり、ロッド41もこの移動方向に延びかつこの移動方向に進退駆動される。移動側部材61および駆動側部材62は互いの回動軸が直交しており、通常は移動側対向面63および駆動側対向面64がそれぞれ前述したテーブル31の移動方向に直交する状態である。ここで、ロッド41がテーブル31の移動方向に対して僅かな傾きを生じたとしても、前述した移動側および駆動側のジンバル機構により傾きが吸収され、前述した移動側対向面63および駆動側対向面64がテーブル31の移動方向に直交する状態が維持される。
【0024】
移動側部材61には、流体供給路66および流体排出路67が接続され、静圧隙間65への流体の供給および排出が行われる。
流体供給路66は、流体である圧縮空気を移動側対向面63の外周近傍の複数箇所に配置された流体絞りから静圧隙間65へと供給する。
流体排出路67は、移動側対向面63の外周近傍の空気が供給される領域より内側の領域から空気を排出する。
これにより、流体供給路66から静圧隙間65の外周近傍に供給された空気は、一部が静圧隙間65の外周から大気開放されるとともに、内側の領域では流体排出路67から排出される。
従って、空気が排出される内側の領域では移動側対向面63および駆動側対向面64を近接させるような引張力が生じ、これが静圧継手としてのプリロードとなる。そして、外周近傍の空気供給領域において一定厚みの空気層が圧縮力を受け、これにより給排静圧軸受が構成される。
【0025】
駆動側部材62には、中央に貫通孔68が形成されている。
駆動側部材62のロッド41側には、金属製のベローズ75が接続され、ベローズ75は、ロッド41の先端のレーザ光路56の開口の周囲に接続されている。
これらにより、ロッド41の内部のレーザ光路56からベローズ75の内部ないし貫通孔68まではテーブル31の移動方向の軸線に沿って連通されている。
【0026】
貫通孔68の駆動側対向面64側近傍にはガラス製の透明板69が設置され、この透明板69により静圧隙間65と貫通孔68、ベローズ75ないしレーザ光路56の内部とは気密状態で遮断されている。但し、透明板69はレーザ干渉計5のレーザ光に対して透明であり、レーザ光路56を通って到達したレーザ光は、透明板69を透過して移動側対向面63で反射され、再び透明板69を透過してレーザ光路56に戻り、レーザ干渉計5で検出されるようになっている。
【0027】
この際、移動側対向面63はテーブル31の移動方向つまりレーザ光路56を通るレーザ光の光軸と直交状態を維持されているため、レーザ光路56からのレーザ光を確実に反射させることができる。
一方、透明板69は、貫通孔68内に固定されるにあたって、テーブル31の移動方向つまりレーザ光路56を通るレーザ光の光軸に対して直交状態ではなく、僅かな角度傾斜した状態で固定されている。これにより、透明板69で生じた反射成分はレーザ光軸から外れ、レーザ干渉計5に戻ることはない。
【0028】
このような本実施形態によれば、駆動機構4によりロッド41を駆動することで、ロッド41および継手6を介してテーブル31を移動させることができる。
本実施形態では、継手6として給排静圧継手を用いたため、駆動機構4のモータ等の動力源からの振動等の影響を回避することができ、かつテーブル31の移動方向のみの駆動による高精度な移動を行うことができる。
テーブル31の移動は、変位検出器であるレーザ干渉計5により検出することができる。レーザ干渉計5は、レーザ干渉による高精度を有するとともに、ロッド41を貫通するレーザ光路56を用いた配置によりロッド41の移動軸線およびレーザ光による位置検出軸線をテーブル31の移動方向に一致させ、オフセット誤差を回避できるため、テーブル31の位置決め精度を高めることができる。
【0029】
駆動側対向面64には、ロッド41内から貫通孔68まで連通するレーザ光路56と静圧隙間65とを気密状態に仕切る透明板69を設けたため、静圧隙間65の気圧とは関わりなくレーザ光路56の減圧状態を設定することができる。このため、レーザ光路56に要求される高真空に対して静圧隙間65の圧力が高い場合でも、静圧隙間65の流体がレーザ光路56内に流入することが回避できる。
透明板69は、レーザ光路56を通るレーザ光の光軸に対して傾斜しているため、レーザ干渉計5の測定にあたって不必要な反射光を返す可能性を解消することができる。
【0030】
〔第2実施形態〕
図3には、本発明の第2実施形態が示されている。
図3において、本実施形態の精密移動装置1Aは、ベース2上にテーブル機構3、駆動機構4、レーザ干渉計5を備えている。
このうち、駆動機構4を除く各構成は、前述した第1実施形態の精密移動装置1と同じものであり、同じ符号を用いて重複する説明を省略する。
【0031】
駆動機構4は、ロッド41を駆動するために、ケーシング42、ロッドガイド43、駆動ローラ44を備えている。ここで、ロッド41、ケーシング42、ロッドガイド43については、前述した第1実施形態の精密移動装置1と同じものであり、同じ符号を用いて重複する説明を省略する。
駆動機構4において、前述した第1実施形態の精密移動装置1との相違点は、従動ローラ45が省略されるとともに、駆動ローラ44が一対対向配置されていることである。
一対の駆動ローラ44は、図示しない動力源からの駆動力を伝達機構により一対の駆動ローラ44に均等に分配され、かつ一対の駆動ローラ44は等速で回転するように構成されている。
【0032】
このような本実施形態では、前記第1実施形態と同様な効果が得られるほか、一対の駆動ローラ44が両側からロッド41を挟み込んで均等に駆動を行うことで、前述した第1実施形態におけるロッド41の移動軸線およびレーザ光の検出軸線をテーブル31の移動方向に一致させるだけでなく、駆動力(推力)の中心である駆動軸線(推力軸線)についても一致させることができ、さらなる高精度化が期待できる。
【0033】
〔第3実施形態〕
図4には、本発明の第3実施形態が示されている。
本実施形態は、前述した第1実施形態の精密移動装置1を基本とし、継手6のみが異なる構成としたものである。従って、前述した第1実施形態の精密移動装置1と同じ構成については同じ符号を用いて重複する説明を省略し、以下には異なる構成である継手6について説明する。
【0034】
図4において、継手6は、前述した第1実施形態と同様な移動側部材61、駆動側部材62、移動側対向面63、駆動側対向面64、静圧隙間65、流体供給路66、流体排出路67、貫通孔68、透明板69を備えている。
但し、移動側部材61および駆動側部材62を支持するジンバル機構が省略され、移動側部材61および駆動側部材62はテーブル31の側面あるいはロッド41の先端に直接固定されている。
このような本実施形態によれば、ジンバル機構による傾き解消の機能が得られないが、その他の効果については前記第1実施形態と同様な効果が得られる。一方、ロッド41の傾き等の可能性が小さい場合など、本実施形態の構成を利用することで、継手6の構成を大幅に簡略化することができる。
【0035】
〔変形例〕
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形等は本発明に含まれるものである。
例えば、透明板69を設置し、静圧隙間65とレーザ光路56とを仕切ることは必須ではなく、例えば静圧隙間65が十分に減圧される場合など、あるいはレーザ光路56の真空度が低い場合など、静圧隙間65とレーザ光路56とが通気状態とすることも可能である。
駆動機構4としては、駆動ローラ44による摩擦転動に限らず、送りねじ軸等の他の機構を用いてもよい。
駆動機構4とレーザ干渉計5との間のベローズ55は、テレスコピック構造などで代替してもよい。
前記各実施形態では、テーブル31を移動させる方向を一次元で説明したが、2系統を組み合わせて二次元的な移動を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1,1A…精密移動装置
2…ベース
3…テーブル機構
4…駆動機構
5…レーザ干渉計
6…継手
31…テーブル
32…ガイドレール
33…ガイド軸受
41…ロッド
42…ケーシング
43…ロッドガイド
44…駆動ローラ
45…従動ローラ
51…干渉計本体
52…光ファイバ
53…レーザ光源
54…発光部分
55…ベローズ
56…レーザ光路
61…移動側部材
62…駆動側部材
63…移動側対向面
64…駆動側対向面
65…静圧隙間
66…流体供給路
67…流体排出路
68…貫通孔
69…透明板
71…回動軸
72…回動軸
73…支持部材
74…支持部材
75…ベローズ
図1
図2
図3
図4