(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記式(I)中、A1〜A6が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニレン基、又は置換基を有していてもよいナフチレン基である請求項1に記載の左螺旋を誘起する重合性キラル化合物。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を、1)左螺旋を誘起する重合性キラル化合物、2)左螺旋性重合性液晶組成物、3)左螺旋性液晶性高分子、及び、4)光学異方体に項分けして詳細に説明する。
【0037】
1)左螺旋を誘起する重合性キラル化合物
本発明の左螺旋を誘起する重合性キラル化合物(以下、「重合性キラル化合物」ということがある。)は、前記式(I)で表される化合物である。ここで、「左螺旋を誘起する」とは、重合性液晶化合物に混合されることで、左螺旋性のコレステリック相を発現させる性質を有することを意味する。
式(I)において、Xは、下記式(X−i)又は(X−ii)を表し、螺旋捻れ力(HTP)が大きくなることから、式(X−ii)が好ましい。
【0039】
(式中、*は結合手を表す。)
式(I)において、Y1〜Y6はそれぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
1−C(=O)−、−C(=O)−NR
1−、−O−C(=O)−NR
1−、−NR
1−C(=O)−O−、−NR
1−C(=O)−NR
1−、−O−NR
1−、又は、−NR
1−O−を表す。
これらの中でも、−O−、−O−C(=O)−、及び、−C(=O)−O−が好ましい。
【0040】
R
1は、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。なかでも、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0041】
Yxは化学的な単結合、−C(=O)−、−O−C(=O)−、−NR
2−C(=O)−、−CH=CH−C(=O)−、−CH
2−、−C
2H
4−、又は、−CF
2−を表す。
Yzは化学的な単結合、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−C(=O)−NR
3−、−C(=O)−CH=CH−、−CH
2−、−C
2H
4−、又は、−CF
2−を表す。
R
2、R
3はそれぞれ、前記R
1と同様の、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0042】
G1及びG2はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の脂肪族基を表す。
【0043】
G1及びG2の炭素数1〜20の2価の脂肪族基としては、鎖状の脂肪族基であっても、脂環式構造を有する脂肪族基であってもよい。これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の2価の脂肪族基が好ましく、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基等の鎖状の脂肪族基がより好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の、炭素数1〜12のアルキレン基がさらに好ましく、ヘキサメチレン基〔−(CH
2)
6−〕が特に好ましい。
【0044】
G1及びG2の脂肪族基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;等が挙げられる。これらの中でも、フッ素原子、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0045】
また、前記脂肪族基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
4−C(=O)−、−C(=O)−NR
4−、−NR
4−、又は、−C(=O)−が含まれていてもよい。ただし、−O−及び−S−がそれぞれ2以上隣接して該脂肪族基に含まれる場合は除かれる。これらの中でも、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、及び、−C(=O)−が好ましい。
【0046】
ここで、R
4は、前記R
1と同様の、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
R
4としては、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0047】
これらの基が含まれる脂肪族基の具体例としては、−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−S−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−O−C(=O)−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−O−CH
2−、−CH
2−O−C(=O)−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−NR
4−C(=O)−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−C(=O)−NR
4−CH
2−、−CH
2−NR
4−CH
2−CH
2−、−CH
2−C(=O)−CH
2−等が挙げられる。
【0048】
Z1及びZ2はそれぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
Z1及びZ2の、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基としては、炭素数2〜6のアルケニル基が好ましい。また、置換基のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0049】
Z1及びZ2のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、CH
2=C(Cl)−、CH
2=CH−CH
2−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−、CH
2=C(CH
3)−CH
2CH
2−、(CH
3)
2C=CH−CH
2−、CH
3−CH=CH−、CH
3−CH=CH−CH
2−、CH
2=CH−CH
2−CH
2−、又は、(CH
3)
2C=CH−CH
2−CH
2−等が挙げられる。
【0050】
これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、CH
2=C(Cl)−、CH
2=CH−CH
2−、CH
2=C(CH
3)−CH
2−、CH
2=C(CH
3)−CH
2CH
2−、(CH
3)
2C=CH−CH
2−、CH
3−CH=CH−、及び、CH
3−CH=CH−CH
2−がより好ましく、CH
2=CH−及びCH
2=C(CH
3)−が更に好ましく、CH
2=CH−が特に好ましい。
【0051】
Q1〜Q4はそれぞれ独立して、水素原子;又は、前記R
1と同様の、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。これらの中でも、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基であることが好ましく、それぞれ独立して、水素原子であることがより好ましい。
【0052】
A1〜A6はそれぞれ独立して、炭素数1〜30の2価の有機基Aを表す。有機基Aの炭素数としては6〜30が好ましく、6〜20がより好ましい。
有機基Aとしては、特に制限されないが、芳香族基を有するものが好ましい。
【0053】
前記芳香族基を有するものとしては、1つのベンゼン環を有する単環芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等)を1又は2以上含有する2価の炭化水素基や、2つ以上、通常、2〜4個のベンゼン環を有する多環芳香族炭化水素(ナフタレン、ビフェニル、ターフェニル等)を含有する2価の炭化水素基が挙げられる。
【0054】
これらの中でも、A1〜A6としては、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基;置換基を有していてもよいナフチレン基;置換基を有していてもよいビフェニレン基;であることが好ましく、下記(A−i)、(A−ii)、又は(A−iii)で表されるいずれかの基であることがより好ましく、(A−i)又は(A−ii)で表される基であることがさらに好ましく、A1、A3、A4、A6が、それぞれ独立して、(A−i)で表される基であり、A2、A5が、それぞれ独立して、(A−i)又は(A−ii)で表される基であることが特に好ましい。
【0056】
上記式中、*は結合手を表し、X
1〜X
18はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−OR
5、−O−C(=O)−R
5、−C(=O)−OR
5、−O−C(=O)−OR
5、−NR
6−C(=O)−R
5、−C(=O)−N(R
5)R
6、又は、−O−C(=O)−N(R
5)R
6を表す。
【0057】
ここで、R
5、R
6は、それぞれ独立して、水素原子;又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基;を表す。
R
5、R
6の、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基である。
【0058】
前記置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;等が挙げられる。
【0059】
また、R
5及び/又はR
6がアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
7−C(=O)−、−C(=O)−NR
7−、−NR
7−、又は、−C(=O)−が含まれていてもよい。
ただし、−O−及び−S−がそれぞれ2以上隣接して該アルキル基に含まれる場合を除く。
ここで、R
7は、水素原子、又は、前記R
1と同様の、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0060】
a及びbはそれぞれ独立して、0又は1であり、合成の容易さの観点から、a及びbは双方ともに0または1が好ましく、更に左螺旋捻れ力の観点から、a及びbは双方ともに1がより好ましい。
【0061】
本発明の重合性キラル化合物としては、下記(α)の化合物が好ましい。下記(α)の化合物の中でも、下記(β)及び(ε)の化合物がより好ましい。下記(β)の化合物の中でも、下記(γ)の化合物が更に好ましい。
【0062】
(α)前記式(I)中、Y1〜Y6が、それぞれ独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、又は、−O−であり、
Yx、Yzがそれぞれ−C(=O)−であり、
G1及びG2が、それぞれ独立して、−O−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−が含まれていてもよい、−(CH
2)
6−、又は、−(CH
2)
4−であり、
Z1及びZ2が、それぞれ独立して、CH
2=CH−、CH
2=C(CH
3)−、又は、CH
2=C(Cl)−であり、
A1〜A6が、それぞれ独立して、前記(A−i)、(A−ii)、又は(A−iii)で表されるいずれかの基である化合物。
【0063】
(β)前記式(I)中、Y1〜Y6が、それぞれ独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、又は、−O−であり、
Yx、Yzがそれぞれ−C(=O)−であり、
G1及びG2が、それぞれ独立して、−(CH
2)
6−、又は、−(CH
2)
4−であり、
Z1及びZ2が、それぞれ独立して、CH
2=CH−、又は、CH
2=C(CH
3)−であり、
A1〜A6が、それぞれ独立して前記(A−i)又は(A−ii)で表される基である化合物。
【0064】
(γ)前記式(I)中、Y1〜Y6が、それぞれ独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、又は、−O−であり、
Yx、Yzがそれぞれ−C(=O)−であり、
G1及びG2が、それぞれ独立して、−(CH
2)
6−、又は、−(CH
2)
4−であり、
Z1及びZ2が、CH
2=CH−であり、
Q1〜Q4が、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基であり、
A1、A3、A4、A6が、それぞれ独立して、前記(A−i)で表される基であり、
A2、A5が、それぞれ独立して、前記(A−i)又は(A−ii)で表される基である化合物。
【0065】
(ε)前記式(I)中、a=b=0であり、G1及びG2がそれぞれ、−CH
2CH
2C(=O)OCH
2CH
2−、又は、−CH
2CH
2OC(=O)CH
2CH
2−であり、
A3、A4が、それぞれ独立して、前記(A−i)で表される基であり、
A2、A5が、それぞれ独立して、前記(A−i)又は(A−ii)で表される基である化合物。
【0066】
本発明の重合性キラル化合物は、溶解性及び相溶性に優れ、後述するように、重合性液晶化合物に混合されることで、左螺旋性のコレステリック相を発現させることができる。
【0067】
本発明の重合性キラル化合物はいずれも、−O−、−S−、−NH−C(=O)−、−C(=O)−NH−、−NH−C(=O)−NH−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−等の種々の化学結合を形成する公知の方法(例えば、サンドラー・カロ官能基別有機化合物合成法[I]、[II] 廣川書店、1976年発行参照)を組み合わせて製造することができる。
【0068】
本発明の重合性キラル化合物は、典型的には、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−C(=O)NH−)、及び酸クロライド(−COCl)の形成反応を任意に組み合わせて、所望の構造を有する複数の公知化合物を適宜結合・修飾することにより製造することができる。
【0069】
エーテル結合の形成は、例えば、以下のようにして行うことができる。
(i)式:D1−hal(halはハロゲン原子を表す。以下にて同じ。)で表される化合物と、式:D2−OMet(Metはアルカリ金属(主にナトリウム)を表す。以下にて同じ。)で表される化合物とを混合して縮合させる。なお、式中、D1及びD2は任意の有機基Bを表す(以下にて同じ。)。この反応は一般的にウイリアムソン合成と呼ばれる。
(ii)式:D1−halで表される化合物と、式:D2−OHで表される化合物とを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して縮合させる。
(iii)式:D1−E(Eはエポキシ基を表す。)で表される化合物と、式:D2−OHで表される化合物とを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して縮合させる。
(iv)式:D1−OFN(OFNは不飽和結合を有する基を表す。)で表される化合物と、式:D2−OMetで表される化合物を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して付加反応させる。
(v)式:D1−halで表される化合物と、式:D2−OMetで表される化合物とを、銅あるいは塩化第一銅存在下、混合して縮合させる。この反応は一般的にウルマン縮合と呼ばれる。
【0070】
エステル結合及びアミド結合の形成は、例えば、以下のようにして行うことができる。
(vi)式:D1−COOHで表される化合物と、式:D2−OH又はD2−NH
2で表される化合物とを、脱水縮合剤(N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド等)の存在下に脱水縮合させる。
(vii)式:D1−COOHで表される化合物にハロゲン化剤を作用させることにより、式:D1−CO−halで表される化合物を得、得られた当該化合物と式:D2−OH又はD2−NH
2で表される化合物とを、塩基の存在下に反応させる。
(viii)式:D1−COOHで表される化合物に酸無水物を作用させることにより、混合酸無水物を得た後、得られた当該混合酸無水物に、式:D2−OH又はD2−NH
2で表される化合物を反応させる。
(ix)式:D1−COOHで表される化合物と、式:D2−OH又はD2−NH
2で表される化合物とを、酸触媒あるいは塩基触媒の存在下に脱水縮合させる。
【0071】
酸クロライドの形成は、例えば、以下のようにして行うことができる。
(x)式:D1−COOHで表される化合物に三塩化リンあるいは五塩化リンを作用させる。
(xi)式:D1−COOHで表される化合物に塩化チオニルを作用させる。
(xii)式:D1−COOHで表される化合物に塩化オキサリルを作用させる。
(xiii)式:D1−COOAg(Ag:銀元素)で表される化合物に塩素を作用させる。
(xiv)式:D1−COOHで表される化合物に赤色酸化第二水銀の四塩化炭素溶液を作用させる。
【0072】
また、本発明の重合性キラル化合物の製造(特に、非対称な構造を有する重合性キラル化合物の製造)においては、中間体に存在する水酸基を保護することで、合成を容易にし、収率を向上させることができる場合がある。
水酸基を保護する方法としては、公知の方法(例えば、Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis 第3版 出版:Wiley−Interscience、1999年発行参照)を利用して製造することができる。
【0073】
水酸基の保護は、例えば、以下のようにして行うことができる。
(xv)式:D1D2D3−Si−halで表される化合物と、式:D4−OHで表される化合物とを、イミダゾール、ピリジン等の塩基存在下、混合して反応させる。なお、式中、D3、D4は任意の有機基Bを表す(以下にて同じ。)。
(xvi)3,4−ジヒドロ−2H−ピラン等のビニルエーテルと、式:D2−OHで表される化合物を、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸ピリジン塩、塩化水素等の酸存在下、混合して反応させる。
(xvii)式:D1−C(=O)−halで表される化合物と、式:D4−OHで表される化合物とを、トリエチルアミン、ピリジン等の塩基存在下、混合して反応させる。
(xviii)式:D1−C(=O)−O−C(=O)−D2で表される酸無水物と、式:D3−OHで表される化合物とを混合して反応させる、あるいは水酸化ナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下、混合して反応させる。
(xix)D1−halで表される化合物と式:D2−OHで表される化合物とを、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下、混合して反応させる。
(xx)式:D1−O−CH
2−halで表される化合物と、式:D2−OHで表される化合物とを、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、ピリジン等の塩基存在下、混合して反応させる。
(xxi)D1−O−CH
2−C(=O)−halで表される化合物と、式:D2−OHで表される化合物とを、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の塩基存在下、混合して反応させる。
(xxii)式:D1−O−C(=O)−halで表される化合物と、式:D2−OHで表される化合物とを、トリエチルアミン、ピリジン等の塩基存在下、混合して反応させる。
【0074】
脱保護は、保護基の構造、種類によって、公知の方法を利用することで脱保護することができる。
(xxiii)テトラブチルアンモニウムフルオライド等フッ素イオンを混合して脱保護させる。
(xxiv)パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸ピリジン塩、塩化水素、酢酸等の酸存在下、混合して脱保護させる。
(xxv)水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等の塩基存在下、混合して脱保護させる。
(xxvi)Pd−C等の触媒存在下、水素添加することにより脱保護させる。
【0075】
本発明の重合性キラル化合物は、具体的には、例えば、次のようにして得ることができる。
【0077】
上記式中、A1〜A6、X、Y1〜Y6、Yx、Yz、Q1〜Q4、G1、G2、Z1、Z2、a、及びbは、前記と同じ意味を表す。また、T1はY3’と反応して、Y3を生成する基を表し、T2はY4’と反応して、Y4を生成する基を表す。例えば、T1、T2が水酸基(OH)であって、Y3’、Y4’がカルボキシル基(COOH)である場合には、T1、T2は、Y3’、Y4’とそれぞれ反応して、Y3〔−C(=O)−O−〕、Y4〔−O−C(=O)−〕をそれぞれ生成する。
【0078】
すなわち、式(2)で表される化合物に、ヒドラジン(又はヒドラジン一水和物)を反応させ、次いで、式:T1−A2−C(=O)Q1、T2−A5−C(=O)Q4で表される化合物を反応させて、式(3)で表される中間体を得た後(工程1)、得られた当該中間体に、式(4a)で表される化合物及び式(4b)で表される化合物を反応させることにより、目的とする式(I)で表される化合物(本発明の重合性キラル化合物)を得る(工程2)ことができる。
【0079】
工程1は、適当な有機溶媒中で行うことができる。
用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;が挙げられる。
【0080】
工程1において、ヒドラジンの使用量は、式(2)で表される化合物1モルに対して、通常、2〜10モルである。
【0081】
式:T1−A2−C(=O)Q1及び式:T2−A5−C(=O)Q4で表される化合物の使用量は、それぞれ、式(2)で表される化合物1モルに対して、通常、1〜5モルである。式:T1−A2−C(=O)Q1で表される化合物と、式:T2−A5−C(=O)Q4で表される化合物が同一の化合物である場合には、当該化合物を2〜10モルか、それ以上使用すればよい。
【0082】
工程1の反応は、−10℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で円滑に進行する。
反応時間は、反応規模にもよるが、通常、数分から数時間である。
以上のようにして、式(3)で表される化合物を含む反応液を得る。
【0083】
本発明においては、得られた反応液から、式(3)で表される化合物を単離し、単離した式(3)で表される化合物を、次の工程2に供してもよいし、式(3)で表される化合物を単離することなく、式(3)で表される化合物を含む反応液をそのまま工程2に供してもよい。
また、式(3)で表される化合物は、以下の方法によっても製造することができる。
【0085】
(式中、A2〜A5、X、Yx、Yz、Q1〜Q4、T1、T2は、前記と同じ意味を表す。)
すなわち、式(2)で表される化合物に、式(5a)で表される化合物及び式(5b)で表される化合物を順次反応させることにより、式(3)で表される化合物を得ることができる。
【0086】
式(5a)及び(5b)で表される化合物は、ヒドラジンと、式:T1−A2−C(=O)Q1及び式:T2−A5−C(=O)Q4で表される化合物を、それぞれ反応させることにより製造することができる。
【0087】
次いで、式(3)で表される化合物に、式(4a)で表される化合物及び式(4b)で表される化合物を反応させることにより、目的とする式(I)で表される化合物(本発明の重合性キラル化合物)を得る(工程2)。
【0088】
式(4a)で表される化合物及び式(4b)で表される化合物の好ましい具体例としては、下記の化合物が挙げられる。もちろん、本発明は、これらの化合物に限定されることはない。
【0090】
(式中、p、qはそれぞれ独立して、1〜6の整数を表す。)
工程2は、適当な有機溶媒中で行うことができる。
用いる有機溶媒としては、工程1で用いることができるものとして列記したものと同様のものが挙げられる。
【0091】
工程2において、式(4a)及び(4b)で表される化合物の使用量は、式(3)で表される化合物1モルに対して、通常、1〜3モルである。
なお、式(4a)で表される化合物と式(4b)で表される化合物が同一の化合物である場合には、当該化合物を2〜6モルか、それ以上使用すればよい。
【0092】
工程2の反応は、−10℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で円滑に進行する。
反応時間は、反応規模にもよるが、通常、数分から数時間である。
【0093】
反応終了後は、有機合成化学における通常の後処理操作を行い、所望により、カラムクロマトグラフィー、再結晶法、蒸留法等の公知の分離・精製手段を施すことにより、目的物を単離することができる。
目的物の構造は、NMRスペクトル、IRスペクトル、マススペクトル等の測定、元素分析等により、同定することができる。
【0094】
出発原料である式(2)で表される化合物は、次のようにして製造することができる。
【0096】
(上記式中、A3、A4、X、Yx、Yz、Q2、Q3は、前記と同じ意味を表す。また、T3は、Yx’と反応してYxを生成する基を表し、T4は、Yz’と反応してYzを生成する基を表す。)
【0097】
すなわち、キラル基になる、式(6)で表される化合物と、式(7)で表される化合物及び式(8)で表される化合物を反応させることにより、目的とする式(2)で表される化合物を得ることができる。
【0098】
式(6)で表される化合物の好ましい具体例としては、下記に示すものが挙げられる。
【0100】
また、式(7)及び(8)で表される化合物の好ましい具体例としては、下記に示すものが挙げられる。もちろん、本発明は、これらの化合物に限定されることはない。
【0102】
(式中、X
1〜X
18は前記と同じ意味を表し、QはQ2又はQ3である。)
これらの化合物の多くは公知物質であり、公知の方法により製造することができる。
【0103】
2)左螺旋性重合性液晶組成物
本発明の左螺旋性重合性液晶組成物(以下、「重合性液晶組成物」ということがある。)は、本発明の重合性キラル化合物の少なくとも一種、及び重合性液晶化合物の少なくとも一種を含有するものである。
本発明の重合性液晶組成物を構成する重合性液晶化合物は、本発明の重合性キラル化合物を混合することで、左螺旋性のコレステリック相を発現し得る。
【0104】
本発明の重合性液晶組成物に用いる重合性液晶化合物は、重合可能な液晶化合物である。その具体例としては、特開平11−130729号公報、特開平8−104870号公報、特開2005−309255号公報、特開2005−263789号公報、特表2002−533742号公報、特開2002−308832号公報、特開2002−265421号公報、特開昭62−070406号公報、特開平11−100575号公報、WO08/133290号パンフレット、特開2008−291218号公報、特開2009−167378号公報、特願2008−170835号等に記載される化合物等が挙げられる。本発明では、特開2008−291218号公報に開示されている化合物が好ましい。
本発明において、重合性液晶化合物は、一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0105】
本発明の重合性液晶組成物において、重合性キラル化合物の配合割合は、重合性液晶化合物100質量部に対し、通常、0.1〜100質量部、好ましくは0.5〜10質量部、更に好ましくは1〜8質量部である。
【0106】
本発明の重合性液晶組成物においては、重合性液晶化合物の他、重合性非液晶化合物を含有していてもよい。
重合性非液晶化合物は、得られる左螺旋性液晶高分子の相転移温度を調整する目的で添加される。
重合性非液晶化合物は、一般的には、重合性単量体であって、当該重合性非液晶化合物自体を重合させても液晶性高分子を得ることができないものである。
用いる重合性非液晶化合物としては、特に限定されないが、本発明の目的を達成する観点から、下記式で表される化合物が好ましい。
【0108】
重合性非液晶化合物を用いる場合、その配合量は、重合性液晶化合物と重合性非液晶化合物の質量比で、重合性液晶化合物:重合性非液晶化合物=60:40〜95:5、好ましくは、70:30〜90:10である。
【0109】
本発明の重合性液晶組成物には、通常、重合開始剤を配合するのが好ましい。
【0110】
用いる重合開始剤としては、用いる重合性液晶化合物に存在する重合性基の種類に応じて適宜なものを選択して使用すればよい。例えば、重合性基がラジカル重合性であればラジカル重合開始剤を、アニオン重合性の基であればアニオン重合開始剤を、カチオン重合性の基であればカチオン重合開始剤を、それぞれ使用すればよい。
【0111】
ラジカル重合開始剤としては、熱ラジカル発生剤と光ラジカル発生剤のいずれも使用可能であるが、光ラジカル発生剤を使用するのが好適である。
【0112】
光ラジカル発生剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインプロピルエーテル等のベンゾイン;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン及びN,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン;2−メチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン及び2−アミルアントラキノン等のアントラキノン;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン;アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等のケタール;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン及び4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0113】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製の、商品名:Irgacure907、商品名:Irgacure184、商品名:Irgacure369、及び商品名:Irgacure651等が挙げられる。
【0114】
アニオン重合開始剤としては、例えば、アルキルリチウム化合物;ビフェニル、ナフタレン、ピレン等の、モノリチウム塩又はモノナトリウム塩;ジリチウム塩やトリリチウム塩等の多官能性開始剤;等が挙げられる。
【0115】
また、カチオン重合開始剤としては、例えば、硫酸、リン酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のプロトン酸;三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズのようなルイス酸;芳香族オニウム塩又は芳香族オニウム塩と、還元剤との併用系;が挙げられる。
これらの重合開始剤は一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0116】
本発明の重合性液晶組成物において、重合開始剤の配合割合は、重合性液晶化合物100質量部に対し、通常、0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。
【0117】
また、前記重合性液晶化合物、及び必要に応じて用いられる他の共重合可能な単量体等との(共)重合を行うに際しては、必要に応じて、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤等の機能性化合物を存在させてもよい。
【0118】
本発明の重合性液晶組成物には、表面張力を調整するために、界面活性剤を配合するのが好ましい。当該界面活性剤としては、特に限定はないが、通常、ノニオン系界面活性剤が好ましい。当該ノニオン系界面活性剤としては、市販品を用いればよく、例えば、分子量が数千程度のオリゴマーであるノニオン系界面活性剤、例えば、セイミケミカル社製KH−40等が挙げられる。本発明の重合性液晶組成物において、界面活性剤の配合割合は、重合性液晶化合物100質量部に対し、通常、0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜2質量部である。
【0119】
本発明の重合性液晶組成物を偏光フィルムや配向膜の原料、又は印刷インキ及び塗料、保護膜等の用途に利用する場合には、その目的に応じて、上記成分の他、後述の他の共重合可能な単量体、金属、金属錯体、染料、顔料、蛍光材料、燐光材料、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物等のその他の添加剤を配合してもよい。本発明の重合性液晶組成物において、その他の添加剤の配合割合は、重合性液晶化合物100質量部に対し、通常、各々0.1〜20質量部である。
【0120】
本発明の重合性液晶組成物は、通常、重合性液晶化合物、本発明の重合性キラル化合物、光重合開始剤、ノニオン系界面活性剤、及び所望によりその他の添加剤の所定量を適当な有機溶媒に溶解させることにより調製することができる。
【0121】
用いる有機溶媒としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;等が挙げられる。
これらの有機溶媒は、一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0122】
以上のようにして得られる重合性液晶組成物は、後述するように、左螺旋性(左捻れ)の、コレステリック液晶層やコレステリック液晶性高分子の製造原料として有用である。
【0123】
3)左螺旋性液晶性高分子
本発明の左螺旋性液晶性高分子(以下、「液晶性高分子」ということがある。)は、本発明の重合性液晶組成物を(共)重合して得られる高分子である。
ここで、「(共)重合」とは、通常の(共)重合反応のほか、(共)架橋反応を含む広い意味での化学反応を意味するものとする。
【0124】
重合開始剤を含む本発明の重合性液晶組成物を(共)重合することにより、本発明の液晶性高分子を容易に得ることができる。得られる液晶性高分子は左螺旋性のコレステリック液晶性高分子である。本発明においては、(共)重合反応をより効率的に行う観点から、前記したような重合開始剤、特に光重合開始剤を用いるのが好ましい。以下、かかる重合性液晶組成物を用いる態様について説明する。
【0125】
具体的には、本発明の重合性液晶組成物を、例えば、前記配向処理を施す方法に従って得られた、配向機能を有する支持体上に塗布し、コレステリック相を保持した状態で均一に配向させ、重合させることによって、本発明の液晶性高分子を得ることができる。
【0126】
用いる支持体としては、有機、無機を問わず、公知慣用の材質の基板を使用することができる。当該基板の材質としては、例えば、ポリシクロオレフィン〔例えば、ゼオネックス、ゼオノア(登録商標;日本ゼオン社製)、アートン(登録商標;JSR社製)、及びアペル(登録商標;三井化学社製)〕、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース、三酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、シリコン、ガラス、方解石等が挙げられる。基板の形状としては、平板の他、曲面を有するものであっても良い。これらの基板は、必要に応じて、電極層、反射防止機能、反射機能を有していてもよい。
【0127】
上記方法において、一様な配向状態を形成するためには、通常のツイステッド・ネマチック(TN)素子又はスーパー・ツイステッド・ネマチック(STN)素子で使用されているプレチルト角を与えるポリイミド薄膜を使用すると、重合性液晶化合物の配向状態の制御を容易にすることができる。
【0128】
一般に、配向機能を有する支持体に液晶化合物を接触させた場合、液晶化合物は支持体表面で支持体を配向処理した方向に沿って配向する。液晶化合物が支持体表面と水平に配向するか、傾斜あるいは垂直して配向するかは、支持体表面への配向処理方法による影響が大きい。
例えば、インプレーンスイッチング(IPS)方式の液晶表示素子に使用するようなプレチルト角のごく小さな配向膜を支持体上に設ければ、ほとんど水平に配向した重合性液晶層が得られる。
【0129】
また、TN型液晶表示素子に使用するような配向膜を支持体上に設けた場合は、少しだけ配向が傾斜した重合性液晶層が得られ、STN方式の液晶表示素子に使用するような配向膜を使うと、大きく配向が傾斜した重合性液晶層が得られる。
【0130】
本発明の重合性液晶組成物を、プレチルト角を有する水平配向機能を有する支持体に接触させたときは、支持体表面から空気界面付近まで一様又は連続的に角度が変化して傾斜配向した光学異方体を得ることができる。
【0131】
また、分子内に光二量化反応する官能基を有する有機薄膜や光で異性化する官能基を有する有機薄膜(以下「光配向膜」と略す。)に、偏光又は非偏光を照射する方法等(光配向法)を用いれば、パターン状に配向方向が異なる領域が分布した基板をも作製することができる。
【0132】
初めに、光配向膜を設置した支持体上に光配向膜の吸収帯にある波長の光を照射し、一様な配向が得られる支持体を準備する。その後、当該支持体にマスクを被せ、マスクの上から光配向膜の吸収波長にある第1の照射と異なる状態の光、例えば偏光状態が異なる光あるいは照射角度及び方向が異なる光を照射して、照射部分だけに第1の照射で得られた部分と異なる配向機能を持たせる。
【0133】
以上のようにして得られたパターン状に配向機能の異なる領域が分布した支持体に重合性液晶組成物を接触させれば、支持体の配向機能に応じてパターン状に配向方向の異なる領域が分布する。この状態で光照射による重合を行えば、配向パターンを有する液晶性高分子膜を得ることができる。
【0134】
特に、前記支持体として、パターン状に配向方向の異なる領域が分布している略水平配向機能を有する支持体を使用すれば、位相差膜として特に有用な液晶性高分子膜を得ることができる。
【0135】
そのほか、配向パターンを得る方法として、AFM(原子間力顕微鏡)の触針で配向膜をラビングする方法、光学異方体をエッヂングする方法等の光配向膜を用いない方法も採用可能であるが、光配向膜を利用する方法が簡便であり好ましい。
【0136】
本発明の重合性液晶組成物を支持体上に塗布する方法としては、バーコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ダイコーティング、キャップコーティング、ディッピング法等の公知慣用のコーティング法が挙げられる。このとき、塗工性を高めるために、本発明の重合性液晶組成物に公知慣用の有機溶媒を添加してもよい。この場合は、本発明の重合性液晶組成物を支持体上に塗布後、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等で有機溶媒を除去するのが好ましい。
【0137】
塗布後、本発明の重合性液晶組成物中の液晶化合物をコレステリック相を保持した状態で均一に配向させることが好ましい。具体的には、液晶の配向を促すような加熱処理を行うことにより、配向をより促進することができる。加熱処理の温度は、通常50〜150℃であり、70〜140℃であることが好ましい。また、加熱処理の時間は、通常0.5〜15分であり、2〜10分であることが好ましい。
【0138】
熱処理法としては、例えば、本発明の重合性液晶組成物を支持体上に塗布後、該液晶組成物のC(固相)−N(ネマチック相)転移温度(以下、「C−N転移温度」と略す。)以上に加熱して、該重合性液晶組成物を液晶相又は等方相液体状態にする。そこから、必要に応じ徐冷してコレステリック相を発現する。このとき、一旦液晶相を呈する温度に保ち、液晶相ドメインを充分に成長させてモノドメインとすることが望ましい。
【0139】
また、本発明の重合性液晶組成物を支持体上に塗布後、本発明の重合性液晶組成物のコレステリック相が発現する温度範囲内で温度を一定時間保つような加熱処理を施しても良い。加熱処理時間は特に限定されないが、通常1〜60分、好ましくは2〜30分である。
【0140】
加熱温度が高過ぎると重合性液晶化合物が好ましくない重合反応を起こして劣化するおそれがある。また、冷却しすぎると、重合性液晶組成物が相分離を起こし、結晶の析出、スメクチック相のような高次液晶相を発現し、配向処理が不可能になることがある。
このような加熱処理をすることで、単に塗布するだけの塗工方法と比べて、配向欠陥の少ない均質な液晶性高分子膜を作製することができる。
【0141】
また、このようにして均質な配向処理を行った後、液晶相が相分離を起こさない最低の温度、即ち過冷却状態となるまで冷却し、該温度において液晶相を配向させた状態で重合させることにより、配向秩序が高く、透明性に優れる液晶性高分子膜を得ることができる。
【0142】
重合性液晶組成物を重合させる方法としては、活性エネルギー線を照射する方法や熱重合法等が挙げられるが、加熱を必要とせず、室温で反応が進行することから活性エネルギー線を照射する方法が好ましい。なかでも、操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。
【0143】
照射時の温度は、重合性液晶組成物が液晶相を保持できる温度とし、重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物の熱重合の誘起を避けるため、可能な限り30℃以下とすることが好ましい。尚、重合性液晶化合物及び重合性液晶組成物は、通常、昇温過程において、C−N転移温度から、N(ネマチック相)−I(等方性液体相)転移温度(以下、「N−I転移温度」と略す。)範囲内で液晶相を示す。一方、降温過程においては、熱力学的に非平衡状態をとるため、C−N転移温度以下でも凝固せず液晶状態を保つ場合がある。この状態を過冷却状態という。本発明においては、過冷却状態にある重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物も液晶相を保持している状態に含めるものとする。紫外線照射強度は、通常1W/m
2〜10kW/m
2の範囲、好ましくは5W/m
2〜2kW/m
2の範囲である。
【0144】
また、マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させた後、該未重合部分の配向状態を、電場、磁場又は温度等をかけて変化させ、その後該未重合部分を重合させると、異なる配向方向をもった複数の領域を有する液晶性高分子膜を得ることができる。
【0145】
また、マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させる際に、予め未重合状態の重合性液晶組成物に電場、磁場又は温度等をかけて配向を規制し、その状態を保ったままマスク上から光を照射して重合させることによっても、異なる配向方向をもった複数の領域を有する液晶性高分子膜を得ることができる。
【0146】
本発明の重合性液晶組成物を(共)重合させて得られる液晶性高分子は、支持体から剥離して単体で使用することも、支持体から剥離せずにそのまま光学異方体として使用することもできる。
【0147】
特に、本発明の重合性液晶組成物を(共)重合して得られる液晶性高分子膜は、コレステリック液晶膜であり、極めて高い反射率を有するため、液晶表示素子における偏光子として好適である。
【0148】
これに加えて積層法によりこのような液晶性高分子膜を複数積層させ、かつ選択される液晶性高分子膜の選択波長を適切に選択することにより、可視スペクトルの全ての光をカバーする多層偏光子を得ることもできる(EP0720041号公報参照。)。
【0149】
また、このような多層の偏光子の代わりに、適切な化合物及び加工条件と組合せていわゆる広域バンド偏光子(broad−band polarizer)として使用することもできる。このための実施方法としては、例えば、WO98/08135号パンフレット、EP0606940号公報、GB2312529号公報、WO96/02016号パンフレット等に記載された方法が挙げられる。
【0150】
さらに、本発明の重合性液晶組成物を用いてカラーフィルターを製造することもできる。このために、当業者に慣用の塗布方法によって、必要とされる波長を適切に施与することができる。
【0151】
さらにまた、コレステリック液晶の熱変色性を利用することもできる。温度の調整により、コレステリックな層の色彩が赤色から緑色を経由して青色へと推移する。マスクを用いて特定の帯域を定義された温度で重合することができる。
【0152】
以上のようにして得られる本発明の液晶性高分子は、本発明の左螺旋を誘起する重合性キラル化合物を用いるものであるため、左螺旋性(左捻れ)の選択反射特性を有する。
左螺旋性であることは、例えば、分光光度計測定において、左円偏光を選択反射することから確認される。
【0153】
本発明の液晶性高分子の螺旋捻れ力(HTP)は、12以上であるのが好ましい。
HTPは、下記式により求められる。
【0155】
式中、P、C、n、λは、下記の意味を表す。
P:液晶性高分子のヘリカルピッチの長さ(μm)
C:重合性液晶化合物に対するキラル剤の濃度(質量%)
n:重合性液晶化合物の平均屈折率
λ:液晶性高分子の選択反射帯域の中心値(μm)
【0156】
中心波長λは、分光光度計で液晶性高分子の透過スペクトルを測定し、選択反射の値として求めることができる。
【0157】
また、本発明の液晶性高分子の数平均分子量は、通常500〜1,000,000、好ましくは500〜500,000、更に好ましくは5,000〜300,000である。
該数平均分子量がかかる範囲にあれば、高い膜硬度が得られ、取り扱い性にも優れるため望ましい。液晶性高分子の数平均分子量は、単分散のポリスチレンを標準試料とし、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液としてゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0158】
本発明の液晶性高分子は、架橋点が分子内で均一に存在すると推定される。本発明の重合性液晶化合物を(共)重合して得られるものであるから、架橋効率が高く、硬度に優れている。
【0159】
本発明の液晶性高分子は、その配向性、屈折率、誘電率、磁化率等の物理的性質の異方性を利用して、位相差板、液晶表示素子用配向膜、偏光板、視野角拡大板、カラーフィルター、ローパスフィルター、光偏光プリズム、各種光フィルター等の光学異方体の構成材料として用いることができる。
【0160】
4)光学異方体
本発明の第4は、本発明の液晶性高分子を構成材料とする光学異方体である。
本発明の光学異方体としては、位相差板、液晶表示素子用配向膜、偏光板、視野角拡大板、カラーフィルター、ローパスフィルター、光偏光プリズム、各種光フィルター等が挙げられる。
【0161】
本発明の光学異方体は、本発明の重合性液晶組成物を重合して得られる液晶性高分子を構成材料としているので、均一で高品質な液晶配向性を有している。
【実施例】
【0162】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、部及び%は特に断りのない限り質量基準である。
なお、カラムクロマトグラフィーに用いた展開溶媒の比(括弧内に示す溶媒比)は容積比である。
【0163】
(実施例1)重合性キラル化合物(I−1)の合成
【0164】
【化17】
【0165】
〈ステップ1〉
下記式で表される中間体Aを製造した。
【0166】
【化18】
【0167】
冷却器、温度計及び滴下漏斗を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、5−ホルミルサリチル酸15g(0.09mol)、メタノール14.5g(0.45mol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジンをTHF200mLに溶解させた。この溶液に、25℃にて、THF100mLに溶かしたN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド37.3g(0.18mol)を滴下漏斗にてゆっくりと加えた。その後、25℃にて、6時間反応を行った。反応終了後、減圧濾過した後に、ロータリーエバポレーターにてTHFを減圧留去し、黄色オイルを得た。この黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:THF=9:1)により精製して、中間体Aの白色固体を13.4g得た(収率:82.4%)。構造は
1H−NMRで同定した。
【0168】
(中間体Aの
1H−NMRデータ)
1H−NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δppm):11.36(s,1H)、9.88(s,1H)、8.39(s,1H)、8.00(d,1H,J=9.0Hz)、7.11(d,1H,J=9.0Hz)、4.01(s,3H)。
【0169】
〈ステップ2〉
下記式で表される中間体Bを製造した。
【0170】
【化19】
【0171】
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、テレフタルアルデヒド酸86.3g(0.57mol)、イソマンニド40g(0.27mol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン7.0g(0.057mol)をN−メチルピロリドン650mLに溶解させた。水浴下に、この溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)110.2g(0.57mol)を少しずつ添加した。その後、25℃にて15時間反応を行った。反応終了後、反応液を水5Lに投入し、酢酸エチル500mLで2回抽出を行った。分液操作により水層を除去し、得られた酢酸エチル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧濾過して硫酸マグネシウムを除去した。酢酸エチル層を、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮し、淡黄色オイルを得た。この黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:THF=3:2)により精製して、中間体Bの白色固体30gを得た(収率:28.7%)。構造は
1H−NMRで同定した。
【0172】
(中間体Bの
1H−NMRデータ)
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、δppm):10.10(s,2H)、8.24(d,4H,J=8.2Hz)、7.96(d,4H,J=8.2Hz)、5.37(dd,2H,J=6.4Hz,8.0Hz)、4.90(dd,2H,J=6.4Hz,8.0Hz)、4.45(dd,2H,J=6.4Hz,9.5Hz)、4.03(dd,2H,J=6.4Hz,9.5Hz)。
【0173】
〈ステップ3〉
下記式で表される中間体Cを製造した。
【0174】
【化20】
【0175】
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、ヒドラジン一水和物23g(0.46mol)を2−プロパノール100mLに溶解させた。この溶液に、中間体A8.2g(0.046mol)をTHF50mLに溶解させた溶液を、25℃でゆっくりと滴下した。滴下終了後、さらに25℃にて10分間攪拌した後、反応液を飽和重曹水800mLに投入し、クロロホルム100mLで2回抽出した。抽出したクロロホルム層を10%の重曹水200mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムをろ別した後、ロータリーエバポレーターにてクロロホルムを減圧留去して、淡黄色固体4.2gを得た。この淡黄色固体をTHF50mLに溶解させ、そこへ、中間体B4.5g(0.011mol)を投入して12時間25℃にて反応を行った。析出した結晶をろ取して、THFでリンスして中間体Cを含む黄色固体4.1gを得た。精製に用いることができる溶剤への溶解度が低く、精製が困難であったので、中間体Cを含む黄色固体をそのまま次のステップに用いた。
【0176】
〈ステップ4〉化合物(I−1)の合成
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、先のステップ3で得た中間体Cを含む黄色固体1.0g、4−(6−アクリロイル−ヘクス−1−イルオキシ)安息香酸(DKSHジャパン社製)0.96g(3.3mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン40mg(0.33mmol)をN−メチルピロリドン200mLに溶解した。この溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)0.76g(4mmol)を25℃で加えた。その後、25℃にて18時間反応を行った。反応終了後、反応液を水800mLに投入し、酢酸エチル150mLで2回抽出した。酢酸エチル層を分取し、得られた酢酸エチル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過を行い、硫酸マグネシウムを除去した。酢酸エチル層を、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮し、黄色オイルを得た。この黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=8:2)により精製し、淡黄色固体として化合物(I−1)を0.75g得た。構造は
1H−NMRで同定した。
【0177】
(化合物(I−1)の
1H−NMRデータ)
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、δppm):8.70(s,2H)、8.70(s,2H)、8.49(d,2H,J=2.3Hz)、8.19−8.10(m,10H)、7.94(d,4H,J=8.7Hz)、7.34(d,2H,J=8.2Hz)、6.98(d,4H,J=8.7Hz)、6.40(dd,2H,J=1.4Hz,17.4Hz)、6.13(dd,2H,J=10.5Hz,17.4Hz)、5.82(dd,2H,J=1.4Hz,10.5Hz)、5.40−5.35(m,2H)、4.93−4.90(m,2H)、4.19−4.15(m,6H)、4.08−4.03(m,6H)、3.78(s,6H)、1.87−1.81(m,4H)、1.76−1.69(m,4H)、1.57−1.42(m,8H)。
【0178】
(実施例2)重合性キラル化合物(I−2)の合成
【0179】
【化21】
【0180】
〈ステップ1〉
下記式で表される中間体Dを製造した。
【0181】
【化22】
【0182】
冷却器、温度計および滴下漏斗を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、5−ホルミルサリチル酸15g(0.09mol)、1−プロパノール27.1g(0.45mol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジンをTHF200mLに溶解させた。この溶液に、25℃で、THF100mLに溶かした1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)26.0g(0.14mol)をゆっくりと添加した。その後、25℃にて16時間反応を行った。反応終了後、反応液を水2Lに投入し、酢酸エチル500mLで2回抽出を行った。分液操作により酢酸エチル層を分取し、得られた酢酸エチル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧濾過して硫酸マグネシウムを除去した。酢酸エチル層を、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して黄色オイルを得た。この黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=85:15)により精製し、中間体Dの白色固体15.0gを得た(収率:80.0%)。構造は
1H−NMRで同定した。
【0183】
(中間体Dの
1H−NMRデータ)
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、δppm):11.48(s,1H)、9.88(s,1H)、8.37(s,1H)、7.99(d,1H,J=8.4Hz)、7.09(d,1H,J=8.4Hz)、4.35(t,2H,J=6.9Hz)、1.84(tq,2H,J=6.9Hz,7.3Hz)、1.05(t,3H,J=7.3Hz)。
【0184】
〈ステップ2〉
下記式で表される中間体Eを製造した。
【0185】
【化23】
【0186】
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、ヒドラジン一水和物5.4g(0.11mol)を2−プロパノール40mLに溶解させた。この溶液に、中間体D4.5g(0.034mol)をTHF30mLに溶解させた溶液を、25℃でゆっくりと滴下した。30分間25℃にて攪拌した後、飽和重曹水100mLに投入し、クロロホルム50mLで2回抽出した。分液操作によりクロロホルム層を分取し、得られたクロロホルム層を10%の重曹水50mLで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により硫酸ナトリウムを除去した後、ロータリーエバポレーターにてクロロホルムを減圧留去して、淡黄色固体を4.1g得た。この淡黄色固体をTHF50mLに溶解させ、この溶液に、中間体B3.9g(0.0092mol)を添加して、11時間25℃にて反応を行った。析出した結晶をろ過して、THFでリンスして中間体Eを含む黄色固体3.6gを得た。精製に用いることができる溶剤への溶解度が低く、精製が困難であったので、中間体Eを含む黄色固体をそのまま次のステップに用いた。
【0187】
〈ステップ3〉化合物(I−2)の合成
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、先のステップ3で得た中間体Eを含む黄色固体2.0g(2.5mmol)、4−(6−アクリロイル−ヘクス−1−イルオキシ)安息香酸(DKSHジャパン社製)1.8g(6.2mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン91mg(0.75mmol)をN−メチルピロリドン130mLに溶解させた。この溶液に、25℃で、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)1.4g(7.5mmol)を加えた。その後、25℃にて24時間反応を行った。反応終了後、反応液を水1Lに投入し、酢酸エチル200mLで2回抽出を行った。酢酸エチル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過を行い硫酸マグネシウムを除去した。酢酸エチル層をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮し、黄色オイルを得た。この黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=9:1)により精製し、淡黄色固体として化合物(I−2)を0.65g得た。構造は
1H−NMRで同定した。
【0188】
(化合物(I−2)の
1H−NMRデータ)
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、δppm):8.70(s,4H)、8.47(d,2H,J=1.4Hz)、8.19−8.11(m,10H)、7.94(d,4H,J=8.2Hz)、7.32(d,2H,J=8.7Hz)、6.97(d,4H,J=8.7Hz)、6.40(dd,2H,J=1.4Hz,17.2Hz)、6.12(dd,2H,J=10.6Hz,17.2Hz)、5.82(dd,2H,J=1.4Hz,10.6Hz)、5.37(d,2H,J=4.6Hz)、4.92(d,2H,J=4.6Hz)、4.18−4.05(m,16H)、1.87−1.81(m,4H)、1.76−1.69(m,4H)、1.60−1.46(m,12H)、0.86(t,6H,J=7.3Hz)。
【0189】
(実施例3)重合性キラル化合物(I−3)の合成
【0190】
【化24】
【0191】
〈ステップ3〉
下記式で表される中間体Fを製造した。
【0192】
【化25】
【0193】
冷却器、温度計および滴下漏斗を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、5−ホルミルサリチル酸5g(0.03mol)、エチレングリコールモノプロピルエーテル15.6g(0.15mol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン0.48g(4mmol)をN−メチルピロリドン200mLに溶解させた。この溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)7.6g(0.04mol)を25℃にて添加した。その後、25℃にて17時間反応を行った。反応終了後、反応液を水800mLに投入し、酢酸エチル200mLで2回抽出を行った。酢酸エチル層を分取し、得られた酢酸エチル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過を行い硫酸マグネシウムを除去した。酢酸エチル層をロータリーエバポレーターにて濃縮を行い、黄色オイルを得た。この黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=8:2)により精製し、中間体Fの白色固体6.1gを得た(収率:80.6%)。構造は
1H−NMRで同定した。
【0194】
(中間体Fの
1H−NMRデータ)
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、δppm):11.31(s,1H)、9.87(s,1H)、8.40(s,1H)、7.99(dd,1H,J=1.6Hz,8.8Hz)、7.09(d,1H,J=8.8Hz)、4.55−4.52(m,2H)、3.79−3.75(m,2H)、3.47(t,2H,J=6.8Hz)、1.66−1.57(m,2H)、0.92(t,3H,J=7.3Hz)。
【0195】
〈ステップ3〉
下記式で表される中間体Gを製造した。
【0196】
【化26】
【0197】
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、ヒドラジン一水和物1g(20mmol)を2−プロパノール20mLに溶解させた。25℃で、この溶液に、中間体F1g(4mmol)をTHF30mLに溶解させた溶液を、ゆっくりと滴下した。滴下終了後、5分間25℃にて攪拌した後、反応液を飽和重曹水500mLに投入し、クロロホルム50mLで2回抽出した。分液操作によりクロロホルム層を分取し、得られたクロロホルム層を10%の重曹水100mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により硫酸ナトリウムを除去した後、ロータリーエバポレーターにてクロロホルムを減圧留去して、黄色オイルを1.1g得た。この黄色オイルをTHF30mLに溶解させ、この溶液に、中間体B0.3g(0.7mmol)を添加して、25℃にて17時間反応を行った。析出した結晶をろ過して、氷水で冷却したTHFでリンスして中間体Gを含む黄色固体0.3gを得た。精製に用いることができる溶剤への溶解度が低く、精製が困難であったので、中間体Gを含む黄色固体をそのまま次のステップに用いた。
【0198】
〈ステップ3〉化合物(I−3)の合成
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、先のステップ2で得た中間体Gを含む黄色固体0.21g、4−(6−アクリロイル−ヘクス−1−イルオキシ)安息香酸(DKSHジャパン社製)0.17g(0.58mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン7mg(0.06mmol)をN−メチルピロリドン50mLに溶解した。この溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)133mg(0.69mmol)を25℃にて加えた。その後、25℃にて18時間反応を行った。反応終了後、反応液を水300mLに投入し、酢酸エチル100mLで2回抽出を行った。分液操作によりクロロホルム層を分取し、得られた酢酸エチル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過を行い硫酸マグネシウムを除去した。酢酸エチル層を、ロータリーエバポレーターにて濃縮し、黄色オイルを得た。この黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=8:2)により精製し、淡黄色固体として化合物(I−3)を0.15g得た。構造は
1H−NMRで同定した。
【0199】
(化合物(I−3)の
1H−NMRデータ)
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、δppm):8.70(s,4H)、8.49(d,2H,J=2.3Hz)、8.19−8.12(m,10H)、7.94(d,4H,J=8.2Hz)、7.33(d,2H,J=8.2Hz)、6.99−6.96(m,4H)、6.40(dd,2H,J=1.4Hz,17.4Hz)、6.12(dd,2H,J=10.6Hz,17.4Hz)、5.82(dd,2H,J=1.4Hz,10.6Hz)、5.40−5.35(m,2H)、4.93−4.91(m,2H)、4.36−4.33(m,4H)、4.19−4.15(m,6H)、4.08−4.03(m,6H)、3.54−3.52(m,4H)、3.31−3.27(m,4H)、1.87−1.81(m,4H)、1.76−1.69(m,4H)、1.56−1.43(m,12H)、0.88(t,6H,J=7.3Hz)。
【0200】
(実施例4)重合性キラル化合物(I−4)の合成
【0201】
【化27】
【0202】
化合物(I−1)の合成ステップ4において、4−(6−アクリロイル−ヘクス−1−イルオキシ)安息香酸(DKSHジャパン社製)0.96gに代えて、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸(共栄社化学製)0.71g(3.3mmol)を用いる以外は、化合物(I−1)の合成法と同様に反応及び後処理を行い、得られた反応物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=9:1)により精製して、化合物(I−4)を得た。構造は
1H−NMRで同定した。
【0203】
(化合物(I−4)の
1H−NMRデータ)
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、δppm):8.69(s,2H)、8.66(s,2H)、8.46(d,2H,J=2.3Hz)、8.18(d,4H,J=8.7Hz)、8.06(dd,2H,J=2.3Hz,8.7Hz)、7.93(d,4H,J=8.7Hz)、7.22(d,2H,J=8.7Hz)、6.43(dd,2H,J=1.4Hz,17.4Hz)、6.12(dd,2H,J=10.6Hz,17.4Hz)、5.85(dd,2H,J=1.4Hz,10.6Hz)、5.39−5.35(m,2H)、4.93−4.90(m,2H)、4.38(s,8H)、4.18−4.14(m,2H)、4.07−4.03(m,2H)、3.90(s,6H)、3.00(t,4H,J=6.9Hz)、2.81(t,4H,J=6.9Hz)。
【0204】
(実施例5)重合性キラル化合物(I−5)の合成
【0205】
【化28】
【0206】
化合物(I−2)の合成ステップ3において、4−(6−アクリロイル−ヘクス−1−イルオキシ)安息香酸(DKSHジャパン社製)1.8gに代えて、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸(共栄社化学社製)1.4g(6.5mmol)を用いる以外は、化合物(I−2)の合成法と同様に反応及び後処理を行い、得られた反応物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=9:1)により精製して、化合物(I−5)を得た。構造は
1H−NMRで同定した。
【0207】
(化合物(I−5)の
1H−NMRデータ)
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS、δppm):8.69(s,2H)、8.67(s,2H)、8.43(d,2H,J=2.0Hz)、8.18(d,4H,J=8.3Hz)、8.07(dd,2H,J=2.0Hz,8.3Hz)、7.93(d,4H,J=8.3Hz)、7.22(d,2H,J=8.3Hz)、6.43(dd,2H,J=0.9Hz,17.4Hz)、6.12(dd,2H,J=10.6Hz,17.4Hz)、5.85(dd,2H,J=0.9Hz,10.6Hz)、5.39−5.35(m,2H)、4.93−4.90(m,2H)、4.37(s,8H)、4.26(t,4H,J=6.8Hz)、4.18−4.03(m,4H)、2.99(t,4H,J=6.9Hz)、2.81(t,4H,J=6.9Hz)、1.79(tq,4H,J=6.8Hz,7.3Hz)、1.02(t,6H,J=7.3Hz)。
【0208】
(実施例6)重合性キラル化合物(I−6)の合成
【0209】
【化29】
【0210】
〈ステップ1〉
下記式で表される中間体Hを製造した。
【0211】
【化30】
【0212】
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、テレフタルアルデヒド酸6.6g(43.7mmol)、(S)−(−)−1,1’−ビ−2−ナフトール5g(17.5mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン0.64g(5.2mmol)をN−メチルピロリドン100mLに溶解した。水浴下に、この溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)10g(52.4mmol)を少量ずつ投入した。その後、25℃にて20時間反応を行った。反応終了後、反応液を水1Lに投入し、酢酸エチル300mLで2回抽出を行った。酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濾過して硫酸ナトリウムを除去した。酢酸エチル層を減圧下、ロータリーエバポレーターにて酢酸エチルを留去して濃縮し、淡黄色オイルを得た。この淡黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=95:5)により精製し、中間体Hの淡黄色オイル2.7gを得た(収率:28.3%)。構造は
1H−NMRで同定した。
【0213】
(中間体Hの
1H−NMRデータ)
1H−NMR(500MHz、CDCl
3、TMS、δppm):10.00(s,2H)、8.01(d,2H,J=9.0Hz)、7.93(d,2H,J=8.0Hz)、7.77−7.70(m,8H)、7.56(d,2H,J=8.5Hz)、7.51−7.47(m,2H)、7.43−7.36(m,4H)。
【0214】
〈ステップ2〉
下記式で表される中間体Jを製造した。
【0215】
【化31】
【0216】
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、ヒドラジン一水和物2.8g(55.5mmol)を2−プロパノール40mLに溶解した。25℃で、この溶液に、中間体A2g(11.1mmol)をTHF30mLに溶解させてゆっくりと滴下した。30分間25℃にて攪拌した後、飽和重曹水150mLに投入し、クロロホルム50mLで2回抽出した。抽出したクロロホルム層を10%の重曹水50mLで洗浄し、クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により硫酸ナトリウムを除去した後、減圧下、ロータリーエバポレーターにてクロロホルムを留去して淡黄色固体を1.5g得た。この淡黄色固体をTHF50mLに溶解させ、中間体H1.7g(3.1mmol)を投入して20時間25℃にて反応を行った。反応終了後、減圧下、ロータリーエバポレーターにてTHFを留去して濃縮し、黄色オイルを得た。この黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=95:5)により精製し、中間体Jの黄色固体0.5gを得た(収率:17.9%)。構造は
1H−NMRで同定した。
【0217】
(中間体Jの
1H−NMRデータ)
1H−NMR(500MHz、CDCl
3、TMS、δppm):11.13(s,2H)、8.57(s,2H)、8.56(s,2H)、8.26(d,2H,J=2.0Hz)、8.01−7.99(m,4H)、7.92(d,2H,J=8.0Hz)、7.71−7.67(m,8H)、7.58(d,2H,J=9.0Hz)、7.48−7.41(m,4H)、7.37−7.34(m,2H)、7.06(d,2H,J=8.5Hz)、3.99(s,6H)。
【0218】
〈ステップ3〉化合物(I−6)の合成
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、先のステップ2で合成した中間体J0.36g(0.4mmol)、4−(6−アクリロイル−ヘクス−1−イルオキシ)安息香酸(DKSHジャパン社製)0.29g(1mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン15mg(0.12mmol)をN−メチルピロリドン30mLに溶解した。この溶液に、25℃で、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)230mg(1.2mmol)を加えた。その後、25℃にて18時間反応を行った。反応終了後、反応液を水150mLに投入し、酢酸エチル50mLで2回抽出を行った。酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過を行い硫酸ナトリウムを除去した。酢酸エチル層を、減圧下ロータリーエバポレーターにて濃縮を行い、黄色オイルを得た。この黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=9:1)により精製し、黄色固体として化合物(I−6)を0.2g得た(収率:34.4%)。構造は
1H−NMRで同定した。
【0219】
(化合物(I−6)の
1H−NMRデータ)
1H−NMR(500MHz、CDCl
3、TMS、δppm):8.65(s,2H)、8.59(s,2H)、8.48(d,2H,J=2.0Hz)、8.18−8.16(m,4H)、8.09(dd,2H,J=2.0Hz,8.5Hz)、8.01(d,2H,J=9.0Hz)、7.93(d,2H,J=8.5Hz)、7.74−7.68(m,8H)、7.59(d,2H,J=9.0Hz)、7.48−7.42(m,4H)、7.38−7.33(m,4H)、6.99(d,4H,J=9.0Hz)、6.41(dd,2H,J=1.5Hz,17.5Hz)、6.13(dd,2H,J=10.5Hz,17.5Hz)、5.82(dd,2H,J=1.5Hz,10.5Hz)、4.19(t,4H,J=7.0Hz)、4.05(t,4H,J=6.5Hz)、3.78(s,6H)、1.87−1.82(m,4H)、1.76−1.70(m,4H)、1.57−1.45(m,8H)。
【0220】
(実施例7〜12、参考例1) 高分子硬化膜の製造
脂環式オレフィンポリマーからなるフィルム(オプテス社製、ゼオノアフィルムZF16−100)の両面をコロナ放電処理した。次いで、その片面に、ポリビニルアルコールの5質量%水溶液を♯2のワイヤーバーを使用して塗布し、得られた塗膜を100℃で3分間乾燥し、膜厚0.1μmの配向膜を形成した。次いで当該配向膜をラビング処理し、配向膜を有する透明樹脂基材1を得た。
【0221】
次に、実施例1〜6で得られた化合物(I−1)〜(I−6)、又は、下記式(CD)で表される化合物(パリオカラーLC−756、BASF社製)の重合性キラル化合物、
【0222】
【化32】
【0223】
特開2008−291218号公報の実施例で示されている下記式(LC)で表される重合性液晶化合物、
【0224】
【化33】
【0225】
下記式
【0226】
【化34】
【0227】
で表される重合性非液晶化合物、有機溶媒としてのシクロペンタノン、1,3−ジオキソラン、界面活性剤(セイミケミカル社製、KH−40)、及び光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア1919)を、下記第1表に示す配合割合(質量部)で混合し、固形分約40質量%のコレステリック液晶組成物を調製した。
【0228】
得られたコレステリック液晶組成物を♯10のワイヤーバーを使用して、透明樹脂基材1の配向膜を有する面に塗布した。塗膜を130℃で2分間配向処理し、乾燥膜厚5μmのコレステリック液晶層を形成した。得られた塗布膜に水銀ランプで2000mJ/cm
2に相当する紫外線を照射して、厚さ約5μmのコレステリック高分子硬化膜(1〜6、1r)を得た。
【0229】
【表1】
【0230】
得られたコレステリック高分子硬化膜(1〜6、1r)につき、下記式により螺旋捻り力(HTP)を算出した。
【0231】
【数2】
【0232】
式中、P、C、n、λは、下記の意味を表す。
P:コレステリック高分子硬化膜のヘリカルピッチの長さ(μm)
C:重合性液晶化合物に対するキラル剤の濃度(質量%)
n:重合性液晶化合物の平均屈折率
λ:コレステリック高分子硬化膜の選択反射帯域の中心値(μm)
【0233】
中心波長λは、分光光度計(大塚電子社製、瞬間マルチ測光システム MCPD−3000)でコレステリック高分子硬化膜の透過スペクトルを測定し、選択反射の値として求めた。結果を下記第2表に示す。
【0234】
さらに、前記透過スペクトルを測定する際に、入射光として右円偏光と左円偏光のそれぞれを使用し、各円偏光に対する選択反射の有無を調べた。螺旋方向は、右円偏光を選択反射するものが右捻れ、左円偏光を選択反射するものは左捻れである。選択反射が確認できたものは○、選択反射を確認できなかったものは×とし、結果を下記第2表に示す。
【0235】
【表2】
【0236】
第2表より、実施例1〜6で得られた重合性キラル化合物(I−1)〜(I−6)は、左螺旋を誘起するものであり、得られるコレステリック高分子硬化膜の内、特に不斉源として、化合物(X−ii)を有する実施例12は高いHTPを有していることがわかる。