(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明に係る内面溝付管製造装置の実施形態を説明する。
(実施形態1)
実施形態1では、溝加工部10が主溝加工部40のみにより構成される場合の内面溝付管製造装置1について
図1から
図7と共に説明する。
図1は実施形態1の内面溝付管製造装置1の縦断面による説明図である。
また、
図2は主溝形成プラグ44の説明図である。詳しくは、
図2(a)は
図1における主溝形成プラグ44の拡大片断面図であり、
図2(b)は
図2(a)におけるC−C端面図および主溝形成溝44aの拡大図である。
【0030】
また、
図3は主溝72が形成された内面溝付管70aの断面図であり、
図4は主溝72が形成された内面溝付管70aの管内面74の斜視図である。
また、
図5は縮径プラグ32の断面図であり、
図6は芯金50の横断面図である。詳しくは、
図6(a)は
図1におけるA−A端面図であり、
図6(b)は
図1におけるB−B端面図である。なお、
図6において金属管70の断面の図示を省略してある。
【0031】
さらに、
図7は貫通孔50aの作用の説明図である。詳しくは、
図7(a)は導入口50b付近において、潤滑油60が導入口50bに導入される状況を
図6(b)におけるE−E端面により示した説明図であり、
図7(b)は吐出口50c付近において、潤滑油60が吐出する状況を
図6(b)におけるE−E端面により示した説明図である。
【0032】
実施形態1における内面溝付管製造装置1は、
図1に示すように、引き抜き方向Xの下流側に配置された引抜部20により金属管70を引き抜いて内面溝付管70aを製造する装置である。
【0033】
内面溝付管製造装置1は、引き抜き方向Xに沿って、その上流側から下流側へ、金属管70を縮径させる縮径部30と、金属管70の管内面74に多数の主溝72を形成する主溝加工部40と、金属管70を引き抜く引抜部20とをこの順に備えている。
【0034】
なお、内面が平滑な金属管70は銅管であり、該金属管70の管内面74に螺旋状の主溝72を形成し、主溝72同士の間にフィン73を形成したものを内面溝付管70aとする。また、金属管70および内面溝付管70aの管内部の空間を内部空間90とする。
【0035】
引抜部20は、
図1に示すように、内面溝付管70aを巻き取る巻取りドラム21と該巻取りドラム21を駆動するモータMとを備え、該モータMの回転駆動により内面溝付管70aを適度な引き抜き力で巻取りドラム21に巻きつける構成である。
【0036】
縮径部30は、縮径ダイス31と縮径プラグ32とで構成している。
縮径ダイス31は、引き抜き方向Xへ連通した連通孔31aを備えた筒状に形成され、金属管70を外部から取り囲むように配置している。連通孔31aは、引き抜き方向Xの下流側から上流側へかけて末広がりの開口形状である。
【0037】
縮径プラグ32は、挿通孔を有する円柱状に形成し、引き抜き方向Xの下流側の外周をテーパ状に形成している。縮径プラグ32は、金属管70の内部であって、縮径ダイス31に対応する位置に配置している。
【0038】
上述したように縮径部30を縮径ダイス31と縮径プラグ32とで構成したことにより、縮径部30は金属管70を縮径することができる。
詳述すると、引抜部20により金属管70を引き抜く際に、縮径ダイス31が、金属管70を外部から押圧し、同時に、縮径プラグ32が、縮径ダイス31の引き抜き方向Xの上流側から金属管70を挟んで縮径ダイス31に係止することで、縮径部30は金属管70を縮径することができる。
【0039】
なお、加工時には、縮径プラグ32の外周面32bと金属管70の管内面74との間にはほとんど隙間はなく、金属管70の管内空間90は、縮径プラグ32により隔てられることとなる。
【0040】
続いて、主溝加工部40について説明する。主溝加工部40は、転造ヘッド41と複数の転造ボール43と主溝形成プラグ44とで構成している。
転造ヘッド41は、転造ヘッド上流部41aおよび転造ヘッド下流部41bにより構成している。転造ヘッド上流部41aは、引き抜き方向Xに連通する転造ヘッド連通孔41cを有する筒状に形成し、連通孔41cは、引き抜き方向Xに対して下流側へ向けて末広がりの開口形状である。転造ヘッド下流部41bは、片断面がL字形状の略円筒形に形成している。
【0041】
転造ボール43は、全て同じ径の金属球あるいはセラミック球であり、金属管70の外面に接して複数備えている。複数の転造ボール43は、転造ヘッド上流部41aと転造ヘッド下流部41bの間に挟まれ、引き抜き方向Xの位置が拘束されるよう配置している。一方、複数の転造ボール43は、自転自在かつ管軸周りには公転自在に配置している。
【0042】
主溝形成プラグ44は、
図2に示すように、後述する芯金50の挿通を許容する挿通孔を有する円筒形に形成され、その外周に螺旋状の多数の主溝形成溝44аを備えている。主溝形成プラグ44は、管内空間90における、転造ヘッド41および転造ボール43に対応する位置に配置している。
【0043】
上述したように主溝加工手段40を転造ヘッド41、転造ボール43および主溝形成プラグ44とで構成したことにより、主溝加工手段40は金属管70の管内面74に主溝72を形成することができる。
【0044】
詳述すると、複数の転造ボール43は、引抜部20によって金属管70が引き抜かれる際に、金属管70の外側から金属管70を押圧して、管軸周りに公転する。複数の転造ボール43は、金属管70の外部から押圧してわずかに金属管70を縮径することで、金属管70の管内面74を主溝形成プラグ44側へ押圧し、
図3および
図4に示す螺旋状の主溝72を形成することができる。このとき、
図3および
図4に示す主溝72間にはフィン73を形成することができる。また、加工時に、縮径プラグ32より引き抜き方向Xの下流側であって主溝形成プラグ44より上流側の金属管70の管内空間90は閉空間となる。
なお、縮径プラグ32より引き抜き方向Xの上流側の管内空間90を第1管内空間91、縮径プラグ32より引き抜き方向Xの下流側であって主溝形成プラグ44より上流側の管内空間90を第2管内空間92とする。
【0045】
次に、縮径プラグ32と主溝形成プラグ44とを連結する芯金50について説明する。
芯金50は、細長い円柱形状であり、縮径プラグ32と主溝形成プラグ44とをこれらの中心軸を貫いて連結している。
【0046】
詳しくは、芯金50は、
図5に示すように、縮径プラグ32の中心軸を貫いて、縮径プラグ32より引き抜き方向Xの上流側に突出し、主溝形成プラグ44の中心軸を貫いて、主溝形成プラグ44より引き抜き方向Xの下流側にも突出している(
図1参照)。なお、縮径プラグ32および主溝形成プラグ44は、芯金50に対して、芯金50の軸方向の周りに回転自在かつ引き抜き方向Xの位置を固定されている。
【0047】
また、細長い円柱形状である芯金50は、その中心に貫通孔50aを設けている。貫通孔50aには、縮径プラグ32より引き抜き方向Xの上流側の金属管70の内部に潤滑油60を導入する導入口50bを設け、第2管内空間92に潤滑油60を吐出する吐出口50cを設けている。
【0048】
貫通孔50aは、
図6(a)に示すように、芯金50の円形断面の中心を通り、
図6(b)に示すように、貫通孔50aの下流側端部50eでT字状に左右に分岐している。
【0049】
上述したように芯金50に貫通孔50aを設けたことにより、貫通孔50aは以下のように作用する。
加工開始時に、金属管70が縮径部30を通過する前に、予め潤滑油60を、金属管70の引き抜き方向Xの下流側の先端(以下、「管先端」という。)から管内部すなわち管内空間90に注入しておく。これにより、該管先端が縮径部30を通過した後は、
図1に示すように、潤滑油60が上述した第1管内空間91に満たされていることになる。
【0050】
金属管70は引抜部20により引き抜かれているので、
図5に示すように、潤滑油60は、金属管70に引きずられて縮径部30において縮径プラグ32の外周面32bと金属管70の管内面74との間に供給される。
【0051】
しかし、
図5に示すように、縮径プラグ32の外周面32bと金属管70の管内面74との間には、ほとんど潤滑油60が通過する隙間はなく、縮径プラグ32を通過した直後の管内面74には、潤滑油60がほとんど行き渡らない。しかも、金属管70が縮径する際に発生する熱により、潤滑油60が気化し、管内面74には潤滑油60がほとんど残らない状態となる。
【0052】
これに対し、内面溝付管製造装置1は、芯金50に貫通孔50aを設けたことにより、潤滑油60を、金属管70が引き抜かれる際に、管内面74と潤滑油60との間の摩擦力および第1管内空間91と第2管内空間92との圧力差により、
図7(a)に示すように導入口50bから導入し、貫通孔50aを通過させ、
図7(b)に示すように下流側端部50eに到達させ、吐出口50cから吐出させる。
【0053】
吐出口50cより吐出された潤滑油60は、縮径プラグ32より引き抜き方向Xの下流側であって、主溝形成プラグ44より引き抜き方向Xの上流側の管内面74に付着する。その後、付着した潤滑油60は、金属管70の引き抜き方向Xへの引き抜きに伴って下流側に移動し、主溝形成プラグ44の外周面44bと金属管70の管内面74との間に行き渡ることとなる。
【0054】
上述した実施形態1の内面溝付管製造装置1の構成および作用により、以下のような効果を得ることができる。
上記のように主溝形成プラグ44の外周面44bと金属管70の管内面74との間に潤滑油60を十分に行き渡らせることができるので、潤滑油60の不足による主溝形成プラグ44の外周面44bと金属管70の管内面74との間の摩擦を低減できる。その結果、金属管70の断管を防止でき、従って、内面溝付管70aの生産性を向上させることができる。
【0055】
また、摩擦の低減により、主溝形成プラグ44の主溝形成溝44aの磨耗量を減らすことができるので、主溝形成プラグ44の耐久性を向上できる。その結果、加工の始端と終端でのフィン高さhの差を従来に比べて小さい、精度の良い内面溝付管70aを形成することができる。
【0056】
また、摩擦の低減により、主溝形成プラグ44の交換頻度を減らすことができ、生産コストを低減することができる。主溝形成プラグ44は高価な部品であるので、交換頻度が減ることは生産コストの低減に特に有効である。
【0057】
さらに、潤滑油60が行き渡ることにより、主溝形成プラグ44の外周面44bと金属管70の管内面74との間に生じる摩擦力が小さくなるので、引抜部20が金属管70を引き抜く力を低減することができ、内面溝付管製造装置1の加工負荷を低減できる。
(実施形態2)
実施形態2では、溝加工部11が主溝加工部40および副溝加工部80により構成される内面溝付管製造装置2について
図8から
図11の図面および実施形態1で説明した図面と共に説明する。ただし、実施形態2の内面溝付管製造装置2の構成のうち、上述した実施形態1の内面溝付管製造装置1と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0058】
図8は実施形態2の内面溝付管製造装置2の縦断面による説明図であり、
図9は副溝形成プラグ82の説明図である。詳しくは、
図9(a)は
図8における副溝形成プラグ82の拡大片断面図であり、
図9(b)は
図9(a)におけるD−D端面図および副溝形成刃82aの拡大図である。
【0059】
また、
図10は主溝72および副溝75が形成された内面溝付管70aの断面図であり、
図11は主溝72および副溝75が形成された内面溝付管70aの管内面74の斜視図である。
【0060】
内面溝付管製造装置2は、縮径部30、溝加工部11および引抜部20で構成している。溝加工部11は、
図8に示すように、主溝加工部40と、主溝加工部40より引き抜き方向Xの下流側に、フィン73に副溝75を形成する副溝加工部80とで構成している。
【0061】
なお、縮径部30、主溝加工部40および引抜部20は、内面溝付管製造装置1における縮径部30、主溝加工部40および引抜部20と同じ構成であり、同じ作用を奏するため、詳細な説明を省略する。
【0062】
副溝加工部80は、副溝加工ダイス81と副溝形成プラグ82とで構成している。
副溝加工ダイス81は、
図8に示すように、実施形態1で説明した縮径ダイス31と同様の形状であって、引き抜き方向Xに連通した連通孔81aを有する筒状に形成し、金属管70を外部から取り囲むように配置している。連通孔81aは、引き抜き方向Xの上流側へ向けて末広がりの開口形状である。
【0063】
副溝形成プラグ82は、実施形態1で説明した主溝形成プラグ44と同様、
図9に示すように、芯金51の挿通を許容する円筒形に形成し、金属管70の内部における副溝加工ダイス81に対応する位置に配置している。ただし、副溝形成プラグ82は、その外周に主溝形成プラグ44の主溝形成溝44aとは異なる角度とピッチをもつ螺旋状の副溝形成刃82aを備えている。
【0064】
上述したように副溝加工部80を副溝加工ダイス81および副溝形成プラグ82で構成したことにより、副溝加工部80は以下のように作用する。
主溝加工部40で管内面74に主溝72が形成された金属管70のフィン73に対して、副溝加工ダイス81は、外部から金属管70を押圧してわずかに縮径し、管内面74を副溝形成プラグ82に押圧する。副溝形成プラグ82は、フィン73を押潰すことで、
図10および
図11に示す、フィン73を分断する副溝75を形成すことができる。
【0065】
なお、加工時には、
図8に示すように、主溝形成プラグ44より引き抜き方向Xの下流側であって副溝形成プラグ82より上流側の金属管70の管内空間90は、実施形態1で説明した第2管内空間92と同様、閉空間となる。
また、この主溝形成プラグ44より引き抜き方向Xの下流側であって副溝形成プラグ82より上流側の金属管70の管内空間90を第3管内空間93とする。
【0066】
芯金51は、細長い円柱形状に形成されていて、金属管70の内部にある縮径プラグ32と主溝形成プラグ44と副溝形成プラグ82とをこれらの中心軸を貫いて直列に連結している。
【0067】
芯金51は、縮径プラグ32の中心軸を貫いて、縮径プラグ32より引き抜き方向Xの上流側に突出している。なお、芯金51は、副溝形成プラグ82の中心軸を貫いて、副溝形成プラグ82より引き抜き方向Xの下流側にも突出している(
図8参照)。
【0068】
芯金51は、縮径プラグ32と主溝形成プラグ44と副溝形成プラグ82とを芯金51の軸方向の周りには互いに回転自在であるが、引き抜き方向Xには芯金51に対する相対位置が変わらないように固定している。
【0069】
芯金51の中心軸には貫通孔51aが設けられている。貫通孔51aは、縮径プラグ32より引き抜き方向Xの上流側に、潤滑油60を導入する導入口51bを設けている。
【0070】
また、貫通孔51aには、実施形態1で説明した第2管内空間92に潤滑油60を吐出する吐出口51cを設け、さらに、上述の第3管内空間93に潤滑油60を吐出する吐出口51dを設けている。
【0071】
詳しくは、
図8における貫通孔51aを設けた芯金51のA2−A2端面は、
図1に示すA−A端面、すなわち、
図6(a)に示す端面と同一であり、吐出口51cにおける芯金51のB2−B2端面、および、吐出口51dにおける芯金51のC2−C2端面は、
図1に示すB−B端面、すなわち、
図6(b)に示す端面と同一となるように芯金51を構成している。
【0072】
上述したように芯金51に貫通孔51aを設けたことにより、貫通孔51aは以下のように作用する。
実施形態1で説明したように、仮に、貫通孔51aを設けていなければ、縮径プラグ32を通過した直後の管内面74には、潤滑油60がほとんど行き渡らない。しかも、金属管70が縮径する際に発生する熱により、潤滑油60が気化し、管内面74には潤滑油60がほとんど残らない状態となる。主溝形成プラグ44の外周面44bと金属管70の管内面74との間に潤滑油60がほとんどない状態で主溝72が管内面74に形成されていた。
【0073】
しかも、管内面74に主溝72を形成した後に、さらに副溝75を形成するこの内面溝付管製造装置2のように副溝加工部80を設けている場合、副溝形成プラグ82の外周面82bと金属管70の管内面74との間に潤滑油60が皆無である過酷な状態で副溝75が形成されていた。
【0074】
しかし、内面溝付管製造装置2は、貫通孔51aを芯金51に形成したことにより、第1管内空間91に満たされている潤滑油60を実施形態1の
図7(a)と同様に、導入口51bより導入し、貫通孔51aを通過させ、実施形態1の
図7(b)と同様に、一部は吐出口51cから、残りは吐出口51dから吐出させる。これは、実施形態1の場合と同様、金属管70が引き抜かれる際に、金属管70の管内面74と潤滑油60との間に生じる摩擦力および第1管内空間91と第2管内空間92および第3管内空間93との圧力差によるものである。
【0075】
吐出口51cより吐出された潤滑油60は、縮径プラグ32より引き抜き方向Xの下流側であって、主溝形成プラグ44より引き抜き方向Xの上流側の金属管70の管内面74に付着する。付着した潤滑油60は、金属管70の引き抜き方向Xへの引き抜きに伴って移動し、主溝形成プラグ44の外周面44bと金属管70の管内面74との間に行き渡ることとなる。
【0076】
そして同様に、吐出口51dより吐出された潤滑油60は、副溝形成プラグ82の外周面82bと金属管70の管内面74との間に行き渡ることとなる。
【0077】
上述した内面溝付管製造装置2の構成および作用により、以下のような様々な効果を得ることができる。
主溝加工部40と副溝加工部80とにより金属管70の管内面74に主溝72および副溝75を形成する際に、主溝形成プラグ44および副溝形成プラグ82の各外周面44b、82bと金属管70の管内面74との間に潤滑油60を十分に行き渡らせることができる。
【0078】
特に、主溝形成プラグ44より引き抜き方向Xの下流側に配置された、副溝形成プラグ82の外周面82bと金属管70の管内面74との間に潤滑油60が全く行き渡らないことによる深刻な問題を解決することができる。
【0079】
潤滑油60の不足による主溝形成プラグ44および副溝形成プラグ82の各外周面44b、82bと金属管70の管内面74との間の摩擦を低減でき、その結果、金属管70の断管を防止できるので、内面溝付管70aの生産性を向上することができる。
【0080】
また、潤滑油60が行き渡ることにより、主溝形成溝44aおよび副溝形成刃82aの摩耗を抑制することができるので、この内面溝付管製造装置2は、加工の始端と終端でのフィン高さhの差および副溝深さdの差が従来に比べて小さい、精度の良い内面溝付管70aを提供することができる。
【0081】
また、主溝形成溝44aおよび副溝形成刃82aの磨耗量を減らすことができるので、主溝形成プラグ44および副溝形成プラグ82の耐久性を向上できる。その結果、交換頻度を減らすことができ、生産コストを低減することができる。主溝形成プラグ44および副溝形成プラグ82は高価な部品であるので、交換頻度が減るのは生産コストの低減に特に有効である。
【0082】
さらに、潤滑油60が行き渡ることにより、主溝形成プラグ44および副溝形成プラグ82と金属管70の間に生じる摩擦力が小さくなるので、引抜部20が金属管70を引き抜く力を低減することができ、内面溝付管製造装置2の加工負荷を低減できる。
【0083】
次に、芯金50、51に貫通孔50а、51аを設けた内面溝付管製造装置1、2による効果確認試験について説明する。
この効果確認試験では、貫通孔50а、51аを設けた内面溝付管製造装置1、2で製造された内面溝付管70a(実施例1および実施例2)と、内面溝付管製造装置1、2において貫通孔50а、51аを設けていない従来の内面溝付管製造装置で製造された内面溝付金属管(比較例1および比較例2)の溝加工の始端におけるフィン高さh1と終端におけるフィン高さh2との差|h1−h2|を比較した。
【0084】
比較例1、2は、貫通孔50а、51аを設けていない芯金を用いた従来の内面溝付管製造装置で製造された内面溝付管である。
【0085】
また、実施例1および比較例1は、主溝72のみを有する内面溝付管70aに関するものであり、実施例2および比較例2は、主溝72と副溝75を有する内面溝付管70aである。
【0086】
なお、全ての実施例および比較例において、表1に示す外径D
1、溝数、螺旋角α
1、溝深さH
1を有する主溝形成プラグ44を用いた。ここで、外径D
1は、
図2(b)に示す円筒形をした主溝形成プラグ44の直径である。溝数は、
図2(a)に示す主溝形成プラグ44の任意の円形断面、例えばC−C断面の全周にわたる主溝形成溝44aの数である。螺旋角α
1は、
図2(a)に示す主溝形成プラグ44の軸方向に対する主溝形成溝44aのなす角度である。溝深さH
1は、
図2(b)に示す主溝形成プラグ44の径方向の主溝形成溝44aの深さである。
【0087】
【表1】
また、実施例2および比較例2では、以下の表2に示す外径D
2、最大外径D
M2、刃数、螺旋角α
2、刃高さH
2、頂角β
2を有する副溝形成プラグ82を用いた。ここで、外径D
2は、
図9(b)に示す円筒形をした副溝形成プラグ82の副溝形成刃82a除いた部分の直径である。最大外径D
M2は、
図9(b)に示す副溝形成プラグ82の副溝形成刃82aの部分を含んだ直径である。刃数は、
図9(a)に示す副溝形成プラグ82の任意の円形断面、例えばD−D断面の全周にわたる副溝形成刃82aの数である。螺旋角α
2は、
図9(a)に示す副溝形成プラグ82の軸方向に対する副溝形成刃82aのなす角度である。刃高さH
2は、
図9(b)に示す副溝形成プラグ82の径方向の副溝形成刃82aの高さである。頂角β
2は、
図9(b)に示す断面が二等辺三角形である副溝形成刃82の頂角である。
【0088】
【表2】
以下の表3に全ての比較例および実施例における金属管70の加工の始端と終端のフィン高さhの差|h1−h2|の測定結果を示す。表3に示す加工長さLは、加工された金属管70の始端から終端までの長さであり全て5000m以上である。
【0089】
また、表3に示す加工始めに対する比率は、フィン高さhの差|h1−h2|を加工始めにおけるフィン高さh1で割った値|h1−h2|/h1である。なお、比較例2および実施例2における切欠き率(
図11に示すフィン高さhに対する副溝深さdの比)は95%で一定とした。
【0090】
【表3】
表3に示すように、実施例1のフィン高さhの差|h1−h2|は0.005(mm)となり、比較例1のフィン高さhの差|h1−h2|は0.020(mm)となった。すなわち、実施例1のフィン高さhの差|h1−h2|は、比較例1のフィン高さhの差|h1−h2|より明らかに小さくなった。
【0091】
同様に、実施例2のフィン高さhの差|h1−h2|は0.010(mm)となり、比較例2のフィン高さhの差|h1−h2|は0.025(mm)となった。すなわち、実施例2のフィン高さhの差|h1−h2|は、比較例2のフィン高さhの差|h1−h2|より明らかに小さくなった。
【0092】
また、比較例1および比較例2の加工始めに対する比率|h1−h2|/h1は、いずれも|h1−h2|/h1>5%(すなわち0.05以上)となった。一方、実施例1および実施例2の加工始めに対する比率|h1−h2|/h1は、いずれも|h1−h2|/h1≦5%(すなわち0.05以下)となった。
【0093】
すなわち、実施例1,2の内面溝付管70aは、比較例1,2の内面溝付管に比べフィン高さhの変動が小さい結果となった。
上述の結果より、内面溝付管製造装置1、2の芯金50、51に貫通孔50a、51aを設けたことにより、従来よりもフィン高さhの精度が高い内面溝付管70aが得られることが実証された。
【0094】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の縮径手段は、実施形態の縮径部30に対応し、
以下同様に、
引抜手段は、引抜部20に対応し、
溝加工手段は、溝加工部10、11に対応し、
主溝加工手段は、主溝加工部40に対応し、
副溝加工手段は、副溝加工部80に対応し、
溝加工ダイスは、転造ヘッド41及び転造ボール43並びに副溝加工ダイス81に対応し、
溝形成プラグは、主溝形成プラグ44と副溝形成プラグ82とに対応し、
連結手段は、芯金50、51に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0095】
例えば、上述の実施形態2における貫通孔51aにおいて、吐出口51cがなく、吐出口51dのみを設けた貫通孔としてもよい。
また、例えば、上述の実施形態1および実施形態2において、転造ヘッド41および転造ボール43の代わりに副溝加工ダイス81と同形状の主溝加工ダイスを用いてもよい。
【0096】
また、例えば、上述の実施形態1および実施形態2において、芯金50、51ではなく縮径プラグ32に貫通孔を設けてもよい。
また、例えば、上述の実施形態1および実施形態2において、
図12(a)に示すように、貫通孔52aは、吐出口52cを芯金52の下部にのみ設けてもよいし、
図12(b)に示すように、芯金52の上下に設けてもよいし、
図12(c)に示すように、芯金52の上下左右に設けてもよい。
【0097】
また、例えば、上述の実施形態1および実施形態2において、
図12(d)に示すように、貫通孔52aは、吐出口52c付近でY字状に分岐する構成であってもよい。
【0098】
また、例えば、上述の実施形態1および実施形態2において、芯金50、51は、導入口50b、51bより引き抜き方向Xの上流側に回転翼(図示しない)を備えてもよい。この場合、回転翼と主溝形成プラグ44が一体となって回動するように、芯金50、51でこれらを固定して連結する構成とする。この構成により、回転翼は、溝加工の際の主溝形成プラグ44の回動力により導入口50b、51b付近で軸周りに回転し、潤滑油60を導入口50b、51bに導入することができる。