【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例を示して本実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
(PET解重合体の合成)
先ず、以下のようにしてPET解重合体を合成した。
【0047】
[PET解重合体合成例1(PET:TMP=1:1)]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500mlの四口丸底セパラブルラスコにIV値0.6 〜 0.7のリサイクルPETフレーク192部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、300℃に昇温させた塩浴に浸した。PETが溶解したところで、攪拌を開始するとともに、酸化ジブチルスズ0.65部を添加した。
【0048】
次いで、予め130℃で加温し溶解させたトリメチロールプロパン134部をPETが固化しないよう注意しながら少量ずつ添加した。この間、粘度が低下した段階で攪拌速度を150rpmに高めた。次に、塩浴から予め240℃へ昇温した油浴に交換し、フラスコ内温を220℃(±10℃)に保ち5時間反応させた後、室温まで冷却した。これを解重合体Aと称す。
【0049】
[PET解重合体合成例2(PET:TMP=3:1)]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500mlの四口丸底セパラブルラスコにIV値0.6 〜 0.7のリサイクルPETフレーク192部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、300℃に昇温させた塩浴に浸した。PETが溶解したところで、攪拌を開始するとともに、酸化ジブチルスズ0.65部を添加した。
【0050】
次いで、予め130℃で加温し溶解させたトリメチロールプロパン45部をPETが固化しないよう注意しながら少量ずつ添加した。この間、粘度が低下した段階で攪拌速度を150rpmに高めた。次に、塩浴から予め240℃へ昇温した油浴に交換し、フラスコ内温を220℃(±10℃)に保ち5時間反応させた後、室温まで冷却した。これを解重合体Bと称す。
【0051】
このようにして得られたPET解重合体を、以下のようにして、フェノール基を有するモノカルボン酸と反応させた。
【0052】
[PET−フェノール合成例1(PET−TMP−メタヒドロキシ安息香酸1:1:3)]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500mlの四口丸底セパラブルラスコに解重合体Aを200部、3−ヒドロキシ安息香酸を250部、ジブチル錫オキサイド0.5部、を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした。湯浴を200℃まで徐々に加熱しながら約4〜6時間かけて縮合水を除き、十分に酸価が低下した時点で油浴を下げ、フラスコ内容物を取り出し、PET含有率26%のフェノール樹脂を得た。これをフェノール樹脂Aと称す。
【0053】
[PET−フェノール合成例2(PET−TMP−パラヒドロキシ安息香酸1:1:3)]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500mlの四口丸底セパラブルラスコに解重合体Aを200部、パラヒドロキシ安息香酸を250部、ジブチル錫オキサイド0.5部、を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした。湯浴を200℃まで徐々に加熱しながら約4〜6時間かけて縮合水を除き、十分に酸価が低下した時点で油浴を下げ、フラスコ内容物を取り出し、PET含有率26%のフェノール樹脂を得た。これをフェノール樹脂Bと称す。
【0054】
[PET−フェノール合成例3(PET−TMP−メタヒドロキし安息香酸3:1:3)]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた1000mlの四口丸底セパラブルラスコに解重合体Bを433部、3−ヒドロキシ安息香酸を250部、ジブチル錫オキサイド0.5部、を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした。
【0055】
湯浴を200℃まで徐々に加熱しながら約4〜6時間かけて縮合水を除き、十分に酸価が低下した時点で油浴を下げ、フラスコ内容物を取り出し、PET含有率51%のフェノール樹脂を得た。これをフェノール樹脂Cと称す。
【0056】
[PET−フェノール合成例4(PET−TMP−メタヒドロキし安息香酸3:1:3)]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた1000mlの四口丸底セパラブルラスコに解重合体Bを433部、パラヒドロキシ安息香酸を250部、ジブチル錫オキサイド0.5部、を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした。
【0057】
湯浴を200℃まで徐々に加熱しながら約4〜6時間かけて縮合水を除き、十分に酸価が低下した時点で油浴を下げ、フラスコ内容物を取り出し、PET含有率51%のフェノール樹脂を得た。これをフェノール樹脂Dと称す。
【0058】
また、得られたPET解重合体を、以下のようにして、多塩基酸無水物と反応させた。
[PET−カルボン酸合成例1]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500mlの四口丸底セパラブルラスコに解重合体Aを100部仕込みフラスコ内を窒素雰囲気とした後、145℃±5℃に昇温させた油浴に浸した。攪拌を開始し約30分後、テトラヒドロ無水フタル酸42.8部を加え、攪拌を続けた。こうして酸価98mg・KOH/gのカルボン酸樹脂を得た。これをカルボン酸樹脂Aと称す
【0059】
このようにして得られたPET解重合体、フェノール樹脂、カルボン酸樹脂を、以下のようにしてエポキシ化してエポキシ樹脂を合成した。
【0060】
[エポキシ樹脂合成例1(OHにダイレクトECH)]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500mlの四口丸底セパラブルラスコに解重合体Aを130部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、60度に昇温させた油浴に浸した。三フッ化ホウ素エーテル溶液1.2部を3回に分けて添加し、エピクロルヒドリン74部を2時間かけて滴下した。このときの内容物温度を60〜70℃になるように水浴で調節した。
【0061】
発熱が収まった後、触媒を中和するために16wt%の水酸化カリウム水溶液10.8部を入れ攪拌した。エピクロルヒドリンを全量滴下したところで、水酸化ナトリウム35.2部を4回に分けていれ、攪拌を続けた。このとき、内容物の温度が70〜90℃になるように水浴で調節した。
【0062】
発熱が収まった後、500mlのなすフラスコに移し変え、エバポレーターを用いて水と余分なエピクロルヒドリンを除いた。得られた白色粘液とクロロホルムを混ぜ分液ロートに移した。水を入れて洗浄し、水相を捨て、食塩を除いた。同様の水洗を2回行いその後、エバポレーターで90℃まで除々に加熱し溶媒を除き高粘度のエポキシ樹脂を得た。これをエポキシ樹脂Aと称す。
図1に、エポキシ樹脂Aの赤外吸収スペクトルを示す。
【0063】
[エポキシ樹脂合成例2(フェノール−ECH)]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた1000mlの四口丸底セパラブルラスコにフェノール樹脂Aを128部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、エピクロルヒドリン578部とトリエチルベンジルアンモニウムクロライド0.6部を加えて溶解させた。その後110℃の油浴に浸し2時間反応させた。
【0064】
次いで、内温を60℃に冷却し、45wt%の水酸化ナトリウム水溶液52.5部を2時間かけて滴下したこのとき、エステル結合の加水分解を防止するため、内容物温度を60〜70℃になるように調節した。発熱が収まった後、メチルイソブチルケトンで希釈し、分液ロートに移して水で洗浄し、塩を除去した。1000mlのナスフラスコに移し替え、エバポレーターを用いて50℃から120℃まで除々に加熱し、余分なエピクロルヒドリンと溶媒を除き、エポキシ化樹脂を得た。これをエポキシ樹脂Bと称す。
図2に、エポキシ樹脂Aの赤外吸収スペクトルを示す。
【0065】
[エポキシ樹脂合成例3(フェノール−ECH)]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた1000mlの四口丸底セパラブルラスコにフェノール樹脂Bを87部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、エピクロルヒドリン352部とトリエチルベンジルアンモニウムクロライド0.45部を加えて溶解させた。その後110℃の油浴に浸し2時間反応させた。
【0066】
次いで、内温を60℃に冷却し、45wt%の水酸化ナトリウム水溶液35.5部を2時間かけて滴下したこのとき、エステル結合の加水分解を防止するため、内容物温度を60〜70℃になるように調節した。発熱が収まった後、メチルイソブチルケトンで希釈し、分液ロートに移して水で洗浄し、塩を除去した。1000mlのナスフラスコに移し替え、エバポレーターを用いて50℃から120℃まで除々に加熱し、余分なエピクロルヒドリンと溶媒を除き、エポキシ化樹脂を得た。これをエポキシ樹脂Cと称す。
図3に、エポキシ樹脂Aの赤外吸収スペクトルを示す。
【0067】
[エポキシ樹脂合成例4(フェノール−ECH)]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500mlの四口丸底セパラブルラスコにフェノール樹脂Cを87部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、エピクロルヒドリン117部とトリエチルベンジルアンモニウムクロライド0.45部を加えて溶解させた。その後110℃の油浴に浸し2時間反応させた。
【0068】
次いで、内温を60℃に冷却し、45wt%の水酸化ナトリウム水溶液35.5部を2時間かけて滴下したこのとき、エステル結合の加水分解を防止するため、内容物温度を60〜70℃になるように調節した。発熱が収まった後、メチルイソブチルケトンで希釈し、分液ロートに移して水で洗浄し、塩を除去した。1000mlのナスフラスコに移し替え、エバポレーターを用いて50℃から120℃まで除々に加熱し、余分なエピクロルヒドリンと溶媒を除き、エポキシ化樹脂を得た。これをエポキシ樹脂Dと称す。
【0069】
[エポキシ樹脂合成例5(フェノール−ECH)]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500mlの四口丸底セパラブルラスコにフェノール樹脂Dを87部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、エピクロルヒドリン117部とトリエチルベンジルアンモニウムクロライド0.45部を加えて溶解させた。その後110℃の油浴に浸し2時間反応させた。
【0070】
次いで、内温を60℃に冷却し、45wt%の水酸化ナトリウム水溶液35.5部を2時間かけて滴下したこのとき、エステル結合の加水分解を防止するため、内容物温度を60〜70℃になるように調節した。発熱が収まった後、メチルイソブチルケトンで希釈し、分液ロートに移して水で洗浄し、塩を除去した。1000mlのナスフラスコに移し替え、エバポレーターを用いて50℃から120℃まで除々に加熱し、余分なエピクロルヒドリンと溶媒を除き、エポキシ化樹脂を得た。これをエポキシ樹脂Eと称す。
【0071】
[エポキシ樹脂合成例6(THPA+ECH)]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500mlの四口丸底セパラブルラスコにカルボン酸樹脂A70部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、エピクロルヒドリン90部とトリエチルベンジルアンモニウムクロライド0.45部を加えて溶解させた。その後110℃の油浴に浸し2時間反応させた。
【0072】
次いで、内温を60℃に冷却し、45wt%の水酸化ナトリウム水溶液35.5部を2時間かけて滴下したこのとき、エステル結合の加水分解を防止するため、内容物温度を60〜70℃になるように調節した。発熱が収まった後、メチルイソブチルケトンで希釈し、分液ロートに移して水で洗浄し、塩を除去した。1000mlのナスフラスコに移し替え、エバポレーターを用いて50℃から120℃まで除々に加熱し、余分なエピクロルヒドリンと溶媒を除き、エポキシ化樹脂を得た。これをエポキシ樹脂Fと称す。
【0073】
得られたエポキシ樹脂について、以下のような評価を行った。
[組成物評価]
〈再生ポリエステル含有率〉
得られたエポキシ樹脂A〜Fの再生樹脂成分の含有率を算出した。
結果を表1に示す。
【0074】
〈エポキシ当量〉
100mlの三角フラスコに、測定するエポキシ樹脂をそれぞれ約0.1gとクロロホルム10ml、酢酸20mlを投入し、溶解させた後、0.25g/mlの臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液10mlを加えた。さらに、クリスタルバイオレット指示薬を5滴加えて、0.1mol/lの過塩素酸酢酸溶液で滴定を行った。なお、緑色が付き始めたときを終点とした。
結果を表1に併せて示す。
【0075】
〈分子量〉
エポキシ樹脂A〜Fの分子量を、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定した。測定には、カラムにShodex GPC KF−806L×3(昭和電工社製)を使用し、カラム温度を40℃とした。基準物質には標準ポリスチレンを用い、溶離液はテトラヒドロフランを1ml/分の流速で使用した。
結果を表1に併せて示す。
【0076】
〈溶剤溶解性試験〉
エポキシ樹脂A〜Fの溶剤溶解性を、以下のようにして確認した。
【0077】
エポキシ樹脂A〜Gにおいて、解重合体50部に対して、各種溶剤を50部加え、攪拌し、解重合物の50wt%溶液を作成しその溶液の透明度を評価した。評価基準は以下の通りである。
完全に透明である:○
やや濁りがある :△
濁りがある :×
結果を表1に併せて示す。
【表1】
【0078】
また、得られたエポキシ樹脂を、表2に示す割合で、溶剤や硬化剤と混合し、得られた配合例1〜6の組成物について、コーティング剤としての性能を評価した。
【表2】
*1 キュアゾール2E4MZ(四国化成社製)
【0079】
〈ゲル化試験〉
配合例1〜6の組成物の硬化性を確認するために、以下のようにしてゲル化試験を行った。
ゲル化試験機として、ゲル化試験機1563(井元製作所社製)を用い、170℃でゲル化するまでの時間を測定した。
測定結果を表3に示す。
【0080】
[硬化物評価]
配合例1〜6の組成物を、ガラス板にアプリケーターにて膜厚30umで塗布した。これを熱風循環式乾燥炉にて70℃×20分で乾燥後、120℃×30分で硬化させた。得られた硬化物について、以下の試験を行った。
【0081】
〈ラビング試験〉
以下のようにしてラビング試験を行い、硬化物の硬化性を評価した。
得られた硬化物を、アセトンを含ませたウエスにて50回こすり、表面状態を目視にて観察した。評価基準は以下の通りである。
表面の溶解がないもの(硬化が十分):○
表面に僅かな溶解が見られたもの(硬化が不十分):×
評価結果を表3に併せて示す。
【0082】
〈鉛筆硬度試験〉
硬化塗膜に鉛筆の芯の先が平らになるように研がれたBから9Hの鉛筆を、塗膜に対して45℃の角度で、1kgの荷重をかけて押し付けた。この荷重をかけた状態で、約1cm程度塗膜を引っかき、塗膜の剥がれない鉛筆の硬さを記録した。
評価結果を表3に併せて示す。
【表3】
【0083】
以上詳述した通り、本実施形態のエポキシ樹脂は、一切の溶剤を使用することなく合成することが可能である。さらに、再生樹脂を高効率で使用することができるため、環境へ与える負荷を軽減することが可能である。
また、本実施形態のエポキシ樹脂は、良好な硬化性を有し、その硬化物においても、良好な耐薬品性、硬度を有していることがわかる。