特許第5738464号(P5738464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5738464
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】銀微粒子分散液
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/02 20060101AFI20150604BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20150604BHJP
   B01F 17/52 20060101ALI20150604BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   B22F1/02 B
   B22F9/24 F
   B01F17/52
   B22F1/00 K
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-213600(P2014-213600)
(22)【出願日】2014年10月20日
【審査請求日】2014年11月4日
(31)【優先権主張番号】特願2013-255191(P2013-255191)
(32)【優先日】2013年12月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-79824(P2014-79824)
(32)【優先日】2014年4月9日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】樋之津 崇
(72)【発明者】
【氏名】柴山 知範
(72)【発明者】
【氏名】三好 宏昌
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010-177084(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/155615(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00〜8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸点が150〜300℃で溶解パラメータ(SP値)が8.0〜12.0の極性溶媒に、有機保護剤として炭素数8〜12のアミンで被覆された銀微粒子が、この銀微粒子に対して1.5〜5質量%のアクリル系分散剤とともに添加されていることを特徴とする、銀微粒子分散液。
【請求項2】
前記アミンがオクチルアミンであることを特徴とする、請求項1に記載の銀微粒子分散液。
【請求項3】
前記銀微粒子の平均一次粒子径が1〜100nmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の銀微粒子分散液。
【請求項4】
前記150〜300℃の極性溶媒がテルピネオールであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の銀微粒子分散液。
【請求項5】
前記150〜300℃の極性溶媒がジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルまたはジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の銀微粒子分散液。
【請求項6】
前記アクリル系分散剤がアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの少なくとも一方からなる分散剤であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の銀微粒子分散液。
【請求項7】
前記アクリル系分散剤がメタクリル酸ブチルエステルからなる分散剤であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の銀微粒子分散液。
【請求項8】
前記銀微粒子分散液中の銀の含有量が30〜90質量%であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の銀微粒子分散液。
【請求項9】
前記銀微粒子分散液中の前記極性溶媒の含有量が5〜70質量%であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の銀微粒子分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀微粒子分散液に関し、特に、電子部品の微細な電極や回路などの形成に使用する銀微粒子分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の微細な電極や回路などを形成するために、数nm〜数十nm程度の粒径の銀微粒子(銀ナノ粒子)を分散媒中に分散させた導電性インクや、銀ナノ粒子をバインダ樹脂および溶剤と混合してペースト状にした導電性ペーストを、基板上に塗布した後、100〜200℃程度の低温で加熱して焼成することによって、銀微粒子同士を焼結させて銀導電膜を形成することが知られている。
【0003】
このような導電性インクや導電性ペーストに使用する銀微粒子は、非常に活性が高く、低温でも焼結が進み易く、そのままでは粒子として不安定である。そのため、銀微粒子同士の焼結や凝集を防止して、銀微粒子の独立性や保存安定性を確保するために、銀微粒子の表面を有機化合物からなる有機保護剤で被覆して溶媒中に分散させた銀微粒子分散液として保存することが知られている。
【0004】
このような銀微粒子分散液に使用することができる有機保護剤で表面が被覆された銀微粒子として、炭素数6〜12の1級アミンからなる有機保護剤で被覆された平均粒子径3〜20nmの銀粒子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−138242号公報(段落番号0011−0012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように1級アミンのような有機保護剤で被覆された銀微粒子は、疎水性になるため、極性溶媒中で凝集体になり、極性溶媒に対する分散性が悪く、そのため、この銀微粒子を極性溶媒に分散させた銀微粒子分散液の粘度が高くなり、この銀微粒子分散液を使用して銀導電膜を作製すると、銀導電膜の抵抗が高くなるという問題がある。一方、このような有機保護剤で被覆された銀微粒子は、非極性溶媒に対する分散性は良好であるが、この銀微粒子を非極性溶媒に分散させた銀微粒子分散液と樹脂バインダを使用して導電性ペーストを作製すると、一般に非極性溶媒と樹脂バインダとの相溶性が悪く、樹脂バインダを溶解させることができないという問題がある。
【0007】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、極性溶媒を使用しても、銀微粒子の分散性が良好で、保存安定性に優れ、適度な粘度を有し、低温で焼成することができ、低抵抗の銀導電膜を作製することができる、銀微粒子分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、沸点が150〜300℃の極性溶媒に、有機保護剤として炭素数8〜12のアミンで被覆された銀微粒子を、この銀微粒子に対して1.5〜5質量%のアクリル系分散剤とともに添加することにより、極性溶媒を使用しても、銀微粒子の分散性が良好で、保存安定性に優れ、適度な粘度を有し、低温で焼成することができ、低抵抗の銀導電膜を作製することができる、銀微粒子分散液を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明による銀微粒子分散液は、沸点が150〜300℃の極性溶媒に、有機保護剤として炭素数8〜12のアミンで被覆された銀微粒子が、この銀微粒子に対して1.5〜5質量%のアクリル系分散剤とともに添加されていることを特徴とする。
【0010】
この銀微粒子分散液において、アミンがオクチルアミンであるのが好ましく、銀微粒子の平均一次粒子径が1〜100nmであるのが好ましい。また、沸点が150〜300℃の極性溶媒は、グリコールエーテル系溶剤またはテルピネオールであるのが好ましく、グリコールエーテル系溶剤がジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルまたはジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートであるのが好ましい。また、アクリル系分散剤は、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの少なくとも一方からなる分散剤であるのが好ましく、メタクリル酸ブチルエステルからなる分散剤であるのがさらに好ましい。また、銀微粒子分散液中の銀の含有量が30〜90質量%であるのが好ましく、極性溶媒の含有量が5〜70質量%であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、極性溶媒を使用しても、銀微粒子の分散性が良好で、保存安定性に優れ、適度な粘度を有し、低温で焼成することができ、低抵抗の銀導電膜を作製することができる、銀微粒子分散液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による銀微粒子分散液の実施の形態は、沸点が150〜300℃、好ましくは200〜260℃の極性溶媒に、有機保護剤として炭素数8〜12のアミンで被覆された銀微粒子が、この銀微粒子に対して1.5〜5質量%のアクリル系分散剤とともに添加されている。
【0013】
炭素数8〜12のアミンとして、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミンなどを使用することができ、オクチルアミンを使用するのが好ましい。このような1級アミンで銀微粒子を被覆することにより、銀微粒子間の焼結を防ぎ、銀微粒子間の距離を適度に保つことができる。1級アミンの炭素数が12よりも大きくなると、熱分解時に高い熱エネルギーが必要となり、一方、炭素数が8より小さくなると、銀微粒子を被覆する作用が弱くなり、銀微粒子を分散させるのが困難になり、凝集粒子になり易く、また、経時安定性が悪くなる。
【0014】
銀微粒子は、平均一次粒子径が1〜100nmであるのが好ましく、10〜50nmであるのがさらに好ましく、20〜50nmであるのが最も好ましい。平均一次粒子径が100nmよりも大きいと、銀微粒子として期待される低温焼結性が得られ難くなる。
【0015】
沸点が150〜300℃の極性溶媒として、エーテル基を有するグリコールエーテル系溶剤またはテルピネオールを使用するのが好ましい。グリコールエーテル系溶剤として、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルまたはジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートであるのが好ましい。なお、この極性溶媒は、溶解パラメータ(SP値)が8.0〜12.0であるのが好ましく、8.5〜11.5であるのがさらに好ましい。
【0016】
アクリル系分散剤の添加量は、銀微粒子に対して1.5〜5質量%であり、1.5〜3質量%であるのが好ましい。銀微粒子分散液中のアクリル系分散剤が5質量%を超えると、銀微粒子分散液を使用して形成した銀導電膜の比抵抗値が高くなるおそれがある。アクリル系分散剤は、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの少なくとも一方からなる分散剤であるのが好ましく、これらの分散剤がオキシアルキレン基を有するのが好ましい。
【0017】
メタクリル酸エステルからなる分散剤としては、以下の式[I]で示すメタクリル酸ブチルエステルを骨格とし、数万程度以下の低分子量であり、官能基を有しない化合物を含む分散剤を使用するのが好ましい。骨格にカルボキシル基を有すると、銀微粒子の表面のアミンと置換して、焼結性が悪くなる。また、分散剤の重量平均分子量は、数万程度より大きくなると、粘度が高くなり過ぎるので、好ましくは数万程度以下の低分子量であり、さらに好ましくは40,000以下であり、最も好ましくは25,000以下である。このようなメタクリル酸ブチルエステルを骨格とした分散剤として、積水化学工業株式会社製のM1400(ジエチレングリコールモノブチルエーテル溶剤中に固形分としてメタクリル酸ブチルエステル43質量%、重量平均分子量20,000)、M1200(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート溶剤中に固形分としてメタクリル酸ブチルエステル43質量%、重量平均分子量20,000)、M1000(テルピネオール溶剤中に固形分としてメタクリル酸ブチルエステル43質量%、重量平均分子量20,000)などを使用することができる。
【0018】
【化1】
【0019】
銀微粒子分散液中の銀の含有量は、30〜90質量%であるのが好ましく、70〜90質量%であるのがさらに好ましい。また、極性溶媒の含有量は、5〜70質量%であるのが好ましく、7〜15質量%であるのがさらに好ましい。
【0020】
本発明による銀微粒子分散液の実施の形態は、水中において、有機保護剤として炭素数8〜12のアミンの存在下で、銀化合物を還元処理して、有機保護剤で被覆された銀微粒子を含む水スラリーを得た後、デカンテーションにより銀微粒子を沈降させ、上澄み液を除去して、得られたウエットな状態の銀微粒子をアクリル系分散剤とともに沸点が150〜300℃の極性溶媒に添加した後、窒素雰囲気中において室温〜100℃、好ましくは80℃以下の温度で12時間以上乾燥させて水分を除去することにより製造することができる。なお、乾燥温度が高過ぎると銀微粒子同士が焼結してしまうので好ましくない。
【0021】
有機保護剤は、銀化合物の銀に対するモル比が0.05〜6になるように添加するのが好ましい。
【0022】
還元処理は、60℃より低い温度で行われるのが好ましく、10〜50℃の温度で行われるのがさらに好ましい。60℃以上になると、銀微粒子同士が有機保護剤で保護されるより、銀微粒子同士が凝集して融着し易くなるので好ましくない。また、還元処理の反応時間は、30分以下であるのが好ましく、10分以下であるのがさらに好ましい。
【0023】
還元剤として、銀を還元することができれば、種々の還元剤を使用することができるが、酸性の還元剤の場合、カルボニル基を有する還元剤を使用すると、銀微粒子を得ることができるものの、一部が有機保護剤と反応してアミド結合してしまうので、塩基性の還元剤を使用するのが好ましく、ヒドラジンまたはNaBHを使用するのがさらに好ましい。この還元剤は、銀化合物の銀に対するモル比が0.1〜2.0になるように添加するのが好ましい。
【0024】
銀化合物として、銀塩または銀酸化物を使用するのが好ましく、硝酸銀を使用するのがさらに好ましい。この銀化合物は、反応水溶液中において銀イオン濃度が0.01〜1.0モル/Lになるように添加するのが好ましく、0.03〜0.2モル/Lになるように添加するのがさらに好ましい。
【0025】
なお、「平均一次粒子径」は、銀微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ株式会社製のS−4700)または透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製のJEM−1011)により所定の倍率(粒子径が20nm以下ではTEMにより180,000倍、20nmより大きく30nm以下ではSEMにより80,000倍、30nmより大きく100nm以下ではSEMにより50,000倍、100nmより大きく300nm以下ではSEMにより30,000倍、300nmより大きい場合はSEMにより10,000倍)で観察し、そのSEM画像またはTEM画像上の100個以上の任意の銀微粒子について、画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社製のA像くん(登録商標))により算出することができる。
【0026】
また、得られた銀微粒子分散液を三本ロールミル、ビーズミル、湿式ジェットミル、超音波ホモジナイザーなどにより混練脱泡することによって銀微粒子混練物を作製し、基板上に塗布した後、100〜200℃程度の低温で加熱して焼成することによって、銀微粒子同士を焼結させて銀導電膜を形成することができる。この銀微粒子混練物に含まれる銀微粒子の粒度は、グラインドゲージにより評価すると、最大粒径Dmax(第1スクラッチ(1stスクラッチ))が15μm以下であるのが好ましく、10μm以下であるのがさらに好ましい。また、銀微粒子混練物の粘度は、銀導電膜を形成するために銀微粒子混練物を基板に塗布する際に、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビアオフセット法などの印刷方法により塗布する場合には、25℃、5rpmで100Pa・s以下であるのが好ましく、80Pa・s以下であるのがさらに好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明による銀微粒子分散液の実施例について詳細に説明する。
【0028】
[実施例1]
5Lの反応槽に反応媒体としての純水3422.0gを入れて40℃に調温した後、有機保護剤としてのオクチルアミン(和光純薬株式会社製の特級、分子量129.24、炭素数8)51.1g(Agに対する有機保護剤のモル比(オクチルアミンのモル数/銀のモル数)=2)と、還元剤としてのヒドラジン水和物(大塚化学株式会社の80%溶液)6.2g(Agに対する還元剤のモル比(ヒドラジン水和物のモル数/銀のモル数)=0.5)を添加し、不活性ガスとして窒素ガスを2L/分の流量で吹き込みながら、羽根を備えた攪拌棒を外部モータにより345rpmで回転させて攪拌した。次いで、銀化合物として硝酸銀結晶(東洋化学株式会社製)33.6gを純水180.0gに溶かした水溶液を一挙に添加した後、2分間攪拌して、有機保護剤としてオクチルアミンで被覆された銀微粒子を含む水スラリーを得た。
【0029】
このようにして得られた水スラリー中の銀微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ株式会社製のS−4700)により倍率50,000倍で観察し、そのSEM画像上の100個以上の任意の銀微粒子について、画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社製のA像くん(登録商標))により平均一次粒子径を算出したところ、35.6nmであった。
【0030】
次に、得られた銀微粒子の水スラリーからデカンテーションにより銀微粒子を沈降させた後、上澄み液を除去し、ウエットな状態の銀微粒子を回収した。
【0031】
次に、回収したウエットな状態の(オクチルアミンで被覆された)銀微粒子59.9g(オクチルアミンで被覆された銀微粒子65.5質量%)を、アクリル系分散剤溶液として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルにメタクリル酸ブチルエステルを溶解させた分散液(積水化学工業株式会社製のM1400)2.8gとともに、沸点が150〜300℃の極性溶媒としてのジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃、溶解パラメータ(SP値)9.5)3.5gに添加した後、窒素雰囲気中において室温で24時間乾燥させて水分を除去することにより、86.2質量%の銀微粒子と11.2質量%の沸点が150〜300℃の極性溶媒と2.6質量%のアクリル系分散剤溶液(M1400の固形分であるメタクリル酸ブチルエステルからなるアクリル系分散剤が銀微粒子に対して3質量%)を含む銀微粒子分散液を得た。
【0032】
次に、得られた銀微粒子分散液を三本ロールミルに通し、混練脱泡を行って銀微粒子混練物を作製した。この銀微粒子混練物の粘度を粘度測定装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製のHAAKE ReoStress6000)により、25℃、5rpmで測定したところ、70.6Pa・sであった。また、銀微粒子混練物に含まれる銀微粒子の粒度をグラインドゲージにより評価したところ、最大粒径Dmax(第1スクラッチ(1stスクラッチ))が6μm、第4スクラッチ(4thスクラッチ)(グラインドゲージによる混練物中の銀微粒子の粒度測定において最大粒径から4番目に大きい粒径)が1μm未満であった。
【0033】
また、得られた銀微粒子分散液をメタルマスクにより10mm四方の大きさで厚さ30μmになるようにガラス基板上に塗布した後、熱風乾燥機(ヤマト科学株式会社製のDKM400)によって130℃で30分間焼成して銀微粒子を焼結させることにより、ガラス基板上に銀導電膜を形成した。この銀導電膜の比抵抗値を、表面抵抗測定装置(株式会社東洋精密製のSURFCOM1500DX)で測定した表面抵抗と膜厚測定器で得られた膜厚から算出したところ、11.5μΩ・cmであった。
【0034】
また、得られた銀微粒子分散液を乾燥させて走査型電子顕微鏡(SEM)で観察するとともに、得られた銀微粒子分散液を大気中において25℃で3日間保管後にSEMで観察して比較したところ、3日後にも銀微粒子の凝集が殆どなく、保存安定性に優れていることがわかった。
【0035】
[実施例2]
沸点が150〜300℃の極性溶媒としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルの添加量を4.9g、アクリル系分散剤溶液の添加量を1.4gとした以外は、実施例1と同様の方法により、86.2質量%の銀微粒子と12.5質量%の沸点が150〜300℃の極性溶媒と1.3質量%のアクリル系分散剤溶液(M1400の固形分であるメタクリル酸ブチルエステルからなるアクリル系分散剤が銀微粒子に対して1.5質量%)を含む銀微粒子分散液を得た。
【0036】
得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により、銀微粒子混練物を作製した。この銀微粒子混練物の粘度を、実施例1と同様の方法により測定したところ、52.3Pa・sであった。また、銀微粒子混練物に含まれる銀微粒子の粒度をグラインドゲージにより評価したところ、最大粒径Dmax(第1スクラッチ)が3μm、第4スクラッチが1μm未満であった。また、得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により形成した銀導電膜の比抵抗値を、実施例1と同様の方法により算出したところ、5.6μΩ・cmであった。
【0037】
また、得られた銀微粒子分散液について、実施例1と同様の方法により、SEMで観察して比較したところ、3日後にも銀微粒子の凝集が殆どなく、保存安定性に優れていることがわかった。
【0038】
[実施例3]
沸点が150〜300℃の極性溶媒としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルの代わりに、ジエチレングリコールジブチルエーテル(沸点255℃、SP値9.5)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、86.2質量%の銀微粒子と11.2質量%の沸点が150〜300℃の極性溶媒と2.6質量%のアクリル系分散剤溶液(M1400の固形分であるメタクリル酸ブチルエステルからなるアクリル系分散剤が銀微粒子に対して3質量%)を含む銀微粒子分散液を得た。
【0039】
得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により、銀微粒子混練物を作製した。この銀微粒子混練物の粘度を、実施例1と同様の方法により測定したところ、78.4Pa・sであった。また、銀微粒子混練物に含まれる銀微粒子の粒度をグラインドゲージにより評価したところ、最大粒径Dmax(第1スクラッチ)が10μm、第4スクラッチが6μmであった。また、得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により形成した銀導電膜の比抵抗値を、実施例1と同様の方法により算出したところ、10.3μΩ・cmであった。
【0040】
また、得られた銀微粒子分散液について、実施例1と同様の方法により、SEMで観察して比較したところ、3日後にも銀微粒子の凝集が殆どなく、保存安定性に優れていることがわかった。
【0041】
[実施例4]
沸点が150〜300℃の極性溶媒としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルの代わりに、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点247℃、SP値8.9)を使用し、アクリル系分散剤溶液として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートにメタクリル酸ブチルエステルを溶解させた分散液(積水化学工業株式会社製のM1400)の代わりに、アクリル系分散剤溶液(積水化学工業株式会社製のM1200)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、86.2質量%の銀微粒子と11.2質量%の沸点が150〜300℃の極性溶媒と2.6質量%のアクリル系分散剤溶液(M1200の固形分であるメタクリル酸ブチルエステルからなるアクリル系分散剤が銀微粒子に対して3質量%)を含む銀微粒子分散液を得た。
【0042】
得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により、銀微粒子混練物を作製した。この銀微粒子混練物の粘度を、実施例1と同様の方法により測定したところ、40.2Pa・sであった。また、銀微粒子混練物に含まれる銀微粒子の粒度をグラインドゲージにより評価したところ、最大粒径Dmax(第1スクラッチ)が6μm、第4スクラッチが1μm未満であった。また、得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により形成した銀導電膜の比抵抗値を、実施例1と同様の方法により算出したところ、5.7μΩ・cmであった。
【0043】
また、得られた銀微粒子分散液について、実施例1と同様の方法により、SEMで観察して比較したところ、3日後にも銀微粒子の凝集が殆どなく、保存安定性に優れていることがわかった。
【0044】
[実施例5]
沸点が150〜300℃の極性溶媒としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルの代わりに、テルピネオール(沸点217℃、SP値11.1)を使用し、アクリル系分散剤溶液(積水化学工業株式会社製のM1400)の代わりに、アクリル系分散剤溶液として、テルピネオールにメタクリル酸ブチルエステルを溶解させた分散液(積水化学工業株式会社製のM1000)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、86.2質量%の銀微粒子と11.2質量%の沸点が150〜300℃の極性溶媒と2.6質量%のアクリル系分散剤溶液(M1000の固形分であるメタクリル酸ブチルエステルからなるアクリル系分散剤が銀微粒子に対して3質量%)を含む銀微粒子分散液を得た。
【0045】
得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により、銀微粒子混練物を作製した。この銀微粒子混練物の粘度を、実施例1と同様の方法により測定したところ、35.0Pa・sであった。また、銀微粒子混練物に含まれる銀微粒子の粒度をグラインドゲージにより評価したところ、最大粒径Dmax(第1スクラッチ)が6μm、第4スクラッチが1μm未満であった。また、得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により形成した銀導電膜の比抵抗値を、実施例1と同様の方法により算出したところ、6.2μΩ・cmであった。
【0046】
また、得られた銀微粒子分散液について、実施例1と同様の方法により、SEMで観察して比較したところ、3日後にも銀微粒子の凝集が殆どなく、保存安定性に優れていることがわかった。
【0047】
[実施例6]
5Lの反応槽に反応媒体としての純水3422.0gを入れて40℃に調温した後、有機保護剤としてのオクチルアミン(和光純薬株式会社製の特級、分子量129.24、炭素数8)51.1g(Agに対する有機保護剤のモル比2)と、還元剤としてのヒドラジン水和物(大塚化学株式会社の80%溶液)12.4g(Agに対する還元剤のモル比1)を添加し、不活性ガスとして窒素ガスを2L/分の流量で吹き込みながら、羽根を備えた攪拌棒を外部モータにより345rpmで回転させて攪拌した。次いで、銀化合物として硝酸銀結晶(東洋化学株式会社製)33.6gと28質量%のアンモニア水(和光純薬工業株式会社製の特級)55.2gを純水180.0gに溶かした水溶液を一挙に添加した後、2分間攪拌して、有機保護剤としてオクチルアミンで被覆された銀微粒子を含む水スラリーを得た。
【0048】
このようにして得られた水スラリー中の銀微粒子の平均一次粒子径を実施例1と同様の方法により算出したところ、87.5nmであった。
【0049】
次に、得られた銀微粒子の水スラリーからデカンテーションにより銀微粒子を沈降させた後、上澄み液を除去し、ウエットな状態の銀微粒子を回収した。
【0050】
次に、回収したウエットな状態の(オクチルアミンで被覆された)銀微粒子59.9g(オクチルアミンで被覆された銀微粒子66.9質量%)を、アクリル系分散剤溶液(積水化学工業株式会社製のM1400)1.4gとともに、沸点が150〜300℃の極性溶媒としてのジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃、SP値9.5)5.0gに添加した後、窒素雰囲気中において室温で24時間乾燥させて水分を除去することにより、86.2質量%の銀微粒子と12.5質量%の沸点が150〜300℃の極性溶媒と1.3質量%のアクリル系分散剤溶液(M1400の固形分であるメタクリル酸ブチルエステルからなるアクリル系分散剤が銀微粒子に対して1.5質量%)を含む銀微粒子分散液を得た。
【0051】
得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により、銀微粒子混練物を作製した。この銀微粒子混練物の粘度を、実施例1と同様の方法により測定したところ、35.2Pa・sであった。また、銀微粒子混練物に含まれる銀微粒子の粒度をグラインドゲージにより評価したところ、最大粒径Dmax(第1スクラッチ)が13μm、第4スクラッチが1μm未満であった。また、得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により形成した銀導電膜の比抵抗値を、実施例1と同様の方法により算出したところ、6.3μΩ・cmであった。
【0052】
また、得られた銀微粒子分散液について、実施例1と同様の方法により、SEMで観察して比較したところ、3日後にも銀微粒子の凝集が殆どなく、保存安定性に優れていることがわかった。
【0053】
[実施例7]
実施例1と同様の方法で回収したウエットな状態の(オクチルアミンで被覆された)銀微粒子59.9g(オクチルアミンで被覆された銀微粒子65.5質量%)を、アクリル系分散剤溶液(積水化学工業株式会社製のM1400)2.8gとともに、沸点が150〜300℃の極性溶媒としてのジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃、SP値9.5)9.5gに添加した後、窒素雰囲気中において室温で24時間乾燥させて水分を除去することにより、76.1質量%の銀微粒子と21.6質量%の沸点が150〜300℃の極性溶媒と2.3質量%のアクリル系分散剤溶液(M1400の固形分であるメタクリル酸ブチルエステルからなるアクリル系分散剤が銀微粒子に対して3質量%)を含む銀微粒子分散液を得た。
【0054】
得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により、銀微粒子混練物を作製した。この銀微粒子混練物の粘度を、実施例1と同様の方法により測定したところ、0.65Pa・sであった。また、銀微粒子混練物に含まれる銀微粒子の粒度をグラインドゲージにより評価したところ、最大粒径Dmax(第1スクラッチ)が9μm、第4スクラッチが1μm未満であった。また、得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により形成した銀導電膜の比抵抗値を、実施例1と同様の方法により算出したところ、9.0μΩ・cmであった。
【0055】
また、得られた銀微粒子分散液について、実施例1と同様の方法により、SEMで観察して比較したところ、3日後にも銀微粒子の凝集が殆どなく、保存安定性に優れていることがわかった。
【0056】
[実施例8]
実施例1と同様の方法で回収したウエットな状態の(オクチルアミンで被覆された)銀微粒子59.9g(オクチルアミンで被覆された銀微粒子65.5質量%)を、アクリル系分散剤溶液(積水化学工業株式会社製のM1400)2.8gとともに、沸点が150〜300℃の極性溶媒としてのジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃、SP値9.5)17.5gに添加した後、窒素雰囲気中において室温で24時間乾燥させて水分を除去することにより、65.9質量%の銀微粒子と32.1質量%の沸点が150〜300℃の極性溶媒と2.0質量%のアクリル系分散剤溶液(M1400の固形分であるメタクリル酸ブチルエステルからなるアクリル系分散剤が銀微粒子に対して3質量%)を含む銀微粒子分散液を得た。
【0057】
得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により、銀微粒子混練物を作製した。この銀微粒子混練物の粘度を、実施例1と同様の方法により測定したところ、0.04Pa・sであった。また、銀微粒子混練物に含まれる銀微粒子の粒度をグラインドゲージにより評価したところ、最大粒径Dmax(第1スクラッチ)が1μm未満、第4スクラッチが1μm未満であった。また、得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により形成した銀導電膜の比抵抗値を、実施例1と同様の方法により算出したところ、7.6μΩ・cmであった。
【0058】
また、得られた銀微粒子分散液について、実施例1と同様の方法により、SEMで観察して比較したところ、3日後にも銀微粒子の凝集が殆どなく、保存安定性に優れていることがわかった。
【0059】
[比較例1]
沸点が150〜300℃の極性溶媒としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルの添加量を6.3gとし、アクリル系分散剤溶液を添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、86.2質量%の銀微粒子と13.8質量%の沸点が150〜300℃の極性溶媒を含む銀微粒子分散液を得た。
【0060】
得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により、銀微粒子混練物を作製した。この銀微粒子混練物の粘度について、実施例1と同様の方法により測定を試みたが、粘度が高過ぎて、測定することができなかった。また、銀微粒子混練物に含まれる銀微粒子の粒度をグラインドゲージにより評価したところ、最大粒径Dmax(第1スクラッチ)が50μm以上、第4スクラッチが40μmであった。
【0061】
また、得られた銀微粒子分散液について、実施例1と同様の方法により、SEMで観察して比較したところ、3日後にも銀微粒子の凝集が殆どなく、保存安定性に優れていることがわかった。
【0062】
[比較例2]
有機保護剤としてオクチルアミンの代わりにヘキシルアミン(和光純薬株式会社製の特級、分子量101.19、炭素数6)39.6g(Agに対する有機保護剤のモル比2)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、有機保護剤としてヘキシルアミンで被覆された銀微粒子を含む水スラリーを得た。なお、水スラリー中の銀微粒子の平均一次粒子径を、実施例1と同様の方法により算出したところ、32.1nmであった。また、得られた銀微粒子を含む水スラリーから、実施例1と同様の方法により、86.2質量%の銀微粒子と11.2質量%の沸点が150〜300℃の極性溶媒と2.6質量%のアクリル系分散剤溶液(M1400の固形分であるメタクリル酸ブチルエステルからなるアクリル系分散剤が銀微粒子に対して3質量%)を含む銀微粒子分散液を得た。
【0063】
得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により、銀微粒子混練物を作製した。この銀微粒子混練物の粘度を、実施例1と同様の方法により測定したところ、61.7Pa・sであった。また、銀微粒子混練物に含まれる銀微粒子の粒度をグラインドゲージにより評価したところ、最大粒径Dmax(第1スクラッチ)が10μm、第4スクラッチが3μmであった。また、得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により形成した銀導電膜の比抵抗値を、実施例1と同様の方法により算出したところ、7.3μΩ・cmであった。
【0064】
また、得られた銀微粒子分散液について、実施例1と同様の方法により、SEMで観察して比較したところ、3日後では銀微粒子が凝集し、保存安定性が悪いことがわかった。
【0065】
[比較例3]
5Lの反応槽に反応媒体としての純水3422.0gを入れて40℃に調温した後、有機保護剤としてのオレイルアミン(和光純薬株式会社製の特級、分子量267.47、炭素数18)105.8g(Agに対する有機保護剤のモル比2)と、銀化合物として硝酸銀結晶(東洋化学株式会社製)33.6gを純水180.0gに溶かした水溶液を添加し、不活性ガスとして窒素ガスを2L/分の流量で吹き込みながら、羽根を備えた攪拌棒を外部モータにより345rpmで回転させて攪拌した。次いで、還元剤としてのNaBH(和光純薬工業株式会社製の特級)2.8g(Agに対する還元剤のモル比1.5)を40質量%のNaOH水溶液20.6gに溶解した水溶液を一挙に添加した後、2分間攪拌して、有機保護剤としてオレイルアミンで被覆された銀微粒子を含む水スラリーを得た。この水スラリー中の銀微粒子の平均一次粒子径を、実施例1と同様の方法により算出したところ、24.3nmであった。また、得られた銀微粒子を含む水スラリーから、実施例1と同様の方法により、86.2質量%の銀微粒子と11.2質量%の沸点が150〜300℃の極性溶媒と2.6質量%のアクリル系分散剤溶液(M1400の固形分であるメタクリル酸ブチルエステルからなるアクリル系分散剤が銀微粒子に対して3質量%)を含む銀微粒子分散液を得た。
【0066】
得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により、銀微粒子混練物を作製した。この銀微粒子混練物の粘度を、実施例1と同様の方法により測定したところ、169.8Pa・sであった。また、銀微粒子混練物に含まれる銀微粒子の粒度をグラインドゲージにより評価したところ、最大粒径Dmax(第1スクラッチ)が25μm、第4スクラッチが8μmであった。また、得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により形成した銀導電膜の比抵抗値を、実施例1と同様の方法により算出したところ、411.2μΩ・cmであった。
【0067】
[比較例4]
アクリル系分散剤溶液(積水化学工業株式会社製のM1400)の代わりにポリウレタン系分散剤溶液(東洋紡株式会社製のバイロンUR8300、メチルエチルケトン/トルエン(50質量%/50質量%)溶剤中に固形分30質量%)4.0gを添加した以外は、実施例1と同様の方法により、86.2質量%の銀微粒子と11.2質量%のグリコールエーテル系溶剤と2.6質量%のポリウレタン系分散剤溶液(UR8300の固形分であるウレタン変性ポリエステルからなる分散剤が銀微粒子に対して3質量%)を含む銀微粒子分散液を得た。
【0068】
得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により、銀微粒子混練物を作製した。この銀微粒子混練物の粘度を、実施例1と同様の方法により測定したところ、338.4Pa・sであった。また、銀微粒子混練物に含まれる銀微粒子の粒度をグラインドゲージにより評価したところ、最大粒径Dmax(第1スクラッチ)が12μm、第4スクラッチが3μmであった。また、得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により形成した銀導電膜の比抵抗値を、実施例1と同様の方法により算出したところ、8.8μΩ・cmであった。
【0069】
[比較例5]
沸点が150〜300℃の極性溶媒としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルの添加量を5.5g、アクリル系分散剤溶液(積水化学工業株式会社製のM1400)の添加量を0.9gとした以外は、実施例1と同様の方法により、86.0質量%の銀微粒子と13.2質量%の沸点が150〜300℃の極性溶媒と0.8質量%のアクリル系分散剤溶液(M1400の固形分であるメタクリル酸ブチルエステルからなるアクリル系分散剤が銀微粒子に対して1質量%)を含む銀微粒子分散液を得た。
【0070】
得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により、銀微粒子混練物を作製した。この銀微粒子混練物の粘度を、実施例1と同様の方法により測定したところ、121.0Pa・sであった。また、銀微粒子混練物に含まれる銀微粒子の粒度をグラインドゲージにより評価したところ、最大粒径Dmax(第1スクラッチ)が22μm、第4スクラッチが4μmであった。また、得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により形成した銀導電膜の比抵抗値を、実施例1と同様の方法により算出したところ、4.9μΩ・cmであった。
【0071】
[比較例6]
5Lの反応槽に反応媒体としての純水3422.0gを入れて40℃に調温した後、有機保護剤としてのオクチルアミン(和光純薬株式会社製の特級、分子量129.24、炭素数8)51.1g(Agに対する有機保護剤のモル比2)と、還元剤としてのヒドラジン水和物(大塚化学株式会社の80%溶液)6.2g(Agに対する還元剤のモル比2)と、濃度50質量%の水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製)26gを添加し、不活性ガスとして窒素ガスを2L/分の流量で吹き込みながら、羽根を備えた攪拌棒を外部モータにより345rpmで回転させて攪拌した。次いで、銀化合物として硝酸銀結晶(東洋化学株式会社製)33.6gを純水180.0gに溶かした水溶液を一挙に添加した後、2分間攪拌して、有機保護剤としてオクチルアミンで被覆された銀微粒子を含む水スラリーを得た。
【0072】
このようにして得られた水スラリー中の銀微粒子の平均一次粒子径を走査型電子顕微鏡の倍率180,000倍にした以外は実施例1と同様の方法により算出したところ、18.3nmであった。
【0073】
次に、得られた銀微粒子の水スラリーからデカンテーションにより銀微粒子を沈降させた後、上澄み液を除去し、ウエットな状態の銀微粒子を回収した。
【0074】
次に、回収したウエットな状態の(オクチルアミンで被覆された)銀微粒子59.9g(オクチルアミンで被覆された銀微粒子51.8質量%)を、アクリル系分散剤溶液(積水化学工業株式会社製のM1400)6.3gとともに、沸点が150〜300℃の極性溶媒としてのジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃、SP値9.5)0.4gに添加した後、窒素雰囲気中において室温で24時間乾燥させて水分を除去することにより、82.2質量%の銀微粒子と10.6質量%の沸点が150〜300℃の極性溶媒と7.2質量%のアクリル系分散剤溶液(M1400の固形分であるメタクリル酸ブチルエステルからなるアクリル系分散剤が銀微粒子に対して8質量%)を含む銀微粒子分散液を得た。
【0075】
得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により、銀微粒子混練物を作製した。この銀微粒子混練物の粘度を、実施例1と同様の方法により測定したところ、61.9Pa・sであった。また、銀微粒子混練物に含まれる銀微粒子の粒度をグラインドゲージにより評価したところ、最大粒径Dmax(第1スクラッチ)が2μm、第4スクラッチが1μm未満であった。また、得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により形成した表面抵抗は、オーバーロード(OL)で測定不能であり、銀導電膜の比抵抗値を算出することができなかった。
【0076】
[比較例7]
沸点が150〜300℃の極性溶媒としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルの代わりに、エチレングリコール(沸点197℃、SP値14.6)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、86.2質量%の銀微粒子と11.2質量%の沸点が150〜300℃の極性溶媒と2.6質量%のアクリル系分散剤溶液(M1400の固形分であるメタクリル酸ブチルエステルからなるアクリル系分散剤が銀微粒子に対して3質量%)を含む銀微粒子分散液を得た。
【0077】
得られた銀微粒子分散液から、実施例1と同様の方法により、銀微粒子混練物の作製を試みたが、分離により、ペーストとして作製することができなかった。
【0078】
これらの実施例および比較例の結果を表1〜表3に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【要約】
【課題】極性溶媒を使用しても、銀微粒子の分散性が良好で、保存安定性に優れ、適度な粘度を有し、低温で焼成することができ、低抵抗の銀導電膜を作製することができる、銀微粒子分散液を提供する。
【解決手段】有機保護剤としてオクチルアミンなどの炭素数8〜12のアミンで被覆された平均一次粒子径1〜100nmの銀微粒子(銀微粒子分散液中の銀の含有量が30〜90質量%)と、沸点が150〜300℃の極性溶媒(5〜70質量%)と、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの少なくとも一方からなる分散剤などのアクリル系分散剤(銀微粒子に対して1.5〜5質量%)とを含む銀微粒子分散液を製造する。
【選択図】なし