特許第5738913号(P5738913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738913
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】粉体供給装置および電極製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20150604BHJP
   B65G 65/48 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   H01M4/04 Z
   B65G65/48 F
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-62752(P2013-62752)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-186969(P2014-186969A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2013年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124730
【弁理士】
【氏名又は名称】正津 秀明
(72)【発明者】
【氏名】梅田 正浩
(72)【発明者】
【氏名】坂下 康広
(72)【発明者】
【氏名】谷原 功一
(72)【発明者】
【氏名】挾間 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】中谷 涼
【審査官】 吉田 安子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−031978(JP,A)
【文献】 特開2005−340188(JP,A)
【文献】 特開2005−183423(JP,A)
【文献】 特開2000−079361(JP,A)
【文献】 特開2013−012327(JP,A)
【文献】 特開平07−135023(JP,A)
【文献】 特開2004−281221(JP,A)
【文献】 特開2008−135256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04
B65G 65/48
B28B 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給対象物たる粉体を一時的に貯溜するための空隙たる貯溜部が形成されるとともに、該貯溜部の上端に形成される前記粉体を投入するための開口部である投入口と、前記貯溜部の下端に形成される前記粉体を排出するための矩形の開口部である排出口を有するケースと、
前記ケース内に配置され、回転することにより前記貯溜部の前記粉体を前記排出口に移送するための手段である回転子と、
前記排出口に移送された前記粉体を通過させる、前記排出口の下端を覆うメッシュ体と、
を備え、
前記排出口の鉛直下方において水平に変位する、前記粉体の被供給対象物たる被供給材の上面に、前記粉体を、前記排出口から落下させつつ供給する粉体供給装置であって、
前記回転子は、
該回転子の軸心を中心として半径方向外側に向けて略放射状に植設された複数の毛部材を備えたブラシ状の形態を有し、
前記貯溜部には、
前記回転子と同軸の円筒形状によって切り取られた曲面が形成され、
前記回転子が、
前記複数の毛部材を前記曲面に接触させた状態で回転される、
ことを特徴とする粉体供給装置。
【請求項2】
複数の前記毛部材は、
導電性を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の粉体供給装置。
【請求項3】
前記メッシュ体を通過させた前記粉体に対してコロナ放電を行う第一の放電電極、
をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粉体供給装置。
【請求項4】
前記粉体は、
電極活物質とバインダと導電材とを含んでなる造粒粒子である、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の粉体供給装置。
【請求項5】
供給対象物たる粉体を一時的に貯溜するための空隙たる貯溜部が形成されるとともに、該貯溜部の上端に形成される前記粉体を投入するための開口部である投入口と、前記貯溜部の下端に形成される前記粉体を排出するための矩形の開口部である排出口を有するケースと、
前記ケース内に配置され、回転することにより前記貯溜部の前記粉体を前記排出口に移送するための手段である回転子と、
前記排出口に移送された前記粉体を通過させる、前記排出口の下端を覆うメッシュ体と、
を備え、
前記排出口の鉛直下方において水平に変位する、前記粉体の被供給対象物たる被供給材の上面に、前記粉体を、前記排出口から落下させつつ供給する粉体供給装置と、
前記被供給材を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送される、前記粉体供給装置により前記粉体が供給された前記被供給材をプレスするプレス装置と、
を備える電極製造装置であって、
前記回転子は、
該回転子の軸心を中心として略放射状に植設された複数の毛部材を備えたブラシ状の形態を有し、
前記貯溜部には、
前記回転子と同軸の円筒形状によって切り取られた曲面が形成され、
前記回転子が、
前記複数の毛部材を前記曲面に接触させた状態で回転される、
ことを特徴とする電極製造装置。
【請求項6】
前記被供給材の上面に堆積した前記粉体を均すスキージ、
をさらに備える、
ことを特徴とする請求項5に記載の電極製造装置。
【請求項7】
前記粉体が堆積する前の前記被供給材に対してコロナ放電する第二の放電電極と、
前記第二の放電電極によるコロナ放電により前記被供給材から遊離した異物を吸引する吸引手段と、
をさらに備える、
ことを特徴とする請求項5または請求項6のいずれか一項に記載の電極製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の被供給材に対して、その上面に均等な量の粉体を供給するための粉体供給装置およびその粉体供給装置を備えた電極製造装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉体を均等に分散させつつ供給するための装置である粉体供給装置が知られており、例えば、以下に示す特許文献1にその技術が開示され、公知となっている。
【0003】
特許文献1に係る粉体供給装置は、シート上に粉体を連続的に供給する装置であって、粉体を投入するシュートと、該シュート内に備えられる転動部材と、前記シュートの下部に設けられるメッシュ体を備える構成としている。
そして、シュートに振動を与えるとともに、シュート内の転動部材を転動させることによって、メッシュ体を介して、粉体を分散させつつ供給する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−155124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る粉体供給装置では、シュートに投入される粉体の状態如何によって、粉体の流動性が異なるため、シュートに同じ振動を与えても、粉体の供給量が一定にならないという問題があった。
【0006】
また、従来の粉体供給装置では、回転子の回転力等を利用して、粉体供給装置に投入された粉体にせん断力を付与することで、粉体を解して分散させる構成としており、付与したせん断力によって、粉体を構成する粒子を破壊してしまう場合があった。
そして、粒子が破壊され微粒子化すると、粉体の流動性が悪化するため、回転子によりせん断力を付与する構成である従来の粉体供給装置では、粉体を均等に分散させつつ供給することが困難であった。
【0007】
本発明は、斯かる現状の課題を鑑みてなされたものであり、粉体を構成する粒子の破壊を抑制しつつ、粉体を均等に分散させつつ供給することができる粉体供給装置およびその粉体供給装置を備える電極製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、供給対象物たる粉体を一時的に貯溜するための空隙たる貯溜部が形成されるとともに、該貯溜部の上端に形成される前記粉体を投入するための開口部である投入口と、前記貯溜部の下端に形成される前記粉体を排出するための矩形の開口部である排出口を有するケースと、前記ケース内に配置され、回転することにより前記貯溜部の前記粉体を前記排出口に移送するための手段である回転子と、前記排出口に移送された前記粉体を通過させる、前記排出口の下端を覆うメッシュ体と、を備え、前記排出口の鉛直下方において水平に変位する、前記粉体の被供給対象物たる被供給材の上面に、前記粉体を、前記排出口から落下させつつ供給する粉体供給装置であって、前記回転子は、該回転子の軸心を中心として半径方向外側に向けて略放射状に植設された複数の毛部材を備えたブラシ状の形態を有し、前記貯溜部には、前記回転子と同軸の円筒形状によって切り取られた曲面が形成され、前記回転子が、前記複数の毛部材を前記曲面に接触させた状態で回転されるものである。
【0010】
請求項2においては、複数の前記毛部材は、導電性を有するものである。
【0011】
請求項3においては、前記メッシュ体を通過させた前記粉体に対してコロナ放電を行う第一の放電電極、をさらに備えるものである。
【0012】
請求項4においては、前記粉体は、電極活物質とバインダと導電材とを含んでなる造粒粒子であるものである。
【0013】
請求項5においては、供給対象物たる粉体を一時的に貯溜するための空隙たる貯溜部が形成されるとともに、該貯溜部の上端に形成される前記粉体を投入するための開口部である投入口と、前記貯溜部の下端に形成される前記粉体を排出するための矩形の開口部である排出口を有するケースと、前記ケース内に配置され、回転することにより前記貯溜部の前記粉体を前記排出口に移送するための手段である回転子と、前記排出口に移送された前記粉体を通過させる、前記排出口の下端を覆うメッシュ体と、を備え、前記排出口の鉛直下方において水平に変位する、前記粉体の被供給対象物たる被供給材の上面に、前記粉体を、前記排出口から落下させつつ供給する粉体供給装置と、前記被供給材を搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送される、前記粉体供給装置により前記粉体が供給された前記被供給材をプレスするプレス装置と、を備える電極製造装置であって、前記回転子は、該回転子の軸心を中心として略放射状に植設された複数の毛部材を備えたブラシ状の形態を有し、前記貯溜部には、前記回転子と同軸の円筒形状によって切り取られた曲面が形成され、前記回転子が、前記複数の毛部材を前記曲面に接触させた状態で回転されるものである。
【0014】
請求項6においては、前記被供給材の上面に堆積した前記粉体を均すスキージ、をさらに備えるものである。
【0015】
請求項7においては、前記粉体が堆積する前の前記被供給材に対してコロナ放電する第二の放電電極と、前記第二の放電電極によるコロナ放電により前記被供給材から遊離した異物を吸引する吸引手段と、をさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1および請求項2においては、粉体を構成する粒子を破壊することなく、粉体を均等に分散させることができる。
また、ブラシ状の回転子によって、貯溜部の内壁やメッシュ体に付着する粉体を掃きとって、貯溜部における粉体の堆積や、メッシュ体における粉体の詰まりを防止して、安定した供給状態を維持することができる。
【0018】
請求項3、請求項6および7においては、粉体をより均等に分散させることができる。
【0019】
請求項4においては、粉体を構成する粒子が、より破壊されやすい造粒粒子である場合であっても、粒子を破壊することなく、粉体を均等に分散させることができる。
【0020】
請求項5においては、電極箔に対して、粉体を構成する粒子を破壊することなく、粉体を均等に分散させて、電極を製造することができる。
これにより、均等な厚みで合材層を形成することができ、電極の品質向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置を備える電極製造装置を示す模式図。
図2】本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置の全体構成を示す模式図。
図3】本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置を構成するケースの説明図、(a)ケースを示す平面模式図、(b)ケースを示す断面模式図。
図4】本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置を構成する回転子の側面模式図。
図5】粉体供給装置による供給対象物たる粉体を構成する粒子およびその破壊状況を示す拡大模式図。
図6】粉体供給装置による粉体供給量の時間変化を示す図。
図7】本発明の第二の実施形態に係る粉体供給装置を備える電極製造装置を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置を備える電極製造装置の全体構成について、図1図4を用いて、説明をする。
尚、以下の説明では、図1に示す矢印Aの方向を鉛直上向きとし、矢印Bの方向を鉛直下向きと規定している。
そして、本実施形態で示す電極製造装置では、粉体供給装置によって、粉体を上方から下方に落下させつつ供給することにより、粉体供給装置よりも下方に位置する被供給材の上面に粉体を堆積させる構成としている。
【0023】
図1に示す如く、本発明の一実施形態に係る電極製造装置1は、二次電池用の電極を製造するための装置であり、電極箔に対して電極用ペーストを塗工せずに(即ち、湿式ではなく)、電極箔の表面に電極用活物質を含む粉体をプレス加工して、乾式の方法で二次電池用の電極を製造するものである。
【0024】
電極製造装置1は、本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置2と、搬送装置3、プレス装置4等によって構成され、搬送装置3により、被供給材たる電極箔5を水平な所定の送り方向αに定速で搬送しつつ、電極箔5に対して、粉体供給装置2により粉体10を供給して、電極箔5の上面に粉体10を堆積させる構成としている。
【0025】
そして、電極製造装置1では、電極箔5の上面に均等な密度および高さで粉体10を堆積させた状態で、粉体10をプレス装置4で圧縮することによって、電極箔5の上面に電極用活物質を含む合材層11を形成する構成としている。
【0026】
より具体的には、電極製造装置1におけるプレス装置4は、互いの軸心が平行である一対の加圧ローラ4a・4aを備えており、各加圧ローラ4a・4a間に設定する隙間に、粉体10および電極箔5を通過させることによって、粉体10を加圧および圧縮して、電極箔5の上面に、合材層11を形成する構成としている。
尚、各加圧ローラ4a・4a間に設定する隙間は、粉体10の堆積高さに比して小さい距離であり、かつ、粉体10に付与すべき圧力や所望する合材層11の厚み等を考慮して、隙間の大きさを設定するようにしている。
【0027】
尚、本実施形態では、二次電池用の電極を製造するための電極製造装置1に粉体供給装置2を使用した場合を例示しているが、本発明に係る粉体供給装置の用途をこれに限定するものではなく、粉体状の供給対象物を均等に供給する用途に広く用いることができる。
【0028】
図1に示す如く、本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置2は、被供給対象物たる電極箔5に対して、定量の粉体10を、均等に分散させて供給することができる装置であり、ケース6、回転子7、メッシュ体8、放電電極9等を備える構成としている。
尚、本実施形態でいう「均等に分散させる」とは、電極箔5の上面における粉体10の単位面積当たりの重量が、任意の部位において均等であることを意味している。
【0029】
また、粉体供給装置2には、図示しない粉体補給装置や粉体量検出センサ等が付設されている。
そして、粉体供給装置2では、ケース6内に貯溜されている粉体10の量を図示しない粉体量検出センサで検出しており、ケース6内の粉体10が所定の量より減った場合には、図示しない粉体補給装置により粉体10を補給して、ケース6内の粉体10を所定の量以上の量に維持する構成としている。
【0030】
粉体供給装置2におけるケース6は、図示しない粉体補給装置の直下に配置しており、粉体補給装置から供給され落下してくる粉体10を、ケース6で受けることができるように構成されている。
そして、ケース6の鉛直下方に配置され、所定の送り方向αに向けて変位している電極箔5に対して、粉体10をケース6から落下させて供給する構成としている。
尚、粉体10の「落下」の態様としては、自重により自然落下する態様や、回転子7に押圧されて付勢されつつ落下する態様がある。
【0031】
ケース6は、粉体補給装置から供給される粉体10を一時的に貯溜するための容体であり、粉体10を貯溜するための空隙部たる貯溜部6aを形成している。
そして、ケース6では、貯溜部6aの上端部において、粉体10を導入するための開口部たる投入口6bを形成するとともに、貯溜部6aの下端部において、粉体10を排出するための開口部たる排出口6cを形成する構成としている。
【0032】
排出口6cは、貯溜部6aと連通する矩形状の開口部であり、図3(a)(b)に示すように、長さ方向(本実施形態では長辺方向)の寸法がLで、幅方向(本実施形態では短辺方向)の寸法がWである、矩形状の開口部として形成されている。
排出口6cの下端面は水平に形成されており、排出口6cから排出される粉体10の量が、排出口6cの各部で均等になるように構成されている。
そして、排出口6cは、その幅方向が電極箔5の送り方向αに対して平行であって、かつ、その長さ方向が電極箔5の送り方向αに対して平面視において直交する方向となるように配置されている(図1参照)。
【0033】
また、本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置2では、排出口6cの下部に、該排出口6cの全面を覆う態様で、排出口6cを網目状に等分割するための部材たるメッシュ体8を配置する構成としている。
粉体供給装置2では、排出口6cから落下する粉体10を、メッシュ体8に通過させることによって、塊状(ダマ)になっている粉体10を確実に分散させて、粉体10の分布および密度を均等化させることができ、より確実に、電極箔5の表面に付着した粉体10の重量を均等化させる構成としている。
【0034】
そして、図2に示す如く、本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置2では、ケース6の貯溜部6aに、回転子7を配置している。
回転子7は、貯溜部6aにおける投入口6bと排出口6cの中間位置に配置されており、該回転子7が回転することによって、回転子7の上部(即ち、投入口6b側)に堆積している粉体10を、回転子7の下部(即ち、排出口6c側)に移送することができるように構成されている。
【0035】
粉体供給装置2における回転子7は、図4に示すように、外形形状が略円柱状である略ブラシ状の部材であり、軸部7aと、複数の毛部材7b・7b・・・を備える構成としている。
そして回転子7は、貯溜部6aにおいて、軸部7aを、排出口6cの長さ方向に対して平行で、かつ、平面視において、電極箔5の送り方向αに対して直交する方向に向けつつ、該回転子7の軸部7a回りに回転可能な態様で水平に支持される構成としている。
【0036】
また、回転子7の軸部7aには、該軸部7aの軸心Gを中心とする放射状に、複数の毛部材7b・7b・・・が植設されている。
毛部材7bは、弾性を有する毛状体であり、複数の毛部材7b・7b・・・がまとまって茂みを形成することによって、その茂みにおいて毛部材7bと毛部材7bの間で粉体10を絡めて、回転子7において粉体を保持することができるように構成されている。
そして、毛部材7bの太さ、本数、弾性、植設密度等を変更することによって、回転子7における粉体10の保持量を調整することができる。
【0037】
また、回転子7における毛部材7b・7b・・・の外接円の直径φQは、図3(b)に示すように、貯溜部6aの内接円の直径φPに比して大きくしており、貯溜部6aに収められる状態において、回転子7の毛部材7b・7b・・・は、半径方向に押し縮められて撓んだ状態となり、その毛先が貯溜部6aの内面に常時当接するように構成されている。
そして、このような構成により、貯溜部6aの内壁面に付着している粉体10は、毛部材7b・7b・・・によって随時掃きとられるため、貯溜部6aの内壁に粉体10が固着するのを防止することができる。
【0038】
また、粉体供給装置2を構成するケース6では、貯溜部6aの内接円よりも内側に排出口6cが形成されており、毛部材7b・7b・・・の毛先が排出口6cに設けられたメッシュ体8の内側(上側)に当接するように構成されている。
そして、このような構成により、メッシュ体8に停滞している粉体10は、毛部材7b・7b・・・によって随時掃きとられるため、粉体10によるメッシュ体8の目詰まりが防止される。
【0039】
また、粉体供給装置2における毛部材7bは、導電性を有する素材によって構成されており、粉体10が毛部材7bに対して電気的に吸着され、毛部材7bから粉体10が離反しなくなることを防止している。
そして、毛部材7bが導電性を有する構成とし、粉体10が毛部材7bに対して自由に離反できるようにすることで、より確実に、粉体供給装置2によって、粉体10を均等に分散させることが可能になる。
【0040】
さらに、本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置2では、メッシュ体8の下方において、メッシュ体8を通して落下する粉体10に対してコロナ放電を行うための手段である放電電極9を備える構成としている。
そして、放電電極9は、排出口6cの下方において、排出口6cの長さLに対応する範囲に配置されている。
【0041】
粉体10は、該粉体10を構成する粒子同士が吸着しあってダマ(塊状となった粉体10)になる場合があるが、このようなダマは、粉体10を「均等に分散させる」のを阻害する要因となり得る。
【0042】
一方、粉体10に対して、放電電極9によってコロナ放電を行うと、粉体10を構成する粒子の表面に電荷が帯電し、粒子同士が電気的に反発するようになるため、粉体10を解すことができる。
このため、粉体供給装置2では、放電電極9により粉体10を分散させることによって、粉体10にダマが生じることを防止して、メッシュ体8から落下する粉体10の分布に偏りを生じさせないようにしている。
【0043】
そして、粉体供給装置2は、回転子7、メッシュ体8、放電電極9を備えることにより、排出口6cから電極箔5に向けて供給された粉体10が、電極箔5の供給面(上面)に付着した状態で、その供給面における単位面積当たりの重量が一定となるように構成されている。
【0044】
尚、ここで説明をした本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置2は、粉体10の供給系統の数(即ち、ケースにおける粉体の排出口の数)を1系統のみとするものであるが、本発明に係る粉体供給装置では、貯溜部や回転子等を複数系統備える構成として、被供給材に対して複数の排出口から粉体を供給する構成としてもよい。
【0045】
ここで、本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置2による供給対象物たる粉体10の性質について、図5を用いて説明をする。
電極製造装置1に備えられる粉体供給装置2による供給対象物たる粉体10は、被供給材たる電極箔5の表面に合材層11を形成するための各種の物質から製造した造粒粒子であり、電極用活物質、バインダ、導電材等を含んでいる。
【0046】
図5に示す如く、粉体10を構成する各粒子は、50〜120μm程度の粒径を有しており、せん断力が付与されることによって、容易に崩壊し得る性質を有している。
また、粉体10を構成する各粒子が崩壊すると、1〜10μm程度の粒径である微細な粒子が生じることとなり、粒子間に存在する空間等に入り込んで、該空間を埋めることで、粉体10の流動性を低下させるとともに、粉体10におけるダマを生じやすくさせることとなる。
【0047】
そして、粉体10における流動性の低下やダマの発生は、粉体供給装置2によって粉体10を均等に分散させるのを阻害する要因となり得るため、粉体供給装置2に用いる回転子7には、粉体10を構成する各粒子を壊さないような構成が要求される。
【0048】
そこで、本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置2では、複数の毛部材7b・7b・・・を有し、ブラシ状の形態を有する回転子7を採用する構成としている。
回転子7では、弾性を有する各毛部材7b・7b・・・により粉体10を絡め取って保持し、また、各毛部材7b・7b・・・が変位および変形することができるように構成されているため、粉体10に付与するせん断力が従来に比して小さく、粉体10を構成する各粒子を崩しにくい構成となっている。
そして、このような構成により、粉体10の流動性が低下することを防止して、粉体供給装置2により、粉体10をより確実に均等に分散させることを可能にしている。
【0049】
次に、本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置2による粉体供給量の経時変化について、図6を用いて説明をする。
尚、ここでは、本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置2と従来の粉体供給装置を、比較しつつ説明を行うものとする。
そして、ここで示す実験において用いた従来の粉体供給装置は、回転子として、周方向において等間隔の溝が形成された略円筒形の回転子(溝タイプと呼ぶ)を備える構成としている。
【0050】
図6に示すように、溝タイプの回転子を備える従来の粉体供給装置を用いて粉体10を供給する場合、粉体10を供給し続けていると、時間経過とともに徐々に粉体10の供給量が低下していく様子が確認できる。
これは、溝タイプの回転子では、メッシュ体8に付着した粉体10を掃きとることができないため、粉体10が徐々にメッシュ体8の目詰まりするようになり、これによって、粉体供給装置による粉体10の供給量が低下しているものと考えられる。
【0051】
一方、図6に示すように、複数の毛部材7b・7b・・・が植設された(ブラシタイプの)回転子7を備える粉体供給装置2で粉体10を供給する場合、粉体10を供給し続けていても、時間経過とともに粉体10の供給量が低下することが無い様子が確認できる。
これは、ブラシタイプの回転子7では、メッシュ体8に付着した粉体10を掃きとることができ、粉体10がメッシュ体8に目詰まりすることがないため、粉体供給装置2による粉体10の供給量が低下しないものと考えられる。
【0052】
即ち、ブラシ状の回転子7を備える粉体供給装置2によれば、粉体10の供給状況が経時的に変化するのを防止することができるため、電極箔5に対して、粉体10を均等に分散させつつ供給する状態を継続させることができる。
【0053】
即ち、本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置2は、供給対象物たる粉体10を一時的に貯溜するための空隙たる貯溜部6aが形成されるとともに、該貯溜部6aの上端に形成される粉体10を投入するための開口部である投入口6bと、貯溜部6aの下端に形成される粉体10を排出するための矩形の開口部である排出口6cを有するケース6と、ケース6内に配置され、回転することにより貯溜部6aの粉体10を排出口6cに移送するための手段である回転子7と、排出口6cに移送された粉体10を通過させる、排出口6cの下端を覆うメッシュ体8と、を備え、排出口6cの鉛直下方において水平に変位する、粉体10の被供給対象物たる電極箔5の上面に、粉体10を、排出口6cから落下させつつ供給するものであって、回転子7は、該回転子7の軸心Gを中心として半径方向外側に向けて略放射状に植設された複数の毛部材7b・7b・・・を備えたブラシ状の形態を有するものである。
【0054】
また、本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置2において、複数の毛部材7b・7b・・・は、導電性を有するものである。
【0055】
そして、このような構成を有する粉体供給装置22によれば、粉体10を構成する粒子を破壊することなく、粉体10を均等に分散させることができる。
また、粉体供給装置22によれば、ブラシ状の回転子7によって、貯溜部6aの内壁やメッシュ体8に付着する粉体10を掃きとって、貯溜部6aにおける粉体10の堆積や、メッシュ体8における粉体10の詰まりを防止して、安定した供給状態を維持することができる。
【0056】
また、本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置2は、メッシュ体8を通過させた粉体10に対してコロナ放電を行う第一の放電電極9、をさらに備えるものである。
【0057】
そして、このような構成を有する粉体供給装置22によれば、粉体10をより均等に分散させることができる。
【0058】
また、本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置2における供給対象物たる粉体10は、電極活物質とバインダと導電材とを含んでなる造粒粒子である。
【0059】
そして、このような構成を有する粉体供給装置22によれば、粉体10を構成する粒子が、より破壊されやすい造粒粒子である場合であっても、粒子を破壊することなく、粉体10を均等に分散させることができる。
【0060】
また、本発明の一実施形態に係る電極製造装置1は、供給対象物たる粉体10を一時的に貯溜するための空隙たる貯溜部6aが形成されるとともに、該貯溜部6aの上端に形成される粉体10を投入するための開口部である投入口6bと、貯溜部6aの下端に形成される粉体10を排出するための矩形の開口部である排出口6cを有するケース6と、ケース6内に配置され、回転することにより貯溜部6aの粉体10を排出口6cに移送するための手段である回転子7と、排出口6cに移送された粉体10を通過させる、排出口6cの下端を覆うメッシュ体8と、を備え、排出口6cの鉛直下方において水平に変位する、粉体10の被供給対象物たる電極箔5の上面に、粉体10を、排出口6cから落下させつつ供給する粉体供給装置2と、電極箔5を搬送する搬送装置3と、搬送装置3により搬送される、粉体供給装置2により粉体10が供給された電極箔5をプレスするプレス装置4と、を備えるものであって、回転子7は、該回転子7の軸心Gを中心として略放射状に植設された複数の毛部材7b・7b・・・を備えるブラシ状の形態を有するものである。
【0061】
このような構成を有する電極製造装置1によれば、電極箔5に対して、粉体10を構成する粒子を破壊することなく、粉体10を均等に分散させて、電極を製造することができ、また、これにより、均等な厚みで合材層11を形成することができ、電極の品質向上を図ることができる。
【0062】
次に、本発明の第二の実施形態に係る粉体供給装置を備える電極製造装置の全体構成について、図7を用いて、説明をする。
尚、以下の説明では、図7に示す矢印Aの方向を鉛直上向きとし、矢印Bの方向を鉛直下向きと規定している。そして、本実施形態で示す電極製造装置では、粉体供給装置によって、粉体を上方から下方に落下させることにより、粉体供給装置の下方に配置された被供給材に供給する構成としている。
【0063】
図7に示す如く、本発明の一実施形態に係る電極製造装置21は、電極製造装置1と同様に、乾式の方法で二次電池用の電極を製造するものであり、本発明の第二の実施形態に係る粉体供給装置22を備えている。
【0064】
本発明の第二の実施形態に係る粉体供給装置22は、本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置2と同様に、ケース6、回転子7、メッシュ体8、第一の放電電極9を備えるとともに、さらにスキージ23、第二の放電電極24、吸引装置25等を備えており、この点において、本発明の第一の実施形態に係る粉体供給装置2と相違している。
【0065】
スキージ23は、電極箔5上に堆積している粉体10を、所定の堆積高さに均すための部位であり、電極箔5の搬送方向におけるケース6よりも下流側に配置され、スキージ23の下端と電極箔5との隙間を、所定の距離としている。
またスキージ23は、排出口6cの長さLの範囲に対応する範囲で設けられ、電極箔5の上流側には、下流側に向けて隙間を小さくしていく部位である傾斜部23aを備え、また傾斜部23aの下流側において、該傾斜部23aに連続した水平面を形成する水平部23bを備えている。
そしてスキージ23は、傾斜部23aおよび水平部23bで、電極箔5の上面に堆積した粉体10を均すとともに、電極箔5との隙間を所定の距離とした水平部23bによって、プレス装置4に送る前に、粉体10の堆積高さを均等にするようにしている。
【0066】
第二の放電電極24は、電極箔5に対してコロナ放電を行うための放電電極であり、電極箔5の搬送方向におけるケース6よりも上流側に配置されている。
そして、粉体供給装置22では、放電電極24により電極箔5に対してコロナ放電を行うことによって、電極箔5に付着した粉体10以外の異物を除去する構成としている。
そして、粉体供給装置22では、粉体10が供給される前の電極箔5に対してコロナ放電を行って異物を除去し、異物が無い状態の電極箔5に対して、ケース6から粉体10を供給する構成としている。
【0067】
また、粉体供給装置22では、第二の放電電極24の直上部に、吸引装置25を配置する構成としている。
吸引装置25は、第二の放電電極24の上部において、該放電電極24を覆うフード状の部位と、該フード状の部位に接続される吸引設備(例えば、真空配管や排気ダクト)等からなる構成としている。
【0068】
そして、粉体供給装置22では、第二の放電電極24により電荷が付与され、電極箔5に対して反発するようになった異物を吸引装置25で吸引することで、その異物が電極箔5に対して再度付着することを防止して、より確実に、異物が無い状態の電極箔5に対して、ケース6から粉体10を供給することができるように構成されている。
【0069】
即ち、本発明の第二の実施形態に係る粉体供給装置22は、電極箔5の上面に堆積した粉体10を均すスキージ23、をさらに備えるものである。
【0070】
また、本発明の第二の実施形態に係る粉体供給装置22は、粉体10が堆積する前の電極箔5に対してコロナ放電する第二の放電電極24と、第二の放電電極24によるコロナ放電により電極箔5から遊離した異物を吸引する吸引手段たる吸引装置25と、をさらに備えるものである。
【0071】
そして、このような構成を有する粉体供給装置22によれば、粉体10をより均等に分散させることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 電極製造装置
2 粉体供給装置(第一の実施形態)
5 電極箔(被供給材)
6 ケース
6a 貯溜部
7 回転子
7b 毛部材
8 メッシュ体
9 (第一の)放電電極
10 粉体(供給対象物)
22 粉体供給装置(第二の実施形態)
23 スキージ
24 (第二の)放電電極
25 吸引装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7