(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(II)フォトクロミック化合物が、インデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン骨格を有する化合物を含む請求項1に記載のフォトクロミック硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
先ず、本発明のフォトクロミック硬化性組成物に用いられる、(Ia)1分子中に(メタ)アクリル基を2〜4個有する多官能重合性単量体について説明する。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物において、(メタ)アクリル重合性単量体は、1分子中に(メタ)アクリル基を2〜4個有する多官能重合性単量体を主成分とする。該多官能重合性単量体としては、公知の重合性単量体、特に、プラスチックレンズに用いられる重合性単量体を使用することができる。これら多官能重合性単量体は、1分子中にメタクリル基及びアクリル基の両方を有する重合性単量体であってもよい。但し、重合性単量体の入手のし易さ、得られる硬化体が発揮する効果を考慮すると、本発明においては、1分子中に同じ官能基を有する重合性単量体を組み合わせて使用することが好ましい。つまり、1分子中にアクリル基を有する多官能重合性単量体と、1分子中にメタクリル基を有する多官能重合性単量体とを、場合により後述する単官能性単量体と組み合わせ、これら多官能重合性単量体を含む(メタ)アクリル重合性単量体において、メタクリル基のモル数とアクリル基のモル数とを特定の範囲とすることが好ましい。
【0009】
(1分子中に(メタ)アクリル基を2個有する多官能重合性単量体)
1分子中に(メタ)アクリル基を2個有する2官能重合性単量体としては、下記式(1)
【0011】
で示されるものを用いることができる。
上記式(1)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基である。
【0012】
また、式中、Aは、炭素数2〜20の2価の有機基である。具体的には、Aは、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ノニレン基等のアルキレン基;塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン基;炭素数1〜4のアルキル基で置換されたフェニレン基;非置換のフェニレン基;下記式
【0018】
(式中、
R
5、及びR
6は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、塩素原子、又は臭素原子であり、
c及びdは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、下記式
【0020】
で示される環は、ベンゼン環、又はシクロヘキサン環であり、下記式
【0022】
で示される環がベンゼン環であるときには、Xは、下記
【0024】
に示される何れかの基、あるいは下記式
【0028】
で示される環がシクロヘキサン環であるときには、Xは、下記
【0030】
で示される何れかの基である。)で示される基であることが好ましい。
【0031】
上記式(1)で示される、1分子中に(メタ)アクリル基を2個有する2官能重合性単量体は、得られるフォトクロミック硬化体の硬度を確保し、さらにフォトクロミック特性、特に発色濃度を改善する上で効果的である。
上記式の2官能重合性単量体は、通常、分子量の異なる分子の混合物の形で得られる。そのため、a及びbの値は平均値となる。上記の効果を得るためには、aは0〜20であり、bは0〜20でありそしてa+bは0〜20であることが好ましい。a+bは2〜15であることが特に好ましい。
なお、上記の(メタ)アクリル基を2個有する重合性単量体において、a+bが0以上8未満のときはアクリル基を有するものを、8以上15未満のときはアクリル基もしくはメタクリル基を有するものを、16以上のときはメタクリル基を有するものを使用することが、より高い効果を得る上で特に好ましい。
【0032】
好適に使用できる上記式(1)で示される2官能重合性単量体を具体的に例示すると、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(a+bが2.3のもの)、2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(a+bが2.6のもの)、2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(a+bが4のもの)、2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(a+bが10のもの)、2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(a+bが20のもの)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート(a+bが4のもの)、2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(a+bが3のもの)、2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(a+bが4のもの)、2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(a+bが10のもの)、2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(a+bが20のもの)等を挙げることができる。
これらのうち、前記式(1)において、Aが下記式
【0034】
で示される骨格を有するものが、特に高い発色濃度が得られるという点で好ましい。
【0035】
特に好適なものを例示すると、a+bが0以上8未満でアクリル基を有するものとしては、2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(a+bが4のもの)、a+bが8以上15未満でアクリル基を有するものとしては、2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(a+bが10のもの)、a+bが8以上15未満でメタクリル基を有するものとしては、2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(a+bが10のもの)、a+bが16以上でメタクリル基を有するものとしては2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(a+bが20のもの)が挙げられる。
これらの1分子中に(メタ)アクリル基を2個有する重合性単量体は単独でまたは2種以上混合して使用される。
さらに、1分子中に(メタ)アクリル基を2個有する他の好ましい重合性単量体として、下記式(2)
【0037】
で示されるものを用いることができる。
ここで、R
7、R
8、R
9、及びR
10は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基である。
上記式(2)で示される、1分子中に(メタ)アクリル基を2個有する2官能重合性単量体は、得られるフォトクロミック組成物をコーティング剤として使用した場合、得られるフォトクロミック硬化体のフォトクロミック特性、特に発色濃度を改善する上で効果的である。さらに、コーティング剤の粘度を調製する上でも効果的である。
【0038】
上記の2官能重合性単量体は、通常、分子量の異なる分子の混合物の形で得られる。そのため、e及びfの値は平均値となる。上記の効果を得るためには、eは0〜25であり、fは0〜25でありそしてe+fは、1〜25であることが好ましい。e+fは3〜15であることが特に好ましい。
なお、上記の1分子中に(メタ)アクリル基を2個有する重合性単量体において、e+fが1以上8未満のときはアクリル基を有するものを、8以上15未満のときはアクリル基もしくはメタクリル基を有するものを、16以上のときはメタクリル基を有するものを使用することが、より高い効果を得る上で特に好ましい。
【0039】
上記式(2)で示される(メタ)アクリル基を2個有する重合性単量体は、具体的には、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数(e+f)が9であり、平均分子量が536のもの)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数(e+f)が14であり、平均分子量が736のもの)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数(e+f)が23であり、平均分子量が1136のもの)、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(プロピレンオキシ基の平均繰返し数(e+f)が9であり、平均分子量が662のもの)、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数(e+f)が9であり、平均分子量が508のもの)、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数(e+f)が14であり、平均分子量が708のもの)、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート(プロピレンオキシ基の平均繰返し数(e+f)が7であり、平均分子量が536のもの)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(プロピレンオキシ基の平均繰返し数(e+f)が12であり、平均分子量が808のもの)等を挙げることができる。
【0040】
特に好適なものを例示すると、e+fが0以上8未満でアクリル基を有するものとして、テトラエチレングリコールジアクリレート、e+fが8以上15未満でアクリル基を有するものとして、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数(e+f)が9であり、平均分子量が508のもの)、e+fが8以上15未満でメタクリル基を有するものとして、ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数(e+f)が9であり、平均分子量が536のもの)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数(e+f)が14であり、平均分子量が736のもの)が挙げられる。
1分子中に2個の(メタ)アクリル基を有する多官能重合性単量体としては、さらに例えば、後述する1分子中に2個の(メタ)アクリル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートを使用することもできる。
これら1分子中に(メタ)アクリル基を2個有する重合性単量体は単独でまたは2種以上混合して使用される。
【0041】
(1分子中に(メタ)アクリル基を3〜4個有する多官能重合性単量体)
1分子中に(メタ)アクリル基を3〜4個有する多官能重合性単量体は、1分子中にアクリル基、及びメタクリル基を有するものであってもよいが、上記の通り、1分子中に同じ官能基(アクリル基又はメタクリル基)のみを有する重合性単量体であることが好ましい。
【0042】
具体的な多官能重合性単量体を例示すれば、下記式(3)
【0044】
で示されるものを用いることができる。
式中、R
11及びR
12は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。また、R
13は、炭素数1〜10である3価、又は4価の有機基を示し、gは平均値で0〜3の数であり、hは3及び4の整数である。なお、上記R
13で示される炭素数1〜10である3価、又は4価の有機基には、ウレタン結合を有するものは含まれないものとする。
【0045】
上記式(3)で示される1分子中に3〜4個の(メタ)アクリル基を有する多官能重合性単量体は、得られるフォトクロミック硬化体の硬度を確保し、さらにフォトクロミック特性、特に発色濃度と退色速度を改善する上で効果的である。
なお、上記の3〜4個の(メタ)アクリル基を有する多官能重合性単量体においては、3個の(メタ)アクリル基を有するものが、4個の(メタ)アクリル基を有するものと比較して、特に高い発色濃度と退色速度が得られるという点で好ましい。さらに、メタクリル基を有するものを使用することが特に高い発色濃度と退色速度が得られるという点で好ましい。
【0046】
上記式(3)で示される(メタ)アクリル基を3〜4個有する多官能重合性単量体は、具体的には、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、(メタ)アクリル基を4個有するポリエステルオリゴマー等を挙げることができる。上記化合物中における“テトラメチロールメタン”は“ペンタエリスリトール”の慣用名で表記されることもある。
これらのうち、トリメチロールプロパントリメタクリレートが特に好ましい。なお、これら1分子中に(メタ)アクリル基を3〜4個以上有する重合性単量体は単独であるいは2種以上混合して使用することができる。
1分子中に3〜4個の(メタ)アクリル基を有する多官能重合性単量体としては、さらに例えば、1分子中に3〜4個の(メタ)アクリル基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートを使用することもできる。
【0047】
(1分子中に(メタ)アクリル基を2〜4個有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート)
本発明においては、1分子中に(メタ)アクリル基を2〜4個有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートも好適に使用することができる。この多官能ウレタン(メタ)アクリレートも、特に制限されるものではなく、公知のウレタン(メタ)アクリレートを使用することができる。そして、1分子中にアクリル基、及びメタクリル基の両方を有する多官能重合性単量体を使用することもできるが、上記の通り、本発明においては、1分子中に同じ官能基を有する重合性単量体を組み合わせて使用することが好ましい。
この(メタ)アクリル基を2〜4個有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、得られるフォトクロミック硬化体の強度を確保する上で効果的である。
該多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、その分子構造中にベンゼン環等の芳香環を有するもの、芳香環を有しないものに大別でき、本発明においては、そのいずれをも使用できるが、その中でも特に硬化体の耐光性の観点から、芳香環を有しない無黄変タイプのものが好ましく用いられる。
【0048】
該多官能ウレタン(メタ)アクリレートとしては、具体的には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソプロピリデンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート又はメチルシクロヘキサンジイソシアネートと、炭素数2〜4のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ヘキサメチレンオキシドの繰り返し単位を有するポリアルキレングルコール、或いはポリカプロラクトンジオール等のポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンジオール等の低分子の多官能ポリオール、又はエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等公知の低分子量のポリオール類とを反応させウレタンプレポリマーとしたものを、アルキレンオキシド鎖を有していてもよい2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等で更に反応させた反応混合物であるか、又は前記ジイソシアネートを、アルキレンオキシド鎖を有していてもよい2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと直接反応させた反応混合物であって、その分子量が400以上20,000未満であるウレタン(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0049】
(1分子中に(メタ)アクリル基を2〜4個有する多官能重合性単量体の好適な組み合わせ)
本発明のフォトクロミック硬化性組成物においては、上記に例示した1分子中に(メタ)アクリル基を2〜4個有する多官能重合性単量体を組み合わせ、場合により後述する単官能重合性単量体を併用することにより、組成物中に存在するメタクリル基のモル数とアクリル基のモル数を特定の範囲とすることができる。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、上記多官能重合性単量体のみでも、(メタ)アクリル重合性単量体を形成することができる。この多官能重合性単量体は、高いフォトクロミック特性を有し、且つ、退色速度の遅延も少ないフォトクロミック硬化体を得る効果をより発揮するためには、(メタ)アクリル基を2個有する2官能重合性単量体を60〜80質量%、(メタ)アクリル基を3個有する3官能重合性単量体を20〜40質量%、及び(メタ)アクリル基を4個有する4官能重合性単量体を0〜20質量%(但し、2官能重合性単量体、3官能重合性単量体、及び4官能重合性単量体の合計を100質量%とする。)となる割合で含む。
【0050】
そして、上記多官能重合性単量体の好ましい例としては、2官能重合性単量体として、例えば上記式(1)において、Aが下記式
【0052】
で示される骨格を有するもの、及び、前記式(2)において、e+fが3〜15であるものが挙げられる。また、3〜4官能重合性単量体としては、前記式(3)において、hが3であるものを組み合わせたものであることが好ましい。具体的な重合性単量体を例示すれば、2官能重合性単量体としては、2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(a+bが4のもの)、2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(a+bが10のもの)、2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(a+bが10のもの)、2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(a+bが20のもの)、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数(e+f)が9であり、平均分子量が508のもの)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数(e+f)が9であり、平均分子量が536のもの)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数(e+f)が14であり、平均分子量が736のもの)などが挙げられる。また、3〜4官能重合性単量体としては、トリメチロールプロパントリメタクリレートが挙げられる。
【0053】
本発明のフォトクロミック硬化性組成物においては、上記多官能重合性単量体とフォトクロミック化合物を含むが、(メタ)アクリル重合性単量体中には、70質量部以上の上記多官能重合性単量体が含まれなければならない。(メタ)アクリル重合性単量体は、上記多官能性単量体の他にさらに(Ib)1分子中に1つの(メタ)アクリル基を有する単官能重合性単量体を含むことができる。単官能重合性単量体は、(メタ)アクリル重合性単量体中の0〜30質量部とならなければならない。なお、前記(Ia)多官能重合性単量体と(Ib)単官能重合性単量体との合計が100質量部である。
多官能重合性単量体の割合が70質量部未満の場合には、フォトクロミック特性の温度による影響が大きく、高温で発色濃度が低下する傾向が見られるばかりでなく、ハードコート層を形成した場合も十分な耐擦傷性を得ることができない。
【0054】
(Ib)1分子中に(メタ)アクリル基を1個有する単官能重合性単量体
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、上記(Ia)多官能重合性単量体に加え、(Ib)1分子中に(メタ)アクリル基を1個有する単官能重合性単量体を含むこともできる。この(Ib)単官能重合性単量体は、特に制限されるものではなく、公知の化合物、特に、プラスチックレンズに使用されるものが好適に使用できる。
好ましい単官能重合性単量体としては、下記式(4)
【0056】
が挙げられる。
式中、R
14、R
15、及びR
16は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基である。
また、R
17は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、無置換もしくは炭素数1〜20のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、無置換もしくは炭素数1〜20のアルキル基で置換されていてもよいナフチル基、又はグリシジル基である。
【0057】
上記式(4)で示される単官能重合性単量体は、通常、分子量の異なる分子の混合物の形で得られる。そのため、i、jは、平均値となる。そして、該単官能重合性単量体においては、iは0〜25であり、jは0〜25でありそしてi+jが0〜25であることが好ましい。i+jは0〜15であることが特に好ましい。
特に好適に使用できる(Ib)単官能重合性単量体を具体的に例示すると、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数(i+j)が9であり、平均分子量が468のもの)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数(i+j)が23であり、平均分子量が1068のもの)、イソステアリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、フェノキシエチレングリコールメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数(i+j)が6であり、平均分子量が412のもの)、ナフトキシエチレングリコールアクリレート、イソステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。これら1分子中に(メタ)アクリル基を1個有する重合性単量体は2種以上混合して使用してもよい。
【0058】
さらに、上記式(4)で表される単官能重合性単量体の他に、1分子中に(メタ)アクリル基を1個有する他の単官能重合性単量体としては、下記式(5)
【0060】
で示されるものを用いることができる。
式中、R
18は、水素原子又はメチル基である。
R
19は、炭素数1〜10のアルキレン基であり、R
20は、炭素数1〜6のアルコキシ基であり、R
21は、炭素数1〜6のアルキル基である。また、kは1〜3の整数であり、lは0〜2の整数であり、且つk+l=3である。
炭素数1〜10のアルキレン基としては、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられ、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられ、炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0061】
好適に使用できる上記式(5)で示される重合性単量体を具体的に例示すると、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。本発明において、1分子中に(メタ)アクリル基を1個有する重合性単量体は単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0062】
これら(Ib)単官能重合性単量体の中でも、フォトクロミック特性の温度依存性がそれほど大きくなることがなく、フォトクロミックコート層とハードコート層の密着性を高めることができるという点から、特に、前記式(4)において、i+jが0〜3で、R
17がグリシジル基であるもの、もしくは前記式(5)において、R
19が炭素数1〜4のアルキレン基、R
20が炭素数1〜3のアルコキシ基、R
21が炭素数1〜3のアルキル基であるものを使用することが好ましい。具体的な化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリジジルアクリレート、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物において、(Ib)単官能重合性単量体は、フォトクロミックコート層とハードコート層との密着性の向上、フォトクロミック特性の繰り返し耐久性の向上などの役割を果す。(メタ)アクリル重合性単量体は、前記の通り、前記(Ia)多官能重合性単量体(重合性単量体組成物)を70〜100質量部、前記(Ib)単官能重合性単量体を0〜30質量部からなる。そして、フォトクロミック特性の温度による影響を抑え、かつ、ハードコート層を形成したときの耐擦傷性を保ちつつ、前記(Ib)単官能重合性単量体を使用する効果をより発揮させるためには、(Ia)多官能重合性単量体を85〜99質量部、前記(Ib)単官能重合性単量体を1〜15質量部とすることが好ましく、さらには、(Ia)多官能重合性単量体を90〜99質量部、前記(Ib)単官能重合性単量体を1〜10質量部とすることが好ましい。
【0063】
次に、(メタ)アクリル重合性単量体に含まれるメタクリル基、及びアクリル基のモル数について説明する。
(メタクリル基、及びアクリル基のモル数)
本発明においては、(メタ)アクリル重合性単量体に含まれるメタクリル基のモル数、及びアクリル基のモル数は特定の範囲になければならない。具体的には、(メタ)アクリル重合性単量体中に存在するメタクリル基のモル数をアクリル基のモル数の3〜7倍にしなければならない。メタクリル基のモル数とアクリル基のモル数とが上記範囲を満足することにより、得られる硬化体が優れたフォトクロミック特性を発揮し、さらには、該硬化体上にハードコート層を形成した場合に、優れた密着性と耐擦傷性を発揮することができる。このような効果をより発揮させるためには、(メタ)アクリル重合性単量体中に存在するメタクリル基のモル数をアクリル基のモル数の好ましくは3.5〜6.5倍、さらに好ましくは4〜6倍とする。
メタクリル基のモル数がアクリル基のモル数の3倍未満となる(メタ)アクリル重合性単量体を用いたフォトクロミック硬化性組成物では、特に、フォトクロミック特性の温度依存性が大きくなるため好ましくない。また、該硬化性組成物より形成されるフォトクロミックコート層の上にハードコート層を形成した場合には、ハードコート層の耐擦傷性が不十分となるため好ましくない。一方、メタクリル基のモル数がアクリル基のモル数の7倍を超えるフォトクロミック硬化性組成物では、退色速度が遅くなるというフォトクロミック特性の低下がみられるため好ましくない。また、該硬化性組成物より形成されるフォトクロミックコート層とハードコート層との密着が不十分となり、その結果、優れた効果を発揮するフォトクロミック硬化体を得ることができなくなるため好ましくない。
なお、(メタ)アクリル重合性単量体中に存在するメタクリル基とアクリル基のモル数の比は、以下のようにして算出することができる。具体的には、先ず、メタクリル基のモル数、およびアクリル基のモル数を以下の方法により算出する。
メタクリル基のモル数=Σ{(メタクリル基を有する重合性単量体の質量)÷(その分子量)×(その官能基数)}。
アクリル基のモル数=Σ{(アクリル基を有する重合性単量体の質量)÷(その分子量)×(その官能基数)}。
ここでΣは、該当する重合性単量体として複数種類の単量体を使用した場合には、その総和とすることを示す。また、上記分子量は、(メタ)アクリル重合性単量体として混合物を使用した場合には、その混合物の平均分子量とする。例えば、上記式(1)で示されるような多官能重合性単量体の混合物を使用する場合には、a+bの平均値から求められる分子量が該当する。このようにして算出したメタクリル基のモル数をアクリル基のモル数で除することにより、(メタ)アクリル重合性単量体中に存在するアクリル基のモル数に対するメタクリル基のモル数を求めることができる。
なお、当然のことながら、(メタ)アクリル重合性単量体が、上記(Ia)多官能重合性単量体のみからなる場合には、多官能重合性単量体中に存在するメタクリル基、及びアクリル基のモル数を上記計算式に基づいて算出すればよい。また、(Ib)単官能重合性単量体を含む場合には、多官能重合性単量体、及び単官能重合性単量体に含まれるメタクリル基、及びアクリル基のモル数を算出すればよい。
【0064】
次に、フォトクロミック化合物について説明する。
(II)フォトクロミック化合物
フォトクロミック化合物としては、フォトクロミック作用を示す化合物を採用することができる。例えば、フルギド化合物、クロメン化合物及びスピロオキサジン化合物等のフォトクロミック化合物がよく知られており、本発明においては、これらのフォトクロミック化合物を使用することができる。前記のフルギド化合物及びクロメン化合物は、USP4,882,438、USP4,960,678、USP5,130,058、USP5,106,998等で公知の化合物を好適に使用できる。
【0065】
また、優れたフォトクロミック性を有する化合物として本発明者等が新たに見出した化合物、例えば、特開2001−114775号、特開2001−031670号、特開2001−011067号、特開2001−011066号、特開2000−347346号、特開2000−344762号、特開2000−344761号、特開2000−327676号、特開2000−327675号、特開2000−256347号、特開2000−229976号、特開2000−229975号、特開2000−229974号、特開2000−229973号、特開2000−229972号、特開2000−219687号、特開2000−219686号、特開2000−219685号、特開平11−322739号、特開平11−286484号、特開平11−279171号、特開平10−298176号、特開平09−218301号、特開平09−124645号、特開平08−295690号、特開平08−176139号、特開平08−157467号等に開示された化合物も好適に使用することができる。
これらの中でも、国際公開第01/60811号パンフレット、米国特許4913544号公報、及び米国特許5623005号公報に開示されているフォトクロミック化合物が好適に使用できる。これらフォトクロミック化合物の中でも、クロメン系フォトクロミック化合物は、フォトクロミック特性の耐久性が他のフォトクロミック化合物に比べ高く、さらに本発明によるフォトクロミック特性の発色濃度及び退色速度の向上が他のフォトクロミック化合物に比べて特に大きいため特に好適に使用することができる。
【0066】
さらに、これらクロメン系フォトクロミック化合物中でも、下記式(6)で示される化合物は、上記(メタ)アクリル重合性単量体との組み合わせにおいて、得られる硬化体中で特に優れたフォトクロミック特性を発揮することができる。さらに下記式(6)で示される化合物を含む硬化体上にハードコート層を形成した場合にも、得られた光学物品は、優れたフォトクロミック特性を発揮し、ハードコート層と硬化体との密着性がよく、耐擦傷性もよいものとなる。
【0068】
(基R
31)
上記式(6)において、pは0〜4の整数であり、R
31は、ヒドロキシル基、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、環員窒素原子を含み該窒素原子でそれが結合するベンゼン環と直接結合する複素環基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基であり、pが2〜4の場合、互いに隣接する2つのR
31が一緒になって炭素数が1〜8のアルキレンジオキシ基を形成してもよい。
【0069】
前記アルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。好適なアルキル基を例示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等を挙げることができる。
前記ハロアルキル基としては、フッ素原子、塩素原子または臭素原子で置換された炭素数1〜6のハロアルキル基が好ましい。好適なハロアルキル基を例示すると、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、クロロメチル基、2−クロロエチル基、ブロモメチル基等を挙げることができる。
前記シクロアルキル基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましい。好適なシクロアルキル基を例示すると、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。好適なアルコキシ基を例示すると、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。
【0070】
前記アミノ基は、一級アミノ基、2級アミノ基や3級アミノ基であってもよい。2級または3級アミノ基の置換基としては、例えば炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数4〜12のヘテロアリール基等が挙げられる。これらのアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基の例としては、前記R
31で説明した基と同様の基を挙げることができる。また、前記アリール基を例示すると、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等を挙げることができる。また、前記へテロアリール基を例示すると、チエニル基、フリル基、ピロリニル基、ピリジル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾピロリニル基等を挙げることができる。好適なアミノ基を例示すると、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等を挙げることできる。
前記環員窒素原子を含み該窒素原子でそれが結合するベンゼン環と直接結合する複素環基としては、好適なものを例示すると、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジニル基、ピペラジノ基、N−メチルピペラジノ基、インドリニル基等を挙げることができる。さらに、該複素環基は、炭素数1〜6のアルキル基を置換基として有してもよく、具体的な置換基としては、メチル基等のアルキル基を挙げることができる。置換基を有する複素環基のうち、好適なものを例示すると、2,6−ジメチルモルホリノ基、2,6−ジメチルピペリジノ基、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ基等が挙げられる。
【0071】
前記アルキルカルボニル基としては、好適なものを例示すると、アセチル基、エチルカルボニル基等を挙げることができる。
前記アルコキシカルボニル基としては、好適なものを例示すると、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等を挙げることができる。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
前記アラルキル基としては、炭素数7〜11のアラルキル基が好ましい。好適なアラルキル基を例示すると、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
前記アリール基としては、炭素数6〜14のアリール基が好ましい。好適なアリール基を具体的に例示すると、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等を挙げることができる。
前記アリールオキシ基としては、炭素数6〜14のアリールオキシ基が好ましい。好適なアリールオキシ基を例示すると、フェノキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等を挙げることができる。
なお、アラルキル基、アリール基及びアリールオキシ基は、ベンゼンもしくはナフタレン環等の芳香環上の1〜13個の水素原子、特に好ましくは1〜4個の水素原子が、前記のヒドロキシル基、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、環員窒素原子を含み該窒素原子でそれが結合するベンゼン環と直接結合する複素環基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
前記アルキルチオ基としては、炭素数1〜6のアルキルチオ基が好ましい。好適なアルキルチオ基を例示すると、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基等を挙げることができる。
また、互いに隣接する2つのR
31が一緒になって形成されるアルキレンジオキシ基としては、炭素数1〜8のアルキレンジオキシ基が好ましい。好適なアルキレンジオキシ基を例示すると、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基等を挙げることができる。
なお、pが2〜4の場合、複数のR
31は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0072】
(基R
32)
上記式(6)において、qは0〜4の整数であり、R
32は、ヒドロキシル基、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、環員窒素原子を含み該窒素原子でそれが結合するベンゼン環と直接結合する複素環基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アラルキル基、アリール基、又はアリールオキシ基、アルキルチオ基である。これらの基としては、先にR
31として説明したものと同様の基が用いられる。
なお、qが2〜4の場合、複数のR
32は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0073】
(基R
33、及びR
34)
また、上記式(6)において、R
33及びR
34は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、環員窒素原子を含み該窒素原子でそれが結合するインデン環と直接結合する複素環基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アラルキル基、アリール基又はアリールオキシ基である。これらの基としては、先にR
31について説明したものと同様の基が用いられる。
また、R
33及びR
34は、互いに一緒になってインデン環の炭素原子と共に環を構成することもできる。具体的な環を例示すれば、炭素数が3〜20である脂肪族環、該脂肪族環に芳香族環もしくは芳香族複素環が縮環した縮合多環、環を構成する原子数が3〜20である複素環、又は該複素環に芳香族環もしくは芳香族複素環が縮環した縮合多環を形成する環であってもよい。好適なものとしては下記のものが挙げられる。なお、下記に示す環において、最も下に位置するZで示した炭素原子が、基R
33及び基R
34が結合している炭素原子に相当すると理解されるべきである。
【0075】
(基R
35及びR
36)
上記式(6)において、R
35及びR
36は、それぞれ独立に、下記式(7)で示される基、下記式(8)で示される基、アリール基、ヘテロアリール基、又はアルキル基である。
【0077】
上記式(7)中のR
37は、アリール基、又はヘテロアリール基である。ここで、アリール基は、R
31について既に説明した基と同じものである。
上記ヘテロアリール基としては、炭素数4〜12のヘテロアリール基が好ましい。好適なヘテロアリール基を例示すると、チエニル基、フリル基、ピロリニル基、ピリジル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾピロリニル基等を挙げることができる。
上記ヘテロアリール基は、その基の1〜7個の水素原子、特に好ましくは1〜4個の水素原子が、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
また、R
38は、水素原子、アルキル基、又はハロゲン原子である。アルキル基、ハロゲン原子は、R
31について既に説明した基と同じものである。
mは1〜3の整数である。原料入手の観点からmは1であるのが好適である。
【0078】
上記式(7)で示される基の好適な基を例示すれば、フェニル−エテニル基、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−エテニル基、(4−モルホリノフェニル)−エテニル基、(4−ピペリジノフェニル)−エテニル基、(4−メトキシフェニル)−エテニル基、(2−メトキシフェニル)−エテニル基、フェニル−1−メチルエテニル基、(4−メトキシフェニル)−1−メチルエテニル基、フェニル−1−フルオロエテニル基、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−1−フルオロエテニル基、2−チエニル−エテニル基、2−フリル−エテニル基、2−(N−メチル)ピロリニル−エテニル基、2−ベンゾチエニル−エテニル基、2−ベンゾフラニル−エテニル基、2−(N−メチル)インドリル−エテニル基等を挙げることができる。
上記式(8)において、R
39は、前記R
37と同じアリール基、又はヘテロアリール基である。また、nは1〜3の整数である。原料入手の容易さの観点からnは1であるのが好適である。
上記式(8)で示される基の好適な基を例示すれば、フェニル−エチニル基、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−エチニル基、(4−モルホリノフェニル)−エチニル基、(4−ピペリジノフェニル)−エチニル基、(4−メトキシフェニル)−エチニル基、(4−メチルフェニル)−エチニル基、(2−メトキシフェニル)−エチニル基、2−チエニル−エチニル基、2−フリル−エチニル基、2−(N−メチル)ピロリニル−エチニル基、2−ベンゾチエニル−エチニル基、2−ベンゾフラニル−エチニル基、2−(N−メチル)インドリル−エチニル基等を挙げることができる。
【0079】
R
35及びR
36のアリール基、ヘテロアリール基、アルキル基としては、上記R
37、R
39として既に説明した基と同じ基である。
また、R
35及びR
36は、互いに結合してそれらが結合する炭素原子と一緒になって脂肪族炭化水素環もしくは芳香族炭化水素環を形成することもできる。
脂肪族炭化水素環の好適な環を具体的に例示すると、アダマンタン環、ビシクロノナン環、ノルボルナン環等を挙げることができる。
また、芳香族炭化水素環の好適な環としては、フルオレン環等を挙げることができる。
上記R
35及びR
36の基において、特に、優れたフォトクロミック特性を発揮するためには、少なくとも一方、好ましくは両方の基が、アリール基、又はヘテロアリール基であることが好ましい。さらに、R
35及びR
36の少なくとも一方、好ましくは両方の基が、下記(i)〜(iv)に示される何れかの基であることが特に好ましい。
(i)アルキル基もしくはアルコキシ基を置換基として有するアリール基、又はヘテロアリール基、
(ii)アミノ基を置換基として有するアリール基、又はヘテロアリール基、
(iii)環員窒素原子を有し該窒素原子でアリール基、又はヘテロアリール基に結合する複素環基を置換基として有する該アリール基、又はヘテロアリール基、
(iv)前記(iii)における複素環基に、芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基を置換基として有するアリール基、又はヘテロアリール基;
【0080】
上記(i)〜(iv)におけるアリール基においては、置換基の置換する位置は特に限定されず、その総数も限定されない。優れたフォトクロミック特性を発揮するためには、置換位置は、アリール基がフェニル基であるときは3位又は4位であることが好ましい。また、その際の置換基の数は、1〜2であることが好ましい。このような好適なアリール基を例示すると、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、4−n−プロポキシフェニル基、4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル基、4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル基、4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル基、4−モルホリノフェニル基、4−ピペリジノフェニル基、3−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル基、4−(2,6−ジメチルピペリジノ)フェニル基等を挙げることができる。
また、前記(i)〜(iv)におけるヘテロアリール基において、置換基が置換する位置は特に限定されず、その総数も特に限定されないが、その数は1であることが好ましい。当該ヘテロアリール基として好適なものを具体的に例示すると、4−メトキシチエニル基、4−(N,N−ジメチルアミノ)チエニル基、4−メチルフリル基、4−(N,N−ジエチルアミノ)フリル基、4−(N,N−ジフェニルアミノ)チエニル基、4−モルホリノピロリニル基、6−ピペリジノベンゾチエニル基、6−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフラニル基等を挙げることができる。
【0081】
(好ましいフォトクロミック化合物)
前記したフォトクロミック化合物のうち、好適な化合物を例示すると下記式のクロメン化合物が挙げられる。
【0083】
これらの化合物は、色調調整等を目的として2種類以上を混合して用いてもよい。また、これ以外のフォトクロミック化合物を適宜混合して使用してもよい。
【0084】
(フォトクロミック化合物の配合量)
本発明のフォトクロミック硬化性組成物において、フォトクロミック化合物の配合量は、上記(メタ)アクリル重合性単量体100質量部に対して、0.01〜20質量部で用いられる。0.01質量部未満の場合は、発色濃度が不十分となることがあり、20質量部を超える場合は、(メタ)アクリル重合性単量体に溶解し難くなるため不均一となり、発色濃度のむらを生じることがある。効果の点から、フォトクロミック化合物の配合量は、0.05〜10質量部とするのが好ましく、0.1〜10質量部とするのが特に好ましい。
また、本発明のフォトクロミック硬化性組成物を後述する光学材料のコーティング剤として用いる場合には、形成されるフォトクロミックコート層の厚みに応じてフォトクロミック化合物の濃度を調整することが好ましい。例えば、コート層の厚さを薄くする場合には、フォトクロミック化合物の濃度を高くし、コート層の厚さを厚くする場合には、フォトクロミック化合物の濃度を低くすることにより、適度な発色濃度を得ることができる。具体的には、コート層の厚さが10μm程度の際には、フォトクロミック化合物を5〜15質量部程度、コート層の厚さが50μm程度の際には、0.1〜5質量部程度とするのが特に好適である。
次に、本発明のフォトクロミック硬化組成物に使用されるその他の成分について説明する。
【0085】
(その他の成分)
本発明の硬化性組成物には、フォトクロミック化合物の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や成形性の向上のために、さらに界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を添加してもよい。また、硬化性組成物を硬化させるために後述する重合開始剤を配合することも極めて好ましい。添加するこれら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用される。
例えば、界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の何れも使用できるが、重合性単量体への溶解性からノニオン系界面活性剤を用いるのが好ましい。好適に使用できるノニオン系解面活性剤を具体的に挙げると、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等を挙げることができる。界面活性剤の使用に当たっては、2種以上を混合して使用してもよい。この場合、界面活性剤の添加量は、重合性単量体組成物100質量部に対し、0.1〜20質量部の範囲とすることが好ましい。
また、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤、イオウ系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を好適に使用できる。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤は、2種以上を混合して使用してもよい。さらにこれらの非重合性化合物の使用に当たっては、界面活性剤と酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤を併用して使用してもよい。この場合、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤の添加量は、(メタ)アクリル重合性単量体100質量部に対し、0.001〜20質量部の範囲とすることが好ましい。
【0086】
上記安定剤の中でも、本発明の硬化性組成物を、コーティング剤として使用する場合特に有用な安定剤として、該硬化性組成物を硬化させる際のフォトクロミック化合物の劣化防止、あるいはその硬化体の耐久性向上の観点より、ヒンダードアミン光安定剤が挙げられる。ヒンダードアミン光安定剤としては、公知の化合物が何ら制限なく用いることができる。その中でも、コーティング剤用途で用いる場合、特にフォトクロミック化合物の劣化防止効果を発現する化合物として、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、旭電化工業(株)製アデカスタブLA−52、LA−62、LA−77、LA−82等を挙げることができる。この場合、添加量としては、(メタ)アクリル重合性単量体100質量部に対し、0.001〜20質量部の範囲とすることが好ましく、特にコーティング剤として用いる場合には、0.1〜10質量部の範囲とすることが好ましく、さらに1〜10質量部の範囲とすることが特に好ましい。
また、コーティング剤として使用する場合特に有用な他の安定剤として、硬化体の耐久性向上の観点より、ヒンダードフェノール酸化防止剤も特に好ましく用いることができる。ヒンダードフェノール酸化防止剤としては、公知の化合物が何ら制限なく用いることができる。その中でも、コーティング剤用途で用いる場合、特にフォトクロミック化合物の劣化防止効果を発現する化合物としては、チバ・スペチャルティ・ケミカルズ製IRGANOX245:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トルイル]プロピオネート]、IRGANOX1076:オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、IRGANOX1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等を挙げることができる。この場合、添加量としては、(メタ)アクリル重合性単量体100質量部に対し、0.001〜20質量部の範囲とすることが好ましく、特にコーティング剤として用いる場合には、0.1〜10質量部の範囲とすることが好ましく、さらに1〜10質量部の範囲とすることが好ましい。
【0087】
また、本発明のフォトクロミック硬化性組成物においては、上記の特性を損なわない範囲で、上記(Ia)多官能重合性単量体および上記(Ib)単官能重合性単量体とは異なるそれら以外の他の重合性単量体を含むこともできる。他の重合性単量体の好適な配合量は、上記(メタ)アクリル重合性単量体100質量部に対し、10質量部以下である。このような他の重合性単量体として、例えば、ビニル基を有する重合性単量体が挙げられる。ビニル基を含む重合性単量体としては、例えばスチレン、αメチルスチレン、αメチルスチレンダイマー等が挙げられる。これらビニル基を含む化合物は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0088】
次に、本発明のフォトクロミック硬化性組成物の調製方法、硬化体の形成方法、及び用途について説明する。
(調製方法、硬化体の形成方法、及びその用途)
本発明のフォトクロミック硬化性組成物の調製は、例えば所定量の各成分を秤取り混合することにより行うことができる。なお、各成分の添加順序は特に限定されず全ての成分を同時に添加してもよいし、(メタ)アクリル重合性単量体のみを予め混合し、後で、例えば後述の如く重合させる直前にフォトクロミック化合物や他の添加剤を添加混合してもよい。なお、後述するように、重合に際しては必要に応じて重合開始剤をさらに添加することも好ましい。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、好ましくは、その25℃での粘度が20〜500cpである。この粘度は後述する光学材料のコーティング用とする際に好適であり、50〜300cpであるのがより好適であり、60〜200cpであるのが特に好適である。
この粘度範囲とすることにより、後述するコート層の厚さを10〜100μmの厚めの厚みに調整することが容易となり、十分にフォトクロミック特性を発揮させることが可能となる。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物を硬化させてフォトクロミック性硬化体を得る方法としては、用いる重合性単量体の種類に応じた公知の重合方法を採用することができる。重合開始手段は、種々の過酸化物やアゾ化合物などのラジカル重合開始剤の使用、又は紫外線、α線、β線、γ線等の照射あるいは両者の併用によって行うことができる。
ラジカル重合開始剤としては、公知のものが使用できるが、代表的なものを例示すると、熱重合開始剤として、例えばベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエートの如きパーオキシエステル;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシカーボネートの如きパーカーボネート;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)の如きアゾ化合物等挙げられる。
これら熱重合開始剤を使用する場合、その使用量は、重合条件や開始剤の種類、重合性単量体の種類や組成によって異なり、一概に限定できないが、重合性単量体(他の重合性単量体を用いるときには、他の重合性単量体も含めて)100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲とすることが好ましい。上記熱重合開始剤は単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0089】
また紫外線等の光照射により重合させる場合には、光重合開始剤として、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アエトフェノン4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6―トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等を使用することが好ましい。
これら光重合開始剤を使用する場合、その使用量は、重合性単量体(他の重合性単量体を用いるときには、他の重合性単量体も含めて)100質量部に対して0.001〜5質量部の範囲とすることが好ましい。上記光重合開始剤は、単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。また上記熱重合開始剤を光重合開始剤と併用してもよい。
【0090】
本発明のフォトクロミック硬化性組成物から硬化体を得る特に好ましい方法は、上記光重合開始剤を配合した本発明のフォトクロミック硬化性組成物に、紫外線等を照射し硬化させ、さらに必要に応じて加熱して重合を完結させる方法である。
紫外線の照射により重合させる場合には、公知の光源を何ら制限なく用いることができる。該光源を具体的に例示すれば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク、殺菌灯、メタルハライドランプ、無電極ランプ等を挙げることが出来る。該光源を用いた光照射の時間は、上記光重合開始剤の種類、吸収波長及び感度、さらにはフォトクロミック層の膜厚等により適宜決定すればよい。また、光源に電子線を用いる場合には、光重合開始剤を添加せずに、フォトクロミック層を硬化させることもできる。
【0091】
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、上記重合開始剤等を用いることにより硬化させて、それ単独でフォトクロミック性の材料として用いることも可能であるが、基材例えば光学基材、好ましくは眼鏡レンズ等の光学基材をコーティングするコーティング剤として使用することが特に好ましい。
以下、コーティング剤として使用する場合の例を説明する。
(コーティング剤としての使用)
該光学材料としては、例えば眼鏡レンズ、家屋や自動車の窓ガラス等公知の光学基材が挙げられる。
眼鏡レンズとしては、(メタ)アクリル樹脂系、ポリカーボネート系樹脂、アリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂及びチオエポキシ系樹脂等のプラスチック系の眼鏡レンズ、ガラス系の眼鏡レンズが公知である。本発明の硬化性組成物を眼鏡レンズのコーティング剤として用いる場合には、いずれの眼鏡レンズにも使用できるが、プラスチック系の眼鏡レンズ用のコーティング剤として使用することがより好ましく、とりわけ(メタ)アクリル樹脂系ポリカーボネート系樹脂、アリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂及びチオエポキシ系樹脂等の眼鏡レンズのコーティング剤として使用することが特に好ましい。
眼鏡レンズ等の光学基材のコーティング剤として用いる場合には、該光学基材へ本発明のフォトクロミック硬化性組成物をスピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ディップ−スピンコーティング等で塗布し、その後、光照射して硬化させる方法、あるいは加熱硬化させる方法が好適であり、より好ましくは光照射により硬化させた後、さらに加熱して重合を完結させる方法である。光学基材を硬化性組成物で塗布する際、光学基材を予め後述する前処理を行うことが好ましい。
【0092】
本発明のフォトクロミック硬化性組成物をコーティング剤として用いる場合、該硬化性組成物を、前述した光学基材の表面上に塗布してコーティング層を形成し、これを重合硬化させることによってフォトクロミック層を形成する。この場合、塗布に先立って、光学基材の前処理を行い、光学基材に対する該硬化性組成物の塗れ性、及び密着性を向上させることが好ましい。このような前処理としては、塩基性水溶液又は酸性水溶液による化学的処理、研磨剤を用いた研磨処理、大気圧プラズマ及び低圧プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、又はUVオゾン処理等を挙げることができる。これらの方法は特に限定されず、公知の方法を用いればよく、光学基材の密着性を向上させるために、組み合わせて使用してもよい。
前処理方法の中で、特に簡便に用いることができる方法として、塩基性溶液による化学的処理が、特に前述した眼鏡レンズ基材(光学基材)の前処理として好適であり、本発明のフォトクロミック硬化性組成物を用いた場合には、光学基材との密着性を強固にすることができる。該処理法は、一般的には、アルカリ溶液の中に光学基材を含浸すればよい。具体的には、該アルカリ溶液として、水酸化ナトリウム水溶液、あるいは水酸化カリウム水溶液が用いられる。該水酸化物の濃度としては、5〜30質量%が好適である。また、処理温度は、用いる基材の耐熱性を勘案して適宜決定すればよいが、好ましくは20〜60℃の範囲である。また、その処理は、アルカリ水溶液に光学基材を含浸するか、あるいは光学基材をアルカリ水溶液に含浸したまま超音波洗浄することにより行なわれる。その処理時間は、処理条件により異なるが、好ましくは1分〜1時間、より好ましくは5〜15分の範囲である。また、アルカリ溶液としては、水溶液以外に、例えば水、アルコール溶媒の混合溶液、アルコール溶液であってもよい。用いるアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、また、さらに少量の添加剤として、1−メチル−2−ピロリドン等の有機塩基をアルカリ溶液100質量部に対して、1〜10質量部加えたものでもよい。また、アルカリ処理後は、純水、イオン交換水、蒸留水などの水を用いてすすいだ後、乾燥すればよい。
【0093】
なお、フォトクロミック硬化性組成物を光学基材の表面上に塗布してコーティング層を形成する前に、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリビニルアセタール系、エポキシ系などのプライマーを塗布、硬化しても構わない。
このような前処理を行った光学基材に、前記方法によりコーティング剤を塗布し、硬化させることにより、フォトクロミックコート層を形成することができる。上記方法によって得られるコート層は、フォトクロミック化合物濃度が低くても充分な発色濃度が得られ、またフォトクロミック特性の耐久性も良好となるように、比較的厚くすることが好ましい。しかしながら、一方で、コーティング層の厚さが厚い方が初期の黄色さも増加するため、該コーティング層の厚さは、10〜100μmであるのが好ましく、20〜50μmであるのがより好ましい。このような厚めのコーティング厚さは、前記した通り、フォトクロミック硬化性組成物の25℃における粘度を20〜500cp、好適には50〜300cp、より好適には60〜200cpとすることによって容易に達成できる。
また、本発明のフォトクロミック硬化性組成物を眼鏡レンズ用のコーティング剤として使用する場合、その硬化体の屈折率が当該眼鏡レンズの屈折率とほぼ等しくなるように、配合する各成分、特に重合性単量体の配合割合を調製することが好ましい。一般には、屈折率1.48〜1.75程度に調節される。
このようにしてコーティングされた光学基材は、そのままフォトクロミック光学材料として使用することが可能であるが、通常は、さらにハードコート層で被覆して使用される。これにより、フォトクロミック光学材料の耐擦傷性を向上させることができる。
【0094】
ハードコート層を形成するためのコーティング剤(ハードコート剤)としては、公知のものがなんら制限なく使用できる。具体的には、シランカップリング剤やケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム、チタン等の酸化物のゾルを主成分とするハードコート剤や、有機高分子体を主成分とするハードコート剤が使用できる。
コーティングされたフォトクロミック光学材料へのハードコート剤の被覆は、一般には、光学基材をフォトクロミック硬化性組成物でコーティングするのと同様の操作により行われる。また、同様に、フォトクロミック光学材料を前処理、即ち、水酸化ナトリウム水溶液、あるいは水酸化カリウム水溶液などのアルカリ溶液にフォトクロミック光学材料を含浸する前処理、あるいはフォトクロミック光学材料をアルカリ溶液に含浸したまま超音波洗浄する前処理を行った後、上記に示した公知の方法でハードコート剤を該光学材料の表面に塗布すればよい。この被覆したハードコート剤は、公知の方法、例えば、加熱することにより硬化させ、ハードコート層とすることができる。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物を用いた硬化体では、ハードコート層の形成に際し、例えば、研磨剤を用いた研磨処理、大気圧プラズマ及び低圧プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、又はUVオゾン処理等を行わずとも、十分な密着性を有するハードコート層を形成することができる。なお、当然のことながら、上記処理を行えば、さらに、ハードコート層の密着性を高めることができる。
また、本発明のフォトクロミック硬化性組成物単独の硬化体、光学基材表面に該硬化性組成物(コーティング剤)よりなるコート層を有する光学材料、あるいは該コート層上に、さらにハードコート層を形成した光学物品の表面には、SiO
2、TiO
2、ZrO
2等の金属酸化物の薄膜の蒸着や有機高分子体の薄膜の塗布等による反射防止処理、帯電防止処理等の加工及び2次処理を施すことも可能である。
【実施例】
【0095】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお実施例6と9は参考例である。以下に使用した化合物の略号と名称を示す。
(Ia)1分子中に2〜4個の(メタ)アクリル基を有する多官能重合性単量体
・1分子中に2個のメタクリル基を有する2官能重合性単量体
BPE100:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エチレンオキシ基の平均繰返し数が2.6であり、平均分子量が478のもの)。
BPE500:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エチレンオキシ基の平均繰返し数10であり、平均分子量が804のもの)。
9G:ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数が9であり、平均分子量が536のもの)。
14G:ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数が14であり、平均分子量が770のもの)。
【0096】
・1分子中に2個のアクリル基を有する2官能重合性単量体
A−BPE:2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エチレンオキシ基の平均繰返し数が10であり、平均分子量が776のもの)。
9GA:ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数が9であり、平均分子量が508のもの)。
・1分子中に2個のアクリル基を有するウレタンアクリレート
UA−500:3,3,6−トリメチルヘキサメチレンジアミンとヒドロキシエトキシエチルアクリレートを1:2の割合で反応して得られる2官能ウレタンアクリレート(分子量516)。
・1分子中に3個のメタクリル基を有する3官能重合性単量体
TMPT:トリメチロールプロパントリメタクリレート(分子量338)。
・1分子中に4個のアクリル基を有する4官能重合性単量体
A−TMMT:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(分子量352)。
(Ib)分子中に1個の(メタ)アクリル基を有する単官能重合性単量体
【0097】
・1分子中に1個のメタクリル基を有する単官能重合性単量体
GMA:グリシジルメタクリレート(分子量142)。
TMSiMA:γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(分子量252)。
MePEGMA:メチルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返し数が23であり、平均分子量が1068のもの)。
・1分子中に1個のアクリル基を有する単官能重合性単量体
GA:グリシジルアクリレート(分子量128)。
・(その他)1分子中に6個の(メタ)アクリル基を有する重合性単量体
U6HA:ウレタンオリゴマーヘキサアクリレート(平均分子量1019)。
【0098】
(II)フォトクロミック化合物
【0099】
【化21】
【0100】
・重合開始剤
CGI1800:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドの混合物(重量比:3対1)。
・ハードコート剤
ハードコート液A(メタノール分散SnO
2−ZrO
2−Sb
2O
5−SiO
2複合金属酸化物(日産化学工業(株)製HX−305M5)50質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン12質量部、メチルトリエトキシシラン3質量部、テトラエトキシシラン10質量部、0.05N塩酸7質量部、tert−ブチルアルコール7質量部、イソプロピルアルコール10質量部、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム1質量部を混合したもの)。
ヒンダードアミン光安定剤
LS765:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート。
ヒンダードフェノール酸化防止剤
IRGANOX245:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トルイル]プロピオネート]。
【0101】
実施例1
(Ia)多官能重合性単量体として、メタクリル基を有するBPE500 50質量部、TMPT 30質量部、アクリル基を有する9GA 17質量部、(Ib)単官能重合性単量体として、メタクリル基を有するGMA 3質量部からなる(メタ)アクリル重合性単量体100質量部に、フォトクロミック化合物としてPC1を3質量部添加し十分に混合してフォトクロミック硬化性組成物を得た。このフォトクロミック硬化性組成物の(メタ)アクリル重合性単量体における(Ia)多官能重合性単量体の割合は97質量%であり、(メタ)アクリル重合性単量体に存在するメタクリル基のモル数は、アクリル基のモル数の6.3倍であった。これに、光安定剤としてLS765を5質量部、酸化防止剤としてIRGANOX245を3質量部、重合開始剤としてCGI1800を0.5質量部添加し十分に混合した。続いて上記方法で得られた混合液(コーティング剤)の約2gをMIKASA製スピンコーター1H−DX2を用いて、厚さ2mmのプラスチックレンズ(MR:チオウレタン系樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.60 光学基材)の表面に、回転数60r.p.mで40秒次いで500r.p.mで2秒次いで1000r.p.mで5秒の条件でスピンコートした。この表面がコートされたレンズに、窒素ガス雰囲気中で出力100mW/cm
2のメタルハライドランプを用いて、150秒間光を照射し、塗膜を硬化させた。その後さらに120℃で1時間加熱してフォトクロミックコート層を有する光学材料を製造した。
続いて、前記方法で得られたフォトクロミックコーティング層(膜厚40μm)を有する光学レンズ(光学材料)をアセトンで洗浄して十分に風乾し、清澄な状態とした後、10wt%NaOH水溶液に10分間浸漬し、十分に水洗して再び風乾した。この光学レンズをハードコート液Aに浸し、30mm/分で引き上げた後、60℃で15分予備乾燥後、110℃で2時間加熱硬化して、ハードコート層を有する光学物品とした。この光学物品を用い、下記(1)〜(4)に示すフォトクロミック特性、及び、下記(5)〜(6)に示すフォトクロミックコート層とハードコート層の密着性、耐擦傷性を評価した。
【0102】
(1)最大吸収波長(λmax):得られたフォトクロミックコーティング層を有するレンズに、(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して20℃±1℃、フォトクロミックコート層表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm
2,245nm=24μW/cm
2で120秒間照射して発色させ、このときの最大吸収波長を(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD1000)により求めた。なお、該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
(2)発色濃度:120秒間光照射した後の、最大吸収波長における吸光度{ε(120)}と、光照射していない状態の硬化体の該波長における吸光度{ε(0)}との差{ε(120)−ε(0)}を求めこれを発色濃度とした。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
(3)退色半減期:120秒間光照射した後、光の照射を止め、該硬化体の最大波長における吸光度が前記{ε(120)−ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間{t1/2(min)}を測定した。この時間が短いほど退色速度が速くフォトクロミック性が優れているといえる。
(4)耐久性:光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。即ち、得られたフォトクロミックコート層を有すレンズをスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により200時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A
0)及び試験後の発色濃度(A
200)を測定し、{(A
200/A
0)×100}の値を残存率(%)として求めた。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。また、前記退色半減期の評価を試験の前後で行い、試験前の退色半減期(T
0)及び、試験後の退色半減期(T
200)を測定し、{(T
200/T
0)×100}の値を退色速度の遅延率(%)として求めた。
【0103】
(5)フォトクロミックコート層とハードコート層の密着性:ハードコート処理されたレンズのフォトクロミックコート層を有す側の表面(ハードコート層で覆われている)に、先端が鋭利なカッターナイフで1mm×1mmのマス目を100個つけ、続いて市販のセロテープ(登録商標)を貼り付け、次いでそのセロテープ(登録商標)を素早く剥がした時のハードコート層とフォトクロミックコート層の剥がれ状態を目視で確認した。剥がれずに残ったマス目の数に応じて、100(全く剥がれない)〜0(全て剥がれる)で表示した。
(6)ハードコート層の耐擦傷性:スチールウール(日本スチールウール(株)製ボンスター♯0000番)を用い、1Kgの荷重を加えながら、10往復レンズ表面(ハードコート層表面)を擦り、傷付いた程度を目視で評価した。評価基準は次の通りである。
A:ほとんど傷が付かない(目視で5本未満の擦傷である場合)。
B:極く僅かに傷が付く(目視で5本以上10本未満の擦傷がある場合)。
C:少し傷が付く(目視で10本以上20本未満の擦傷がある場合)。
D:はっきりと傷が付く(目視で20本以上の擦傷がある場合)。
実施例1のフォトクロミック硬化性組成物の組成を表1に、上記各物性の評価の結果を表4に示す。表4に示す通り、全ての物性について良好な結果が得られた。
なお、上記フォトクロミック硬化性組成物を褐色のガラス容器に入れ、40℃で3カ月間保存したものを用いて同様の評価を行った場合においても、全ての物性について良好な結果が得られた。
【0104】
実施例2〜13
表1〜3に示したフォトクロミック硬化性組成物を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、各物性を評価した。結果を表4に示す。表4に示す通り、全ての物性について良好な結果が得られた。
なお、上記フォトクロミック硬化性組成物(実施例2〜13のフォトクロミック硬化性組成物)を褐色のガラス容器に入れ、40℃で3カ月間保存したものを用いて同様の評価を行った場合においても、全ての物性について良好な結果が得られた。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
比較例1〜4
表5に示したフォトクロミック硬化性組成物を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、各物性を評価した。結果を表6に示す。
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
比較例1では、(メタ)アクリル重合性単量体中に存在するメタクリル基のモル数はアクリル基のモル数の11.2倍であった。本フォトクロミック硬化性組成物を用いて作製したフォトクロミックコーティングレンズはハードコート層の密着性に問題を生じた。
比較例2では、(メタ)アクリル重合性単量体中に存在するメタクリル基のモル数はアクリル基のモル数の2.4倍であった。本フォトクロミック硬化性組成物を用いて作製したフォトクロミックコーティングレンズは、ハードコート層の耐擦傷性に問題を生じた。
比較例3では、2〜4個の(メタ)アクリル基を有する重合性単量体の割合が、(メタ)アクリル重合性単量体中、65質量%であった。そのため、本フォトクロミック硬化性組成物を用いて作成したフォトクロミックコーティングレンズは、ハードコート層の耐擦傷性に問題を生じた。
比較例4では、6個の(メタ)アクリル基を有する重合性単量体を使用した。この硬化性組成物には、1分子中に(メタ)アクリル基を1個有する単官能重合性単量体および1分子中に(メタ)アクリル基を2〜4個有する多官能重合性単量体の合計100重量部中にはアクリル基が存在しない。このフォトクロミック硬化性組成物を用いて作製したフォトクロミックコーティングレンズは、退色速度の遅延に問題を生じた。