(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リードフレームと樹脂成形体とを供えるLED発光素子用リードフレーム基板において、上記樹脂成形体が請求項1〜5のいずれか一項に記載のケイ素含有硬化性組成物より形成されることを特徴とするLED発光素子用リードフレーム基板。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のケイ素含有硬化性組成物及びそれを硬化させてなる硬化物について詳細に説明する。
【0017】
まず、上記(A)成分であるケイ素含有重合体について説明する。
【0018】
上記(A)成分のケイ素含有重合体の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、3000〜10万の範囲内であり、好ましくは8000〜5万、さらに好ましくは15000〜25000の範囲内である。ここで、ケイ素含有重合体の重量平均分子量が3000より小さいと望ましい物性が得られず(熱重量減温度の低下)、10万より大きいと、トランスファー成形における処理温度で溶融しない、もしくは溶融しても高粘度で樹脂の流動性が低く、成型性が低下する。
【0019】
上記(A)成分のケイ素含有重合体は、上記一般式(1−1)で表されるオルガノシラン(a)5〜50モル%、上記一般式(1−2)で表されるオルガノシラン(b)0〜50モル%、上記一般式(1−3)で表されるオルガノシラン(c)0〜40モル%及び上記一般式(1−4)で表されるオルガノシラン(d)0〜50モル%からなり、オルガノシラン(b)とオルガノシラン(c)との和が5〜60モル%であるオルガノシラン混合物を加水分解・縮合することにより得られる。上記オルガノシラン混合物中、オルガノシラン(a)は10〜40モル%であることが好ましく、オルガノシラン(b)は20〜40モル%であることが好ましく、オルガノシラン(c)は10〜25モル%であることが好ましく、オルガノシラン(d)は5〜45モル%であることが好ましい。オルガノシラン(b)とオルガノシラン(c)との和は25〜55モル%であることが好ましい。また、上記オルガノシラン混合物に含まれるオルガノシランは、オルガノシラン(a)、(b)、(c)及び(d)の4成分のみであることが好ましい。
【0020】
上記(A)成分のケイ素含有重合体は、オルガノシラン(a)、(b)、(c)及び(d)それぞれに由来する(R
1SiO
3/2)、(R
2SiO
3/2)、(R
3R
4SiO)及び(R
5SiO
3/2)で表される4種の構成ユニットが、ランダムに二次元・三次元につながっており、それぞれの末端はOH基又はXになっている。Xは、オルガノシラン(a)、(b)、(c)又は(d)に由来する基である。
尚、上記(R
1SiO
3/2)には(R
1SiX’O
2/2)も含めて考えるものとし、上記(R
2SiO
3/2)には(R
2SiX’O
2/2)も含めて考えるものとし、上記(R
5SiO
3/2)には(R
5SiX’O
2/2)も含めて考えるものとする。X’は、オルガノシラン(a)、(b)及び(d)それぞれに含まれていたXと同じであるか、OH基を表す。
【0021】
上記一般式(1−1)において、R
1で表される炭素原子数2〜6のアルケニル基としては、ビニル基、2−ブロペニル基、3−ブテニル基等が挙げられる。R
1は、ビニル基であることが好ましい。
上記一般式(1−2)において、R
2で表される炭素原子数1〜6のアルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、t−アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。R
2は、メチル基であることが好ましい。
【0022】
上記一般式(1−3)において、R
3及びR
4で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、並びにR
3及びR
4で表されるフェニル基を置換してもよい炭素原子数1〜6のアルキル基としては、上記R
2で表されるものとして挙げたものと同様のものが挙げられる。R
3及びR
4で表される炭素原子数2〜6のアルケニル基としては、上記R
1で表されるものとして挙げたものと同様のものが挙げられる。R
3及びR
4は、メチル基であることが好ましい。
上記一般式(1−4)において、R
5で表されるフェニル基を置換してもよい炭素原子数1〜6のアルキル基としては、上記R
2で表されるものとして挙げたものと同様のものが挙げられる。R
5は、置換されていないフェニル基であることが好ましい。
【0023】
上記一般式(1−1)〜(1−4)において、Xで表される炭素原子数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、Xで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。Xは、メトキシ基又はエトキシ基であることが好ましい。尚、上記一般式(1−1)〜(1−4)におけるそれぞれのXは、互いに同一でもよく異なっていてもよい。
【0024】
上記4成分として、Xが炭素原子数1〜6のアルコキシであるもの(アルコキシシラン)を用いる場合、アルコキシシランの加水分解・縮合反応は、いわゆるゾル・ゲル反応を常法に従って行えばよく、該ゾル・ゲル反応としては、無溶媒又は溶媒中で、酸又は塩基等の触媒で加水分解・縮合反応を行う方法が挙げられる。ここで用いる溶媒は、特に限定されず、具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、トルエン等が挙げられ、これらの1種を用いることも、2種以上を混合して用いることもできる。
【0025】
上記アルコキシシランの加水分解・縮合反応は、アルコキシシランが、水による加水分解によりシラノール基(Si−OH)を生成し、この生成したシラノール基同士又はシラノール基とアルコキシ基が縮合することにより進む。この反応を進ませるためには、適量の水を加えることが好ましく、水は溶媒中に加えてもよく、触媒を水に溶解して加えてもよい。また、空気中の水分あるいは、溶媒中に含まれる微量の水分によっても加水分解反応は進む。
【0026】
上記加水分解・縮合反応で用いられる酸、塩基等の触媒は、加水分解・縮合反応を促進するものであれば、特に限定されず、具体的には、塩酸、リン酸、硫酸等の無機酸類;酢酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸モノイソプロピル等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等の無機塩基類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン化合物類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンエステル類;ジブチル錫ラウレート、オクチル酸錫等の錫カルボン酸塩類;トリフルオロボロン等のホウ素化合物類;鉄、コバルト、マンガン、亜鉛等の金属の塩化物やナフテン酸塩あるいはオクチル酸塩等の金属カルボン酸塩類;アルミニウムトリスアセチルアセテート等のアルミニウム化合物等が挙げられ、これらの1種を用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0027】
塩基触媒を加えて塩基性下(pH7以上)で上記加水分解・縮合反応を行う方法が好ましい例として挙げられる。
【0028】
尚、上記加水分解・縮合反応を行うときには、反応系を撹拌することが好ましく、また40〜150℃に加熱することで反応を促進することができる。
【0029】
加水分解・縮合反応の順序は特に限定されず、例えば、アルケニル基を有するアルコキシシラン(R
1SiX
3)と他のアルコキシシラン(R
2SiX
3、R
3R
4SiX
2、R
5SiX
3)を両者混合して加水分解・縮合反応を行ってもよく、これらの4成分のうちの一種類のアルコキシシラン単独である程度加水分解・縮合反応を行った後、他のアルコキシシランを加えてさらに加水分解・縮合反応を行ってもよい。
【0030】
上記4成分として、Xが水酸基であるものとXがアルコキシ基であるものを併用してもよく、この場合、Xが水酸基であるものは加水分解を行わずに用いることができる。
【0031】
クロロシラン等のハロゲノシラン(上記4成分のXがハロゲン原子であるもの)を使用する場合も、アルコキシシランの場合と同様に加水分解・縮合反応を行なえばよい。
【0032】
上記加水分解・縮合反応が終了した反応系から、生成したケイ素含有重合体を得るためには、反応溶媒、水、触媒を除去すればよく、例えば、ブタノール等の溶媒を加えて溶媒抽出後、抽出溶媒を窒素気流下で減圧留去すればよい。
【0033】
上記ケイ素含有重合体は、変性してから(A)成分として用いてもよい。上記ケイ素含有重合体に施す変性としては、特に制限されず、シリコーン樹脂を反応性シリコーン樹脂とするために行なうことができる各種変性が可能であり、より具体的には、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性等を常法により行うことができる。
【0034】
上記(A)成分のケイ素含有重合体は、全有機成分(ケイ素を除く成分)中のフェニル基の割合が50質量%以下であることが好ましく、メチル基の割合が85質量%以下の範囲内であることが好ましい。フェニル基が多いとケイ素含有重合体の融点が高くなり成形時の温度で溶融しにくくなることから、成形時に硬化物(重合物)の分子量を大きくするのが困難であるため、メチル基成分が多いのが好ましい。
【0035】
上記(A)成分のうち、上記一般式(1−1)中のR
1がビニル基であるオルガノシラン(a)25〜45モル%、上記一般式(1−2)中のR
2がメチル基であるオルガノシラン(b)25〜45モル%、上記一般式(1−3)中のR
3及びR
4がメチル基であるオルガノシラン(c)10〜25モル%及び上記一般式(1−4)中のR
4がフェニル基であるオルガノシラン(d)5〜20モル%からなるオルガノシラン混合物を加水分解・縮合することにより得られるケイ素含有重合体が、密着性がよいので好ましい。
【0036】
上記(A)成分のうち、上記一般式(1−2)中、R
2がメチル基であり、上記一般式(1−3)中、R
3及びR
4が炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基であるケイ素含有重合体が、合成が容易で安価なので好ましい。
【0037】
上記(A)成分のうち、上記一般式(1−2)中、R
2が炭素原子数1〜6のアルキル基であり、上記一般式(1−3)中、R
3が炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R
4が炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基であるケイ素含有重合体が、線膨張率が小さいので好ましい。
【0038】
尚、上記(A)成分は、上記した1種又は2種以上が使用できる。
【0039】
次に、上記(B)成分であるプレポリマーについて説明する。
上記(B)成分のプレポリマーは、金属や樹脂等に対して密着性を向上させる効果があり、上記の(α)成分から選ばれる1種以上及び(β)成分から選ばれる1種以上をヒドロシリル化反応させて得られ、その1分子中に2個以上のSi−H基を有するものである。本発明のケイ素含有硬化性組成物は、上記(B)成分のプレポリマーを、上記(A)成分100質量部に対して0〜200質量部含有するものであり、上記(B)成分を含有しなくてもよいが、上記の密着性向上効果の観点からは、10〜200質量部含有することが好ましく、30〜135質量部含有することがさらに好ましい。
【0040】
(α)成分は、上記の式(2)で示され、1分子中に2個以上のSi−H基を含有する環状シロキサン化合物である。R
6は工業的入手性の点からメチル基が好ましく、R
7及びR
8はメチル基又はフェニル基が好ましい。fは製造の容易さの点から4〜6が好ましく、gは硬化反応の架橋密度の点から0〜1が好ましい。メチル基とフェニル基を両方含む場合は、R
6〜R
8の置換基全体において、メチル基とフェニル基の比は4:1〜1:4であるのが好ましい。
【0041】
(α)成分の具体例としては、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられ、工業的に入手が容易な点と適度のSi−H官能基数の点から1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。(α)成分は単独で使用しても2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0042】
(β)成分は、上記式(3)又は(3’)で表される化合物である。
【0043】
(β)成分である上記の式(3)で示される化合物は、nが1である時はジビニルベンゼンを示し、o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼンのいずれでもよく、nが2である時はトリビニルベンゼンを示し、具体例としては1,2,3−トリビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、1,3,5−トリビニルベンゼン等が挙げられる。上記の式(3)で示される化合物は、ビニル基以外の官能基(例えばメチル基等のアルキル基)がベンゼン環に結合しているものでもよく、これらの混合物でもよい。(β)成分は単独で使用しても2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0044】
上記(B)成分のプレポリマーは、上記の(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応することにより得られる。(α)成分と(β)成分の配合比率は、(B)成分のプレポリマー1分子中に、2個以上のSi−H基を含有するようにする限り特に限定されない。好ましくは、プレポリマーの粘度の点から、(α)成分中のSi−H基の数(X)と、(β)成分中のSi−H基との反応性を有する炭素−炭素二重結合の数(Y)との比が、X:Y=10:1〜2:1であり、より好ましくはX:Y=4:1〜2:1である。
【0045】
上記(B)成分のプレポリマーが有するSi−H基の濃度は、硬化性及び保存安定性の点から、0.0001mmol/g〜100mmol/gが好ましく、0.01mmol/g〜20mmol/gがさらに好ましい。
【0046】
上記(B)成分のプレポリマーは、重量平均分子量が500〜50万が好ましく、耐熱性及びハンドリング性の点から、1000〜30万がより好ましい。本プレポリマーの重量平均分子量の測定はGPCを使用すればよく、ポリスチレン換算により求めればよい。
【0047】
(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応は白金系触媒を用いて行うとよい。該白金系触媒としてはヒドロシリル化反応を促進する白金、パラジウム及びロジウムの一種以上の金属を含有する公知の触媒であればよい。これらのヒドロシリル化反応用の触媒として用いられる白金系触媒としては、白金−カルボニルビニルメチル錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金−オクチルアルデヒド錯体等の白金系触媒をはじめ、白金の代わりに同じく白金系金属であるパラジウム、ロジウム等を含有する化合物が挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用してもよい。特に硬化性の点から、白金を含有するものが好ましく、具体的には、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)、白金−カルボニルビニルメチル錯体(Ossko触媒)が好ましい。また、クロロトリストリフェニルホスフィンロジウム(I)等の、上記白金系金属を含有するいわゆるWilkinson触媒も、本発明では白金系触媒に含まれる。白金系触媒の使用量は、反応性の点から、(α)成分と(β)成分の合計量の5質量%以下が好ましく、0.0001〜1.0質量%がより好ましい。(α)成分と(β)成分のヒドロシリル化反応条件は特に限定されず、上記触媒を使用して従来公知の条件で行えばよいが、硬化速度の点から、室温〜130℃で行なうのが好ましく、反応時にトルエン、キシレン、ヘキサン、MIBK(メチルイソブチルケトン)、シクロペンタノン、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)等の従来公知の溶媒を使用してもよい。また、上記触媒は、(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応を行った後、除去してもよく、除去せずそのままケイ素含有硬化性組成物に用いてもよい。
【0048】
上記(B)成分のプレポリマーは、環状シロキサン化合物である(α)成分と、上記式(3)又は(3’)で表される化合物である(β)成分とをヒドロシリル化反応させて得られるプレポリマーであり、(B)成分を構成する(α)成分が環状であること、及び、(α)成分を(β)成分と反応させたプレポリマーとしてから、これを硬化性組成物の配合成分とすることに大きな特徴がある。本発明のケイ素含有硬化性組成物は、(B)成分を構成する(α)成分が環状構造であるので硬化収縮性が小さく、そのため密着性に優れる硬化物が得られる。さらに低粘度でありながらケイ素含有量を多くできるので、耐熱性及び密着性に優れた硬化性組成物を得ることができる。
【0049】
次に、上記(C)成分について説明する。
上記(C)成分は、Si−H基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上含有する環状シロキサン共重合体である。該環状シロキサン共重合体は、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。Si−H基との反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は2〜10個が好ましく、硬化物の架橋密度の点から2〜6個がより好ましい。また、このSi−H基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、ビニル基等のアルケニル基が挙げられるが、特に反応性の点から、ケイ素原子に結合したビニル基(Si−CH=CH
2 基)であることが好ましい。
また、硬化物の物性の点から特に好ましい(C)成分としては、上記の式(4)で示される環状シロキサン共重合体が挙げられる。
【0050】
上記の式(4)中、工業的入手性の点から、R
9、R
10及びR
11は、メチル基又はフェニル基が好ましい。pは架橋密度の点から2〜4が好ましく、qは粘度の点から1〜3が好ましい。好ましい(C)成分の具体例としては、下記の式(5)〜(7)で示される環状シロキサン化合物が挙げられる。
【0054】
上記(C)成分は、Si−H基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上含有する環状シロキサン化合物であり、この(C)成分が環状シロキサン化合物であることにより、密着性が向上する。本発明のケイ素含有硬化性組成物は、上記(C)成分の環状シロキサン共重合体を、上記(A)成分100質量部に対して0〜30質量部含有するものであり、上記(C)成分を含有しなくてもよいが、上記の密着性向上効果の観点からは、0.1〜25質量部含有することが好ましく、3〜20質量部含有することがさらに好ましい。
【0055】
また、本発明のケイ素含有硬化性組成物中、(A)成分は5〜70質量%が好ましく、(B)成分及び(C)成分の和は0〜30質量%が好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。
また、(B)成分と(C)成分の含有量は、Si−H基と、Si−H基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の比等を考慮して適宜決めればよいが、(B)成分に含まれるSi−H基と、(C)成分に含まれるSi−H基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の当量比(前者/後者)が、0.1〜10が好ましく、1.0〜5.0が特に好ましい。
【0056】
次に、硬化促進剤である上記(D)成分である有機過酸化物について説明する。
上記(D)成分は、(A)成分におけるケイ素原子に結合したメチル基(Si−CH
3基)を活性化させ、さらには(B)成分及び/又は(C)成分においてケイ素原子に結合したメチル基が存在する場合はそれらも活性化させて、これらのSi−CH
3基と、(A)成分におけるアルケニル基、さらには(C)成分における炭素−炭素二重結合との間での重合反応を起こさせる触媒として働く。(D)成分の有機過酸化物としては、特に制限されずシリコーンゴム組成物を硬化する際に一般的に使用されるものを用いることができるが、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−モノクロロベンゾイルパーオキサイド、p−モノクロロベンゾイルパーオキサイド、ビス−2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルクミルベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)へキサン、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボキシ)へキサン、ジクロミルパーオキサイド、ジミリスチルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、ジシクロドデシルパーオキシジカーボネート、下記式(8)及び(8’)で表される化合物等が挙げられる。これらの中でも、ベンゾイル系パーオキサイド化合物が好ましく、特に、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパ−オキシ)ヘキサンが好ましい。
【0058】
上記一般式(8)及び(8’)中のR並びに上記一般式(8’)中のR’で表される炭素原子数3〜10の炭化水素基としては、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等のアルキル基、ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、1−フェニルプロペン−3−イル等のアルケニル基、フェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第三ブチルフェニル等のアルキルアリール基、ベンジル、2−フェニルプロパン−2−イル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基等、これらがエーテル結合、チオエーテル結合で中断されたもの、例えば、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、2−ブトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、3−メトキシブチル、2−フェノキシエチル、3−フェノキシプロピル、2−メチルチオエチル、2−フェニルチオエチルが挙げられ、更にこれらの基は、アルコキシ基、アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0059】
本発明のケイ素含有硬化性組成物において、上記(D)成分である有機過酸化物の含有量は、上記(A)成分であるケイ素含有重合体100質量部に対し、0.0001〜10質量部である。
【0060】
次に、上記(D)成分である金属触媒について説明する。
上記(D)成分である金属触媒としては、(B)成分であるプレポリマーを得る際の上記(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応において用いることができるものとして挙げた白金系触媒を用いることができる。該白金系触媒としては、(B)成分である上記(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応により得られるプレポリマーに含まれる白金系触媒を利用してもよい。また、上記(D)成分である金属触媒としては、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム、Al(acac)
3、Al(O−i−Pr)
3、Al(ClO
4)
3、Ti(O−i−Pr)
4、Ti(O−i−Bu)
4、Bu
2Sn(acac)
2、Bu
2Sn(C
7H
15COO)
2のようなAl系、Ti系、Sn系の金属触媒を用いることもできる。
これらの中でも、白金系触媒、Al系触媒が好ましく、特に、白金−カルボニルビニルメチル錯体(Ossko触媒)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウムが好ましい。
【0061】
上記(D)成分の金属触媒は、ヒドロシリル化反応を促進させる効果がある。本発明のケイ素含有硬化性組成物は、上記(D)成分である金属触媒を、上記(A)成分であるケイ素含有重合体100質量部に対して0〜1.0質量部含有するものであり、上記(D)成分を含有しなくてもよいが、上記の効果の観点からは、1×10
-4〜0.5質量部含有することが好ましく、1×10
-3〜0.2質量部含有することがさらに好ましい。
【0062】
また、本発明のケイ素含有硬化性組成物中、(D)成分の含有量は、硬化性及び保存安定性の点から、有機過酸化物と金属触媒との合計で5質量%以下が好ましく、0.0001〜3.0質量%がより好ましい。含有量が0.0001質量%未満であると、ケイ素含樹脂組成物の反応を十分に促進する硬化を得ることができず、5質量%よりも多くても得られる効果が変わらない。
【0063】
次に、上記(E)成分であるフィラーについて説明する。
フィラーを含有させると、得られる硬化物を所望の色に着色することができ、また得られる硬化物の硬度を上げることができる。該フィラーとしては、白色顔料及び無機充填剤が好ましく挙げられる。
【0064】
上記白色顔料は、白色着色剤として白色度を高めるために配合するものであり、例えば二酸化チタンを用いることが好ましく、この二酸化チタンの単位格子はルチル型、アナタース型、ブルカイト型のどれでも構わないが、耐光性を考えるとルチル型が好ましく使用される。また、平均粒径や形状も限定されないが、平均粒径は通常0.05〜5.0μmである。前記二酸化チタンは、樹脂や無機充填剤との相溶性、分散性を高めるため、AlやSi等の含水酸化物等で予め表面処理することができる。
なお、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D
50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0065】
また、白色顔料として、二酸化チタン以外にチタン酸カリウム、酸化ジルコン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム等を用いることができる。これらの中でも酸化マグネシウム、酸化亜鉛が、低波長(300〜400nm)の反射率を保持できるので好ましい。これらの白色顔料は、単独で使用してもよく又は二酸化チタンと併用して使用することもできる。
【0066】
上記フィラー(E)として白色顔料のみを用いる場合、白色顔料の配合量は、(A)成分100質量部に対し、10〜1500質量部であり、10〜1350質量部が好ましい。10質量部未満では十分な光反射率が得られない恐れがある。また、1500質量部を超えると機械的強度向上の目的で添加する他の成分の割合が少なくなる問題が発生する。なお、この白色顔料の含有量は、ケイ素含有硬化性樹脂組成物中1〜90質量%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜85質量%である。
【0067】
上記無機充填剤は、通常シリコーン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物等の封止材料に配合されるものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、シリカゲル等のシリカ類;酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化鉄、三酸化アンチモン等の金属酸化物;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素等のセラミックス;マイカやモンモリロナイト等の鉱物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物あるいはこれらを有機変性処理等により改質したもの;炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩あるいはこれらを有機変性処理等により改質したもの;金属ホウ酸塩、カーボンブラック等の顔料;炭素繊維、グラファイト、ウィスカ、カオリン、タルク、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスマイクロスフィア、シリカガラス、層状粘土鉱物、クレー、炭化ケイ素、石英、アルミニウム、亜鉛等が挙げられる。尚、フィラー(E)として、アクリルビーズ、ポリマー微粒子、透明樹脂ビーズ、木粉、パルプ、木綿チップ等の有機充填剤を用いることもできる。
これら無機充填剤及び有機充填剤の平均粒径や形状は特に限定されないが、平均粒径は通常0.1〜80μmである。なお、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D
50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0068】
上記無機充填剤としては、上記に挙げた無機充填剤の中でも、シリカ類、金属酸化物、改質されていてもよい金属炭酸塩、顔料等が好ましく、特に、溶融シリカ、溶融球状シリカ、コロイダルシリカ、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、カオリン、ガラス繊維が好ましい。
上記無機充填剤としては、とりわけ溶融シリカ、溶融球状シリカが好適に用いられ、その粒径は特に限定されるものではないが、成形性、流動性からみて、平均粒径は4〜40μm、特に7〜35μmが好ましい。また、高流動化を得るためには、3μm以下の微細領域、4〜8μmの中粒径領域、10〜40μmの粗領域のものを組み合わせて使用することが望ましい。
【0069】
上記無機充填剤は、金属との密着性を高めるため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等のカップリング剤で予め表面処理したものを配合してもよい。
【0070】
このようなカップリング剤としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル官能性アルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン等のアルケニル官能性アルコキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシラン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド等のチタンアルコキシド類、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等のチタンキレート類、ジルコウニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート等のジルコニウムキレート類、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート等のジルコニウムアシレート類、メチルトリイソシアネートシラン等のイソシアネートシラン類等を用いることが好ましい。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
【0071】
上記フィラー(E)として無機充填剤のみを用いる場合、無機充填剤の配合量は、(A)成分100質量部に対し、10〜1500質量部であり、300〜1200質量部が好ましい。10質量部未満では硬化物の硬度を上げるという添加目的が十分達成できない場合がある。また、1500質量部を超えると機械的強度向上の目的で添加する他の成分の割合が少なくなる問題が発生する。尚、上記無機充填剤の含有量は、本発明のケイ素含有硬化性組成物中、耐熱性及びハンドリングの点から、合計で90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
【0072】
本発明のケイ素含有硬化性組成物において、上記フィラー(E)の合計量は、10〜1500質量部であり、100〜1400質量部が好ましく、300〜1350質量部がさらに好ましい。
本発明のケイ素含有硬化性組成物においては、上記白色顔料と上記無機充填剤とを併用することも好ましい。
【0073】
本発明のケイ素含有硬化性組成物には、更に接着助剤としてシアヌル酸構造を有する化合物を添加して密(接)着性を向上させることができる。該シアヌル酸構造を有する化合物としては、例えば、イソシアヌル酸、トリアリルシアヌル酸、1,3,5−トリグリシジルイソシアヌル酸、トリアリルイソシアヌル酸、1−アリル−3,5−ジグリシジルイソシアヌル酸、1,3−ジアリル−5−グリシジルイソシアヌル酸、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、トリス(2,3−ジヒドロキシプロピル)イソシアヌル酸、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌル酸、下記式(9)で表される化合物、下記式(9)において、R
12〜R
14のうち少なくとも1つが炭素原子数2〜6のアルケニル基である化合物とSi−H基を有するケイ素化合物をヒドロシリル化させてシリコーン樹脂に溶解しやすくさせた化合物、特許2768426号、特開平3−261769号、特開平4−139211号、特開平4−139174号、特開平10−333330号等の各公報に記載されているもの等を用いることができる。また、これらの化合物は、シリコーン変性、エチレンオキシド変性、プロピレンオキシド変性等の各種変性処理が常法によりなされていてもよい。これらの中でも、トリアリルイソシアヌル酸、シリコーン変性イソシアヌル酸が好ましい。シアヌル酸構造を有する化合物を使用する場合、本発明のケイ素含有硬化性組成物中の該化合物の含有量は、0.0001〜10質量%が好ましく、0.01〜1.0質量%がさらに好ましい。
【0075】
本発明のケイ素含有硬化性組成物には、更に任意の成分として、フリーラジカルスカベンジャーを配合してもよい。この場合のフリーラジカルスカベンジャーは、酸化防止剤、安定剤等の抗酸化性物質であればよく、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、2,6−ジ−t−ブチル−パラクレゾール(DBPC)等が挙げられる。本発明のケイ素含有硬化性組成物中のフリーラジカルスカベンジャーの含有量は、耐熱性、電気特性、硬化性、力学特性、保存安定性及びハンドリングの点から、0.1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。
【0076】
本発明のケイ素含有硬化性組成物には、更に任意の成分として、カップリング剤を配合してもよい。カップリング剤を配合すると、接着性を向上させることができる。カップリング剤としては、上記無機充填剤の表面処理に用いることができるものとして挙げたものを用いることができる。エポキシ官能性アルコキシシラン、アミノ官能性アルコキシシラン、メルカプト官能性アルコキシシラン等のシランカップリング剤を用いることが好ましく、特に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノエチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましい。本発明のケイ素含有硬化性組成物中のカップリング剤の含有量は、0.1〜0.5質量%が好ましく、0.2〜0.3質量%がより好ましい。
【0077】
また、本発明のケイ素含有硬化性組成物には、前記した接着助剤、フリーラジカルスカベンジャー及びカップリング剤以外の任意成分として、本発明の目的とする性能を損なわない範囲で、その他の公知の各種樹脂、離型剤、添加剤等をも配合することができる。接着助剤、フリーラジカルスカベンジャー及びカップリング剤以外の任意成分の使用量は、特に限定されるものではないが、本発明の効果を損なわないようにするためには、本発明のケイ素含有硬化性組成物中5質量%以下の範囲とすることが好ましい。本発明においては、さらに、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分のいずれか一種以上に、各種の有機官能基を結合させ、更なる機能を付与することができる。また、本発明のケイ素含有硬化性組成物又はその硬化物をマトリックスとし、この中に他の有用な化合物を分散させた高機能複合材料を作製することもできる。
【0078】
任意に配合できる各種樹脂の例としては、ポリブタジエン樹脂及びこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレングリコール、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂等が挙げられる。任意に配合できる添加剤の例としては、光沢剤、ワックス、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、劣化防止剤、変性剤、脱泡剤、染料、マレイミド系化合物、シアネートエステル系化合物、シリコーンゲル、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0079】
離型剤としては、カルナバワックス、脂肪酸エステル、グリセリン酸エステル、ステアリン酸、モンタン酸、ベヘニン酸及びその金属塩、アルカリ金属化合物、有機チタン、有機ジルコニア、有機錫化合物、イミダゾール化合物、カルボキシル基含有ポリオレフィン、ポリエチレン−ポリオキシエチレン系樹脂、カルナバ等を用いることができる。
【0080】
本発明のケイ素含有硬化性組成物は、室温(25℃)で固体であるためハンドリング性に優れる。本発明のケイ素含有硬化性組成物は粉末、顆粒、タブレット状のいずれの形状でも良く、溶媒に溶解させて用いてもよい。本発明のケイ素含有硬化性組成物は、融点が50℃以上150℃以下であることが好ましく、さらに50℃以上120℃以下であることが好ましい。本発明のケイ素含有硬化性組成物は、好ましくは50℃〜150℃で溶融し、その後、熱により硬化する。
また、本発明のケイ素含有硬化性組成物からなる硬化物は、特に耐熱性、密着性に優れている。耐熱性については、詳しくは、硬化物の5質量%の重量減少を来たす温度が400℃以上、より好ましくは500℃以上の硬化物が好適に得られる。また、本発明のケイ素含有硬化性組成物からは、クラック発生の少ない硬化物が好適に得られる。
【0081】
本発明のケイ素含有硬化性組成物は、(D)成分の有機過酸化物の効果により、(A)〜(C)成分のいずれかに含まれるSi−CH
3基と炭素−炭素二重結合(例えばSi−CH=CH
2基)の縮重合反応による硬化反応が速やかに進行する。さらに、本発明のケイ素含有硬化性組成物は、均一で透明なため、紫外線等の光の透過性もよく、光反応性の触媒を添加することで、光硬化も可能である。もちろん光反応性のモノマーや樹脂を更に配合してもよく、ケイ素含有硬化性組成物中の各成分のいずれか一種以上が光反応性基を有していてもよい。更にまた、本発明のケイ素含有硬化性組成物からは、耐候性、硬度、耐汚染性、難燃性、耐湿性、ガスバリヤ性、可撓性、伸びや強度、電気絶縁性、低誘電率性等の力学特性、光学特性、電気特性等に優れた材料を得ることができる。
【0082】
次に本発明の硬化物について述べる。
本発明のケイ素含有硬化性組成物は、加熱することにより硬化させることができ、硬化物とすることができる。この硬化反応は、本発明のケイ素含有硬化性組成物の配合成分を使用直前に混合し加熱等により硬化する方法、あらかじめ全部を混合しておき硬化反応を行うときに加熱等により硬化する方法等、いずれの方法で行ってもよい。
硬化させる場合の加熱温度は、樹脂が溶融する温度以上、例えば35〜350℃が好ましく、50〜250℃がより好ましい。硬化時間は2〜60分が好ましく、2〜10分がより好ましい。さらに硬化後に、アニールしたり成形したりすることもできる。アニールは温度により処理時間が異なるが、150℃であれば5〜60分程度処理することが好ましい。これらの硬化反応条件下に硬化反応を行うことにより、本発明のケイ素含有硬化性組成物から、耐熱性、耐久性、密着性等に優れた性能を有する硬化物を得ることができる。成形方法としては、トランスファー成形、圧縮成形、注型成形等の公知の方法を用いることができ、トランスファー成形が好ましい。
【0083】
トランスファー成形は、トランスファー成形機を用い、成形圧力5〜20N/mm
2、成形温度120〜190℃で30〜500秒、特に150〜185℃で30〜180秒で行うことが好ましい。圧縮成形法は、コンプレッション成形機を用い、成形温度は120〜190℃で30〜600秒、特に130〜160℃で120〜300秒で行うことが好ましい。いずれの成形法においても、150〜185℃で2〜20時間の条件で硬化させることができる。
【0084】
本発明のケイ素含有硬化性組成物は、透明性に優れ、更にその硬化物が、耐熱性、耐光性、耐クラック性、着色性等の諸物性に優れた硬化性組成物として利用することができる。本発明のケイ素含有硬化性組成物及び硬化物は、電気・電子材料分野における表示材料・光材料・記録材料・プリント基板・半導体・太陽電池等の封止材料;高電圧絶縁材料、絶縁・防振・防水・防湿を目的とした各種材料として用いることができる。本発明のケイ素含有硬化性組成物を硬化させる際には、スピンキャスト、ポッティング、ディッピング、トランスファー成形等の成膜方法を適宜適用することもできる。また、用途としては、プラスチック部品の試作母型、コーティング材料、層間絶縁膜、プリプレグ、絶縁用パッキング、熱収縮ゴムチューブ、O−リング、表示デバイス用シール剤・保護材、光導波路、光ファイバー保護材、光学レンズ、光学機器用接着剤、高耐熱性接着剤、弾性接着剤、粘着剤、ダイボンディング剤、高放熱性材料、高耐熱シール材、太陽電池・燃料電池用部材、電池用固体電解質、絶縁被覆材、複写機用感光ドラム、ガス分離膜にも応用できる。また、白色樹脂をトランスファー成形する技術を応用して好適に用いることができる用途の代表的なものとして、LEDパッケージにおけるリードフレーム基板が挙げられる。更に、土木・建材分野におけるコンクリート保護材、ライニング、土壌注入剤、シーリング剤、蓄冷熱材、ガラスコーティング、発泡体、塗料等への応用が可能であり、さらに医療用材料分野においても、チューブ、シール材、コーティング材料、滅菌処理装置用シール材、コンタクトレンズ、酸素富化膜等に応用できる。その他フィルム、ガスケット、注型材料、各種成型材料、網入りガラスの防錆・防水用封止剤、自動車部品、各種機械部品等に応用することが可能である。
【0085】
次に、本発明のケイ素含有硬化性組成物を用いた本発明のLED発光素子用リードフレーム基板(以下,単にリードフレーム基板ともいう)について説明する。
本発明のLED発光素子用リードフレーム基板は、リードフレームと樹脂成形体とを供えるLED発光素子用リードフレーム基板において、上記樹脂成形体が本発明のケイ素含有硬化性組成物より形成されることを特徴とするものであり、上記樹脂成形体を本発明のケイ素含有硬化性組成物より形成すること以外は、従来のLED発光素子用リードフレーム基板に準じたものとすることができる。以下、
図1〜4を参照して、本発明のケイ素含有硬化性組成物を用いた本発明のLED発光素子用リードフレーム基板の好ましい実施形態について説明する。
【0086】
図1は、本発明のリードフレーム基板の実施形態の全体構成を示す図である。
図1(a1)に示すように、リードフレーム基板10は、後述するパッド部13及びリード部14が複数組形成されたリードフレーム50と、そのリードフレーム50に樹脂成形体11が備えられたものである。樹脂成形体11は、
図2(1)のような凹部を有する形状をなしてもよいし、
図2(2)のようなリードフレーム50に形成された隙間に樹脂材料が回り込み充填しただけの略面一形状でもよい。また、パッド部13およびリード部14の裏面側(第二の面)において、樹脂成形体11は、
図2(1)や
図2(2)のような外部接続面や放熱面と略面一でも良いし、
図2(3)や(4)のような外部接続面(リード部の裏面)や放熱面(パッド部の裏面)を露出させた段差がついた形状でもよい。
図4(1)のように、樹脂成型後にめっき処理を行っても良いし、
図4(2)のように樹脂成型前にめっき処理を行っても良い。
樹脂成形体11は、本発明のケイ素含有硬化性組成物により形成される。
【0087】
本発明のケイ素含有硬化性組成物をトランスファー成形してLED発光素子用リードフレーム基板とする場合には、曲げ強度が40MPa以上であり、線膨張率が20〜40ppm/℃であるものが好ましく用いられる。
【0088】
凹部12はリフレクターとも呼ばれ、凹部側面12aを利用して、LED発光素子の発光光を集光したい場合に
図2(1)の構造のリードフレーム基板が用いられる。また、LED発光素子の発光光を拡散させたい場合は、
図2(2)の構造のように略面一構造のリードフレーム基板が用いられる。このため、リードフレーム基板の構造は、LED発光素子装置の用途によって選ぶことができる。凹部側面12aの傾斜角度(テーパ角度)も用途によって自由に選ぶことができる。
【0089】
また、第二の面において、
図2(3)や(4)のように外部接続面(リード部の裏面)や放熱面(パッド部の裏面)より樹脂面を高くすることにより、プリント基板とのはんだ接続を行う際、樹脂部がダムとなりリード間の短絡を防止する効果がある。リード間の距離が近くなればなるほど効果が出てくるが、そのサイズによって、樹脂の段差を設ければよく、その高さも自由に選ぶことができる。
【0090】
いずれの形状においても、リードフレーム基板10は、
図4(1)に示すように各パッド部13にLED発光素子20が実装されることで、複数のLED発光素子装置Aを製造することができる。
【0091】
図2(1)、(2)、(3)、(4)は、リードフレーム基板10の部分拡大断面図である。
図1(a1)および
図2(1)に示すように、凹部12は、例えば平面視円形で、凹部12の側面12aは、樹脂成形体11において凹部12が開口している側の第1の面11b側から凹部12の底部12bに向けてその開口面積が漸次縮小するテーパー状をなしている。樹脂成型体11が凹部12の形状をなしていない場合は、
図1(a2)、
図2(2)に示すようにパッド部13およびリード部14の側面に樹脂材料が回りこむように充填されているだけで、樹脂成形体11の面はパッド部表面13a、リード部表面14aと略同一平面に位置している。
【0092】
リードフレーム基板10の表面には、樹脂成形体11の形状に関わらず、LED発光素子20が搭載されるパッド部13と、LED発光素子20とワイヤー21やハンダ等を介して電気的に接続されるパッド部13の表面13a、リード部14の表面14aが露出されている。これらパッド部13、リード部14を有するリードフレーム50は、例えば、鉄−ニッケル系または銅−ニッケル−錫、銅−錫、銅−クロム−錫、銅−鉄、銅−ニッケル−シリコン−マグネシウム等の銅合金等からなるプレート状の金属材料を所定形状にエッチングすることにより、パッド部13やリード部14となるアイランド部43を複数組多面付けして形成し、アイランド部43の表面に、銀メッキ、金メッキ、パラジウムメッキ等のメッキ処理銀めっき、金めっき、パラジウムめっき、ニッケル−銀めっき、ニッケル−金めっき等のめっき処理が施された構成とされている。めっき処理は第一の面のみでも構わない。また、各組のパッド部13とリード部14とは、間隔を隔てて形成されており、樹脂成形体11を形成する樹脂材料がその間に介在することで電気的絶縁が図られている。エッチングで作製する場合、パッド部14の裏面をハーフエッチングすることにより、樹脂成型体で被覆して金属面を露出しないようにすることもできる。
【0093】
このように、プレート状の金属材料を所定形状に加工する際、エッチング工法を用いることにより、様々な形状に加工できるが、所望の形状によっては、プレス加工を用いることも可能である。
【0094】
図1(b)に示すように、リードフレーム50の第2の面には、パッド部13、リード部14の裏面とともに、パッド部13、リード部14と同材料から形成されたタイバー16が露出する場合がある。タイバー16と、パッド部13、リード部14との間には、パッド部13、リード部14と同材料から形成された吊りリード17が形成され、これによってパッド部13、リード部14が金属材料に保持されているという形態でも良い。あるいは、
図1(c)に示すように、タイバーは、リード用アイランドに対応するLEDチップが搭載される共通アイランドと隣接した自己に対応しない他の共通のアイランドとを電気的に結ぶようにH字型のパターンを形成されているという形態でもよい。
【0095】
さらに、
図4(1)で示すように、パッド部表面13aにLED発光素子20が搭載され、リード部表面14aとLED発光素子20とが金属ワイヤーなどで電気的に接続され、電気的に接続されたLED発光素子20を封止する封止樹脂30が、リードフレーム基板10の表面に充填されている。この封止樹脂30は、LED発光素子20で発する光を透過するよう、透過性を有した樹脂材料で形成されている。なお、必要によっては、封止樹脂に蛍光体を含有させても構わない。
【0096】
図4(1)は個片化された状態を図示しているが、
図1(a1)、(b)に示すように、リードフレーム10に複数個、LED発光素子が搭載されている状態から、個片に断裁する際、タイバー16、ならびに、吊りリード17とパッド部13、ならびに、リード部14は電気的に接続が切られ、パッド部、ならびに、リード部は独立する。
【0097】
このようなLED発光素子装置Aにおいては、LED発光素子20にリード部14を介して通電すると、LED発光素子20が発光する。その光は、封止樹脂30を透過して外部に向けて照射される。また、
図1(a1)に示すような樹脂成型体11が凹部12を形成している場合は、LED発光素子20から発せられた光の一部は凹部12の側面12aで反射し、封止樹脂30を透過して外部に向けて照射される。
【0098】
上記したようなリードフレーム基板10は、以下のようにして形成される。
まず、
図3(a)に示すように、レジスト41aを塗布した合金薄板からなる基板材料41の表面にフォトリソグラフィ法により紫外線露光を行い、
図3(b)に示すように、所定領域にレジストパターン42を形成する。
次いで、
図3(c)に示すように、エッチング法により、基板材41においてレジストパターン42で覆われた以外の部分を除去することで、基板材料41にアイランド部43を形成する。ここで、エッチング法としてハーフエッチング法を用いることで、基板材41の表裏で、異なる形状のレジストパターン42を用いてアイランド部43の第1の面と第2の面との形状を異ならせることができる。そのため、アイランド部43の側面形状をテーパーのついた形状とすることも可能となる。その後、レジストパターン42を除去し、リードフレーム50が得られる。
【0099】
次いで、
図3(d)に示すように、上記の方法で形成されたリードフレーム50を図示しない金型に収容し、この金型内に成形機から樹脂を充填することでトランスファー成形を行い、樹脂成形体11を形成する。形成された樹脂成形体11は複数の凹部12を備えていても良いし、
図1(a2)のようにリードフレーム50に形成された隙間に樹脂材料が回りこむように充填されているだけの形状でもよい。いずれの形状においてもパッド部13およびリード部14は樹脂成形体11より露出しており、さらに、パッド部13およびリード部14の裏面側(第2の面)に出てくる樹脂成形体11の面は、アイランド部と略面一でもよいし、
図2(3)や(4)のように、段差がついていても良い。
【0100】
トランスファー成型において、リードフレーム50を収める所定の内部形状とした凹部をあらかじめ形成している図示していない金型の凹部内に、リードフレーム10を設置する。なお、金型は蓋となる上金型と、溶融した樹脂材料を注入する注入口と連通するリードフレーム50を設置可能な凹部を内部空間として形成した下金型との2枚構成とし、上金型に下金型で蓋をして型締めするものが一般的である。この時、下金型に段差をつけた加工が施してあるならば、樹脂成形体と、リードフレームにおいて段差がある形態にする事が可能となる。
【0101】
次いで、金型の注入口から金型の凹部内に加熱溶融した樹脂材料を注入して、金型内の凹部に設置されたリードフレーム50の開口部に樹脂材料が充填されて成形されたLED用リードフレームが得られる。成型後、冷却して上金型を外し、リードフレームを下金型から取り出す。これにより、LED発光素子搭載用アイランド、タイバー、吊りリードの一方の面が樹脂成形体11の表面に露呈し、開口部が樹脂で充填されたおおむね平坦に成型されたLED発光素子用リードフレーム基板が形成される。
【0102】
なお、金型内のリードフレームに材料を充填する際、タイバー、吊りリードの厚みを薄くしているので、充填樹脂の流れが妨げられることがなくなり、樹脂は全体に行き渡り、充填樹脂に気泡が出来ることを防止出来る。
【0103】
樹脂材料を溶融状態にてモールド加工する際、およびモールド加工後は、該充填樹脂がタイバーの段差状部、またはアイランドのテーパー状部によって保持され、かつ、その事によって樹脂材料とリードフレームとの接触面積が大きくなるため、密着性が向上し、樹脂材料からリードフレームの脱落、もしくは、充填材料の脱落を防止する事ができる。
【0104】
図3(e)に示すように、アイランド部43の露出部は、例えば銀によりめっきが施され、その表面に
図4(1)に示すようなめっき層44を形成する。なお、本めっき処理は
図4(2)に示すように、樹脂成型を行う前に行っても構わない。
【0105】
樹脂成型した後に、めっき処理を行う場合は、必要最小限の面積にめっきを施すことができ、コストを下げることが可能であるが、
図2(1)のように凹部を持つリードフレーム基板の場合、小型化が進むにつれて、めっき液が入りにくくなるという問題点がある。一方、樹脂成型する前にめっき処理を行う場合は、めっき膜厚の均一性が得られるが、成型した樹脂とめっき層とが接するため、樹脂の密着性が不足するという問題点もある。このため、LED発光素子用リードフレーム基板の用途によって、どちらかを選ぶ必要がある。
【0106】
トランスファーモールド成形された樹脂成形体11を所定の温度条件でベーク処理して樹脂を硬化させた後、アイランド部43上に残存した樹脂成形体11のバリ取りを行う。
【0107】
これにより、LED発光素子用リードフレーム基板10が完成する。
【0108】
しかる後は、
図4(1)に示したように、パッド部13上にLED発光素子20を搭載し、さらにワイヤーボンディング法によりワイヤー21を用いてLED発光素子20とリード部14とを電気的に接続する。
【0109】
この後、LED発光素子および金属ワイヤーを含めて透明樹脂をディスペンサなど用いて塗布し、硬化させ封止樹脂30を形成する。さらに、ダイヤモンドブレード等により多面付け状態から個片化する。
【0110】
あるいは、
図4(3)に示すように、リード部を直列に接続することにより、個片化せずに複数個(図では3個)のLED発光素子が搭載されたLED発光素子装置Aを製造することができる。また、これまで、上面に二つの電極があるLED発光素子の搭載方法を図示してきたが、上面、裏面にそれぞれの電極を有するLED発光素子でも、本リードフレーム基板は同様に搭載可能である。
【0111】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更も可能である。
【実施例】
【0112】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。尚、実施例中の「部」や「%」は質量基準によるものである。
【0113】
[合成例1](A)成分:ケイ素含有重合体A−1の合成
冷却管、撹拌装置を付けた2000ml四つ口フラスコにフェニルトリメトキシシラン1.0mol、ビニルトリメトキシシラン0.5mol、メチルトリメトキシシラン0.5mol、ジメチルジメトキシシラン0.25mol及びトルエン650gを入れ、撹拌しながら0.5%水酸化ナトリウム水溶液31.4gを30分かけて滴下し、60〜65℃で3時間脱水重合反応した。室温に冷却し、トルエンを600g、イオン交換水1500g添加して油層を抽出し、中性になるまで水洗した後、溶媒を除去して重量平均分子量15000のケイ素含有重合体A−1を232.6g得た(白色粉末)。
【0114】
[合成例2](A)成分:ケイ素含有重合体A−2の合成
冷却管、撹拌装置を付けた2000ml四つ口フラスコにフェニルトリメトキシシラン0.25mol、ビニルトリメトキシシラン1.0mol、メチルトリメトキシシラン0.9mol、ジメチルジメトキシシラン0.4mol及びトルエン650gを入れ、撹拌しながら0.5%水酸化ナトリウム水溶液31.4gを30分かけて滴下し、60〜65℃で3時間脱水重合反応した。室温に冷却し、トルエンを600g、イオン交換水1500g添加して油層を抽出し、中性になるまで水洗した後、溶媒を除去して重量平均分子量50000のケイ素含有重合体A−2を198.5g得た(白色粉末)。
【0115】
[合成例3](A)成分:ケイ素含有重合体A−3の合成
300mL4つ口ナスフラスコにフェニルトリエトキシシラン0.12mol、ビニルトリエトキシシラン0.03mol、メチルトリエトキシシラン0.09mol、ジメチルジメトキシシラン0.03mol、トルエン70gを入れ、撹拌しながら、0.2%シュウ酸水溶液8gを加え、室温で1時間撹拌した。0.2%水酸化ナトリウム水溶液10gを添加し、80℃で3時間撹拌・反応した。得られた反応液を中性になるまで水洗した後、溶媒を除去して重量平均分子量8000のケイ素含有重合体A−3を26g得た(白色粉末)。
【0116】
[合成例4](A)成分:ケイ素含有重合体A−4の合成
300mL4つ口ナスフラスコにフェニルトリエトキシシラン0.12mol、ビニルトリエトキシシラン0.12mol、ジメチルジメトキシシラン0.08mol、トルエン60mLを入れ、撹拌しながら、1%シュウ酸水溶液5gを加え、室温で1時間撹拌し、60℃で5時間撹拌・反応した。得られた反応液を中性になるまで水洗した後、溶媒を除去して、重量平均分子量9000のケイ素含有重合体A−4を25g得た(白色粉末)。
【0117】
[合成例5](A)成分:ケイ素含有重合体A−5の合成
冷却管、撹拌装置を付けた3000ml四つ口フラスコにフェニルトリメトキシシラン0.375mol、ビニルトリメトキシシラン1.125mol、メチルトリエトキシシラン1.125mol、ジメチルジメトキシシラン0.563mol及びメチルイソブチルケトン1530gを入れ、撹拌しながら、1%シュウ酸水溶液15gを加え、室温で1時間撹拌した。撹拌しながら1%水酸化ナトリウム水溶液20gを滴下し、70℃で5時間脱水重合反応した。得られた反応液を中性になるまで水洗した後、溶媒を除去して重量平均分子量20000のケイ素含有重合体A−5を253g得た(白色粉末)。
【0118】
[合成例6](A)成分:ケイ素含有重合体A−6の合成
冷却管、撹拌装置を付けた1000ml四つ口フラスコにフェニルトリメトキシシラン0.085mol、ビニルトリメトキシシラン0.139mol、メチルトリエトキシシラン0.24mol、ジメチルジメトキシシラン0.056mol、ジフェニルシランジオール0.05mol及びメチルエチルケトン280gを入れ、撹拌しながら、0.1%シュウ酸水溶液30gを加え、室温で1時間撹拌した。撹拌しながら0.1%水酸化ナトリウム水溶液40gを滴下し、環流条件下で10時間脱水重合反応した。得られた反応液を中性になるまで水洗した後、溶媒を除去して重量平均分子量20000のケイ素含有重合体A−6を52g得た(白色粉末)。
【0119】
[合成例7](A)成分:ケイ素含有重合体A−7の合成
冷却管、撹拌装置を付けた1000ml四つ口フラスコにフェニルトリメトキシシラン0.07mol、ビニルトリメトキシシラン0.125mol、メチルトリメトキシシラン0.24mol、ジフェニルシランジオール0.065mol及びメチルイソブチルケトン200gを入れ、撹拌しながら、0.05%塩酸水溶液20gを加え、室温で1時間撹拌した。撹拌しながら0.5%水酸化カリウム水溶液10gを滴下し、環流条件下で5時間脱水重合反応した。得られた反応液を中性になるまで水洗した後、溶媒を除去して重量平均分子量8000のケイ素含有重合体A−7を52g得た(白色粉末)。
【0120】
[合成例8](A)成分:ケイ素含有重合体A−8の合成
冷却管、撹拌装置を付けた1000ml四つ口フラスコにフェニルトリメトキシシラン0.05mol、ビニルトリメトキシシラン0.15mol、メチルトリエトキシシラン0.225mol、ジメチルジメトキシシラン0.025mol、ジフェニルシランジオール0.05mol及びキシレン200gを入れ、撹拌しながら、0.2%酢酸水溶液5gを加え、室温で1時間撹拌した。撹拌しながら0.2%水酸化ナトリウム水溶液20gを滴下し、環流条件下で10時間脱水重合反応した。得られた反応液を中性になるまで水洗した後、溶媒を除去して重量平均分子量30000のケイ素含有重合体A−8を52g得た(白色粉末)。
【0121】
[合成例9](A)成分:ケイ素含有重合体A−9の合成
冷却管、撹拌装置を付けた1000ml四つ口フラスコにフェニルトリメトキシシラン0.07mol、ビニルトリメトキシシラン0.125mol、メチルトリメトキシシラン0.24mol、ジフェニルシランジオール0.065mol及びメチルエチルケトン200gを入れ、撹拌しながら、0.05%塩酸水溶液20gを加え、室温で1時間撹拌した。撹拌しながら0.5%水酸化カリウム水溶液10gを滴下し、環流条件下で5時間脱水重合反応した。得られた反応液を中性になるまで水洗した後、溶媒を除去して重量平均分子量18000のケイ素含有重合体A−9を44g得た(白色粉末)。
【0122】
[合成例10](A)成分:ケイ素含有重合体A−10の合成
冷却管、撹拌装置を付けた1000ml四つ口フラスコにフェニルトリメトキシシラン0.05mol、ビニルトリメトキシシラン0.15mol、メチルトリエトキシシラン0.225mol、ジメチルジメトキシシラン0.025mol、ジフェニルシランジオール0.05mol及びトルエン200gを入れ、撹拌しながら、0.2%酢酸水溶液5gを加え、室温で1時間撹拌した。撹拌しながら0.2%水酸化ナトリウム水溶液20gを滴下し、環流条件下で10時間脱水重合反応した。得られた反応液を中性になるまで水洗した後、溶媒を除去して重量平均分子量15000のケイ素含有重合体A−10を40g得た(白色粉末)。
【0123】
[合成例11](A)成分:ケイ素含有重合体A−11の合成
冷却管、撹拌装置を付けた1000ml四つ口フラスコにフェニルトリメトキシシラン0.125mol、ビニルトリメトキシシラン0.075mol、メチルトリエトキシシラン0.225mol、ジメチルジメトキシシラン0.025mol、フェニルメチルジメトキシシラン0.05mol及びキシレン200gを入れ、撹拌しながら、0.2%酢酸水溶液5gを加え、室温で1時間撹拌した。撹拌しながら0.2%水酸化ナトリウム水溶液20gを滴下し、環流条件下で10時間脱水重合反応した。得られた反応液を中性になるまで水洗した後、溶媒を除去して重量平均分子量40000のケイ素含有重合体A−11を40g得た(白色粉末)。
【0124】
[合成例12](A)成分:ケイ素含有重合体A−12の合成
冷却管、撹拌装置を付けた3000ml四つ口フラスコにフェニルトリメトキシシラン0.48mol、ビニルトリメトキシシラン1.28mol、メチルトリエトキシシラン0.96mol、ジメチルジメトキシシラン0.48mol及びメチルイソブチルケトン1530gを入れ、撹拌しながら、1%シュウ酸水溶液15gを加え、室温で1時間撹拌した。撹拌しながら1%水酸化ナトリウム水溶液20gを滴下し、70℃で5時間脱水重合反応した。得られた反応液を中性になるまで水洗した後、溶媒を除去して重量平均分子量20000のケイ素含有重合体A−12を253g得た(白色粉末)。
【0125】
[合成例13](A)成分:ケイ素含有重合体A−13の合成
冷却管、撹拌装置を付けた2000ml四つ口フラスコにフェニルトリメトキシシラン0.31mol、ビニルトリメトキシシラン0.90mol、メチルトリメトキシシラン0.90mol、ジメチルジメトキシシラン0.44mol及びトルエン650gを入れ、撹拌しながら0.5%水酸化ナトリウム水溶液31.4gを30分かけて滴下し、60〜65℃で3時間脱水重合反応した。室温に冷却し、トルエンを600g、イオン交換水1500g添加して油層を抽出し、中性になるまで水洗した後、溶媒を除去して重量平均分子量20000のケイ素含有重合体A−13を79.4g得た(白色粉末)。
【0126】
[合成例14](A)成分:ケイ素含有重合体A−14の合成
300mL4つ口ナスフラスコにフェニルトリエトキシシラン0.042mol、ビニルトリエトキシシラン0.068mol、メチルトリエトキシシラン0.1mol、ジメチルジメトキシシラン0.063mol、トルエン70gを入れ、撹拌しながら、0.2%シュウ酸水溶液8gを加え、室温で1時間撹拌した。0.2%水酸化ナトリウム水溶液10gを添加し、80℃で3時間撹拌・反応した。得られた反応液を中性になるまで水洗した後、溶媒を除去して重量平均分子量20000のケイ素含有重合体A−14を65g得た(白色粉末)。
【0127】
[合成例15](B)成分:プレポリマーB−1の合成
1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン100部、ジビニルベンゼン100部、トルエン60部及び白金−カルボニルビニルメチル錯体(Ossko触媒)0.0005部を加えて撹拌しながら、5時間還流した。反応液から70℃で溶媒を減圧留去し、(B)成分であるプレポリマーB−1を得た。
GPCによる分析の結果、プレポリマーB−1の分子量はMw=140,000であり、ヒドロシリル基(Si−H基)の含有量は
1H−NMRから5.3mmol/gであった。
【0128】
[合成例16](B)成分:プレポリマーB−2の合成
1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン100部、ジビニルベンゼン50部、1−メトキシ−2−プロパノールアセテート70部及び白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt 触媒)0.0001部を加えて撹拌しながら、6時間還流した。反応液から50℃で溶媒を減圧留去し、(B)成分であるプレポリマーB−2を得た。
GPCによる分析の結果、プレポリマーB−2の分子量はMw=10,000であり、ヒドロシリル基(Si−H基)の含有量は
1H−NMRから6.1mmol/gであった。
【0129】
[合成例17](B)成分:プレポリマーB−3の合成
1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン100部、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン30部、キシレン200部及び白金−カルボニルビニルメチル錯体(Ossko 触媒)0.00001部を加えて撹拌しながら、6時間還流した。反応液から50℃で溶媒を減圧留去し、(B)成分であるプレポリマーB−3を得た。
GPCによる分析の結果、プレポリマーB−3の分子量はMw=8,000であり、ヒドロシリル基(Si−H基)の含有量は
1H−NMRから7.0mmol/gであった。
【0130】
[合成例18](B)成分:プレポリマーB−4の合成
1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン100部、ジビニルベンゼン50部、キシレン100部及び白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)0.00005部を加えて撹拌しながら、8時間還流した。反応液から50℃で溶媒を減圧留去し、(B)成分であるプレポリマーB−4を得た。
GPCによる分析の結果、プレポリマーB−4の分子量はMw=30,000であり、ヒドロシリル基(Si−H基)の含有量は
1H−NMRから6.0mmol/gであった。
【0131】
[合成例19](C)成分:環状シロキサン化合物C−1の合成
1,4−ジオキサン300部及び塩酸300部を加えて撹拌した混合液中に、メチルビニルジクロロシラン210部とフェニルメチルジクロロシラン90部の混合物を滴下した。加水分解反応により発生した塩酸を回収しつつ室温下で30分間反応させた後、70℃で3時間反応させた。反応後、2層に分離した液層の内、上層について真空ポンプによる減圧下120〜140℃の条件で蒸留精製し、上記の式(6)で示される、(C)成分である環状シロキサン化合物C−1を得た。
GC−MSによる分析の結果、環状シロキサン化合物C−1には分子量=395のものが面積比で85%以上含まれており、FT−IRによる分析の結果、環状シロキサン化合物C−1には3200〜3600cm
-1の吸収域に帰属する水酸基の吸収が見られなかった。また
1H−NMRによる分析の結果、ビニル基とフェニル基のモル比が3.3:1.0の割合で認められた。
【0132】
[合成例20](C)成分:環状シロキサン化合物C−2の合成
1,4−ジオキサン300部及び塩酸300部を加えて撹拌した混合液中に、メチルビニルジクロロシラン140部とフェニルメチルジクロロシラン180部の混合物を滴下した。加水分解反応により発生した塩酸を回収しつつ室温下で30分間反応させた後、70℃で3時間反応させた。反応後、2層に分離した液層の内、上層について真空ポンプによる減圧下135〜150℃の条件で蒸留精製し、上記の式(7)で示される、(C)成分である環状シロキサン化合物C−2を得た。
GC−MSによる分析の結果、環状シロキサン化合物C−2には分子量Mw=445のものが面積比で85%以上含まれており、FT−IRによる分析の結果、環状シロキサン化合物C−2には3200〜3600cm
-1の吸収域に帰属する水酸基の吸収が見られなかった。また
1H−NMRによる分析の結果、ビニル基とフェニル基のモル比が1.2:1.0の割合で認められた。
【0133】
[合成例21](C)成分:環状シロキサン化合物C−3の合成
合成例19で得られた環状シロキサン化合物C−1を50部と、合成例20で得られた環状シロキサン化合物C−2の50部を混合し、(C)成分である環状シロキサン化合物C−3を得た。
【0134】
[合成例22](C)成分:環状シロキサン化合物C−4の合成
1,4−ジオキサン300部及び塩酸300部を加えて撹拌した混合液中に、メチルビニルジクロロシラン280部を滴下した。加水分解反応により発生した塩酸を回収しつつ室温下で30分間反応させた後、70℃で3時間反応させた。反応後、2層に分離した液層の内、上層について真空ポンプによる減圧下120℃以下の条件で蒸留精製し、上記の式(5)で示される、(C)成分である環状シロキサン化合物C−4を得た。
GC−MSによる分析の結果、環状シロキサン化合物C−4の分子量はMw=345であり、FT−IRによる分析の結果、環状シロキサン化合物C−4には3200〜3600cm
-1の吸収域に帰属する水酸基の吸収が見られなかった。また、ビニル基の含有量は
1H−NMRから11.6mmol/gであった。
【0135】
[実施例1〜35及び比較例1〜3]ケイ素含有硬化性組成物の調製及び評価
以上の合成例で得られた各化合物を用い、[表1]〜[表5]に示す組成で(A)ケイ素含有重合体、(B)プレポリマー、(C)環状シロキサン化合物、(D)有機過酸化物及び/又は金属触媒、(E)フィラー等を配合してケイ素含有硬化性組成物を得た。得られたケイ素含有硬化性組成物について、耐熱性、耐光性、クラックの発生、機械的特性及び全反射率の試験を、それぞれ以下に示す方法で行った。尚、各試験において、試片としての硬化物の成形はトランスファー成形機を用いて行った。
【0136】
<試験方法>
1.耐熱性(耐熱低黄変性)
180℃、10MPa、成形時間60秒の条件で直径50mm×厚さ1mmの硬化物を成形し、成形直後のハンター白色度を測定した。該硬化物を180℃のオーブン中で60時間加熱した後のハンター白色度を測定し、下記式より求めた値を耐熱低黄変性とした。
(耐熱低黄変性)=〔(加熱後のハンター白色度)/(成形直後のハンター白色度)〕×100
2.耐光性
180℃、10MPa、成形時間60秒の条件で直径50mm×厚さ1mmの硬化物を成形し、成形直後の波長450nmにおける光反射率(全光反射率)、及び高圧水銀灯を用いてUV照射を100時間行った後の波長450nmにおける光反射率を、日本分光製紫外可視分光光度計V550を使用して測定し、下記式より耐光性を求めた。
(耐光性)=〔(UV照射後の光反射率)/(成形直後の光反射率)〕×100
3.クラックの発生
180℃、10MPa、成形時間60秒の条件で直径50mm×厚さ1mmの硬化物を成形し、該硬化物を180℃で24時間放置した後、表面を目視で観察した。
4.機械的特性
(曲げ強度)
180℃、10MPa、成形時間60秒の条件で、長さ80mm×幅10mm×厚さ
1mmの硬化物を成形し、JIS K7171に従い、曲げ強度を測定した。
(線膨張率)
180℃、10MPa、成形時間60秒の条件で、直径5mm×厚さ5mmの硬化物を成形し、熱機械分析(TMA)で40℃から300℃までの平均値を測定した。
5.全反射率
180℃、10MPa、成形時間60秒の条件で、直径20mm×厚さ1mmの硬化物を成形し、160℃にて2時間アフターベイクしてサンプル片とした。紫外可視分光光度計の積分球で、サンプル片の300nm〜800nmの全反射率を測定した。
【0137】
これらの試験結果を[表1]〜[表5]に示した。尚、下記の各表に記載のハンター白色度は、上記1.耐熱性の試験における硬化物の成形直後のハンター白色度の値である。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
【表3】
【0141】
【表4】
【0142】
【表5】
【0143】
[表1]〜[表5]の結果より、本発明のケイ素含有硬化性組成物の硬化物は耐熱性、耐光性、耐クラック性、機械的強度及び硬化性に優れることが明らかである。
【0144】
本発明のケイ素含有硬化性組成物をトランスファー成形してLED発光素子用リードフレーム基板とする場合には、上記実施例に記載したケイ素含有硬化性組成物のうち、曲げ強度が40MPa以上であり、線膨張率が20〜40ppm/℃であるものが好ましく用いられる。
【0145】
[実施例34]LED発光素子用リードフレーム基板の製造方法1
下記の方法により、本発明によるLED発光素子用リードフレーム基板1を製造した。
【0146】
まず、0.3mm厚の銅―ニッケル−錫合金製の板状金属材料を準備し、脱脂洗浄処理をした後、板状金属材料の表面にネガ型フォトレジストを8μm塗布し、90℃で30分乾燥してレジスト層を形成した(
図3(a))。
【0147】
次いで、LED発光素子を搭載するパッド部、LED発光素子と電気的に接続するリード部、パッド部とリード部を支持するタイバーと吊りリード、外枠部等の金属パターンを形成するために、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、超高圧水銀灯を用い、露光量約100mJ/cm2でフォトレジスト層を露光し、次いで、3%の炭酸ナトリウム水溶液にてフォトレジスト層に、現像処理を施した。これにより、前述のパターンに対応する部分にレジストパターンが形成され、それ以外の部分のレジストが除去された(
図3(b))。
【0148】
同様に、該板状金属材料の裏面にもフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成した。パターン露光、現像等といった前述の工程を繰り返した。この時、表裏のフォトマスクのパターン形状を変え、エッチング完了後に、パッド部、および、リード部の面積を、LED発光素子が搭載される面より、裏面の方を大きくなるように設定した。また、吊りリード部は表面のみハーフエッチングされるように設定した。
【0149】
次に、比重1.45の塩化第二鉄液を用いて、両面同時に板状金属材料の露出部をエッチング除去した。これにより、所望の両面形状の異なるリードフレームパターンが形成された(
図3(c))。
【0150】
得られたリードフレーム50に、実施例7にて示したケイ素含有硬化性組成物からなる、径18mm、長さ40mmの固形タブレットを用いて、図示しない充填用金型を使用して樹脂成形体11を設けた。この時、LED発光素子搭載面側には、深さ0.5mm、リードフレーム面となす角度が45度の傾斜を有する円形状の凹部が所定の数、形成された。一方裏面は、対応するパッド部表面とリード部表面と樹脂面とが同一面上に形成された。
リードフレーム基板を金型から取り出し、130℃、1時間、熱硬化した。
【0151】
パッド部ならびにリード部表面に、滲み出た樹脂バリを除去するため、リン酸水溶液にて30分電解研磨を行ったのち、アルゴンエッチングにて処理を行った(
図3(d))。
【0152】
その後、銀濃度50g/L、pH8.5、浴温度65℃、比重1.1、陰極電流密度10A/dm2、液流速1.0m/secの銀めっき液を用いて、表裏のパッド部、および、リード部表面に4μmの電解銀めっき44を施した。パッド部、ならびに、リード部表面には、めっき付着部は見られず、均一なめっき層が形成された。これにより、本発明のLED発光素子用リードフレーム基板1が完成した(
図3(e))。
【0153】
[実施例35]LED発光素子用リードフレーム基板の製造方法2
下記の方法により、本発明によるLED発光素子用リードフレーム基板2を製造した。
【0154】
まず、0.3mm厚の銅―ニッケル−錫合金製の板状金属材料を準備し、脱脂洗浄処理をした後、板状金属材料の表面にネガ型フォトレジストを8μm塗布し、90℃で30分乾燥してレジスト層を形成した。
【0155】
次いで、LED発光素子を搭載するパッド部、LED発光素子と電気的に接続するリード部、パッド部とリード部を支持するタイバーと吊りリード、外枠部等の金属パターンを形成するために、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、超高圧水銀灯を用い、露光量約100mJ/cm2でフォトレジスト層を露光し、次いで、3%の炭酸ナトリウム水溶液にてフォトレジスト層に、現像処理を施した。これにより、前述のパターンに対応する部分にレジストパターンが形成され、それ以外の部分のレジストが除去された。
【0156】
同様に、該板状金属材料の裏面にもフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成した。パターン露光、現像等といった前述の工程を繰り返した。この時、表裏のフォトマスクのパターン形状を変え、エッチング完了後に、パッド部、および、リード部の面積を、LED発光素子が搭載される面より、裏面の方を大きくなるように設定した。また、吊りリード部は表面のみハーフエッチングされるように設定した。
【0157】
次に、比重1.45の塩化第二鉄液を用いて、両面同時に板状金属材料の露出部をエッチング除去した。これにより、所望の両面形状の異なるリードフレームパターンが形成された。
【0158】
その後、スルファミン酸ニッケル300〜600g/L、塩化ニッケル5g/L、ホウ酸30〜40g/L、pH3.5〜4.5、温度40〜70℃、陰極電流密度3〜40A/dm2、アノードにS入りNiと微量の界面活性剤で調整されたスルファミン酸浴を用いて、リードフレーム全面に4μmの電解ニッケルめっきを施しさらに、銀濃度50g/L、pH8.5、浴温度65℃、比重1.1、陰極電流密度10A/dm2、液流速1.0m/secの銀めっき液を用いて、表裏のパッド部、および、リード部表面に4μmの電解銀めっきを用いて、同様にリードフレーム全面に4μmの電解銀めっきを施した。
【0159】
得られたリードフレーム50に、実施例14にて示したケイ素含有硬化性組成物からなる、径18mm、長さ40mmの固形タブレットを用いて、図示しない充填用金型を使用して樹脂成形体11を設けた。
この時、LED発光素子搭載面側には、深さ0.3mm、リードフレーム面となす角度が45度の傾斜を有する楕円形状の凹部が所定の数、形成された。一方裏面は、対応するパッド部表面とリード部表面と樹脂面とが同一面に形成された。
リードフレーム基板を金型から取り出し、130℃、1時間、熱硬化した。
【0160】
パッド部ならびにリード部表面に、滲み出た樹脂バリを除去するため、リン酸水溶液にて30分電解研磨を行ったのち、アルゴンエッチングにて処理を行った。
【0161】
これにより、本発明のLED発光素子用リードフレーム基板が完成した。
【0162】
[実施例36]LED発光素子用リードフレーム基板の製造方法3
下記の方法により、本発明によるLED発光素子用リードフレーム基板3を製造した。
【0163】
まず、0.5mm厚の銅―クロム−錫合金製の板状金属材料を準備し、脱脂洗浄処理をした後、板状金属材料の表面にネガ型フォトレジストを8μm塗布し、90℃で30分乾燥してレジスト層を形成した。
【0164】
次いで、LEDを搭載するパッド部、LED発光素子と電気的に接続するリード部、パッド部とリード部を支持するタイバーと吊りリード、外枠部等の金属パターンを形成するために、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、超高圧水銀灯を用い、露光量約100mJ/cm2でフォトレジスト層を露光し、次いで、3%の炭酸ナトリウム水溶液にてフォトレジスト層に、現像処理を施した。これにより、前述のパターンに対応する部分にレジストパターンが形成され、それ以外の部分のレジストが除去された。
【0165】
同様に、該板状金属材料の裏面にもフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成した。パターン露光、現像等といった前述の工程を繰り返した。この時、表裏のフォトマスクのパターン形状を変え、エッチング完了後に、パッド部、および、リード部の面積を、LED発光素子が搭載される面より、裏面の方を大きくなるように設定した。また、吊りリード部は表面のみハーフエッチングされるように設定した。
【0166】
次に、比重1.45の塩化第二鉄液を用いて、両面同時に板状金属材料の露出部をエッチング除去した。これにより、所望の両面形状の異なるリードフレームパターンが形成された。
【0167】
得られたリードフレーム50に、実施例22にて示したケイ素含有硬化性組成物からなる、径18mm、長さ40mmの固形タブレットを用いて、図示しない充填用金型を使用して樹脂成形体11を設けた。
この時、LED発光素子搭載面、及び裏面とも、パッド表面部とリード部表面と樹脂面とが同一面に形成された。溶融した樹脂成分は、タイバーや吊りリードのハーフエッチング部を通り、リードフレーム全面に行き渡り、成型性は問題なかった。
リードフレーム基板を金型から取り出し、130℃、1時間、熱硬化した。
【0168】
パッド部ならびにリード部表面に、滲み出た樹脂バリを除去するため、リン酸水溶液にて30分電解研磨を行ったのち、アルゴンエッチングにて処理を行った。
【0169】
その後、銀濃度50g/L、pH8.5、浴温度65℃、比重1.1、陰極電流密度10A/dm2、液流速1.0m/secの銀めっき液を用いて、表裏のパッド部、および、リード部表面に4μmの電解銀めっきを施した。パッド部、ならびに、リード部表面には、めっき付着部は見られず、均一なめっき層が形成された。これにより、本発明のLED発光素子用リードフレーム基板が完成した。
【0170】
[実施例37]LED発光素子用リードフレーム基板の製造方法4
下記の方法により、本発明によるLED発光素子用リードフレーム基板4を製造した。
【0171】
まず、0.3mm厚の銅―ニッケル−マグネシウム−シリコン合金製の板状金属材料を準備し、脱脂洗浄処理をした後、板状金属材料の表面にネガ型フォトレジストを8μm塗布し、90℃で30分乾燥してレジスト層を形成した。
【0172】
次いで、LED発光素子を搭載するパッド部、LED発光素子と電気的に接続するリード部、パッド部とリード部を支持するタイバーと吊りリード、外枠部等の金属パターンを形成するために、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、超高圧水銀灯を用い、露光量約100mJ/cm2でフォトレジスト層を露光し、次いで、3%の炭酸ナトリウム水溶液にてフォトレジスト層に、現像処理を施した。これにより、前述のパターンに対応する部分にレジストパターンが形成され、それ以外の部分のレジストが除去された。
【0173】
同様に、該板状金属材料の裏面にもフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成した。パターン露光、現像等といった前述の工程を繰り返した。この時、表裏のフォトマスクのパターン形状を変え、エッチング完了後に、パッド部、および、リード部の面積を、LED発光素子が搭載される面より、裏面の方を大きくなるように設定した。また、吊りリード部は表面のみハーフエッチングされるように設定した。
【0174】
次に、比重1.45の塩化第二鉄液を用いて、両面同時に板状金属材料の露出部をエッチング除去した。これにより、所望の両面形状の異なるリードフレームパターンが形成された。
【0175】
得られたリードフレーム50に、実施例27にて示したケイ素含有硬化性組成物からなる、径18mm、長さ40mmの固形タブレットを用いて、図示しない充填用金型を使用して樹脂成形体11を設けた。
この時、LED発光素子搭載面側には、深さ0.5mm、リードフレーム面となす角度が45度の傾斜を有する円形状の凹部が所定の数、形成された。一方裏面は、対応するパッド部とリード部表面を底面で露出する、深さ0.05μmの凹部が樹脂に形成された。
リードフレーム基板を金型から取り出し、130℃、1時間、熱硬化した。
【0176】
パッド部ならびにリード部表面に、滲み出た樹脂バリを除去するため、リン酸水溶液にて30分電解研磨を行ったのち、アルゴンエッチングにて処理を行った。
【0177】
その後、スルファミン酸ニッケル300〜600g/L、塩化ニッケル5g/L、ホウ酸30〜40g/L、pH3.5〜4.5、温度40〜70℃、陰極電流密度3〜40A/dm2、アノードにS入りNiと微量の界面活性剤で調整されたスルファミン酸浴を用いて、リードフレーム全面に4μmの電解ニッケルを用いて、表裏のパッド部、および、リード部表面に4μmの電解ニッケルめっきを施し、さらに、同様に表裏のパッド部、および、リード部表面に4μmの電解金めっきを施した。パッド部、ならびに、リード部表面には、めっき付着部は見られず、均一なめっき層が形成された。これにより、本発明のLED発光素子用リードフレーム基板が完成した。
【0178】
[実施例38]LED発光素子用リードフレーム基板の製造方法5
下記の方法により、本発明によるLED発光素子用リードフレーム基板5を製造した。
【0179】
まず、0.5mm厚の銅―クロム−錫合金製の板状金属材料を準備し、脱脂洗浄処理をした後、板状金属材料の表面にネガ型フォトレジストを8μm塗布し、90℃で30分乾燥してレジスト層を形成した。
【0180】
次いで、LED発光素子を搭載するパッド部、LED発光素子と電気的に接続するリード部、パッド部とリード部を支持するタイバーと吊りリード、外枠部等の金属パターンを形成するために、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、超高圧水銀灯を用い、露光量約100mJ/cm2でフォトレジスト層を露光し、次いで、3%の炭酸ナトリウム水溶液にてフォトレジスト層に、現像処理を施した。これにより、前述のパターンに対応する部分にレジストパターンが形成され、それ以外の部分のレジストが除去された。
【0181】
同様に、該板状金属材料の裏面にもフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成した。パターン露光、現像等といった前述の工程を繰り返した。
この時、表裏のフォトマスクのパターン形状を変え、3個の表裏電極タイプのLEDが直列でつながるようにパターンを設計した。LED発光素子が搭載するパッド部表面の一部が隣接するLED発光素子のリード部を兼ねるように第一の面のパターンを配置し、裏面は正負極の終端部のみ露出するように、それ以外のパッド部(兼リード部)はハーフエッチングされるように設定した。また、吊りリード部は表面のみハーフエッチングされるように設定した。
【0182】
次に、比重1.5の塩化第二鉄液を用いて、両面同時に板状金属材料の露出部をエッチング除去した。これにより、所望の両面形状の異なるリードフレームパターンが形成された。
【0183】
得られたリードフレーム50に、実施例30にて示したケイ素含有硬化性組成物からなる、径18mm、長さ40mmの固形タブレットを用いて、図示しない充填用金型を使用して樹脂成形体11を設けた。
この時、LED発光素子搭載面側は、パッド部やリード部表面と同一平面になるように樹脂が成型された。一方裏面は、正負それぞれの終端となるパッド部とリード部のみに、その表面を底面で露出する、深さ0.05μmの凹部が樹脂に形成された。
リードフレーム基板を金型から取り出し、130℃、1時間、熱硬化した。
【0184】
パッド部ならびにリード部表面に、滲み出た樹脂バリを除去するため、リン酸水溶液にて30分電解研磨を行ったのち、アルゴンエッチングにて処理を行った。
【0185】
その後、スルファミン酸ニッケル300〜600g/L、塩化ニッケル5g/L、ホウ酸30〜40g/L、pH3.5〜4.5、温度40〜70℃、陰極電流密度3〜40A/dm2、アノードにS入りNiと微量の界面活性剤で調整されたスルファミン酸浴を用いて、リードフレーム全面に4μmの電解ニッケルを用いて、表裏のパッド部、および、リード部表面に4μmの電解ニッケルめっきを施し、さらに、同様に表裏のパッド部、および、リード部表面に4μmの電解金めっきを施した。パッド部、ならびに、リード部表面には、めっき付着部は見られず、均一なめっき層が形成された。これにより、本発明のLED発光素子用リードフレーム基板が完成した。
【0186】
[実施例39]LED発光素子装置の製造
下記の方法により、本発明によるLED発光素子用リードフレーム基板を用いたLED発光素子装置を製造した。
上記実施例34〜38で得られたLED発光素子用リードフレーム基板のパッド部13に導電性ペーストを塗布して、LED発光素子20をマウンターで搭載し、180℃30分熱硬化させた。その後、25μm径の金ワイヤー21でリード部14と接合した。
【0187】
次に、蛍光体が混練された封止用の透明樹脂を、ディスペンサを用いてLED発光素子20及びワイヤー21を封止するよう塗布し、クリーンオーブン中で硬化させることにより封止樹脂30を形成し、LED発光素子装置が完成した。