【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
Mn系フェライト芯粒子を下記方法で作製した。出発原料として、Fe
2O
3(体積平均粒子径:0.6μm)を73.8molと、Mn
3O
4(体積平均粒子径:2μm)を25.4molと、SrCO
3(体積平均粒子径:0.1μm)を0.9molの比率で、水7.0kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を239g添加して混合物とした。この混合物の固形分濃度は80質量%となるように調整した。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。スラリーの体積粒度分布90%の粒子径D
90は2.0μmであった。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10〜200μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から、網目35μmの篩網を用いて粗粒を分離し、網目25μmの篩網を用いて微粒を分離し、体積平均粒子径が30μmの造粒粉とした。
この造粒粉を、電気炉に投入し、1100℃で3時間焼成した。焼成時の酸素濃度は15000ppmとした。そして、得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動ふるいを用いて分級してMn系フェライト芯粒子を作製した。
【0053】
次いで、作製したMn系フェライト芯粒子を、Sr(NO
3)
2溶液(濃度5wt%)に浸漬して、芯粒子の表面にSr(NO
3)
2溶液を塗布した。その後、温度1050℃、酸素濃度3000ppmの電気炉に投入し2時間焼成しフェライト粒子を得た。そして、得られたフェライト粒子をEDSのピークカウントマップ画像で分析し、芯粒子の表面にSrフェライト層が形成されていることを確認した。
図1に、得られたフェライト粒子のEDSによるFe元素、Sr元素、Mn元素のピークカウントマップ画像を示す。また、得られたフェライト粒子の組成、Srフェライト層の被覆率及び層厚、磁気特性及び帯電量を以下に示す方法で測定した。表2に測定結果をまとめて示す。
【0054】
(EDS分析)
フェライト粒子の、EDSのピークカウントマップ画像は、SEM−EDS測定装置(日本電子(株)社製、SEM:JSM−6510LA型、EDS:20310BU型)を用いた。
ピークカウントマップ画像の測定条件は、加速電圧:15kV、照射電流:1.0nA、スポットサイズ:70であり、解像度:512×314、デュエルタイム:0.2msec、スイープ回数:10回である。
【0055】
(組成)
(Feの分析)
鉄元素を含むフェライト粒子を秤量し、塩酸と硝酸の混酸水に溶解させた。この溶液を蒸発乾固させた後、硫酸水を添加して再溶解し過剰な塩酸と硝酸とを揮発させる。この溶液に固体Alを添加して液中のFe
3+を全てFe
2+に還元する。続いて、この溶液中のFe
2+イオンの量を過マンガン酸カリウム溶液で電位差滴定することにより定量分析し、Fe(Fe
2+)の滴定量を求めた。
(Mnの分析)
フェライト粒子のMn含有量は、JIS G1311−1987記載のフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)に準拠して定量分析を行った。本願発明に記載したフェライト粒子のMn含有量は、このフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)で定量分析し得られたMn量である。
(Caの分析)
フェライト粒子のCa含有量は、以下の方法で分析を行った。本願発明に係るフェライト粒子を酸溶液中で溶解し、ICPにて定量分析を行った。本願発明に記載したフェライト粒子のCa含有量は、このICPによる定量分析で得られたCa量である。
(Mgの分析)
フェライト粒子のMg含有量は、Caの分析同様にICPによる定量分析で行った。
(Srの分析)
フェライト粒子のSr含有量は、Caの分析同様にICPによる定量分析で行った。
【0056】
(被覆率)
また、芯粒子表面のSrフェライト層の被覆率については、以下の方法で求めた。
SEM−EDS測定装置(日本電子(株)社製、SEM:JSM−6510LA型、EDS:20310BU型)を用い、写真視野全体にフェライト粒子の表面が納まるように調整し、視野領域全体を測定領域として、当該フェライト粒子の表面におけるSrのマッピングを行った。得られた写真視野全体に対するSr組成面積を一般的な画像解析ソフトを用いて測定して求めた。なお、測定はフェライト粒子30粒子について実施し、その平均値を測定結果とした。また、被覆率10%以上の粒子個数を測定しその割合を算出した。
【0057】
(層厚分析)
Srフェライト層の層厚については、以下の方法で求めた。
フェライト粒子を、クロスセクションポリッシャー(型式;SM−0910、日本電子株式会社製、電圧;6kV)を用いてカットする。得られた粒子断面について、SEM−EDS測定装置(日本電子株式会社製、SEM:JSM−6510LA型、EDS:20310BU型)を用い、組成マッピング(Sr)を実施する。
Sr組成のマッピングデータより粒子表面のSr層の厚みを1粒子について3箇所、計測して平均値を求めた。なお、測定はフェライト粒子30粒子について実施し、その平均値を測定結果とした。
【0058】
(磁気特性)
室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業株式会社製「VSM-P7」)を用いて磁化の測定を行い、1000エルステッドの磁場における磁化σ
1k(A・m
2/kg)を測定した。
【0059】
(帯電量)
得られたフェライト粒子4.75gと、体積平均粒子径5.0μmの市販のフルカラー機のトナー0.25gとを、温度25℃、相対湿度50%の環境下で24時間調湿した後、50ml共栓試験管に投入し、振とう機(ヤヨイ社製「YS−LD」)で振とうした後のフェライト粒子の帯電量をブローオフ法で測定した。
【0060】
実施例2
表1に示すように、出発原料として、Fe
2O
3(体積平均粒子径:0.6μm)を69.3molと、Mn
3O
4(体積平均粒子径:2μm)を20.8molと、MgO(体積平均粒子径:1μm)を9.1molと、CaCO
3(体積平均粒子径:0.5μm)を0.8molとを混合し、温度900℃、大気雰囲気下で仮焼成した。
得られた仮焼成物20kgを、水6.7kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を239g添加して混合物とした。この混合物の固形分濃度は75質量%であった。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。スラリーの体積粒度分布90%の粒子径D
90は6.0μmであった。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10〜200μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から、網目35μmの篩網を用いて粗粒を分離し、網目25μmの篩網を用いて微粒を分離し、体積平均粒子径が30μmの造粒粉とした。
この造粒粉を、電気炉に投入し、1150℃で3時間焼成した。焼成時の酸素濃度は10000ppmとした。そして、得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動ふるいを用いて分級してMnMg系フェライト芯粒子を作製した。
【0061】
次いで、作製したMnMg系フェライト芯粒子を、実施例1と同様にして、Sr(NO
3)
2溶液(濃度5wt%)に浸漬して、芯粒子の表面にSr(NO
3)
2溶液を塗布した後、温度1050℃、酸素濃度3000ppmの電気炉に投入し2時間焼成しフェライト粒子を得た。
得られたフェライト粒子をEDSのピークカウントマップ画像で分析し、芯粒子の表面にSrフェライト層が形成されていることを確認した。
図2に、得られたフェライト粒子のEDSによるFe元素、Sr元素、Mn元素、Mg元素、Ca元素のピークカウントマップ画像を示す。そして、得られたフェライト粒子の組成、Srフェライト層の被覆率及び層厚、磁気特性及び帯電量を実施例1と同様の方法で測定した。表2に測定結果をまとめて示す。
【0062】
実施例3
表1に示すように、出発原料として、Fe
2O
3(体積平均粒子径:0.6μm)を78.6molと、Mn
3O
4(体積平均粒子径:2μm)を21.4molとなる比率で、水7.0kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を239g添加して混合物とした。この混合物の固形分濃度は80質量%となるように調整した。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。スラリーの体積粒度分布90%の粒子径D
90は1.5μmであった。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10〜200μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から、網目35μmの篩網を用いて粗粒を分離し、網目25μmの篩網を用いて微粒を分離し、体積平均粒子径が30μmの造粒粉とした。
この造粒粉を、電気炉に投入し、1200℃で3時間焼成した。焼成時の酸素濃度は5000ppmとした。そして、得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動ふるいを用いて分級してMn系フェライト芯粒子を作製した。
【0063】
次いで、作製したMn系フェライト芯粒子を、実施例1と同様にして、Sr(NO
3)
2溶液(濃度5wt%)に浸漬して、芯粒子の表面にSr(NO
3)
2溶液を塗布した後、温度1050℃、酸素濃度3000ppmの電気炉に投入し2時間焼成しフェライト粒子を得た。
得られたフェライト粒子をEDSのピークカウントマップ画像で分析し、芯粒子の表面にSrフェライト層が形成されていることを確認した。
図3に、得られたフェライト粒子のEDSによるSr元素、Fe元素、Mn元素のピークカウントマップ画像を示す。そして、得られたフェライト粒子の組成、Srフェライト層の被覆率及び層厚、磁気特性及び帯電量を実施例1と同様の方法で測定した。表2に測定結果をまとめて示す。
【0064】
比較例1〜3
実施例1〜3と同様にして、表1に示す出発原料を用いてフェライト芯粒子を作製し、粒子表面にSrフェライト層を形成することなくそのままフェライト粒子とした。そして、実施例1と同様の方法でフェライト粒子の組成、Srフェライト層の被覆率及び層厚、磁気特性及び帯電量を測定した。表2に測定結果をまとめて示す。また、
図4〜
図6に、比較例1〜比較例3のフェライト粒子のEDSによるFe元素、Sr元素、Mn元素、Mg元素、Ca元素のピークカウントマップ画像を示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表2から理解されるように、芯粒子の表面がSrフェライト層で被覆された実施例1〜3のフェライト粒子では、磁化σ
1kが53A・m
2/kg以上と比較的高い値を維持し且つ帯電量が32μC/g以上と高い値を示した。これに対し、芯粒子の表面にSrフェライト層を形成しなかった比較例1〜3のフェライト粒子では、磁化σ
1kは高い値を示したが帯電量が25μC/g以下と低い値であった。