(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738944
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】有機電界効果トランジスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20150604BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20150604BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20150604BHJP
H01L 51/40 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
H01L29/78 627C
H01L29/28 100A
H01L29/28 310K
H01L29/78 617M
H01L29/78 617T
H01L29/78 617V
H01L29/78 618B
H01L29/78 619A
【請求項の数】23
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-168514(P2013-168514)
(22)【出願日】2013年8月14日
(62)【分割の表示】特願2007-539481(P2007-539481)の分割
【原出願日】2005年10月4日
(65)【公開番号】特開2014-13912(P2014-13912A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2013年9月12日
(31)【優先権主張番号】0424342.4
(32)【優先日】2004年11月3日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ベヴァリー,アン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレス,ジャノス
(72)【発明者】
【氏名】オジール,サイモン,ドミニク
【審査官】
山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−347400(JP,A)
【文献】
特表2003−508924(JP,A)
【文献】
特開平08−018125(JP,A)
【文献】
国際公開第2001/008241(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H01L 51/05
H01L 51/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース電極およびドレイン電極ならびに該ソース電極および該ドレイン電極間の領域としての半導体チャネル領域を有する電子デバイスにおける有機半導体(OSC)層の移動度を、前記チャネル領域の外側の一部の領域のみにおいて、または前記チャネル領域の外側全体の領域のみにおいて、酸化剤をOSC層に適用することにより低減させる方法であって、酸化剤が酸または酸組成物である、前記方法。
【請求項2】
OSC層が半導体化合物として以下の式から選択された可溶性ポリアセンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法
【化1】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12のそれぞれは、同じまたは異なっていてもよく、独立して水素;置換されていてもよいC1〜C40カルビルまたはヒドロカルビル基;置換されていてもよいC1〜C40アルコキシ基;置換されていてもよいC6〜C40アリールオキシ基;置換されていてもよいC7〜C40アルキルアリールオキシ基;置換されていてもよいC2〜C40アルコキシカルボニル基;置換されていてもよいC7〜C40アリールオキシカルボニル基;シアノ基(−CN);カルバモイル基(−C(=O)NH2);ハロホルミル基(−C(=O)−X、ここでXはハロゲン原子を表す);ホルミル基(−C(=O)−H);イソシアノ基;イソシアネート基;チオシアネート基またはチオイソシアネート基;置換されていてもよいアミノ基;ヒドロキシ基;ニトロ基;CF3基;ハロ基(Cl、Br、F);または置換されていてもよいシリル基を表し;
ここで(R2、R3)および/または(R8、R9)の各組は独立して、架橋してC4〜C40飽和または不飽和環を形成してもよく、飽和または不飽和環は、酸素原子、硫黄原子または式−N(Ra)−(ここでRaは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基)で示される基が介在してもよく、あるいは置換されてもよく;ならびに
式中、ポリアセン骨格の1または2以上の炭素原子は、N、P、As、O、S、SeおよびTeから選択されたヘテロ原子により置換されてもよく;ならびに
式中、ポリアセンの隣接した環位置に位置するいずれかの2または3以上の置換基R1〜R12は独立して、一緒に、O、Sまたは−N(Ra)(ここでRaは上に定義したとおりである)により中断したC4〜C40飽和または不飽和環、またはポリアセンと融合した芳香環系をさらに構成していてもよく;ならびに
式中、nは0、1、2、3または4である。
【請求項3】
OSC層が可溶性ポリアセンから選択される半導体化合物を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法であって、式中(R1およびR4)、(R5およびR12)、(R6およびR11)および(R7およびR10)から選択される少なくとも1組がともに−C≡C−Si(CH(CH3)2)3であり、かつR1、R4、R5、R6、R7、R10、R11およびR12のそれ以外が水素であり;かつR2、R3、R8およびR9が水素である、前記方法。
【請求項4】
OSC層が以下の式(1)で表される可溶性ポリアセンから選択される半導体化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法:
【化2】
【請求項5】
酸または酸組成物が硝酸を含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
酸または酸組成物がH3PO4、CH3COOH、HNO3および水を含有することを特徴とする、請求項1または5に記載の方法。
【請求項7】
酸または酸組成物が硝酸を含有することを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
酸または酸組成物がH3PO4、CH3COOH、HNO3および水を含有することを特徴とする、請求項2〜4および7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
OSC層が絶縁層で覆われることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
絶縁層がゲート絶縁層または層間絶縁膜であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
酸化剤が酸または酸を含む調製物であり、該酸化剤が絶縁層上に適用され、絶縁層およびOSC層に浸透する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
チャネル領域を覆う保護パターン層によりOSC層を選択的に保護し、次いで酸化剤を適用することを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
保護パターン層が無機層であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
保護パターン層が金属または金属酸化物を含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
保護パターン層が有機層であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
保護パターン層がポリマー、フォトレジストまたは有機インクを含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
保護パターン層が有機樹脂またはインク中に無機粒子を含むことを特徴とする、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
保護パターン層をプリンティング技術により堆積することを特徴とする、請求項12〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
保護パターン層をインクジェットまたはミクロ接触プリンティングにより堆積することを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
保護パターン層をフォトリソグラフィーにより堆積することを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
電子デバイスが保護パターン層としてもまた用いられる、部品としての機能を有する部品を含むことを特徴とする、請求項12〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
電子デバイスにおける部品としての機能を有する部品がトランジスタデバイスのゲート電極またはTFTアレイの黒いマスクであることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
OSC層がポリアセンおよび有機結合剤を含むことを特徴とする、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された電子デバイス、特に有機電界効果トランジスタ(OFET)の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界効果トランジスタ(OFET)は、表示デバイスおよび論理能力のある回路において使用される。多くの表示用途のために、十分なコントラストおよび信頼性のある動態的作用が得られるよう、高いオン/オフ比が要求される。オン/オフ比における改善が、過去に寄生リーク電流を低減させるために有機半導体(OSC)層にパターン形成することにより達成されている(米国特許第5,854,139号)。半導体層を、不要な領域から層を除去するためのエッチングステップを使って従来のリソグラフィーによりパターン形成してもよい。かかる技術は、無機電子光学において定着している。しかしながら、有機半導体(OSC)はしばしば、エッチングにより簡単に処理されない。例えば、OSC層をインクジェットにより活性領域のみに堆積させてもよい。米国特許第5,854,139号において、光マスクを通してOSC層を照射することによりオリゴチオフェンOSCをパターン形成することを議論している。オン/オフ比をまた、回路設計を改善することにより、低減させてもよい。米国特許第6,433,357号は、ガード電極を使うことによってオフ電流を低減させ、画素素子間のOSC層における電荷密度を制御する方法を目的としている。残念なことに、この技術は、パターン形成する回路の種類に都合が悪く、表示の開口比を低減させ得る。
【0003】
ある領域における有機半導体層の電荷移動度「μ」を低減させることができ、一方でその完全性を維持し、チャネル領域における電荷移動度を維持するのが望ましい。
【発明の開示】
【0004】
したがって、本発明の目的は、OFETにおけるオン/オフ比を改善し、チャネル領域における層の移動度を維持し、一方で他の領域における移動度を低減させることにある。本発明の別の目的は、先行技術の方法の欠点を有さず、時間、費用および材料の面で効果的な電子デバイスの大量生産を可能にするOSC層の選択した領域における移動度を低減させる改善された方法を提供することにある。本発明の他の目的は、以下の詳細な説明から専門家に直ちに明らかである。これらの目的は、本発明に請求されている材料および方法を提供することにより達成することができることが見出された。
【0005】
本発明は、半導体チャネル領域を有する電子デバイスにおける有機半導体(OSC)層の移動度を、前記チャネル領域の外側の特定の領域において、好ましくはプラズマ放電のフラックス(flux)または酸である酸化剤をOSC層に適用することにより低減させる方法に関する。
【0006】
本発明はさらに、本明細書中に記載の方法により得られる電子デバイスに関する。
【0007】
本発明による方法の利点は、OSCに、不活性領域からそれを除去することなく効果的にパターン形成することである。OSCは、領域的に堆積してもよく、それは均一性および生産性を改善する。ゲート電極などの既存のデバイス/回路の構造素子を、1ステップで半導体のパターン形成に作用させるために使用してもよい。高い移動度領域はゲート電極下でのみ要求されることから、これは自己整合を提供する。薄膜トランジスタ(TFT)回路はしばしば、活性TFT領域の下に「ブラックマスク」を含み、デバイスを光から保護する。層がデバイスに既に存在することから、かかるマスクは、本発明によるパターン形成方法において好都合に使ってもよい。本発明は、デバイスアーキテクチャの上下両方にマスキング電極/領域の位置を変化させて使用することができる。追加のフォトマスクまたはパターン形成技術は、必ずしも要求されない。また、例えばインクジェットプリンティングによるパターンOSC層の作製は、必ずしも要求されない。しかしながら、所望の場合、シャドーマスキング、フォトレジストまたはプリントマスク層などの代わりのマスキング技術を使用してもよく、あるいは保護パターン層を、例えばOSC層を覆うためのプリンティング技術によって適用する。
【0008】
本発明の方法は、酸化剤を適用することにより、例えばプラズマ処理を使って、例えば
図1に示したように電界効果トランジスタを生み出すことおよびデバイスの伝導性チャネル領域の外側の領域におけるOSC層の移動度を低減させることを伴う。プラズマで発生した反応種に対してチャネル領域内のOSC層を保護するために、追加の層(
図1におけるゲート金属(4)など)をレジスト材料として使用することができることが見出された。いかなる特定の理論にとらわれることを望まない一方、プラズマ処理作用は、金属により保護されていない領域のOSCに損傷を与え、したがって、この領域におけるOSCの移動度を低減させる。その結果、この方法により処理したOFETは、処理していないデバイスと比較して、より低いオフ電流を示す。発明者らは驚くべきことに、プラズマ法をゲート絶縁膜を通して移動度を低減させるのに使用することができることを発見した。これは、保護層はOSC上に直接パターン形成するのが難しいのに対し、絶縁層上の保護パターンを明確にすることはそれほど要求されていないことから、特に有利である。
【0009】
発明者らはまた、プラズマの反応種が短い曝露でOSCを不活性にさせるのに効果的であることを見出した。OSC移動度の低減はまた、プラズマで発生した紫外線によるものではなく、紫外線は、OSC移動度を低減させるのに効果が少ないことを見出した。
【0010】
本明細書中に記載のプラズマ法は、OSC層にパターン形成するために既にOFET構造内に存在する層を使う更なる利点がある。これにより、時間を節約し、また、フォトレジスト材料の被覆に、剥離に、または洗浄ステップにおいて使われる溶剤など、層に損傷を与え得る処理ステップにOSCを曝露することがない。また、例えばパターンOSC層のインクジェットプリンティングと比べて、OSC材料を広範にわたる溶剤に調製することができ、一般に使われる多くの処理により(例えばスピンコーティング、ドクターブレーディング、カーテンコーティングなど)、広い領域を均一に被覆することができる利点がある。OFETにおけるオフ電流の技術は、重要なパラメータであることは、注目すべきことである。表示バックプレーンにおいて、トランジスタは、そのオン状態中、電流を画素内にできるだけ速く流さなければならず、よって、高い移動度が要求される。さらに、しかしながら、トランジスタは、オン周期よりももっと長く続くオフ周期中にこの電荷を漏れから防がなければならない。低いオフ電流を有するトランジスタは、この電荷を漏れから防ぐだろう。
【0011】
本発明の別の好ましい態様において、OSC層の移動度を、酸をOSC層に適用することにより低減させる。これにより、例えばOSC層を、あるいはOSC層および前記OSC層を被覆する絶縁膜層を含む電子デバイスを酸浴槽に浸すことにより達成することができる。代わりに、酸、または酸を含む調製物を、OSC層またはOSC層を被覆する絶縁膜層上にスプレーする。酸は、非保護領域の絶縁膜およびOSC層に浸透する。驚くべきことに、これが、非保護領域における伝導性の低減をもたらし、したがって本発明の方法の選択性を増加させる。その結果、そのように処置したトランジスタデバイスは、より高いオン/オフ比を示す。
【0012】
好ましい酸または酸組成物は、硝酸を含有する。塩酸、硫酸、酢酸およびリン酸そのままはそれほど好ましくない。
【0013】
本発明の好ましい態様は、方法に関し、ここで
− OSC層の電荷移動度を低減させる領域は、プラズマ処理ステップ後除去されない、
− OSC層を、電荷移動度が低減しない領域を覆う保護パターン層により選択的に保護する、
− 保護層が無機層、例えば1または2以上の金属または金属酸化物を含む層である、
− 保護層が有機層、例えばポリマー、フォトレジストまたは有機インクを含む層である、
− 保護層が有機樹脂またはインク中に無機粒子を含む、
− 保護層を、プリンティング技術、例えばインクジェットまたはミクロ接触プリンティングにより、あるいはフォトリソグラフィーにより堆積する、
− 保護層が、電子デバイスの機能部品、例えばトランジスタデバイスのゲート電極またはTFTアレイの黒いマスクなどである、
− OSC層がポリアセン、好ましくはポリアセンおよび有機結合剤を含む調製物を含む。
【0014】
本発明はまた、本発明による方法により得られた電子デバイスに関する。かかるデバイスは、例えば有機電界効果トランジスタ(OFET)、薄膜トランジスタ(TFT)、集積回路(IC)部品、高周波識別(RFID)タグ、有機発光ダイオード(OLED)、エレクトロルミネッセンス表示、フラットパネル表示、バックライト、光検出器、センサ、論理回路、記憶素子、キャパシタ、光(PV)電池、電荷注入層、ショットキーダイオード、静電防止フィルム、伝導性基板またはパターン、光伝導体、電子写真用素子である。
【0015】
特に好ましいのは、
− デバイスの不可欠な部分を形成するゲート絶縁膜または層間絶縁膜などの絶縁層により分離したOSC層および保護層を含む、
− 本発明の方法において保護パターン層としての機能を果たすゲート電極を含む
− 表示用TFTアレイ、例えば保護パターン層としての機能を果たす黒いマスクを含む液晶表示である、
− トップゲートまたはボトムゲートOFETデバイスである、
電子デバイスである。
【0016】
本発明を、
図1、2、3および4に関連して説明する。
図1は、トップゲート型OFET構造が描かれており、ソースおよびドレイン電極(6)が基板(1)上にパターン形成され、OSC材料の層(2)がソースおよびドレイン電極上に堆積している。OSCの上面に絶縁膜材料の層(3)が堆積し、ゲート金属(4)が続く。電極(6)間の距離(5)は、チャネル領域として知られている。
【0017】
本発明において、ゲートまたは他のマスキング層(4)に使うことができる好適な金属は、例えば金、アルミニウム、アルミニウム/ネオジム、アルミニウム酸化物、窒化ケイ素および二酸化ケイ素を含むが、それらに限定されない。
【0018】
本発明は、さまざまな有機半導体材料により作製したOFETデバイスに適用することができ、例えば、10
−5cm
2V
−1S
−1、より好ましくは10
−3cm
2V
−1S
−1より大きい電界効果移動度μを構成する化合物、例えば可溶性および不溶性ポリアセン化合物、特にWO 2005/055248 A2に記載のようなペンタセン化合物を含むが、それらに限定されない。
【0019】
OSC層は好ましくは、可溶性ポリアセン、好ましくはWO 2005/055248 A2に開示されたペンタセンから選択された半導体化合物を含み、その全体の開示は、参照することにより本願に組み込まれている。これらのポリアセンは、以下の式
【化1】
【0020】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11およびR
12のそれぞれは、同じまたは異なっていてもよく、独立して水素;任意に置換されたC
1〜C
40カルビルまたはヒドロカルビル基;任意に置換されたC
1〜C
40アルコキシ基;任意に置換されたC
6〜C
40アリールオキシ基;任意に置換されたC
7〜C
40アルキルアリールオキシ基;任意に置換されたC
2〜C
40アルコキシカルボニル基;任意に置換されたC
7〜C
40アリールオキシカルボニル基;シアノ基(−CN);カルバモイル基(−C(=O)NH
2);ハロホルミル基(−C(=O)−X、ここでXはハロゲン原子を表す);ホルミル基(−C(=O)−H);イソシアノ基;イソシアネート基;チオシアネート基またはチオイソシアネート基;任意に置換されたアミノ基;ヒドロキシ基;ニトロ基;CF
3基;ハロ基(Cl、Br、F);または任意に置換されたシリル基を表し;ここでR
2およびR
3および/またはR
8およびR
9の各組は独立して、架橋してC
4〜C
40飽和または不飽和環を形成してもよく、飽和または不飽和環は、酸素原子、硫黄原子または式−N(R
a)−(ここでR
aは水素原子または任意に置換された炭化水素基)で示される基が介在してもよく、あるいは任意に置換されてもよく;ならびに
【0021】
式中、ポリアセン骨格の1または2以上の炭素原子は任意に、N、P、As、O、S、SeおよびTeから選択されたヘテロ原子により置換されてもよく;ならびに
式中、ポリアセンの隣接した環位置に位置するあらゆる2または3以上の置換基R
1〜R
12は独立して、一緒に、任意にO、Sまたは−N(R
a)(ここでR
aは上に定義したとおりである)により中断したC
4〜C
40飽和または不飽和環、またはポリアセンと融合した芳香環系をさらに任意に構成し;ならびに
式中、nは0、1、2、3または4であり、好ましくはnは0、1または2であり、最も好ましくはnは0または2であり、すなわちポリアセン化合物はペンタセン化合物(n=2)または「擬ペンタセン」(n=0)化合物である、
から選択される。
【0022】
本発明の別の好ましい態様において、OSC層は上記のポリアセンおよび有機結合剤、特に1,000Hzで3.3以下の低誘電率、εを有する有機結合剤を含む調製物を含む。
結合剤は、例えばポリ(α−メチルスチレン)、ポリビニルシンナメート、ポリ(4−ビニルビフェニル)またはポリ(4−メチルスチレン)、あるいはこれらの配合物から選択される。結合剤は、例えばポリアリールアミン、ポリフルオレン、ポリチオフェン、ポリスピロビフルオレン、置換ポリビニレンフェニレン、ポリカルバゾールまたはポリスチルベン、あるいはこれらのコポリマーから選択された半導体結合剤であってもよい。本発明において使われる好ましい絶縁膜材料(3)は、好ましくは1000Hzで1.5〜3.3の低誘電率を有する材料、例えば旭硝子株式会社から入手可能なCytop(商品名)809mなどを含む。
【0023】
本発明によるプラズマ法において、利用してもよい好適な気体は、例えば酸素、オゾン、窒素、四フッ化炭素、トリフルオロメタン(CHF
3)、六フッ化硫黄SF
6およびこれらの混合物を含む。
【0024】
他の種類の融剤(例えば 反応ガス)を、OSCの移動度における変化を引き起こすのに使ってもよい。同様に、他の種類のマスキング材料を、所望の領域におけるOSCを保護するのに使ってもよく、よって本発明は、マイクロ波生成の酸素プラズマに限定されない。一般的に、紫外線の使用は、光がOSCの活性を低減させるのにあまり効果的でないことから、あまり好ましくない。加えて、光はしばしば望ましくないドーピングの原因となる。これらの要因の両方が、例として説明してある。移動度を低減させるのに好ましい曝露は、プラズマである。
プラズマの持続期間および強度は、プラズマ反応器に依存して、本発明の方法を最適化するのに変化に富み得る。
【0025】
本発明を、以下の例を参照することにより、より詳細に記載するが、これらは説明目的のみであり、本発明の範囲を限定するものではない。
以下のパラメータを使用する:
μは、電荷担体の移動度である
Wは、ドレインおよびソース電極の長さである。
Lは、ドレインおよびソース電極の距離である。
I
DSは、ソース−ドレイン電流である。
C
iは、ゲート絶縁膜の単位領域あたりのキャパシタンスである。
V
Gは、ゲート電圧(V)である。
V
DSは、ソース−ドレイン電圧である。
V
0は、オフセット電圧である。
【0026】
特に記述がない限り、本明細書中の誘電率(ε)、電荷担体の移動度(μ)、溶解パラメータ(δ)および粘度(η)などの物理的パラメータのすべての特定の値は、20℃(+/−1℃)の温度を示す。
【0027】
例1
テスト電界効果トランジスタを、上にシャドーマスキングによりPt/Pdソースおよびドレイン電極をパターン形成したガラス基板を使って製作した。半導体調製物を、不活性結合剤であるポリ(アルファメチルスチレン)p−αMS(ポリ(アルファ−メチルスチレン)Aldrichカタログ番号19,184-1)と1:1の重量比で配合した式(1)で表される化合物を使って作製した。半導体調製物4部を96部の溶剤(p−キシレン)に溶解させ、基板およびPt/Pd電極に500rpmで18秒間スピンコーティングした。完全な乾燥を確実にするために、サンプルを100℃のオーブン内に20分間置いた。絶縁膜材料(Cytop 809M、旭硝子株式会社)の溶液を、1:1重量比でフッ素溶剤FC43(Acrosカタログ番号12377)と混合し、そして半導体層上にスピンコートし、およそ1μm厚にした。
【0028】
サンプルを再度100℃のオーブン内に置き、絶縁膜層から溶剤を蒸発させた。ゲートコンタクトを、シャドーマスクを通した50nmの金の蒸発により、デバイスチャネル領域全体にわたり明確にした。絶縁膜層のキャパシタンスを決定するために、多くのデバイスを作製し、それらは非パターン形成Pt/Pd基層、FETデバイスと同じ方法で作製した絶縁膜層、および既知の形状のトップ電極からなった。キャパシタンスを、金属を絶縁膜の片側に接続した携帯型マルチメータを使って測定した。トランジスタの他の明確にするパラメータは、それぞれ向かい合うドレインおよびソース電極の長さ(W=30mm)およびそれらのそれぞれからの距離(L=130μm)である。
【0030】
トランジスタに印加した電圧は、ソース電極の電位に対して相対的である。p型ゲート材料の場合、負電位をゲートに印加するとき、正の電荷担体(ホール)は、ゲート絶縁膜の反対側の半導体に蓄積する。(nチャネルFETについては、正の電圧を印加する。)これは、蓄積モードと呼ばれる。ゲート絶縁膜C
iのキャパシタンス/領域は、それから誘導される電荷量を決定する。負電位V
DSをドレインに印加するとき、蓄積した担体は、主に蓄積した担体の密度および、重要なことに、ソース−ドレインチャネルにおけるそれらの移動度に依存するソース−ドレイン電流I
DSをもたらす。ドレインおよびソース電極配置、大きさおよび距離などの形状的要因もまた、電流に影響を及ぼす。典型的に、一連のゲートおよびドレイン電圧を、デバイスの研究中スキャンする。ソース−ドレイン電流を、方程式1
【数1】
【0031】
式中、V
0はオフセット電圧およびであり、I
Ωはゲート電圧から独立した抵抗電流であり、材料の有限導電率によるものである、
で示す。他のパラメータは、上記の通りである。
【0032】
電気計測のために、トランジスタサンプルをサンプルホルダーに搭載した。ゲート、ドレインおよびソース電極へのマイクロプローブ接続を、Karl Suss社製PH100ミニチュアプローブヘッドを使って行った。これらを、Hewlett-Packard社製4155Bパラメータアナライザに連結した。ドレイン電圧を−5Vに設定し、ゲート電圧を+10〜−40Vで0.5V段階ごとにスキャンした。この後、ドレインを−30Vに設定し、ゲートを再度+10V〜−40Vでスキャンした。蓄積の際、|V
G|>|V
DS|のとき、ソース−ドレイン電流はV
Gに伴って直線的に変化する。したがって、電界効果移動度は、方程式2によりI
DS対V
Gの勾配(S)から計算することができる。
【数2】
【0033】
以下に引用したすべての電界効果移動度は、このレジーム(regime)から計算した(特に記述がない限り)。電界効果移動度がゲート電圧に伴って変化した場合、蓄積モードにおいて|V
G|>|V
DS|であるレジームにおいて到達した最高レベルととらえる。
トランジスタのオフ電流を、+10V〜−40Vのゲートスイープ中に記録された最も低い電流として定義した。これを、使ったドレイン電圧の両方について引用する。デバイスのオン/オフ比を、−40V V
Gでの電流をV
d=−30Vスキャンについての最も低いオフ電流で割ったものとして定義する。
【0034】
図2により、上記例1に記した方法により組み立てたOFETデバイスのトランジスタ特性を説明する。
例1に従って作製したデバイスをマイクロ波プラズマオーブン(TePlaモデル400)に入れて、酸素プラズマ(O
2流速500ml/分、出力=1kW)を5分間行った。プラズマ処理後、デバイスを再測定し、伝達特性を
図3にて説明する。
【0035】
以下の表(1)は、
図2および3から抽出されたパラメータを説明する。
【表1】
これらの結果は、本発明によるプラズマ処理ステップで処理したOFETデバイスを処理することにより、デバイスの移動度を変えることなくオン/オフ比を1桁増加させることをはっきりと示している。
【0036】
例2
OFETを例1に記載の方法を使って作った。デバイスの特性を明らかにし、標準アルミニウムエッチング(H
3PO
4 60%、CH
3COOH 10%、HNO
3 10%、水20%)に3分間浸漬し、そして水で洗浄し、乾燥させた。デバイスをもう一度測定した。
図4Aおよび4Bは、酸処理前(A)および後(B)のデバイスの性能を示し、移動度が影響を受けないまま、オン/オフ比の2桁増加を表している。
【0037】
例3−比較例
OFETを、OSC調製物がテトラリン中2%全固形分で50:50で混合した式1の半導体およびポリスチレン(Mw1,000,000)を含んだ以外は、例1に記載の方法を使って作った。OSC調製物を500rpmで10秒間回転し、続いて2000rpmで60秒間回転した。この場合、基板はガラスであり、ソースおよびドレイン電極はAuであった。電極を、10mMのペンタフルオロベンゼンチオール(Aldrichカタログ番号P565-4)溶液で10分間処理(浸漬)した。
【0038】
デバイスを紫外線(強度70mW/cm
2)に1分間、そして15分間曝露した。移動度およびオン/オフ比をこれらの処理後、測定した。
デバイスの移動度およびオン/オフ比を、2回の曝露について以下の表(2)に示す。示したように、デバイスのオン/オフ比の大きな減少がある。これは、光が移動度を低減させるよりもむしろゲートにより覆われていない領域におけるOSC材料のドーピングをもたらすことを表している。よって、光によるパターン形成は、本発明において望ましくない。
【0040】
例4−比較例
OFETを、プラズマ処理前にゲート金属を除外した以外、例1に記載の方法を使って作った。ゲート無しのデバイスをプラズマ(1KW 500mL/分を5分間)に曝露した。ゲート金属をそれからデバイス上に蒸着させた。テストの際、デバイスは、1.2×10
−2cm
2/Vsの移動度を示した。これは、ゲート金属無しでは、プラズマがOSC材料に損傷を与え、移動度が約40倍低減することを実証している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図2】例1の方法を使って作られたOFETの伝達特性を示す図である。
【
図3】プラズマ処理後のOFETデバイスの伝達特性を示す図である。
【
図4A】例2の方法を使って作られたOFETの伝達特性への酸浴槽の効果を示す図である。
【
図4B】例2の方法を使って作られたOFETの伝達特性への酸浴槽の効果を示す図である。