特許第5737265号(P5737265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5737265珪素酸化物及びその製造方法、負極、ならびにリチウムイオン二次電池及び電気化学キャパシタ
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  • 特許5737265-珪素酸化物及びその製造方法、負極、ならびにリチウムイオン二次電池及び電気化学キャパシタ 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737265
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】珪素酸化物及びその製造方法、負極、ならびにリチウムイオン二次電池及び電気化学キャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20150528BHJP
   C01B 33/113 20060101ALI20150528BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20150528BHJP
【FI】
   H01M4/48
   C01B33/113 A
   H01G11/30
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-233972(P2012-233972)
(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公開番号】特開2014-86254(P2014-86254A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2014年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】福岡 宏文
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 光具
(72)【発明者】
【氏名】上野 進
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 鉄也
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−168361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/48
C01B 33/113
H01G 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu含有率が100〜20,000ppm(質量)、Fe含有率が20〜1,000ppm(質量)、Al含有率が1,000ppm(質量)以下、平均粒子径が0.1〜30μmであり、BET比表面積が0.5〜30m2/gの粒子であることを特徴とする非水電解質二次電池負極材用珪素酸化物。
【請求項2】
Cu含有率は200〜17,000ppm(質量)、Fe含有率は、25〜800ppm(質量)、Al含有率が800ppm(質量)未満である請求項1記載の非水電解質二次電池負極材用珪素酸化物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の珪素酸化物を含む負極材からなる非水電解質二次電池負極。
【請求項4】
正極と、負極と、リチウムイオン導電性の非水電解質とを有するリチウムイオン二次電池であって、上記負極が請求項3記載の負極であるリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
正極と、負極と、導電性の電解質とを有する電気化学キャパシタであって、上記負極が、請求項3記載の負極である電気化学キャパシタ。
【請求項6】
非水電解質二次電池負極材に用いられる珪素酸化物の製造方法であって、SiOガスを発生する原料中のCu含有率が500〜100,000ppm、Fe含有率が100〜20,000ppm、Al含有率が3,000ppm以下であり、この原料を、不活性ガスの存在下もしくは不活性ガスの減圧下で、1,100〜1,600℃の温度範囲で加熱してSiOガスを発生させ、このSiOガスを500〜1,100℃の温度範囲で冷却・析出させることを特徴とする珪素酸化物の製造方法。
【請求項7】
上記原料が、酸化珪素粉末、又は二酸化珪素粉末と金属珪素粉末との混合物である請求項6記載の珪素酸化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池負極活物質として用いた際に、高容量及び良好なサイクル特性を有する非水電解質二次電池負極材用珪素酸化物その製造方法、これを用いた負極、ならびにリチウムイオン二次電池及び電気化学キャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型の電子機器、通信機器等の著しい発展に伴い、経済性と機器の小型化、軽量化の観点から、高エネルギー密度の非水電解質二次電池が強く要望されている。従来、この種の非水電解質二次電池の高容量化策として、例えば、負極材料にB,Ti,V,Mn,Co,Fe,Ni,Cr,Nb,Mo等の酸化物及びそれらの複合酸化物を用いる方法(特許第3008228号公報、特許第3242751号公報:特許文献1,2)、熔湯急冷したM100-xSix(x≧50at%,M=Ni,Fe,Co,Mn)を負極材として適用する方法(特許第3846661号公報:特許文献3)、負極材料に珪素の酸化物を用いる方法(特許第2997741号公報:特許文献4)、負極材料にSi22O,Ge22O及びSn22Oを用いる方法(特許第3918311号公報:特許文献5)等が知られている。
【0003】
この中で、酸化珪素はSiOx(ただし、xは酸化被膜のため理論値の1よりわずかに大きい)と表記することができるが、X線回折による分析では数nm〜数十nm程度のアモルファスシリコンがシリカ中に微分散している構造をとっている。このため、電池容量は現行の炭素と比較すれば重量あたりで5〜6倍と高く、さらには体積膨張も小さいため、比較的サイクル特性も良好であり、携帯電話、パソコン等のモバイル機器用途としては、十分使用可能といえた。しかしながら、車載用途としては、サイクル特性が不十分であり、さらには、高コストであるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3008228号公報
【特許文献2】特許第3242751号公報
【特許文献3】特許第3846661号公報
【特許文献4】特許第2997741号公報
【特許文献5】特許第3918311号公報
【特許文献6】特開2005−53750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、珪素酸化物系活物質は炭素系活物質に比べ、高コストであり、サイクル特性に劣るといった問題を有しており、さらなる電池特性の向上が求められていた。本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、珪素酸化物の高い電池容量と低い体積膨張率を維持しつつ、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池用の負極材中の負極活物質として有効な珪素酸化物とその製造方法、これを用いた負極、ならびにリチウムイオン二次電池及び電気化学キャパシタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、現行の炭素材料の電池容量を上回る活物質である珪素酸化物に着目し、さらなる電池特性の向上とコスト低減を目的に種々検討を行った。その結果、珪素酸化物中の特定の金属含有量が電池特性に影響を及ぼし、この金属含有量を特定の範囲とすることで、この珪素酸化物を活物質とする非水電解質二次電池負極材として用いることで、高容量でサイクル性に優れた非水電解質二次電池を得られることを知見し、本発明をなすに至ったものである。例えば、上記特許文献6(特開2005−53750号公報)には、銅触媒が記載されているが、特定の金属含有量が本発明とは異なる上に、特定の金属含有量が電池特性に影響を及ぼし、この金属含有量を特定の範囲とすることで、上記効果が得られることは記載も示唆もされておらず、上記点は本発明者らの新知見である。
【0007】
従って、本発明は、下記の珪素酸化物及びその製造方法、これを用いた負極、ならびにリチウムイオン二次電池及び電気化学キャパシタを提供する。
[1].Cu含有率が100〜20,000ppm(質量)、Fe含有率が20〜1,000ppm(質量)、Al含有率が1,000ppm(質量)以下、平均粒子径が0.1〜30μmであり、BET比表面積が0.5〜30m2/gの粒子であることを特徴とする非水電解質二次電池負極材用珪素酸化物。
[2].Cu含有率は200〜17,000ppm(質量)、Fe含有率は、25〜800ppm(質量)、Al含有率が800ppm(質量)未満である[1]記載の非水電解質二次電池負極材用珪素酸化物。
[3].[1]又は[2]記載の珪素酸化物を含む負極材からなる非水電解質二次電池負極。
[4].正極と、負極と、リチウムイオン導電性の非水電解質とを有するリチウムイオン二次電池であって、上記負極が[3]記載の負極であるリチウムイオン二次電池。
[5].正極と、負極と、導電性の電解質とを有する電気化学キャパシタであって、上記負極が、[3]記載の負極である電気化学キャパシタ。
[6].非水電解質二次電池負極材に用いられる珪素酸化物の製造方法であって、SiOガスを発生する原料中のCu含有率が500〜100,000ppm、Fe含有率が100〜20,000ppm、Al含有率が3,000ppm以下であり、この原料を、不活性ガスの存在下もしくは不活性ガスの減圧下で、1,100〜1,600℃の温度範囲で加熱してSiOガスを発生させ、このSiOガスを500〜1,100℃の温度範囲で冷却・析出させることを特徴とする珪素酸化物の製造方法。
[7].上記原料が、酸化珪素粉末、又は二酸化珪素粉末と金属珪素粉末との混合物である[6]記載の珪素酸化物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の得られた珪素酸化物を負極活物質として、これを含有する負極を、リチウムイオン二次電池や電気化学キャパシタに用いることで、高容量・サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池や電気化学キャパシタを得ることができる。また、珪素酸化物の製造方法についても、簡便かつ工業的規模の生産にも十分耐え得るものであり、安価な非水電解質二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例、比較例で用いた珪素酸化物製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の珪素酸化物は、水電解質二次電池負極材に用いられる珪素酸化物であって、珪素酸化物中のCu含有率が100〜20,000ppm(質量)、Fe含有率が20〜1,000ppm(質量)、Al含有率が1,000ppm(質量)以下である。上記金属含有率を上記範囲とすることで、非水電解質二次電池、例えばリチウムイオン二次電池の負極材に用いられた場合に、サイクル特性の向上が見られる。これら事象の原因については、調査中であるが、粒子内部中に一定範囲の上記金属が含有することで、結晶構造が変化し、Liの吸蔵、放出に伴う体積変化を抑制したり、イオン伝導性が向上したものと推測される。
【0011】
珪素酸化物中のCu含有率が100ppm未満では、サイクル特性が劣り、逆に20,000ppmより大きいと、不純物としてのCu含有量が大きくなりすぎて、充放電容量が減少してしまう。Cu含有率は200〜17,000ppmが好ましく、300〜15,000ppmがより好ましい。同様に、Fe含有率が20ppm未満では、サイクル特性が劣り、逆に1,000ppmより大きいと、不純物としてのFe含有量が大きくなりすぎて、充放電容量が減少してしまう。Fe含有率は、25〜800ppmが好ましく、30〜700ppmがより好ましい。また、Al含有率が1,000ppmより大きいと、充放電容量が低下するため、好ましくはない。Al含有率は800ppm未満が好ましく、500ppm未満がより好ましく、200ppm未満が特に好ましい。
【0012】
ここで、上記金属の含有率は、下記測定方法により測定することができる。
試料に50質量%ふっ酸を加え、反応が始まったら、さらに50質量%硝酸を加え、200℃に加熱して完全溶融した処理液をICP−AES(Agilent 730C)で分析・測定する。
【0013】
珪素酸化物は粒子であり、その粒子の平均粒子径は0.1〜30μmであり、0.2〜20μmが好ましい。平均粒子径を0.1μm以上とすることによって、比表面積が大きくなり、粒子表面の二酸化珪素の割合が大きくなることや、それに伴う非水電解質二次電池負極材中の負極活物質として用いた際に電池容量が低下することを抑制することができる。また、嵩密度が小さくなりすぎることが防止され、単位体積当たりの充放電容量が低下することを防ぐことができ、さらにその製造や、負極の形成も容易なものとなる。一方、30μm以下とすることによって、電極に塗布した際に異物となって、電池特性が著しく低下することを防止でき、電極形成が容易になり、集電体(銅箔等)から剥離するおそれを極力小さいものとすることができる。なお、本発明における平均粒子径とは、レーザー光回折法による粒度分布測定において累積重量が50%となる時の粒子径(メジアン径)のことである。
【0014】
また、珪素酸化物粒子のBET比表面積は0.5〜30m2/gであり、1〜20m2/gが好ましい。0.5m2/g以上とすることによって、表面活性を大きくすることができ、また電極作製時の結着剤の結着力を強くすることができる。従って充放電を繰り返した時のサイクル特性を向上させることができる。そして、30m2/g以下とすることによって、粒子表面の二酸化珪素の割合が大きくなって、リチウムイオン二次電池負極材中の負極活物質として用いた際に電池容量が低下することを抑制でき、電極作製時に溶媒の吸収量が大きくなることを抑制でき、結着性を維持するために結着剤を大量に添加することや、これにともなう導電性の低下によるサイクル特性が低下するおそれを防止することができる。なお、本発明におけるBET比表面積とは、N2ガス吸着量によって評価するBET1点法にて測定した時の値のことである。BET比表面積を上記範囲とするには、析出室温度の制御、酸化珪素の蒸気濃度の制御等により調整することができる。
【0015】
上記珪素酸化物(例えば、酸化珪素(SiO))は、一つの例として、原料中の金属成分の量を調整することで得ることができる。SiOガスを発生する原料中のCu含有率を500〜100,000ppm、Fe含有率が100〜20,000ppm、Al含有率が3,000ppm以下であり、この原料を、不活性ガスの存在下もしくは減圧下で、1,100〜1,600℃の温度範囲で加熱してSiOガスを発生させ、このSiOガスを500〜1,100℃の温度範囲で冷却・析出させる方法が挙げられる。
【0016】
上記原料は、酸化珪素粉末、二酸化珪素(SiO2)粉末とこれを還元する粉末との混合物を用いることができる。この還元粉末の具体的な例としては、金属珪素化合物、炭素含有粉末等が挙げられるが、金属珪素粉末を用いたものが、反応性を高める、収率を高めるといった点で効果的であり、好適に用いられる。二酸化珪素粉末と金属珪素粉末の場合、下記の反応スキームによって進行する。
Si(s)+SiO2(s)→2SiO(g)
【0017】
特に、二酸化珪素粉末と金属珪素粉末との混合物であれば、高い反応性で、かつ収率を高くできるため、高効率でSiOガスを発生させることができる。このため、このような混合粉末をSiOガスの発生原料として用いることによって、高容量・高サイクル特性の非水電解質二次電池用負極活物質として好適な珪素酸化物を製造することができる。
【0018】
二酸化珪素粉末と金属珪素粉末との混合物の混合割合は適宜選定されるが、金属珪素粉末の表面酸素及び反応炉中の微量酸素の存在を考慮すると、混合モル比は1<金属珪素粉末/二酸化珪素粉末<1.1が好ましく、1.01≦金属珪素粉末/二酸化珪素粉末≦1.08の範囲がより好ましい。
【0019】
本発明に用いる二酸化珪素粉末の平均粒子径は0.1μm以下が好ましく、0.005〜0.1μmがより好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.08μmである。また金属珪素粉末の平均粒子径は30μm以下が好ましく、0.05〜30μmがより好ましく、さらに好ましくは0.1〜20μmである。二酸化珪素粉末の平均粒子径が0.1μmより大きい、又は金属珪素粉末の平均粒子径が30μmより大きいと、反応性が低下するおそれがある。
【0020】
SiOガスを発生する原料中のCu含有率は、500〜100,000ppmであることが重要であり、1,000〜80,000ppmが好ましく、2,000〜70,000ppmがより好ましい。原料中のCu含有率が500ppmより少ないと、得られる珪素酸化物のCu含有率が、100ppm未満となり、本発明の珪素酸化物粒子は得られない。逆に原料中のCu含有率が100,000ppmより多いと、得られる珪素酸化物中のCu含有率が、20,000ppmより大きくなり、同じく本発明の珪素酸化物粒子は得られない。また、SiOガスを発生する原料中のFe含有率は、100〜20,000ppmであることが重要であり、200〜15,000ppmが好ましく、300〜10,000ppmがより好ましい。原料中のFe含有率が100ppmより少ないと、得られる珪素酸化物のFe含有率が、20ppm未満となり、本発明の珪素酸化物粒子は得られない。逆に原料中のFe含有率が20,000ppmより多いと、得られる珪素酸化物中のFe含有率が、1,000ppmより大きくなり、同じく本発明の珪素酸化物粒子は得られない。一方で、SiOガスを発生する原料中のAl含有率に関しては、反応には不活性なものであるため、できるだけ少ないことが好ましく(0でもよく)、Al含有率は3,000ppm以下、2,500ppm以下が好ましく、2,000ppm以下がより好ましい。
【0021】
上記原料中の金属含有率の調整は特に制限されるものではないが、以下方法により調整することができる。
[1]Cu含有率
金属珪素中には殆ど含有されておらず、Cu又はCu化合物を所定量添加する方法が挙げられる。
[2]Fe含有率
Fe又はFe化合物を所定量添加する方法、Feを含む金属珪素を適宜選定する方法が挙げられる。ケミカルグレードの金属珪素を選定して使用する方法が簡便である。
[3]Al含有率
金属珪素を適宜選定する方法が一般的であり、ケミカルグレード、セラミックスグレード、半導体グレードの金属珪素を適宜選定する方法が簡便である。
【0022】
上記SiOガスを発生する原料を、不活性ガスの存在下又は不活性ガスの減圧下で、1,100〜1,600℃の温度範囲で加熱してSiOガスを発生させ、冷却、析出させて析出物を得る。加熱温度が1,100℃未満では反応が進行し難く、SiOガスの発生量が低下してしまうため、収率が著しく低下する。また、1,600℃を超えると、混合原料粉末が溶融してしまって反応性が低下し、SiOガス発生量が少なくなったり、反応炉材の選定が困難になるという問題が発生する。このため、加熱温度は1,100〜1,600℃の範囲内とする。また、不活性ガス存在下(大気圧)又は不活性ガスの減圧下でないと、発生させたSiOガスが安定に存在せず、珪素酸化物の反応効率が低下し、歩留りが低下する。
【0023】
冷却・析出させた析出物を回収する回収方法についても、特に限定されるものではないが、例えば冷却ゾーンにて析出基体に析出させる方法、冷却雰囲気中に噴霧する方法等が挙げられる。一般的には、上述の混合ガスを冷却ゾーンに流し、析出基体上に析出させる方法がよい。この場合、析出させる析出基体の種類(材質)も特に限定されないが、加工性の点で、SUSやモリブデン、タングステンといった高融点金属が好適に用いられる。また、冷却ゾーンの析出温度は500〜1,100℃であることが重要であり、特には600〜1,000℃が好ましい。析出温度が500℃以上であれば、反応生成物のBET比表面積が30m2/g以上と大きくなることを抑制しやすい。また1,100℃以下であれば、析出基体の材質の選定は容易であり、装置コストが上昇することもない。ここで、析出基体の温度の制御はヒーター加熱、断熱性能(断熱材の厚み)、強制冷却等により適宜行うことができる。
【0024】
上記析出物を必要により適宜、公知の粉砕機と分級機が用いて、上記所望の粒子径とすることができる。この場合、Feの混入がない粉砕装置で目的とする粒度に粉砕することが好ましい。Feの混入がない粉砕装置とは、粉砕部及び接粉部を、Feを含まない材質とすることが望ましい。これら材質は、特に限定されるものではないが、アルミナ質、ジルコニア質、サイアロン質、炭化珪素質、窒化珪素質といったセラミックス材が好適に用いることができる。
【0025】
Feが異物として混入すると非水電解質二次電池、例えばリチウムイオン二次電池の負極材中の負極活物質に用いられた場合に、短絡による発火事故の原因となり、安全性が損なわれるため、好ましくはない。
【0026】
珪素酸化物粒子に導電性を付与するために、化学蒸着処理又はメカニカルアロイングによって炭素蒸着、炭素被覆を行うことができる。なお、炭素被覆を行う場合、炭素被覆量は、炭素被覆された珪素酸化物粒子の総重量に占める割合が1〜50質量%、特には1〜30質量%とすることが好ましい。
【0027】
炭素蒸着は、常圧下又は減圧下で、600〜1,200℃の温度範囲、より好ましくは800〜1,100℃の温度範囲で、炭化水素系化合物ガス及び/又は蒸気を蒸着用反応炉内に導入して、公知の熱化学蒸着処理等を施すことにより行うことができる。また、珪素−炭素層の界面に炭化珪素層が形成された珪素複合体粒子としてもよい。この炭化水系化合物としては、上記の熱処理温度範囲内で熱分解して炭素を生成するものが選択される。例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の他、エチレン、プロピレン、ブチレン、アセチレン等の炭化水素の単独もしくは混合物、あるいは、メタノール、エタノール等のアルコール化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレン、フェノール、クレゾール、ニトロベンゼン、クロルベンゼン、インデン、クマロン、ピリジン、アントラセン、フェナントレン等の1環ないし3環の芳香族炭化水素もしくはこれらの混合物が挙げられる。また、タール蒸留工程で得られるガス軽油、クレオソート油、アントラセン油、ナフサ分解タール油も、単独もしくは混合物として用いることができる。
【0028】
珪素酸化物(粒子)の負極(負極材中の固形分)中の含有量は20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。
【0029】
[非水電解質二次電池用負極材]
このようにして得られた珪素酸化物粒子は、非水電解質二次電池用負極活物質として好適であり、この珪素酸化物粒子を含有する非水電解質二次電池負極材、この負極材からなる非水電解質二次電池負極とすることができる。これを用いた非水電解質二次電池は、酸化珪素の高い電池容量と低い体積膨張率を維持しつつ、サイクル特性に優れ、これらの特性が求められる車載用として、特に好適である。
【0030】
負極材には、必要に応じて導電剤、ポリイミド樹脂、芳香族ポリイミド樹脂等の結着剤N−メチルピロリドン又は水等の溶剤等を配合してもよい。上記導電剤の種類は特に限定されず、構成された電池において、分解や変質を起こさない電子伝導性の材料であればよい。具体的には、Al,Ti,Fe,Ni,Cu,Zn,Ag,Sn,Si等の金属粉末や金属繊維又は天然黒鉛、人造黒鉛、各種のコークス粉末、メソフェーズ炭素、気相成長炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、各種の樹脂焼成体等の黒鉛を用いることができる。なお、上記成分を配合する配合する場合、その負極(負極材中の固形分)中の含有量は、通常導電剤20〜80質量%、結着剤5〜20質量%である。
【0031】
[負極]
本発明の非水電解質二次電池負極材は、例えば以下のように負極(成型体)とすることができる。珪素酸化物粒子と、必要に応じて上記導電剤と、ポリイミド樹脂、芳香族ポリイミド樹脂等の結着剤等の他の添加剤とに、N−メチルピロリドン又は水等の溶剤を混練してペースト状の合剤とし、この合剤を集電体のシートに塗布する。この場合、集電体としては、銅箔、ニッケル箔等、通常、負極の集電体として使用されている材料であれば、特に厚さ、表面処理の制限なく使用することができる。なお、合剤をシート状に成形する成形方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0032】
[リチウムイオン二次電池]
本発明のリチウムイオン二次電池は、少なくとも、正極と、上記珪素酸化物粒子を負極活物質として含有する負極と、リチウムイオン導電性の非水電解質とを有するリチウムイオン二次電池である。このリチウムイオン二次電池は、電池特性、特に充放電容量やサイクル特性に優れたものとなる。
【0033】
リチウムイオン二次電池は、上記本発明の珪素酸化物粒子を負極活物質として用いられた負極材を用いる点に特徴を有するものであって、その他の正極、電解質、セパレータ等の材料及び電池形状等は公知のものを使用することができ、特に限定されない。例えば、正極活物質としてはLiCoO2、LiNiO2、LiMn24、V25、MnO2、TiS2、MoS2等の遷移金属の酸化物及びカルコゲン化合物等が用いられる。
【0034】
また電解質としては、例えば、過塩素酸リチウム等のリチウム塩を含む非水溶液が用いられ、非水溶媒としてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、2−メチルテトラヒドロフラン等の単体又は2種類以上が組み合わせて用いられる。また、それ以外の種々の非水系電解質や固体電解質も使用することができる。
【0035】
正極と負極の間に用いられるセパレータは、電解液に対して安定であり、保液性に優れていれば特に制限はないが、一般的にはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン及びこれらの共重合体やアラミド樹脂等の多孔質シート又は不織布が挙げられる。これらは単層あるいは多層に重ね合わせて使用してもよく、表面に金属酸化物等のセラミックスを積層してもよい。また、多孔質ガラス、セラミックス等も使用される。
【0036】
[電気化学キャパシタ]
本発明の電気化学キャパシタは、少なくとも、正極と、上記珪素酸化物粒子を負極活物質として含有する負極と、導電性の電解質とを有する電気化学キャパシタである。このため、本発明の珪素酸化物粒子が負極材中の負極活物質に用いられた電気化学キャパシタも、電池特性、特に充放電容量やサイクル特性に優れたものとなる。また、電気化学キャパシタを得る場合は、電気化学キャパシタは、上記負極活物質を用いる点に特徴を有し、その他の電解質、セパレータ等の材料及びキャパシタ形状等は限定されない。例えば、電解質として六フッ化リン酸リチウム、過塩素リチウム、ホウフッ化リチウム、六フッ化砒素酸リチウム等のリチウム塩を含む非水溶液が用いられ、非水溶媒としてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、2−メチルテトラヒドロフラン等の1種又は2種類以上を組み合わせて用いられる。また、それ以外の種々の非水系電解質や固体電解質も使用できる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0038】
[実施例1]
図1に示す横型管状炉を用いて、珪素酸化物を製造した。
具体的には、原料2として平均粒子径が8μmのケミカルグレード(ケミカルG)金属珪素粉末(Fe含有率;2,000ppm、Al;1,200ppm)と、ヒュームドシリカ(SiO2)粉末(平均粒子径12nm、BET比表面積:200m2/g、金属不純物;0ppm)の等モル混合物の量に対して、金属銅粉末(325#Pass)を3質量%添加・混合した混合粉末を100g準備し、内径120mmのアルミナ製の反応管4の内に仕込んだ。なお、この混合原料粉末のCu含有率は2.91質量%、Fe含有率は640ppm(質量)、Al含有率は380ppm(質量)であった。
【0039】
次に、反応管4内を真空ポンプ5にて排気して20Pa以下に減圧しながら、ヒーター1によって、300℃/時間の昇温速度で1,400℃まで昇温させ、1時間の保持を行った。なお、この際、析出温度を一定温度とするため、析出ゾーンヒーター6を加熱、900℃に保持した。その後、ヒーター加熱を停止し、室温まで冷却した。冷却後、析出基体3上に析出した析出物を回収したところ、析出物は黒色塊状物であり、回収量は88gであった。また、反応残量は、6.2g(反応率;93.8%)であった。次に、この析出物50gを2Lアルミナ製ボールミルにて乾式粉砕を行い、珪素酸化物粒子を得た。得られた珪素酸化物粒子の平均粒子径とBET比表面積を測定した。珪素酸化物粒子中のCu、Fe、Al含有率を、試料に50質量%ふっ酸を加え、反応が始まったら、さらに50質量%硝酸を加え、200℃に加熱して完全溶融した処理液をICP−AES(Agilent 730C)で分析・測定した。製造条件を表1、評価結果を表2,3に示す。
【0040】
[電池評価]
次に、以下の方法によって、得られた珪素酸化物粒子を負極活物質として用いて電池評価を行った。
まず、上記で得られた処理粉末に人造黒鉛(平均粒子径10μm)を45質量%、ポリイミドを10質量%加え、さらにN−メチルピロリドンを加えてスラリーとした。
このスラリーを厚さ12μmの銅箔に塗布し、80℃で1時間乾燥後、ローラープレスにより電極を加圧成形し、この電極を350℃で1時間真空乾燥した後、2cm2に打ち抜き、負極とした。
そして、得られた負極の充放電特性を評価するために、対極にリチウム箔を使用し、非水電解質として六フッ化リンリチウムをエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1/1(体積比)混合液に1モル/Lの濃度で溶解させた非水電解質溶液を用い、セパレータとして厚さ30μmのポリエチレン製微多孔質フィルムを用いた評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
作製した評価用リチウムイオン二次電池を、一晩室温で放置した後、二次電池充放電試験装置((株)ナガノ製)を用いて、テストセルの電圧が0Vに達するまで0.5mA/cm2の定電流で充電を行い、0Vに達した後は、セル電圧を0Vに保つように電流を減少させて充電を行った。そして、電流値が40μA/cm2を下回った時点で充電を終了した。放電は0.5mA/cm2の定電流で行い、セル電圧が2.0Vを上回った時点で放電を終了し、放電容量を求めた。
また、以上の充放電試験を繰り返し、評価用リチウムイオン二次電池の50サイクルの充放電試験を行い、50サイクル後の放電容量を評価した。その電池評価の評価結果を表2,3に示す。
【0041】
[実施例2]
金属銅の添加率を800ppm(質量)とした他は実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0042】
[実施例3]
金属銅の添加率を9質量%とした他は実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0043】
[実施例4]
金属珪素粉末をセラミックスグレード(A)(Fe含有率;400ppm、Al含有率;230ppm)とした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0044】
[実施例5]
実施例1と同様のケミカルグレード金属珪素粉末に鉄粉末(#325Pass)を5質量%添加した他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0045】
[実施例6]
析出ゾーン温度を600℃とした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0046】
[実施例7]
析出ゾーン温度を1,050℃とした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0047】
[比較例1]
金属銅粉末を添加しない他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0048】
[比較例2]
金属銅粉末の添加率を50ppmとした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0049】
[比較例3]
金属銅粉末の添加率を12%とした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0050】
[比較例4]
金属珪素粉末をセラミックスグレード(B)(Fe含有率;250ppm、Al含有率;180ppm)とした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0051】
[比較例5]
実施例1と同様のケミカルグレード金属珪素粉末に鉄粉末(#325Pass)を7.5%添加した他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0052】
[比較例6]
金属珪素粉末を低純度グレード(Fe含有率;35,000ppm、Al含有率;15,000ppm)とした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0053】
[比較例7]
析出ゾーン温度を450℃とした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0054】
[比較例8]
析出ゾーン温度を1,150℃とした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
表2,3に示すように、実施例1の製造方法で得られた珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が5.3m2/g、Cu含有率が3,200ppm、Fe含有率が65ppm、Al含有率が160ppmの粒子であった。また、実施例2の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.7μm、BET比表面積が5.8m2/g、Cu含有率が130ppm、Fe含有率が62ppm、Al含有率が150ppmの粒子であった。そして、実施例3の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が4.8m2/g、Cu含有率が16,000ppm、Fe含有率が60ppm、Al含有率が150ppmの粒子であった。そして、実施例4の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が5.4m2/g、Cu含有率が3,200ppm、Fe含有率が25ppm、Al含有率が140ppmの粒子であった。そして、実施例5の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.7μm、BET比表面積が5.1m2/g、Cu含有率が3,100ppm、Fe含有率が900ppm、Al含有率が170ppmの粒子であった。そして、実施例6の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が23.8m2/g、Cu含有率が3,100ppm、Fe含有率が67ppm、Al含有率が160ppmの粒子であった。そして、実施例7の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.7μm、BET比表面積が2.3m2/g、Cu含有率が3,200ppm、Fe含有率が64ppm、Al含有率が150ppmの粒子であった。
【0059】
これに対し、比較例1の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.7μm、BET比表面積が5.5m2/g、Cu含有率が0ppm、Fe含有率が67ppm、Al含有率が150ppmの粒子であった。また、比較例2の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が5.5m2/g、Cu含有率が8ppm、Fe含有率が65ppm、Al含有率が160ppmの粒子であった。そして、比較例3の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が4.3m2/g、Cu含有率が25,000ppm、Fe含有率が68ppm、Al含有率が150ppmの粒子であった。そして、比較例4の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.7μm、BET比表面積が5.3m2/g、Cu含有率が3,200ppm、Fe含有率が12ppm、Al含有率が130ppmの粒子であった。そして、比較例5の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が5.0m2/g、Cu含有率が3,100ppm、Fe含有率が1,300ppm、Al含有率が170ppmの粒子であった。そして、比較例6の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が5.2m2/g、Cu含有率が3,100ppm、Fe含有率が680ppm、Al含有率が1,200ppmの粒子であった。そして、比較例7の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が37.8m2/g、Cu含有率が3,200ppm、Fe含有率が63ppm、Al含有率が150ppmの粒子であった。そして、比較例8の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が0.4m2/g、Cu含有率が3,200ppm、Fe含有率が65ppm、Al含有率が160ppmの粒子であった。
【0060】
表2に示すように、実施例1の反応率は93.8%であり、実施例1の珪素酸化物粒子が用いられた負極材を負極に使用したリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,310mAh/g、初回放電容量1,010mAh/g、50サイクル目の放電容量980mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が97%と、高容量で、かつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0061】
実施例2の反応率は90.7%であり、実施例2の珪素酸化物粒子が用いられた負極材を負極に使用したリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,300mAh/g、初回放電容量1,010mAh/g、50サイクル目の放電容量970mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が96%と、高容量で、かつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0062】
実施例3の反応率は91.9%であり、実施例3の珪素酸化物粒子が用いられた負極材を負極に使用したリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,270mAh/g、初回放電容量980mAh/g、50サイクル目の放電容量960mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が98%と、高容量で、かつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0063】
実施例4の反応率は93.2%であり、実施例4の珪素酸化物粒子が用いられた負極材を負極に使用したリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,300mAh/g、初回放電容量1,000mAh/g、50サイクル目の放電容量970mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が97%と、高容量で、かつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0064】
実施例5の反応率は91.1%であり、実施例5の珪素酸化物粒子が用いられた負極材を負極に使用したリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,290mAh/g、初回放電容量1,000mAh/g、50サイクル目の放電容量980mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が98%と、高容量で、かつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0065】
実施例6の反応率は93.7%であり、実施例6の珪素酸化物粒子が用いられた負極材を負極に使用したリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,270mAh/g、初回放電容量970mAh/g、50サイクル目の放電容量940mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が97%と、高容量で、かつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0066】
実施例7の反応率は93.7%であり、実施例7の珪素酸化物粒子が用いられた負極材を負極に使用したリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,310mAh/g、初回放電容量1,010mAh/g、50サイクル目の放電容量970mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が96%と、高容量で、かつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
以上のように、実施例は優れた反応材料であり、高容量で、かつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0067】
これに対し、比較例1の反応率は88.5%と、実施例1〜7に比べ明らかに劣る反応原料であった。また、比較例1の珪素酸化物粒子が用いられたリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,300mAh/g、初回放電容量990mAh/g、50サイクル目の放電容量940mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が95%であり、実施例1〜7の珪素酸化物粒子が用いられた場合に比べ、サイクル性が劣るリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0068】
比較例2の反応率は89.0%と、実施例1〜7に比べ明らかに劣る反応原料であった。また、比較例2の珪素酸化物粒子が用いられたリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,300mAh/g、初回放電容量990mAh/g、50サイクル目の放電容量940mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が95%であり、実施例1〜7の珪素酸化物粒子を用いた場合に比べ、サイクル性が劣るリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0069】
比較例3の反応率は89.7%と、実施例1〜7に比べ明らかに劣る反応原料であった。また、比較例3の珪素酸化物粒子が用いられたリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,210mAh/g、初回放電容量930mAh/g、50サイクル目の放電容量900mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が97%であり、実施例1〜7の珪素酸化物粒子を用いた場合に比べ、明らかに低容量のリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0070】
比較例4の反応率は93.3%と、優れた反応原料であることを確認したものの、比較例4の珪素酸化物粒子が用いられたリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,290mAh/g、初回放電容量1,000mAh/g、50サイクル目の放電容量950mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が95%であり、実施例1〜7の珪素酸化物粒子を用いた場合に比べ、サイクル性が劣るリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0071】
比較例5の反応率は88.2%と、実施例1〜7に比べ明らかに劣る反応原料であった。また、比較例5の珪素酸化物粒子が用いられたリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,250mAh/g、初回放電容量960mAh/g、50サイクル目の放電容量930mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が97%であり、実施例1〜7の珪素酸化物粒子を用いた場合に比べ、明らかに低容量のリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0072】
比較例6の反応率は91.6%と、優れた反応原料であることを確認したものの、比較例6の珪素酸化物粒子が用いられたリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,200mAh/g、初回放電容量920mAh/g、50サイクル目の放電容量870mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が95%であり、実施例1〜7の珪素酸化物粒子を用いた場合に比べ、明らかに低容量でサイクル性が劣るリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0073】
比較例7の反応率は93.8%と、優れた反応原料であることを確認したものの、比較例7の珪素酸化物粒子が用いられたリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,220mAh/g、初回放電容量940mAh/g、50サイクル目の放電容量900mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が96%であり、実施例1〜7の珪素酸化物粒子を用いた場合に比べ、明らかに低容量のリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0074】
比較例8の反応率は93.7%と、優れた反応原料であることを確認したものの、比較例8の珪素酸化物粒子が用いられたリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,310mAh/g、初回放電容量1,000mAh/g、50サイクル目の放電容量920mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が92%であり、実施例1〜7の珪素酸化物粒子を用いた場合に比べ、サイクル性が劣るリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0076】
1 ヒーター
2 原料
3 析出基体
4 反応管
5 真空ポンプ
6 析出ゾーンヒーター
図1