特許第5737536号(P5737536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東京精密の特許一覧

<>
  • 特許5737536-プローバ 図000002
  • 特許5737536-プローバ 図000003
  • 特許5737536-プローバ 図000004
  • 特許5737536-プローバ 図000005
  • 特許5737536-プローバ 図000006
  • 特許5737536-プローバ 図000007
  • 特許5737536-プローバ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737536
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】プローバ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20150528BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   H01L21/66 B
   G01R31/28 K
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-240885(P2013-240885)
(22)【出願日】2013年11月21日
(65)【公開番号】特開2015-103552(P2015-103552A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2015年1月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】村上 公之輔
(72)【発明者】
【氏名】森 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】重澤 祐治
(72)【発明者】
【氏名】青木 和久
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/111834(WO,A1)
【文献】 特許第5504546(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01R 31/26
G01R 31/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に電極を有するチップが複数形成されたウエハを保持し、前記チップの裏面電極に接触可能な導電性の支持面を有するウエハチャックと、
前記ウエハチャックを移動及び回転する移動回転機構と、
前記チップを電気的に検査するため、前記チップの表面電極に接触して前記表面電極をテスタの端子に接続するプローブを有するプローブ保持部を保持するヘッドステージと、
前記支持面に対して平行に形成されると共に前記支持面に電気的に接続された導電性のステージ面を有し、前記ウエハチャックと一体的に移動可能なステージ部材と、
前記ステージ部材に対面する位置に配置され、前記ステージ面に先端が電気的に接触可能な接触子と、を備え、
前記ステージ部材は、前記ウエハチャックとは別体で分離され、前記ステージ面と前記支持面は配線部材を介して電気的に接続され、
前記チップの裏面電極は、前記ウエハチャック、前記配線部材、前記ステージ部材、及び前記接触子を介して前記テスタに電気的に接続され
前記ウエハチャックには、前記ウエハチャックに保持されたウエハを加熱又は冷却する加熱冷却機構が設けられるプローバ。
【請求項2】
前記ステージ部材は、前記ウエハチャックの移動可能範囲において前記プローブが前記チップの表面電極に接触するときには前記接触子が前記ステージ面に常に接触可能に構成される請求項1に記載のプローバ。
【請求項3】
前記接触子は、スプリングピンによって構成される請求項1又は2に記載のプローバ。
【請求項4】
前記接触子は、プローブカード状の接触子によって構成される請求項1又は2に記載のプローバ。
【請求項5】
前記接触子は、前記ヘッドステージに固定されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のプローバ。
【請求項6】
前記接触子は、前記プローブ保持部に固定されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のプローバ。
【請求項7】
前記接触子は互いに近接する複数の接触子からなる接触子群として配置され、前記接触子群は所定の間隔をあけて配置されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のプローバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ上に形成された複数のチップの電気的な検査を行うプローバに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、薄い円板状の半導体ウエハに各種の処理を施して、半導体装置(デバイス)をそれぞれ有する複数のチップ(ダイ)を形成する。各チップは電気的特性が検査され、その後ダイサーで切り離なされた後、リードフレームなどに固定されて組み立てられる。上記の電気的特性の検査は、プローバとテスタで構成されるウエハテストシステムにより行われる。プローバは、ウエハをウエハチャックに固定し、各チップの電極にプローブを接触させる。テスタは、プローブに電気的に接続され、電気的検査のために各チップに電流や電圧を印加し特性を測定する。
【0003】
パワートランジスタ、パワーMOSFET(電界効果型トランジスタ)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、LED、半導体レーザなどの半導体装置(デバイス)は、一般にウエハの表面に電極(チップ表面電極)が形成されると共に、ウエハの裏面にも電極(チップ裏面電極)が形成される。例えば、IGBTでは、ウエハの表面にゲート電極及びエミッタ電極が形成され、ウエハの裏面にコレクタ電極が形成される。
【0004】
上記のようなウエハの両面に電極を有するチップが複数形成されたウエハにおいてウエハレベル検査を行うため、ウエハチャックには、ウエハの裏面を接触した状態で保持し、テスタの測定電極として作用する導電性の支持面(ウエハ載置面)が設けられる。この支持面は、ウエハチャックから引き出されるケーブルを介してテスタに電気的に接続される。そして、検査を行う場合には、ウエハチャックにウエハを保持し、ウエハの表面に形成された各チップの電極(チップ表面電極)にプローブを接触させた状態で各種測定が行われるようになっている。
【0005】
しかしながら、ウエハチャックとテスタとの間を接続するケーブルは、プローバを構成する筐体の側面又は背面などに設けられる接続コネクタを介して筐体の内外を引き回された状態で配設されるため、その長さは通常1〜3mぐらいが必要となる。このため、チップ裏面電極とテスタとの間に形成される電気経路が長くなり、その抵抗やインダクタンスが大きくなるので、高周波測定や動的測定の測定誤差が生じ、要求される精度でウエハレベル検査を適正に行うことができない問題がある。
【0006】
このような問題を解消するための技術として、例えば、特許文献1には、ウエハチャック(チャックステージ)の上面と電気的に接続されたポゴピンをウエハチャックの周辺部に設け、ウエハチャックの上面に対面する位置に設けられたチャックリード板にポゴピンを接触させることにより、チップ裏面電極とテスタとの間の電気経路の短縮を図った技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、ポゴピンがウエハチャックの周辺部に固定されているので、検査するチップのウエハ上の位置によってチップ裏面電極とテスタとの間の電気経路の長さが変化する。例えば、ウエハの中央付近に存在するチップを検査する場合とウエハの端部付近に存在するチップを検査する場合とでは上記電気経路の長さが異なってしまう。このため、検査するチップのウエハ上の位置に応じて上記電気経路に生じる抵抗やインピーダンスが変化してしまい、高周波測定や動的測定に悪影響を及ぼし、ウエハレベル検査を高精度に行うことができないという問題がある。
【0008】
一方、特許文献2には、ウエハチャック(チャックステージ)の上面に、ウエハ保持部と、導電性のプローブコンタクト領域とが隣接して配置され、プローブコンタクト領域はウエハ保持部と電気的に導通しており、表面電極用プローブが検査対象ウエハ内を相対的に移動したときに、裏面電極用プローブがプローブコンタクト領域内を相対的に移動するように、表面電極用プローブと裏面電極用プローブとが水平方向に互いに距離を隔てて配置されている技術が開示されている。
【0009】
特許文献2に開示された技術によれば、ウエハ上の個々のチップを順次検査するに際して表面電極用プローブに対してウエハチャックを移動させても、裏面電極用プローブを移動させる必要がない。このため、テスタと表面電極用プローブとの電気経路だけでなく、テスタと裏面電極用プローブとの電気経路も常に一定の最短長さに維持することができ、ウエハレベル検査を高精度に行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−138865号公報
【特許文献2】特開2013−118320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、ウエハレベル検査は、チップが使用される環境に応じて高温状態のチップの検査、及び低温状態のチップの検査が行われることが多い。この場合、チップの加熱及び冷却は、チップが形成されたウエハを保持するウエハチャックによって行われる。すなわち、ウエハチャックの加熱は、ウエハチャック内に設けられているヒータによって行われ、ウエハチャックの冷却は、ウエハチャック内に設けられている冷却液通路に冷却液を循環させて行うようになっている。ウエハチャックの加熱、冷却に、熱電効果を利用したペルチェ素子やチラー等が用いられることもある。
【0012】
ところが、チップの加熱、冷却のためにウエハチャックを加熱、冷却する場合、特許文献2に開示される技術では、ウエハチャックは、ウエハ保持部とプローブコンタクト領域が一体化された構造となっているため、ウエハ保持部だけでなく、プローブコンタクト領域も加熱、冷却されるので、エネルギー効率が悪くなる。また、ウエハ保持部の温度変化がプローブコンタクト領域に伝熱し、この熱による熱膨張、熱によるコンタクト領域や裏面電極用プローブの酸化等の影響により、裏面電極用プローブとプローブコンタクト領域との接触不良などの不具合が発生しやすくなり、ウエハレベル検査の測定精度が悪化したり耐久性が悪くなるという問題がある。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ウエハチャックの温度変化による影響を受けることなく、高周波測定や動的測定でのウエハレベル検査の測定精度や信頼性を高めることができるプローバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明のプローバは、両面に電極を有するチップが複数形成されたウエハを保持し、チップの裏面電極に接触可能な導電性の支持面を有するウエハチャックと、ウエハチャックを移動及び回転する移動回転機構と、チップを電気的に検査するため、チップの表面電極に接触して表面電極をテスタの端子に接続するプローブを有するプローブ保持部を保持するヘッドステージと、支持面に対して平行に形成されると共に支持面に電気的に接続された導電性のステージ面を有し、ウエハチャックと一体的に移動可能なステージ部材と、ステージ部材に対面する位置に配置され、ステージ面に先端が電気的に接触可能な接触子と、を備え、ステージ部材は、ウエハチャックとは別体で分離され、ステージ面と支持面は配線部材を介して電気的に接続され、チップの裏面電極は、ウエハチャック、配線部材、ステージ部材、及び接触子を介してテスタに電気的に接続され、ウエハチャックには、ウエハチャックに保持されたウエハを加熱又は冷却する加熱冷却機構が設けられる
【0015】
本発明によれば、ステージ部材は、ウエハチャックとは別体で分離され、ステージ部材のステージ面とウエハチャックの支持面は配線部材を介して電気的に接続されているので、ウエハチャックの温度変化がステージ部材に伝熱しにくく、ステージ部材の熱変形が防止される。これにより、ステージ部材のステージ面に対する接触子の接触位置が変動することがなく、常に所定圧力で接触子がステージ部材のステージ面に当接することができる。したがって、ウエハチャックの温度変化による影響を受けることなく、高周波測定や動的測定でのウエハレベル検査の測定精度や信頼性を高めることが可能となる。
【0017】
また、本発明の好ましい態様は、ステージ部材は、ウエハチャックの移動可能範囲においてプローブがチップの表面電極に接触するときには接触子がステージ面に常に接触可能に構成される。この態様によれば、ウエハチャックの位置に関係なく、プローブがチップの表面電極に接触するときには接触子がステージ部材のステージ面に常に接触可能に構成されるので、ウエハレベル検査を安定かつ確実に行うことが可能となる。
【0018】
また、本発明の好ましい態様は、接触子は、スプリングピン又はプローブカード状の接触子によって構成される。このように本発明では、接触子として、スプリングピン又はプローブカード状の接触子で構成することができる。
【0019】
また、本発明の好ましい態様は、接触子は、ヘッドステージ又はプローブ保持部に固定される。このように本発明では、接触子が固定される位置は、ヘッドステージでもよいし、プローブ保持部でもよい。
【0020】
また、本発明の好ましい態様は、接触子は互いに近接する複数の接触子からなる接触子群として配置され、接触子群は所定の間隔をあけて配置されている。この態様によれば、ステージ部材を小型化することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ウエハチャックの温度変化による影響を受けることなく、高周波測定や動的測定でのウエハレベル検査の測定精度や信頼性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態のウエハテストシステムの概略構成を示す図
図2】ウエハチャックとステージ部材との関係を示す平面図
図3】検査するチップのウエハ上の位置とスプリングピンとの位置変化を示す図
図4】第1の変形例の説明図
図5】第2の変形例の説明図
図6】第3の変形例の説明図
図7】第5の変形例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態のウエハテストシステムの概略構成を示す図である。同図に示すように、ウエハテストシステムは、ウエハ上の各チップの電極にプローブを接触させるプローバ10と、プローブに電気的に接続され、電気的検査のために各チップに電流や電圧を印加し特性を測定するテスタ30とで構成される。
【0025】
プローバ10は、基台11と、その上に設けられた移動ベース12と、Y軸移動台13と、X軸移動台14と、Z軸移動・回転部15と、ウエハチャック18と、ウエハアライメントカメラ19と、支柱20及び21と、ヘッドステージ22と、ヘッドステージ22に設けられたカードホルダ23と、カードホルダ23が取り付けられるプローブカード24と、を有する。プローブカード24には、プローブ25が設けられる。
【0026】
移動ベース12と、Y軸移動台13と、X軸移動台14と、Z軸移動・回転部15は、ウエハチャック18を3軸方向及びZ軸周りに回転する移動・回転機構を構成する。移動・回転機構については広く知られているので、ここでは説明を省略する。
【0027】
プローブカード24は、検査するデバイスの電極配置に応じて配置されたプローブ25を有し、検査するデバイスに応じて交換される。なお、プローブの位置を検出する針位置合わせカメラや、プローブをクリーニングするクリーニング機構などが設けられているが、ここでは省略している。
【0028】
テスタ30は、テスタ本体31と、テスタ本体31に設けられたコンタクトリング32とを有する。プローブカード24には各プローブ25に接続される端子が設けられており、コンタクトリング32はこの端子に接触するように配置されたスプリングプローブを有する。テスタ本体31は、図示していない支持機構により、プローバ10に対して保持される。
【0029】
ウエハチャック18は、ウエハWの裏面を接触した状態で保持し、テスタ30の測定電極として作用する導電性の支持面(ウエハ載置面)18aを有する。
【0030】
ウエハチャック18の内部には、チップを高温状態、例えば、最高で150℃、又は低温状態、例えば最低で−40℃、で電気的特性検査が行えるように、加熱/冷却源としての加熱/冷却機構66(加熱冷却機構)が設けられている。加熱/冷却機構66としては、公知の適宜の加熱器/冷却器が採用できるものであり、例えば、面ヒータの加熱層と冷却流体の通路を設けた冷却層との二重層構造にしたものや、熱伝導体内に加熱ヒータを巻き付けた冷却管を埋設した一層構造の加熱/冷却装置など、様々のものが考えられる。また、電気加熱ではなく、熱流体を循環させるものでもよく、またペルチエ素子を使用してもよい。
【0031】
本実施形態では、上述した構成に加え、さらに、ウエハチャック18に隣接した位置に配置されるステージ部材50と、ステージ部材50に対面する位置においてヘッドステージ22に固定された複数のスプリングピン52と、を備えて構成される。
【0032】
ステージ部材50は、ウエハチャック18とは別体で構成された円板状の構造体からなり、ウエハチャック18とは分離した位置に設けられている。ステージ部材50は、熱膨張係数の小さな材質で形成されており、ステージ部材50の熱変形が防止された構成となっている。
【0033】
ステージ部材50には、各スプリングピン52が接触可能な導電性のステージ面50aが設けられている。このステージ面50aは、図2に示すように、ウエハチャック18の支持面18aと同様の平面形状(円形状)を有し、それらの面積(平面面積)は互いに等しく構成されている。なお、ステージ面50aは、ウエハチャック18の支持面18aよりも面積(平面面積)が大きく円形以外で構成されていてもよい。
【0034】
ステージ部材50とウエハチャック18との間には複数の配線64(配線部材)が設けられている。本例では、3つの配線64が設けられている。各配線64の一端は、ステージ部材50のステージ面50aに電気的に接続され、これらの他端はウエハチャック18の支持面18aに電気的に接続されている。すなわち、ステージ部材50のステージ面50aと、ウエハチャック18の支持面18aとは、複数の配線64によって電気的導通が確保されている。
【0035】
図1に戻り、ステージ部材50のステージ面50aは、ウエハチャック18の支持面18aに対して平行かつ面一となるように設けられている。なお、ステージ面50aは、プローブ25がウエハWのチップ表面電極に接触したときにスプリングピン52が常に接触可能であれば、支持面18aに対して面一に設けられていなくてもよい。
【0036】
ステージ部材50のステージ面50aと反対側の面(図2において下面)には、L字状の連結部材53の一端が連結固定されている。連結部材53の他端は、Z軸移動・回転部15の側部に連結固定されている。したがって、ステージ部材50はウエハチャック18と一体的に移動可能であり、ウエハチャック18が所定の方向に移動すると、ステージ部材50もウエハチャック18と同方向に移動する。
【0037】
なお、本実施形態においては、ステージ部材50は、L字状の連結部材53を介してZ軸移動・回転部15の側部の根元側(図1において下側)に固定される態様が好ましい。この態様によれば、ウエハチャック18とステージ部材50を一体的に構成した場合に比べて、後述するスプリングピン52をステージ部材50のステージ面50aに接触させても、ウエハチャック18の傾きを効果的に防止することができるので、ウエハWの検査するチップの位置に関係なく、チップの電極をプローブ25に安定的に接触させることが可能となる。
【0038】
ヘッドステージ22の下面(ステージ部材50の対向面)22aには、ステージ部材50のステージ面50aに接触可能なスプリングピン52が互いに近接した状態で複数設けられる。本例では、4本のスプリングピン52が設けられる。各スプリングピン52は、それ自体がバネ性を有する導電性の細い針からなり、ウエハチャック18が上昇してプローブ25がウエハWのチップ表面電極に接触したとき、ステージ部材50のステージ面50aに所定の接触圧で各スプリングピン52が接触するように構成される。なお、図2において、符号60はスプリングピン52が接触するステージ部材50上のステージ面50aにおける接触位置を示している。また、符号62は、プローブ25が接触するチップのウエハW上の位置を示している。
【0039】
ヘッドステージ22の上面22bには、各スプリングピン52に共通して接続されるコネクタ部54が設けられる。コネクタ部54にはケーブル56の一端が接続され、ケーブル56の他端はテスタ本体31のコネクタ部58に接続される。これにより、ウエハWの裏面に形成されるチップ裏面電極は、ウエハチャック18、配線64、ステージ部材50、スプリングピン52、コネクタ部54、ケーブル56、及びコネクタ部58を経由してテスタ本体31に電気的に接続される。
【0040】
次に、本実施形態のウエハテストシステムによるウエハレベル検査について説明する。
【0041】
まず、不図示のウエハロード機構により、検査するウエハWをウエハチャック18上にロードして、ウエハチャック18にウエハWを保持させる。
【0042】
次に、図示していない針位置合わせカメラでプローブ25の先端位置を検出する。続いて、ウエハチャック18にウエハWを保持した状態で、ウエハWがウエハアライメントカメラ19の下に位置するように、ウエハチャック18を移動させ、ウエハW上のチップの電極(チップ表面電極)の位置を検出する。1チップのすべての電極の位置を検出する必要はなく、いくつかの電極の位置を検出すればよい。また、ウエハW上のすべてのチップの電極を検出する必要はなく、いくつかのチップの電極の位置が検出される。
【0043】
プローブ25の位置及びウエハW上のチップの電極の位置を検出した後、チップの電極の配列方向がプローブ25の配列方向に一致するように、Z軸移動・回転部15によりウエハチャック18を回転する。そして、ウエハWの検査するチップの電極がプローブ25の下に位置するように移動した後、ウエハチャック18を上昇させて、チップの電極をプローブ25に接触させる。このとき、ウエハチャック18に隣接して配置されるステージ部材50も一体となって上昇し、各スプリングピン52はステージ部材50のステージ面50aに接触する。これにより、ウエハWの裏面に形成されるチップ裏面電極は、ウエハチャック18、配線64、ステージ部材50、及びスプリングピン52を介してテスタ本体31に電気的に接続される。そして、テスタ本体31から、チップに電流や電圧を印加し特性を測定する。
【0044】
このチップの検査が終了すると、一旦ウエハWとプローブ25を離し、他のチップがプローブ25の下に位置するように移動し、同様の動作を行う。以下、各チップを順次選択して検査する。そして、ウエハ上の指定されたすべてのチップの検査が終了すると、1枚のウエハの検査を終了する。
【0045】
このようにして、ウエハW上のすべてのチップの検査が終了すると、ウエハWの検査を終了し、検査済みのウエハWをアンロードして、次に検査するウエハWをロードして上記の動作を行う。
【0046】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0047】
図3は、検査するチップのウエハW上の位置とスプリングピン52との相対的な位置関係を示した図である。図3(a)〜(e)は、それぞれ、ウエハW上の中央、左端、右端、上端、下端のチップを検査する場合を示している。
【0048】
図3に示すように、ウエハチャック18は、上述のようにウエハWの検査するチップの電極(チップ表面電極)がプローブ25の下に位置するように移動する。一方、スプリングピン52はヘッドステージ22に固定されているので、ウエハチャック18が移動してもプローブ25とスプリングピン52との相対的な位置関係は変わらない。このため、検査するチップのウエハW上の位置62が変化しても、その位置62からスプリングピン52が接触するステージ部材50上の位置60までの距離Lは常に一定である。
【0049】
したがって、本実施形態によれば、検査するチップのウエハW上の位置に関係なく、チップ裏面電極からウエハチャック18、配線64、ステージ部材50、及びスプリングピン52を介してテスタ本体31に接続される電気経路の長さが常に一定となるので、その電気経路における抵抗やインピーダンスの影響を受けることなく、高周波測定や動的測定を安定して行うことができ、ウエハレベル検査を高精度に行うことが可能となる。
【0050】
また、本実施形態によれば、ステージ部材50は、ウエハチャック18とは別体で分離され、ステージ部材50のステージ面50aとウエハチャック18の支持面18aは複数の配線64を介して電気的に接続されるので、ステージ部材50は、ウエハチャック18から熱的に分離される。このため、ウエハレベル検査の際にウエハチャック18を加熱、冷却する場合でも、ウエハチャック18の温度変化がステージ部材50に伝熱しにくく断熱効果が得られるので、エネルギー効率が良く、しかもステージ部材50の熱変形が防止される。これにより、スプリングピン52のステージ部材50のステージ面50aに対する接触位置(Z軸方向の位置)が変動することなく、常に所定圧力でスプリングピン52がステージ部材50のステージ面50aに当接することができる。したがって、ウエハチャック18の温度変化による影響を受けることなく、ウエハレベル検査の測定精度や信頼性を高めることが可能となる。
【0051】
また、本実施形態によれば、ウエハチャック18とステージ部材50は別体で分離された構成となっているため、ウエハチャック18については従来のものを再利用することが可能となり、設計期間・製造プロセスの短縮、設計労力の低減、コストの低減等を図ることが可能となる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。以下、いくつかの変形例について説明する。
【0053】
[変形例1]
上述した実施形態では、ステージ部材50は、ウエハチャック18に隣接する位置に固定された構成となっているが、ステージ部材50を折りたたみ可能な構成としてもよい。
【0054】
例えば、図4に示した変形例では、ステージ部材50は、その端部(ウエハチャック側端部)に設けられた回転軸70を中心にして回転可能に構成されている。すなわち、ステージ部材50は、Y軸(紙面に垂直な方向)周りに回転可能に構成されており、ステージ面50aが、ウエハチャック18の支持面18aに対して平行に配置された状態(図4に破線で図示)と垂直に配置された状態(図4に実線で図示)との間で相互に遷移可能となっている。
【0055】
このようにステージ部材50を折りたたみ可能な構成とした態様によれば、ウエハWのロードまたはアンロード時やアライメント時には、ステージ部材50を折りたたんだ状態(図4に実線で図示)でウエハチャック18を移動させることで、ウエハチャック18の動作可能範囲を拡大することができる。また、より大きなウエハチャック18を搭載することも可能となり、大径のウエハWに対してもウエハレベル検査を行うことが可能となる。
【0056】
[変形例2]
上述した実施形態では、図2に示したように、ステージ部材50のステージ面50aは、ウエハチャック18の支持面18aと同形状かつ同面積であるが、少なくともウエハチャック18の移動可能範囲においてスプリングピン52が常に接触可能なステージ面50aを有するものであれば異なる形状または面積であってもよい。例えば、ステージ部材50のステージ面50aは、ウエハチャック18の支持面18aと同じ平面形状(円形状)であって、その支持面18aよりも大きな面積を有する態様でもよい。また、図5に示すように、ステージ部材50のウエハチャック18側の側面が、ウエハチャック18の側面に沿った凹状に形成された態様でもよい。いずれの態様においても、少なくともウエハチャック18の移動可能範囲においてスプリングピン52が常に接触可能なステージ面50aを有するものであり、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
[変形例3]
上述した実施形態では、プローバ10の筐体を構成するヘッドステージ22にスプリングピン52を設けた構成を示したが、スプリングピン52はヘッドステージ22に保持された部材に設けられていてもよく、例えば図6に示すように、プローブカード24にスプリングピン52を設けた構成を採用することができる。この場合、スプリングピン52はコンタクトリング32を介してテスタ本体31に電気的に接続される。これにより、ウエハチャック18が移動してもスプリングピン52とプローブ25との相対的な位置関係は変化しないので、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
[変形例4]
上述した実施形態では、ステージ部材50のステージ面50aに接触可能な接触子(導通ピン)としてスプリングピン52を好ましく用いたが、カンチレバータイプや垂直針タイプなどのプローブカード状の接触子を用いてもよい。
【0059】
[変形例5]
上述した実施形態では、ヘッドステージ22には、互いに近接させた状態で複数のスプリングピン52からなる接触子群を1箇所に設けた構成を示したが、所定の間隔をあけて複数箇所に接触子群を設けた構成としてもよい。例えば図7に示した例では、ヘッドステージ22(一部のみ図示)には所定の間隔をあけて2つの取付位置68A、68Bが設けられ、各取付位置68A、68Bにはそれぞれ8本のスプリングピン52からなる接触子群が配置される。このように接触子群を複数箇所に設けた構成によれば、接触子群を1箇所に設けた構成に比べてステージ部材50を小型化することが可能となる。
【0060】
[変形例6]
上述した実施形態では、プローブカード24を備えた構成を示したが、プローブカード24を備えないプローブヘッド形式のものに適用してもよい。すなわち、ヘッドステージ22に保持されるプローブ保持部は、プローブカード24に限らず、マニピュレータ型のプローブヘッドなどであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…プローバ、11…基台、12…ベース部材、13…Y軸移動台、14…X軸移動台、15…Z軸移動・回転部、18…ウエハチャック、18a…支持面、19…アライメントカメラ、20、21…支柱、22…ヘッドステージ、23…カードホルダ、24…プローブカード、25…プローブ、30…テスタ、31…テスタ本体、32…コンタクトリング、50…ステージ部材、50a…ステージ面、64…配線、66…加熱冷却機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7