【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0038】
[実施例1]
図1に示す横型管状炉を用いて、珪素酸化物を製造した。
具体的には、原料2として平均粒子径が8μmのケミカルグレード(ケミカルG)金属珪素粉末(Fe含有率;2,000ppm、Al;1,200ppm)と、ヒュームドシリカ(SiO
2)粉末(平均粒子径12nm、BET比表面積:200m
2/g、金属不純物;0ppm)の等モル混合物の量に対して、金属銅粉末(325#Pass)を3質量%添加・混合した混合粉末を100g準備し、内径120mmのアルミナ製の反応管4の内に仕込んだ。なお、この混合原料粉末のCu含有率は2.91質量%、Fe含有率は640ppm(質量)、Al含有率は380ppm(質量)であった。
【0039】
次に、反応管4内を真空ポンプ5にて排気して20Pa以下に減圧しながら、ヒーター1によって、300℃/時間の昇温速度で1,400℃まで昇温させ、1時間の保持を行った。なお、この際、析出温度を一定温度とするため、析出ゾーンヒーター6を加熱、900℃に保持した。その後、ヒーター加熱を停止し、室温まで冷却した。冷却後、析出基体3上に析出した析出物を回収したところ、析出物は黒色塊状物であり、回収量は88gであった。また、反応残量は、6.2g(反応率;93.8%)であった。次に、この析出物50gを2Lアルミナ製ボールミルにて乾式粉砕を行い、珪素酸化物粒子を得た。得られた珪素酸化物粒子の平均粒子径とBET比表面積を測定した。珪素酸化物粒子中のCu、Fe、Al含有率を、試料に50質量%ふっ酸を加え、反応が始まったら、さらに50質量%硝酸を加え、200℃に加熱して完全溶融した処理液をICP−AES(Agilent 730C)で分析・測定した。製造条件を表1、評価結果を表2,3に示す。
【0040】
[電池評価]
次に、以下の方法によって、得られた珪素酸化物粒子を負極活物質として用いて電池評価を行った。
まず、上記で得られた処理粉末に人造黒鉛(平均粒子径10μm)を45質量%、ポリイミドを10質量%加え、さらにN−メチルピロリドンを加えてスラリーとした。
このスラリーを厚さ12μmの銅箔に塗布し、80℃で1時間乾燥後、ローラープレスにより電極を加圧成形し、この電極を350℃で1時間真空乾燥した後、2cm
2に打ち抜き、負極とした。
そして、得られた負極の充放電特性を評価するために、対極にリチウム箔を使用し、非水電解質として六フッ化リンリチウムをエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1/1(体積比)混合液に1モル/Lの濃度で溶解させた非水電解質溶液を用い、セパレータとして厚さ30μmのポリエチレン製微多孔質フィルムを用いた評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
作製した評価用リチウムイオン二次電池を、一晩室温で放置した後、二次電池充放電試験装置((株)ナガノ製)を用いて、テストセルの電圧が0Vに達するまで0.5mA/cm
2の定電流で充電を行い、0Vに達した後は、セル電圧を0Vに保つように電流を減少させて充電を行った。そして、電流値が40μA/cm
2を下回った時点で充電を終了した。放電は0.5mA/cm
2の定電流で行い、セル電圧が2.0Vを上回った時点で放電を終了し、放電容量を求めた。
また、以上の充放電試験を繰り返し、評価用リチウムイオン二次電池の50サイクルの充放電試験を行い、50サイクル後の放電容量を評価した。その電池評価の評価結果を表2,3に示す。
【0041】
[実施例2]
金属銅の添加率を800ppm(質量)とした他は実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0042】
[実施例3]
金属銅の添加率を9質量%とした他は実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0043】
[実施例4]
金属珪素粉末をセラミックスグレード(A)(Fe含有率;400ppm、Al含有率;230ppm)とした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0044】
[実施例5]
実施例1と同様のケミカルグレード金属珪素粉末に鉄粉末(#325Pass)を5質量%添加した他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0045】
[実施例6]
析出ゾーン温度を600℃とした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0046】
[実施例7]
析出ゾーン温度を1,050℃とした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0047】
[比較例1]
金属銅粉末を添加しない他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0048】
[比較例2]
金属銅粉末の添加率を50ppmとした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0049】
[比較例3]
金属銅粉末の添加率を12%とした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0050】
[比較例4]
金属珪素粉末をセラミックスグレード(B)(Fe含有率;250ppm、Al含有率;180ppm)とした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0051】
[比較例5]
実施例1と同様のケミカルグレード金属珪素粉末に鉄粉末(#325Pass)を7.5%添加した他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0052】
[比較例6]
金属珪素粉末を低純度グレード(Fe含有率;35,000ppm、Al含有率;15,000ppm)とした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0053】
[比較例7]
析出ゾーン温度を450℃とした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0054】
[比較例8]
析出ゾーン温度を1,150℃とした他は、実施例1と同様の方法で珪素酸化物粒子を製造し、実施例1と同様の方法で物性及び電池特性の評価を行った。条件を表1に、それらの評価結果を表2,3に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
表2,3に示すように、実施例1の製造方法で得られた珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が5.3m
2/g、Cu含有率が3,200ppm、Fe含有率が65ppm、Al含有率が160ppmの粒子であった。また、実施例2の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.7μm、BET比表面積が5.8m
2/g、Cu含有率が130ppm、Fe含有率が62ppm、Al含有率が150ppmの粒子であった。そして、実施例3の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が4.8m
2/g、Cu含有率が16,000ppm、Fe含有率が60ppm、Al含有率が150ppmの粒子であった。そして、実施例4の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が5.4m
2/g、Cu含有率が3,200ppm、Fe含有率が25ppm、Al含有率が140ppmの粒子であった。そして、実施例5の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.7μm、BET比表面積が5.1m
2/g、Cu含有率が3,100ppm、Fe含有率が900ppm、Al含有率が170ppmの粒子であった。そして、実施例6の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が23.8m
2/g、Cu含有率が3,100ppm、Fe含有率が67ppm、Al含有率が160ppmの粒子であった。そして、実施例7の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.7μm、BET比表面積が2.3m
2/g、Cu含有率が3,200ppm、Fe含有率が64ppm、Al含有率が150ppmの粒子であった。
【0059】
これに対し、比較例1の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.7μm、BET比表面積が5.5m
2/g、Cu含有率が0ppm、Fe含有率が67ppm、Al含有率が150ppmの粒子であった。また、比較例2の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が5.5m
2/g、Cu含有率が8ppm、Fe含有率が65ppm、Al含有率が160ppmの粒子であった。そして、比較例3の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が4.3m
2/g、Cu含有率が25,000ppm、Fe含有率が68ppm、Al含有率が150ppmの粒子であった。そして、比較例4の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.7μm、BET比表面積が5.3m
2/g、Cu含有率が3,200ppm、Fe含有率が12ppm、Al含有率が130ppmの粒子であった。そして、比較例5の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が5.0m
2/g、Cu含有率が3,100ppm、Fe含有率が1,300ppm、Al含有率が170ppmの粒子であった。そして、比較例6の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が5.2m
2/g、Cu含有率が3,100ppm、Fe含有率が680ppm、Al含有率が1,200ppmの粒子であった。そして、比較例7の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が37.8m
2/g、Cu含有率が3,200ppm、Fe含有率が63ppm、Al含有率が150ppmの粒子であった。そして、比較例8の珪素酸化物粒子は、平均粒子径が5.8μm、BET比表面積が0.4m
2/g、Cu含有率が3,200ppm、Fe含有率が65ppm、Al含有率が160ppmの粒子であった。
【0060】
表2に示すように、実施例1の反応率は93.8%であり、実施例1の珪素酸化物粒子が用いられた負極材を負極に使用したリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,310mAh/g、初回放電容量1,010mAh/g、50サイクル目の放電容量980mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が97%と、高容量で、かつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0061】
実施例2の反応率は90.7%であり、実施例2の珪素酸化物粒子が用いられた負極材を負極に使用したリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,300mAh/g、初回放電容量1,010mAh/g、50サイクル目の放電容量970mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が96%と、高容量で、かつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0062】
実施例3の反応率は91.9%であり、実施例3の珪素酸化物粒子が用いられた負極材を負極に使用したリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,270mAh/g、初回放電容量980mAh/g、50サイクル目の放電容量960mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が98%と、高容量で、かつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0063】
実施例4の反応率は93.2%であり、実施例4の珪素酸化物粒子が用いられた負極材を負極に使用したリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,300mAh/g、初回放電容量1,000mAh/g、50サイクル目の放電容量970mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が97%と、高容量で、かつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0064】
実施例5の反応率は91.1%であり、実施例5の珪素酸化物粒子が用いられた負極材を負極に使用したリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,290mAh/g、初回放電容量1,000mAh/g、50サイクル目の放電容量980mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が98%と、高容量で、かつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0065】
実施例6の反応率は93.7%であり、実施例6の珪素酸化物粒子が用いられた負極材を負極に使用したリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,270mAh/g、初回放電容量970mAh/g、50サイクル目の放電容量940mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が97%と、高容量で、かつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0066】
実施例7の反応率は93.7%であり、実施例7の珪素酸化物粒子が用いられた負極材を負極に使用したリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,310mAh/g、初回放電容量1,010mAh/g、50サイクル目の放電容量970mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が96%と、高容量で、かつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
以上のように、実施例は優れた反応材料であり、高容量で、かつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0067】
これに対し、比較例1の反応率は88.5%と、実施例1〜7に比べ明らかに劣る反応原料であった。また、比較例1の珪素酸化物粒子が用いられたリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,300mAh/g、初回放電容量990mAh/g、50サイクル目の放電容量940mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が95%であり、実施例1〜7の珪素酸化物粒子が用いられた場合に比べ、サイクル性が劣るリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0068】
比較例2の反応率は89.0%と、実施例1〜7に比べ明らかに劣る反応原料であった。また、比較例2の珪素酸化物粒子が用いられたリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,300mAh/g、初回放電容量990mAh/g、50サイクル目の放電容量940mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が95%であり、実施例1〜7の珪素酸化物粒子を用いた場合に比べ、サイクル性が劣るリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0069】
比較例3の反応率は89.7%と、実施例1〜7に比べ明らかに劣る反応原料であった。また、比較例3の珪素酸化物粒子が用いられたリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,210mAh/g、初回放電容量930mAh/g、50サイクル目の放電容量900mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が97%であり、実施例1〜7の珪素酸化物粒子を用いた場合に比べ、明らかに低容量のリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0070】
比較例4の反応率は93.3%と、優れた反応原料であることを確認したものの、比較例4の珪素酸化物粒子が用いられたリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,290mAh/g、初回放電容量1,000mAh/g、50サイクル目の放電容量950mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が95%であり、実施例1〜7の珪素酸化物粒子を用いた場合に比べ、サイクル性が劣るリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0071】
比較例5の反応率は88.2%と、実施例1〜7に比べ明らかに劣る反応原料であった。また、比較例5の珪素酸化物粒子が用いられたリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,250mAh/g、初回放電容量960mAh/g、50サイクル目の放電容量930mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が97%であり、実施例1〜7の珪素酸化物粒子を用いた場合に比べ、明らかに低容量のリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0072】
比較例6の反応率は91.6%と、優れた反応原料であることを確認したものの、比較例6の珪素酸化物粒子が用いられたリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,200mAh/g、初回放電容量920mAh/g、50サイクル目の放電容量870mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が95%であり、実施例1〜7の珪素酸化物粒子を用いた場合に比べ、明らかに低容量でサイクル性が劣るリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0073】
比較例7の反応率は93.8%と、優れた反応原料であることを確認したものの、比較例7の珪素酸化物粒子が用いられたリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,220mAh/g、初回放電容量940mAh/g、50サイクル目の放電容量900mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が96%であり、実施例1〜7の珪素酸化物粒子を用いた場合に比べ、明らかに低容量のリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0074】
比較例8の反応率は93.7%と、優れた反応原料であることを確認したものの、比較例8の珪素酸化物粒子が用いられたリチウムイオン二次電池は、初回充電容量1,310mAh/g、初回放電容量1,000mAh/g、50サイクル目の放電容量920mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率が92%であり、実施例1〜7の珪素酸化物粒子を用いた場合に比べ、サイクル性が劣るリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。