(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの裏面研削時に適用される半導体ウエハ加工用テープとして半導体ウエハに供給され、さらに、半導体回路をフェイスダウンボンディング方式で回路基板に接続する際の回路部材接続用接着剤として適用される接着フィルムとして、下記、特許文献1及び2に記載の半導体装置製造方法が知られている。
【0003】
特許文献1記載の製造方法では、基材フィルム上に粘着剤層と接着剤層を有してなるウエハ加工用テープが準備される。そして、この加工用テープが半導体ウエハの突出電極が形成された面に張り合わされた状態で半導体ウエハのバックグラインド処理が行われる。
【0004】
一方、特許文献2記載の製造方法では、合成樹脂フィルム上に熱硬化性樹脂層を設けてなる半導体チップ接着用シートが製造され、半導体チップのバンプ電極面に熱硬化性樹脂層を圧着し、合成樹脂フィルムを引き剥がして回路基板に接続が行われる。
【0005】
フリップチップ接続に用いる接着テープを半導体ウエハに貼り付けるには通常60〜90℃の加温が必要であるが、ウエハの裏面研削時に通常使用する薄化加工用の表面保護テープを半導体ウエハに貼り付けるには、それ程の高い温度を必要としない。
【0006】
そのため、従来、表面保護テープを半導体ウエハに貼り付けていた装置には貼り付け機構部分への加熱機構がなく、装置の各種部品が耐熱構造を持っていないことがあるため、従来の表面保護テープ貼付け装置を転用できないという問題がある。
【0007】
積層型のウエハ薄化加工兼用半導体用接着テープのように、異なる機能を有するテープ同士には硬さなどの物理特性に差がある。ウエハ裏面の平坦な研削を可能とする表面保護テープと、フリップチップ実装を用いた半導体装置の耐はんだリフロー性を満たすことを特長とする接着テープについてもそれは例外ではない。
【0008】
しかしながら、このように物理特性に差がある積層テープを一度に切断する場合には、バリやひげと呼ばれる切断屑が発生し易く、それらの切断屑を放置したままウエハの裏面研削を始めた場合には、ウエハの破損が生じたり、ウエハの均一・平坦な薄化加工を妨げたりといった問題や切断位置がずれ易いといった問題がある。
【0009】
ウエハの表面や裏面に貼り付ける各種テープには、貼り付け後にウエハ形状に沿ってテープを切断するものがあるが、本件の積層型のウエハ薄化加工兼用半導体用接着テープのように、ウエハへの貼り付け温度が60℃を超えるようなテープの場合は、ウエハへの貼り付け直後にテープを切断することが多く、テープの切断刃やウエハ及びテープが熱をもっていることがある。
【0010】
そのような場合、切断後に廃棄すべきテープとウエハに貼り付いているテープが再融着するなどの問題や切断刃とテープが融着するといった問題がある。
各種テープを切断する際に用いる刃は必ず磨耗する。
【0011】
また、本発明に係るテープを切断する際に用いる刃は、テープとの融着を防ぐために表面の特殊加工をしている可能性がある。
本発明に係るテープを切断する際に用いる刃のようなものには、磨耗によりある頻度での交換が必要だが、高価なものが多いという問題がある。
【0012】
表面保護テープの従来のウエハ表面への貼り付け方法では、薄いウエハとテープ切断のための刃が接触しウエハが金属汚染するのを防ぐために、ウエハよりテープを大きめに切断する場合がある。
【0013】
上記のような切断を行い、かつウエハ裏面にウエハ切断のためのダイシングテープを貼付けた場合、ウエハ外周よりはみ出ている表面保護テープがダイシングテープと貼りつき、表面保護テープの安全な剥離を妨げるという問題が生じる。
【0014】
ウエハと同形状、同程度の大きさに加工された積層テープの場合、どちらか片方が反物状につながっているか、上下面の片方又は両方にサポートテープがない限り、その後のプロセスでウエハに貼り付ける予定のテープ部分は独立していることとなる。その場合、反物状テープのウエハへの貼付けを想定している既存の装置では、その積層テープがハンドリングできないという問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、ウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープをウエハに貼り付ける際に、既存のインライン装置を転用することが可能であり、またテープの切断の際に発生するウエハと切断刃の接触、切断屑のウエハ汚染、切断位置のずれを抑制することができ、かつ粘着剤層を有する基材テープの剥離時のウエハ破損を防ぐことが可能な、半導体装置の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、回路面から突出する複数の突出電極を有する半導体ウエハを準備する工程と、粘着剤層を有する基材フィルムと接着フィルムとを有するウエハ薄化加工兼用半導体用接着テープを、前記接着フィルム側を前記半導体ウエハの回路面に向けた状態で前記半導体ウエハに貼り付けることにより、前記複数の突出電極の間を埋めるように接着フィルムの層が形成された積層体とする工程と、前記積層体の基材フィルム側から圧力を加えつつ、前記半導体ウエハを裏面側からバックグラインダによって研磨し、前記半導体ウエハの厚みを薄くする工程と、前記半導体ウエハの回路面側に前記ウエハ薄化加工兼用半導体用接着テープが貼付けられたままの状態で、該ウエハ薄化加工兼用半導体用接着テープの積層体の裏面側にダイシングテープを貼付ける工程と、前記基材フィルムをウエハ薄化加工兼用半導体用接着テープから剥離する工程と、前記半導体ウエハと前記接着フィルムとを前記接着フィルム側からダイシングし、複数の接着フィルム付半導体チップとする工程と、前記接着フィルム付半導体チップを前記ダイシングテープから持ち上げる工程と、前記ダイシングテープから分離された前記接着フィルム付半導体チップを半導体装置の一部となる支持体の上に実装する工程と、を有し、前記実装する工程において、100〜250℃の温度で0.1〜30秒の間加熱圧着をすることにより、前記接着フィルム付半導体チップと前記支持体との間を接続する、半導体装置の製造方法に関する。
【0018】
また、本発明は、前記粘着剤層は、放射線照射により粘着力が低下する、半導体装置の製造方法に関する。
【0019】
また、本発明は、前記基材フィルムと前記接着フィルムとの両方又は片方が、前記半導体ウエハと同形状及び同程度の大きさである、半導体装置の製造方法に関する。
【0020】
本発明は、粘着剤層を有する基材フィルムと、接着剤であるフィルムを貼り合せた積層型のウエハ薄化加工兼用半導体用接着テープであって、基材フィルムと積層された接着フィルムの両方又は片方が、半導体ウエハと同形状及び同程度の大きさであるウエハ薄化加工兼用半導体用接着テープに関する。
【0021】
また、本発明は、半導体用接着テープが、上下面にサポートテープを有する上記のウエハ薄化加工兼用半導体用接着テープに関する。
また、本発明は、半導体用接着テープが、サポートテープを有し、その前後又は左右に貼り付けるときの位置合わせ用の目印を有する上記のウエハ薄化加工兼用半導体用接着テープに関する。
【0022】
また、本発明は、基材フィルムと積層された接着フィルムの両方又は片方が、半導体ウエハと同形状及び同程度の大きさであり、かつ半導体ウエハと同形状及び同程度の大きさのテープが、打ち抜き加工、切断加工、塗工することにより得られる上記のウエハ薄化加工兼用半導体用接着テープに関する。
【0023】
また、本発明は、半導体用接着テープが、ウエハの裏面研削時にはウエハ表面の回路側に貼り付けられ、裏面研削後には、粘着剤層を有する基材フィルムと接着剤であるフィルムの間で剥離することのできる上記のウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープに関する。
【0024】
また、本発明は、接着剤の層が、ウエハ表面の回路側に張り付いた状態で半導体チップの大きさに分割され、その後リードフレーム、半導体パッケージ基板又は別の半導体チップのような、半導体装置の一部となる支持体に加熱接着したものである上記のウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープに関する。
【0025】
また、本発明は、接着剤の層が、ウエハ表面の回路側に張り付いた状態で別の半導体ウエハのような半導体装置の一部となる支持体に加熱接着したものである上記のウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープに関する。
【0026】
また、本発明は、前記半導体チップと半導体装置の一部となる支持体が、接着剤により電気的、物理的に接続した上記のウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープに関する。
また、本発明は、接着剤に含む導電性を有する粒子によって電気的、物理的に接続可能にした上記のウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープに関する。
【0027】
さらに、本発明は、上記で得られるウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープの接着剤であるフィルム側を回路面側に向けた状態で、ウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープを半導体ウエハの回路面に貼り付けた後、圧力を加えつつ、半導体ウエハを裏面側から研磨することを特徴とするウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープの半導体ウエハ表面への貼り付け方法に関する。
【0028】
本発明に係るウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープは、接着剤であるフィルムが出荷時に予めウエハ形状に製造されているため、ウエハにテープを貼り付けるためにテープを切断する工程は不要である。
【0029】
そのため、切断屑によるウエハ面の汚染や切断刃の磨耗、切断刃及びテープ付ウエハと切断屑の融着、さらには切断刃とウエハの接触を起因とするウエハの金属汚染などが発生しない。
【0030】
本発明に係るウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープは、粘着剤層を有する基材フィルム又は接着剤であるフィルムの片方が、出荷時に予めウエハ形状に製造されている。
【0031】
そのため、テープを切断する工程で、お互いのフィルムの物理特性の差を起因とした切断屑や切断位置のずれ、切断時のフィルムの押し込みを起因とする、接着剤層・粘着材層間の剥離不具合は発生しにくい。
【0032】
本発明に係るウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープの形状が、ウエハ形状よりやや小さい場合、ウエハに貼り付けた後、ウエハの裏面側へのテープのはみ出しはない。その場合、ダイシングテープをウエハの裏面側に貼り付けたとしても、ダイシングテープと本発明に係るウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープ同士が、ウエハを間に挟みこんで貼り付くことがない。
【0033】
そのため、ダイシングテープの貼付け後に、粘着剤層を有する基材フィルムを接着剤であるフィルムを残してウエハから剥がそうとしたとき、ウエハの破損などを生じる可能性が低くなる。
【0034】
本発明に係るウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープをウエハに貼り付けるためには、既存の表面保護テープ貼付け装置の貼付け部分に加温機構を導入するか、既存のダイボンディングフィルムの貼付け装置を転用する必要がある。
【0035】
後者の場合、例えば、(株)ディスコ製のDFM−2700といった装置での貼り付けが可能であるため、テープの貼付け装置(本発明に係るウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープの貼付け)→バックグラインダ(ウエハの薄化加工)→テープの貼付け装置(粘着剤層を有する基材フィルムの剥離、ダイシングテープの貼付け等)といったプロセスを自動で行える可能性がある。
【0036】
その効果は、本発明に係るウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープの打ち抜き形状の前後又は左右に、ウエハへの貼り付けにおける位置合わせのための目印がついていて、装置がその目印を読み取るための機構を備えていても同様である。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、ウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープをウエハに貼り付ける際に、既存のインライン装置を転用することができ、さらにはテープの切断の際に発生するウエハと切断刃の接触、切断屑のウエハ汚染、切断位置のずれを抑制することができる。
【0038】
また、ダイシングテープをウエハの裏面側に貼り付けた場合、ウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープをウエハ形状より大きく切断することや、ウエハへのテープの貼付けずれによって生じる、ウエハを間に挟みこんでのダイシングテープとウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープの接着を防ぐことができる。その結果、粘着剤層を有する基材テープの剥離時のウエハ破損を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を引用して本発明に係るウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープの打ち抜き形状やウエハへの貼付け方法について詳細に説明する。
【0041】
まず、
図1に示す半導体ウエハ10を用意する。半導体ウエハ10は、半導体プロセスにより回路が形成された回路面(主面)A1と、回路面A1の反対側の面である裏面A2を有している。
【0042】
そして、半導体ウエハ10の回路面A1には、回路面A1から突出する突出電極A3が複数形成されている。なお、このときの半導体ウエハ10の厚さは、バックグラインド前の状態であり、通常約550μm〜750μmである。
【0043】
さらに、
図2に示すウエハ薄化加工兼用半導体用接着テープ(以下、半導体用接着テープという)20、21、22、23、24及び25を用意する。それぞれは、粘着剤層B2を有する基材フィルムB1と接着フィルムB3を有しており、半導体用接着テープ21はその上下にウエハ薄化加工兼用半導体用接着テープ上下のサポートテープ(以下、サポートテープという)B4及びB5を有しており、半導体用接着テープ22は、接着フィルムB3の中心部がウエハ形状に打ち抜かれており、半導体用接着テープ23は半導体用接着テープ22に加えてそのテープの両端に接着フィルムB3が残っている。
【0044】
半導体用接着テープ24は、基材フィルムB1、粘着剤層B2及び接着フィルムB3が打ち抜かれており、半導体用接着テープ25は半導体用接着テープ24に加えてそのテープの両端に基材フィルムB1、粘着剤層B2及び接着フィルムB3が残っている。またウエハ形状に製造した場合の直径b1はウエハの直径とほとんど等しいか、それよりも大きくても小さくても良く、粘着剤層B2を有する基材フィルムB1と接着フィルムB3の間に差があっても良い。
【0045】
そして、接着フィルムB3側を回路面A1に向けた状態で、半導体用接着テープ20〜25を半導体ウエハ10の回路面A1に貼り付ける。この半導体用接着テープ20〜25の半導体ウエハ10への貼付けは、サポートテープB5を剥がした後に行い、必要に応じてはサポートフィルムB4を剥がした後でも良い。
【0046】
また、半導体用接着テープ22〜25のように打ち抜き加工がしてあるテープの場合は位置合わせのために前後左右に目印があっても良い。これらの貼付けは、例えば、ラミネートロールを用いて行うことができる。
【0047】
このとき、基材フィルムB1が所定の圧力で加圧されることで、突出電極A3同士の間を埋めるように接着フィルムB3の層が形成される。これにより、
図3に示すように、回路面A1上には突出電極A3が埋め込まれた構造の、ウエハ薄化加工兼用半導体用接着テープとウエハの貼り合せ品(サポートテープ付)30又はウエハ薄化加工兼用半導体用接着テープとウエハの貼り合せ品(サポートテープなし、薄化前)31が形成される。
【0048】
上記のような接着フィルムB3の層は、一般に、「NCF(Non Conductive Film)」や「ACF(Anisotropic Conductive Film)」などと呼ばれる場合がある。また基材フィルムB1への圧力の加圧はサポートテープB4越しに行っても良いが、バックグラインド時にはサポートテープB4は剥がし、その結果どちらの場合もウエハ加工テープ33のみが半導体ウエハ10と貼り合わされていることとなる。
【0049】
続いて、
図3のウエハ薄化加工兼用半導体用接着テープとウエハの貼り合せ品(サポートテープなし、薄化前)31に示されるように、半導体ウエハ10と基材フィルムB1、粘着剤層B2及び接着フィルムB3の積層品からなるウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープウエハ加工テープ33を貼り合せたものに、基材フィルムB1から圧力を加えつつ、半導体ウエハ10を裏面A2側からバックグラインダによって研磨し、半導体ウエハ10の厚みを薄くする。
【0050】
具体的には、半導体ウエハ10の厚みが元々の半導体ウエハ10の厚みより薄くなる(1μm〜550μm程度)ように、半導体ウエハ10の研磨を行う(研磨工程)。ここでは、上記ウエハ加工テープ33(基材フィルムB1、粘着剤層B2及び接着フィルムB3の積層品)が半導体ウエハ10の回路面A1側に貼付けられているので、均一に圧力を加えることができる。
【0051】
その結果、研磨により半導体ウエハ10の裏面A2を平坦化できる。また基材フィルムB1と粘着剤層B2により、バックグラインド時の半導体ウエハ10の破損を抑制することができる。このようにして、薄化された半導体ウエハ10とその回路面A1に貼り付けられたウエハ加工テープの積層体32が製作される。
【0052】
続いて、
図4に示すように、半導体ウエハ10の回路面A1側にウエハ加工テープが貼付けられたままの状態で、このウエハ加工テープの積層体32の裏面A2側及びダイシングフレーム41の下縁41Aにダイシングテープ42を貼付ける。ここで、ダイシングフレーム41は、円環状の金属製部材又はプラスチック製であり、半導体ウエハ及びウエハ加工テープの積層体32のダイシング時にそれらの固定治具として用いられる。
【0053】
ダイシングフレーム41は、その内径が半導体ウエハ10の外形よりも大きくなっており、半導体ウエハ10及びウエハ加工テープの積層体32を囲むようにダイシングテープ42上に配置される。この場合、半導体ウエハ及びウエハ加工テープの積層体32は、回路面A1側又は裏面A2側のどちらを表面としてダイシングテープに貼り付けられていても良い。
【0054】
続いて、粘着剤層B2を有する基材フィルムB1をウエハ加工テープの積層体32から剥離させる。この時、粘着剤層B2と接着フィルムB3の間の接着力を低下させるために放射線(例えば紫外線)照射により粘着剤層B2の粘着力を低下させても良い。その後、基材フィルムB1には
図5のように剥離用のテープ51を貼付け、それを180°方向に引っ張ることで粘着剤層B2と接着フィルムB3間でテープを剥離させることができる。
【0055】
続いて、
図6のように半導体ウエハ10と接着フィルムB3の積層体61をダイシングブレード62によってダイシングし、複数の接着剤であるフィルム付半導体チップ63とする。この場合のダイシングの手法はダイシングブレードを使っても、レーザー光を使ってもプラズマエッチングによっても良い。
【0056】
このとき、半導体チップの大きさは例えば0.1mm〜30.0mm×0.1mm〜30.0mmとなり、半導体チップあたりの突出電極A3の数は1つより大きい。個片化された接着剤であるフィルム付の半導体チップ63はダイシング後、一つ一つダイシングテープ42から持ち上げる。
【0057】
ダイシングテープ42から分離された、接着剤であるフィルム付の半導体チップ63は、
図7のように電極をもつ実装基板や別の半導体チップなど、半導体装置の一部となる支持体の上に実装される。その場合、それらの半導体装置の一部となる支持体71の半導体チップが搭載される部分には、実装される半導体チップの突出電極A3と同数の電極又は配線72が形成されている。
【0058】
実装工程では、突出電極A3と電極又は配線72が対向するように半導体チップを配置し、100〜250℃の温度で0.1〜30秒の間加熱圧着をする。その結果、突出電極A3と電極又は配線72が直接又は接着フィルムB3内に含まれる導電粒子を介して、電気的にも物理的にも接続する。
【0059】
また、接着剤であるフィルム付の半導体チップ63及び半導体装置の一部となる支持体71は接着フィルムB3によって接着される。なお、実装のための温度及び時間は、加熱工程を別に設けることで低温・短時間にすることもできる。
【0060】
なお、上記のようなチップ個片化の工程は、上記に述べた順序で行なう必要はなく、ダイシングの切り込み深さを半導体ウエハ10の回路面A1と裏面A2の間に制御したウエハについて、ウエハ薄化加工兼用の半導体用接着テープウエハ加工テープを貼り付けた後、裏面A2から研削することで行なっても良い。その場合、基材フィルムB1、粘着剤層B2及び接着フィルムB3層の間の剥離は行なわなくともよい。
【0061】
前述、接着剤フィルムB3は、例えば、キャリアフィルムや、基材フィルムB1に設置した粘着剤層B2上に、接着剤組成物を塗布した後に乾燥することによって形成される。接着剤フィルムB3は、例えば常温において固体である。接着剤フィルムB3は、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂は、熱により三次元的に架橋することによって硬化する。
【0062】
上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、シアノアクリレート樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フラン樹脂、レゾルシノール樹脂、キシレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シロキサン変性エポキシ樹脂、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂、アクリレート樹脂等が挙げられる。これらは単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0063】
接着剤フィルムB3は、硬化反応を促進させるための硬化剤を含んでもよい。
また、接着剤フィルムB3は、高反応性及び保存安定性を両立させるために、潜在性の硬化剤を含むことが好ましい。
【0064】
接着剤フィルムB3は、熱可塑性樹脂を含んでもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリブタジエン、アクリロニトリルブタジエン共重合体(NBR)、アクリロニトリルブタジエンゴムスチレン樹脂(ABS)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0065】
これらは単独又は2種以上を併用して使用することができる。これらの中でも、半導体ウエハ10への貼付性を確保するために室温付近に軟化点を有する熱可塑性樹脂が好ましく、グリシジルメタクリレートなどを原料に含むアクリル酸共重合体が好ましい。
【0066】
接着剤フィルムB3には、低線膨張係数化のためのフィラー(無機微粒子)を添加してもよい。このようなフィラーとしては、結晶性を有するものであっても、非結晶性を有するものであってもよい。接着剤フィルムB3の硬化後の線膨張係数が小さいと、熱変形が抑制される。
【0067】
よって、半導体ウエハ10から製造された半導体チップが配線基板に搭載された後も、突出電極A3と配線基板の配線との電気的な接続を維持することができるので、半導体チップと配線基板とを接続することによって製造される半導体デバイスの信頼性を向上させることができる。
【0068】
接着剤フィルムB3は、カップリング剤等の添加剤を含んでもよい。これにより、半導体チップと配線基板との接着性を向上させることができる。
接着剤フィルムB3内には、導電粒子を分散させてもよい。この場合、突出電極A3の高さのバラツキによる悪影響を低減することができる。
【0069】
また、配線基板がガラス基板などのように圧縮に対して変形し難い場合においても接続を維持することができる。
さらに、接着剤フィルムB3を異方導電性の接着剤層とすることができる。
【0070】
接着剤フィルムB3の厚みは、接着剤フィルムB3が半導体チップと配線基板との間を十分に充填できる厚みであることが好ましい。通常、接着剤フィルムB3の厚みが、突出電極A3の高さと配線基板の配線の高さとの和に相当する厚みであれば、半導体チップと配線基板との間を十分に充填できる。
【0071】
前述のダイシングテープ42は、基材フィルムと、基材フィルムの表面に形成された粘着層とを有している。基材フィルムは、放射線透過性であることが好ましく、具体的には、通常、プラスチック、ゴムなどを用いることができる。
【0072】
基材フィルムは、放射線を透過する限りにおいて特に制限はないが、紫外線照射によって放射線硬化性粘着剤を硬化させる場合には、光透過性の良いものを選択することができる。
【0073】
このような基材フィルムとして選択し得るポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体又は共重合体又はこれらの混合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のエンジニアリングプラスチック、ポリウレタン、スチレン−エチレン−ブテン又はペンテン系共重合体、ポリアミド−ポリオール共重合体等の熱可塑性エラストマー及びこれらの混合物を列挙することができる。
【0074】
なお、素子間隙を大きくするためには、ネッキング(基材フィルムを放射状延伸したときに起こる力の伝播性不良による部分的な伸びの発生)の極力少ないものが好ましく、ポリウレタン、分子量及びスチレン含有量を限定したスチレン−エチレン−ブテン又はペンテン系共重合体などを例示することができ、ダイシング時の伸び又はたわみを防止するには架橋した基材フィルムを用いると効果的である。
【0075】
基材フィルムの厚みは、強伸度特性、放射線透過性の観点から通常30μm〜300μmが適当である。なお、基材フィルムの粘着層を塗布する側と反対側表面をシボ加工又は滑剤コーティングすると、ブロッキング防止、ダイシングテープの放射状延伸時のダイシングテープと治具との摩擦を減少することによる基材フィルムのネッキング防止などの効果があるので好ましい。
【0076】
一方、粘着剤層は、本発明において、分子中にヨウ素価0.5〜20の放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する化合物(A)と、ポリイソシアネート類、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂及びエポキシ樹脂から少なくとも1種選ばれる化合物(B)とを含むアクリル系粘着剤からなる。なお、ここで放射線とは、紫外線のような光線又は電子線などの電離性放射線をいう。
【0077】
粘着剤層の主成分の1つである化合物(A)について説明する。
化合物(A)の放射線硬化性炭素−炭素二重結合の導入量は、ヨウ素価で0.5〜20、好ましくは0.8〜10である。ヨウ素価が0.5以上であると、放射線照射後の粘着力の低減効果を得ることができ、ヨウ素価が20以下であれば、放射線照射後の粘着剤の流動性が十分で、延伸後の素子間隙を十分得ることができるため、ピックアップ時に各素子の画像認識が困難になるという問題が抑制できる。さらに、化合物(A)そのものに安定性があり、製造が容易となる。
【0078】
上記化合物(A)は、ガラス転移点が−70℃〜0℃であることが好ましく、−66℃〜−28℃であることがより好ましい。ガラス転移点(以下、「Tg」ともいう)が−70℃以上であれば、放射線照射に伴う熱に対する耐熱性が十分であり、0℃以下であれば、表面状態が粗いウエハにおけるダイシング後の素子の飛散防止効果が十分得られる。
【0079】
上記化合物(A)はどのようにして製造されたものでもよいが、例えば、アクリル系共重合体又はメタクリル系共重合体などの放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有し、かつ、官能基をもつ化合物(I)と、その官能基と反応し得る官能基をもつ化合物(II)とを反応させて得たものが用いられる。
【0080】
このうち、前記の放射線硬化性炭素−炭素二重結合及び官能基を有する化合物(I)は、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルなどの放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する単量体(I−1)と、官能基を有する単量体(I−2)とを共重合させて得ることができる。
【0081】
単量体(I−1)としては、炭素数6〜12のヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、デシルアクリレート又は炭素数5以下の単量体である、ペンチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート又はこれらと同様のメタクリレートなどを列挙することができる。
【0082】
単量体(I−1)として、炭素数の大きな単量体を使用するほどガラス転移点は低くなるので、所望のガラス転移点のものを作製することができる。
また、ガラス転移点の他、相溶性と各種性能を上げる目的で酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等の炭素−炭素二重結合をもつ低分子化合物を配合することも単量体(I−1)の総重量の5重量%以下の範囲内で可能である。
【0083】
単量体(I−2)が有する官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、環状酸無水基、エポキシ基、イソシアネート基等を挙げることができ、単量体(I−2)の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、けい皮酸、イタコン酸、フマル酸、フタル酸、2−ヒドロキシアルキルアクリレート類、2−ヒドロキシアルキルメタクリレート類、グリコールモノアクリレート類、グリコールモノメタクリレート類、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、アリルアルコール、N−アルキルアミノエチルアクリレート類、N−アルキルアミノエチルメタクリレート類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸、無水フタル酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部を水酸基又はカルボキシル基及び放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する単量体でウレタン化したものなどを列挙することができる。
【0084】
化合物(II)において、用いられる官能基としては、化合物(I)、即ち単量体(I−2)の有する官能基が、カルボキシル基又は環状酸無水基である場合には、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基等を挙げることができ、水酸基である場合には、環状酸無水基、イソシアネート基等を挙げることができ、アミノ基である場合には、エポキシ基、イソシアネート基等を挙げることができ、エポキシ基である場合には、カルボキシル基、環状酸無水基、アミノ基等を挙げることができ、具体例としては、単量体(I−2)の具体例で列挙したものと同様のものを列挙することができる。
【0085】
化合物(I)と化合物(II)との反応において、未反応の官能基を残すことにより、酸価又は水酸基価などの特性に関して、本実施形態で規定するものを製造することができる。
【0086】
上記の化合物(A)の合成において、反応を溶液重合で行う場合の有機溶剤としては、ケトン系、エステル系、アルコール系、芳香族系のものを使用することができるが、中でもトルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、ベンゼン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン等の、一般にアクリル系ポリマーの良溶媒で、沸点60〜120℃の溶剤が好ましく、重合開始剤としては、α、α’−アゾビスイソブチルニトリルなどのアゾビス系、ベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物系などのラジカル発生剤を通常用いる。
【0087】
この際、必要に応じて触媒、重合禁止剤を併用することができ、重合温度及び重合時間を調節することにより、所望の分子量の化合物(A)を得ることができる。
また、分子量を調節することに関しては、メルカプタン、四塩化炭素系の溶剤を用いることが好ましい。なお、この反応は溶液重合に限定されるものではなく、塊状重合、懸濁重合など別の方法でも差し支えない。
【0088】
以上のようにして、化合物(A)を得ることができるが、本実施形態において、化合物(A)の分子量は、30万〜100万程度が好ましい。30万未満では、放射線照射による凝集力が小さくなって、半導体ウエハ10をダイシングするときに、素子のずれが生じやすくなり、画像認識が困難となることがある。この素子のずれを、極力防止するためには、分子量が、40万以上である方が好ましい。また分子量が100万を超えると、合成時及び塗工時にゲル化する可能性がある。なお、本発明における分子量とは、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0089】
なお、化合物(A)が、水酸基価5〜100となるOH基を有すると、放射線照射後の粘着力を減少することによりピックアップミスの危険性をさらに低減することができるので好ましい。
また、化合物(A)が、酸価0.5〜30となるCOOH基を有することが好ましい。
【0090】
ここで、化合物(A)の水酸基価が低すぎると、放射線照射後の粘着力の低減効果が十分でなく、高すぎると、放射線照射後の粘着剤の流動性を損なう傾向がある。また酸価が低すぎると、テープ復元性の改善効果が十分でなく、高すぎると粘着剤の流動性を損なう傾向がある。
【0091】
次に、粘着剤層のもう1つの主成分である化合物(B)について説明する。
化合物(B)は、ポリイソシアネート類、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂及びエポキシ樹脂から少なくとも1種選ばれる化合物であり、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0092】
この化合物(B)は架橋剤として働き、化合物(A)又は基材フィルムと反応した結果できる架橋構造により、化合物(A)及び(B)を主成分とした粘着剤の凝集力を、粘着剤塗布後に向上することができる。
【0093】
ポリイソシアネート類としては、特に制限がなく、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられる。具体的には、市販品として、コロネートLなどを用いることができる。
【0094】
また、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂としては、具体的には、市販品として、ニカラックMX−45(三和ケミカル社製、商品名)、メラン(日立化成工業(株)製)等を用いることができる。
さらに、エポキシ樹脂としては、TETRAD−X(登録商標、三菱化学(株)製)などを用いることができる。本実施形態においては、特にポリイソシアネート類を用いることが好ましい。
【0095】
化合物(B)の添加量としては、化合物(A)100重量部に対して0.1〜10重量部とすることが好ましく、0.4〜3重量部とすることがより好ましい。その量が0.1重量部未満では凝集力向上効果が十分でない傾向があり、10重量部を超えると粘着剤の配合及び塗布作業中に硬化反応が急速に進行し、架橋構造が形成されるため、作業性が損なわれる傾向がある。
【0096】
また、本発明において、粘着剤層には、光重合開始剤(C)が含まれていることが好ましい。粘着剤層の含まれる光重合開始剤(C)については特に制限はなく、従来知られているものを用いることができる。
【0097】
例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン類、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン等のアントラキノン類、2−クロロチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジル、2,4,5−トリアリ−ルイミダゾール二量体(ロフィン二量体)、アクリジン系化合物等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0098】
光重合開始剤(C)の添加量としては、化合物(A)100重量部に対して0.01〜5重量部とすることが好ましく、0.01〜4重量部とすることがより好ましい。
【0099】
さらに、本発明において用いられる放射線硬化性の粘着剤層には必要に応じて粘着付与剤粘、着調整剤、界面活性剤等又はその他の改質剤及び慣用成分を配合することができる。
粘着剤層の厚さについては特に制限はないが、通常2μm〜50μmである。