(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記成分(A1)が、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂及びヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルからなる群から選択される少なくとも1つの成分である請求項1〜6のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1の態様〕
本発明の第1の態様におけるエポキシ樹脂組成物は、成分(A1):エポキシ樹脂、成分(B1):三ハロゲン化ホウ素アミン錯体、及び成分(C1):ゴム粒子、を含有するエポキシ樹脂組成物である。以下、各成分につき説明する。
<成分(A1)>
成分(A1)はエポキシ樹脂である。
通常、エポキシ樹脂という用語は熱硬化性樹脂の一つのカテゴリーの名称、および分子内に複数の1,2−エポキシ基を有する化合物という化学物質のカテゴリーの名称として用いられるが、本発明においては後者の意味で用いられる。また、エポキシ樹脂組成物という用語はエポキシ樹脂と硬化剤、場合により他の成分を含む組成物を意味する。
前記エポキシ樹脂は、分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に制限は無いが、硬化物への耐熱性付与の観点から、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂、及び分子内に脂肪族環を有するエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つのエポキシ樹脂であることが好ましい。
成分(A1)としては、分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂を使用することが好ましい。分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂を使用することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の粘度を取り扱いに適した範囲に調整することが出来る。また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の機械的特性を適正な範囲に調整することができる。
なお、ここでいう「2官能のエポキシ樹脂」とは、分子内に2個のエポキシ基を有する化合物を意味する。
分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂における芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環等が挙げられる。
分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ヒドロキノンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テレフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、さらに2種以上のエポキシ樹脂を併用しても良い。
中でも、分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることが出来るため取り扱いや強化繊維束への含浸が容易であり、かつ硬化物の耐熱性も優れる点から、特にエポキシ当量が170g/eq以上、200g/eq以下である液状のビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0013】
成分(A1)としては、分子内に芳香族環を有する3官能や4官能のエポキシ樹脂を使用してもよい。成分(A1)として、分子内に芳香族環を有する3官能や4官能のエポキシ樹脂を使用することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の取り扱い、及び、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性を適正な範囲に調整することができる。
なお、ここでいう「3官能、4官能のエポキシ樹脂」とは、分子内に3個または4個のエポキシ基を有する化合物を意味する。
分子内に芳香族環を有する3官能や4官能のエポキシ樹脂における芳香族環としては、例えば「2官能のエポキシ樹脂」が有しうる芳香族環と同様の環が挙げられる。
【0014】
分子内に芳香族環を有する3官能エポキシ樹脂としては、具体的には、ノボラック型エポキシ樹脂、N,N ,O−トリグリシジル−P−又は−m−アミノフェノール型エポキシ樹脂、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−m−又は−5−アミノ−o−クレゾール型エポキシ樹脂、1,1,1−(トリグリシジルオキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
分子内に芳香族環を有する4官能エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が挙げられる。具体的には、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミノジフェニルスルホン型、メタキシレンジアミン型、等のエポキシ樹脂が挙げられる。
中でもエポキシ樹脂組成物の粘度を比較的低くすることが出来るため、強化繊維束への含浸や取り扱いが容易となり、かつ硬化物の耐熱性も優れることから、エポキシ当量が110g/eq以上、130g/eq以下であるN,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)型エポキシ樹脂が特に好ましく用いられる。
【0015】
分子内に芳香族環を有する3官能エポキシ樹脂及び4官能エポキシ樹脂は、これらに限定されるものではない。また、2種以上の分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂を併用しても良い。
なお、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂として、2官能エポキシ樹脂と3官能や4官能エポキシ樹脂とを併用する場合、これらの割合は、質量比で3官能及び4官能エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つのエポキシ樹脂:2官能エポキシ樹脂が10:90〜40:60であることが好ましく、15:85〜60:40であることがより好ましい。
2官能エポキシ樹脂の含有量が著しく多いと、硬化物のガラス転移温度が150℃以上の比較的高い耐熱性を付与することが困難であるという問題が生じる場合がある。逆に、2官能エポキシ樹脂の含有量が著しく少ないと、硬化物が著しく脆くなってしまったり、エポキシ樹脂組成物が比較的高粘度となり、取り扱いや強化繊維束への含浸が困難になるという問題が生じる可能性がある。また3官能や4官能エポキシ樹脂の含有量が著しく多いと、エポキシ樹脂組成物が比較的高粘度となり、取り扱いや強化繊維束への含浸が困難になるという問題が生じる場合がある。逆に、3官能や4官能エポキシ樹脂の含有量が著しく少ないと、硬化物のガラス転移温度が150℃以上の比較的高い耐熱性を付与することが困難であるという問題が生じる可能性がある。
【0016】
成分(A1)としては、分子内に脂肪族環を有する2〜4官能のエポキシ樹脂を使用してもよい。前記エポキシ樹脂としては、脂肪族環にエポキシ環が縮合した化合物や、脂肪族環にグリシジル基等のエポキシ基を含む置換基が結合した化合物等が挙げられる。 脂肪族環にエポキシ環が縮合した化合物における脂肪族環としては、炭素数6の脂肪族環が好ましく、具体的にはシクロヘキサン環等が挙げられる。
脂肪族環にエポキシ環が縮合した化合物としては、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート等が挙げられる。
成分(A1)としてこれらを使用する場合、エポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることが出来るため、取り扱いや強化繊維束への含浸が容易となり、かつ硬化物の耐熱性も優れるため、好ましい。さらに、繊維強化複合材料を作製した場合、マトリックス樹脂と強化繊維の表面との接着の強さを適切に調整できる効果も得られるため、好ましい。また、脂肪族環にグリシジル基等のエポキシ基を含む置換基が結合した化合物における脂肪族環としては、炭素数6の脂肪族環が好ましく、具体的にはシクロヘキサン環等が挙げられる。
脂肪族環にグリシジル基等のエポキシ基を含む置換基が結合した化合物としては、例えばヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、メチルテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。成分(A1)としてこれらを使用する場合、エポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることが出来るため、取り扱いや強化繊維束への含浸が容易となり、かつ繊維強化複合材料を作製した場合、マトリックス樹脂と強化繊維の表面との接着の強さを適切に調整できるため、好ましい。上記、分子内に脂肪族環を有するエポキシ樹脂は、2種以上を併用しても良い。
また、成分(A1)として、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂と分子内に脂肪族環を有するエポキシ樹脂とを併用して用いても良い。
このように、本発明の成分(A1)としては種々のエポキシ樹脂が使用できるが、硬化物への耐熱性付与の観点から、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂が好ましい。特に、成分(A1)100質量部中、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂が30〜100質量部であることが好ましく、40〜100質量部であることがより好ましく、50〜100質量部であることが更に好ましく、さらに60〜100重量部であることが最も好ましい。
具体的には、上記分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂としては、エポキシ当量が170g/eq以上、200g/eq以下である液状のビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましく、これらを(A1)100質量部中、30〜100質量部で用いることが好ましい。
なお、成分(A1)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、上述以外のエポキシ樹脂を含有していてもよい。
【0017】
<成分(B1)>
成分(B1)は、三ハロゲン化ホウ素アミン錯体である。
三ハロゲン化ホウ素アミン錯体としては、三塩化ホウ素や三フッ化ホウ素等のハロゲン化ホウ素と有機アミンとからなる錯体が好ましい。即ち、成分(B1)としては、三塩化ホウ素アミン錯体や三フッ化ホウ素アミン錯体が好ましい。
具体的には、例えば三フッ化ホウ素アニリン錯体、三フッ化ホウ素p−クロロアニリン錯体、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体、三フッ化ホウ素イソプロピルアミン錯体、三フッ化ホウ素ベンジルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジメチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジブチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素ジベンジルアミン錯体、これらに於けるフッ素原子が塩素原子に置き換わった化合物、及び三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体等が挙げられる。
これら錯体の中でも特にエポキシ樹脂に対する溶解性が優れ、含有する組成物のポットライフが優れ、工業的に入手が容易である三フッ化ホウ素ピペリジン錯体又は三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体が好ましく使用できる。
これら錯体を硬化剤として使用することによって作製された繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂と強化繊維の表面との接着の強さにおいて、優れた引張強度を発現するのに適した強さを得ることが出来る。また、成分(C1)を併用した際に、マトリックス樹脂の靭性向上により、これら錯体を硬化剤として使用することによって作製された繊維強化複合材料は、優れた引張強度発現効果を得ることが出来る。さらに三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体の様なエポキシ樹脂に対する溶解性が優れる錯体を使用した場合、作製した繊維強化複合材料へのボイド発生を抑制できる。これにより、繊維強化複合材料は優れた引張強度発現効果を得ることが出来る。
前記成分(A1)として、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂及び脂肪族環にグリシジル基等のエポキシ基を含む置換基が結合した化合物(特にヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル)からなる群から選択される少なくとも1つを使用する場合は、より低温で短時間に硬化できることから、成分(B1)として三塩化ホウ素アミン錯体を使用することが好ましい。
一方、前記成分(A1)として、脂肪族環にエポキシ環が縮合した化合物を使用する場合には、より低温で短時間に硬化できることから、成分(B1)として三フッ化ホウ素アミン錯体を使用することが好ましい。
成分(B1)の好ましい配合量は、本発明のエポキシ樹脂組成物中に含まれる成分(A1)100質量部に対して、通常8質量部以上、好ましくは9質量部以上であり、また通常20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは17質量部以下である。
即ち、成分(B1)の好ましい配合量は、成分(A1)100質量部に対して、8質量部以上、20質量部以下が好ましく、8質量部以上、18質量部以下がより好ましく、9質量部以上、18質量部以下がよりさらに好ましく、9質量部以上、17質量部以下が特に好ましい。成分(B1)の配合量が著しく多い、又は著しく少ない場合、硬化樹脂の耐熱性が低くなってしまう可能性がある。
【0018】
<成分(C1)>
成分(C1)はゴム粒子であり、硬化後のエポキシ樹脂組成物の靱性向上のために配合される。成分(C1)としては、架橋ゴム粒子、及び架橋ゴム粒子の表面に架橋ゴム粒子を構成するポリマーとは異なるポリマーをグラフト重合したコアシェル型ゴム粒子からなる群から選択される少なくとも1つのゴム粒子が、好ましく用いられる。
架橋ゴム粒子については、ゴムの種類は制限されず、例えばブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコ−ンゴム、ブチルゴム、NBR,SBR,IR,EPR等が用いられる。
架橋ゴム粒子の例としては、製品名:YR−500シリーズ(東都化成(株)製)等が挙げられる。
「コアシェル型ゴム粒子」とは、架橋されたゴム状ポリマーを主成分とする粒子状コア成分の表面に、コア成分とは異種のシェル成分ポリマーをグラフト重合することで粒子状コア成分の表面の一部あるいは全体をシェル成分で被覆したゴム粒子である。
【0019】
コアシェル型ゴム粒子を構成するコア成分としては、前記架橋ゴム粒子と同様のものが挙げられる。中でもスチレンとブタジエンから構成される架橋ゴム状ポリマーが、靭性向上効果が高く好ましい。
【0020】
コアシェル型ゴム粒子を構成するシェル成分は、前記したコア成分にグラフト重合されており、コア成分を構成するポリマーと化学結合していることが好ましい。なお、ここでいう「化学結合」とは、原子又はイオンを結びつけて、分子又は結晶を形成させる原子間の結合を意味する。特に、ここでの化学結合は電子対が二つの原子に共有されることにより形成される共有結合を意味する。
かかるシェル成分を構成する成分としては、例えばアクリル酸エステル系モノマー、及びメタクリル酸エステル系モノマー、及び芳香族系ビニルモノマー等からなる群から選択される少なくとも1種が重合した重合体を用いることができる。コア成分としてスチレンとブタジエンから構成される架橋ゴム状ポリマーを使用する場合、シェル成分としては、(メタ)アクリル酸エステルであるメタクリル酸メチルと芳香族ビニル化合物であるスチレンの混合体を好適に用いることができる。
【0021】
また、前記シェル成分には分散状態を安定化させるために、本発明のエポキシ樹脂組成物を構成する成分(A1)と反応する官能基が導入されていることが好ましい。かかる官能基としては、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基が挙げられ、中でもエポキシ基が好ましい。エポキシ基を導入する方法としては、前記したシェル成分に、例えばメタクリル酸2,3−エポキシプロピルを併用して、コア成分にグラフト重合する方法がある。
具体的な市販品としては、アクリルゴムを使用した製品名:W−5500或いは製品名:J−5800(三菱レイヨン(株)製)、シリコーン・アクリル複合ゴムを使用した製品名:SRK−200E(三菱レイヨン(株)製)、ブタジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合物からなる製品名:パラロイドEXL−2655(呉羽化学工業(株)製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなる製品名:スタフィロイドAC−3355或いは製品名:TR−2122(武田薬品工業(株)製)、アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合物からなる製品名:PARALOID EXL−2611或いは製品名:EXL−3387(Rohm&Haas社製)等を挙げることができる。
【0022】
ゴム粒子は、エポキシ樹脂組成物の調製時に攪拌機やロールミル等を使用して成分(A1)中へ分散してもよいが、ゴム粒子が予めエポキシ樹脂に分散されたマスターバッチ型のゴム粒子分散エポキシ樹脂を用いると、エポキシ樹脂組成物の調製時間を短縮するだけでなく、エポキシ樹脂組成物中のゴム粒子の分散状態を良好にすることが出来るので好ましい。さらにはゴム粒子とエポキシ樹脂成分が化学結合又は物理結合しているものが特に好ましい。
このようなマスターバッチ型の架橋ゴム粒子分散エポキシ樹脂としては、アクリルゴムを含有した製品名:BPF307或いは製品名:BPA328(日本触媒(株)製);スチレン及びブタジエンの共重合体のコア成分とメタクリル酸メチルを含み、かつエポキシ樹脂と反応する官能基を有するシェル成分とからなるコアシェルゴム粒子を含有した製品名:MX−113或いは製品名:MX−416;ブタジエンゴムを含有した製品名:MX−156;シリコンゴムを含有した製品名:MX−960(カネカ(株)製)等が挙げられる。
なお、硬化後のエポキシ樹脂組成物の靭性向上のため、特に後述する圧力容器に使用した場合の破壊圧力の向上効果のためには、成分(C1)はブタジエンゴムを含むゴム粒子であることが好ましい。すなわち、ブタジエンゴム粒子や、ブタジエンゴム粒子をコア成分とするコアシェル型ゴム粒子が好ましく、ブタジエンゴム粒子をコア成分とするコアシェル型ゴム粒子が特に好ましい。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物中における成分(C1)の粒径は、50nm以上、400nm以下であることが好ましく、50nm以上、300nm以下であることがより好ましい。硬化物中の成分(C1)の粒径は、以下の方法で測定することができる。
【0023】
<成分(C1)の粒径を走査型電子顕微鏡(SEM)で確認可能な場合>
ASTM D5045に準拠して硬化樹脂の破壊靱性値を測定した際の試験体破面の任意の100μm
2の範囲をSEMを用いて観察し、確認された成分(C1)の粒径、又は成分(C1)が抜け落ちた凹部の径を任意の10箇所測定してその平均値を成分(C1)の粒径とする。
<成分(C1)の粒径をSEMで確認困難な場合>
硬化樹脂板をジクロロメタンに浸漬し成分(C1)を溶出させる。成分(C1)を溶出させた硬化樹脂板の任意の100μm
2の範囲を走査型プローブ顕微鏡で観察し、確認された成分(C1)が溶出した凹部の径を任意の10箇所測定してその平均値を成分(C1)の粒径とする。
硬化物中の粒径を前記範囲内とするためには、好ましくは一次粒子の体積平均粒子径が○○nm以上、400nm以下、より好ましくは○○nm以上、300nm以下の成分(C1):ゴム粒子を使用し、攪拌機やロールミル等を使用して成分(A1)中へ分散させ、又は成分(C1)が予め成分(A1)に分散されたマスターバッチ型のゴム粒子分散エポキシ樹脂を用いて、エポキシ樹脂組成物を調製することにより、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物中における成分(C1)の粒径を上記範囲内に制御することができる。なお、ゴム粒子の一次粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計等で測定することができる。
成分(C1)の好ましい配合量は、本発明のエポキシ樹脂組成物中に含まれる成分(A1)100質量部に対して、通常12質量部以上、好ましくは16質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、また通常110質量部以下、好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。
即ち、成分(C1)の好ましい配合量は、成分(A1)100質量部に対して、通常12質量部以上、110質量部以下が好ましく、16質量部以上、100質量部以下がより好ましく、20質量部以上、80質量部以下が特に好ましい。
成分(C1)が著しく多い場合はエポキシ樹脂への分散が困難となったり、エポキシ樹脂組成物が高粘度となってしまい、取り扱いや強化繊維束への含浸が困難となる問題が生じる場合がある。逆に、成分(C1)が著しく少ない場合は、硬化後のエポキシ樹脂組成物の靭性向上が不十分で、本発明の効果が得られないという問題が生じる可能性がある。
【0024】
<成分(D1)>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに成分(D1):前記成分(A1)〜(C1)を含有するエポキシ樹脂組成物と相溶可能であり、かつ成分(D1)を含むエポキシ樹脂組成物が硬化したときに相分離構造を形成する特性を有するポリマー、を含有してもよい。エポキシ樹脂組成物の硬化物の靭性は成分(C1)のゴム粒子により向上されるが、成分(D1)を加えることで更に靭性を向上しうる。
成分(D1)としては、例えば、M−B−Mトリブロック共重合体、S−B−Mトリブロック共重合体(但し、ブロックMはポリメタクリル酸メチルのホモポリマー又は、前記ブロックMの仕込み量である全モノマーの総質量に対して、モノマー換算でメタクリル酸メチルを少なくとも50質量%含有するコポリマーであり;ブロックBはモノマーとしてブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン及び(メタ)アクリル酸エステルから選ばれた1以上のモノマーを重合してなるポリマーであり;ブロックSはモノマーとしてスチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエンから選ばれた1以上のモノマーを重合してなるポリマーである。)等のトリブロック共重合体;又はポリアミドエラストマー等が挙げられる。
トリブロック共重合体M−B−Mの具体例としては、メタクリル酸メチル−ブチルアクリレート−メタクリル酸メチルからなる共重合体が挙げられ、具体的には、Nanostrength M22(アルケマ社製)、極性官能基をもつNanostrength M22N(アルケマ社製)等が挙げられる。
トリブロック共重合体S−B−Mの具体例としては、スチレン−ブタジエン−メタクリル酸メチルからなる共重合体が挙げられ、具体的には、Nanostrength 123、Nanostrength 250、Nanostrength 012,Nanostrength E20,Nanostrength E40(以上、アルケマ社製)等が挙げられる。
ポリアミドエラストマーとしては、ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体、又はポリエステルアミドブロック共重合体が挙げられ、具体的には、例えばTPAEシリーズ(TPAE12、TPAE31、TPAE32、TPAE38、TPAE8、TPAE10、TPAE100、TPAE23、TPAE63、TPAE200、TPAE201、及びTPAE260)(以上、T&K TOKA社製)を挙げることができる。
成分(D1)としては、各種ポリマーを1種類単独で使用してもよく、2種類以上のポリマーを併用してもよい。
成分(D1)の好ましい配合量は、本発明のエポキシ樹脂組成物中に含まれる成分(A1)100質量部に対して、通常1〜50質量部であり、さらに好ましくは5〜25重量部である。成分(D1)が多すぎるとエポキシ樹脂組成物が高粘度となり取り扱いや強化繊維束への含浸が困難になるという問題が生じる場合がある。逆に、成分(D1)が少なすぎると成分(D1)を含有させることによる効果が十分に得られない可能性がある。
【0025】
<添加剤>
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、シリカ粉末、アエロジル、マイクロバルーン、三酸化アンチモン、アルミナ、酸化チタン等の無機粒子;リン化合物等の難燃剤;カーボンブラック、活性炭等の炭素粒子;また、消泡剤;湿潤剤等の添加剤を目的に応じて配合してもよい。これら添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であればよく、本発明の第1の態様におけるエポキシ樹脂組成物100重量部に対して0.1重量部以上、20重量部以下であることが望ましい。
【0026】
<エポキシ樹脂組成物>
本発明の第1の態様におけるエポキシ樹脂組成物は下記の成分(A1)〜(C1)を必須成分とする。
成分(A1):エポキシ樹脂
成分(B1):三ハロゲン化ホウ素アミン錯体
成分(C1):ゴム粒子
また本発明の第1の態様におけるエポキシ樹脂組成物は、前記成分(A1)〜(C1)以外にも、上述の通り成分(D1):前記成分(A1)〜(C1)を含有するエポキシ樹脂組成物と相溶可能であり、かつ成分(D1)を含むエポキシ樹脂組成物が硬化したときに相分離構造を形成する特性を有するポリマーや、各種添加剤等を含有していてもよい。
このようなエポキシ樹脂組成物は、公知の方法に従って調製すればよく、例えば特開2012−25892号公報や、WO2011/037239号公報等に記載の方法に準じて調製すればよい。
【0027】
本発明の第1の態様におけるエポキシ樹脂組成物の、30℃における粘度は300Pa・s以下であることが好ましく、 150 Pa・s以下がより好ましい。粘度が300Pa・sを超えるとエポキシ樹脂組成物が高粘度となるため取り扱いや強化繊維束への含浸が困難になったり、トウプリプレグとした場合にボビンからの解舒、工程通過性、ドレープ性に問題が生じる場合がある。
なお粘度の下限値は、トウプリプレグが工程を通過する際やFW成形の際に、強化繊維束に供給したエポキシ樹脂組成物が脱落するといった問題が生じたり、FW成形でマンドレルやライナーにトウプリプレグや樹脂が供給された強化繊維束を巻きつけてゆく際に、ライナーや複合材料補強圧力容器にエポキシ樹脂組成物が垂れ落ちるといった問題が生じたりする、との理由から、通常0.1Pa・s程度である。
即ち、本発明の第1の態様におけるエポキシ樹脂組成物の30℃における粘度は、0.1Pa・s以上、300Pa・s以下であることが好ましく、0.1Pa・s以上、 150 Pa・s以下がより好ましい。
なお、本発明の第1の態様におけるエポキシ樹脂組成物の30℃における粘度の範囲は、測定対象を30℃にしたときの粘度が上記範囲であればよく、30℃以外の測定条件において上記範囲外の粘度を示すエポキシ樹脂組成物であっても、30℃としたときの粘度が上記範囲にあるエポキシ樹脂であれば本発明の範囲に含まれる。
組成物の粘度を上記範囲内とするために、前記成分(A1)〜(C1)を各々前述した割合で含有させることが好ましい。
【0028】
エポキシ樹脂組成物の粘度は、以下の方法により測定することができる。
<エポキシ樹脂組成物の粘度測定方法>
樹脂組成物の昇温時の粘度を以下の測定条件で測定し、30℃の時の粘度をもとめる。
測定条件
装置:AR−G2(ティー・エー・インスツルメント社製)
使用プレート:35mmΦパラレルプレート
プレートギャップ:0.5mm
測定周波数:10rad/sec
昇温速度:2℃/min
ストレス:3000dynes/cm
2
【0029】
〔第2の態様〕
本発明の第2の態様におけるエポキシ樹脂組成物は、下記の成分(A2)、(B2)及び(D2)含むエポキシ樹脂組成物であって、前記成分(A2)100質量部に対して、成分(B2)を12〜110質量部、及び成分(D2)を1〜50質量部含むエポキシ樹脂組成物である。
成分(A2):エポキシ樹脂
成分(B2):三ハロゲン化ホウ素アミン錯体
成分(D2):前記成分(A2)及び(B2)を含有するエポキシ樹脂組成物と相溶可能であり、かつ硬化後に相分離構造を形成するポリマー
【0030】
以下、各成分につき説明する。
本発明の第2の態様における成分(A2)は、エポキシ樹脂であり、前記第1の態様において挙げた成分(A1)と同じエポキシ樹脂が挙げられる。
成分(A2)としては、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂及びヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルからなる群から選択される少なくとも1つの成分が好ましい。
【0031】
本発明の第2の態様における成分(B2)は、三ハロゲン化ホウ素アミン錯体であり、前記第1の態様において挙げた成分(B1)と同じ三ハロゲン化ホウ素アミン錯体が挙げられる。
成分(B2)としては、三塩化ホウ素アミン錯体や三フッ化ホウ素アミン錯体が挙げられ、三塩化ホウ素アミン錯体が好ましい。
【0032】
本発明の第2の態様における成分(D2)は、前記成分(A2)及び(B2)を含有するエポキシ樹脂組成物と相溶可能であり、かつ成分(D2)を含むエポキシ樹脂が硬化したときに、硬化物中で相分離構造を形成する特性を有するポリマーである。
成分(D2)としては、前記第1の態様において挙げた成分(D1)と同じポリマーが挙げられる。
成分(D2)としては、トリブロック共重合体及びポリアミドエラストマーからなる群から選択される少なくとも1つの成分であることが好ましい。
【0033】
成分(B2)の好ましい配合量は、成分(A2)100質量部に対して、8質量部以上、20質量部以下が好ましく、8質量部以上、18質量部以下がより好ましく、9質量部以上、18質量部以下がよりさらに好ましく、9質量部以上、17質量部以下が特に好ましい。
成分(D2)の好ましい配合量は、成分(A2)100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、5〜25重量部であることがより好ましい。
【0034】
本発明の第2の態様におけるエポキシ樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに添加剤を含有してもよい。添加剤としては、前記第1の態様において挙げた添加剤と同じ添加剤が挙げられる。
添加剤の含有量は本発明の第2の態様におけるエポキシ樹脂組成物100重量部に対して、20重量部以下であることが望ましい。
本発明の第2の態様におけるエポキシ樹脂組成物の30℃における粘度は、0.1Pa・s以上、300Pa・s以下であることが好ましく、0.1Pa・s以上Pa・s以上、 150 Pa・s以下がより好ましい。
【0035】
〔第3の態様〕
本発明の第3の態様におけるエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤及び熱可塑性樹脂を含むエポキシ樹脂組成物であり、前記エポキシ樹脂組成物は、硬化したときに、硬化物中で、前記エポキシ樹脂の硬化物相と、前記熱可塑性樹脂の相が海島相分離構造(すなわち相分離構造1)を形成し、前記相分離構造1における島構造を海構造として、さらに海島相分離構造(相r分離構造2)を形成する特性を有するエポキシ樹脂組成物である。
なお、本願明細書及び請求の範囲における「海島相分離構造」とは相分離構造の1種である。例えば2種類の樹脂を混合し硬化させた際に、混合比率に偏りがあれば、大量成分が連続相、少量成分が孤立相となる構造となる。このとき、連続相を「海構造」、孤立相を「島構造」と称する。
【0036】
本発明の第3の態様に係るエポキシ樹脂組成物においては、硬化したときに、硬化物がこのように特殊な相分離構造を形成することにより、高い靱性及び耐熱性を有することができる。そのため、本発明の第3の態様におけるエポキシ樹脂組成物は、前記第1及び第2の態様に係るエポキシ樹脂組成物と同様に、強化繊維複合材料におけるマトリックス樹脂として好適に用いることができる。
前記相分離構造1においては、海構造がエポキシ樹脂の硬化物相であり、島構造が熱可塑性樹脂の相であることが好ましい。また前記相分離構造2においては、島構造がエポキシ樹脂の硬化物相であることが好ましく、球状であることが特に好ましい。
海構造及び島構造が、各々このような相であることにより、高い靱性及び耐熱性を有することができると考えられる。なお、「エポキシ樹脂の硬化物相」は、その相を破壊しない範囲で、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤由来の成分以外の成分を含有していてもよく、「熱可塑性樹脂の相」も同様に、その相を破壊しない範囲で、熱可塑性樹脂以外の成分を含有していてもよい。
前記相分離構造1における島構造の、長辺の長さは、特に制限は無いが、好ましくは50nm〜300μm、より好ましくは50nm〜200μm、更に好ましくは50nm〜100μmである。
この範囲であることにより、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物における亀裂が島相へ進展しやすくなり、亀裂進展距離が伸び、硬化物の靱性値が向上するという利点がある。 また相分離構造2における島構造の、長辺の長さ(但し、前記島構造が球状の場合はその直径)は、前記相分離構造1の島構造(即ち、相分離構造2の海構造)のサイズを超えない限り特に制限は無いが、好ましくは10nm〜100μm、より好ましくは10nm〜50μmであり、更に好ましくは10nm〜30μmである。
この範囲であることにより、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物における亀裂が島相へ進展しやすくなり、かつ、小さい島相の方が大きい島相よりも亀裂進展距離が伸び、硬化物の靱性値が向上するという利点がある。
【0037】
このような特定の海島構造を形成するための、前記樹脂組成物の硬化条件に特に制限は無いが、例えば昇温速度を1℃/分間以下とし、硬化温度を110〜135℃程度とすると、組成物の硬化速度が適切になり、所望の相分離構造が得やすくなる。
なお、ここでいう「長辺の長さ」とは、島構造の最長部分の長さを意味する。
長辺の長さを測定するには、本願実施例に記載のように、まずエポキシ樹脂組成物を用いて硬化板を作製し、その断面をレーザースキャン顕微鏡で観察し、島構造の各短辺における最短距離を結び、その中心を線で繋いだ長さを長辺とした。島構造の長辺の長さの測定例を
図4に示す。
本発明の第3の態様におけるエポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂100質量部に対し、前記エポキシ樹脂硬化剤を8〜20重量部、前記熱可塑性樹脂を1〜50重量部含有することが好ましい。
特に、組成物に含まれる各成分が、以下に記す種類及び量であることが好ましい。
【0038】
以下、各成分につき順次説明する。
本発明の第3の態様におけるエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂(以下、成分(A3)と称することがある。)としては、前記第1の態様において挙げた成分(A1)と同じエポキシ樹脂が挙げられる。成分(A3)としては、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂及びヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルから選択される少なくとも1つの成分が好ましい。
【0039】
本発明の第3の態様におけるエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂硬化剤(以下、成分(B3)と称することがある。)としては、前記第1の態様において挙げた成分(B1)と同じ三ハロゲン化ホウ素アミン錯体が挙げられる。成分(B3)としては、三塩化ホウ素アミン錯体や三フッ化ホウ素アミン錯体が挙げられ、三塩化ホウ素アミン錯体が好ましい。
成分(B3)の好ましい配合量は、成分(A3)100質量部に対して、8質量部以上、20質量部以下が好ましく、8質量部以上、18質量部以下がより好ましく、9質量部以上、18質量部以下がよりさらに好ましく、9質量部以上、17質量部以下が特に好ましい。
【0040】
本発明の第3の態様におけるエポキシ樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂としては、成分(D3):前記成分(A3)及び(B3)を含有するエポキシ樹脂組成物と相溶可能であり、かつ成分(D3)を含むエポキシ樹脂を硬化したときに、硬化物中で、相分離構造を形成する特性を有するポリマー、が挙げられる。
成分(D3)としては、具体的には、S−B−Mトリブロック共重合体、及びM−B−Mトリブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体が好ましい。
ここで、前記S、B及びMで表される各ブロックは、共有結合によって連結されている。
ブロックMは、ポリメタクリル酸メチルのホモポリマー、又は、前記ブロックMの仕込み量である全モノマーの総質量に対して、モノマー換算でメタクリル酸メチルを少なくとも50質量%含有するコポリマーである。
ブロックBは、ブロックMに非相溶で、そのガラス転移温度が20℃以下であるブロックであり、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン及び(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1つのモノマーを重合してなるポリマーである。
ブロックSは、ブロックB及びMに非相溶で、かつ、そのガラス転移温度が、ブロックBのガラス転移温度よりも高いブロックであり、スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエンから選ばれる少なくとも1つのモノマーを重合してなるポリマーである。
トリブロック共重合体M−B−Mの具体例としては、メタクリル酸メチル−ブチルアクリレート−メタクリル酸メチルからなる共重合体が挙げられ、具体的には、Nanostrength M22(アルケマ社製)、極性官能基をもつNanostrength M22N(アルケマ社製)等が挙げられる。
トリブロック共重合体S−B−Mの具体例としては、スチレン−ブタジエン−メタクリル酸メチルからなる共重合体が挙げられ、具体的には、Nanostrength 123、Nanostrength 250、Nanostrength 012,Nanostrength E20,Nanostrength E40(以上、アルケマ社製)等が挙げられる。
成分(D3)としては、各種ポリマーを1種類単独で使用してもよく、2種類以上のポリマーを併用してもよい。
成分(D3)の好ましい配合量は、本発明の第3のエポキシ樹脂組成物中に含まれる成分(A3)100質量部に対して、通常1〜50質量部であり、さらに好ましくは5〜25重量部である。
【0041】
本発明の第3の態様におけるエポキシ樹脂組成物は、さらに成分(C3):ゴム粒子を含有してもよい。
成分(C3)としては、前記第1の態様において挙げた(C1)成分と同じコム粒子が挙げられる。
成分(C3)の好ましい配合量は、成分(A3)100質量部に対して、12質量部以上、110質量部以下が好ましく、16質量部以上、100質量部以下がより好ましく、20質量部以上、80質量部以下が特に好ましい。
本発明の第3の態様におけるエポキシ樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに添加剤を含有してもよい。添加剤としては、前記第1の態様において挙げた添加剤と同じ添加剤が挙げられる。
添加剤の含有量は本発明の第3の態様におけるエポキシ樹脂組成物100重量部に対して、20重量部以下であることが望ましい。
【0042】
<トウプリプレグ>
トウプリプレグとは、数千〜数万本のフィラメントが一方向に配列した強化繊維束に樹脂組成物を含浸させて得られる細幅の中間基材である。本発明のトウプリプレグは、上述した本発明のエポキシ樹脂組成物を強化繊維束に含浸させることにより得られる。この強化繊維束を構成するフィラメントの繊維径及び本数に特に制限は無いが、繊維径は3〜100μmであることが好ましく、本数は1,000〜70,000本であることが好ましい。
なお本発明における「繊維径」とは、それぞれの繊維の断面の等面積円相当直径のことである。
繊維径が3μm未満では、例えばフィラメントが、各種加工プロセスにおいて、ロールやボビン等の表面で横移動を起こす際に、切断したり毛羽だまりが生じたりする場合があり、100μmを越えるとフィラメントが硬くなり、屈曲性が低下する傾向がある。
【0043】
本発明における強化繊維束としてはガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、黒鉛繊維、ボロン繊維等、通常の繊維強化複合材料に使用される強用繊維を使用することができる。なかでも好ましくはJIS R 7601に準拠したストランド強度が3500MPa以上の炭素繊維、黒鉛繊維;より好ましくはストランド強度4500MPa以上の炭素繊維、黒鉛繊維;より一層好ましくはストランド強度が5000MPa以上の炭素繊維である。ストランド強度は、強いほど好ましい。
なお、強化繊維束が炭素繊維束である場合、フィラメントの繊維径は3〜12μm、本数は1,000〜70,000であることが好ましい。
繊維径が3μm未満では、例えばフィラメントが、各種加工プロセスにおいて、ロールやボビン等の表面で横移動を起こす際に、切断したり毛羽だまりが生じたりする場合がある。上限については、炭素繊維の製造上の困難性から、通常12μm程度である。
【0044】
<エポキシ樹脂組成物の含有量>
トウプリプレグに含まれるエポキシ樹脂組成物の含有量は、20重量%以上、40重量%以下が好ましい。20重量%以上であると、強化繊維束中に十分エポキシ樹脂組成物を容易に行き渡らせることが出来、40重量%以下であると、強化繊維複合材料の繊維含有体積率が高いため、機械特性を効果的に発現できる。。機械特性の性能をより効果的に発現させるには、20重量%以上、30重量%以下がより好ましい。
【0045】
<エポキシ樹脂組成物の硬化方法>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、公知の手段で硬化させることができる。中でも熱風炉等の、エポキシ樹脂組成物の周囲を均一に加熱できる加熱手段を使用することが好ましい。好ましい硬化温度及び硬化時間は、成分(A)及び成分(B)の種類により異なるが、通常110℃〜135℃程度で2時間くらい加熱することにより硬化させることができる。
【0046】
本発明のトウプリプレグはいずれの公知の製造方法でも作製することができる。なかでも以下の手順で作製することが好ましい。
<好ましいトウプリプレグ製造方法>
(1)強化繊維束の少なくとも片面にエポキシ樹脂組成物を供給する前に、予めトウを加熱、拡幅する。
(2)強化繊維束の少なくとも片面にエポキシ樹脂組成物を供給する。
(3)供給したエポキシ樹脂組成物を強化繊維束へ均一に含浸させる。
(4)トウプリプレグの温度を室温程度まで冷却する。
(5)トウプリプレグを紙管等に巻取る。
【0047】
強化繊維束は拡幅され扁平形状であることがエポキシ樹脂組成物との接触面積が広くなるため望ましい。拡幅させる方法としては、円筒バーで擦過させる方法、振動を加える方法、及び押しつぶす方法等が挙げられる。さらに強化繊維束を拡幅する際は、強化繊維束に塗布されたサイズ剤を軟化させ拡幅しやすくするため加熱しておく。塗布されたサイズ剤の軟化点程度まで強化繊維束を加熱することが好ましい。さらにトウの予備加熱は、樹脂との接触後、強化繊維束内への樹脂の浸透時に樹脂温度が低下しないように、予め強化繊維束の温度を上昇させておく意味もある。加熱により強化繊維束の温度を接触前の樹脂温度以上にしておけば、強化繊維束と樹脂の接触後の強化繊維束の温度は接触前の樹脂温度より低くなることはない。加熱方法としては加熱体との接触加熱、及び通電加熱、誘電加熱、赤外線加熱、雰囲気加熱等の非接触加熱法がいずれも使用可能である。
【0048】
本発明において、強化繊維束の拡幅はインラインで実施してもオフラインで実施してもよい。例えば市販の拡幅されたテープ状強化繊維束はオフラインで拡幅された強化繊維束とみなされる。
【0049】
エポキシ樹脂組成物の供給方法としては、レジンバス法;回転ロール法;紙上転写法;特開平09−176346号公報、特開2005−335296号公報及び特開2006−063173号公報に記載されたノズル滴下法;特開平08−073630号公報、特開平09−031219号公報、及び特開平8−73630号公報に記載された樹脂接触並びにトウ移動法が挙げられる。
【0050】
なかでもエポキシ樹脂組成物の供給量の制御や実施の容易さのため、回転ロール法や、樹脂接触並びにトウ移動法が、エポキシ樹脂組成物の供給方法として好ましい。また強化繊維束の幅は通常安定化しておらず、その広がり方にはばらつきがある。従って特開平8−73630号公報に記載の通り、強化繊維束を拡幅した後、樹脂接触直前あるいは樹脂接触時にトウ幅を狭めて安定化させることが効果的である。具体例としては、樹脂吐出口部又はその直前の位置に所定幅の溝を設けて、前記溝内に強化繊維束を走行させて強化繊維束の幅を狭める方法がある。
【0051】
エポキシ樹脂組成物の強化繊維束への含浸方法は公知の含浸方法を使用することができる。なかでも加熱ロールや熱板等の加熱体に擦過させる方法;エポキシ樹脂組成物が供給された強化繊維束が空走する際に加熱炉を通過させる方法;空気電熱加熱、通電加熱、誘電加熱、赤外線加熱等の非接触加熱手段で加熱する方法が好ましい。強化繊維束へエポキシ樹脂組成物が供給されてから加熱体により加熱されるまでの間、及び加熱体と加熱体との間で強化繊維束やエポキシ樹脂組成物の温度が下がらないよう非接触加熱手段で加熱しておくことがより一層好ましい。
【0052】
またさらに樹脂含浸工程において、強化繊維束へ外力を加えて強化繊維束を構成するフィラメントを横方向(長手方向と直交する方向)に動かし、フィラメント間の相対位置を変化させて樹脂とフィラメントの接触機会を増やす工程を加えることが好ましい。単なる加圧や毛細管現象による含浸効果以上の均一な含浸効果を上げることが出来る。
【0053】
具体的には、強化繊維束を折り畳む、強化繊維束を拡幅する、強化繊維束を縮幅する、又は強化繊維束を加撚する等の少なくとも一つの手段で行う。これらの手段において、折り畳み手段と加撚手段は、幅縮小手段と同様に強化繊維束の幅を狭める傾向にある。そして強化繊維束の幅を狭める作用を有する手段と強化繊維束の幅を拡大する手段とを併用すると均一含浸の効果が高くなる。なお、加撚は樹脂含浸時におこなえばよく、含浸後に撚りのない状態が必要ならば含浸後に撚り戻しをすればよい。また仮撚りであれば撚り戻しをする必要はなく、撚りのない強化繊維束が必要な場合には望ましい。また加撚と同時にあるいは直後に擦過を加えれば強化繊維束の幅の広がる傾向となり、更に樹脂の厚さ方向の移動のため、含浸の均一性は高くなる。
【0054】
フィラメントの横方向移動の均一含浸において、強化繊維束の走行速度未満の周速で回転する回転体に強化繊維束を接触させて擦過させることは、毛羽の堆積やロールのクリーニング等にとって有用である。擦過されていれば強化繊維束は回転体表面で絡まりつくこともなく、また回転体は強化繊維束でこすられ且つ回転しているので強化繊維束と接触する面は常にクリーニングされている状態となり、製造環境の向上にも有用である。ただし回転体の周速は強化繊維束の走行速度の50%以上、99%以下とすることが好ましい。回転体の周速が強化繊維束の走行速度に対し1/2以上であると、強く擦過されることで強化繊維束が毛羽立ちにくく、後の工程での巻きつきや紙管に巻き取られたトウプリプレグを解舒する際に問題が生じにくい。
【0055】
エポキシ樹脂組成物が強化繊維束に均一に含浸されると、作製した強化繊維複合材料の機械的特性が向上し、本発明の効果が十分に得られる。
【0056】
エポキシ樹脂組成物を均一に含浸させた強化繊維束は、紙管への巻取り工程までに冷却体への擦過や非接触冷却手段等の公知の冷却手段を使用して室温程度まで冷却しておくことが好ましい。十分に冷却しない状態で巻き取ってしまうと、エポキシ樹脂組成物が低粘度であるため、巻き取る際に滑りが生じ巻き形態が乱れたり、一度巻き取ってしまうと中心部からは熱が逃げにくく温度が高い状態が比較的長時間続くため、エポキシ樹脂組成物のポットライフが短くなる可能性がある。
このようにして得られた本発明のトウプリプレグはボビンからの解舒、工程通過性、ドレープ性に優れるという長所(特色)があるため、フィラメントワインディング成形や引抜き成形等に適する。
【0057】
<複合材料補強圧力容器>
「複合材料補強圧力容器」とは、複合材料で補強した圧力容器を意味する。
「複合材料」とは、繊維強化複合材料を意味し、本発明においては、本発明のトウプリプレグを加熱(及び必要に応じて加圧)し硬化させた後、冷却して得られる硬化物か、或いは強化繊維束を本発明のエポキシ樹脂組成物に含浸させた後、プリプレグを経ずに加熱(及び必要に応じて加圧)し硬化させた後、冷却して得られる硬化物を意味する。
本発明の複合材料は、スポーツ用品、自動車、圧力容器、航空機、緊張材等の一般産業用途に用いることが出来るが、特に圧力容器や緊張材に用いた場合、高い性能を示すことを特徴とする。特に、水素貯蔵用の圧力容器や自動車等の移動体に搭載する圧力容器として使用した場合に、少量の複合材料による補強で圧力容器として十分な性能を得られるため、より軽量な圧力容器を得ることができ、その長所が最も生かされる。
本発明の複合材料補強圧力容器(以下、単に「本発明の圧力容器」と称することがある)は、通常、その内層に樹脂製や金属製のライナーを用い、このライナーの外面を複合材料層が覆うことにより形成されている。
【0058】
<ライナー>
本発明の複合材料補強圧力容器の製造方法に用いるライナーは、用途によって樹脂製、又は金属製を選んで用いることができる
なお、本願明細書及び請求の範囲における「ライナー」とは、筒状の胴と胴の両端開口部を閉鎖する鏡板からなり、通常両端の鏡板の1つは口金取り付け部を有し、他方は口金取り付け部を有さない。
水素貯蔵用の圧力容器や自動車等の移動体に搭載する圧力容器では、より軽量化できるため樹脂製ライナーを使用することが好ましい。樹脂製ライナーとしては、高密度ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を回転成形やブロー成形にて容器形状に賦形し、金属製の口金をつけたライナーが使用できる。樹脂製ライナーは耐熱性が比較的低いためエポキシ樹脂組成物を硬化する際の反応発熱を低く抑える必要がある。本発明はゴム粒子等のエポキシ樹脂や硬化剤以外の発熱反応を起こさない成分を比較的多く含むため、硬化時の発熱が小さく、ライナーが樹脂製であっても好適に使用することが出来る。又、金属製のライナーは、パイプ形状や板形状のアルミニウム合金や鋼鉄等をスピニング加工等により容器形状に賦形したあとで、口金形状を付与して得られる。
【0059】
<フィラメントワインディング(FW)成形>
本発明の圧力容器における複合材料層の形成工程において、前述したトウプリプレグや、エポキシ樹脂組成物を含浸させた強化繊維束をライナーに巻き付けるための代表的な方法として、フィラメントワインディング(FW)法がある。
フィラメントワインディング(FW)法は、強化繊維束を1本、又は複数本引き揃え、マトリックス樹脂を供給、含浸させながら、回転するタンクライナーへ所望の張力、角度で強化繊維束を巻きつけて行くこと、又はトウプリプレグを使用する場合は、強化繊維束を1本、又は複数本引き揃え、マトリックス樹脂の供給、含浸は行わず、回転するタンクライナーへ所望の張力、角度で巻きつけて行くこと、を含む成形法である。
本発明で用いるフィラメントワインディング装置(FW機)は従来公知のFW機でよく、ただ1本の強化繊維束、又はトウプリプレグを芯金又は芯金に固定したライナーに巻き付けることができるFW機であっても、複数本の強化繊維束、又はトウプリプレグを同時に巻き付けられるFW機であってもかまわない。
【0060】
FW成形中に強化繊維束へエポキシ樹脂組成物を供給、含浸させる場合、ドクターブレード等を使用して円柱状のドラムに一定厚みのエポキシ樹脂組成物を塗布して、その上に繊維を接触させてエポキシ樹脂組成物を供給し、ローラー等によりエポキシ樹脂組成物を内部に含浸させる方法;エポキシ樹脂組成物の浴に繊維を漬けた後、バーやガイド等により不要なエポキシ樹脂組成物を殺ぎ落とす方法;ディスペンサーのようなもので定量的にエポキシ樹脂組成物を送液して塗布する方法等が挙げられるが、特に限定しない。強化繊維束に余分な樹脂を与えず、目標量に正確に管理して塗布する方法としては、ドラムやディスペンサーを使用する方法が好ましい。
【0061】
本発明の複合材料補強圧力容器は、強化繊維束を1本、又は複数本引き揃え、マトリックス樹脂を供給、含浸させながら、回転するタンクライナーへ所望の張力、角度で強化繊維束を巻きつけて行く工程、又はトウプリプレグを使用する場合は、強化繊維束を1本、又は複数本引き揃え、マトリックス樹脂の供給、含浸は行わず、回転するタンクライナーへ所望の張力、角度で巻きつけて行く工程と、前記タンクライナーへ巻きつけた強化繊維束又はトウプリプレグを加熱(及び必要に応じて加圧)し硬化させる工程と、
を含む製造方法により製造される複合材料補強圧力容器である。
【0062】
本発明の複合材料補強圧力容器の製造において、ライナー外周に形成される複合材料中間体は、その異方性材料としての特質を生かすため層構造を形成する。
本発明においては、その層構造の構成、各層の厚み、強化繊維束、又はトウプリプレグをライナーへ巻きつける角度、及び張力は、容器の用途や形状、内容物の種類等によって自由に選択することができる。
本発明の複合材料補強圧力容器は、少量の複合材料による補強で圧力容器として十分な性能が得られるため、軽量であり、特に水素貯蔵用の圧力容器や自動車等の移動体に搭載する圧力容器として好適に使用される。
【0063】
<その他の用途>
本発明のエポキシ樹脂組成物やこれを使用したトウプリプレグから作製される複合材料は、引張強度発現に優れることから、上述した圧力容器用途の他に緊張材用途にも適している。
本発明の一態様としては、
エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、下記成分(A1)〜(C1)含み、
前記成分(B1)の含有量は、前記成分(A1)100質量部に対して、8〜20質量部であり、
前記成分(C1)の含有量は、前記成分(A1)100質量部に対して、12〜110質量部であるエポキシ樹脂組成物。
成分(A1):分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂、及び分子内に脂肪族環を有するエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つのエポキシ樹脂
成分(B1):三フッ化ホウ素アミン錯体及び三塩化ホウ素アミン錯体からなる群から選択される少なくとも1つ
成分(C1):架橋ゴム粒子、及び架橋ゴム粒子の表面に架橋ゴム粒子を構成するポリマーとは異なるポリマーをグラフト重合したコアシェル型ゴム粒子からなる群から選択される少なくとも1つのゴム粒子
【0064】
本発明のその他の態様としては、
エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、下記成分(A1)〜(C1)含み、
前記成分(B1)の含有量は、前記成分(A1)100質量部に対して、8〜20質量部であり、
前記成分(C1)の含有量は、前記成分(A1)100質量部に対して、12〜110質量部であるエポキシ樹脂組成物。
成分(A1):分子内に2官能の芳香族環を有するエポキシ樹脂、分子内に3官能の芳香族環を有するエポキシ樹脂、分子内に4官能の芳香族環を有するエポキシ樹脂、脂肪族環にエポキシ環が縮合した化合物、及び脂肪族環にグリシジル基等のエポキシ基を含む置換基が結合した化合物からなる群から選択される少なくとも1つの成分
成分(B1):三フッ化ホウ素アニリン錯体、三フッ化ホウ素p−クロロアニリン錯体、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体、三フッ化ホウ素イソプロピルアミン錯体、三フッ化ホウ素ベンジルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジメチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジブチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素ジベンジルアミン錯体、前記アミン錯体におけるフッ素原子が塩素原子に置き換わった化合物、及び三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体成分からなる群から選択される少なくとも1つの成分
成分(C1):ブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコ−ンゴム、ブチルゴム、NBR,SBR,IR,EPR、及びコアシェル型ゴム粒子からなる群から選択される少なくとも1つの成分であり、
前記コアシェル型ゴム粒子は、コア成分がビニルモノマー、共役ジエン系モノマー、アクリル酸エステル系モノマー、及びメタクリル酸エステル系モノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーが重合したポリマー、又はシリコーン樹脂であり;シェル成分が、アクリル酸エステル系モノマー、メタクリル酸エステル系モノマー、及び芳香族系ビニルモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーが重合した重合体である。
【0065】
本発明のその他の態様としては、
エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、下記成分(A1)〜(C1)含み、
前記成分(B1)の含有量は、前記成分(A1)100質量部に対して、8〜20質量部であり、
前記成分(C1)の含有量は、前記成分(A1)100質量部に対して、12〜110質量部であるエポキシ樹脂組成物。
成分(A1):ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ヒドロキノンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テレフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、N,N ,O−トリグリシジル−P−又は−m−アミノフェノール型エポキシ樹脂、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−m−又は−5−アミノ−o−クレゾール型エポキシ樹脂、1,1,1−(トリグリシジルオキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂、及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、及びメチルテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステルからなる群から選択される少なくとも1つの成分
成分(B1):三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、及び三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体からなる群から選択される少なくとも1つの成分
成分(C1):ブタジエンゴム;並びに、コア成分がスチレン及びブタジエンから構成される架橋ゴム状ポリマーであり、シェル成分がメタクリル酸メチルとスチレンの共重合体であるコアシェル型ゴム粒子からなる群から選択される少なくとも1つの成分
【0066】
本発明のその他の態様としては、
エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、下記成分(A1)〜(C1)含み、
前記成分(B1)の含有量は、前記成分(A1)100質量部に対して、8〜20質量部であり、
前記成分(C1)の含有量は、前記成分(A1)100質量部に対して、12〜110質量部であるエポキシ樹脂組成物。
成分(A1):ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、及びヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルからなる群から選択される少なくとも1つの成分
成分(B1):三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、及び三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体からなる群から選択される少なくとも1つの成分
成分(C1):ブタジエンゴム;並びに、コア成分がスチレン及びブタジエンから構成される架橋ゴム状ポリマーであり、シェル成分がメタクリル酸メチルとスチレンの共重合体であるコアシェル型ゴム粒子からなる群から選択される少なくとも1つの成分
【0067】
本発明のその他の態様としては、
エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、下記成分(A1)〜(C1)含み、
前記成分(B1)の含有量は、前記成分(A1)100質量部に対して、8〜20質量部であり、
前記成分(C1)の含有量は、前記成分(A1)100質量部に対して、12〜110質量部であるエポキシ樹脂組成物。
成分(A1):分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂及び脂肪族環にエポキシ基を含む置換基が結合した化合物からなる群から選択される少なくとも1つの成分
成分(B1):三塩化ホウ素アミン錯体
成分(C1):架橋ゴム粒子、及び架橋ゴム粒子の表面に架橋ゴム粒子を構成するポリマーとは異なるポリマーをグラフト重合したコアシェル型ゴム粒子からなる群から選択される少なくとも1つのゴム粒子
【0068】
本発明のその他の態様としては、
エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、下記成分(A1)〜(C1)含み、
前記成分(B1)の含有量は、前記成分(A1)100質量部に対して、8〜20質量部であり、
前記成分(C1)の含有量は、前記成分(A1)100質量部に対して、12〜110質量部であり、
前記成分(D1)の含有量は、成分(A1)100質量部に対して、1〜50質量部であるエポキシ樹脂組成物。
成分(A1):分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂、及び分子内に脂肪族環を有するエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つのエポキシ樹脂
成分(B1):三塩化ホウ素アミン錯体及び三塩化ホウ素アミン錯体からなる群から選択される少なくとも1つ
成分(C1):架橋ゴム粒子、及び架橋ゴム粒子の表面に架橋ゴム粒子を構成するポリマーとは異なるポリマーをグラフト重合したコアシェル型ゴム粒子からなる群から選択される少なくとも1つのゴム粒子
成分(D1):前記成分(A1)〜(C1)を含有するエポキシ樹脂組成物と相溶可能であり、かつ成分(D1)を含むエポキシ樹脂組成物が硬化したときに相分離構造を形成する特性を有するポリマー
【0069】
本発明のその他の態様としては、
エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、下記成分(A1)〜(C1)含み、
前記成分(B1)の含有量は、前記成分(A1)100質量部に対して、8〜20質量部であり、
前記成分(C1)の含有量は、前記成分(A1)100質量部に対して、12〜110質量部であり、
前記成分(D1)の含有量は、成分(A1)100質量部に対して、1〜50質量部であるエポキシ樹脂組成物。
成分(A1):ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、及びヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルからなる群から選択される少なくとも1つの成分
成分(B1):三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、及び三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体からなる群から選択される少なくとも1つの成分
成分(C1):ブタジエンゴム;並びに、コア成分がスチレン及びブタジエンから構成される架橋ゴム状ポリマーであり、シェル成分がメタクリル酸メチルとスチレンの共重合体であるコアシェル型ゴム粒子からなる群から選択される少なくとも1つの成分
成分(D1):トリブロック共重合体及びポリアミドエラストマーからなる群から選択される少なくとも1つの成分である。
【0070】
本発明のその他の態様としては
エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、下記成分(A2)、(B2)及び(D2)含み、
前記成分(B2)の含有量は、前記成分(A2)100質量部に対して、8〜20質量部であり、
前記成分(D2)の含有量は、前記成分(A2)100質量部に対して、1〜50質量部であるエポキシ樹脂組成物。
成分(A2):分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂、及び分子内に脂肪族環を有するエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つのエポキシ樹脂
成分(B1):三塩化ホウ素アミン錯体及び三塩化ホウ素アミン錯体からなる群から選択される少なくとも1つ
成分(D2):前記成分(A2)及び(B2)を含有するエポキシ樹脂組成物と相溶可能であり、かつ成分(D2)を含むエポキシ樹脂が硬化したとき、硬化物中で相分離構造を形成する特性を有するポリマー
【0071】
本発明のその他の態様としては
エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、下記成分(A2)、(B2)及び(D2)含み、
前記成分(B2)の含有量は、前記成分(A2)100質量部に対して、8〜20質量部であり、
前記成分(D2)の含有量は、前記成分(A2)100質量部に対して、1〜50質量部であるエポキシ樹脂組成物。
成分(A2):分子内に2官能の芳香族環を有するエポキシ樹脂、分子内に3官能の芳香族環を有するエポキシ樹脂、分子内に4官能の芳香族環を有するエポキシ樹脂、脂肪族環にエポキシ環が縮合した化合物、及び脂肪族環にグリシジル基等のエポキシ基を含む置換基が結合した化合物からなる群から選択される少なくとも1つの成分
成分(B2):三フッ化ホウ素アニリン錯体、三フッ化ホウ素p−クロロアニリン錯体、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体、三フッ化ホウ素イソプロピルアミン錯体、三フッ化ホウ素ベンジルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジメチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジブチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素ジベンジルアミン錯体、前記アミン錯体におけるフッ素原子が塩素原子に置き換わった化合物、及び三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体成分からなる群から選択される少なくとも1つの成分
成分(D2):トリブロック共重合体及びポリアミドエラストマーからなる群から選択される少なくとも1つの成分である。
【0072】
本発明のその他の態様としては
エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、下記成分(A2)、(B2)及び(D2)含み、
前記成分(B2)の含有量は、前記成分(A2)100質量部に対して、8〜20質量部であり、
前記成分(D2)の含有量は、前記成分(A2)100質量部に対して、1〜50質量部であるエポキシ樹脂組成物。
成分(A2):ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ヒドロキノンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テレフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、N,N ,O−トリグリシジル−P−又は−m−アミノフェノール型エポキシ樹脂、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−m−又は−5−アミノ−o−クレゾール型エポキシ樹脂、1,1,1−(トリグリシジルオキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂、及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、及びメチルテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステルからなる群から選択される少なくとも1つの成分
成分(B2):三フッ化ホウ素アニリン錯体、三フッ化ホウ素p−クロロアニリン錯体、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体、三フッ化ホウ素イソプロピルアミン錯体、三フッ化ホウ素ベンジルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジメチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジブチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素ジベンジルアミン錯体、前記アミン錯体におけるフッ素原子が塩素原子に置き換わった化合物、及び三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体成分からなる群から選択される少なくとも1つの成分
成分(D2):M−B−Mトリブロック共重合体、S−B−Mトリブロック共重合体、及びポリアミドエラストマーからなる群から選択される少なくとも1つの成分であり、
前記ブロックMはポリメタクリル酸メチルのホモポリマー又は、前記ブロックMの仕込み量である全モノマーの総質量に対して、モノマー換算でメタクリル酸メチルを少なくとも50質量%含有するコポリマーであり;
前記ブロックBはモノマーとしてブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン及び(メタ)アクリル酸エステルから選ばれた1以上のモノマーを重合してなるポリマーであり;
前記ブロックSはモノマーとしてスチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエンから選ばれた1以上のモノマーを重合してなるポリマーである。
【0073】
本発明のその他の態様としては
エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、三ハロゲン化ホウ素アミン錯体であるエポキシ樹脂硬化剤、及び熱可塑性樹脂を含み、
前記エポキシ樹脂は、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂、及び分子内に脂肪族環を有するエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つのエポキシ樹脂であり、
前記三ハロゲン化ホウ素アミン錯体であるエポキシ樹脂硬化剤は、三塩化ホウ素アミン錯体及び三塩化ホウ素アミン錯体からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記熱可塑性樹脂は、S−B−Mトリブロック共重合体及びM−B−Mトリブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体であり、
前記S、B及びMで表される各ブロックは共有結合によって連結されており、
前記ブロックMは、ポリメタクリル酸メチルのホモポリマー、又は、前記ブロックMの仕込み量である全モノマーの総質量に対して、モノマー換算でメタクリル酸メチルを少なくとも50質量%含有するコポリマーであり、
前記ブロックBは、ブロックMに非相溶で、そのガラス転移温度が20℃以下であるブロックであり、
前記ブロックSは、ブロックB及びMに非相溶で、かつ、そのガラス転移温度が、ブロックBのガラス転移温度よりも高いブロックであり;
前記エポキシ樹脂組成物は、硬化したときに、硬化物中で、前記エポキシ樹脂の硬化物相と、前記熱可塑性樹脂を含む相とが海島相分離構造である相分離構造1を形成し、
前記相分離構造1における島構造を海構造として、さらに海島相分離構造である相分離構造2を形成する特性を有するエポキシ樹脂組成物。
【0074】
本発明のその他の態様としては
エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、三ハロゲン化ホウ素アミン錯体であるエポキシ樹脂硬化剤、及び熱可塑性樹脂を含み、
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ヒドロキノンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テレフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、N,N ,O−トリグリシジル−P−又は−m−アミノフェノール型エポキシ樹脂、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−m−又は−5−アミノ−o−クレゾール型エポキシ樹脂、1,1,1−(トリグリシジルオキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂、及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、及びメチルテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステルからなる群から選択される少なくとも1つの成分であり、
前記三ハロゲン化ホウ素アミン錯体であるエポキシ樹脂硬化剤は、三フッ化ホウ素アニリン錯体、三フッ化ホウ素p−クロロアニリン錯体、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体、三フッ化ホウ素イソプロピルアミン錯体、三フッ化ホウ素ベンジルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジメチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジブチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素ジベンジルアミン錯体、前記アミン錯体におけるフッ素原子が塩素原子に置き換わった化合物、及び三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体成分からなる群から選択される少なくとも1つの成分であり、
前記熱可塑性樹脂は、S−B−Mトリブロック共重合体及びM−B−Mトリブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体であり、
前記S、B及びMで表される各ブロックは共有結合によって連結されており、
前記ブロックMは、ポリメタクリル酸メチルのホモポリマー、又は、前記ブロックMの仕込み量である全モノマーの総質量に対して、モノマー換算でメタクリル酸メチルを少なくとも50質量%含有するコポリマーであり、
前記ブロックBは、ブロックMに非相溶で、そのガラス転移温度が20℃以下であるブロックであり、
前記ブロックSは、ブロックB及びMに非相溶で、かつ、そのガラス転移温度が、ブロックBのガラス転移温度よりも高いブロックであり;
前記エポキシ樹脂組成物は、硬化したときに、硬化物中で、前記エポキシ樹脂の硬化物相と、前記熱可塑性樹脂を含む相とが海島相分離構造である相分離構造1を形成し、
前記相分離構造1における島構造を海構造として、さらに海島相分離構造である相分離構造2を形成する特性を有するエポキシ樹脂組成物。
【0075】
本発明のその他の態様としては
エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、三ハロゲン化ホウ素アミン錯体であるエポキシ樹脂硬化剤、熱可塑性樹脂、及びゴム粒子を含み、
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ヒドロキノンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テレフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、N,N ,O−トリグリシジル−P−又は−m−アミノフェノール型エポキシ樹脂、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−m−又は−5−アミノ−o−クレゾール型エポキシ樹脂、1,1,1−(トリグリシジルオキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂、及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、及びメチルテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステルからなる群から選択される少なくとも1つの成分であり、
前記三ハロゲン化ホウ素アミン錯体であるエポキシ樹脂硬化剤は、三フッ化ホウ素アニリン錯体、三フッ化ホウ素p−クロロアニリン錯体、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体、三フッ化ホウ素イソプロピルアミン錯体、三フッ化ホウ素ベンジルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジメチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジブチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素ジベンジルアミン錯体、前記アミン錯体におけるフッ素原子が塩素原子に置き換わった化合物、及び三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体成分からなる群から選択される少なくとも1つの成分であり、
前記熱可塑性樹脂は、S−B−Mトリブロック共重合体及びM−B−Mトリブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体であり、
前記S、B及びMで表される各ブロックは共有結合によって連結されており、
前記ブロックMは、ポリメタクリル酸メチルのホモポリマー、又は、前記ブロックMの仕込み量である全モノマーの総質量に対して、モノマー換算でメタクリル酸メチルを少なくとも50質量%含有するコポリマーであり、
前記ブロックBは、ブロックMに非相溶で、そのガラス転移温度が20℃以下であるブロックであり、
前記ブロックSは、ブロックB及びMに非相溶で、かつ、そのガラス転移温度が、ブロックBのガラス転移温度よりも高いブロックであり
前記ゴム粒子は、ブタジエンゴム;並びに、コア成分がスチレン及びブタジエンから構成される架橋ゴム状ポリマーであり、シェル成分がメタクリル酸メチルとスチレンの共重合体であるコアシェル型ゴム粒子からなる群から選択される少なくとも1つの成分であり;
前記エポキシ樹脂組成物は、硬化したときに、硬化物中で、前記エポキシ樹脂の硬化物相と、前記熱可塑性樹脂を含む相とが海島相分離構造である相分離構造1を形成し、
前記相分離構造1における島構造を海構造として、さらに海島相分離構造である相分離構造2を形成する特性を有するエポキシ樹脂組成物。
【実施例】
【0076】
以下、実施例、比較例によって本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例 及び、比較例>
各例で用いた樹脂組成物の原料、調製方法、及び各物性の測定方法を以下に示す。各エポキシ樹脂組成物の組成、及び物性の測定結果を実施例は表1、比較例は表2にまとめて示す。なお、表1及び表2の中の各成分の数値は、エポキシ樹脂組成物に配合する各成分の質量部数を表す。
【0077】
<原料>
実施例、比較例においては以下の原料を使用した。
【0078】
<成分(A)>
jER828
「製品名」jER828
「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂)(エポキシ当量:189g/eq、120ポイズ/25℃)
「メーカー」三菱化学株式会社
jER807
「製品名」jER807
「成分」ビスフェノールF型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂)(エポキシ当量:175g/eq、 45ポイズ/25℃)
「メーカー」三菱化学株式会社
jER1002
「製品名」jER1002
「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂)(エポキシ当量:700g/eq、 軟化点:78℃)
「メーカー」三菱化学株式会社
jER604
「製品名」jER604
「成分」テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)型エポキシ樹脂(4官能エポキシ樹脂)(エポキシ当量:130g/eq、 100ポイズ/50℃)
「メーカー」三菱化学株式会社
YDF−2001
「製品名」YDF−2001
「成分」ビスフェノールF型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂。エポキシ当量:475g/eq)
「メーカー」新日鉄住金化学株式会社
2021P
「製品名」セロキサイド2021P
「成分」3,4-エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート(2官能エポキシ樹脂。エポキシ当量:137g/eq)
「メーカー」株式会社ダイセル
CY−184
「製品名」ARALDITE CY−184
「成分」ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂(エポキシ当量:151g/eq)
「メーカー」ハンツマン・ジャパン株式会社
【0079】
<成分(C)を成分(A)であるエポキシ樹脂に分散したマスターバッチ型のゴム粒子分散エポキシ樹脂>
MX−125
「製品名」カネエースMX−125
「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂。エポキシ当量:189g/eq):75質量%ブタジエン系コアシェル型ゴム粒子(体積平均粒径:100nm):25質量%
「メーカー」株式会社カネカ
MX−113
「製品名」カネエースMX−113
「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂。エポキシ当量:189g/eq):66質量%ブタジエン系コアシェル型ゴム粒子(体積平均粒径:100nm):33質量%
「メーカー」株式会社カネカ
MX−154
「製品名」カネエースMX−154
「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂。エポキシ当量:189g/eq):60質量%ブタジエン系コアシェル型ゴム粒子(体積平均粒径:100nm):40質量%
「メーカー」株式会社カネカ
MX−416
「製品名」カネエースMX−416
「成分」TGDDM型エポキシ樹脂(4官能エポキシ樹脂。エポキシ当量:112g/eq):75質量%ブタジエン系コアシェル型ゴム粒子(体積平均粒径:100nm):25質量%
MX−960
「製品名」カネエースMX−960
「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂。エポキシ当量:189g/eq):75質量%シリコン系コアシェル型ゴム粒子(体積平均粒径:300nm):25質量%
「メーカー」株式会社カネカ
BPA328
「製品名」アクリセットBPA328
「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂。エポキシ当量:189g/eq):83.3質量%アクリルゴム粒子(体積平均粒径:300nm):16.7質量%
「メーカー」株式会社日本触媒
BPF307
「製品名」アクリセットBPF307
「成分」ビスフェノールF型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂。エポキシ当量:175g/eq):83.3質量%アクリルゴム粒子(体積平均粒径:300nm):16.7質量%
「メーカー」株式会社日本触媒
【0080】
<成分(B)>
DY9577
「製品名」DY9577
「成分」三塩化ホウ素アミン錯体
「メーカー」ハンツマン・ジャパン株式会社
アンカー1115
「製品名」アンカー1115
「成分」三フッ化ホウ素アミン錯体
「メーカー」PTIジャパン株式会社
【0081】
<成分(C)>
J−5800
「製品名」メタブレンJ−5800
「成分」アクリル系コアシェルゴム粒子(体積平均粒径:500−600nm)
「メーカー」三菱レイヨン株式会社
W−5500
「製品名」メタブレンJ−5800
「成分」アクリル系コアシェルゴム粒子(体積平均粒径:500−600nm)
「メーカー」三菱レイヨン株式会社
SRK−200E
「製品名」メタブレンSRK−200E
「成分」シリコン系コアシェルゴム粒子(体積平均粒径:100−300nm)
「メーカー」三菱レイヨン株式会社
AC−4030
「製品名」スタフィロイドAC−4030
「成分」アクリル系コアシェルゴム粒子(体積平均粒径:500nm)
「メーカー」アイカ工業株式会社
【0082】
<成分(D)>
M52N
「製品名」Nanostrength M52N
「成分」メタクリル酸メチルとブチルアクリレートとのブロック共重合
「メーカー」アルケマ株式会社
TPAE−32
「製品名」TPAE−32
「成分」ポリアミドエラストマー
「メーカー」株式会社 T&K TOKA
YP50S
「製品名」YP50S
「成分」フェノキシ樹脂
「メーカー」新日鉄住金化学株式会社
【0083】
<その他の原料>
(硬化剤)
DICY7
「製品名」jERキュア DICY7
「成分」ジシアンジアミド
「メーカー」三菱化学株式会社
PN−23J
「製品名」アミキュアPN−23J
「成分」エポキシ樹脂アミンアダクト
「メーカー」味の素ファインテクノ株式会社
MY−24
「製品名」アミキュアMY−24
「成分」エポキシ樹脂アミンアダクト
「メーカー」味の素ファインテクノ株式会社
2E4MZ
「製品名」キュアゾール2E4MZ
「成分」2−エチル−4−メチルイミダゾール
「メーカー」四国化成工業株式会社
2P4MHZ
「製品名」キュアゾール2P4MHZ―PW
「成分」2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール
「メーカー」四国化成工業株式会社
HX−3722
「製品名」ノバキュアHX−3722
「成分」ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂:65質量%
マイクロカプセル化されたアミン系硬化剤:35質量%
「メーカー」旭化成ケミカルズ株式会社
(硬化助剤)
DCMU99
「製品名」DCMU99
「成分」2,4−トルエンビス(ジメチルウレア)
「メーカー」保土谷化学
オミキュア24
「製品名」オミキュア24
「成分」2,4−トルエンビス(ジメチルウレア)
「メーカー」PTIジャパン株式会社
【0084】
<実施例1の樹脂組成物調製>
表1に記載の組成の、エポキシ樹脂組成物を調製した。
CY−184とM52Nとをフラスコに秤量した後、オイルバスで145℃〜155℃に加温しながらフラスコの内容物が均一となるまで攪拌した。その後、フラスコをオイルバスから取り出し、内容物の温度が60℃以下となるまで放冷して、残りの原料をフラスコに秤量追加した。続いて水バスで55℃〜65℃に加温しながらフラスコの内容物が均一となるまで攪拌して、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0085】
<比較例1の樹脂組成物調製>
表1に記載の組成の、エポキシ樹脂組成物を調製した。
DICY7、オミキュア24の全量をjER828の一部へ三本ロールを用いて分散させた。DICY7、オミキュア24を分散させたjER828と残りのjER828とをフラスコへ投入し、40℃〜50℃に加温しながら内容物が均一となるまで攪拌した。
実施例1及び比較例1にて得られたエポキシ樹脂組成物につき、以下の方法で保存安定及び硬化性を測定し、各組成物の硬化後の樹脂につき、ガラス転移温度及びKIcを測定した。結果を表1に示す。
【0086】
<保存安定性の確認>
エポキシ樹脂組成物を下記の条件に暴露する前後の、エポキシ樹脂組成物の23℃における粘度とタックの変化を触感で確認することで、保存安定性を確認した。
暴露条件
温度:23℃
湿度:50%RH
【0087】
<エポキシ樹脂組成物の硬化性確認>
直径50mmのアルミカップにエポキシ樹脂組成物を13g秤量し、熱風炉で加熱し、硬化の可否を確認した。
昇温条件:室温から2℃/minで硬化温度まで昇温
硬化条件:110℃で2時間保持、又は135℃で2時間保持
降温条件:硬化温度から50℃以下まで自然放冷
熱風炉:ETAC HT−310S(楠本化成製)
【0088】
<エポキシ樹脂組成物の硬化板の作製>
調製した各エポキシ樹脂組成物を、厚さ2mm又は3mmのスペーサーを挟んだ2枚のガラス板の間に注入し、110℃、又は135℃まで2℃/分間で昇温後、炉内の温度を110℃、又は135℃に保ち、2時間エポキシ樹脂組成物を硬化させることでエポキシ樹脂組成物の硬化板を作製した。
【0089】
<硬化物のガラス転移温度測定>
前記<エポキシ樹脂組成物の硬化板の作製>にて得られた硬化板につき、DMA法(Dynamic Mechanical Analysis)によりガラス転移温度(G’−Tg)を測定した。具体的には
図2のグラフに示すとおり、logG’を温度に対してプロットし、logG’の転移する前の平坦領域の近似直線とG´が転移する領域の近似直線との交点から求めた温度をG’−Tgとして記録した。
測定条件
装置:ARES−RDA(ティー・エー・インスツルメント社製)
昇温速度:5℃/min
測定周波数:1Hz
歪:0.5%
測定温度範囲:約30℃〜約200℃
サンプルサイズ:縦55mm、幅12.7mm、厚み2mm
【0090】
<硬化樹脂のKIc(破壊靭性値)測定>
試験片の作製及び試験を、温度20℃、湿度50%RH(相対湿度)の環境下で、ASTM D5045に準拠したSENB(SingleEdge Noched Bend)試験法に準拠して実施した。実施例並びに比較例のエポキシ樹脂組成物を、硬化性確認と同じ加熱条件で硬化させて得た3mmの厚さの硬化樹脂板より、所定寸法(27mm×3mm×6mm)の小片を切り出し、湿式ダイヤモンドカッターにてノッチを入れ、MEK(メチルエチルケトン)にて脱脂した剃刀をノッチの先端に押しつけながらスライドさせて、プリクラックを形成し試験片を作成した。形成した試験片は、万能試験機(インストロン社製、4465)にて破壊靱性試験を行った。
【0091】
実施例1のエポキシ樹脂組成物は、110℃で硬化することが可能であり、かつ硬化物の耐熱性は100℃以上、KIcは0.8MPa/m
0.5以上といずれも優れていた。
また23℃、50%RH環境下で1ヶ月暴露した後も樹脂粘度に大きな変化は見られず、保存安定性も良好であった。
【0092】
【表1】
【0093】
<実施例2の樹脂組成物調製>
2リットルフラスコ中に、成分(C)を成分(A)であるエポキシ樹脂に分散したマスターバッチ型のゴム粒子分散エポキシ樹脂であるMX−154を1000g秤量した後、成分(B)であるDY9577を65g秤量して追加し、フラスコをオイルバスで60℃に加温しながら、20分間撹拌し、均一に混合した。フラスコをオイルバスから出して、内容物の温度が40℃以下となるまで放冷して、実施例2のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0094】
<実施例3の樹脂組成物調製>
成分(C)を成分(A)であるエポキシ樹脂に分散したマスターバッチ型のゴム粒子分散エポキシ樹脂であるMX−113を2.00kg秤量した後、成分(C)であるJ−5800を600g加えて、三本ロールミルにより混練分散した。ついで2リットルフラスコ中に、この混練分散物を1.30kg秤量した後、成分(B)であるDY9577を100g秤量追加し、フラスコをオイルバスで60℃に加温しながら、20分間撹拌し、均一に混合した。フラスコをオイルバスから出して、内容物の温度が40℃以下となるまで放冷して、実施例3のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0095】
<実施例4の樹脂組成物調製>
2リットルフラスコ中に、成分(C)を成分(A)であるエポキシ樹脂に分散したマスターバッチ型のゴム粒子分散エポキシ樹脂であるMX−154を500gと、成分(A)であるjER828を500g秤量した後、成分(B)であるDY9577を70g秤量追加し、フラスコをオイルバスで60℃に加温しながら、20分間撹拌し、均一に混合した。フラスコをオイルバスから出して、内容物の温度が40℃以下となるまで放冷して、実施例3のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0096】
<実施例5の樹脂組成物調製>
2リットルフラスコ中に、成分(C)を成分(A)であるエポキシ樹脂に分散したマスターバッチ型のゴム粒子分散エポキシ樹脂であるMX−113を750gと、成分(A)であるjER828を250g秤量した後、成分(B)であるDY9577を100g秤量追加し、フラスコをオイルバスで60℃に加温しながら、20分間撹拌し、均一に混合した。フラスコをオイルバスから出して、内容物の温度が40℃以下となるまで放冷して、実施例5のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0097】
<実施例6の樹脂組成物調製>
2リットルフラスコ中に、成分(C)を成分(A)であるエポキシ樹脂に分散したマスターバッチ型のゴム粒子分散エポキシ樹脂であるMX−154を1kg秤量した後、成分(B)であるDY9577を100g秤量追加し、フラスコをオイルバスで60℃に加温しながら、20分間撹拌し、均一に混合した。フラスコをオイルバスから出して、内容物の温度が40℃以下となるまで放冷して、実施例6のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0098】
<実施例7の樹脂組成物調製>
2リットルフラスコ中に、成分(C)を成分(A)であるエポキシ樹脂に分散したマスターバッチ型のゴム粒子分散エポキシ樹脂であるMX−154を400gとMX−416を100g、成分(A)であるjER828を150gとjER807を250gとjER604を100g秤量した後、成分(B)であるDY9577を100g秤量追加し、フラスコをオイルバスで60℃に加温しながら、20分間撹拌し、均一に混合した。フラスコをオイルバスから出して、内容物の温度が40℃以下となるまで放冷して、実施例7のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0099】
<比較例2の樹脂組成物調製>
容器にjER828を500g、DICY7を200g及びDCMU99を75g秤量し、スパチュラを用いて混合した。この混合物を3本ロールミルにより混練しDICY7とDCMU99をjER828中に均一に分散させた樹脂混合物Aを得た。
2リットルフラスコにjER828を900g秤量後、先に調製した樹脂混合物Aを155g秤量し、追加した。これを20分間撹拌混合することにより、比較例2の樹脂組成物を得た。
【0100】
<比較例3の樹脂組成物調製>
2リットルフラスコ中に、成分(A)であるjER1002を100gとjER604を900g秤量し、フラスコをオイルバスで120℃に加温しながら30分間撹拌し均一に混合した。内容物が60℃以下となるまで放冷し、さらにこの2リットルフラスコ中に成分(B)であるDY9577を60g秤量追加、フラスコをオイルバスで60℃に加温しながら、20分間撹拌し、均一に混合した。フラスコをオイルバスから出して、内容物の温度が40℃以下となるまで放冷して、比較例3のエポキシ樹脂組成物を得た。
実施例2〜7及び比較例2〜3にて得られたエポキシ樹脂組成物につき、前述と同様の方法で保存安定及び硬化性を測定した。また、各組成物を使用して、複合材料補強圧力容器を作成し、破裂圧力を測定した。結果を表2及び表3に示す。
【0101】
<複合材料補強圧力容器の作製>
評価用の複合材料補強圧力容器を以下の手順で作製した。
エポキシ樹脂組成物を樹脂含有率24%となるように含浸させたグラフィル社製高強度炭素繊維 製品名:37−800(引張強度:5300MPa、引張弾性率:255GPa)(即ち、後述の<トウプリプレグの作製>に従って作製されたトウプリプレグ)を、フィラメントワインディング装置を用いて、外径が160mmで、長さが515mmのアルミライナー(容量9リットル、形状は
図1を参照のこと)に巻き付けた。使用したアルミライナーは、JIS H 4040のA6061−T6に規定されるアルミニウム素材に熱処理を施した材料でできており、胴部の厚みが約3.3mmであった。
トウプリプレグは、ガイドロールを介して、その位置を調整した後にアルミライナーへ巻き付けた。まずアルミライナーの胴部に接する第一層目として、胴部上に回転軸方向に対し88.6°をなすフープ層をその厚みが0.63mmになるように形成した。その後、回転軸方向に対し14°の角度でライナーの鏡部を補強するヘリカル層を積層し、胴部の繊維強化樹脂層の厚みが2.5mmとなるように巻き付けた。なお、繊維強化樹脂層の厚みはノギスで外径を測定することにより求めた。
上記の手順で繊維強化樹脂層を形成したライナーを、フィラメントワインディング装置から外して熱風炉内に吊り下げ、炉内の温度を110℃まで2℃/分間で昇温させた。繊維強化樹脂層の表面温度が110℃に到達したことを確認した後、2時間、炉内の温度を110℃に保ち、エポキシ樹脂組成物を硬化させた。その後、炉内温度を1℃/分間で60℃まで冷却し、複合材料補強圧力容器(9Lタンク)を得た。
【0102】
<トウプリプレグの作製>
上述の各実施例及び比較例で得られたエポキシ樹脂組成物と、グラフィル社製高強度炭素繊維 製品名:37−800(引張強度:5300MPa、引張弾性率:255GPa。)を用いてトウプリプレグを作製した。
まず、上記炭素繊維を50〜100℃に加熱し、幅11−15mmに拡幅させた。
拡幅させた炭素繊維(以下、単に「炭素繊維束」と称す)に、エポキシ樹脂組成物供給装置を用いて、65℃に調整したエポキシ樹脂組成物を定量的に供給し、さらに加熱ロールから構成される樹脂含浸装置を用いて、炭素繊維束に均一に含浸させた。エポキシ樹脂組成物が強化繊維束へ均一に含浸するよう含浸手段の一つとして、上記のフィラメントを横方向に移動させる方法を採った。
これを室温まで冷却した後、ボビンに巻き取った。
【0103】
<破裂圧力の測定方法>
水圧破壊試験機に圧力容器をセットし、圧力容器内に水を満たした後、昇圧速度15MPa/分間で圧力容器に水圧を負荷し、圧力容器が破裂したときの水圧を記録して圧力容器の実測の破裂圧力とした。
また、フープ応力としては、ライナーの内圧に対する抵抗が無い、即ち、ライナーに接するフープ層の径方向応力と圧力容器の破壊圧力とが等しいと仮定し、さらにヘリカル層の周方向の弾性率が無視し得るほど小さい、即ち、フープ層の最外層表面におけるフープ応力がゼロと仮定することによって、式(1)に示す厚肉円筒のフープ応力の算出式により、任意のフープ層におけるフープ応力を得ることができる。
σ=(P×r
12×(r
22+r
2))/(r
2×(r
22−r
12))・・・式(1)
σ:厚肉円筒のフープ応力(MPa)
p:圧力容器の内圧(MPa)
r:圧力容器の軸に垂直な断面における中心からの任意の半径(mm)
r
1:圧力容器の軸に垂直な断面における中心から圧力容器の内壁までの半径(mm)
r
2:圧力容器の軸に垂直な断面における中心から圧力容器の外壁までの半径(mm)
ここで上記のとおり測定したフープ層の厚みが0.63mmのタンクの実測の破裂圧力(実測値)に基づいて算出されるライナーに接するフープ層の破壊フープ応力と、フープの厚みが2.80mmのタンクのライナーに接するフープ層のフープ応力と、が等しくなる場合のタンク内圧を、破裂圧力(換算値)とする。破裂圧力(換算値)が複合材料補強圧力容器(9Lタンク)の仕様である70MPaに安全率2.25倍をかけた158MPaを超える場合を合格と判定した。
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
<実施例8、9、11、12、14〜16、18、20、21、26、27、29、30、32、37、及び比較例9、10、13、14の樹脂組成物調製>
全ての原料をフラスコに秤量した後、ウォーターバスで45℃〜60℃に加温しながらフラスコに投入した原料が目視で十分均一となるまで攪拌してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0107】
<実施例31及び33の樹脂組成物調製>
成分(C)の全量を成分(A)と成分(C)とのマスターバッチの一部へ三本ロールミルを使用して分散させた。成分(C)の全量を分散させた成分(A)と成分(C)とのマスターバッチの一部、残りの成分(A)と成分(C)とのマスターバッチ、及び成分(B)をフラスコに秤量した後、ウォーターバスで45℃〜60℃に加温しながらフラスコに投入した原料が目視で十分均一となるまで攪拌してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0108】
<実施例10、22〜25の樹脂組成物調製>
成分(C)の全量を成分(A)の一部へ三本ロールミルを使用して分散させた。成分(C)分散させた成分(A)の一部、残りの成分(A)、及び成分(B)をフラスコに秤量した後、ウォーターバスで45℃〜60℃に加温しながらフラスコに投入した原料が目視で十分均一となるまで攪拌してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0109】
<実施例13、17、28、36、及び比較例11の樹脂組成物調製>
成分(A)、成分(A)と成分(C)とのマスターバッチ、及び成分(D)をフラスコに秤量した後、オイルバスで150℃〜160℃に加温しながらフラスコの内容物が目視で十分に均一となるまで攪拌した。その後、フラスコをオイルバスから取り出し、内容物の温度が60℃以下となるまで放冷して、残りの原料をフラスコに秤量追加した。続いてウォーターバスで45℃〜60℃に加温しながらフラスコの内容物が目視で十分に均一となるまで攪拌して、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0110】
<実施例19、34、35、38
、39及び比較例1
2の樹脂組成物調製>
成分(A)と成分(D)とをフラスコに秤量した後、オイルバスで150℃〜160℃に加温しながらフラスコの内容物が均一となるまで攪拌した。その後、フラスコをオイルバスから取り出し、内容物の温度が60℃以下となるまで放冷して、残りの原料をフラスコに秤量追加した。続いてウォーターバスで45℃〜60℃に加温しながらフラスコの内容物が均一となるまで攪拌して、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0111】
<比較例4、5、8の樹脂組成物調製>
成分(A)、又は/及び成分(A)と成分(C)とのマスターバッチの一部へ、三本ロールミルを使用してその他の原料を分散させた。その他の原料を分散させた成分(A)、又は/及び成分(A)と成分(C)との一部、及び残りの成分(A)、又は/及び成分(A)と成分(C)とをフラスコに秤量した後、ウォーターバスで45℃〜60℃に加温しながらフラスコに投入した原料が目視で十分均一となるまで攪拌してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0112】
<比較例6、7の樹脂組成物調製>
成分(A)、又は成分(A)と成分(C)とのマスターバッチの一部へ三本ロールミルを使用してその他の原料である2P4MHZを分散させた。2P4MHZを分散させた成分(A)、又は成分(A)と成分(C)とのマスターバッチの一部、残りの成分(A)、又は成分(A)と成分(C)とのマスターバッチ、及びその他の原料であるHX−3722とをフラスコへ秤量した後、ウォーターバスで45℃〜60℃に加温しながらフラスコに投入した原料が目視で十分均一となるまで攪拌してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0113】
<参考例1の樹脂組成物調製>
成分(A)であるjER828へ、その他の原料であるDICY7、及びDCMU99を三本ロールミルで分散させた。またフラスコへ成分(A)と成分(C)とのマスターバッチであるMX−113、成分(A)であるjER807、YDF−2001を秤量して、オイルバスで120℃〜130℃に加温しながらフラスコの内容物が均一となるまで攪拌した。その後、フラスコをオイルバスから取り出し、内容物の温度が60℃以下となるまで放冷して、その他の原料であるDICY7、及びDCMU99を分散させた成分(A)であるjER828をフラスコに秤量追加した。続いてウォーターバスで55℃〜65℃に加温しながらフラスコの内容物が均一となるまで攪拌して、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0114】
<参考例2の樹脂組成物調製>
、フラスコへ成分(A)、成分(D)を秤量した後、オイルバスで170℃〜180℃に加温しながらフラスコの内容物が均一となるまで攪拌した。その後、フラスコをオイルバスから取り出し、内容物の温度が60℃以下となるまで放冷して、残りの原料をフラスコに秤量追加した。続いてウォーターバスで60℃〜70℃に加温しながらフラスコの内容物が均一となるまで攪拌して、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0115】
<実施例8〜11及び比較例4〜10>
表4に記載の各組成物を、上述の実施例及び比較例に準じて調製した。
得られた組成物を用い、前記<複合材料補強圧力容器の作製>の方法で圧力容器を作製した。但し、繊維強化樹脂層を形成したライナーは、フィラメントワインディング装置から外して熱風炉内に吊り下げ、炉内の温度を表4中に記載の硬化温度まで2℃/分間で昇温させた。繊維強化樹脂層の表面温度が前記硬化温度に到達したことを確認した後、2時間炉内の温度を硬化温度に保ちエポキシ樹脂組成物を硬化させた。
得られた圧力容器につき、前記<破裂圧力の測定方法>の方法で破裂圧力を測定した。結果を表4中に示す。
【0116】
【表4】
【0117】
これらの実施例及び比較例から分かるように、単に成分(A):エポキシ樹脂を用いても、或いは 成分(A):エポキシ樹脂と成分(B):ハロゲン化ホウ素アミン錯体を併用しても、十分な破裂圧力を示す圧力容器を得ることは出来ず、成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):ハロゲン化ホウ素アミン錯体及び成分(C):ゴム粒子を併用することにより、十分な破裂圧力を示す圧力容器を得ることができる。
【0118】
<実施例12〜18及び比較例11〜13>
表5に記載の各組成物を、上述の実施例及び比較例に準じて調製した。
得られた組成物を用い、前記<エポキシ樹脂組成物の硬化板の作製>に従って硬化板を作製した。得られた硬化板につき、前記<硬化物のガラス転移温度測定>の方法でG’−Tgを測定した。結果を表5中に示す。
【0119】
また同様に作成された硬化板を用い、以下の<硬化物の海島相分離構造の観察>に記載の方法で硬化板の断面状態を観察した。
<硬化物の海島相分離構造の観察>
硬化物を包埋樹脂(日新EM製、テクノビット4000)に包埋し、研磨機(リファインテック製、ADM−122)を用い研磨して硬化物断面を得た。
硬化物の断面をLSM(レーザースキャン顕微鏡。オリンパス製「ナノサーチレーザー顕微鏡LEXT3500」)で観察し、観察が可能な倍率、輝度に調整し撮影を行った。
【0120】
【表5】
【0121】
これらの実施例および比較例から分かるように、成分(B):ハロゲン化ホウ素アミン錯体の配合量を本発明のエポキシ樹脂組成物中に含まれる成分(A)100質量部に対して、通常8質量部以上、好ましくは9質量部以上、また通常20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは17質量部以下とすることにより、G’−Tgが高い硬化物を得ることができる。
【0122】
<実施例19〜34及び比較例14>
表6に記載の各組成物を、上述の実施例及び比較例に準じて調製した。
得られた組成物を用い、前記<複合材料補強圧力容器の作製>の方法で圧力容器を作製した。但し、繊維強化樹脂層を形成したライナーは、フィラメントワインディング装置から外して熱風炉内に吊り下げ、炉内の温度を表6中に記載の硬化温度まで2℃/分間で昇温させた。繊維強化樹脂層の表面温度が前記硬化温度に到達したことを確認した後、炉内の温度を硬化温度に保ち2時間エポキシ樹脂組成物を硬化させた。
得られた圧力容器につき、前記<破裂圧力の測定方法>の方法で破裂圧力を測定した。結果を表6中に示す。
なお、実施例19については、得られた組成物を用いて作製された硬化板の断面のLSM写真を
図3に示す。
【0123】
【表6】
【0124】
120これらの実施例及び比較例から分かるように、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いることにより、高い破裂圧力を示す圧力容器を得ることができる。
【0125】
<実施例35〜37及び参考例1〜2>
表7に記載の各組成物を、上述の実施例及び比較例に準じて調製した。
(なお、実施例35と実施例1、実施例36と実施例28、及び実施例37と実施例27のエポキシ樹脂組成物は同じものである。)
得られたエポキシ樹脂組成物を用い、前記<トウプリプレグの作製>に従ってトウプリプレグを作製し、さらに前記<複合材料補強圧力容器の作製>に従って圧力容器を作製した。
前記<複合材料補強圧力容器の作製>の際に、以下の通り<トウプリプレグの解舒性評価>及び<トウプリプレグの工程通過性評価>を行った。
<トウプリプレグの解舒性評価>
圧力容器を作製する際に、強化繊維束の単糸(フィラメント)がボビン上のエポキシ樹脂組成物に絡め取られて切れる単糸切れ等の問題が発生した場合は「B(解舒性が悪い)」、問題が起きなかった場合を「A(解舒性が良い)」とした。
<トウプリプレグの工程通過性評価>
圧力容器を作製する際に、ガイドロールとの擦過等でトウプリプレグ表面に毛羽立ちが確認された場合は「B(工程通過性が悪い)」、毛羽立ちが確認されなかった場合は「A(工程通過性が良い)」とした。
また、得られたエポキシ樹脂組成物を用い、実施例12〜18及び比較例11〜13と同様に、硬化板を作製し、その表面状態を観察した。結果を表7に示す。
【0126】
【表7】
【0127】
使用するエポキシ樹脂組成物の粘度を300Pa・s以下とすることで解舒性、工程通過性に優れたトウプリプレグを得ることが出来た。なお参考例1は、エポキシ樹脂組成物の粘度が300Pa・s以下であるため、解舒性と工程通過性には優れるが、成分(B)が本願発明とは異なるため、圧力容器の破裂圧力が不足することが分かる。
【0128】
<実施例38及び
39(本発明の第2の態様に対応する実施例)>
表8に記載の各組成物を、上述の実施例及び比較例に準じて調製した。
得られたエポキシ樹脂組成物を用い、前記<トウプリプレグの作製>に従ってトウプリプレグを作製し、さらに前記<複合材料補強圧力容器の作製>に従って圧力容器を作製した。
得られた圧力容器につき、前記<破裂圧力の測定方法>の方法で破裂圧力を測定した。
また、得られたエポキシ樹脂組成物を用い、実施例12〜18及び比較例11〜13と同様に、硬化板を作製し、その表面状態を観察した。
これらの結果を表8に示す。
【0129】
【表8】