(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738549
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】包装済石英ガラスルツボ用クレーン装置およびこの装置を用いる包装済石英ガラスルツボの梱包方法
(51)【国際特許分類】
B66C 1/28 20060101AFI20150604BHJP
B66C 1/62 20060101ALI20150604BHJP
B65G 47/90 20060101ALI20150604BHJP
B65B 35/16 20060101ALI20150604BHJP
B65B 5/04 20060101ALI20150604BHJP
C30B 15/10 20060101ALI20150604BHJP
C30B 29/06 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
B66C1/28 D
B66C1/62 Z
B65G47/90 A
B65B35/16
B65B5/04
C30B15/10
C30B29/06 502B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-147511(P2010-147511)
(22)【出願日】2010年6月29日
(65)【公開番号】特開2011-42503(P2011-42503A)
(43)【公開日】2011年3月3日
【審査請求日】2013年4月4日
(31)【優先権主張番号】特願2009-171485(P2009-171485)
(32)【優先日】2009年7月22日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】庄内 学
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 平
(72)【発明者】
【氏名】白川 稔
(72)【発明者】
【氏名】池端 修一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋
【審査官】
筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−107163(JP,A)
【文献】
特開平07−061583(JP,A)
【文献】
特開2001−010611(JP,A)
【文献】
特開2000−219207(JP,A)
【文献】
特開2002−029886(JP,A)
【文献】
特開平11−322493(JP,A)
【文献】
特開平07−276282(JP,A)
【文献】
実開平05−089386(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00 − 3/20
B65B 5/00 − 5/12
B65B 35/00 − 35/58
B65G 47/90 − 47/96
C30B 1/00 − 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装済の石英ガラスルツボを配置した吊り上げ場所の上方と梱包用コンテナを配置した吊り降ろし場所の上方との間の経路上を往復動可能に、かつ該経路から前記吊り上げ場所および吊り降ろし場所のそれぞれにおいて前記経路に対して昇降可能に設置されるクレーン装置であって、
前記昇降方向に延びる4本のアームを有し、該4本のアームを四角形の頂点に配置するとともに、該四角形の対角線上のアーム対を、リンク機構およびスライダーを介して相互に対角線方向にスライド移動可能なように進退可能に設け、各アームは先端に前記アームの進行方向に向かって水平に延びる部材の先端から上方へ向かって突出する爪を有することを特徴とする包装済石英ガラスルツボ用クレーン装置。
【請求項2】
包装済の石英ガラスルツボをクレーン装置にて吊り上げて該クレーン装置を四角柱状の梱包用コンテナまで移動し、該梱包用コンテナ内に石英ガラスルツボを吊り降ろすに当たり、
前記クレーン装置として、前記吊り上げ方向に延びる4本のアームを有し、該4本のアームを前記梱包用コンテナの四隅に対応する四角形の頂点に配置するとともに、該四角形の対角線上のアーム対を、リンク機構およびスライダーを介して相互に対角線方向にスライド移動可能なように進退可能に設け、各アームの先端に前記アームの進行方向に向かって水平に延びる部材の先端から上方へ向かって突出する爪を設けたクレーン装置を用いて、前記4本のアームを前記包装と非接触とし、かつ前記爪にて包装済の石英ガラスルツボの底面を支持することによって、前記吊り上げ、移動および吊り降ろしを行い、梱包用コンテナ内に石英ガラスルツボを積み込むことを特徴とする包装済石英ガラスルツボの梱包方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば単結晶シリコンの引上げに使用する石英ガラスルツボ、特に包装済の石英ガラスルツボの搬送に供するクレーン装置およびその装置を用いる梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、石英ガラスルツボ(以下、単にルツボとも示す)は、製造後に洗浄され、その後検査過程を経て袋詰めされて出荷される。近年、半導体材料の高純度化に伴い、その製造に直接使用するルツボについても汚染を最小限に抑える努力がなされている。例えば、ルツボを単結晶シリコンの引き上げに使用する際には、更に超純水等で洗浄してから使用に供している。また、単結晶シリコンの製造効率を高める観点から、ルツボのサイズは大径化する傾向にあり、このような大径のルツボの取扱いは難しく、製造後の検査や袋詰め工程においてルツボの汚染、とりわけルツボ外周部に残存する粉末が内周部に入り込む汚染をまねき易い。
【0003】
このような汚染の問題を避けるには、洗浄後の清浄な状態のルツボが人手を介さずに機械的に包装されることが有効であるが、大型のルツボを包装するのは必ずしも容易ではない。特に、ルツボの内周部の汚染を可能な限り回避することが希求されるが、ルツボ全体を単に袋詰めしたのでは、ルツボ外周の付着物が内周部に入り込む虞があり、この場合、内周部を清浄な状態に保てなくなる。さらに、ルツボ全体の包装を開封した後に引き上げ装置に設置するまでの作業中にルツボ内部が汚染される懸念がある。
【0004】
上記した諸問題を解決する技術として、特許文献1には、ルツボの洗浄、乾燥に引き続き、その清浄ルツボの少なくとも開口部を自動的にシールし、さらにビニール製の袋状シートにルツボを挿入して包装することができる、ルツボの自動洗浄密封装置が提案されている。この装置によってルツボの開口部をシールし該ルツボを袋詰めすることを機械的に行うことによって、包装したルツボを開封した後に引き上げ装置に設置するまでの期間にわたって、ルツボの内周部の汚染を回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−10611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記の如く包装されたルツボは、例えば段ボール箱や木箱などの容器(コンテナ)に収容する梱包を経て、出荷されるのが通例である。この梱包は、ポリエチレン製袋などの袋に詰めたルツボを扱うこと、すなわち袋との間で滑りやすいルツボをハンドリングしなくてはならないため、2名以上の作業者がルツボを抱えてコンテナ内に運び込む、人手による作業が基本であった。
【0007】
この作業は、とりわけ大型化したルツボを扱う際には、作業者への負荷が大きく、その改善が希求されていた。また、上記のように、ルツボの包装までを自動化した結果、包装外側の清浄度も上がっているのに反し、その後の梱包作業を人手で行って汚染を誘発する事態は避けることが望ましく、この点の改善も必要とされていた。
【0008】
そこで、本発明は、包装済ルツボのハンドリングを人手に頼ることなく機械を介して実現する、包装済ルツボのハンドリングに適したクレーン装置およびこの装置を用いる包装済ルツボの梱包方法について提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1)包装済の石英ガラスルツボを配置した吊り上げ場所の上方と梱包用コンテナを配置した吊り降ろし場所の上方との間の経路上を往復動可能に、かつ該経路から前記吊り上げ場所および吊り降ろし場所のそれぞれにおいて前記経路に対して昇降可能に設置されるクレーン装置であって、
前記昇降方向に延びる4本のアームを有し、該4本のアームを四角形の頂点に配置するとともに、該四角形の対角線上のアーム対を
、リンク機構およびスライダーを介して相互に
対角線方向にスライド移動可能なように進退可能に設け、各アームは先端に前記アームの進行方向に
向かって水平に延びる部材の先端から上方へ向かって突出する爪を有することを特徴とする包装済石英ガラスルツボ用クレーン装置。
【0010】
(2)包装済の石英ガラスルツボをクレーン装置にて吊り上げて該クレーン装置を四角柱状の梱包用コンテナまで移動し、該梱包用コンテナ内に石英ガラスルツボを吊り降ろすに当たり、
前記クレーン装置として、前記吊り上げ方向に延びる4本のアームを有し、該4本のアームを前記梱包用コンテナの四隅に対応する四角形の頂点に配置するとともに、該四角形の対角線上のアーム対を
、リンク機構およびスライダーを介して相互に
対角線方向にスライド移動可能なように進退可能に設け、各アームの先端に前記アームの進行方向に
向かって水平に延びる部材の先端から上方へ向かって突出する爪を設けたクレーン装置を用いて、前記4本のアームを前記包装と非接触とし、かつ前記爪にて包装済の石英ガラスルツボの底面を支持することによって、前記吊り上げ、移動および吊り降ろしを行い、梱包用コンテナ内に石英ガラスルツボを積み込むことを特徴とする包装済石英ガラスルツボの梱包方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特にハンドリングが困難な包装済のルツボに適したクレーン装置を提供することができる。従って、従来は手作業を余儀なくされていた包装済ルツボの梱包作業を、該クレーン装置を用いて機械化することが可能であり、作業効率が向上するほか、クリーンな環境での梱包作業も可能になり、包装の外側における清浄度を維持することにも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】梱包用コンテナ内におけるクレーン装置のアームおよび爪の動作を示す平面図である。
【
図5】クレーン装置のアームおよび爪の動作を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明のクレーン装置について、図面を参照して詳しく説明する。
まず、
図1および
図2に示すように、本発明のクレーン装置1は、包装済ルツボ2を配置した吊り上げ場所(例えば、包装工程からの搬送コンベア終点)3の上方と、梱包用コンテナ4を配置した吊り降ろし場所(例えば、最終梱包工程へ至る搬送コンベア中間点)5の上方との間の経路6上を往復動可能に、かつ該経路6から前記吊り上げ場所3および吊り降ろし場所5のそれぞれにおいて前記経路6に対して昇降可能に設置されている。
【0014】
該クレーン装置1は、
図2に示すように、吊り上げ場所3および吊り降ろし場所5のそれぞれに設置した支柱60の間にレール61を張り渡し、このレール61にて経路6を形成し、このレール61上を移動機構9にて往復動可能にフレーム10を取り付けてある。
該フレーム10には、昇降機構11を介して、
図3に示すように、図示例において相互に間隔を置いて積層した3枚の支持板12、13および14が、フレーム10に対して昇降可能に吊り下げ固定されている。この支持板12と13との間には、リンク機構15a〜15dを配置し、かつ支持板14上にスライダー16a〜16dを設け、これらリンク機構15a〜15d並びにスライダー16a〜16dを介して、前記昇降方向に延びる4本のアーム17a〜17dを支持板に取り付けている。
【0015】
ここで、4本のアーム17a〜17dは、
図4に示すように、四角柱状の梱包用コンテナ4の四角形の頂点に配置するとともに、該四角形の対角線上のアーム対17aおよび17c、そして17bおよび17dが、リンク機構15a〜15dおよびスライダー16a〜16dを介して、相互に進退可能に設けることが肝要である。なお、リンク機構15a〜15dは、モータMを駆動源として上記の動作をアーム17a〜17dに与えている。さらに、アーム17a〜17dの各々には、その先端に前記アームの進行方向に延びる爪18a〜18dを有し、またアーム17a〜17dの外周にはクッション材19a〜19dを巻き付けてある。
また、アーム17a〜17dの各々が当該アーム17a〜17dの先端に有する爪18a〜18dは、図3乃至図5で示すように、アームの進行方向に向かって水平に延びる部材の先端から上方へ向かって突出する爪である。
【0016】
かように構成されたクレーン装置1は、
図1および2に示したように、包装済ルツボ2を吊り上げて四角柱状の梱包用コンテナ4まで移動し、該梱包用コンテナ4内にルツボ2を吊り降ろす際に使用する。
クレーン装置1による包装済ルツボ2の吊り上げは、まず、吊り上げ場所3にクレーン装置1を移動し、ここでフレーム10から昇降機構11を介して支持板12、13および14を下降させる。その際、モータMにてリンク機構15a〜15dを作動し、アーム17a〜17d並びに爪18a〜18dが包装済ルツボ2と干渉しない位置まで退避させておく。アーム17a〜17d先端の爪18a〜18dが包装済ルツボ2の載置面まで下降した段階にて下降を停止し、モータMにてリンク機構15a〜15dを作動し、
図5に示すように、包装済ルツボ2の軸心に向かってアーム17a〜17dを進行させ、爪18a〜18dを包装済ルツボ2の底面縁部付近に当接した段階でアーム17a〜17dの進行を停止する。ここで、
図5に示すように、アーム17a〜17dをルツボの包装と非接触とすることが、包装外側の汚染を抑制する上で肝要である。
【0017】
次いで、フレーム10へ向けて昇降機構11を介して支持板12、13および14を上昇させ、4本のアーム17a〜17dの爪18a〜18dにて四方から支持された状態の包装済ルツボ2を、吊り上げる。その後、クレーン装置1を、梱包用コンテナ4を配置した吊り降ろし場所5まで経路6に沿って水平移動する。この吊り降ろし場所5にクレーン装置1が到達した後は、フレーム10から昇降機構11を介して支持板12、13および14を梱包用コンテナ4に向けて下降する。その際、アーム17a〜17dは、梱包用コンテナ4の四隅に対応する四角形の頂点に配置されているから、
図4に示すように、包装済ルツボ2と梱包用コンテナ4との隙間のうちの最大の隙間空間に、アーム17a〜17dを要領良く収めることができる。そして、この最大の隙間空間にアーム17a〜17dを挿入することにより、
図4に矢印で示すように、アーム17a〜17dの可動範囲を大きくとることが可能になり、
図5に示す、アーム17a〜17d並びに爪18a〜18dの包装済ルツボ2に対する進退が可能になる。
【0018】
従って、アーム17a〜17dを包装済ルツボ2の包装と非接触とし、かつ爪18a〜18dにて包装済ルツボ2の底面を支持することが実現する。さらに、アーム17a〜17dが梱包用コンテナ4の四隅に収まることから、梱包用コンテナ4の辺長を収容ルツボの開口径に近付けることができ、梱包用コンテナ4の省スペース化を達成できる。
【0019】
上記の支持形態の下に包装済ルツボ2を下降させ、当該ルツボ2の底面が梱包用コンテナ4内側の底面に到達したら、下降を停止し、次いで、リンク機構15a〜15dを作動し、
図4に示すように、包装済ルツボ2からアーム17a〜17dおよび爪18a〜18dを退避させる。その後、昇降機構11を介して支持板12、13および14をフレーム10まで上昇させる。
一方、包装済ルツボ2が収められた梱包用コンテナ4は、例えば搬送コンベアにて梱包行程に移送され、ここでコンテナ開口を塞ぐ蓋の取り付けや、その後のコンテナへの縄掛けなどの荷造りを施され、出荷される。
【実施例】
【0020】
次に、
図1に示すこの発明に従う包装済石英ガラスルツボ用クレーン装置を用いて、包装済石英ガラスルツボを梱包した場合の、石英ガラスルツボの汚染度について調査した。また、比較として、包装済石英ガラスルツボを従来のように2名の作業員により手作業にて梱包する場合についても、同様の調査を行った。
【0021】
石英ガラスルツボの汚染度は、包装済石英ガラスルツボを梱包した後に、クリーンルーム内にて包装から石英ガラスルツボを取り出し、ルツボ内面に粘着テープを貼り付けてから、該テープを剥がし、テープの粘着部分に貼り付いた付着物の数を目視にて確認し、単位面積当たりの個数を合算することにより評価した。手作業により包装済石英ガラスルツボを梱包した場合の汚染度を100として指数化し、この発明に従うクレーン装置により包装済石英ガラスルツボを梱包した場合の汚染度を相対値にて算出し、評価した。なお、数値が小さいほど汚染度が低いことを表す。その調査結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1の結果から明らかなように、この発明に従うクレーン装置を用いることにより、従来の手作業による梱包に比べ、石英ガラスルツボの汚染が抑制された。また、機械的に石英ガラスルツボを梱包可能となったことから、梱包の省力化が達成された。
【符号の説明】
【0024】
1 クレーン装置
2 包装済ルツボ
3 吊り上げ場所
4 梱包用コンテナ
5 吊り降ろし場所
6 経路
9 移動機構
10 フレーム
11 昇降機構
12、13、14 支持板
15a〜15d リンク機構
16a〜16d スライダー
17a〜17d アーム
18a〜18d 爪
19a〜19d クッション材