特許第5736456号(P5736456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5736456共役ブロック共重合体及びそれを用いた光電変換素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736456
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】共役ブロック共重合体及びそれを用いた光電変換素子
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20150528BHJP
   H01L 51/42 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   C08G61/12
   H01L31/04 D
【請求項の数】10
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2013-522890(P2013-522890)
(86)(22)【出願日】2012年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2012066363
(87)【国際公開番号】WO2013005614
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2014年7月8日
(31)【優先権主張番号】特願2011-147631(P2011-147631)
(32)【優先日】2011年7月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100088306
【弁理士】
【氏名又は名称】小宮 良雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126343
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 浩之
(72)【発明者】
【氏名】中原 淳裕
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雅典
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 隆文
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 拓也
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 尚
(72)【発明者】
【氏名】藤田 明士
(72)【発明者】
【氏名】大木 弘之
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−215349(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/104781(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/007878(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/074920(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/122956(WO,A1)
【文献】 特開2008−078373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/00−61/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二価の複素環基を主鎖に含み、かつフッ素原子若しくは水酸基で置換されてもよいアルキル基またはアルコキシ基である側鎖を含む共役重合体ブロックの少なくとも2種類を含有している共役ブロック共重合体であって、
溶解度パラメーターが最大値を有する前記共役重合体ブロックと、溶解度パラメーターが最小値を有する共役重合体ブロックとの溶解度パラメーターの差が、0.6以上2.0以下であることを特徴とする共役ブロック共重合体。
【請求項2】
前記共役重合体ブロックが、少なくとも一つのチオフェン環を化学構造の一部に含む縮環π共役骨格、カルバゾール骨格、ジベンゾシロール骨格、及びジベンゾゲルモール骨格から選ばれる少なくとも一つの複素環骨格を有する二価の複素環基を主鎖に含むことを特徴とする請求項1に記載の共役ブロック共重合体。
【請求項3】
前記共役重合体ブロックが、シクロペンタジチオフェンジイル基、ジチエノピロールジイル基、ジチエノシロールジイル基、ジチエノゲルモールジイル基、ベンゾジチオフェンジイル基、ナフトジチオフェンジイル基、チエノチオフェンジイル基、チエノピロールジオンジイル基及びジケトピロロピロールジイル基から選ばれる少なくとも一つの二価の複素環基を主鎖に含むことを特徴とする請求項1に記載の共役ブロック共重合体。
【請求項4】
前記共役重合体ブロックの2種類が、前記二価の複素環基に最小で炭素数8のアルキル基またはアルコキシ基である側鎖が結合している共役重合体ブロックと、同種又は異種の前記二価の複素環基に最大で炭素数6のアルキル基またはアルコキシ基である側鎖が結合している共役重合体ブロックとであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の共役ブロック共重合体。
【請求項5】
一方の共役重合体ブロックの側鎖の炭素数の総和と他方の共役重合体ブロックの側鎖の炭素数の総和との差が、6以上16以下であることを特徴とする請求項3に記載の共役ブロック共重合体。
【請求項6】
前記共役重合体ブロックの2種類が、前記二価の複素環基にフッ素非含有であるアルキル基またはアルコキシ基である側鎖が結合している共役重合体ブロックと、同種又は異種の前記二価の複素環基に最小で3つのフッ素原子で置換されているアルキル基またはアルコキシ基である側鎖が結合している共役重合体ブロックとであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の共役ブロック共重合体。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の共役ブロック共重合体とフラーレン誘導体とを含有することを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項1〜6の何れかに記載の共役ブロック共重合体を含有することを特徴とする有機薄膜。
【請求項9】
請求項8に記載の有機薄膜を基板に備えることを特徴とする有機薄膜素子。
【請求項10】
請求項8に記載の有機薄膜が、少なくとも2つの電極間に挟まれていることを特徴とする光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子の有機光電変換層となる有機薄膜を形成する共役ブロック共重合体、及びそれを用いて作製した光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は環境に優しい有力なエネルギー源として注目されている。現在、太陽電池の光電変換素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン及びアモルファスシリコンのようなシリコン系材料や、GaAs、CIGS及びCdTeのような化合物半導体材料などの無機物が使用されている。これらの光電変換素子は比較的高い光電変換効率を有するが、他の電源コストと比較して高価格なものである。コスト高の要因は、高真空かつ高温下で半導体薄膜を製造しなくてはならないプロセスにある。そこで、製造プロセスの簡略化が期待される半導体材料として、共役ポリマーや有機結晶などの有機半導体や有機色素を用いた有機太陽電池が検討されている。これらの有機半導体材料は、塗布法や印刷法により製膜できるため、製造プロセスが簡便化し、大量生産が可能で安価な有機太陽電池を得ることが可能であるとして注目されている。
【0003】
有機太陽電池は、2つの異種電極間に有機光電変換層を設けた構造をしている。一般に有機光電変換層は、共役ポリマー及びフラーレン誘導体の混合物から形成されている。代表例としては、共役ポリマーとしてポリ(3−ヘキシルチオフェン)、フラーレン誘導体として[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル(PC61BM)をそれぞれ含む組成物が挙げられる。
【0004】
有機太陽電池の課題は、光電変換効率を高めることであり、特に有機光電変換層のモルフォロジを変えることで光電変換効率の向上を図る報告がなされている。有機光電変換層のモルフォロジを変える方法として、例えば、熱や溶媒蒸気により処理する方法、共役ポリマーやフラーレン誘導体を溶解させる溶媒を工夫する方法、高沸点化合物を添加する方法、溶媒の揮発速度を小さくする方法などが挙げられる。
【0005】
また別の取り組みとして、共役ブロック共重合体を用いて有機光電変換層のモルフォロジを制御することで光電変換効率の向上を目指す報告がなされている。ブロック共重合体は通常、十分な分子量があればミクロ相分離することが知られている。共役ブロック共重合体においても、ミクロ相分離し、有機光電変換層である活性層の構造を制御することで変換効率が向上したという報告がなされている(特許文献1〜8、非特許文献1〜7)。
【0006】
非特許文献1には、ブロック共重合体の一方のブロックに極性基を導入し、ミクロ相分離性能を向上させた共役ブロック共重合体が提案されている。しかし、極性が非常に高くN型有機半導体であるフラーレン誘導体との親和性が小さいため、フラーレン誘導体が凝集し易く、十分な変換効率を得られるものではなかった。この原因として、フラーレン誘導体が凝集するために良好なモルフォロジが形成されていないことが考えられる。
【0007】
同様に、共役ポリマーと非共役ポリマーとのブロック共重合体の場合、非共役ポリマーが発電に寄与しないため高い性能は期待できない。また共役ポリマーと共役ポリマーとのブロック共重合体であっても、ポリチオフェンに代表される共役ポリマーを含有するブロック共重合体の場合、結晶部と非晶部との相分離が観察されており、ブロック共重合体のミクロ相分離でない場合が多い。この理由としては、これら共役ブロック共重合体の合成が難しいことから、類似の側鎖を有する2種類の単量体を用いることが多く、したがって得られる共役ブロック共重合体も類似な骨格を有するものになり、共結晶を作ったり非晶部で相溶したりしてしまうことが挙げられる。また、共結晶を形成する場合、ブロック共重合体特有のミクロ相分離を形成せず、結晶−非晶相分離が観察されるだけである。このような場合、共役ブロック共重合体用いる利点であるミクロ相分離によるモルフォロジの制御が達成できず、例えば、ブロック共重合体の一方のポリマードメインにフラーレン誘導体などのアクセプター材料を偏在させることができず、そのため変換効率の向上もあまり期待できない。
【0008】
このため、ミクロ相分離によりモルフォロジの制御が可能で十分な光電変換効率を得られるものが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2009/056496号
【特許文献2】米国特許第7452958号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0315751号明細書
【特許文献4】特開2007−211237号公報
【特許文献5】特開2008−223015号公報
【特許文献6】特開2010−074127号公報
【特許文献7】特開2010−43217号公報
【特許文献8】特許第4126019号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ハイ・パフォーマンス・ポリマーズ(High Performance Polymers),2007年,第19巻,684−699頁
【非特許文献2】マクロモレキュールズ(Macromolecules),2007年,第40巻,4733−4735頁
【非特許文献3】マクロモレキュールズ(Macromolecules),2008年,第41巻,5289−5294頁
【非特許文献4】マクロモレキュールズ(Macromolecules),2009年,第42巻,7008−7015頁
【非特許文献5】マクロモレキュールズ(Macromolecules),2010年,第43巻,3306−3313頁
【非特許文献6】アドバンスト・マテリアルズ(Advanced Materuals),2010年,第22巻,763−768頁
【非特許文献7】マクロモレキュールズ(Macromolecules),2011年,第44巻,530−539頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、溶媒への溶解性が良好でミクロ相分離によりモルフォロジの制御された有機薄膜の形成が可能である共役ブロック共重合体、及びそれを含有する有機薄膜を用い優れた光電変換効率を有する光電変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するためになされた、請求の範囲の請求項1に記載された共役ブロック共重合体は、二価の複素環基を主鎖に含み、かつフッ素原子若しくは水酸基で置換されてもよいアルキル基またはアルコキシ基である側鎖を含む共役重合体ブロックの少なくとも2種類を含有している共役ブロック共重合体であって、溶解度パラメーターが最大値を有する前記共役重合体ブロックと、溶解度パラメーターが最小値を有する共役重合体ブロックとの溶解度パラメーターの差が、0.6以上2.0以下であることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の共役ブロック共重合体は、請求項1に記載されたものであって、前記共役重合体ブロックが、少なくとも一つのチオフェン環を化学構造の一部に含む縮環π共役骨格、カルバゾール骨格、ジベンゾシロール骨格、及びジベンゾゲルモール骨格から選ばれる少なくとも一つの複素環骨格を有する二価の複素環基を主鎖に含むことを特徴とする.
【0014】
請求項3に記載の共役ブロック共重合体は、請求項1に記載されたものであって、 前記共役重合体ブロックが、シクロペンタジチオフェンジイル基、ジチエノピロールジイル基、ジチエノシロールジイル基、ジチエノゲルモールジイル基、ベンゾジチオフェンジイル基、ナフトジチオフェンジイル基、チエノチオフェンジイル基、チエノピロールジオンジイル基及びジケトピロロピロールジイル基から選ばれる少なくとも一つの二価の複素環基を主鎖に含むことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の共役ブロック共重合体は、請求項1〜3のいずれかに記記載されたものであって、前記共役重合体ブロックの2種類が、前記二価の複素環基に最小で炭素数8のアルキル基またはアルコキシ基である側鎖が結合している共役重合体ブロックと、同種又は異種の前記二価の複素環基に最大で炭素数6のアルキル基またはアルコキシ基である側鎖が結合している共役重合体ブロックとであることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の共役ブロック共重合体は、請求項3に記記載されたものであって、 一方の共役重合体ブロックの側鎖の炭素数の総和と他方の共役重合体ブロックの側鎖の炭素数の総和との差が、6以上16以下であることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の共役ブロック共重合体は、請求項1〜3のいずれかに記記載されたものであって、前記共役重合体ブロックの2種類が、前記二価の複素環基にフッ素非含有であるアルキル基またはアルコキシ基である側鎖が結合している共役重合体ブロックと、同種又は異種の前記二価の複素環基に最小で3つのフッ素原子で置換されているアルキル基またはアルコキシ基である側鎖が結合している共役重合体ブロックとであることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の組成物は、請求項1〜6のいずれかに記載の共役ブロック共重合体とフラーレン誘導体とを含有することを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の有機薄膜は、請求項1〜6のいずれかに記載の共役ブロック共重合体を含有することを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の有機薄膜素子は、請求項8に記載の有機薄膜を基板に備えることを特徴とする。
【0021】
請求項10に記載の光電変換素子は、請求項6に記載の有機薄膜が、少なくとも2つの電極間に挟まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の共役ブロック共重合体は、少なくとも2種類の共役重合体ブロックを含み、その溶解度パラメーターを調整することにより、ミクロ相分離を形成することができる。このミクロ相分離構造により、モルフォロジを制御した光電変換効率の高い有機薄膜を形成することが可能である。
【0023】
本発明の組成物は、有機半導体材料であって、共に含有されるアクセプター材料との親和性が良好である共役ブロック共重合体により、ミクロ相分離によるモルフォロジの制御がなされた有機薄膜を形成することができる。
【0024】
本発明の有機薄膜は、優れた光電変換効率を有する光電変換素子を提供することができる。
【0025】
本発明の光電変換素子は、優れた光電変換性能を有し、光電変換機能や光整流機能を利用した種々の光電変換デバイスへ応用して用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0027】
本発明の共役ブロック共重合体は、少なくとも2種類の共役重合体ブロック、例えば共役重合体ブロックA及び共役重合体ブロックBが共重合されて結合しているブロック共重合体である。各ブロックを構成する共役重合体ブロックは、共役した二価の単量体から構成される重合体であって、その主鎖に二価の複素環基を含み、かつフッ素原子若しくは水酸基で置換されてもよいアルキル基またはフッ素原子若しくは水酸基で置換されてもよいアルコキシ基である側鎖を含むものある。ここで、主鎖とは、二価の複素環基からなる化合物の最も長い鎖をいう。この共役重合体ブロックを構成する共役した二価の単量体とは、分子中の結合の電子が非局在化している二価の基であり、二価の複素環基からなる化合物である。
【0028】
二価の複素環基としては、具体的に、ジベンゾシロールジイル基、ジベンゾゲルモールジイル基、ジベンゾフランジイル基、カルバゾールジイル基、チオフェンジイル基、フランジイル基、ピロールジイル基、ベンゾチアジアゾールジイル基、チエニレンビニレンジイル基、ベンゾトリアゾールジイル基などが挙げられる。チオフェンジイル基としては、単環構造のチオフェンジイル基及び縮環構造のチオフェンジイル基が挙げられ、縮環構造のチオフェンジイル基がより好ましい。縮環構造のチオフェンジイル基としては、シクロペンタジチオフェンジイル基、ジチエノピロールジイル基、ジチエノシロールジイル基、ジチエノゲルモールジイル基、ベンゾジチオフェンジイル基、ナフトジチオフェンジイル基、チエノチオフェンジイル基、チエノピロールジオンジイル基、ジケトピロロピロールジイル基などが挙げられる。また、これらの縮環構造のチオフェンジイル基は、さらに単環または縮環の芳香環若しくは複素環が直接結合した多環構造であってもよい。単環または縮環の芳香環若しくは複素環としては、例えばチオフェン、フラン、ベンゼン、ナフタレン、ピロール、ピリジン等が挙げられ、好ましくはチオフェンである。縮環構造のチオフェンジイル基に直接結合したこれらの芳香環若しくは複素環には、主鎖を構成する二価の複素環基とπ電子が共役しており、主鎖骨格の一部である。
【0029】
これらの二価の複素環基のなかで、モルフォロジが制御し易く、光電変換素子としての性能が高いという観点から、少なくとも一つのチオフェン環を化学構造の一部に含む縮環π共役骨格、カルバゾール骨格、ジベンゾシロール骨格、又はジベンゾゲルモール骨格であると好ましく、少なくとも一つのチオフェン環を化学構造の一部に含む縮環π共役骨格であることがより好ましい。一方、単環構造のチオフェンジイル基であると、合成が容易であるものの、吸収する光の波長範囲が短波長であり、光電変換素子に用いた場合、光電変換効率が高くない場合がある。
【0030】
本発明の共役ブロック共重合体に含まれる2種類以上の共役重合体ブロックの連結構造は、特に限定されるものではない。2種類の共役重合体ブロックを含有する場合は、例えば、A−B型ジブロック共重合体、A−B−A型トリブロック共重合体、A−B−A−B型テトラブロック共重合体、A−B−A−B−A型ペンタブロック共重合体などが挙げられる。3種類の共役重合体ブロックを含有する場合は、A−B−C型トリブロック共重合体、A−B−A−C型テトラブロック共重合体などが挙げられる。
【0031】
また共役ブロック共重合体の結合様式は、共役ブロック共重合体のミクロ相分離が形成されればよく、特に制限されるものではない。結合様式としては、共役重合体ブロックの末端同士が結合したリニアな共役ブロック共重合体や、共役重合体ブロックの末端と共役重合体ブロックの末端以外とが結合したT型の共役ブロック共重合体であってもよい。また結合部位は、π共役で連結されていてもよく、非共役構造で結合されていてもよい。
【0032】
この共役重合体ブロックの単量体単位は、例えば単量体単位−a−のみを繰返す構造を一つの単位とするだけでなく、共役重合体ブロック中に一定の繰返し構造を複数有する限り、二価の複素環基を複数連結した構造、例えば単量体単位−a−b−を一つの単位とすることを含むものである。すなわち、単量体単位−a−と単量体単位−b−との完全交互共重合体ブロックは、置換基が同じである繰返し単位である限り単量体単位−a−b−の単独ポリマーブロックとみなすものとする。共役重合体ブロックA及び共役重合体ブロックBにおいて、単量体単位−a−b−の態様まで含む1種類の単量体単位中の置換基を除く環構造を構成する炭素原子のみの合計数は、6〜30であることが好ましい。このような単量体単位−a−b−の場合、側鎖であるフッ素原子若しくは水酸基で置換されてもよいアルキル基またはアルコキシ基は、少なくとも単量体単位−a−または単量体単位−b−のどちらかに結合していればよい。
【0033】
より具体的には、例えば、シクロペンタジチオフェンジイル基(a)とベンゾチアジアゾールジイル基(b)とが交互に結合している場合、隣接したシクロペンタジチオフェンジイル基(a)とベンゾチアジアゾールジイル基(b)とを一つの単量体単位−a−b−として本発明の単量体単位とみなすことができる。
【0034】
本発明の共役ブロック共重合体は、各ブロックを構成する共役重合体ブロックの溶解度パラメーターのうち、最大値の溶解度パラメーターを有する共役重合体ブロックAと最小値の溶解度パラメーターを有する共役重合体ブロックBとの差が0.6以上2.0以下のものである。この溶解度パラメーターの最大値と最小値との差は、0.6以上1.8以下であると好ましく、0.6以上1.6以下であるとさらに好ましい。
【0035】
この溶解度パラメーターの最大値と最小値との差を0.6以上とすることで共役ブロック共重合体がミクロ相分離することが可能となる。0.6未満の場合、それぞれのブロックの共役重合体ブロックの極性が近く、相分離し難くなる。また、溶解度パラメーターの最大値と最小値との差が2.0以下であることも重要である。溶解度パラメーターの最大値と最小値との差が2.0より大きいと、溶媒への溶解性が著しく低下してしまい、薄膜を得ることが困難となったり、共役ブロック共重合体がミセル構造で溶媒に溶解してしまい薄膜を作製した際、ミセル構造を保持したモルフォロジを形成してしまい理想とするミクロ相分離構造を形成できず、光電変換素子とした場合に高い変換効率が得られなかったりする場合がある。
【0036】
理想的なミクロ相分離構造とは、共役ブロック共重合体に含まれる2種以上のブロック成分が共連続構造であることを指す。これら相分離構造の1つのドメインに他のドメインより多くの電子受容性材料であるフラーレン誘導体を含有する点も合わせて重要である。このようなモルフォロジを形成することで再結合や失活することなく電荷を電極まで運ぶことができるため、短絡電流密度が大きくなり、高い性能の光電変換素子を作製することが可能となる。
【0037】
共役重合体ブロックの溶解度パラメーターは、その分子構造により制御することができる。溶解度パラメーターを制御する方法としては、例えばジブロック共重合体を考えた場合、それぞれ共役重合体ブロックの主鎖骨格を変更することで溶解度パラメーターを調節することが可能である。しかし、一般的に共役ポリマーの主鎖骨格は類似しているため、側鎖構造や側鎖密度で溶解度パラメーターを調整する方が好ましい。側鎖構造を変えて溶解度パラメーターを制御する場合、側鎖の炭素数、側鎖炭素に結合する原子の種類、側鎖に結合する官能基、いずれによっても制御可能であるが、共役重合体ブロックに結晶性を持たせるためには、側鎖が、フッ素原子若しくは水酸基で置換されていてもよいアルキル基またはアルコキシ基であることが重要である。ここで側鎖とは共役した主鎖から枝分かれしている炭素を有する部分をいう。尚、主鎖が複数の側鎖を有する共重合体ブロックの側鎖構造を変えて溶解度パラメーターを制御する場合、互いに異なる側鎖の構造を変えて溶解度パラメーターを制御可能である。ここで互いに異なる側鎖とは、それぞれの共重合体ブロックにおいて構造の異なる側鎖をいう。側鎖の炭素数は1個上であると好ましく、2個以上であるとより好ましく、3個以上であるとさらに好ましい。また側鎖の炭素数は20個以下であると好ましく、16個以下であるとより好ましい。ここで、側鎖の炭素数とは主鎖に結合している側鎖1本あたりの炭素数をいう。
【0038】
共役重合体ブロックが異なる種類の側鎖を複数有する場合、そのうちの少なくとも一つが、フッ素原子若しくは水酸基で置換されていてもよいアルキル基またはアルコキシ基であればよい。当該アルキル基またはアルコキシ基以外の側鎖の含有量は、溶解度パラメーターの差が調整できる範囲であれば特に制限しない。そのような他の側鎖としては、アシル基、エステル基などが挙げられる。
【0039】
側鎖であるフッ素原子若しくは水酸基で置換されていてもよいアルキル基またはアルコキシ基の炭素に結合する官能基の種類により溶解度パラメーターを制御することは好ましくない。例えば、エーテル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、ヨウ素原子などの官能基を導入するとポリマーのパッキングが阻害され、結晶化度が低下し、ホール移動がスムーズに起こらないという点で好ましくない。また、フッ素原子若しくは水酸基で置換されていてもよいアルキル基またはアルコキシ基に結合する官能基が嵩高い官能基の場合も結晶化を阻害しホール移動がスムーズに起こらないという点で好ましくない。
【0040】
一方、フッ素原子は、他のハロゲン原子と異なり結晶化を阻害せず、むしろ結晶化を促進する場合もあるため有用である。水酸基も水素結合による結晶化が期待できるため有用である。ただし、側鎖1本あたり水酸基が2個以上存在する場合、それら同士で強い水素結合を形成したり、1本のポリマー内の側鎖同士で水素結合することで、結晶化を阻害する場合があるため好ましくない。
【0041】
水酸基で置換された好ましいアルキル基とは、具体的に、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシイソプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシイソブチル基、ヒドロキシtert−ブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、4−ヒドロキシイソペンチル基、6−ヒドロキシヘキシル基、6−ヒドロキシ−2−エチルヘキシル基、7−ヒドロキシヘプチル基、8−ヒドロキシオクチル基、9−ヒドロキシノニル基、10−ヒドロキシデシル基、12−ヒドロキシドデシル基、16−ヒドロキシヘキサデシル基、8−ヒドロキシ−3,7−ジメチルオクチル基などの、ω−ヒドロキシアルキル基やω−位以外にヒドロキシ基を有するアルキル基が挙げられる。
【0042】
水酸基で置換された好ましいアルコキシ基とは、具体的に、ヒドロキシメトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、3−ヒドロキシプロポキシ基、3−ヒドロキシイソプロポキシ基、4−ヒドロキシブトキシ基、3−ヒドロキシブトキシ基、3−ヒドロキシイソブトキシ基、ヒドロキシtert−ブトキシ基、5−ヒドロキシペンチルオキシ基、4−ヒドロキシイソペンチルオキシ基、6−ヒドロキシヘキシルオキシ基、6−ヒドロキシ−2−エチルヘキシルオキシ基、7−ヒドロキシヘプチルオキシ基、8−ヒドロキシオクチルオキシ基、9−ヒドロキシノニルオキシ基、10−ヒドロキシオキシ基、12−ヒドロキシドデシルオキシ基、16−ヒドロキシヘキサデシルオキシ基、8−ヒドロキシ−3,7−ジメチルオクチルオキシ基などの、ω−ヒドロキシアルコキシ基やω−位以外にヒドロキシ基を有するアルコキシ基が挙げられる。
【0043】
側鎖の炭素数を用いて溶解度パラメーターの差を調整する場合、アルキル基またはアルコキシ基の炭素数が異なる共役重合体ブロックを組み合せることで所望の溶解度パラメーターの差に調整可能である。中でも、最小で炭素数8の側鎖を主に含有する共役重合体ブロックと、最大で炭素数6の側鎖を主に含有する共役重合体ブロックとの組み合せが好ましく、炭素数が8個以上20個以下の側鎖をを主に含有する共役重合体ブロックと、炭素数が3個以上6個以下の側鎖をを主に含有する共役重合体ブロックとの組み合わせがより好ましい。また、一方の共役重合体ブロックの側鎖の炭素数の総和と他方の共役重合体ブロックの側鎖の炭素数の総和との差がある一定以上あることも溶解度パラメーターの差を調整する観点から好ましい。側鎖の炭素数の総和の差は6以上16以下であることが好ましく、6以上10以下であることがさらに好ましい。
【0044】
共役ブロック共重合体を構成する共役重合体ブロックが複数の側鎖を有する場合、それぞれの単量体単位に含まれる側鎖のうち互いに異なる少なくとも1つの側鎖を比較したとき、一方の共役重合体ブロックが最小で炭素数8の側鎖を有し、他方の共役重合体ブロックが最大で炭素数6の側鎖を有することが好ましい。
【0045】
炭素数が少ない側鎖を有する共役重合体ブロックの場合、溶解度パラメーターの値を大きくすることが可能であるが、炭素数が少なすぎると共役ブロック共重合体の溶媒への溶解性が低下してしまい、好ましい有機薄膜が得られない。また炭素数が多い側鎖を有する共役重合体ブロックの場合、溶解度パラメーターの値を小さくすることが可能であるが、炭素数が20個以上と多いと、共役重合体ブロック鎖同士が近づき難く、共役重合体ブロック鎖間の電荷や励起子の移動が起こり難くなったり、光電変換に寄与しない成分が増加してしまい短絡電流密度が低下したりしてしまう。これら側鎖は、共役重合体ブロック中の側鎖すべてが、これら炭素数に限定された側鎖である必要はなく、他の側鎖と組み合せることも可能である。
【0046】
側鎖の炭素数を用いて共役重合体ブロックの溶解度パラメーターを調整する場合に好ましいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、3,7−ジメチルオクチル基、n−ドデシル基などが挙げられる。
【0047】
側鎖の炭素数を用いて共役重合体ブロックの溶解度パラメーターを調整する場合に好ましいアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシル基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ドデシルオキシ基などが挙げられる。
【0048】
側鎖炭素に結合する原子の種類によって溶解度パラメーターの差を調整する場合、異なる原子が側鎖炭素に結合した側鎖を有する共役重合体ブロックを組み合せることで、所望の溶解度パラメーターの差に調整が可能である。その場合、フッ素原子は最大のポーリングの電気陰性度を有するため特に有用である。フッ素原子を水素原子の替わりに炭素と結合させる場合、フッ素原子の数は側鎖の炭素数にも依存するが、炭素数が6個以上の場合はフッ素原子の数が3個以上を含有する側鎖が好ましく、5個以上を含有する側鎖がより好ましく、5個以上13個以下を含有する側鎖がさらに好ましい。重合体ブロックが複数の側鎖を有する場合、それぞれの単量体単位に含まれる側鎖のうち互いに異なる少なくとも1つの側鎖を比較したとき、一方の重合体ブロックがフッ素原子を3個以上含有する側鎖を有することが好ましい。
【0049】
このような側鎖を有する共役重合体ブロックとフッ素原子を含有しない側鎖を有する共役重合体ブロックとを組み合せることで所望の溶解度パラメーターの差の共役ブロック共重合体を得ることできる。この場合、フッ素原子を含有する側鎖を有する共役重合体ブロックの溶解度パラメーターは、フッ素原子の数が多いほど小さくなる。フッ素原子数が少ない側鎖を有する共役重合体ブロックの場合、溶解度パラメーターを大きくすることができるが、フッ素原子の数が少な過ぎると溶解度パラメーターの最大値と最小値の差が小さくなってしまう。
【0050】
一方、フッ素原子数が多い側鎖を有する共役重合体ブロックの場合、溶解度パラメーターを小さくすることができるが、フッ素原子の数が多すぎると溶解度パラメーターの最大値と最小値の差が大きくなりすぎてしまう。また、フッ素原子の数が多すぎると共役ブロック共重合体が溶媒へ溶解し難くなってしまう。これらフッ素原子を含有する側鎖は、共役重合体ブロック中の側鎖すべてがフッ素原子を含有する側鎖である必要はなく、他の側鎖と組み合せることも可能である。
【0051】
フッ素原子が側鎖炭素に結合した側鎖を設計して共役重合体ブロックの溶解度パラメーターを調整する場合、好ましいフッ素化アルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,2,1,1−ペンタフルオロエチル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、6,6,6−トリフルオロヘキシル基、5,5,6,6,6−ペンタフルオロヘキシル基、7,7,7−トリフルオロヘプチル基、4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロヘプチル基、8,8,8−トリフルオロオクチル基、7,7,8,8,8−ペンタフルオロオクチル基、5,5,6,6,7,7,8,8,8−ノナフルオロオクチル基などの、ω−トリフルオロメチルアルキル基やパーフルオロアルキル基が挙げられる。
【0052】
フッ素原子が側鎖炭素に結合した側鎖を設計して共役重合体ブロックの溶解度パラメーターを調整する場合、好ましいフッ素化アルコキシ基の具体例としては、トリフルオロメトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、2,2,2,1,1−ペンタフルオロエトキシ基、4,4,4−トリフルオロブトキシ基、6,6,6−トリフルオロヘキシルオキシ基、5,5,6,6,6−ペンタフルオロヘキシルオキシ基、7,7,7−トリフルオロヘプチルオキシ基、4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロヘプチルオキシ基、8,8,8−トリフルオロオクチルオキシ基、7,7,8,8,8−ペンタフルオロオクチルオキシ基、5,5,6,6,7,7,8,8,8−ノナフルオロオクチルオキシ基などの、ω−トリフルオロメチルアルコキシ基やパーフルオロアルコキシ基が挙げられる。
【0053】
溶解度パラメーターの測定方法や算出方法は幾つかあるが、本発明においては、Bicerano法を用いる。他の方法としては、例えば、Hildebrand法、Small法、Fedors法、Van Krevelen法、Hansen法、Hoy法、Ascadskii法、沖津法などが挙げられるが、これらの方法では複素環を有するポリマーの溶解度パラメーターが計算できなかったり、正確でなかったりするため使用することができない。Bicerano法による算出方法は、Jozef Biceranoが書いた、“Prediction of Polymer Properties, 3rd Ed.”(2002)、CRC Pressに記載されている。また、溶解度パラメーターの単位はMPa1/2である。Bicerano法を用いて溶解度パラメーターを算出する際、種々のコンピューターソフトウェアを用いることができる。コンピューターソフトウェアとしては、例えば、Scigress Explorer Professional 7.6.0.52 (富士通)やPolymer-Design Tools(DTW Associates, Inc)が挙げられる。Bicerano法にてデータのない元素を取り扱う場合、周期律表の同族元素であって周期番号1つ小さい元素で代用することとする。例えば、ケイ素のデータがない場合は炭素で代用した構造にて算出された溶解度パラメーターを使用する。
【0054】
本発明の共役ブロック共重合体は、共役ブロック共重合体の各ブロックを構成する共役重合体ブロックに関して溶解度パラメーターを算出する必要がある。共役ブロック共重合体の各ブロックを構成する共役重合体ブロックがランダム共重合体の場合、下記数式(A)に示すように、ランダム共重合体の溶解度パラメーターを計算する。
【0055】
[ランダム共重合体の溶解度パラメーター]=Σ(δi × φi)・・・(A)
δi=ランダム共重合体の成分であるi単位だけからなるポリマーの溶解度パラメーター
φi=ランダム共重合体の成分であるi単位の重量分率 (Σφi = 1)
【0056】
本発明の共役ブロック共重合体に含まれる2種類以上の共役重合体ブロックのそれぞれの質量比は、特に限定されないが、95:5〜5:95質量比であると好ましく、90:10〜10:90質量比であるとより好ましく、85:15〜15:85であるとさらに好ましい。共役ブロック共重合体に含まれる2種類以上の共役重合体ブロックのうち、より高い光電変換効率を与える共役重合体ブロックの含量が多い方が好ましい。
【0057】
共役ブロック共重合体の数平均分子量は、特に限定されないが、ホール移動度や力学的物性の観点から、600〜100万g/モルであると好ましく、5000〜50万g/モルであるとより好ましく、1万〜20万g/モルであると最も好ましい。ここで、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の分子量を意味する。
【0058】
共役ブロック共重合体は、ホール移動度の観点から、少なくとも片方のブロックが結晶性ポリマーであると好ましい。ここでいう結晶性ポリマーとは、ポリマーの一部が結晶化しているまたは液晶状態のポリマーである。結晶性ポリマーの判別は、X線回折法やDSCにより分析することができる。本発明では、芳香環π−πスタックのみX線回折法で観測されるような、弱いポリマーのパッキング状態は、結晶性があるものとして判断する。
【0059】
本発明の共役ブロック共重合体は、その共役ブロック共重合体中及びその各ブロックを構成する共役重合体ブロック中において、前記二価の複素環基以外の二価の基を共重合することができる。二価の複素環基以外の二価の基を共重合する場合、その共重合率は、共役ブロック共重合体に対して30質量%以下であると好ましく、20質量%以下であるとより好ましく、10質量%以下であるとさらに好ましい。共重合率が高すぎる場合、光電変換素子の性能が低下する場合がある。二価の複素環基以外の二価の基の具体例としては、アセチレン基及びアリーレン基が挙げられる。
【0060】
本発明の共役ブロック共重合体には、例示した共役重合体ブロック以外に共役ポリマーを含有していてもよい。その含有量は、モルフォロジ制御及び、モルフォロジを制御することで得られる光電変換素子の変換効率が高いという観点から、50質量%以下であると好ましく、30質量%以下であるとより好ましく、20質量%以下であるとさらに好ましい。本発明の共役ブロック共重合体以外の共役ポリマーとしては、本発明の共役ブロック共重合体の1つのブロックである構造と同じ共役ポリマーが好ましい。
【0061】
さらに共役ブロック共重合体は、2種類以上の共役重合体ブロックを含有していれば、他の非共役なポリマーブロックを含有していてもよい。非共役なポリマーブロックの含有量は光電変換素子の変換効率を低下させない範囲であれば特に制限されないが、共役ブロック共重合体全体の質量に対して50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、10質量%以下が最も好ましい。このような非共役重合体ブロックは本発明における溶解度パラメーターには関与しない。
【0062】
本発明の共役ブロック共重合体の製造方法の例として、各反応工程及び製造方法を詳細に説明する。
【0063】
共役ブロック共重合体を製造する第一の方法としては、各ブロックを構成する少なくとも2種類の共役重合体ブロック、例えば共役重合体ブロックA及び共役重合体ブロックBを別々に合成しておき、それらを連結する方法(以下、「連結法」と称することがある)がある。第二の方法としては、擬リビング重合により共役重合体ブロックA及び共役重合体ブロックBを逐次重合する方法(以下、「逐次重合法」と称することがある)がある。第三の方法としては、共役重合体ブロックA存在下に共役ブロックBを重合する方法(以下、「マクロイニシエーター法」と称することがある)がある。連結法、逐次重合法及びマクロイニシエーター法は、合成する共役ブロック共重合体によって最適な方法が使用できる。。
【0064】
連結法は、下記反応式(I)に示すように、共役重合体ブロックAを有する化合物A−Xと共役重合体ブロックBを有する化合物B−Mとを触媒存在下でカップリング反応を行うことにより製造することができる。
【化1】
【0065】
式(I)中、A、Bは共役重合体ブロック、Xはハロゲン原子、Mはボロン酸、ボロン酸エステル、−MgX、−ZnX、−SnR(ただしRは炭素数1〜4の直鎖アルキル基、Xは前記同様)を表す。
【0066】
共役重合体ブロックA、共役重合体ブロックBは、末端置換基が入れ替わっていてもよく、下記反応式(II)に示すように、共役重合体ブロックBを有する化合物B−Xと共役重合体ブロックAを有する化合物A−Mとを触媒存在下でカップリング反応を行うことにより製造することができる。
【化2】
【0067】
式(II)中、B、Aは共役重合体ブロック、Xはハロゲン原子、Mはボロン酸、ボロン酸エステル、−MgX、−ZnX、−SnR(ただしRは炭素数1〜4の直鎖アルキル基、Xは前記同様)を表す。
【0068】
下記反応式(III)に従い触媒の存在下で単量体であるMq1−Y−Mq1とMq2−Z−Mq2とを反応させ、いわゆるカップリング反応によって共役重合体ブロックAまたは共役重合体ブロックBを含む化合物A−Xまたは化合物B−Xを製造することができる。なお、Y及びMは本発明の共役ブロック共重合体の単量体単位を少なくとも一部を構成する複素環骨格を示す。
【化3】
【0069】
式(III)中、Mq1、Mq2は同一でなくそれぞれ独立してハロゲン原子、またはボロン酸、ボロン酸エステル、−MgX、−ZnX、−SnR(ただしRは炭素数1〜4の直鎖アルキル基、Xは前記同様)を表し、A、BはYとZの共重合体を表し、Mはボロン酸、ボロン酸エステル、−MgX、−ZnX、−SnRを表す。つまりMq1がハロゲン原子の場合、Mq2はボロン酸、ボロン酸エステル、−MgX、−ZnX、−SnR、逆にMq2がハロゲン原子の場合、Mq1はボロン酸、ボロン酸エステル、−MgX、−ZnX、−SnRとなる。
【0070】
共役重合体ブロックAまたは共役重合体ブロックBは、化合物Mq1−Y−Mq1と化合物Mq2−Z−Mq2と式Ar−Mで示される化合物とを用いてカップリング反応を行うことにより製造することも可能である。ただし、Arはアリール基、MはMまたはXを表し、Mはボロン酸、ボロン酸エステル、−MgX、−ZnX、−SnR(Rは炭素数1〜4のアルキル基)、Xはハロゲン原子を表す。
【0071】
こうすることで化合物A−X、化合物B−X、化合物A−M、化合物B−Mのように重合体ブロックA及び重合体ブロックBの片方の末端基のみに連結のための官能基を導入しやすくなる。
【0072】
化合物A−X、化合物B−Xの共役重合体ブロックAまたは共役重合体ブロックBの主鎖骨格がポリチオフェンの場合、逐次重合法で説明した擬リビング重合法によって共役重合体ブロックAまたは共役重合体ブロックBを製造することもできる。
【0073】
次に逐次重合法について詳細に説明する。逐次重合法は、特に共役重合体ブロックA及び共役重合体ブロックBの両方の主鎖骨格として、ポリチオフェンを用いる場合に有効な方法である。基本的な重合反応は以下に示す方法を用いて製造することができる。なお、共役重合体ブロックを製造する順番は共役重合体ブロックAの次に共役重合体ブロックBであってもよいし、その逆でもよく、目的とする共役ブロック共重合体により最適な順番が選択できる。
【0074】
不活性溶媒中で、下化学記式(IV)
【化4】
【0075】
((IV)式中、Wは置換基を有してもよい2価のチエニレン基、Xはハロゲン原子、2つのXは同一であっても異なっていてもよい)で示される単量体と、グリニャール試薬である下記化学式(V)
【化5】
【0076】
((V)式中、R’は炭素数1〜10アルキル基、Xはハロゲン原子)で示される有機マグネシウムハロゲン化合物との交換反応であるグリニャールメタセシス反応により、下記化学式(VI)
【化6】
【0077】
((VI)式中、Wは置換基を有してもよい2価のチエニレン基、Xはハロゲン原子、2つのXは同一または異なる)で示される有機マグネシウム化合物を得る。
【0078】
得られた有機マグネシウム化合物(VI)を、溶媒中において、金属錯体触媒の存在下で、いわゆるカップリング反応により、共役ブロック共重合体を得る。一連の反応を模式反応式(VII)に示す。
【化7】
【0079】
式(VII)中、得られる共役ブロック共重合体のWは、置換基を有してもよい2価のチエニレン基からなる共重合体である。
【0080】
次にマクロイニシエーター法について詳細に説明する。マクロイニシエーター法は、末端官能化した共役重合体ブロックAを共役重合体ブロックBの重合初期、または重合中期に共存させて共役重合体ブロックBの重合を行う手法である。なお、共役重合体ブロックを製造する順番は共役重合体ブロックA存在下に共役重合体ブロックBを重合してもよいし、その逆でもよく、目的とする共役ブロック共重合体により最適な順番が選択できる。
【0081】
下記反応式(VIII)に従い共役重合体ブロックAであるA−X及び触媒の存在下で単量体であるMq1−Y−Mq1とMq2−Z−Mq2とを反応させ、いわゆるカップリング反応によって共役重合体ブロックAの末端と共役重合体ブロックBの重合性単量体もしくは重合体ブロックBを重合中に結合させることで、重合後に本発明の共役ブロック共重合体を得ることができる。また、下記反応式(IX)に従い共役重合体ブロックAであるA−M及び触媒の存在下で単量体であるMq1−Y−Mq1とMq2−Z−Mq2とを反応させ、カップリング反応によって共役重合体ブロックAの末端と共役重合体ブロックBの重合性単量体もしくは重合体ブロックBを重合中に結合させることで、重合後に本発明の共役ブロック共重合体を得ることができる。
【化8】
【0082】
式(VIII)及び式(IX)中、Mq1、Mq2は同一でなくそれぞれ独立してハロゲン原子、またはボロン酸、ボロン酸エステル、−MgX、−ZnX、−SnR(ただしRは炭素数1〜4の直鎖アルキル基、Xは前記同様)を表し、A、BはYとZの共重合体を表し、Mはボロン酸、ボロン酸エステル、−MgX、−ZnX、−SnRを表す。つまりMq1がハロゲン原子の場合、Mq2はボロン酸、ボロン酸エステル、−MgX、−ZnX、−SnR、逆にMq2がハロゲン原子の場合、Mq1はボロン酸、ボロン酸エステル、−MgX、−ZnX、−SnRとなる。
【0083】
連結法、逐次重合法及びマクロイニシエーター法ともに触媒として遷移金属の錯体を用いる必要がある。通常、周期表(18族長周期型周期表)の3〜10族、中でも8〜10族に属する遷移金属の錯体が挙がられる。具体的には、公知のNi,Pd,Ti,Zr,V,Cr,Co,Fe等の錯体が挙げられる。中でも、Ni錯体やPd錯体がより好ましい。また、使用する錯体の配位子としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリt−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィンなどの単座ホスフィン配位子;ジフェニルホスフィノメタン(dppm)、1,2−ジフェニルホスフィノエタン(dppe)、1,3−ジフェニルホスフィノプロパン(dppp)、1,4−ジフェニルホスフノブタン(pddb)、1,3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン(dcpp)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、2,2−ジメチル−1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン等の二座ホスフィン配位子;テトラメチルエチレンジアミン、ビピリジン、アセトニトリル等の含窒素系配位子などが含有されていることが好ましい。
【0084】
錯体の使用量は、連結法、逐次重合法及びマクロイニシエーター法ともに製造する共役ブロック共重合体の種類によって異なるが、単量体に対して、0.001〜0.1モルであると好ましい。触媒が、多すぎると得られる重合体の分子量低下の原因となり、また経済的にも不利である。一方、少なすぎると、反応速度が遅くなり、安定した生産が困難になる。
【0085】
共役ブロック共重合体の製造に用いることができる溶媒は、製造する共役ブロック共重合体の種類によって使い分ける必要があるが、連結法、逐次重合法及びマクロイニシエーター法ともに一般的に市販されている溶媒を選択することができる。例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテルなどのエーテル系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式飽和炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化アルキル系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族ハロゲン化アリール系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、水ならびにこれらの混合物などが挙げられる。
【0086】
かかる有機溶媒の使用量としては製造する共役ブロック共重合体の単量体に対して1〜1000重量倍の範囲であることが好ましく、得られる連結体の溶解度や反応液の攪拌効率の観点からは、10重量倍以上であることが好ましく、反応速度の観点からは100重量倍以下であることが好ましい。
【0087】
製造する共役ブロック共重合体の種類によって重合温度は異なる。連結法、逐次重合法及びマクロイニシエーター法ともに通常−80℃〜200℃の範囲で実施される。反応系の圧力は特に限定されないが、0.1〜10気圧が好ましい。通常1気圧前後で反応を行なう。また、反応時間は、製造する重合体ブロックAと重合体ブロックBとによって異なるが、通常、20分〜100時間である。
【0088】
連結法、逐次重合法及びマクロイニシエーター法によって得られる共役ブロック共重合体は、例えば、再沈殿、加熱下での溶媒除去、減圧下での溶媒除去、水蒸気による溶媒の除去(スチームストリッピング)等、共役ブロック共重合体を溶液から単離する際の通常の操作によって、反応混合液から分離、取得することができる。得られた粗生成物はソックスレー抽出器を用いて一般的に市販されている溶媒を用いて洗浄または抽出することで精製することができる。
【0089】
例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテルなどとエーテル系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式飽和炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、エチルメチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化アルキル系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族ハロゲン化アリール系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、水ならびにこれらの混合物などが挙げられる。
【0090】
本発明の共役ブロック共重合体は、末端基として、ハロゲン原子、トリアルキルスズ基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基などのカップリング残基、またはそれらの原子もしくは基が脱離した水素原子を有していてもよく、さらにこれらの末端基が臭化ベンゼン等の芳香族ハロゲン化物や、芳香族ボロン酸化合物などからなる末端封止剤で置換された末端構造であってもよい。
【0091】
このようにして得られた共役ブロック共重合体は、電子受容性材料であるフラーレン誘導体と混合されることで、有機薄膜を形成する有機半導体材料である組成物として用いることができる。これらの共役ブロック共重合体は、組成物中に、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
本発明の組成物は、溶媒存在下で、少なくとも共役ブロック共重合体とフラーレン誘導体とが混合されているものである。この組成物は、例えば、光電変換素子の機能層として有用である。
【0093】
組成物における共役ブロック共重合体とフラーレン誘導体との割合は、共役ブロック共重合体100重量部に対して、フラーレン誘導体が10〜1000重量部であると好ましく、50〜500重量部であるとより好ましい。
【0094】
またこの組成物における必須成分である共役ブロック共重合体及びフラーレン誘導体の他に、非共役重合体、界面活性剤、1,8−ジヨードオクタンなどの高沸点溶剤、などの第3成分を含有していてもよい。この第3成分の含有量は、光電変換素子の性能の観点から、共役ブロック共重合体とフラーレン誘導体との総和の重量に対して、30質量%以下であると好ましく、10質量%以下であるとより好ましい。
【0095】
組成物に含有されるフラーレン誘導体としては、具体的に、C60、C70、C84及びその誘導体が挙げられる。フラーレン誘導体の具体的な構造例を下記化学式(イ)〜(ヌ)に示す。
【化9】
【0096】
共役ブロック共重合体及びフラーレン誘導体の混合方法は、特に限定されるものではない。共役ブロック共重合体及びフラーレン誘導体の混合方法として、例えば、所望の比率で溶媒に添加した後、加熱、撹拌、超音波照射などの方法を1種または複数種組み合わせて溶媒中に溶解・混合させる方法が挙げられる。
【0097】
共役ブロック共重合体及びフラーレン誘導体を混合する際に用いる溶媒としては、大部分が溶解する溶媒であれば特に限定されない。溶媒としては、具体的に、テトラヒドロフランなどのエーテル類、メチレンクロライド、クロロホルムなどのハロゲン溶媒、ベンゼン、トルエン、オルトキシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、ピリジンなどの芳香族系溶媒などが挙げられる。
【0098】
共役ブロック共重合体及びフラーレン誘導体を含有する組成物は、公知の印刷法や塗布法により有機薄膜を形成することができる。製膜手法として、具体的に、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、スロットダイコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法など、公知の手法を用いることができる。
【0099】
得られた有機薄膜は、有機トランジスタや光電変換素子として有用である。共役ブロック共重合体を含有する有機薄膜の膜厚は、目的とする用途により一概に定めることは困難であるが、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmであり、さらに好ましくは20nm〜300nmである。光電変換素子として用いた場合、膜厚が薄すぎると光が十分に吸収されず、逆に厚すぎるとキャリアが電極へ到達し難くなり、高い変換効率が得られない。
【0100】
本発明の組成物から製膜される有機薄膜を用いた光電変換素子について例を挙げて説明する。
【0101】
本発明の光電変換素子は、少なくとも2つの異種電極、つまり正極と負極との間に本発明の共役ブロック共重合体を用いて製膜した有機光電変換層を有するものである。
【0102】
光電変換素子の電極は、正極または負極のいずれかに光透過性を有することが好ましい。電極の光透過性は、有機光電変換層に入射光が到達して起電力が発生する程度であれば、特に限定されるものではない。電極の厚さは、光透過性や導電性を有する範囲であればよく、電極素材によって異なるが20nm〜300nmが好ましい。なお、一方の電極が光透過性を有する場合、もう一方の電極において導電性を有していれば必ずしも光透過性を有する必要はない。さらに、この電極の厚さは特に限定されるものではない。
【0103】
電極材料としては、一方の電極には仕事関数の大きな導電性素材、もう一方の電極には仕事関数の小さな導電性素材を使用することが好ましい。仕事関数の大きな導電性素材を用いた電極は正極となる。この仕事関数の大きな導電性素材としては金、白金、クロム、ニッケルなどの金属のほか、透明性を有するインジウム、スズなどの金属酸化物、複合金属酸化物(インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)など)が好ましく用いられる。ここで、正極に用いられる導電性素材は、有機光電変換層とオーミック接合するものであることが好ましい。さらに、後述する正孔輸送層を用いた場合においては、正極に用いられる導電性素材は正孔輸送層とオーミック接合するものであることが好ましい。
【0104】
仕事関数の小さな導電性素材を用いた電極は負極となるが、この仕事関数の小さな導電性素材としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属、具体的にはリチウム、マグネシウム、カルシウムが使用される。また、錫や銀、アルミニウムも好ましく用いられる。さらに、前記の金属からなる合金や前記の金属の積層体からなる電極も好ましく用いられる。
【0105】
また、負極と後述する電子輸送層との界面にフッ化リチウムやフッ化セシウムなどの金属フッ化物を導入することで、取り出し電流を向上させることも可能である。ここで、負極に用いられる導電性素材は、有機光電変換層とオーミック接合するものであることが好ましい。さらに、電子輸送層を用いた場合においては、負極に用いられる導電性素材は電子輸送層とオーミック接合するものであることが好ましい。
【0106】
光電変換素子は、通常、基材上に形成されるものである。この基板は、電極を形成し、有機光電変換層を形成する際に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、無アルカリガラス、石英ガラスなどの無機材料、アルミニウムなどの金属フィルム、またポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレン、エポキシ樹脂やフッ素系樹脂などの有機材料から任意の方法によって作製されたフィルムや板が使用可能である。不透明な基板を用いる場合には、反対の電極即ち、基板から遠い方の電極が透明または半透明でなければならない。基板の膜厚は特に限定されないが、通常1μm〜10mmの範囲である。
【0107】
また、前記基材の濡れ性、及び正極または負極の電極間に有機光電変換層を有する有機層と前記基材との界面密着性を向上させるために、紫外線オゾン処理、コロナ放電処理、プラズマ処理などの物理的な手段により、表面の洗浄や改質を施すことが好ましい。また、固体基材表面に、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、自己組織化単分子膜などの化学修飾を施す方法も同様に効果的である。
【0108】
光電変換素子は、必要に応じて正極と有機光電変換層の間に正孔輸送層を設けてもよい。正孔輸送層を形成する材料としては、ポリチオフェン系重合体、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体、ポリフルオレン系重合体などの導電性高分子や、フタロシアニン誘導体(HPc、CuPc、ZnPcなど)、ポルフィリン誘導体などのp型半導体特性を示す低分子有機化合物が好ましく用いられる。特にポリチオフェン系重合体であるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)やPEDOTにポリスチレンスルホネート(PSS)が添加されたものが好ましく用いられる。正孔輸送層は5nm〜600nmの厚さが好ましく、より好ましくは20nm〜300nmで
ある。
【0109】
光電変換素子は、必要に応じて負極と有機光電変換層の間に電子輸送層を設けてもよい。電子輸送層を形成する材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。また、バルクへテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。
【0110】
光電変換素子は、さらに無機層を有していてもよい。該無機層に含まれる材料としては、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ストロンチウム、酸化インジウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ガリウム、酸化ニッケル、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸ナトリウムなどの金属酸化物;ヨウ化銀、臭化銀、ヨウ化銅、臭化銅、フッ化リチウムなどの金属ハロゲン化物;硫化亜鉛、硫化チタン、硫化インジウム、硫化ビスマス、硫化カドミウム、硫化ジルコニウム、硫化タンタル、硫化モリブデン、硫化銀、硫化銅、硫化スズ、硫化タングステン、硫化アンチモンなどの金属硫化物;セレン化カドミウム、セレン化ジルコニウム、セレン化亜鉛、セレン化チタン、セレン化インジウム、セレン化タングステン、セレン化モリブデン、セレン化ビスマス、セレン化鉛などの金属セレン化物;テルル化カドミウム、テルル化タングステン、テルル化モリブデン、テルル化亜鉛、テルル化ビスマスなどの金属テルル化物;リン化亜鉛、リン化ガリウム、リン化インジウム、リン化カドミウムなどの金属リン化物;ガリウム砒素、銅−インジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物、シリコン、ゲルマニウムなどが挙げられ、また、これらの2種以上の混合物であってもよい。混合物としては、例えば酸化亜鉛と酸化スズとの混合物、及び酸化スズと酸化チタンとの混合物などが挙げられる。
【0111】
本発明の光電変換素子は、例えば以下の製造工程により得られる。ガラス上に正極となる電極が形成された基板上に、共役ブロック共重合体と電子受容性材料とで調製された組成物を、前記の製膜手法を用いて製膜した後乾燥して有機光電変換層を形成する。この有機光電変換層上に、負極となる電極を形成することで光電変換素子を製造することができる。
【0112】
本発明の光電変換素子は、光電変換機能、光整流機能(photo diode)などを利用した種々の光電変換デバイスへの応用が可能である。例えば、太陽電池など光電池、光センサ、光スイッチ、フォトトランジスタなど電子素子、光メモリなど光記録材に有用である。
【実施例】
【0113】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0114】
共役ブロック共重合体を構成する共役重合体ブロックの合成を重合例1〜8、及びそれを用いた本発明の共役ブロック共重合体の合成を実施例1〜8に示す。また、本発明の適用外を比較例1〜9に示す。
【0115】
(重合例1)
下記反応式(1)に従い共役重合体ブロックA1の合成を行った。なお、以下の反応式中、置換基であるエチルヘキシルをEtHexまたはHexEtと略記する。
【化10】
【0116】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに2,6−ジブロモ−4,4’−ビス(2−エチルヘキシル)−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン(1.50g,2.68mmol)、4,7−ビス(3,3,4,4−テトラメチル−2,5,1−ジオキサボロラン−1−イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール(1.04g,2.68mmol)、トルエン(50mL)、2M炭酸カリウム水溶液(25mL,50mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh))(61.9mg,53.5μmol)、aliquat336(2mg,4.95μmol)を加えた後に80℃で2時間攪拌した。その後、フェニルボロン酸ピナコールエステル(273mg,1.34mmol)を加え、80℃で18時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をメタノール(500mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、水(100mL)、メタノール(100mL)で洗浄し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、クロロホルム(200mL)で抽出した。得られた溶液をメタノール(2L)に注ぎ、析出した固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体として共役重合体ブロックA1を得た(1.04g,41%)。
【0117】
得られた共役重合体ブロックA1の理化学分析を行った。
H−NMR(核磁気共鳴)測定により、分子構造を同定した。
H−NMR(270MHz):δ=8.10−7.95(m、2H)、7.80−7.61(m、2H)、2.35−2.12(m、4H)、1.60−1.32(m、18H)、1.18−0.82(m、12H)
数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、何れも、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による測定に基づき、ポリスチレン換算値で求めた。ここでは、GPC装置として、東ソー株式会社製のHLC−8320GPCを用い、カラムとして、東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultiporeHZ−Mの2本を直列に繋いだものを用いた。これらの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の値を用いて、(Mw)/(Mn)により分散度(PDI)を求めた。
GPC(CHCl):Mn=19600g/mol、Mw=45500g/mol、PDI=2.32
この理化学分析結果は、前記反応式(1)に示される化学構造を支持する。
【0118】
(重合例2)
下記反応式(2)に従い共役重合体ブロックA2の合成を行った。
【化11】
【0119】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに2,6−ジブロモ−4,4’−ビス(2−エチルヘキシル)−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(1.66g,2.68mmol)、4,7−ビス(3,3,4,4−テトラメチル−2,5,1−ジオキサボロラン−1−イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール(1.04g,2.68mmol)、トルエン(50mL)、2M炭酸カリウム水溶液(25mL,50mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(61.9mg,53.5μmol)、aliquat336(2mg,4.95μmol)を加えた後に80℃で2時間攪拌した。その後、フェニルボロン酸ピナコールエステル(273mg,1.34mmol)を加え、80℃で18時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をメタノール(500mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、水(100mL)、メタノール(100mL)で洗浄し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、クロロホルム(200mL)で抽出した。得られた溶液をメタノール(2L)に注ぎ、析出した固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体として共役重合体ブロックA2を得た(1.03g,38%)。
【0120】
重合例1と同様に、得られた共役重合体ブロックA2の理化学分析を行った。
H−NMR(270MHz)、δ=8.20−7.95(m、2H)、7.90−7.12(m、2H)、2.34−2.10(m、4H)、1.59−1.33(m、18H)、1.19−0.81(m、12H)
GPC(CHCl):Mn=17500g/mol、Mw=42400g/mol、PDI=2.42
この理化学分析結果は、前記反応式(2)に示される化学構造を支持する。
【0121】
(重合例3)
下記反応式(3)に従い共役重合体ブロックA3の合成を行った。
【化12】
【0122】
充分に乾燥させアルゴン置換したナスフラスコAに、脱水及び過酸化物除去処理を行なったテトラヒドロフラン(THF)25mLと、2−ブロモ−5−ヨ−ド−3−ヘキシルチオフェン1.865g(5mmol)と、i−プロピルマグネシウムクロリドの2.0M溶液2.5mLを加えて、0℃で30分攪拌し、上記反応式中の化学式(a1)で示す有機マグネシウム化合物の溶液を合成した。
【0123】
乾燥させたアルゴン置換したナスフラスコBに、脱水及び過酸化物除去処理を行なったTHF25mLとNiCl(dppp)27mg(0.05mmol)を加えて35℃に加熱した後、有機マグネシウム化合物溶液(a1)を添加した。35℃で1.5時間加熱攪拌した後、5M塩酸50mLを加えて室温で1時間攪拌した。この反応液をクロロホルム450mLで抽出し、有機層を重曹水100mL、蒸留水100mLの順で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮乾固した。得られた黒紫色の固体を、クロロホルムの30mLに溶かし、メタノ−ルの300mLに再沈殿し、充分に乾燥したものを、分取用GPCカラムを用いて精製することにより共役重合体ブロックA3(690mg)を得た。
【0124】
なお、溶媒であるTHFは、和光純薬工業社製の脱水テトラヒドロフラン(安定剤不含)を、金属ナトリウム存在下蒸留精製を行なった後、和光純薬工業社製のモレキュラーシーブス5Aに一日以上接触させることで、精製を行った。また、重合体の精製には分取用のGPCカラムを用いてにて精製を行なった。用いた装置は、Japan Analytical Industry社製のRecycling Preparative HPLC LC−908を用いた。なお、カラムの種類は、日本分析工業社製のスチレン系ポリマーカラム 2H−40及び2.5H−40を2本直列に接続したものである。また、溶出溶媒はクロロホルムを用いた。
【0125】
重合例1と同様に、得られた共役重合体ブロックA3の理化学分析を行った。
H−NMR:δ=6.97(s、1H)、2.80(t、J=8.0Hz、2H)、1.89−1.27(m、10H)、0.91(t、J=6.8Hz、3H)
GPC(CHCl):Mn=21000g/mol、Mw=24150g/mol、PDI=1.15
この理化学分析結果は、前記反応式(3)に示される化学構造を支持する。
【0126】
(実施例1)
下記反応式(4)に従い共役ブロック共重合体1の合成を行った。なお、以下の実施例における共役ブロック共重合体の構造式または反応式中、「−b−」はブロック共重合、「−r−」または「−ran−」はランダム共重合であることを示す。
【化13】
【0127】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに共役重合体ブロックA1(0.80g)と共役重合体ブロックA3(0.80g)、トルエン(20mL)、2M炭酸カリウム水溶液(10mL,20mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(20.5mg,17.7μmol)、aliquat336(0.8mg,1.98μmol)を加えた後に80℃で24時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をメタノール(200mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、水(20mL)、メタノール(20mL)で洗浄し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(100mL)、ヘキサン(100mL)で洗浄した後に、クロロホルム(100mL)で抽出した。得られた溶液をメタノール(1L)に注ぎ、析出した固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体として共役ブロック共重合体1を得た(0.53g,33%)。
【0128】
重合例1と同様に、得られた共役ブロック共重合体1の理化学分析を行った。
H−NMR(270MHz):δ=8.12−7.94(m、2H)、7.80−7.61(m、2H)、6.97(s、1H)2.35−2.12(m、6H)、1.62−1.31(m、26H)、1.19−0.83(m、15H)
GPC(CHCl):Mn=41000g/mol、Mw=86100g/mol、PDI=2.10
この理化学分析結果は、前記反応式(4)に示される化学構造を支持する。
【0129】
(実施例2)
下記反応式(5)に従い共役ブロック共重合体2の合成を行った。
【化14】
【0130】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに共役重合体ブロックA2(0.80g)と共役重合体ブロックA3(0.80g)、トルエン(20mL)、2M炭酸カリウム水溶液(10mL,20mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(20.5mg,17.7μmol)、aliquat336(0.8mg,1.98μmol)を加えた後に80℃で24時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をメタノール(200mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、水(20mL)、メタノール(20mL)で洗浄し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(100mL)、ヘキサン(100mL)で洗浄した後に、クロロホルム(100mL)で抽出した。得られた溶液をメタノール(1L)に注ぎ、析出した固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体として共役ブロック共重合体2を得た(0.53g,33%)。
【0131】
重合例1と同様に、得られた共役ブロック共重合体2の理化学分析を行った。
H−NMR(270MHz):δ=8.21−7.94(m、2H)、7.92−7.13(m、2H)、6.97(s、1H)、2.35−2.11(m、6H)、1.61−1.31(m、26H)、1.19−0.83(m、15H)
GPC(CHCl):Mn=41000g/mol、Mw=86100g/mol、PDI=2.10
この理化学分析結果は、前記反応式(5)に示される化学構造を支持する。
【0132】
(重合例4)
下記反応式(6)に従い共役重合体ブロックA4の合成を行った。
【化15】
【0133】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに2,6−ジブロモ−4,4’−ビス(2−エチルヘキシル)−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン(1.50g,2.68mmol)、4,7−ビス(3,3,4,4−テトラメチル−2,5,1−ジオキサボロラン−1−イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール(1.04g,2.68mmol)、トルエン(50mL)、2M炭酸カリウム水溶液(25mL,50mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(61.9mg,53.5μmol)、aliquat336(2mg,4.95μmol)を加えた後に80℃で2時間攪拌した。その後、フェニルブロマイド(210mg,1.34mmol)を加え、80℃で18時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をメタノール(500mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、水(100mL)、メタノール(100mL)で洗浄し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、クロロホルム(200mL)で抽出した。得られた溶液をメタノール(2L)に注ぎ、析出した固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体として共役重合体ブロックA4を得た(1.06,42%)。
【0134】
重合例1と同様に、得られた共役重合体ブロックA4の理化学分析を行った。
H−NMR(270MHz):δ=8.10−7.96(m、2H)、7.81−7.61(m、2H)、2.35−2.13(m、4H)、1.59−1.32(m、18H)、1.18−0.81(m、12H)
GPC(CHCl):Mn=20100g/mol、Mw=44300g/mol、PDI=2.20
この理化学分析結果は、前記反応式(6)に示される化学構造を支持する。
【0135】
(重合例5)
下記反応式(7)に従い共役重合体ブロックA5の合成を行った。
【化16】
【0136】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに2,6−ジブロモ−4,4’−ジヘキサデシルシクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン(2.05g,2.68mmol)、4,7−ビス(3,3,4,4−テトラメチル−2,5,1−ジオキサボロラン−1−イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール(1.04g,2.68mmol)、トルエン(50mL)、2M炭酸カリウム水溶液(25mL,50mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(61.9mg,53.5μmol)、aliquat336(2mg,4.95μmol)を加えた後に80℃で2時間攪拌した。その後、フェニルボロン酸ピナコールエステル(273mg,1.34mmol)を加え、80℃で18時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をメタノール(500mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、水(100mL)、メタノール(100mL)で洗浄し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、クロロホルム(200mL)で抽出した。得られた溶液をメタノール(2L)に注ぎ、析出した固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体として共役重合体ブロックA5を得た(1.11g,36%)。
【0137】
重合例1と同様に、得られた共役重合体ブロックA5の理化学分析を行った。
H−NMR(270MHz):δ=8.13−7.95(m、2H)、7.82−7.35(m、2H)、3.04−2.89(m、4H)、2.34−2.13(m、8H)、1.55−1.42(m、12H)、1.35−1.09(m、36H)、0.82(m、6H)
GPC(CHCl):Mn=18900g/mol、Mw=37200g/mol、PDI=1.97
この理化学分析結果は、前記反応式(7)に示される化学構造を支持する。
【0138】
(重合例6)
下記反応式(8)に従い共役重合体ブロックA6の合成を行った。
【化17】
【0139】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに2,6−ジブロモ−4,4’−ビス(4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロヘプチル)−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン(2.29g,2.68mmol)、4,7−ビス(3,3,4,4−テトラメチル−2,5,1−ジオキサボロラン−1−イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール(1.04g,2.68mmol)、トルエン(50mL)、2M炭酸カリウム水溶液(25mL,50mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(61.9mg,53.5μmol)、aliquat336(2mg,4.95μmol)を加えた後に80℃で2時間攪拌した。その後、フェニルボロン酸ピナコールエステル(273mg,1.34mmol)を加え、80℃で18時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をメタノール(500mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、水(100mL)、メタノール(100mL)で洗浄し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、クロロホルム(200mL)で抽出した。得られた溶液をメタノール(2L)に注ぎ、析出した固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体として共役重合体ブロックA6を得た(1.20g,43%)。
【0140】
重合例1と同様に、得られた共役重合体ブロックA6の理化学分析を行った。
H−NMR(270MHz):δ=8.12−7.97(m、2H)、7.90−7.32(m、2H)、2.75(t、J=7.56Hz、4H)、2.31−1.92(m、8H)
GPC(CHCl):Mn=19200g/mol、Mw=42700g/mol、PDI=2.22
この理化学分析結果は、前記反応式(8)に示される化学構造を支持する。
【0141】
(重合例7)
下記反応式(9)に従い共役重合体ブロックA7の合成を行った。
【化18】
【0142】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに2,6−ジブロモ−4,4’−ビス(6,6,6−トリフルオロヘキシル)−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン(1.64g,2.68mmol)、4,7−ビス(3,3,4,4−テトラメチル−2,5,1−ジオキサボロラン−1−イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール(1.04g,2.68mmol)、トルエン(50mL)、2M炭酸カリウム水溶液(25mL,50mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(61.9mg,53.5μmol)、aliquat336(2mg,4.95μmol)を加えた後に80℃で2時間攪拌した。その後、フェニルボロン酸ピナコールエステル(273mg,1.34mmol)を加え、80℃で18時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をメタノール(500mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、水(100mL)、メタノール(100mL)で洗浄し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、クロロホルム(200mL)で抽出した。得られた溶液をメタノール(2L)に注ぎ、析出した固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体として共役重合体ブロックA7を得た(1.18g,44%)。
【0143】
重合例1と同様に、得られた共役重合体ブロックA7の理化学分析を行った。
H−NMR(270MHz):δ=8.12−7.97(m、2H)、7.90−7.32(m、2H)、2.75(t、J=7.56Hz、4H)、2.31−1.92(m、16H)
GPC(CHCl):Mn=20600g/mol、Mw=46000g/mol、PDI=2.23
この理化学分析結果は、前記反応式(9)に示される化学構造を支持する。
【0144】
(実施例3)
下記反応式(10)に従い共役ブロック共重合体3の合成を行った。
【化19】
【0145】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに共役重合体ブロックA4(0.80g)と共役重合体ブロックA5(0.80g)、トルエン(20mL)、2M炭酸カリウム水溶液(10mL,20mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(20.5mg,17.7μmol)、aliquat336(0.8mg,1.98μmol)を加えた後に80℃で24時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をメタノール(200mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、水(20mL)、メタノール(20mL)で洗浄し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(100mL)、ヘキサン(100mL)で洗浄した後に、クロロホルム(100mL)で抽出した。得られた溶液をメタノール(1L)に注ぎ、析出した固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体として共役ブロック共重合体3を得た(0.58g,36%)。
【0146】
重合例1と同様に、得られた共役ブロック共重合体3の理化学分析を行った。
H−NMR(270MHz):δ=8.13−7.94(m、4H)、7.82−7.35(m、4H)、3.04−2.90(m、4H)2.35−2.12(m、12H)、1.60−1.30(m、30H)、1.35−1.20(m、36H)、1.18−0.82(m、18H)
GPC(CHCl):Mn=39600g/mol、Mw=83700g/mol、PDI=2.11
この理化学分析結果は、前記反応式(10)に示される化学構造を支持する。
【0147】
(実施例4)
下記反応式(11)に従い共役ブロック共重合体4の合成を行った。
【化20】
【0148】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに重合体ブロックA4(0.80g)と重合体ブロックA6で示されるポリマー(0.80g)、トルエン(20mL)、2M炭酸カリウム水溶液(10mL,20mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(20.5mg,17.7μmol)、aliquat336(0.8mg,1.98μmol)を加えた後に80℃で24時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をメタノール(200mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、水(20mL)、メタノール(20mL)で洗浄し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(100mL)、ヘキサン(100mL)で洗浄した後に、クロロホルム(100mL)で抽出した。得られた溶液をメタノール(1L)に注ぎ、析出した固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体として共役ブロック共重合体4を得た(0.67g,42%)。
【0149】
重合例1と同様に、得られた共役ブロック共重合体4の理化学分析を行った。
H−NMR(270MHz):δ=8.12−7.96(m、4H)、7.85−7.32(m、4H)、2.74(t、J=7.58Hz、4H)、2.35−1.31(m、30H)、1.19−0.82(m、12H)
GPC(CHCl):Mn=40200g/mol、Mw=86100g/mol、PDI=2.14
この理化学分析結果は、前記反応式(11)に示される化学構造を支持する。
【0150】
(実施例5)
下記反応式(12)に従い共役ブロック共重合体5の合成を行った。
【化21】
【0151】
充分に乾燥させアルゴン置換したナスフラスコAに、脱水及び過酸化物除去処理を行なったTHF20mLと、2−ブロモ−5−ヨ−ド−3−ヘキシルチオフェン1.512g(4.05mmol)と、i−プロピルマグネシウムクロリドの2.0M溶液2mLを加えて、0℃で30分攪拌し、有機マグネシウム化合物溶液(a1−1)を合成した。別の充分に乾燥させアルゴン置換したナスフラスコBで、脱水及び過酸化物除去処理を行なったTHF5mLと2,5−ジブロモ−3−[6−(2−テトラヒドロピラニル)オキシヘキシル]チオフェン0.403g(0.95mmol)とt−ブチルマグネシウムクロリドの1.0M溶液0.95mLを加えて、60℃で2時間攪拌し、有機マグネシウム化合物溶液(a1−2)を合成した。
【0152】
充分に乾燥させ、アルゴン置換したナスフラスコCに、脱水及び過酸化物除去処理を行なったTHF25mLとNiCl(dppp)27mg(0.05mmol)を加えて35℃に加熱した後、先に調製した有機マグネシウム化合物溶液(a1−1)の70%を添加し、35℃で1.5時間加熱攪拌した。次いで、残りの有機マグネシウム化合物溶液(a1−1)及び有機マグネシウム化合物溶液(a1−2)を添加し、35℃で2時間反応させた。反応終了後、t−ブチルマグネシウムクロリドの1.0M
THF溶液2mLを加え35℃にて1時間攪拌し、次いで5M塩酸30mLを加えて室温で1時間攪拌した。この反応液をクロロホルム450mLで抽出し、有機層を重曹水100mL、蒸留水100mLの順で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮乾固した。得られた黒紫色の固体を、クロロホルムの30mLに溶かし、メタノ−ルの300mLに再沈殿し、充分に乾燥したものを、重合例3と同様に分取用GPCカラムを用いて精製することにより共役ブロック共重合体5(650mg)を得た。
【0153】
得られた共役ブロック共重合体5の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分散度(PDI)を重合例1と同様に求めた。
GPC(CHCl):Mn=20,800、Mw=23,400、PDI=1.13
【0154】
(実施例6)
下記反応式(13)に従い共役ブロック共重合体6の合成を行った。
【化22】
【0155】
充分に乾燥させアルゴン置換したナスフラスコAに、脱水及び過酸化物除去処理を行なったTHF21mLと、2−ブロモ−5−ヨ−ド−3−ヘキシルチオフェン1.573g(4.2mmol)と、i−プロピルマグネシウムクロリドの2.0M溶液2.1mLを加えて、0℃で30分攪拌し、有機マグネシウム化合物溶液(a2−1)を合成した。別の充分に乾燥させアルゴン置換したナスフラスコBで、脱水及び過酸化物除去処理を行なったTHF4mLと2,5−ジブロモ−3−(6,6,6−トリフルオロヘキシル)チオフェン0.393g(0.8mmol)とt−ブチルマグネシウムクロリドの1.0M溶液0.8mLを加えて、60℃で2時間攪拌し、有機マグネシウム化合物溶液(a2−2)を合成した。
充分に乾燥させ、アルゴン置換したナスフラスコCに、脱水及び過酸化物除去処理を行なったTHF25mLとNiCl(dppp)27mg(0.05mmol)を加えて35℃に加熱した後、先に調製した有機マグネシウム化合物溶液(a2−1)を添加し、35℃で1.5時間加熱攪拌した。次いで、有機マグネシウム化合物溶液(a2−2)を添加し、35℃で2時間反応させた。反応終了後、t−ブチルマグネシウムクロリドの1.0M
THF溶液2mLを加え35℃にて1時間攪拌し、次いで5M塩酸30mLを加えて室温で1時間攪拌した。この反応液をクロロホルム450mLで抽出し、有機層を重曹水100mL、蒸留水100mLの順で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮乾固した。得られた黒紫色の固体を、クロロホルムの30mLに溶かし、メタノ−ルの300mLに再沈殿し、充分に乾燥したものを、重合例3と同様に分取用GPCカラムを用いて精製することにより共役ブロック共重合体6(699mg)を得た。
【0156】
得られた共役ブロック共重合体6の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分散度(PDI)を重合例1と同様に求めた。
GPC(CHCl):Mn=21,100、Mw=25,100、PDI=1.19
(重合例8)
下記反応式(14)に従い共役重合体ブロックA8の合成を行った。なお、以降の反応式中、置換基である3−ヘプチルを3−HepまたはHep−3と略記する。また、以降の反応式中、置換基であるメチルをMeと略記する。
【化23】
【0157】
窒素雰囲気下、50mlのナスフラスコに共役重合体ブロックA8を構成する単量体である2,6−ビス(トリメチルスズ)−4,8−ジドデシルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(0.64g,0.75mmol)及び1−(4,6−ジブロモチエノ[3,4−b]チオフェン−2−イル)−2−エチルヘキサン−1−オン(0.32g,0.75mmol)と、DMF(6.2mL)、トルエン(25mL)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(9.2mg、7.8μmol)を加え、115℃で1時間30分加熱した。次に、リンカー化合物として2,5−ジブロモチオフェン(1.84g,7.6mmol)を加え、115℃で16時間加熱した。反応終了後、反応溶液を濃縮し、メタノール(500mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(200ml)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、クロロホルム(200mL)で抽出した。有機層を濃縮乾固し、得られた黒紫色の固体を、クロロホルム(30mL)に溶解させ、メタノール(300mL)で再沈殿した。
【0158】
得られた共役重合体A8の精製には分取用のGPCカラムを用いて精製を行なった。精製用の装置は、Japan Analytical Industry(株)製のRecycling Preparative HPLC LC−908を用いた。なお、カラムの種類は、日本分析工業(株)製のスチレン系ポリマーカラム 2H−40及び2.5H−40を2本直列に接続したものである。また、カラム及びインジェクターは145℃とし、溶出溶媒はクロロホルムを用いた。
【0159】
数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、何れも、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による測定に基づき、ポリスチレン換算値で求めた。
ここでは、いずれもGPC装置として、Waters製のGPC/V2000を用い、カラムとして、昭和電工製のShodex AT−G806MSの2本を直列に繋いだものを用いた。また、カラム及びインジェクターは145℃とし、溶出溶媒として、o−ジクロロベンゼンを用いた。
【0160】
得られた共役重合体ブロックA8(0.51g,86%)の重量平均分子量(Mw)は33,100、数平均分子量(Mn)は14,600、多分散度は2.27であった。
1H NMR (270MHz,CDCl3): δ =7.60‐7.30 (br、 3H),3.30‐3.00 (Br、 5H),2.00‐1.10 (br、 52H),1.00‐0.70 (br、12H)
(実施例7)
下記反応式(15)に従い共役ブロック共重合体7の合成を行った。
【化24】
【0161】
アルゴン雰囲気下、5mLフラスコに共役重合体ブロックA8(160.0mg,0.12mol)と、重合体ブロックBを構成する単量体として2,6−ビス(トリメチルスズ)−4,8−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(113.0mg,0.16mmol)、2,6−ビス(トリメチルスズ)−4,8−ジプロピルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(40.9mg,0.07mmol)および1−(4,6−ジブロモチエノ[3,4−b]チオフェン−2−イル)−2−エチルヘキサン−1−オン(86.0mg,0.20mmol)を加え、DMF(0.3mL)と、トルエン(1.4mL)と、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(3.4mg,2.98μmol)とを加え、容器内をアルゴンガスで20分間バブリングした後に、110℃で10時間加熱した。反応終了後、反応溶液をメタノール(500mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、クロロホルム(200mL)で抽出した。得られた溶液をメタノール(300mL)に注ぎ、析出した固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体として共役ブロック共重合体7(221.0mg,75.4%)を得た。前記重合例8と同様の方法及び条件で、得られた共役ブロック共重合体7の精製を行った。
前記重合例8と同様の方法及び条件で、得られた共役ブロック共重合体7の理化学分析を行った。以下の理化学分析結果は、前記反応式に示される化学構造を支持する。
H−NMR(270MHz,CDCl):δ=7.60−7.30(br,3H)、4.40−4.00(br,4H)、3.30−3.00(Br,4H)、2.00−0.60(br,51H)
GPC(CHCl):Mn=28800g/モル、Mw=86400g/モル、PDI=2.99
(実施例8)
下記反応式(16)に従い共役ブロック共重合体8の合成を行った。
【化25】
【0162】
共役重合体ブロックA8(0.59g,0.75mmol)、重合体ブロックBを構成する単量体として2,6−ビス(トリメチルスズ)−4,8−ビス(5−(2−エチルヘキシル)チオフェンー2−イル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(0.68g,0.75mmol)および1−(4,6−ジブロモチエノ[3,4−b]チオフェン−2−イル)−2−エチルヘキサン−1−オン(0.32g、0.75mmol)を用いた以外は実施例7と同様の方法を用いて共役ブロック共重合体8を得た(0.48g,76%)。
【0163】
前記重合例8と同様の方法及び条件で、得られた共役ブロック共重合体8の理化学分析を行った。以下の理化学分析結果は、前記反応式に示される化学構造を支持する。
1H−NMR (270MHz, CDCl): δ=7.60‐7.30 (br, 8H),6.95−6.85(br,2H)、3.30‐3.00 (br, 6H)、2.85−2.75(Br,4H)、2.00‐0.60 (br, 104H)
GPC(CHCl):Mn=27,500g/モル、Mw=67,600g/モル、PDI=2.46
【0164】
(比較例1)
充分乾燥させたガラス製ナスフラスコAを充分にアルゴン置換した後、THF45質量部と重合触媒のNiCl2(dppp)の0.054質量部を加えた。別の乾燥したナスフラスコBに、THF29質量部と、2−ブロモー5−ヨード3−ヘキシルチオフェンの2.8質量部と、i−プロピルマグニシウムブロマイドの2.0M溶液の3.5質量部を加えて、0度で30分攪拌した。その後、反応液をナスフラスコAに加え、35℃で90分間かけて重合を行なった。その後、別の乾燥したナスフラスコCで、THF16質量部と2−ブロモー5−ヨードー3−(2−エチル)ヘキシルチオフェンの1.4質量部と、i−プロピルマグニシウムブロマイドの2.0M溶液の1.7質量部を加えて、0℃30分反応させた溶液をナスフラスコAに加え、7時間反応した。反応後、t−ブチルマグネシウムクロライドの1.0M THF溶液の4質量部を加え、1時間攪拌し、さらに5Mの塩酸の100質量部を加え、1時間攪拌し、重合を停止した。その後、クロロホルムの900質量部で抽出し、重曹水の200質量部、蒸留水の200質量部で洗浄し、濃縮乾固した。得られた黒紫色の固体を、クロロホルムの56質量部に溶かし、アセトンの600質量部に再沈殿後、充分に乾燥して共役ブロック共重合体C1[ポリマー名:ポリ(3−ヘキシルチオフェン−ブロック−3−(2−エチルヘキシル)チオフェン)](P1)を得た。
【0165】
重合例1と同様のGPC測定により、得られた共役ブロック共重合体C1の重量平均分子量は21,600、数平均分子量は17,900であった。ポリ(3−ヘキシルチオフェン)ブロックの含量は79mol%であった。
【0166】
(比較例2)
下記反応式(17)に従い共役ブロック共重合体C2の合成を行った。
【化26】
【0167】
充分に乾燥させアルゴン置換したナスフラスコAに、脱水及び過酸化物除去処理を行なったTHF21mLと、2−ブロモ−5−ヨ−ド−3−ヘキシルチオフェン1.573g(4.2mmol)と、i−プロピルマグネシウムクロリドの2.0M溶液2.1mLを加えて、0℃で30分攪拌し、有機マグネシウム化合物溶液(a3−1)を合成した。別の充分に乾燥させアルゴン置換したナスフラスコBで、脱水及び過酸化物除去処理を行なったTHF4mLと2,5−ジブロモ−3−(4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロヘプチル)チオフェン0.393g(0.8mmol)とt−ブチルマグネシウムクロリドの1.0M溶液0.8mLを加えて、60℃で2時間攪拌し、有機マグネシウム化合物溶液(a3−2)を合成した。
【0168】
充分に乾燥させ、アルゴン置換したナスフラスコCに、脱水及び過酸化物除去処理を行なったTHF25mLとNiCl(dppp)27mg(0.05mmol)を加えて35℃に加熱した後、先に調製した有機マグネシウム化合物溶液(a3−1)を添加し、35℃で1.5時間加熱攪拌した。次いで、有機マグネシウム化合物溶液(a3−2)を添加し、35℃で2時間反応させた。反応終了後、t−ブチルマグネシウムクロリドの1.0M
THF溶液2mLを加え35℃にて1時間攪拌し、次いで5M塩酸30mLを加えて室温で1時間攪拌した。この反応液をクロロホルム450mLで抽出し、有機層を重曹水100mL、蒸留水100mLの順で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮乾固した。得られた黒紫色の固体を、クロロホルムの30mLに溶かし、メタノ−ルの300mLに再沈殿し、充分に乾燥したものを、重合例3と同様に分取用GPCカラムを用いて精製することにより共役ブロック共重合体C2(721mg)を得た。
【0169】
重合例1と同様のGPC測定により、得られた共役ブロック共重合体C2の重量平均分子量(Mw)は23,400、数平均分子量(Mn)は20,800、分散度(Mw/Mn)は1.13であった。
【0170】
(比較例3)
3−ヘキシルチオフェンと3−フェノキシメチルチオフェンとのモル比が1:1のジブロック共重合体を合成し、比較例3の共役ブロック共重合体C3とした。共役ブロック共重合体C3の合成の詳細な手順は非特許文献3に従った。得られた共役ブロック共重合体C3の重量平均分子量(Mw)は22,500、数平均分子量(Mn)は19,800、分散度(Mw/Mn)は1.14であった。
【0171】
(比較例4)
3−ヘキシルチオフェンと3−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]メチルチオフェンとのモル比が1:1のジブロック共重合体を合成し、比較例4の共役ブロック共重合体C4とした。共役ブロック共重合体C4の合成の詳細な手順は非特許文献1に従った。得られた共役ブロック共重合体C4の重量平均分子量(Mw)は25,100、数平均分子量(Mn)は20,200、分散度(Mw/Mn)は1.24であった。
【0172】
(比較例5)
3−ヘキシルチオフェンとスチレンとのモル比が1:1のジブロック共重合体を合成し、比較例5の非共役ブロック共重合体C5とした。非共役ブロック共重合体C5の合成の詳細な手順は非特許文献2に従った。得られた非共役ブロック共重合体C5の重量平均分子量(Mw)は24,000、数平均分子量(Mn)は16,900、分散度(Mw/Mn)は1.42であった。
【0173】
(比較例6)
下記反応式(18)に従い共役ブロック共重合体C6の合成を行った。
【化27】
【0174】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに共役重合体ブロックA4(0.80g)と共役重合体ブロックA7で示されるポリマー(0.80g)、トルエン(20mL)、2M炭酸カリウム水溶液(10mL,20mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(20.5mg,17.7μmol)、aliquat336(0.8mg,1.98μmol)を加えた後に80℃で24時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をメタノール(200mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、水(20mL)、メタノール(20mL)で洗浄し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(100mL)、ヘキサン(100mL)で洗浄した後に、クロロホルム(100mL)で抽出した。得られた溶液をメタノール(1L)に注ぎ、析出した固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体として共役ブロック共重合体C6を得た(0.67g,42%)。
【0175】
重合例1と同様に、得られた共役ブロック共重合体C6の理化学分析を行った。
H−NMR(270MHz):δ=8.12−7.96(m、4H)、7.85−7.32(m、4H)、2.74(t、J=7.58Hz、4H)、2.35−1.31(m、38H)、(m、12H)
GPC(CHCl):Mn=36000g/mol、Mw=80900g/mol、PDI=2.25
この理化学分析結果は、前記反応式(14)に示される化学構造を支持する。
【0176】
(比較例7)
共役重合体ブロックA1を比較例7の共役ポリマーC7とした。
【0177】
(比較例8)
共役重合体ブロックA3を比較例8の共役ポリマーC8とした。
【0178】
(比較例9)
下記反応式(19)に従い共役ポリマーC9の合成を行った。
【化28】
【0179】
窒素雰囲気下、50mlのナスフラスコに共役ポリマーC9を構成する単量体である2,6−ビス(トリメチルスズ)−4,8−ジプロピルベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(0.45g,0.75mmol)及び1−(4,6−ジブロモチエノ[3,4−b]チオフェン−2−イル)−2−エチルヘキサン−1−オン(0.32g,0.75mmol)と、DMF(6.2mL)、クロロベンゼン(25mL)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(9.2mg、7.8μmol)を加え、135℃で1時間30分加熱した。次に、末端封止剤として2,5−ジブロモチオフェン(1.84g,7.6mmol)を加え、115℃で16時間加熱した。反応終了後、反応溶液を濃縮し、メタノール(500mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(200ml)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、クロロベンゼン(200mL)で抽出した。有機層を濃縮乾固し、得られた黒紫色の固体を、クロロベンゼン(30mL)に溶解させ、メタノール(300mL)で再沈殿した。
前記重合例8と同様の方法及び条件で、得られた共役ポリマーC9(0.31g,77%)の理化学分析を行った。以下の理化学分析結果は、前記反応式に示される化学構造を支持する。
1H NMR (270MHz,CDCl3): δ =7.60‐7.30 (br、 3H),3.30‐3.00 (Br、 5H),2.00‐1.10 (br、 12H),1.00‐0.70 (br、12H)
GPC(CHCl):Mn=10,400g/モル、Mw=24,400g/モル、PDI=2.34
【0180】
(比較例10)
重合例8で得た共役重合体ブロックA8と比較例9で得た共役ポリマーC9とを50:50の重量分率にて混合したポリマーブレンドD1を作製した。
【0181】
(共役ブロック共重合体と電子受容性材料の混合溶液の製造)
実施例1で得られた共役ブロック共重合体1を16.0mgと電子受容性材料としてPCBM(フロンティアカーボン社製E100H)を12.8mgと溶媒としてクロロベンゼン1mLとを40℃にて6時間かけて混合した。その後、室温20℃に冷却し、孔径0.45μmのPTFEフィルターで濾過して共役ブロック共重合体とPC61BMを含む溶液を製造した。
【0182】
実施例2、5、6及び比較例1〜5、8により得られた各重合体についても同じ方法により、PC61BMを含む溶液を製造した。
【0183】
実施例3、4及び比較例6、7により得られた各重合体については重合体を5.0mgと電子受容性材料としてPC61BM(フロンティアカーボン社製E100H)を20.0mgとを使用した以外は共役ブロック共重合体1と同じ方法により、重合体とPC61BMを含む溶液を製造した。
【0184】
実施例7、8及び比較例9により得られた各重合体、及び比較例10より得られたポリマーブレンドD1については重合体を10.0mgと電子受容性材料としてPC71BM(フロンティアカーボン社製E110)を15.0mg混合した粉末に、2.5%の体積分率にて1,8−ジヨードオクタンを混合したクロロベンゼン1mLを溶媒として添加し100℃にて6時間かけて混合した。その後、室温20℃に冷却し、孔径1.00μmのPTFEフィルターで濾過して重合体とPC71BMを含む溶液を製造した。
【0185】
(有機太陽電池の作製、評価)
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜(抵抗値10Ω/□)を付けたガラス基板を15分間オゾンUV処理して表面処理を行った。基板上に正孔輸送層となるPEDOT:PSS水溶液(H.C.Starck社製:CLEVIOS PH500)をスピンコート法により40nmの厚さに製膜した。ホットプレートにより140℃で20分間加熱乾燥した後、次にスピンコートにより上記により製造した重合体とPC61BMとを含む溶液又は重合体とPC71BMとを含む溶液を塗布し、有機薄膜太陽電池の有機光電変換層(膜厚約100nm)を得た。3時間真空乾燥した後、実施例1、2、5、6及び比較例1〜5、8に関しては120℃30分の熱アニールを施した。その後、真空蒸着機によりフッ化リチウムを膜厚1nmで蒸着し、次いでアルミニウムを膜厚100nmで蒸着した。蒸着のときの真空度は、すべて2×10-4Pa以下であった。これにより共役ブロック共重合体による光電変換素子である有機薄膜太陽電池が得られた。有機薄膜太陽電池の形状は5×5mmの正四角形であった。
【0186】
(光電変換効率及び溶解度パラメーターの測定)
得られた各実施例、比較例の有機薄膜太陽電池の光電変換効率を300Wのソーラシミュレーター(ペクセルテクノロジー社製、商品名PEC L11:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm)で測定した。その測定結果を表1、表2及び表3に示す。また、各実施例の共役ブロック共重合体を構成する各重合体ブロックの溶解度パラメーターは、Bicerano法にてコンピューターソフトウェアScigress Explorer Professional 7.6.0.52 (富士通製)を用いて計算した。各比較例の重合体についても同様の方法により溶解度パラメーターを測定した。結果を併せて表1〜3に示す。
【0187】
表1(実施例1〜4)、表2(実施例5〜8)、表3(比較例1〜5)、表4(比較例6〜10)には、共役ブロック共重合体を構成する共役重合体ブロックの構造、共役重合体ブロックの溶解度パラメーター(SP値)、SP値の差、及び有機薄膜太陽電池の光電変換効率を示した。また、共役ブロック共重合体を構成する共役重合体ブロックのうち、最大値の溶解度パラメーターを有する共役重合体ブロックを共役重合体ブロックA、最小値の溶解度パラメーターを有する共役重合体ブロックを共役重合体ブロックBとして示す。尚、比較例10にて得られたポリマーブレンドD1については、ブレンドした各ホモポリマーのSP値の差を表中に示した。
【0188】
【表1】
【0189】
【表2】
【0190】
【表3】
【0191】
【表4】

【0192】
評価からわかるように各ブロックを構成する共役重合体ブロックの溶解度パラメーターのうち、最大値(ポリマーブロックA)と最小値(ポリマーブロックB)の差が0.6以上2.0以下である本発明の共役ブロック共重合体を用い有機薄膜太陽電池は、従来の共役ブロック共重合体と比較して高い変換効率であることがわかる。
【0193】
実施例1と比較例7、8との比較、さらに実施例7、8と比較例9との比較により共役ブロック共重合体が、単独単量体単位からなる共役ポリマー(共役ホモポリマー)より変換効率が高いことがわかる。実施例1及び2では主鎖の二価の複素環基を変えることで溶解度パラメーターを調整し、好ましい共役ブロック共重合体を合成することができることがわかる。側鎖の長さを変えることで(実施例3)、または側鎖に結合するフッ素原子の数を適切に選ぶことで(実施例4、6)、各重合体ブロックが好ましい溶解度パラメーター差を持つ共役ブロック共重合体を合成することができることがわかる。また水酸基を側鎖に結合させることでも溶解度パラメーターを適切に調整することができることがわかる(実施例5)。実施例5及び7より、重合体ブロックAまたはBはランダム共重合体からなる重合体ブロックであってもよいことがわかる。
【0194】
一方、比較例1、2、3及び6から各ブロックを構成する共役重合体ブロックの溶解度パラメーターのうち、最大値(共役重合体ブロックA)と最小値(共役重合体ブロックB)の差が0.6以上2.0以下の範囲でなければ高い変換効率が得られないことがわかる。溶解度パラメーターの差が本発明の規定範囲内であっても、フッ素原子及び水酸基以外の官能基で置換されたアルキル基を側鎖に有する比較例4及び非共役重合体ブロックを、主として含むブロック共重合体である比較例5は変換効率が低いことがわかる。また、比較例10より溶解度パラメーターの差が0.6以上2.0以下のポリマーをブレンドしたポリマーブレンドであっても本発明の共役ブロック共重合体のような優れた変換効率は出ないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明のπ共役系である共役ブロック共重合体は、光電変換素子の光電変換層として利用できるものである。また、その共役ブロック共重合体からなる光電変換素子は、太陽電池をはじめとして各種の光センサとして汎用される。