特許第5738145号(P5738145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738145
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】SOIウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20150528BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   H01L27/12 B
   H01L21/02 B
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-219136(P2011-219136)
(22)【出願日】2011年10月3日
(65)【公開番号】特開2013-80772(P2013-80772A)
(43)【公開日】2013年5月2日
【審査請求日】2013年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】秋山 昌次
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−518116(JP,A)
【文献】 特表2008−511137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハをドナーウェーハとして用い、前記シリコンウェーハの表面と、ハンドルウェーハの表面とを貼り合わせて貼り合わせウェーハを得る工程と、
前記貼り合わせ後に、前記シリコンウェーハの一部からなるシリコン薄膜を剥離して前記ハンドルウェーハ上に転写する剥離工程と
を少なくとも含むSOIウェーハの製造方法であって、
前記ハンドルウェーハがサファイアウェーハであり、
前記貼り合わせる工程が、前記シリコンウェーハ又は前記ハンドルウェーハのうちどちらか一方のウェーハを加熱器具の上面に載置することによって100〜300℃に加熱し、他方のウェーハを前記一方のウェーハから一定の間隔をおいて接触させずに該一方のウェーハの上方で保持し、前記載置されたウェーハと前記保持されたウェーハの温度差が50℃以下となったときに、該載置されたウェーハの表面と該保持されたウェーハの表面とを貼り合わせるSOIウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記貼り合わせウェーハを、前記剥離工程の前に、100〜400℃に加熱する工程をさらに含む請求項1に記載のSOIウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記剥離が、前記シリコンウェーハに、予め転写したい薄膜の厚さに相当する深さに導入されたイオン注入層に沿って行われる請求項1又は2に記載のSOIウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記一定の間隔が、30μm〜2mmである請求項1〜3のいずれかに記載のSOIウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記保持が、ロボットアーム、真空ピンセット、又は前記ドナーウェーハと前記ハンドルウェーハとの間に介在するスペーサーを用いて行われる請求項1〜4のいずれかに記載のSOIウェーハの製造方法。
【請求項6】
前記シリコンウェーハと前記ハンドルウェーハとの熱膨張係数の差が、2.0×10−6/K以上である請求項1〜5のいずれかに記載のSOIウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SOI(Silicon On Insulator)ウェーハの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
寄生容量を低減し、デバイスの高速化を図るために、SOIウェーハが広く用いられるようになってきている。このSOIウェーハの中でも、SOQ(Silicon on Quartz)及びSOS(Silicon on Sapphire)というハンドルウェーハが、絶縁透明ウェーハで構成されるウェーハとして注目を集めている。
【0003】
SOQウェーハは、石英の高い透明性を活かしたオプトエレクトロニクス関係、又は低い誘電損失を活かした高周波デバイスへの応用が期待される。また、SOSウェーハは、ハンドルウェーハがサファイアで構成されることから、高い透明性や低い誘電損失に加え、石英では得られない高い熱伝導率を有するため、発熱を伴う高周波デバイスへの応用が期待される。
【0004】
シリコン薄膜をハンドルウェーハ上に積層する方法として、R面のサファイア上にシリコン層をヘテロエピタキシャル成長させる方法、ガラス上に非単結晶シリコンを成長させ、その後レーザーアニール等によって結晶性を高めるCG(Continuous Grains:連続粒界結晶)シリコン等が開発されている。しかし、高い品質を有する単結晶シリコンをハンドルウェーハ上に積層するためには、バルクのシリコンウェーハとハンドルウェーハとを貼り合わせ、シリコンウェーハの一部を剥離してハンドルウェーハ上に転写する方法によってシリコン薄膜を形成することが理想的である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/116664号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常のSOIウェーハの製造方法では、2枚のウェーハ(ドナーウェーハ、ハンドルウェーハ)を貼り合わせた後に熱処理を施すことによって貼り合わせ強度を高める。しかし、SOQウェーハ及びSOSウェーハでは、ドナーウェーハとハンドルウェーハを室温で貼り合わせた後に、例えば300℃で熱処理を施すと、ドナーウェーハとハンドルウェーハの熱膨張係数が異なるため、貼り合わせたウェーハが破損するという問題点がある。この問題点を避けるためには、予め貼り合わせる際の温度を例えば200℃に上げることによって、その後の熱処理の際に貼り合わせたウェーハが破損する可能性を低減することができる。これは、熱処理による歪みが、「熱処理温度(T2)−貼り合わせ温度(T1)=熱処理温度と貼り合わせ温度の差(ΔT)」に比例するからである。
【0007】
また、2枚のウェーハを貼り合わせる際に両ウェーハを同じ温度としない場合、貼り合わせる際の急激な温度変化によって、ウェーハが変形し、貼り合わせ面に気泡が導入されるという問題点がある。例えば、200℃に加熱されたサファイアウェーハ(ハンドルウェーハ)と、加熱していないドナーウェーハとを貼り合わせると、加熱されたサファイアウェーハが一時的に急激に冷やされることによって、該ウェーハに反り及び局所的な変形が発生し、貼り合わせ面に気泡が導入される。
【0008】
このような問題点を解決するために、本発明者は、2枚のウェーハのうち一方のウェーハ(下側ウェーハ)を第1の加熱器具等の上面に載置することによって所望の温度まで加熱し、他方のウェーハ(上側ウェーハ)を第1の加熱器具等の上方に設置した第2の加熱器具等に接して保持するか、又は近接して保持し、両ウェーハを同じ温度に加熱した後貼り合わせる方法を検討した。しかし、上側ウェーハを保持するための加熱源や複雑な機構を設けると、異物等が発生して落下し、貼り合わせ面に付着することによって、貼り合わせ面にボイドと呼ばれる未貼り合わせ部分が発生する。また、二つの加熱源が必要であり、生産コストが増大する。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、ウェーハの反り及び変形を抑制することができるSOIウェーハの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明者は、シリコンウェーハをドナーウェーハとして用い、石英又はサファイアをハンドルウェーハとして用い、両ウェーハを貼り合わせる際の両ウェーハの温度差が50℃を超えると、上記ウェーハが変形し、貼り合わせ面に気泡が導入されることを見出した。
すなわち、本発明においては、シリコンウェーハをドナーウェーハとして用い、前記シリコンウェーハの表面と、ハンドルウェーハの表面とを貼り合わせて貼り合わせウェーハを得る工程と、前記貼り合わせ後に、前記シリコンウェーハの一部からなるシリコン薄膜を剥離して前記ハンドルウェーハ上に転写する剥離工程とを少なくとも含むSOIウェーハの製造方法であって、前記貼り合わせる工程が、前記シリコンウェーハ又は前記ハンドルウェーハのうちどちらか一方のウェーハを加熱器具の上面に載置することによって100〜400℃に加熱し、他方のウェーハを前記一方のウェーハから一定の間隔をおいて接触させずに該一方のウェーハの上方で保持し、前記載置されたウェーハと前記保持されたウェーハの温度差が50℃以下となったときに、該載置されたウェーハの表面と該保持されたウェーハの表面とを貼り合わせるSOIウェーハの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のSOIウェーハの製造方法によれば、ウェーハの反り及び変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】SOIウェーハの製造方法の工程の一例を示す図である。
図2】保持がスペーサーを用いて行われる一例を示す図である。
図3】間隔が50μmで保持された貼り合わせウェーハについてサファイアウェーハ側から撮影した写真である。
図4】間隔が3mmで保持された貼り合わせウェーハについてサファイアウェーハ側から撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で用いるドナーウェーハとしては、単結晶シリコンウェーハ等が挙げられ、例えば、チョクラルスキ法により育成された一般に市販されているものであり、その導電型や比抵抗率等の電気特性値や結晶方位や結晶径は、本発明の方法で製造されるSOIウェーハが供されるデバイスの設計値やプロセス又は製造されるデバイスの表示面積等に依存して適宜選択されてよい。
必要に応じて、ドナーウェーハとして、表面又は表面全体に酸化膜を形成したシリコンウェーハを用いてもよい。酸化膜は、一般的な熱酸化法により形成することができる。一般的には、酸素雰囲気又は水蒸気雰囲気で、常圧下で、800〜1100℃で熱処理することによって得られるものである。酸化膜の厚さは、好ましくは50〜500nmである。これはあまり薄いと、酸化膜厚の制御が難しく、またあまり厚いと時間が掛かりすぎるためである。
本発明で用いるハンドルウェーハとしては、好ましくは、石英、ガラス、又はサファイアのいずれかの材料からなるものを挙げることができる。ハンドルウェーハは、使用する前に予めRCA洗浄等の洗浄をしておくことが好ましい。
なお、上述したようなドナーウェーハとハンドルウェーハの熱膨張係数の差は大きく、例えば、シリコンと石英の熱膨張係数の差は2.0×10−6/K、シリコンとサファイアの熱膨張係数の差は3.2×10−6/Kである。本発明は、これらの組み合わせに限定されるものではなく、組み合わせる物質が同じような熱膨張係数の差(2.0×10−6/K以上)を有していても適用できる。
【0014】
以下、本発明に係るSOIウェーハの製造方法について図1を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は、SOIウェーハの製造方法の工程の一例を示す図である。
まず、ハンドルウェーハ11と、ドナーウェーハとしてシリコンウェーハ12を用意する。次に、シリコンウェーハ12又はハンドルウェーハ11のうちどちらか一方のウェーハを加熱器具13の上面に載置することによって100〜400℃に加熱する。図1(A)では、ハンドルウェーハ11を加熱器具13の上面に載置する場合を例にとり示している。
加熱器具13は、所望の温度までウェーハを加熱することができるものであればよく、例えば、ホットプレート等が挙げられる。
加熱温度は、好ましくは100〜400℃、より好ましくは200〜400℃である。例えば、ハンドルウェーハ11として石英又はガラスを用いた場合には、好ましくは100〜400℃、より好ましくは200〜400℃であり、ハンドルウェーハ11としてサファイアを用いた場合には、好ましくは100〜300℃、より好ましくは200〜300℃である。このような加熱温度であれば、シリコンウェーハ12とハンドルウェーハ11の接合強度を高めることができ、後述する貼り合わせる工程の後に貼り合わせたウェーハを室温に戻す際、貼り合わせたウェーハが破損する恐れが少ない。
【0015】
ここで、加熱する前に、シリコンウェーハ12、ハンドルウェーハ11のうちどちらか一方又は両方の表面に、表面活性化処理を施してもよい。この表面活性化処理を施すことにより、後述する貼り合わせる工程の直後の貼り合わせウェーハの接合強度を高めることができる。
表面活性化処理は、オゾン水処理、UVオゾン処理、イオンビーム処理、又はプラズマ処理等が挙げられる。
プラズマで処理をする場合、例えば、チャンバ中にRCA洗浄等の洗浄をしたシリコンウェーハ及び/又はハンドルウェーハを載置し、プラズマ用ガスを減圧下で導入した後、100W程度の高周波プラズマに5〜10秒程度さらし、表面をプラズマ処理する。プラズマ用ガスとしては、シリコンウェーハを処理する場合、表面を酸化する場合には酸素ガスのプラズマ、酸化しない場合には水素ガス、アルゴンガス、窒素ガス又はこれらの混合ガスあるいは水素ガスとヘリウムガスの混合ガスを用いることができる。ハンドルウェーハを処理する場合はいずれのガスでもよい。プラズマで処理することにより、シリコンウェーハ及び/又はハンドルウェーハの表面の有機物が酸化して除去され、さらに表面のOH基が増加し、活性化する。
オゾン水で処理する場合には、例えば、オゾンを10mg/L程度溶存した純水にウェーハを浸漬することで実現できる。
UVオゾンで処理をする場合は、オゾンガス、もしくは大気より生成したオゾンガスにUV光(例えば、波長185nm)を照射することで行うことが可能である。
イオンビームで処理する場合には、例えば、スパッタ法のようにウェーハの表面をアルゴンなどの不活性ガスのビームで高真空下において処理することにより、表面の未結合手を露出させ、結合力を増すことが可能である。
オゾン水処理やUVオゾン処理などでは、シリコンウェーハまたはハンドルウェーハの表面の有機物をオゾンにより分解し、表面のOH基を増加させることによって活性化を行う。一方、イオンビーム処理やプラズマ処理などでは、ウェーハの表面の反応性の高い未結合手(ダングリングボンド)を露出させることによって、もしくはその未結合手にOH基が付与されることによって活性化を行う。
表面の活性化は、親水性の程度(濡れ性)を見ることによって確認ができる。具体的には、ウェーハの表面に水をたらし、その接触角(コンタクトアングル)を測ることによって簡便に測定できる。
【0016】
次に、図1(B)に示すように、他方のウェーハ(シリコンウェーハ12)をハンドルウェーハ11から一定の間隔をおいて接触させずに該ハンドルウェーハ11の上方で保持する。シリコンウェーハ12は、ハンドルウェーハ11の熱(対流熱、放射熱)によって間接的に加熱される。
シリコンウェーハ12を保持する保持装置14は、好ましくは、ロボットアーム又は真空ピンセットである。シリコンウェーハ12をハンドルウェーハ11と接触させることなく、可能な限り近接させることが可能だからである。
シリコンウェーハ12とハンドルウェーハ11間の一定の間隔Lは、好ましくは、30μm〜2mmである。このような間隔であれば、シリコンウェーハ12はハンドルウェーハ11の熱によって十分加熱されるからである。
【0017】
図1(B)の保持装置14に換えて、図2(B−1)に示すように、ハンドルウェーハ11上にスペーサー17を配置してもよい。スペーサー17をシリコンウェーハ12とハンドルウェーハ11との間に介在させることによって、シリコンウェーハ12を保持する。
スペーサー17は、後述するシリコンウェーハ12を保持することができれば、形状と大きさは限定されず、ハンドルウェーハ11上のどの位置に配置されてもよく、例えば、ハンドルウェーハ11の両端に配置される。
スペーサー17の材質は、特に限定されるものではないが、熱伝導率の高いものが好ましく、例えば、SUSの金属片等が挙げられる。
次に、図2(B−2)に示すように、他方のウェーハ(シリコンウェーハ12)をスペーサー17上に載置し、ハンドルウェーハ11の上方で保持する。シリコンウェーハ12とハンドルウェーハ11との間にスペーサー17を介在させることによって、シリコンウェーハ12をハンドルウェーハ11と接触させることなく、シリコンウェーハ12は、ハンドルウェーハ11の熱(対流熱、放射熱)によって間接的に加熱することが可能である。
シリコンウェーハ12とハンドルウェーハ11間の一定の間隔Lは、好ましくは、30μm〜2mmである。このような間隔であれば、シリコンウェーハ12はハンドルウェーハ11の熱によって十分加熱されるからである。一定の間隔Lは、スペーサー17の厚さを変化させることによって、所望の間隔とすることができる。
【0018】
なお、上述した加熱、保持については、ハンドルウェーハ11を加熱しながらシリコンウェーハ12を保持しても、ハンドルウェーハ11を加熱し、その後シリコンウェーハ12を保持してもよい。
【0019】
次に、図1(C)に示すように、載置されたウェーハ(ハンドルウェーハ11)と保持されたウェーハ(シリコンウェーハ12)の温度差が50℃以下となったときに、載置されたウェーハの表面11sと保持されたウェーハの表面12sとを貼り合わせて貼り合わせウェーハ15を得る。
載置されたウェーハと保持されたウェーハの温度差は、各ウェーハの表面温度の差をいう。この温度差が50℃以下となったときに両ウェーハ11、12を貼り合わせれば、貼り合わせウェーハ15を室温に戻した際に、該ウェーハ15に反り及び局所的な変形が発生する可能性は低く、貼り合わせ面に気泡が導入される恐れが少ない。この温度差の下限値は、間隔Lの大きさに依存するが、Lは零でないため、この温度差の下限値も好ましくは零ではない。
加熱による歪みが、「加熱温度(T2)−貼り合わせ温度(T1)=加熱温度と貼り合わせ温度の差(ΔT)」に比例するため、後述する加熱の際に、貼り合わせウェーハ15が破損する可能性を低減することができる。
【0020】
次に、図1(D)に示すように、必要であれば、貼り合わせウェーハ15を100〜400℃に加熱する。上述した両ウェーハ11、12を貼り合わせた際の温度に応じて加熱することが必要となる場合や、より確実に貼り合わせ強度を高めるために加熱する場合もある。また、加熱時間は、加熱温度と材料の熱伝導率等に応じて決められ、例えば0.5〜10分の範囲から選択される。このように、貼り合わせウェーハ15を加熱することによって、シリコンウェーハ12とハンドルウェーハ11の貼り合わせの強度を高めることができる。また、このような温度での加熱であれば、異種材料であることに起因する熱膨張係数の差異による熱歪、ひび割れ、剥離等が発生する恐れが少ない。
【0021】
次に、図1(E)に示すように、加熱後の貼り合わせウェーハ15におけるシリコンウェーハ12の一部からなるシリコン薄膜12Bを剥離してハンドルウェーハ11上に転写する。
剥離転写方法は、特に限定されるものではないが、SiGen法、SOITEC法等が挙げられる。例えば、ドナーウェーハ(シリコンウェーハ)に、予め(上記図1(A)の前に)転写したい薄膜の厚さに相当する深さに水素イオン注入を施しておき、例えば機械的に水素イオン注入界面に沿ってシリコン薄膜を剥離し、ハンドルウェーハ上に転写することができる。
【0022】
以上のような工程により、図1(F)に示すような、SOIウェーハ16を得ることができる。
以上説明したように、本発明のSOIウェーハの製造方法によれば、ウェーハの反り及び変形を抑制することができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例、比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
ハンドルウェーハとして6インチのサファイアウェーハを用い、該サファイアウェーハを加熱プレート上に載置し、250℃で加熱した。次に、サファイアウェーハ上に、スペーサーとして幅2mm、長さ3mmの金属片を配置した。次に、このスペーサー上に、シリコンウェーハを載置し、サファイアウェーハの上方で保持した。シリコンウェーハとサファイアウェーハ間の間隔を、スペーサーの厚さによって変化させ、各間隔によるシリコンウェーハの温度を測定した。シリコンウェーハの温度が一定となる時間は、間隔によらず、3分程度であった。シリコンウェーハの温度は、シリコンウェーハに取り付けた熱電対によって測定された。当該加熱温度で3分間処理した。測定結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
また、間隔が50μm、3mmで保持されたウェーハを貼り合わせた。得られた貼り合わせウェーハについてサファイアウェーハ側から撮影した写真を、それぞれ図3及び図4に示す。
【0027】
表1より、間隔が30μm〜2mmの範囲では、貼り合わせ面に気泡は発生しなかった。また、この範囲におけるシリコンウェーハとサファイアウェーハの温度差は50℃以下であった。
図3では、気泡の発生は確認されなかったが、図4では、気泡aの発生が確認された。
【0028】
(実施例2)
サファイアウェーハを300℃で加熱した以外は、実施例1と同様に行った。測定結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
表2より、間隔が30μm〜2mmの範囲では、貼り合わせ面に気泡は発生しなかった。また、この範囲におけるシリコンウェーハとサファイアウェーハの温度差は50℃以下であった。
【符号の説明】
【0031】
11 ハンドルウェーハ
11s 表面
12 シリコンウェーハ
12s 表面
12B シリコン薄膜
13 加熱器具
14 保持装置
15 貼り合わせウェーハ
16 SOIウェーハ
17 スペーサー
a 気泡
図1
図2
図3
図4