(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性樹脂が、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びポリエチレンナフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の接続体。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書に記載される全ての構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に組み合わせることができる。例えば、本明細書に記載される数値範囲の上限値及び下限値、並びに実施例に記載される数値から任意に選択される数値を上限値又は下限値として用いて、各種特性に関する数値範囲を規定することができる。
【0021】
本実施形態に係る回路接続材料は、絶縁性接着剤と、導電性粒子とを含有する組成物である。
【0022】
絶縁性接着剤は、絶縁シート等に用いられている熱可塑性材料であってもよいし、熱又は光により硬化する硬化性樹脂であってもよい。接続後の耐熱性及び耐湿性に優れていることから、硬化性樹脂を絶縁性接着剤として用いることができる。中でもエポキシ系接着剤は、短時間硬化が可能で接続作業性がよく、また、分子構造上接着性に優れる等の特徴を有している。
【0023】
エポキシ系接着剤は、例えば、高分子エポキシ樹脂、固形エポキシ樹脂及び液状エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を主に含有する。エポキシ系接着剤は、任意にフェノキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、NBR及びゴム等の樹脂、硬化剤及びカップリング剤等の各種変成剤、並びに触媒等の添加剤を含有していてもよい。
【0024】
エポキシ樹脂は、エピクロルヒドリンとビスフェノールA、F、AD等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラック又はクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂、ナフタレン環を含むナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ビフェニル型エポキシ樹脂、並びに脂環式エポキシ樹脂等の、1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物であってもよい。これらは単独にあるいは2種以上を組み合わせて用いられる。エポキシ樹脂は、不純物イオン(Na
+、C1
−等)、及び加水分解性塩素等の濃度が300ppm以下に低減された高純度品であることがエレクトロンマイグレーション防止のために好ましい。
【0025】
硬化剤は、例えば、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ジアミノマレオニトリル、メラミンおよびその誘導体、ポリアミン塩又はジシアンジアミドであってもよいし、及これらの変性物であってもよい。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用される。これらはアニオン又はカチオン重合性の触媒型硬化剤であり、速硬化性を得やすい。また、これらの硬化剤の場合、化学当量的な考慮の必要性が小さい。硬化剤としては、その他、ポリアミン類、ポリメルカプタン、ポリフェノール、酸無水物等の重付加型の硬化剤が挙げられる。重付加型の硬化剤と触媒型硬化剤との併用も可能である。
【0026】
アニオン重合型の触媒型硬化剤である第2アミン類、イミダゾール類又はこれらの両方と、エポキシ樹脂とを含有する絶縁性接着剤は、160℃〜200℃程度の中温で数10秒〜数時間程度の加熱により硬化することから、可使時間(ポットライフ)が比較的長い。カチオン重合型の触媒型硬化剤としては、エネルギー線照射により樹脂を硬化させる感光性オニウム塩、例えば芳香族ジアゾニウム塩及び芳香族スルホニウム塩等が主として用いられ得る。熱によって活性化してエポキシ樹脂を硬化させる触媒型硬化剤として、脂肪族スルホニウム塩等がある。この種の硬化剤は速硬化性という特徴を有する。
【0027】
これらの硬化剤を、ポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質、Ni、Cu等の金属薄膜、又はケイ酸カルシウム等の無機物で被覆して得られるマイクロカプセル化された硬化剤は、可使時間が延長できる。
【0028】
絶縁性接着剤は、例えば、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃剤、誘電材料、チキソトロピック剤、カップリング剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、及び、イソシアネート類等の硬化剤から選ばれる追加の成分を含有してもよい。
【0029】
回路接続材料は、取り扱い性の面からフィルム状であってもよい。回路接続材料が含有し得るフィルム形成材として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン及びゴムなどが挙げられる。回路接続材料として高い信頼性を得るために、フェノキシ樹脂を用いることができる。フェノキシ樹脂は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)から求められた重量平均分子量が10000以上の高分子量エポキシ樹脂に相当する。フェノキシ樹脂には、エポキシ樹脂と同様に、ビスフェノールA型、AD型及びAF型等の種類がある。フェノキシ樹脂は、エポキシ樹脂と構造が類似していることから相溶性がよく、また接着性も良好である。フィルム形成材の分子量が大きい程、フィルム形成性が容易に得られ、また接続時の流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。溶融粘度及び他の樹脂との相溶性等の点から、重量平均分子量は、10000〜80000、又は20000〜60000であってもよい。フィルム形成材としての樹脂は、水酸基及びカルボキシル基等の極性基等を有することにより、エポキシ樹脂との相溶性が向上し、均一な外観や特性を有するフィルムが得られ、さらに、硬化時の反応促進による短時間硬化を得ることもできる。フィルム形成材の量は、フィルム形成性、硬化反応の促進の点から、絶縁性接着剤全体に対して20〜80質量%であってもよい。溶融粘度調整等のために、スチレン系樹脂及びアクリル樹脂等を適宜混合してもよい。
【0030】
フィルム形成材は、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンオキサイド、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリエステルウレタン樹脂からなる群より少なくとも1種の樹脂であってもよい。水酸基等の官能基を有する樹脂により、接着性をより向上させることができる。また、これらの樹脂(高分子)がラジカル重合性の官能基で変性されていてもよい。
【0031】
絶縁性接着剤は、加熱又は光によって遊離ラジカルを発生する硬化剤と、ラジカル重合性物質とを含有することができる。
【0032】
加熱又は光により遊離ラジカルを発生する硬化剤(以下、「遊離ラジカル発生剤」ともいう。)は、加熱により分解して遊離ラジカルを発生する。遊離ラジカル発生剤は、例えば過酸化化合物又はアゾ系化合物である。遊離ラジカル発生剤は、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等に応じて適宜選定される。高反応性及びポットライフの点から、遊離ラジカル発生剤は、半減期10時間の温度が40℃以上かつ、半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物であってもよい。この場合、加熱又は光により遊離ラジカルを発生する硬化剤の配合量は、絶縁性接着剤の質量を基準として0.05〜10質量%程度、又は0.1〜5質量%であってもよい。
【0033】
加熱又は光により遊離ラジカルを発生する硬化剤は、例えば、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド及びハイドロパーオキサイドから選択される少なくとも1種の化合物であってもよい。回路部材の接続端子の腐食を抑えるために、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド及びハイドロパーオキサイドから選ばれる遊離ラジカル発生剤を用いることができる。高反応性が得られるパーオキシエステルを用いることもできる。
【0034】
ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン及びベンゾイルパーオキサイドが挙げられる。
【0035】
パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート及びジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートが挙げられる。
【0036】
パーオキシエステルとしては、例えば、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、及びt−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテートが挙げられる。
【0037】
パーオキシケタールとしては、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン及び2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカンが挙げられる。
【0038】
ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びt−ブチルクミルパーオキサイドが挙げられる。
【0039】
ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド及びクメンハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【0040】
これらの加熱又は光により遊離ラジカルを発生する硬化剤は、1種を単独で又は2種以上を組みあわて使用することができる。分解促進剤、抑制剤等を遊離ラジカル発生剤と組み合わせてもよい。
【0041】
ラジカル重合性物質は、ラジカルにより重合する官能基を有する物質である。ラジカル重合性物質は、例えば、アクリレート、メタクリレート、及びマレイミド化合物から選ばれる。
【0042】
アクリレート及びメタクリレートとしては、例えば、ウレタンアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、ビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、及びトリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0043】
これらラジカル重合性物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本実施形態に係る絶縁性接着剤は、25℃における粘度が100000〜1000000mPa・sであるラジカル重合性物質を少なくとも1種含有していてもよい。絶縁性接着剤は、100000〜500000mPa・sの粘度(25℃)を有するラジカル重合性物質を含有してもよい。ラジカル重合性物質の粘度は、市販のE型粘度計を用いて測定できる。
【0044】
ラジカル重合性物質の中でもウレタンアクリレート又はウレタンメタアクリレートを用いることで、特に優れた接着性を得ることができる。耐熱性を向上させるために用いる有機過酸化物により架橋された後、単独で100℃以上のガラス転移温度(Tg)を示すラジカル重合性物質を、ウレタンアクリレート又はウレタンメタアクリレートと併用することもできる。このようなラジカル重合性物質としては、ジシクロペンテニル基、トリシクロデカニル基、トリアジン環又はこれらの組み合わせを有する化合物がある。より一層良好な特性を得るため、トリシクロデカニル基又はトリアジン環を有するラジカル重合性物質を用いることもできる。
【0045】
絶縁性接着剤は、必要に応じて、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類などの重合禁止剤を含有してもよい。
【0046】
絶縁性接着剤が、リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質を、ラジカル重合性物質の合計量100質量部に対して0.1〜10質量部含有すると、金属等の無機物表面に対する接着強度が向上し得る。同様の観点から、この量は0.5〜5質量部であってもよい。リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質は、例えば、無水リン酸と2−ヒドロキシル(メタ)アクリレートとの反応物として得られる。具体的には、2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスヘート及び2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスヘートが挙げられる。こららは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0047】
マレイミド化合物は、例えば、マレイミド基を2個以上有する。マレイミド化合物は、例えば、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−P−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチル−ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−s−ブチル−4,8−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス[1−(4−マレイミドフェノキシ)−2−シクロヘキシル]ベンゼン及び2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンから選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせ用いられる。マレイミド化合物と、アリルフェノール、アリルフェニルエーテル及び安息香酸アリルなどのアリル化合物とを併用してもよい。
【0048】
回路接続材料は、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート類等を含有することもできる。
【0049】
回路接続材料が充填材を含有すると、接続信頼性等が更に向上し得る。充填材の最大径が導電性粒子の粒径未満であってもよい。充填材の量は、5〜60体積%であってもよい。充填材の量が60体積%を越えると、信頼性向上の効果が飽和する可能性がある。
【0050】
カップリング剤は、例えば、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する化合物であってもよい。これら基を有する化合物によれば、絶縁性接着剤の接着性が向上し得る。
【0051】
回路接続材料が含有する導電性粒子をその直径の20%圧縮変位したときのK値(K20)、言い換えると、導電性粒子を、変形率が20%になるまで圧縮変形させたときのK値(K20)(変形率は導電性粒子の直径に対する変位の割合である。)は、0.20〜3.2GPa(20〜320kgf/mm
2)であってもよい。K20は、0.29〜2.4GPa(30〜240kgf/mm
2)であってもよい。
【0052】
この導電性粒子をその直径の40%圧縮変位したときのK値(K40)は、0.29〜3.4GPa(30〜350kgf/mm
2)又は0.39〜1.9GPa(40〜190kgf/mm
2)であってもよい。
【0053】
圧縮硬さK値は導電性粒子の柔らかさの指標である。導電性粒子のK値は、微小圧縮試験器を用い、ステージ温度200℃に設定し、平面圧子を用いて、導電性粒子を0.33mN/秒の速度で圧縮し、そのときの応力−歪曲線から、荷重F(kgf)、変位S(mm)、粒子の半径(mm)R、弾性率E(kgf/mm
2)、ポアソン比σとしたとき弾性球の圧縮式(F=(2
1/2/3))・(S
3/2)・(E・R
1/2)/(1−σ
2))より式:K=E/(1−σ
2)=(3/2
1/2)・F・(S
−3/2)・(R
−1/2)を用いて求めることができる。さらに、変形率X(%)、球の直径D(μm)とすると式:K=3000F/(D
2・X
3/2)*10
6によりK値を求めることができる。変形率Xは、式:X=(S/D)×100により計算される。K値測定用の平面圧子として、一辺50μmの正方形の底面を有する角柱状のダイアモンド製の圧子を用いることができる。圧縮試験における最大試験荷重は、例えば50mNに設定される。
【0054】
導電性粒子の圧縮回復率は1〜90%、又は10〜60%であってもよい。導電性粒子の圧縮回復率は微小圧縮試験器を用いて測定される。圧縮回復率は、圧縮試験機が粒子の接触を検知してから5mNの荷重を加えるまでの変位量の、その後荷重を解放した後の変位量に対する比率として定義される。回復率の測定時のステージ温度は200℃に設定される。
【0055】
以上のようなK値及び圧縮回復率を有する導電性粒子は、例えば、以下に説明する実施形態に係る構成を有する。
【0056】
本実施形態に係る導電性粒子は、プラスチック粒子及び該プラスチック粒子を被覆する金属層を有する。金属層は、プラスチック粒子の表面を全て被覆している必要はなく、プラスチック粒子の表面の一部を被覆していてもよい。
【0057】
金属層は、例えば、Ni、Ni/Au、Ni/Pd、Cu、及びNiBからなる群より選ばれる各種の金属を含む。金属層は、めっき、蒸着、スパッタ等で作製される薄膜であってもよい。絶縁性向上の観点から、導電性粒子は、金属層の外側に、金属層を覆うシリカ、アクリル樹脂等の絶縁性材料の層(絶縁性樹脂層)を有していてもよい。
【0058】
プラスチック粒子の直径は、平均で1〜15μmであってもよい。高密度実装の観点から、プラスチック粒子の直径は平均で1〜5μmであってもよい。電極の表面凹凸のばらつきのある場合により安定して接続状態を維持する観点からは、プラスチック粒子の直径は平均で2〜5μmであってもよい。
【0059】
プラスチック粒子は、例えば、ポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレートのようなアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン及びポリブタジエンのようなポリオレフィン樹脂、並びに、ポリスチレン樹脂から選ばれる樹脂を含む。
【0060】
圧縮硬さK値及び圧縮回復率の制御の容易さの観点から、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体の1種類を重合させて得られる樹脂からなるプラスチック粒子、又は、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体の2種類以上を共重合させて得られる樹脂からなるプラスチック粒子を用いることができる。エチレン性不飽和基を有する2種類以上の重合性単量体を共重合させてプラスチック粒子を得る場合、非架橋性単量体と架橋性単量体とを併用して、それらの共重合割合、種類を適宜調整することにより、プラスチック粒子の圧縮硬さK値及び圧縮回復率を容易に制御することができる。上記非架橋性単量体及び上記架橋性単量体としては、例えば、特開2004−165019号公報に記載される単量体を使用できる。
【0061】
回路接続材料に含まれる導電性粒子の密度は、接続する電極の精細度等に応じて決められる。導電性粒子の密度は、通常、絶縁性接着剤100体積%に対して1〜50体積%である。絶縁性および製造コストの観点から、導電性粒子の密度は1〜30体積%であってもよい。
【0062】
フィルム状の回路接続材料(異方導電性接着剤フィルム)は、例えば、上述の絶縁性接着剤及び導電性接着剤を溶剤に溶解し、又は分散媒に分散させて塗工液を調製する工程と、この塗工液を、離形紙等の剥離性基材上に塗布し、又は不織布等の基材に含浸させて、塗工液を硬化剤の活性温度以下で乾燥し、溶剤又は分散液を除去する工程とを有する方法により得ることができる。溶剤として、芳香族炭化水素系と含酸素系との混合溶剤を用いることにより、材料の溶解性を向上させることができる。含酸素系溶剤のSP値が8.1〜10.7であることにより、潜在性硬化剤を特に効果的に保護することができる。この含酸素系溶剤は例えば酢酸エステルである。溶剤の沸点は、150℃以下であってもよい。沸点が150℃を超すと、乾燥のために高温を要する。乾燥温度が潜在性硬化剤の活性温度に近いことから潜在性の低下を招き、低温では乾燥時の作業性が低下する傾向がある。このため溶剤の沸点は60〜150℃、又は70〜130℃であってもよい。
【0063】
フィルム状の回路接続材料は、多層の接着剤層を有していてもよい。例えば、異方導電性を付与するために導電性粒子(導電パターン層)を含む接着フィルムと、導電性の材料を含まない絶縁性層とから構成される二層構成の異方導電性接着剤フィルム、あるいは、導電性粒子(導電性パターン)を含む接着フィルムと、その両側に設けられ導電性の材料を含まない絶縁性層とから構成される三層構成の異方導電性接着剤フィルムを回路接続材料として用いることができる。導電性粒子(導電パターン)は複数の層に存在できる。
【0064】
これらの多層構成の異方導電性接着剤フィルムは、接続される電極上に効率良く導電性粒子(導電パターン)を配置できるため、狭いピッチで配置された電極接続に有利である。回路部材との接着性を考慮して、接続されるそれぞれの回路部材に対して接着性に優れる接着フィルムをラミネートして回路接続材料を多層化することもできる。
【0065】
本実施形態に係る回路接続材料は、例えば、170℃以下で10秒間の加熱により低粘度化し、導電性粒子を介して電極を電気的に接続するために用いることができる。本実施形態に係る回路接続材料を120℃以上170℃以下で10秒間加熱して形成される硬化体(接着層)の40℃における周波数10Hzの貯蔵弾性率E’は、0.5〜2.5GPaであってもよい。
【0066】
本実施形態に係る回路接続材料は、第一の基板及び該第一の基板上に設けられた第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第一の回路部材と対向して配置され、第二の基板及び該第二の基板上に設けられた第二の接続端子を有する第二の回路部材との間に当該回路接続材料を配置し、その状態で全体を加熱及び加圧して、回路接続材料から形成された接着層により第一の回路部材と第二の回路部材とを電気的に接続するとともに接着する工程を備える、回路部材を接続する方法に用いられる。
【0067】
上記の第一の基板、第二の基板又はそれらの両方は、熱可塑性樹脂を含むフレキシブル基板である。フレキシブル基板の曲げ弾性率は、例えば10GPa以下である。
【0068】
フレキシブル基板は、例えば、比較的耐熱性の高いポリイミド(PI)、並びに、比較的耐熱性の低いポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)及びポリエチレンナフタレート(PEN)から選ばれる熱可塑性樹脂を含む有機基材を有する。
【0069】
フレキシブル基板は、有機基材の表面上に形成された、光学及び機械的特性を向上するためのハードコート等の改質処理膜及び保護膜等から選ばれる1又は2以上の層を更に有していてもよい。基板の取り扱い及び搬送を容易にするための補強材として、貼り合わせ又は塗布等により配置された、ガラス基材、及びSUS等を有する複合材料をフレキシブル基板として利用できる。
【0070】
単体でフィルムとしての強度を保ち、かつ可曲性を確保する点から、フレキシブル基板の厚さは、10〜200μm程度、又は10〜125μm程度であってもよい。
【0071】
フレキシブル基板上に設けられる接続端子を形成する電極材料としては、Ni、Al、Au、Cu、Ti及びMo等の金属、並びに、ITO、及びIZO等の透明導電体が挙げられる。
【0072】
第二の基板がフレキシブル基板であるとき、第一の基板はICチップであってもよいし、フレキシブル基板であってもよい。第一の基板がICチップで、第二基板がフレキシブル基板であるとき、COP(Chip on Plastic substrate)接続のために回路接続材料が用いられる。第一の基板及び第二の基板がフレキシブル基板であるとき、FOP(Film on Plastic substrate)接続のために回路接続材料が用いられる。
【0073】
フレキシブル基板を有する第二の回路部材と接続される第一の回路部材としては、半導体チップ、トランジスタ、ダイオ−ド、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の電子部品、プリント基板、ITOなどが回路形成されたガラス基板があげられる。半導体チップや基板の電極パッド上には、めっきで形成されるバンプや金ワイヤの先端をトーチ等により溶融させ、金ボールを形成し、このボールを電極パッド上に圧着した後、ワイヤを切断して得られるワイヤバンプなどの突起電極を設け、接続端子として用いることができる。
【0074】
回路部材の接続端子は単数でもよいが、通常は多数設けられている。少なくとも一組の回路部材を、それらの回路部材の接続端子の少なくとも一部を対向配置し、対向配置した接続端子間に回路接続材料を介在させる。この状態で加熱及び加圧することにより、対向配置した接続端子同士を電気的に接続して、接続体を得る。対向配置した接続端子同士は、導電性粒子を介して電気的に接続される。
【実施例】
【0075】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0076】
実施例1
ラジカル重合性物質であるウレタンアクリレート(製品名:UA−5500T、新中村化学工業社製)20質量部、ビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(製品名:M−215、東亞合成社製)15質量部、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(製品名:DCP−A、共栄社化学社製)5質量部及び2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスヘート(製品名:P−2M、共栄社化学社製)1質量部と、ベンゾイルパーオキサイド(製品名:ナイパーBMT−K、日本油脂製)8質量部と、ポリエステルウレタン樹脂(製品名:UR4800、東洋紡績社製)をトルエン/メチルエチルケトン=50/50の混合溶剤に溶解して得た40質量%のポリエステルウレタン樹脂溶液60質量部とを混合し、攪拌して、バインダ樹脂(絶縁性接着剤)の溶液を得た。このバインダ樹脂の溶液に、核としてのポリスチレン粒子と、ポリスチレン粒子の表面を覆って内側から順に設けられた厚み0.2μmのニッケル層及び厚み0.04μmの金層とを有する平均粒径3μmの導電性粒子を、絶縁性接着剤に対して10体積%の割合で分散させた。導電性粒子の20%圧縮変形時のK値(K20)は0.74GPa(75kgf/mm
2)、40%圧縮変形時のK値(K40)は0.66GPa(67kgf/mm
2)、圧縮回復率は30%であった。更に、平均粒径2μmのシリコーン微粒子(製品名:KMP-605、信越化学社製)を、バインダ樹脂100質量部に対して20質量部の割合で分散させて、バインダ樹脂、導電性粒子及びシリコーン微粒子を含む回路接続材料の塗工液を得た。この塗工液を、片面を表面処理したポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム(厚み50μm)に、塗工装置を用いて塗布し、塗膜を70℃の熱風により乾燥して、回路接続材料としての異方導電性接着剤フィルム(厚み20μm)を形成させた。導電性粒子のK値は、一辺50μmの正方形の底面を有する角柱状のダイアモンド製平面圧子を用い、最大試験荷重50mN、圧縮速度0.33mN/秒で圧縮試験を行うことにより、測定した。
【0077】
ポリイミドフィルム(25℃での弾性率:5800MPa)と、ポリイミドフィルム上に形成されたSiO
2膜(厚さ1000Å)と、SiO
2膜上に設けられた電極としての厚さ2500ÅのITO膜とを有するフレキシブル基材を準備した。このフレキシブル基材と、12μm×100μmのバンプを有するICチップとの間に、異方導電性接着剤フィルムを挟んだ。この状態で、異方導電性接着剤フィルムの到達温度が160℃となるように加熱しながら、総接続面積当たり100MPaの圧力で5秒間全体を加圧して、フレキシブル基材とICチップとを接続した接続体を得た。
【0078】
得られた接続体の断面を観察して、導電性粒子と接触している部分の接続端子(ITO膜)の変形量を測定したところ、0.5μm以下であった。
図1の(a)は、実施例1の接続体の接続部分を模式的に示す断面図である。
図1に示されるように、フレキシブル基板(ポリイミドフィルム)10上の接続端子(ITO膜)1には、導電性粒子5との接触により圧痕が形成され、接続端子1とITOチップのバンプ3の間の導通が確保されていることが確認された。導電性粒子との接触により形成されたITO膜の凹部の深さを、電極の変形量とした。この変形量は、凹部のうち、導電性粒子と接触していない部分(凹部以外の部分)の電極表面からの変位が最も大きい部分の深さである。
【0079】
実施例2
ビスフェノールF型フェノキシ樹脂100gを、質量比50:50のトルエンと酢酸エチルとの混合溶剤に溶解させて、濃度60質量%のビスフェノールF型フェノキシ樹脂溶液を得た。また、ビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂50gを、質量比50:50のトルエンと酢酸エチルとの混合溶剤に溶解させて、濃度45質量%のビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂溶液を得た。
【0080】
得られた2つのフェノキシ樹脂溶液を混合して、混合溶液を得た。この混合溶液に、液状エポキシ樹脂を加えた。液状エポキシ樹脂の量は、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂:ビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂:液状エポキシ樹脂が質量比で30:30:40となるように調整した。
【0081】
得られた溶液100gに、実施例1と同様の導電性粒子を、絶縁性接着剤に対して10体積%の割合で分散させた。そこに、潜在性硬化剤としての芳香族スルホニウム塩2.4gを更に添加して、塗工液を得た。この塗工液を、片面を表面処理したポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム(厚み50μm)に、塗工装置を用いて塗布し、70℃で5分間の熱風乾燥により、回路接続材料としての異方導電性接着剤フィルム(厚み20μm)を形成させた。
【0082】
作製した異方導電性接着剤フィルムを用いて、実施例1と同様にして、フレキシブル基材とICチップとが接続された接続体を作製した。得られた接続体の断面を観察して、導電性粒子と接触している部分の接続端子(ITO膜)の変形量を測定したところ、0.5μm以下であった。回路の破断及びクラック等は観察されなかった。導電性粒子との接触により圧痕が接続端子(ITO膜)に形成されていることが観察された。
【0083】
比較例1
核としてのポリスチレン粒子と、ポリスチレン粒子の表面を覆って内側から順に設けられた厚み0.2μmのニッケル層及び厚み0.04μmの金層とを有する平均粒径3μmの導電性粒子を準備した。この導電性粒子の20%圧縮変形時のK値は3.43GPa(350kgf/mm
2)、40%圧縮変形時のK値は4.02GPa(410kgf/mm
2)、圧縮回復率は40%であった。この導電性粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、異方導電性接着剤フィルムを作製し、これを用いてフレキシブル基材とICチップとの接続体を作製した。
【0084】
得られた接続体の断面を観察した。
図1の(b)は、比較例1の接続体の接続部分を模式的に示す断面図である。導電性粒子5と接触している部分の接続端子(ITO膜)1の変形量を測定したところ、1.0μm以上であり、回路の破断が観察された。
【0085】
比較例2
核としてのポリスチレン粒子と、ポリスチレン粒子の表面を覆って内側から順に設けられた厚み0.2μmのニッケル層及び厚み0.04μmの金層とを有する平均粒径3μmの導電性粒子を準備した。この導電性粒子の20%変形時のK値は350kgf/mm
2、40%変形時のK値は410kgf/mm
2、回復率は40%であった。この導電性粒子を用いたこと以外は実施例2と同様にして、異方導電性接着剤フィルムを作製し、これを用いてフレキシブル基材とICチップとの接続体を作製した。
【0086】
得られた接続体の断面を観察して、導電性粒子と接触している部分の接続端子(ITO膜)の変形量を測定したところ、1.0μm以上であり、回路の破断が観察された。
【0087】
参考例1
実施例1で作製した異方導電性接着剤フィルムを、ガラス板(厚さ0.5mm、OA−10)及びガラス板上に形成されたアルミニウムのスパッタ膜電極(厚さ2500Å)を有するガラス基材と、12μm×100μmのバンプを有するICチップとの間に挟み、異方導電性接着剤フィルムの到達温度が160℃となるように加熱しながら、総接続面積当たり100MPaの圧力で5秒間全体を加圧して、ガラス基材とICチップとを接続した接続体を得た。
【0088】
得られた接続体の断面を観察した。
図2の(a)は、参考例1の接続体の接続部分を模式的に示す断面図である。導電性粒子5と接触している部分の接続端子(ITO膜)1の変形量を測定したところ、0.1μm以下であり、回路の破断及びクラック等は観察されなかった。また、ガラス基材の接続状態の合否判定に用いられる、導電性粒子により形成される電極の圧痕は観察できなかった。
【0089】
参考例2
実施例2で作製した異方導電性接着剤フィルムを用いたことの他は参考例1と同様にして、ガラス基材とICチップとの接続体を作製し、その断面を観察した。導電性粒子と接触している部分の電極の変形量は0.1μm以下であり、回路の破断は観察されなかった。導電性粒子により形成される電極の圧痕は観察できなかった。
【0090】
参考例3
比較例1で作製した異方導電性接着剤フィルムを用いたことの他は参考例1と同様にして、ガラス基材とICチップとの接続体を作製し、その断面を観察した
図2の(b)は、参考例3の接続体の接続部分を模式的に示す断面図である。導電性粒子5と接触している部分の接続端子(電極)1の変形量は0.1μm以下であり、回路の破断は観察されなかった。導電性粒子5により形成される電極の圧痕が観察された。
【0091】
参考例4
比較例2で作製した異方導電性接着剤フィルムを用いたことの他は参考例1と同様にして、ガラス基材とICチップとの接続体を作製し、その断面を観察した。導電性粒子と接触している部分の電極の変形量は0.1μm以下であり、回路の破断は観察されなかった。導電性粒子により形成される電極の圧痕が観察された。
【0092】
表1に、作製した各接続体の構成及び評価結果を示す。表に示されるように、実施例によれば、回路の破断及びクラックを発生させることなく、圧痕を形成しながらフレキシブル基材の回路接続を行うことができた。
【0093】
【表1】