(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記ポリオール成分(A1)と、ポリイソシアネート化合物(A2)と、下記不飽和ヒドロキシ化合物(A3)との反応生成物であって、下記硬化性官能基を1分子あたり平均2〜4個有し、リン含有量が1〜7質量%である、不飽和ウレタンオリゴマー(A)。
ポリオール成分(A1):下記ポリオール(a1)および下記ポリオール(a2)を含むポリオール成分。
ポリオール(a1):1分子あたりの水酸基数が2〜3であり、水酸基価が35〜150mgKOH/gであり、分子中にリン原子を有するポリオール。
ポリオール(a2):1分子あたりの水酸基数が2であり、水酸基価が20〜120mgKOH/gであり、分子中にリン原子を有さないポリオキシアルキレンポリオール。
不飽和ヒドロキシ化合物(A3):下記硬化性官能基と水酸基とを有する化合物。
硬化性官能基:CH2=C(R)C(O)O−(ただし、Rは、水素原子またはメチル基である)。
減圧雰囲気中で、一対の透明基板間に、請求項4〜8のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を内部に収容した密閉空間を形成して、一対の透明基板と該一対の透明基板間に密閉された前記硬化性樹脂組成物とを有する積層前駆体を製造する第1の工程と、
前記積層前駆体を、前記減圧雰囲気よりも圧力が高い雰囲気に置き、その雰囲気下で前記硬化性樹脂組成物を硬化させる第2の工程と
を有する、透明積層体の製造方法。
前記硬化性樹脂組成物が光硬化性樹脂組成物であり、第2の工程において前記積層前駆体に光を照射して前記硬化性樹脂組成物を硬化させる、請求項11または12に記載の製造方法。
【背景技術】
【0002】
一対の透明基板と、該透明基板の間に挟まれた接着性樹脂層を有する透明積層体としては、一対のガラス板を、接着性樹脂層を介して一体化した合わせガラスが知られている。該合わせガラスは、破損したガラス破片がフィルム状の接着性樹脂層に付着して飛散しないことから自動車の風防ガラスとして用いられている。また、該合わせガラスは、貫通し難く強度が優れていることから、建物の窓ガラス(安全ガラス、防犯ガラス、防火安全ガラス等)として用いられている。したがって、窓ガラスとして用いる場合、接着性樹脂層には、透明性に優れるほかに、難燃性が良好であることが要求されることがある。
【0003】
防火安全ガラスは、火災時には防火戸として機能し、平常時には安全ガラスとして機能するガラスである。通常、合わせガラスの接着性樹脂層に用いる樹脂材料は、その分解温度に達すると徐々に低分子量物質に熱分解する。揮発性物質にまで分解する温度が、生成する揮発性物質の着火温度より高い場合には着火し発火する。したがって、防火安全ガラス用の接着性樹脂層の樹脂材料には、分解生成物の酸化反応を抑制する樹脂材料、分解生成物が生成してもそれが揮発しにくい樹脂材料、熱分解と同時に架橋反応や環化反応を起こして炭化する樹脂材料、すなわち、難燃性の高い樹脂材料を用いる必要がある。
【0004】
接着性樹脂層の樹脂材料として難燃性能の高い樹脂材料を用いた合わせガラスとしては、下記のものが提案されている。
(1)接着性樹脂層の樹脂材料として含フッ素共重合体を用いた防火安全ガラス(特許文献1)。
(2)接着性樹脂層の樹脂材料にリン系難燃剤を添加した合わせガラス(特許文献2)。
【0005】
しかし、(1)の防火安全ガラスでは、難燃性が向上する半面、ガラス板と接着性樹脂層との密着性が不充分になる。そのため、ヘイズ値が高くなり、窓ガラスとして用いることは困難である。
(2)の合わせガラスでは、接着性樹脂層の樹脂材料にリン系難燃剤が均一に混ざりにくいため、透明性が損なわれたり、難燃性が不均一となったりする。また、難燃性を発現するためには、リン系難燃剤の添加量を多くする必要がある。しかし、リン系難燃剤の添加量が多いと、接着性樹脂層の強度等の機械的特性が損なわれたり、添加した難燃剤が経時的に接着性樹脂層の内部で移動するなどして耐久性に問題が発生したりする。
【0006】
なお、難燃性が期待される樹脂材料としては、リン含有の難燃性ポリオールを原料に用いたウレタンプレポリマー組成物が開示されている(特許文献3)。
しかし、該ウレタンプレポリマー組成物は、合わせガラスの接着性樹脂層に用いる場合には耐久性が懸念される。
【0007】
また、合わせガラスの製造方法としては、下記の方法が知られている。
(i)一対の透明基板の間に接着性樹脂フィルムを挟み、この積層物を加熱圧着して合わせガラスを製造する方法。
(ii)周辺をシールした一対の透明基板の間に液状の硬化性樹脂を注入した後、硬化性樹脂を硬化して合わせガラスを製造する方法(特許文献4)。
【0008】
(ii)の方法は、(i)の方法に比べ、硬化性樹脂のバリエーションが広く、目的に応じて種々の物性の硬化物を得やすいこと、硬化容易な硬化性樹脂(特に光硬化性樹脂)を用いることにより製造プロセスを簡略化できる等の特徴を有する。
しかし、(ii)の方法は、硬化性樹脂の注入に際し、樹脂中に気泡が残存しやすいという欠点を有する。
【0009】
気泡の発生を防ぐ方法としては、減圧積層方法が知られている。減圧積層方法による合わせガラスの製造方法としては、たとえば、下記の方法が知られている。
(iii)一枚の透明基板上に光硬化性樹脂組成物の層を形成し、減圧下にもう一枚の透明基板を該光硬化性樹脂組成物の層の上に重ねて、一対の透明基板の間に光硬化性樹脂組成物を密閉した後、大気圧下で該光硬化性樹脂組成物を光硬化させる合わせガラスの製造方法(特許文献5)。
【0010】
光硬化性樹脂組成物としては、不飽和ウレタンオリゴマーを含む光硬化性樹脂組成物が提案されている(特許文献5)。また、(iii)の方法に適した光硬化性樹脂組成物としても、不飽和ウレタンオリゴマーを含む光硬化性樹脂組成物が知られている(特許文献6)。
不飽和ウレタンオリゴマーを含む光硬化性樹脂組成物においては、不飽和ウレタンオリゴマーや各種のモノマー類を併用することにより、硬化物の特性を調整できる。しかし、従来の光硬化性樹脂組成物では、難燃性が良好な硬化物を得ることができない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書におけるCH
2=C(R)C(O)O−(ただし、Rは水素原子またはメチル基である。)で表される硬化性官能基は、アクリロイルオキシ基(Rが水素原子の場合)またはメタクリロイルオキシ基(Rがメチル基の場合)であり、以下に該式で表される基を(メタ)アクリロイルオキシ基ともいう。同様に、「アクリレート」と「メタクリレート」の総称として、「(メタ)アクリレート」を用いる。
【0023】
<不飽和ウレタンオリゴマー>
本発明の不飽和ウレタンオリゴマー(A)は、下記硬化性官能基を1分子あたり平均2〜4個有し、リン含有量が1〜6質量%のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである。
硬化性官能基:CH
2=C(R)C(O)O−(ただし、Rは、水素原子またはメチル基である)。
【0024】
不飽和ウレタンオリゴマー(A)は、一対の透明基板の間に挟持された硬化性樹脂組成物を硬化させて透明積層体を製造する方法に用いられる硬化性樹脂組成物の一成分として好適なものである。不飽和ウレタンオリゴマー(A)は、分子中にリン原子を有するため、硬化物は難燃性を有する。
【0025】
不飽和ウレタンオリゴマー(A)の1分子あたりの平均硬化性官能基数は、2〜4であり、2〜3が好ましい。平均硬化性官能基数が2以上であれば、硬化樹脂層の一部に架橋構造を導入でき、耐熱性が増し、高温にさらされた場合に硬化樹脂層が流動変形しにくい。平均硬化性官能基数が4以下であれば、架橋密度が大きくなり過ぎず、硬化樹脂層の柔軟性が良好になり、耐衝撃性が良好になる。
【0026】
不飽和ウレタンオリゴマー(A)の1分子あたりの平均硬化性官能基数は、後述するポリオール成分(A1)の水酸基数、ポリイソシアネート化合物(A2)のイソシアネート基数、不飽和ヒドロキシ化合物(A3)の硬化性官能基数および水酸基数により調整される。ポリイソシアネート化合物(A2)としてはイソシアネート基数が2であるジイソシアネートが好ましいこと、不飽和ヒドロキシ化合物(A3)としては硬化性官能基数が1である不飽和モノオールが好ましいことから、これらを用いて得られる不飽和ウレタンオリゴマー(A)の1分子あたりの平均硬化性官能基数は、通常、ポリオール成分(A1)1分子あたりの平均水酸基数とほぼ同じとなる。たとえば、ポリオール成分(A1)としてジオールのみを用いることにより1分子あたりの平均硬化性官能基数が2の不飽和ウレタンオリゴマー(A)が得られる。同様に、ポリオール成分(A1)としてジオールとトリオールを用いることにより平均硬化性官能基数が2と3の間の数の不飽和ウレタンオリゴマー(A)が得られ、ポリオール成分(A1)としてトリオールのみを用いることにより平均硬化性官能基数が3の不飽和ウレタンオリゴマー(A)が得られる。
【0027】
1分子中に複数存在する硬化性官能基は、同一でもあってもよく、異なっていてもよい。しかし、通常は、1分子中に複数の硬化性官能基を有する場合には、同一の硬化性官能基あることが好ましい。
不飽和ウレタンオリゴマー(A)中の硬化性官能基は、アクリロイルオキシ基であることが好ましい。不飽和ウレタンオリゴマー(A)中の硬化性官能基は、不飽和ウレタンオリゴマー(A)が高分子量であるほど反応性が低くなりやすく、相対的に低分子量の化合物と併用した場合、両者の硬化性官能基の反応性の差を少なくするためには、不飽和ウレタンオリゴマー(A)中の硬化性官能基の反応性は高いことが好ましい。そのため、不飽和ウレタンオリゴマー(A)中の硬化性官能基としては、メタクリロイルオキシ基よりも反応性の高いアクリロイルオキシ基が好ましい。
【0028】
不飽和ウレタンオリゴマー(A)(100質量%)中のリン含有量は、1〜7質量%であり、1〜4質量%が好ましい。リン含有量が1質量%以上であれば、充分な難燃効果を得ることができる。リン含有量が7質量%以下であれば、不飽和ウレタンオリゴマー(A)製造時における、オリゴマーの高分子量化(ゲル化)や、相溶性の低下による不均質なオリゴマーの生成がなく、また硬化性組成物を硬化して得られる硬化物が充分な透明性を有するため、好ましい。
【0029】
不飽和ウレタンオリゴマー(A)は、ポリオール成分(A1)とポリイソシアネート化合物(A2)と不飽和ヒドロキシ化合物(A3)との反応生成物であり、該反応生成物を得る方法としては、たとえば、下記(1)〜(3)の方法が挙げられる。
(1)ポリオール成分(A1)、ポリイソシアネート化合物(A2)および不飽和ヒドロキシ化合物(A3)を同時反応させる方法。
(2)ポリイソシアネート化合物(A2)と不飽和ヒドロキシ化合物(A3)とを化学量論的にイソシアネート基が過剰の条件で反応させた後、得られた反応物にさらにポリオール成分(A1)を反応させる方法。
(3)ポリオール成分(A1)とポリイソシアネート化合物(A2)とを化学量論的にイソシナネート基が過剰の条件で反応させた後、得られた反応物にさらに不飽和ヒドロキシ化合物(A3)を反応させる方法。
【0030】
(1)の方法は、容易であるが、不飽和ウレタンオリゴマー(A)の分子量や粘度にばらつきが見られやすく、工業的に好ましくない。
(2)の方法は、ポリオール成分(A1)の水酸基数が3以上の場合に、超高分子量生成物(ゲル成分)が生成しにくい。
(3)の方法は、定常的に定性的な不飽和ウレタンオリゴマー(A)を得ることができるため、工業的に好ましい。
【0031】
(3)の方法としては、下記の工程(3−1)、工程(3−2)を有する方法が挙げられる。
(3−1)必要に応じてウレタン化触媒の存在下、ポリオール成分(A1)とポリイソシアネート化合物(A2)を化学量論的にイソシアネート基が過剰な条件で反応させ、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを得る工程。
(3−2)必要に応じて重合禁止剤の存在下、不飽和ヒドロキシ化合物(A3)をウレタンプレポリマーの末端のイソシアネート基と反応させる工程。
【0032】
工程(3−1):
ウレタン化触媒としては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレート、2−エチルヘキサン酸錫、トリエチルアミン、1,4−ジアビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
ポリオール成分(A1)とポリイソシアネート化合物(A2)との割合は、イソシアネート基:水酸基のモル比が1.2:1〜3:1となる割合が好ましく、1.2:1〜2:1となる割合がより好ましい。反応温度は、通常のウレタン化反応における温度、すなわち30〜90℃が好ましい。
【0033】
工程(3−2):
重合禁止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−ヒドロキノン、o−ニトロトルエン等が挙げられる。重合禁止剤の量は、不飽和ヒドロキシ化合物(A3)に対して50〜5,000ppmが好ましい。
ウレタンプレポリマーと不飽和ヒドロキシ化合物(A3)との割合は、イソシアネート基:水酸基のモル比が1:1〜1:1.5となるような割合が好ましい。反応温度は、30〜90℃が好ましい。
【0034】
(ポリオール成分(A1))
ポリオール成分(A1)は、分子中にリン原子を有するポリオール(a1)を必須成分として含むポリオール成分であり、ポリオール(a2)をさらに含むことが好ましく、必要に応じて他のポリオール(a3)を含んでいてもよい。
【0035】
ポリオール成分(A1)(100質量%)中のリン含有量は、1質量%を超え、10質量%以下が好ましく、1.1〜8.5質量%がより好ましい。リン含有量が1質量%を超えるポリオール成分(A1)を用いることにより不飽和ウレタンオリゴマー(A)中のリン含有量を1質量%以上にすることができる。リン含有量が10質量%を超えるポリオール成分(A1)を用いることもできるが、他の成分との相溶性が低下するおそれがあり、リン含有量を10質量%以下にすることにより相溶性の良好なポリオール成分(A1)とすることができる。
【0036】
(ポリオール(a1))
ポリオール(a1)は、1分子あたりの水酸基数が2〜3であり、水酸基価が35〜150mgKOH/gであり、分子中にリン原子を有するポリオールである。ポリオール(a1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
ポリオール(a1)は、市販品として入手できる。該市販品としては、下記のものが挙げられる。
アデカ社製の「FC450」(水酸基数:2、水酸基価:450mgKOH/g、リン含有量:7.2質量%)、
ウェストンケミカル社製の「Weston430」(水酸基数:3、水酸基価:395mgKOH/g、リン含有量:12.0質量%)、
丸菱油化社製の「ノンネンR0412−15」(水酸基数:2、水酸基価:40mgKOH/g、リン含有量:11.0質量%)、
丸菱油化社製の「ノンネンR0811−9」(水酸基数:2、水酸基価:142mgKOH/g、リン含有量:12.0質量%)、
クラリアント社製の「OP550」(水酸基数:2、水酸基価:145mgKOH/g、リン含有量:17.0質量%)等。
【0038】
ポリオール(a1)の1分子あたりの水酸基数は、2〜3であり、2が好ましい。ポリオール(a1)の1分子あたりの水酸基数が2〜3であれば、1分子あたりの平均硬化性官能基数が2〜4の不飽和ウレタンオリゴマー(A)が容易に得られる。
【0039】
ポリオール(a1)の水酸基価は、35〜150mgKOH/gであり、40〜145mgKOH/gが好ましい。ポリオール(a1)の水酸基価が35mgKOH/g以上であれば、ポリオール(a1)の分子量が大きくなりすぎないため、ポリオール(a1)の粘度が大きくなりすぎず、作業性に問題が生じない。ポリオール(a1)の水酸基価が145mgKOH/g以下であれば、単量体(B)との相溶性がよくなり、硬化物の透明性が良好となる。
ポリオール(a1)の水酸基価は、JIS K1557−1(2007年版)にしたがって測定する。他のポリオールの水酸基価も同様である。
【0040】
(ポリオール(a2))
ポリオール(a2)は、1分子あたりの水酸基数が2であり、水酸基価が20〜120mgKOH/gであり、分子中にリン原子を有さないポリオキシアルキレンポリオールである。
【0041】
ポリオール(a2)は、オキシアルキレン基からなるポリオキシアルキレン鎖を有するポリオールであり、触媒の存在下、開始剤にモノエポキシドを開環付加重合させて得られるポリオキシアルキレンポリオールであることが好ましい。
ポリオール(a2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
触媒としては、ジエチル亜鉛、塩化鉄、金属ポルフィリン、複合金属シアン化物錯体、セシウム化合物、アルカリ(土類)金属化合物等が挙げられ、複合金属シアン化物錯体が好ましい。汎用のアルカリ金属化合物触媒(水酸化カリウム等)を用いてプロピレンオキシドを反応させて水酸基価の低いポリオキシアルキレンポリオールを得ると、プロピレンオキシドの異性化反応が起こりやすくなり、不飽和度が高くなる。不飽和度の高いポリオキシアルキレンポリオールを使用して得られる不飽和ウレタンオリゴマー(A)を含む硬化物は機械的物性が不充分となるおそれがある。ポリオール(a2)の不飽和度は0.05meq/g以下が好ましい。
【0043】
複合金属シアン化物錯体としては、亜鉛ヘキサシアノコバルテートを主成分とする錯体が好ましく、亜鉛ヘキサシアノコバルテートのエーテルおよび/またはアルコール錯体が特に好ましい。亜鉛ヘキサシアノコバルテートのエーテルおよび/またはアルコール錯体としては、特公昭46−27250号公報に記載のものが挙げられる。エーテルとしては、エチレングリコールジメチルエーテル(グライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が好ましく、錯体の製造時の取り扱いやすさの点から、グライムが特に好ましい。アルコールとしては、tert−ブタノール、tert−ブチルセロソルブ等が好ましい。
【0044】
開始剤の活性水素数は、2である。活性水素とは、水酸基の水素原子、アミノ基の水素原子等、モノエポキシドが反応しうる活性な水素原子をいう。活性水素としては、水酸基の水素原子が好ましい。したがって、開始剤としては、水酸基数が2のポリヒドロキシ化合物が好ましい。開始剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、これらにアルキレンオキシドを反応させて得られる、ポリオール(a2)よりも低分子量のポリオキシアルキレンポリオール等が挙げられる。複合金属シアン化物錯体を用いる場合、開始剤の分子量は500〜1,500が好ましい。開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
モノエポキシドは、1個のエポキシ環を有する化合物である。モノエポキシドとしては、アルキレンオキシド、グリシジルエーテル、グリシジルエステル等が挙げられ、アルキレンオキシドが好ましい。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられ、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。モノエポキシドは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。モノエポキシドを2種以上併用する場合、ブロック重合およびランダム重合のいずれの重合法を用いてもよく、さらにブロック重合とランダム重合の両者を組み合わせてもよい。
【0046】
ポリオール(a2)としては、モノエポキシドとしてプロピレンオキシドのみを用いて得られるポリオキシプロピレンポリオール、またはモノエポキシドとしてプロピレンオキシドと少量のエチレンオキシドを用いて得られるポリ(オキシプロピレン・オキシエチレン)ポリオールが好ましい。
開始剤にモノエポキシドを反応させて得られるポリオキシアルキレンポリオール以外のポリオキシアルキレンポリオールとしては、たとえば、ポリオキシテトラメチレンポリオールが挙げられる。
【0047】
ポリオール(a2)の1分子あたりの水酸基数は2である。ポリオール(a2)の1分子あたりの水酸基数が2であれば、1分子あたりの平均硬化性官能基数が2〜4の不飽和ウレタンオリゴマー(A)が容易に得られる。
【0048】
ポリオール(a2)の水酸基価は、20〜120mgKOH/gである。水酸基価が該範囲であれば、ポリオール(a2)の分子量が大きすぎず、粘度も抑えることができるため、工業的に有用である。ポリオール(a2)の水酸基価が20mgKOH/g以上では、ポリオール(a1)との相溶性が良好で、硬化性組成物を硬化して得られる硬化物が充分な透明性を有する。ポリオール(a2)の水酸基価が120mgKOH/g以下では、単量体(B)等との相溶性が良好で、硬化物が充分な透明性を有する。
【0049】
ポリオール(a2)の割合は、ポリオール成分(A1)(100質量%)中のリン含有量は、1〜7質量%となるように調製される。ポリオール(a2)の割合は、ポリオール(a1)の1モルに対して0.2〜4モルが好ましく、0.4〜2.5モルがより好ましい。ポリオール(a2)の割合が該範囲であれば、硬化性組成物を硬化して得られる硬化物の透明性と難燃性とを両立できる。ポリオール(a2)の割合が0.2モル以上では、単量体(B)との相溶性が良好で、硬化物が充分な透明性を有する。ポリオール(a2)の割合が4モル以下では、硬化物の難燃性が充分となる。
【0050】
(ポリオール(a3))
ポリオール(a3)は、ポリオール(a1)、ポリオール(a2)のいずれでもないポリオールである。ポリオール(a3)としては、たとえば、水酸基数が3以上のポリオキシアルキレンポリオール等が挙げられる。また、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール等のポリオールが挙げられる。
【0051】
ポリオール(a3)は必須成分ではなく、ポリオール(a3)の割合は、ポリオール成分(A1)(100質量%)中のリン含有量が1〜7質量%となるように調製される。ポリオール(a3)を用いる場合はポリオール成分(A1)中のその質量割合は少量とする。ポリオール(a3)の割合は、ポリオール成分(A1)100質量%のうち、25質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0052】
(ポリイソシアネート化合物(A2))
ポリイソシアネート化合物(A2)としては、1分子あたりの平均イソシアネート基数が2以上の、脂環族系ポリイソシアネート、脂肪族系ポリイソシアネート、芳香環含有脂肪族系ポリイソシアネート、これらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等が挙げられる。芳香環に結合したイソシアネート基を有する芳香族系ポリイソシアネートは、硬化物の黄変をもたらすおそれが大きいため、用いないことが好ましい。
【0053】
ポリイソシアネート化合物(A2)の1分子あたりの平均のイソシアネート基数は、2〜4が好ましく、2が特に好ましい。すなわち、ポリイソシアネート化合物(A2)としては、ジイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネート化合物(A2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
ポリイソシアネート化合物(A2)の具体例としては、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等のジイソシアネート、該ジイソシアネートのプレポリマー変性体、ヌレート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられ、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0055】
(不飽和ヒドロキシ化合物(A3))
不飽和ヒドロキシ化合物(A3)は、硬化性官能基と水酸基とを有する化合物であり、1分子中に硬化性官能基が2以上存在していてもよく、1分子中に水酸基が2以上存在していてもよい。硬化性官能基を1分子あたり平均2〜4個有する不飽和ウレタンオリゴマー(A)を製造するためには、1分子中に硬化性官能基と水酸基とをそれぞれ1個有する化合物が好ましい。
【0056】
不飽和ヒドロキシ化合物(A3)としては、炭素数が1〜10のヒドロキシアルキルを有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が1〜5のヒドロキシアルキルを有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。反応性の高い不飽和ウレタンオリゴマー(A)を得るためには、硬化性官能基はアクリロイルオキシ基であることが好ましい。したがって、不飽和ヒドロキシ化合物(A3)としては、炭素数が1〜5のヒドロキシアルキルを有するヒドロキシアルキルアクリレートがさらに好ましい。
【0057】
不飽和ヒドロキシ化合物(A3)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートが特に好ましい。不飽和ヒドロキシ化合物(A3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、不飽和ウレタンオリゴマー(A)を含む組成物であり、後述する、一対の透明基板の間に挟持された硬化性樹脂組成物を硬化させて透明積層体を製造する方法に用いられる硬化性樹脂組成物として好適のものである。
【0059】
(その他の成分)
不飽和ウレタンオリゴマー(A)を含む硬化性樹脂組成物は、接着剤、コーティング剤、その他の用途に用いることができる。硬化性樹脂組成物には、用途に応じて種々の添加剤を添加できる。硬化性樹脂組成物を硬化させるための硬化剤の配合は通常必須であり、硬化剤としてはラジカル発生剤や光重合開始剤が好ましい。熱によりラジカルを発生する硬化剤が配合された硬化性樹脂組成物は熱硬化型となり、光重合開始剤が配合された硬化性樹脂組成物は光硬化型となる。
【0060】
不飽和ウレタンオリゴマー(A)を含む硬化性樹脂組成物には、硬化物の物性調整のために後述する単量体(B)、他の単量体(F)等の単量体が配合されることが好ましい。単量体としては、硬化性官能基の数が1〜6である化合物が好ましく、硬化性官能基の数が1〜2である化合物がより好ましい。硬質の硬化物を得る点では、硬化性官能基の数が3〜6である化合物が好ましい。また、硬化性樹脂組成物の塗布性を高める点から、単量体としては、低粘度の化合物が好ましい。粘度の低い単量体は反応性希釈剤と呼ばれることもある。さらに、後述の他の不飽和オリゴマー(E)等の上記単量体以外の硬化性化合物を配合してもよい。
【0061】
硬化性樹脂組成物には反応に関与しない各種添加剤を配合してもよい。該添加剤としては、たとえば、後述の添加剤(G)等が挙げられる。また、塗布性を高めるために、硬化性樹脂組成物の構成成分以外の成分として溶剤を用いてもよい。溶剤を用いて硬化性樹脂組成物を塗布し、その後溶剤を除いて硬化性樹脂組成物を硬化させる。ただし、後述の透明積層体の製造に好適な硬化性樹脂組成物としては、揮発性成分を有することは好ましくないため、溶剤は用いない。
【0062】
(透明積層体の製造に好適な硬化性樹脂組成物)
本発明の、一対の透明基板の間に挟持された硬化性樹脂組成物を硬化させて透明積層体を製造する方法に用いられる硬化性樹脂組成物は、不飽和ウレタンオリゴマー(A)を必須成分として含み、単量体(B)、単量体(C)光重合開始剤(D)、および/または他の不飽和オリゴマー(E)をさらに含むことが好ましく、必要に応じて他の単量体(F)、添加剤(G)等をさらに含んでいてもよい。
【0063】
不飽和ウレタンオリゴマー(A)は、硬化性樹脂組成物(100質量%)中のリン含有量が0.1〜5質量%になるように添加されることが好ましく、0.1〜3質量%になるように添加されることがより好ましい。リン含有量が0.1質量%以上であれば、硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が難燃性を発現できる。リン含有量が5質量%以下であれば、硬化物が硬く脆くならず、一対の透明基板間に挟持された硬化性樹脂組成物を硬化させた透明積層体の耐衝撃性が充分になる。
【0064】
不飽和ウレタンオリゴマー(A)は、(A)〜(C)、(E)および(F)成分の合計100質量部のうち、10〜100質量部が好ましく、40〜60質量部がより好ましい。不飽和ウレタンオリゴマー(A)が10質量部以上であれば、硬化物の難燃性が良好となる。
単量体(B)を含ませる場合は、(A)〜(C)、(E)および(F)成分の合計100質量部のうち、25〜65質量部が好ましく、35〜50質量部がより好ましい。単量体(B)が65質量部以下であると、不飽和ウレタンオリゴマー(A)との相溶性が良好で、硬化性組成物を硬化して得られる硬化物が充分な透明性を有する。
【0065】
単量体(C)を含ませる場合は、(A)〜(C)、(E)および(F)成分の合計100質量部のうち、3〜50質量部が好ましく、5〜25質量部がより好ましい。単量体(C)の割合が3質量部以上であれば、硬化物の柔軟性が向上し、硬化性樹脂組成物の粘度も下げることができ、工業的に有用である。
光重合開始剤(D)を含ませる場合は、(A)〜(C)、(E)および(F)成分の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜2.5質量部がより好ましい。
【0066】
他のオリゴマー(E)を含ませる場合は、(A)〜(C)、(E)および(F)成分の合計100質量部のうち、3〜55質量部が好ましく、30〜50質量部がより好ましい。他のオリゴマー(E)の割合が3質量部以上であれば、硬化物の柔軟性が向上し、硬化性樹脂組成物の粘度も下げることができ、工業的に有用である。
他の単量体(F)を含ませる場合は、(A)〜(C)、(E)および(F)成分の合計100質量部のうち、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。
添加剤(G)を含ませる場合は、(A)〜(C)、(E)および(F)成分の合計100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
【0067】
(単量体(B))
単量体(B)は、CH
2=C(R)C(O)O−R
2で表される化合物(ただし、Rは水素原子またはメチル基であり、R
2は水酸基数が1〜2であり、炭素数が3〜4のヒドロキシアルキル基である。)である。単量体(B)は、硬化性樹脂組成物の硬化物の親水性を高めて硬化物と透明基材(ガラス板)の表面との親和性を向上させる成分として有効であり、単量体(B)の用いることにより硬化物と透明基板との密着性が向上する。
【0068】
単量体(B)はヒドロキシアルキル基またはジヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、不飽和ウレタンオリゴマー(A)との反応を均一に進めるためにはメタクリレートであることが好ましい。すなわち、不飽和ウレタンオリゴマー(A)の硬化性官能基はたとえアクリロイルオキシ基であっても反応性が低く、単量体(B)の硬化性官能基がアクリロイルオキシ基であると両硬化性官能基の反応性の差が大きくなり、均一な硬化が得られないおそれがある。よって、不飽和ウレタンオリゴマー(A)の硬化性官能基がアクリロイルオキシ基であり、単量体(B)の硬化性官能基がメタクリロイルオキシ基である組み合わせが好ましい。単量体(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
単量体(B)の水酸基数が2以下であると、硬化物が脆くなりにくい。したがって、R
2の水酸基数は1〜2であり、1であることがより好ましい。
単量体(B)のR
2の炭素数は3〜4である。R
2の炭素数が3以上では、長鎖構造の不飽和ウレタンオリゴマー(A)との相溶性が良好で、硬化性組成物を硬化して得られる硬化物が充分な透明性を有する。R
2の炭素数が4以下では、水酸基密度が高くなり、充分な密着性が得られる。
【0070】
単量体(B)としては、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられ、2−ヒドロキシブチルメタクリレートが好ましい。
【0071】
(単量体(C))
単量体(C)は、CH
2=C(R)C(O)O−R
3で表される化合物(ただし、Rは水素原子またはメチル基であり、R
3は炭素数が8〜22のアルキル基である。)である。単量体(B)と同様の理由により単量体(C)はメタクリレートであることが好ましいが、単量体(C)は単量体(B)よりも高分子量であることから、場合によりアクリレートであってもよい。単量体(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
硬化性樹脂組成物が単量体(C)を含むことにより、硬化物の弾性率が低下し、耐引き裂き性が向上しやすい。また、アルキル基の炭素数が8以上であれば、揮発性が少なく、また硬化物のガラス転移温度を低下させることができる。アルキル基の炭素数が22以下であれば、原料のアルコール成分を天然物経由で容易に入手でき、より工業的である。
【0073】
単量体(C)としては、n−ドデシルメタクリレート、n−オクタデシルメタクリレート、n−ベヘニルメタクリレート等が挙げられ、n−ドデシルメタクリレート、n−オクタデシルメタクリレートが特に好ましい。
【0074】
(光重合開始剤(D))
本発明の硬化性樹脂組成物が光重合開始剤(D)を含むことにより、光硬化性樹脂組成物となる。
光重合開始剤(D)としては、可視光線または紫外線(波長300〜400nm)の照射により励起され、活性化して硬化反応を促進するものが好ましく、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤等が挙げられる。
【0075】
光重合開始剤(D)の具体例としては、ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4、4’−ジメトキシベンゾフェノン、4、4’−ジアミノベンゾフェノン、アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、ベンゾイル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、アントラキノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド等が挙げられ、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド等が好ましく、微量の添加においても充分に硬化性樹脂組成物を硬化できる点から、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド等のアシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤が特に好ましい。光重合開始剤(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
(他の不飽和オリゴマー(E))
本発明の硬化性樹脂組成物は、組成物の粘度や硬化物の物性を調整する目的で、不飽和ウレタンオリゴマー(A)以外の他の不飽和オリゴマー(E)を少量含んでいてもよい。
他の不飽和オリゴマー(E)としては、リン原子を含有しないポリオールを用いて得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0077】
(他の単量体(F))
本発明の硬化性樹脂組成物は、得られる硬化物の物性を調整する目的で、単量体(B)および単量体(C)以外の他の単量体(F)((メタ)アクリレート類等)を少量含んでいてもよい。他の単量体(F)としては、多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0078】
ただし、後述の減圧積層方法で透明積層体を製造する場合は、硬化性樹脂組成物が低沸点の化合物を含むことは好ましくない。周辺をシールした一対の透明基板の間に液状の硬化性樹脂組成物を注入して硬化させる方法では、たとえ透明基板の間を減圧にして注入する場合であっても、注入時に減圧にさらされる硬化性樹脂組成物の表面の面積は狭く、また、減圧度もさほど高くする必要がないことから、硬化性樹脂組成物が比較的低沸点の化合物を含んでいてもその揮発が問題となることは少ない。一方、減圧積層方法では、透明基板の周縁部を除くほぼ全面に硬化性樹脂組成物が広がった状態で減圧にさらされることから、硬化性樹脂組成物が低沸点の化合物を含んでいるとその揮発による消失が激しく、硬化性樹脂組成物の組成が大きく変化するおそれがある。加えて、揮発性化合物の揮発により必要な減圧度の減圧雰囲気を維持することが困難となる。
【0079】
硬化性樹脂組成物中の低沸点となりやすい成分は主に単量体である。単量体(B)は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであり、その沸点は充分に高い。また、単量体(C)は、アルキル(メタ)アクリレートであってもアルキル基の炭素数が大きいことより高い沸点を有する。アルキル基の炭素数の低いアルキル(メタ)アクリレートは低沸点であることが多く、このような低沸点のアルキル(メタ)アクリレートを他の単量体(F)として含む硬化性樹脂組成物は、減圧積層方法で透明積層体を製造するための硬化性樹脂組成物として用いることができない。減圧積層方法に用いることができる硬化性樹脂組成物は、常圧の沸点が150℃以下、好ましくは200℃以下の単量体を含まないことが好ましい。
【0080】
(添加剤(G))
添加剤(G)としては、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系等。)、光安定剤(ヒンダードアミン系等。)、顔料、染料、金属酸化物微粒子、フィラー等が挙げられる。
【0081】
(硬化性樹脂組成物の粘度)
本発明の、透明積層体を製造する方法に用いられる硬化性樹脂組成物の粘度は、他の用途に使用できる前記本発明硬化性樹脂組成物の粘度も同様に、40℃での粘度V
40で50Pa・s以下であることが好ましい。また、25℃での粘度V
25は0.05Pa・s以上であることが好ましい。
粘度測定は、E型粘度計(東機産業社製、RE−85U)を用いて測定する。ただし、組成物の粘度が100Pa・s以下の場合は、ロータとして1°34'×R24を用い、それ以上の粘度の場合は、ロータとして3°×R9.7を用いる。
【0082】
粘度V
40が50Pa・s以下であると流動性が良好で、後述する減圧積層方法に用いる場合に硬化性樹脂組成物中に消失しにくい気泡が生成しにくい。ただし、硬化性樹脂組成物を、溶剤を用いることができる用途に用いる場合は、溶剤を配合して流動性を高めて塗布等を行い、その後溶剤を除いて得られる硬化性樹脂組成物を硬化させることができる。硬化性樹脂組成物のV
25を0.05Pa・s以上にすると、硬化物の物性が良好になる。
【0083】
以上説明した本発明の、透明積層体を製造する方法に用いられる硬化性樹脂組成物にあっては、上述した特定のポリオール成分(A1)を用いて得られた特定の不飽和ウレタンオリゴマー(A)を含んでいるため、該組成物を硬化した場合には、透明性に優れ、かつ難燃性に優れる硬化物となる。
【0084】
本発明の硬化性樹脂組成物は、後述の透明積層体を製造するための硬化性樹脂組成物として使用することが好ましい。しかし、この用途に限られず、硬化性樹脂として、特に光硬化性樹脂として他の用途に使用することもできる。他の用途としては、後述の透明積層体と同様の構成を有し、一方の透明基板が不透明基板または透過光の透過率が低い透明基板である積層体を製造するための硬化性樹脂組成物である。そのような積層体としては、たとえば、太陽電池モジュールがある。このような積層体は、少なくとも片側の基板が透明であることで光硬化性樹脂組成物の硬化に必要な光の入射が可能である。両面の基板が不透明な場合には、熱硬化性樹脂組成物を用い熱硬化させることもできるが、不透明基板が可視光に対して不透明であっても、たとえば光硬化に必要な紫外線に対して透明であれば、両面が不透明基板であっても光硬化性樹脂組成物を用いることができる。
【0085】
光透過率が低い透明基板として、薄膜太陽電池が形成されたガラス基板を用い、対向のガラス基板との間に本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層を形成して太陽電池モジュールを提供することができる。本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物からなる接合層により、太陽電池モジュールに難燃性能を付与することができ、建造物に設置する際に安全性を高めることができる。薄膜太陽電池としては、薄膜シリコンや化合物半導体(銅−インジウム−ガリウム−セレン等)による発電層を用いることができる。両面のガラス基板に薄膜シリコンによる発電層を設けたり、薄膜シリコン基板と化合物半導体の薄膜を形成したガラス基板を組み合わせて積層させたりすることもできる。なお、太陽電池モジュールの場合、ガラス基板等の両面の基板はいずれも透明であってもよい。
【0086】
さらに、一対のガラス基板の間に、単結晶シリコンや微結晶シリコンからなる複数の太陽電池基板を配置して、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物によって、太陽電池基板をガラス基板間に封入することもできる。ガラス基板の片方を防水樹脂シートとしてもよい。このような太陽電池モジュールは難燃性を有し、建造物に設置する際に安全性が高まる。また、封入される太陽電池基板の一部に不良が発生して過度の電流が流れるなどして発熱したとしても、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物をその封入樹脂として用いることで封入樹脂が難燃性を有するため安全性を高めることができる。
【0087】
<透明積層体>
本発明の透明積層体は、一対の透明基板と、該透明基板の間に挟まれた硬化樹脂層とを有する。なお、該透明積層体や該透明基板は、可視光線に対して透明であることを意味する。
【0088】
透明基板としては、ガラス板または樹脂板が挙げられる。ガラス板を用いれば、合わせガラスが得られる。樹脂板としてポリカーボネート板を用いれば、耐衝撃性が高く軽量な透明パネルが得られる。また、ガラス板と樹脂板とを組み合わせて用いてもよい。
透明基板の大きさは、特に限定されないが、300mm以上、より好ましくは600mm以上の辺を少なくとも1つ有する透明基板であれば、建築用や車両用の開口部に設置する透明部材として広く利用できる。通常の用途においては、4m
2以下の大きさが適当である。
【0089】
透明積層体に含まれる硬化樹脂の層は、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層である。
硬化樹脂の層の厚さは、0.2〜4.0mmが好ましい。硬化樹脂の層の厚さが0.2mm以上であれば、透明積層体の機械的強度が良好となる。硬化樹脂の層の厚さが4.0mm以下であれば、透明積層体の透明性に優れ、窓ガラスとして用いることができる。
【0090】
以上説明した本発明の透明積層体にあっては、透明基板の間に挟まれた硬化樹脂の層が本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物からなるため、透明性に優れ、かつ難燃性に優れる。
【0091】
<透明積層体の製造方法>
本発明の透明積層体は、公知の製造方法(たとえば、一対の透明基板の間に硬化性樹脂組成物を挟持させ、該硬化性樹脂組成物を硬化させる方法等)によって製造でき、本発明の硬化性樹脂組成物を用いた減圧積層方法によって製造することが好ましい。減圧積層方法自体は、国際公開第2008/081838号や国際公開第2009/016943号に記載されている。
【0092】
減圧積層方法の特徴は、1枚の透明基板上に硬化性樹脂組成物の層を形成し、減圧雰囲気下で硬化性樹脂組成物の層の上にもう1枚の透明基板を重ねて2枚の透明基板の間に硬化性樹脂組成物を密閉し、その後、前記減圧雰囲気よりも高い圧力雰囲気(通常は大気圧雰囲気)に置いて硬化性樹脂組成物を硬化させることにある。このため、本発明の透明積層体の製造方法は、下記第1の工程と第2の工程とを必須とする。
【0093】
第1の工程:減圧雰囲気中で、一対の透明基板間に硬化性樹脂組成物を内部に収容した密閉空間を形成して、一対の透明基板と該一対の透明基板間に密閉された前記硬化性樹脂組成物とを有する積層前駆体を製造する工程。
第2の工程:前記積層前駆体を、前記減圧雰囲気よりも圧力が高い雰囲気に置き、その雰囲気下で前記硬化性樹脂組成物を硬化させる工程。
【0094】
第1の工程における減圧雰囲気は、1kPa以下の圧力雰囲気が好ましく、100Pa以下の圧力雰囲気がより好ましい。また、減圧雰囲気の圧力があまりに低すぎると単量体等の硬化性樹脂組成物の揮発のおそれが生じることから、減圧雰囲気は1Pa以上の圧力雰囲気が好ましく、10Pa以上の圧力雰囲気がより好ましい。
第2の工程における、前記減圧雰囲気よりも圧力が高い雰囲気としては、50kPa以上の圧力雰囲気が好ましく、100kPa以上の圧力雰囲気がより好ましい。第2の工程における圧力雰囲気は、通常、大気圧雰囲気である。
以下、前記減圧雰囲気よりも圧力が高い雰囲気が大気圧雰囲気である場合を例として該製造方法を説明する。
【0095】
第1の工程において、密閉空間内の硬化性樹脂組成物に気泡が残存しても硬化性樹脂組成物が硬化する前にその気泡は消失しやすく、気泡のない硬化樹脂の層が得られやすい。第1の工程で形成された積層前駆体を大気圧下に置くと、大気圧下の透明基板からの圧力により密閉空間内の硬化性樹脂組成物にも圧力がかかる。一方、硬化性樹脂組成物中の気泡内部は第1の工程の減圧雰囲気圧力にあることから、第2の工程では硬化性樹脂組成物にかかる圧力によりこの気泡の体積が縮小し、また気泡内の気体が硬化性樹脂組成物に溶解することにより、気泡が消失するに至る。気泡を消失させるために、硬化性樹脂組成物を硬化させる前に積層前駆体をしばらく大気圧下に保持することが好ましい。保持時間は5分以上が好ましいが、気泡がない場合や気泡が微小で速やかに消失する場合などでは保持時間はさらに短時間であってもよい。
【0096】
第1の工程において、減圧雰囲気は密閉空間を形成する段階で必要とし、それ以前の段階では必要としない。たとえば、一方の透明基板の一方の面の周辺部全周に所定の厚さのシール材を設け、シール材に囲まれた領域内の透明基板表面に硬化性樹脂組成物を供給して硬化性樹脂組成物の層を形成する場合、これらの段階では大気圧雰囲気で行うことができる。密閉空間の形成は以下のように行うことが好ましい。
【0097】
前記のようにして得られた硬化性樹脂組成物の層を有する透明基板と、他方の透明基板とを減圧チャンバーに入れ、所定の配置とする。すなわち、硬化性樹脂組成物の層を有する透明基板を、硬化性樹脂組成物の層を上にして水平な定盤上に乗せ、他方の透明基板を、上下しうるシリンダーの先に取り付けられた水平な定盤の下面に取り付け、硬化性樹脂組成物の層が他方の透明基板に接触させることなく、両透明基板を平行に位置させる。その後、減圧チャンバーを閉じて排気し、減圧チャンバー内を所定の減圧雰囲気とする。減圧チャンバー内が所定の減圧雰囲気となった後、シリンダーを作動させて両透明基板を硬化性樹脂組成物の層を介して重ね、両透明基板とシール材で囲まれた空間内に硬化性樹脂組成物を密閉し、積層前駆体を形成する。積層前駆体を形成した後、減圧チャンバー内を大気圧雰囲気の戻し、減圧チャンバーから積層前駆体を取り出す。
【0098】
両透明基板とシール材との密着強度は、積層前駆体を大気圧下に置いたとき、透明基板とシール材の界面から気体が進入しない程度であればよい。たとえば、シール材の表面に感圧接着剤の層を設けて透明基板とシール材とを密着させることができる。また必要な場合は、透明基板とシール材との界面に硬化性接着剤を設け、またはシール材を硬化性樹脂で形成し、積層前駆体を形成した後、減圧チャンバー内でまたは減圧チャンバーから取り出した後にこれら硬化性接着剤や硬化性樹脂を硬化させて透明基板とシール材との密着強度を高めることができる。
【0099】
第2の工程は、前記積層前駆体を大気圧下に置き、硬化性樹脂組成物を硬化させる工程である。硬化性樹脂組成物は熱硬化性の硬化性樹脂である場合は熱硬化させる。より好ましくは、硬化性樹脂組成物として光硬化性樹脂組成物を用い、光硬化させる。光硬化は紫外線ランプ等の光源から光を、透明基板を通して照射することによって行うことができる。光照射は3〜30分間行うのが好ましい。前記のように、積層前駆体を大気圧下でしばらく保持した後、硬化性樹脂組成物を硬化させることが好ましい。硬化性樹脂組成物を硬化させることにより硬化性樹脂組成物は硬化樹脂となって前記のような透明積層体が得られる。
【実施例】
【0100】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
例1〜12は実施例であり、例13〜16は比較例である。
【0101】
(リン含有量)
各試料中のリン含有量を、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(セイコーインスツル社製、SPS3100)を用い、原子吸光法により測定した。
【0102】
(粘度)
E型粘度計(東機産業社製、RE−85U)を用いて硬化性樹脂組成物の25℃での粘度V
25を測定した。ただし、組成物の粘度が100Pa・s以下の場合は、ロータとして1°34'×R24を用い、それ以上の粘度の場合は、ロータとして3°×R9.7を用いた。
【0103】
(透過率)
透明積層体の硬化樹脂の層が存在する部分の透明性の評価として透過率を測定した。透過率は、ヘイズガードII(東洋精機製作所社製)を用い、ASTM D1003に準じて測定した。
透明積層体の透過率は、たとえば合わせガラスとして用いた場合、視界がクリアになる点から、90%以上が好ましい。
【0104】
(防火試験)
建築基準法施工令第109条の2法第2条第9号の2ロの政令で定められた技術的基準に近い加熱状態を電気炉において提供して、より小型の試験体にて類似の防火試験を行った。100×100mmの合わせガラスを準備し、非加熱面のガラスを一部剥がして、硬化樹脂の層が空気に接触できるようにした。正面扉を開放した電気炉の扉面に、試験体の加熱面が恒温槽の槽内に向くようにして前記合わせガラス1枚を設置して電気炉の扉面を塞いで、試験体の非加熱面を空気と接触させた。建築基準法施工令第109条の2法第2条第9号の2ロの政令で定められた温度プロファイルとほぼ同様の温度プロファイルになるように恒温槽を昇温した。20分間の昇温過程において、非加熱面から火炎の発生がないものを「合格;○」、非加熱面から火炎の発生があるものを「不合格;×」とした。
【0105】
(ポリオール(a1))
ポリオール(c−1):アデカ社製の「FC450」(水酸基数:2、水酸基価:450mgKOH/g、リン含有量:7.2質量%)。
ポリオール(c−2):ウェストンケミカル社製の「Weston430」(水酸基数:3、水酸基価:395mgKOH/g、リン含有量:12.0質量%)。
ポリオール(c−3):丸菱油化社製の「ノンネンR0412−15」(水酸基数:2、水酸基価:40mgKOH/g、リン含有量:11.0質量%)。
ポリオール(c−4):丸菱油化社製の「ノンネンR0811−9」(水酸基数:2、水酸基価:142mgKOH/g、リン含有量:12.0質量%)。
ポリオール(c−5):クラリアント社製の「OP550」(水酸基数:2、水酸基価:145mgKOH/g、リン含有量:17.0質量%)。
【0106】
(ポリオール(a2))
ポリオール(d−1):亜鉛ヘキサシアノコバルテート−グライム錯体を触媒とし、開始剤にプロピレンオキシドを反応させ、触媒を失活させた後、水酸化カリウムを触媒とし、エチレンオキシドを反応させた。触媒を失活させた後、精製して、ポリオキシアルキレンポリオール(水酸基数:2、水酸基価:28mgKOH/g、オキシエチレン基の割合:24質量%)を得た。
ポリオール(d−2):水酸化カリウムを触媒とし、開始剤にプロピレンオキシドを反応させ、精製して、ポリオキシアルキレンポリオール(水酸基数:2、水酸基価:112mgKOH/g)を得た。
【0107】
(ポリオール成分(A1))
表1に示すモル比でポリオール(c−1)〜(c−5)と、ポリオール(d−1)〜(d−2)とを混合し、ポリオール成分(b−1)〜(b−8)を得た。
ポリオール成分(b−1)〜(b−8)中のリン含有量を測定した。結果を表1に示す。また、ポリオール成分(b−1)〜(b−8)の色相を観察した。結果を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
〔例1〕
ポリオール成分(b−3)の100質量部(0.05モル)にイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと記す。)の15.5質量部(0.1モル)を加え、ジブチル錫ジラウレート(以下、DBTDLと記す。)の0.01質量部の存在下、80℃で4時間反応させ、ウレタンプレポリマーを得た。該ウレタンプレポリマーにDBTDLの0.05質量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル(以下、HQMEと記す。)の0.05質量部を加え、50℃にて2−ヒドロキシエチルアクリレート(以下、HEAと記す。)の8.0質量部(0.1モル)を加え、60℃で撹拌し、JIS K1603−1に則ったNCO滴定にてイソシアネート基含有率の測定を行いながら、イソシアネート基がなくなるまで反応を行い、ウレタンアクリレートオリゴマー(e−1)を得た。
【0110】
ウレタンアクリレートオリゴマー(e−1)の40質量部、2−ヒドロキシブチルメタクリレート(以下、HBMAと記す。)の40質量部、n−ドデシルメタクリレート(以下、DMAと記す。)の20質量部を混合し、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(以下、HCHPKと記す。)の1質量部を加え、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0111】
〔例2〕
ポリオール(b−3)の代わりに、ポリオール(b−4)を用いた以外は、例1と同様にしてウレタンアクリレートオリゴマー(e−2)を得て、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0112】
〔例3〕
ポリオール(b−5)の100質量部(0.05モル)にIPDIの7.5質量部(0.065モル)を加え、DBTDLの0.01質量部の存在下、80℃で4時間反応させ、ウレタンプレポリマーを得た。該ウレタンプレポリマーにDBTDLの0.05質量部、HQMEの0.05質量部を加え、50℃にてHEAの5.0質量部(0.03モル)を加え、60℃で撹拌し、JIS K1603−1に則ったNCO滴定にてイソシアネート基含有率の測定を行いながら、イソシアネート基がなくなるまで反応を行い、ウレタンアクリレートオリゴマー(e−3)を得た。
ウレタンアクリレートオリゴマーの40質量部、HBMAの40質量部、DMAの20質量部を混合し、HCHPKの1質量部を加え、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0113】
〔例4〕
ポリオール(b−5)の代わりに、ポリオール(b−6)を用いた以外は、例3と同様にしてウレタンアクリレートオリゴマー(e−4)を得て、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0114】
〔例5〕
ポリオール(b−6)の100質量部(0.05モル)にIPDIの10質量部(0.06モル)を加え、DBTDLの0.01質量部の存在下、80℃で4時間反応させ、ウレタンプレポリマーを得た。該ウレタンプレポリマーにDBTDLの0.05質量部、HQMEの0.05質量部を加え、50℃にてHEAの5.0質量部(0.02モル)を加え、60℃で撹拌し、JIS K1603−1に則ったNCO滴定にてイソシアネート基含有率の測定を行いながら、イソシアネート基がなくなるまで反応を行い、ウレタンアクリレートオリゴマー(e−5)を得た。
ウレタンアクリレートオリゴマー(e−5)の40質量部、HBMAの40質量部、DMAの20質量部を混合し、HCHPKの1質量部を加え、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0115】
〔例6〕
例4で得られたウレタンアクリレートオリゴマー(e−4)の10質量部、HBMAの40質量部、例13で得られたウレタンアクリレートオリゴマー(e−8)の50質量部を混合し、HCHPKの1質量部を加え、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0116】
〔例7〕
例4で得られたウレタンアクリレートオリゴマー(e−4)の80質量部、HBMAの20質量部を混合し、HCHPKの1質量部を加え、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0117】
〔例8〕
例4で得られたウレタンアクリレートオリゴマー(e−4)の100質量部に、HCHPKの1質量部を加え、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0118】
〔例9〕
ポリオール(b−6)の代わりに、ポリオール(b−7)を用いた以外は、例4と同様にしてウレタンアクリレートオリゴマー(e−6)を得て、例6と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0119】
〔例10〕
例9で得られたウレタンアクリレートオリゴマー(e−6)の80質量部、HBMAの20質量部を混合し、HCHPKの1質量部を加え、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0120】
〔例11〕
ポリオール(b−6)の100質量部(0.05モル)にヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと記す。)の7.0質量部(0.065モル)を加え、DBTDLの0.01質量部の存在下、80℃で4時間反応させ、ウレタンプレポリマーを得た。該ウレタンプレポリマーにDBTDLの0.05質量部、HQMEの0.05質量部を加え、50℃にてHEAの5.0質量部(0.03モル)を加え、60℃で撹拌し、JIS K1603−1に則ったNCO滴定にてイソシアネート基含有率の測定を行いながら、イソシアネート基がなくなるまで反応を行い、ウレタンアクリレートオリゴマー(e−7)を得た。
ウレタンアクリレートオリゴマー(e−7)の10質量部、HBMAの40質量部、例13で得られたウレタンアクリレートオリゴマー(e−8)の50質量部を混合し、HCHPKの1質量部を加え、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0121】
〔例12〕
例4で得られたウレタンアクリレートオリゴマー(e−4)の10質量部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(以下、HPMAと記す。)の40質量部、例13で得られたウレタンアクリレートオリゴマー(e−8)の50質量部を混合し、HCHPKの1質量部を加え、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0122】
〔例13〕
ポリオール(b−3)の代わりに、ポリオール(b−8)を用いた以外は、例1と同様にしてウレタンアクリレートオリゴマー(e−8)を得た。
ウレタンアクリレートオリゴマー(e−8)の40質量部、HPMAの40質量部、DMAの20質量部を混合し、HCHPKの1質量部を加え、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0123】
〔例14〕
例4で得られたウレタンアクリレートオリゴマー(e−4)の5質量部、HPMAの40質量部、例13で得られたウレタンアクリレートオリゴマー(e−8)の55質量部を混合し、HCHPKの1質量部を加え、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0124】
〔例15〕
ポリオール(b−3)の代わりに、ポリオール(b−1)を用いた以外は、例1と同様にしてウレタンアクリレートオリゴマー(e−9)を得た。
ウレタンアクリレートオリゴマー(e−9)の40質量部、HBMAの40質量部、DMAの20質量部を混合し、HCHPKの1質量部を加え、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0125】
〔例16〕
ポリオール(b−3)の代わりに、ポリオール(b−2)を用いた以外は、例1と同様にしてウレタンアクリレートオリゴマー(e−10)を得た。
ウレタンアクリレートオリゴマー(e−10)の40質量部、HBMAの40質量部、DMAの20質量部を混合し、HCHPKの1質量部を加え、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0126】
〔不飽和ウレタンオリゴマー(A)の物性〕
各ウレタンアクリレートオリゴマーについて、リン含有量を測定した。結果を表2に示す。
【0127】
【表2】
【0128】
〔硬化性樹脂組成物の物性〕
例1〜16で得られた各硬化性樹脂組成物について、リン含有量を測定した。また、例1〜14で得られた各硬化性樹脂組成物について、粘度を測定した。結果を表3および表4に示す。
【0129】
〔積層体の製造〕
例1〜14で得られた各硬化性樹脂組成物を用いて透明積層体(合わせガラス)を以下のようにして製造した。
各硬化性樹脂組成物は、容器に入れたまま開放状態で減圧チャンバー内に収容し、減圧チャンバー内を約200Pa・sに減圧して10分間保持することで脱泡処理を行ってから使用した。
【0130】
透明基板として、長さ:610mm、幅:610mm、厚さ:2mmのソーダライムガラスを2枚用意した。一方の透明基板の4辺の端部に沿って、厚さ:1mm、幅:10mmの両面接着テープ(シール材)を貼った後、該両面接着テープの上面の離型フィルムを除去した。
【0131】
あらかじめウレタンアクリレートオリゴマー(共栄社化学社製、製品名「UF8001G」)100質量部とベンゾインイソプロピルエーテル(重合開始剤)の1質量部を均一に混合して調製したシール用紫外線硬化性樹脂を、前記両面接着テープの上面に、塗布厚さ約0.3mmでディスペンサーにて塗布し、シール用紫外線硬化性樹脂の層を形成した。透明基板の両面接着テープを貼った面上の、両面接着テープで囲まれた領域内に硬化性樹脂組成物を、ディスペンサーを用いて総質量が380gとなるように複数個所に滴下した。
【0132】
図1に示すように、両面接着テープ12(シール材)で囲まれた領域内に硬化性樹脂組成物14を滴下した透明基板10を、減圧チャンバー26内に水平に載置した。
他方の透明基板16を、減圧チャンバー26内の上定盤30に吸着パッド32を用いて保持させるとともに、透明基板10と平行に対向し、かつ透明基板10との距離が10mmとなるようにした。
【0133】
減圧チャンバー26を密封状態とし、真空ポンプ28を作動させて減圧チャンバー26内が約30Paとなるまで排気した。このとき、硬化性樹脂組成物14は、発泡が継続することはなかった。
シリンダー34によって上定盤30を降下させ、透明基板10と透明基板16とを2kPaの圧力で圧着し、1分間保持した。
約30秒で減圧チャンバー26内を大気圧に戻し、透明基板10と透明基板16とが硬化性樹脂組成物14の未硬化層を介して密着している積層前駆体を得た。
【0134】
シリンダー34によって上定盤30を上昇させ、上定盤30の吸着パッド32に貼着している積層前駆体を上定盤30から剥離させた。
積層前駆体の外周部の両面接着テープ12が存在する部分に対して、透明基板16越しに高圧水銀ランプを光源とするファイバー光源から紫外線を10分間照射し、両面接着テープ12の上面のシール用紫外線硬化性樹脂36を硬化させた。この後、積層前駆体を水平に保って約1時間静置した。
【0135】
なお、V
25が0.10Pa・s以下である、例1、2の硬化性樹脂組成物では真空チャンバー内を大気圧に戻したとき、シール材から液漏れが生じるため、上述の減圧積層方法の適用は困難であった。そこで、例1、2に関しては、あらかじめ一対の透明基板を周辺に貼った両面接着テープを介して貼り合わせ、上辺のシール材を一部剥がして開口部を設け、その隙間から注射筒を用いて所定量の硬化性樹脂組成物を透明基板間に注入した。ついで、縦置きに長時間静置して混入した気泡をシール材の上辺に集めた後、再度注入口を、集まった気泡を押し出すようにして両面接着テープを介して密着させ、封口した。この後、積層前駆体を水平に保って約24時間静置した。
【0136】
積層前駆体の両面方向から、均一に高圧水銀ランプにより、それぞれ1mW/cm
2の強度の紫外線を10分間照射して、硬化性樹脂組成物14を硬化させることにより透明積層体(合わせガラス)を得た。透明積層体の評価結果を表3および表4に示す。
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
リン含有量が0.1質量%以上の硬化性樹脂組成物を用いた例1〜12の透明積層体は、難燃性が良好で透明性も良好であった。
一方、例13、14の透明積層体は、リン含有量が0.1質量%未満の硬化性樹脂組成物を用いたため、難燃性が不十分であった。例15、16の硬化性樹脂組成物は、ポリオール(a1)の水酸基価が高いため、ウレタンアクリレートオリゴマーと単量体とが相溶しなかった。よって、例15、16においては透明積層体の製造は行わなかった。
実施例において用いたDMAを、n−オクタデシルメタクリレートに置き換えて同様に透明積層体を得た。表2に示した結果と同様な結果が得られた。