(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2封止部材で被覆された複数の発光素子の実装エリアは、前記第1封止部材で被覆された複数の発光素子の実装エリアよりも広いことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発光装置。
前記第2封止部材で被覆された発光素子の個数は、前記第1封止部材で被覆された複数の発光素子の個数よりも多いことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発光装置。
前記基材上に、平面視において、前記第2封止部材の外側に前記第1封止部材と同心形状に形成された光反射性の部材からなる第2の壁をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態に係る発光装置および発光装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面が示す部材のサイズや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については、原則として同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。また、以下の説明で参照する
図2において、発光素子のp電極およびn電極は、各発光素子の向きを示すために実装領域上の4箇所だけ詳細に図示し、実装領域上のその他の箇所では詳細な図示を省略している。また、
図9ではp電極およびn電極は、詳細な図示を省略している。
【0030】
≪発光装置≫
本発明の実施形態に係る発光装置1について、
図1〜
図3を参照しながら詳細に説明する。以下の説明では、まず発光装置1の全体構成について説明した後に、各構成について説明する。なお、説明の便宜上、
図2における壁6,9は、外形のみを線で示し、透過させた状態で図示している。他の実施形態で説明する
図9についても、同様に透過させた状態で図示している。
【0031】
<全体構成>
発光装置1は、例えば、LED電球、スポットライト等の照明器具等に利用される装置である。発光装置1は、
図1および
図2に示すように、基材2と、基材2上に配置された複数の発光素子3と、一部の発光素子3を被覆する封止部材4と、残りの発光素子3を被覆する封止部材5と、光反射性の部材からなる壁6,9と、例えば配線パターン等の導電部材20とを主に備える。
【0032】
封止部材(第1封止部材)4は、第1蛍光体を含有し、
図1および
図2に示すように、平面視において、基材2上の中心領域に配置された複数の発光素子3を被覆している。
封止部材(第2封止部材)5は、第2蛍光体を含有し、
図1および
図2に示すように、平面視において、基材2上の封止部材4の外側に封止部材4と同心形状に形成され、封止部材4の外側に載置された発光素子3を被覆している。このように、封止部材5の外縁の成す形状と、封止部材4の外縁の成す形状とが、ほぼ同じ位置にそれぞれの中心を有している。
【0033】
光反射性の部材からなる壁6は、
図1に示すように、基材2上に封止部材4を取り囲むように封止部材4と同心形状に形成されて封止部材4と封止部材5とを仕切るように形成されている。
【0034】
光反射性の部材からなる壁9は、
図1に示すように、基材2上に封止部材5を取り囲むように封止部材4と同心形状に形成されている。
【0035】
図2において、封止部材4と、壁6と、封止部材5とを結ぶ符号30の破線で示す領域の断面を
図3(a)に示す。
図3(a)に示すように、壁6の内側(
図3において右側)に充填された封止部材4は蛍光体(第1蛍光体)7を含有し、壁6の外側(
図3において左側)に充填された封止部材5は蛍光体(第2蛍光体)8を含有している。蛍光体8は、蛍光体7の発光波長と異なる波長の光を発光する。以下では、一例として、蛍光体7の発光波長が蛍光体8の発光波長よりも長いものとして説明する。
【0036】
図2に示すように、複数の発光素子3を配置するための領域である実装エリアは矩形である。なお、
図2は封止部材4,5を透過して視た平面図である。複数の発光素子3の実装エリアは、2つに区分されている。より詳細には、封止部材4で被覆される複数の発光素子3の実装エリア11は、基材2の中央の領域に区画されており、矩形状に形成されている。この実装エリア11は、互いに対向する辺を有する所定形状で形成されており、より具体的には、
図2に示すように、角部を丸めた略矩形状に形成されている。これに対応して、
図1に示すように、封止部材4が基材2上の中央の領域に矩形状に形成されている。また、
図1に示すように、壁6が基材2上において封止部材4を取り囲むように矩形の枠状に形成されている。
【0037】
また、
図2において、封止部材5で被覆される複数の発光素子3の実装エリア12は矩形の枠状に形成されている。実装エリア12の周囲には、
図2を正面視した場合において、実装エリア12の左側の辺に沿って配線部23bの一部および配線部24bの一部が形成され、実装エリア12の下側の辺に沿って配線部24bの一部が形成されている。なお、ここでの実装エリア12の周囲とは、
図2に示すように、実装エリア12の周縁と所定の間隔を置いた周囲のことを意味している。この実装エリア12に対応して、
図1に示すように、封止部材5は、基材2上において封止部材4および壁6を取り囲むように矩形の枠状に形成されている。また、
図1に示すように、基材2上において、壁9が封止部材5を取り囲むように矩形の枠状に形成されている。なお、実装エリア11,12のサイズは特に限定されず、発光素子3の数や配列間隔等、目的および用途に応じて適宜選択することができる。
【0038】
実装エリア11,12において、発光素子3は、同程度の密度で載置されることが好ましい。また、これらの発光素子3は、サイズ、出力、波長等の特性がほぼ同等であることが好ましい。特に、実装エリアが矩形の場合は、実装エリア11,12両方において同様のマトリクス状に発光素子3が載置されることが好ましい。
【0039】
図2に示す例では、複数(例えば、9行×10列の合計90個)の発光素子3が基材2上に縦列横列に整列して配置されている。
発光素子3は、
図2に示すように、実装エリア11上において、縦方向および横方向にそれぞれ等間隔で配列されており、ここでは、縦7個×横6個の合計42個配置されている。また、
図2に示すように、実装エリア11上の最外周に配置された22個の発光素子3を取り囲むように、実装エリア12上において、30個の発光素子3が配設されて、内側の42個の発光素子3と合わせて9行×8列のマトリクスとなっており、かつ、実装エリア12上において、このマトリクスを1列9個ずつの発光素子3が両側から挟み込む位置に配設されている。つまり、実装エリア12には、発光素子3が合計48個配置されている。
【0040】
ここで、実装エリア11,12は、同心形状であるので、外側の領域を比較的幅広にして発光素子3を実装し易くして、外側に数多くの発光素子3を配置することが好ましい。つまり、実装エリア11,12のうち、面積を大きくしようとする方を外側に配置することが好ましい。また、実装エリア11,12における面積や発光素子3の搭載個数を変えることによって、実装エリア11,12毎の発光強度を変化させることができる。これによって、実装エリア11,12毎の発光強度比を調整し、封止部材4,5を介した所望の色調を得ることができる。例えば、黄色味を強くする場合には、黄色蛍光体を含有する封止部材の側の領域の発光強度を強めればよい。また、2種の蛍光体のうち、発光素子3の発光に対する変換効率が低く、より多量の蛍光体を必要とする方を蛍光体7とし、発光装置1の中心近傍に配置することが好ましい。
【0041】
また、一例として、実装エリア11,12の縦列の方向に沿って配置された複数の発光素子3が直列接続されている。具体的には、
図2に示すように、発光素子3は、実装エリア11,12に対して縦方向に隣り合う発光素子3同士が導電性のワイヤ13によって電気的に接続され、直列接続されている。なお、ここでの直列接続とは、
図2に示すように、隣り合う発光素子3におけるp電極3aとn電極3bとがワイヤ13によって電気的に接続された状態を意味している。直列接続すると、各発光素子3に流れる電流を均一化できる。例えば、順方向降下電圧(以下、V
fという)の高い発光素子と低い発光素子とを並列接続すると、V
fの低い発光素子に流れる電流が大となるが、直列接続すると、流れる電流は両方の発光素子においてほぼ同じとなる。このため、発光素子3を直列接続することで、V
fの異なる複数の発光素子3を使用しても、各発光素子3に流れる電流を均一化でき、各発光素子3をほぼ同程度の強度で発光させることができる。このようにすることで、封止部材4により被覆した複数の発光素子3の発光状態と、封止部材5により被覆した複数の発光素子3の発光状態と、を均一化できる。またこの直列回路に、例えば隣り合う発光素子を並列に接続してこの組を1つの発光素子とみて、組同士を直列接続する、いわゆる梯子状の配線(ラダー)にすることで、各種電源に対応した発光装置とすることもできる。
【0042】
また、
図2を正面視した場合において、実装エリア12の左側の端部に位置する発光素子3と、導電部材20である配線部23bとがワイヤ13によって電気的に接続されており、実装エリア12の下側の端部(第9行目)に位置する発光素子3と、導電部材20である配線部24bとがワイヤ13によって電気的に接続されている。また、実装エリア12の上側の端部(第1行目)に位置する10個の発光素子3のn電極3bが並列にワイヤ13によって電気的に接続されている。
【0043】
図2に示す例では、実装エリア12の広さは、実装エリア11の広さの約2倍となるように形成されている。また、この例では、好ましい形態として、実装エリア12に実装された発光素子3の個数(48個)は、実装エリア11に実装された発光素子3の個数(42個)よりも多くなるように配置した。
【0044】
図2に示す例では、壁6を介して隣り合った発光素子3のペア(22ペア)のうち一部(12ペア)が壁6を貫通したワイヤ13にて接続されている。なお、
図2において、仮に、実装エリア12中の左右の2列ずつ合計36個の発光素子3が、マトリクス状に配置されていないような場合を想定すると、この場合には、全てのぺアが壁6を貫通したワイヤ13にて接続されることとなる。
【0045】
ここで、発光装置1において、壁6を介して隣り合った発光素子3のペアを接続するワイヤ13が壁6を貫通していることによる効果について
図3を参照して説明する。
図3(a)は、本実施形態の発光装置1の符号30(
図2参照)の破線で示す領域の断面を示し(実施例)、
図3(b)は、実施例を説明するために仮定した比較例を示している。
図3(b)の比較例では、壁6を介して隣り合った2つの発光素子3の間において、基材2上に壁6を形成する前に中継用の導電部材31が設けてある。そして、中継用の導電部材31は、隣り合った2つの発光素子3から延伸した2本のワイヤ13の中継点として機能する。ワイヤ13は所定の強度を有しているために急峻な角度で曲げることは困難であるにも関わらず、
図3(b)に示す例では、左右の発光素子3の上部にある図示しない電極端子(パッド電極)から立設した各ワイヤ13が発光素子3の最上面の位置よりも下方にある中継用の導電部材31に向けて急峻な角度で曲げられていることが分かる。これに対して、
図3(a)に示す実施例では、左の発光素子3の上部にある図示しない電極端子(パッド電極)から立設したワイヤ13が発光素子3の最上面の位置よりも上方で緩やかに曲げられて、壁6を貫通して右の発光素子3の上部にある図示しない電極端子(パッド電極)と接続されている。
【0046】
したがって、実施例によれば、ワイヤ13を急峻な角度で曲げることなく、壁6を介して隣り合った発光素子3のペアを容易に接続することができる。また、実施例によれば、中継用の導電部材31が不要であると共に、必要なワイヤ13のボンディング数を低減することもできる。また、
図3(b)の比較例において、ワイヤ13の長さを伸長し、かつ、隣り合った発光素子3間の距離を大きくすれば、ワイヤ13を急峻な角度で曲げる必要はないが、発光素子3の実装エリアにおいて、発光素子3の配置密度が低くなってしまう。これに対して、実施例では、壁6を介して隣り合った2つの発光素子3を近づけて配設することが可能である。
【0047】
また、実施例では、ワイヤ13が壁6に埋め込まれて固定されているため、封止部材4,5を樹脂で形成する場合、発光装置1の製造時や駆動時の熱によって樹脂が膨張することによる封止部材4,5の応力の影響をワイヤ13が受け難く、ワイヤ13が切断しにくくなる。なお、ワイヤボンディングした後に、基材2の所定領域にワイヤ13の上から、壁6として光反射性の液体樹脂を吐出した場合、吐出された樹脂が基材2の所定領域を被覆し、ワイヤ13の位置を越える所定の高さに達することで、壁6を貫通したワイヤ13が形成される。この形成過程において、ワイヤ13は、所定の強度を有しているのでワイヤボンディング後の形状を維持することができる。
【0048】
次に、発光装置1の各構成の詳細について説明する。
<基材>
基材2は、発光素子3や図示を省略した保護素子等の電子部品を配置するためのものである。基材2は、
図1および
図2に示すように、矩形平板状に形成されている。また、基材2上には、
図2に示すように複数の発光素子3を配置するための実装エリア11,12が区画されている。なお、基材2のサイズは特に限定されず、発光素子3の数や配列間隔等、目的および用途に応じて適宜選択することができる。
【0049】
基材2の材料としては、絶縁性材料を用いることが好ましく、かつ、発光素子3から放出される光や外光等が透過しにくい材料を用いることが好ましい。また、ある程度の強度を有する材料を用いることが好ましい。具体的には、セラミックス(Al
2O
3、AlN等)、あるいはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、BTレジン(bismaleimide triazine resin)、ポリフタルアミド(PPA)等の樹脂が挙げられる。また、金属板の表面に絶縁層を設けた部材を基材2の材料として用いることもできる。
【0050】
<発光素子>
発光素子3は、電圧を印加することで自発光する半導体素子である。発光素子3は、
図2に示すように、基材2の実装エリア11,12に複数配置されている。発光素子3は、図示しない接合部材によって実装エリア11,12に接合されており、その接合方法としては、例えば接合部材として樹脂や半田ペーストを用いる接合方法を用いることができる。
【0051】
発光素子3のそれぞれは、
図2に示すように、矩形状に形成されている。また、発光素子3は、
図2に示すように、その上面の一側にp電極3aが設けられ、発光素子3の他側にn電極3bが設けられたフェースアップ(FU)素子である。
【0052】
発光素子3としては、具体的には発光ダイオードを用いるのが好ましく、用途に応じて任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色(波長430nm〜490nmの光)、緑色(波長490nm〜570nmの光)の発光素子3としては、窒化物系半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等を用いることができる。また、赤色(波長620nm〜750nmの光)の発光素子3としては、GaAlAs、AlInGaP等を用いることができる。
【0053】
ここで、本実施形態においては、後記するように封止部材4,5(
図1参照)に蛍光体7,8(蛍光物質)を導入するため、それらの蛍光体を効率良く励起できる短波長の発光が可能な窒化物半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いることが好ましい。例えば、青色の発光素子3と黄色蛍光体と赤色蛍光体とを組み合わせてこれらの発光を混合することで、演色性の向上した白色の光を得ることができる。ただし、発光素子3の成分組成や発光色、サイズ等は上記に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。また、発光素子3は、可視光領域の光だけではなく、紫外線や赤外線を出力する素子で構成することもできる。また、高出力化のためには、発光素子3の個数は、例えば10個以上、20〜400個の範囲内とすることが好ましい。
【0054】
<封止部材>
封止部材4は、蛍光体7を含有するものであり、基材2に配置された発光素子3およびワイヤ13等を、塵芥、水分、外力等から保護するための部材である。封止部材4は、
図1、
図2に示すように、基材2上において、壁6で囲った実装エリア11内に、例えば樹脂を充填することで形成される。
【0055】
封止部材4の材料としては、発光素子3からの光を透過可能な透光性を有するものが好ましい。具体的な材料としては、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂等を挙げることができる。また、このような材料に加えて、所望に応じて着色剤、光拡散剤、フィラー等を含有させることもできる。また、封止部材4の材料は、樹脂に限定されるものではない。
【0056】
なお、封止部材4は、単一の部材で形成することもできるし、あるいは、2層以上の複数の層として形成することもできる。また、封止部材4の充填量は、壁6で囲った実装エリア11内に配置される発光素子3、ワイヤ13等が被覆される量であればよい。また、封止部材4にレンズ機能をもたせる場合は、封止部材4の表面を盛り上がらせて砲弾型形状や凸レンズ形状としてもよい。
【0057】
封止部材5は、蛍光体8を含有するものであり、基材2に配置された発光素子3およびワイヤ13等を、塵芥、水分、外力等から保護するための部材である。封止部材5は、
図1、
図2に示すように、基材2上において、壁6と壁9とで囲った実装エリア12内に、例えば樹脂を充填することで形成される。なお、封止部材5の材料や形成方法は、封止部材4と同様にすることができる。
【0058】
<蛍光体>
蛍光体7は、封止部材4中に含有させる波長変換部材であり、蛍光体8は、封止部材5中に含有させる波長変換部材である。
蛍光体7,8は、発光素子3からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長を有する光を発する。蛍光体7,8としては、発光素子3からの光をより長波長に変換させるものが好ましい。また、蛍光体7,8は1種の蛍光体(蛍光物質)を用いてもよいし、2種以上の蛍光体(蛍光物質)が混合されたものを用いてもよい。好ましくは、それぞれの蛍光体の発光が他の蛍光体に吸収されることを防止するために、蛍光体7,8はそれぞれ1種ずつの蛍光体(蛍光物質)を用いる。
【0059】
ここでは、蛍光体7の発光波長が蛍光体8の発光波長よりも長いものとして説明しているので、蛍光体7の材料としては、例えば、Eu,Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される、窒化物系蛍光体を用いることができる。このうち、ユーロピウムドープの赤色蛍光物質として、例えば、(Sr,Ca)AlSiN
3:Eu(以下、SCASNと表記する)、CaAlSiN
3:EuのようなCASN系蛍光体、SrAlSiN
3:Euを用いることができる。また、蛍光体8の材料としては、例えば、イットリウム、アルミニウムおよびガーネットを混合したYAG系蛍光体(黄色蛍光物質)を用いることができる。なお、他の蛍光体として、Eu,Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される、酸窒化物系蛍光体を用いることもできる。
【0060】
<壁>
光反射性の壁6,9は、発光素子3から出射された光を反射させるためのものである。
壁6は、
図1および
図2に示すように、基材2上において実装エリア11を囲うように四角枠状に形成されることが好ましい。このように実装エリア11の周囲を囲うように壁6を形成することで、基材2の実装エリア11の周囲に向う光が壁6によって反射することができる。従って、出射光のロスを軽減することができ、発光装置1の光の取り出し効率を向上させることができる。
【0061】
壁9は、
図1および
図2に示すように、基材2上において実装エリア12を囲うように四角枠状に形成されることが好ましい。このように実装エリア12の周囲を囲うように壁9を形成することで、基材2の実装エリア12の周囲に向う光が壁9によって反射することができる。従って、出射光のロスを軽減することができ、発光装置1の光の取り出し効率を向上させることができる。なお、発光装置1から取り出される光とは、壁6に囲まれた封止部材4の表面から取り出される光と、壁6,9に囲まれた封止部材5の表面から取り出される光とを合わせた光である。つまり、発光装置1において、封止部材4,5の表面が発光面となる。
【0062】
また、壁9は、
図2に示すように、配線部23b,24bの一部およびこれらに接続されるワイヤ13を覆うように形成される。そのため、発光素子3から出射された光が配線部23b,24bおよびワイヤ13には到達せずに壁9によって反射される。従って、配線部23b,24bおよびワイヤ13をAuで形成した場合であっても、出射光がAuの配線等に到達して反射することに起因するロスを軽減することができ、発光装置1の光の取り出し効率を向上させることができる。さらに、配線部23b,24bの一部およびこれらに接続されるワイヤ13を壁9によって覆うことによって、これらの部材を塵芥、水分、外力等から保護することができる。また、壁9をワイヤ13のボンディング領域を被覆する位置に配置することで、壁9と発光素子3の間にワイヤ13のボンディング領域を確保することが不要となり、壁9を発光素子3の近くに配置することができる。
【0063】
壁6,9の材料としては、絶縁材料を用いることが好ましい。また、ある程度の強度を確保するために、例えば熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。より具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、BTレジンや、PPAやシリコン樹脂等が挙げられる。また、これらの母体となる樹脂に、発光素子3からの光を吸収しにくく、かつ母体となる樹脂に対する屈折率差の大きい反射部材(例えばTiO
2,Al
2O
3,ZrO
2,MgO)等の粉末を分散することで、効率よく光を反射させることができる。また、壁6,9の材料は、樹脂に限定されるものではない。なお、壁6,9のサイズは特に限定されず、目的および用途に応じて適宜選択することができる。
【0064】
<金属膜>
実装エリア11,12上には、光を反射する金属膜を形成し、当該金属膜を介して複数の発光素子3を配置することが好ましい。この場合、出射光のロスを軽減することができ、発光装置1の光の取り出し効率を向上させることができる。
【0065】
この金属膜は、電解めっきまたは無電解めっきで形成することが好ましい。金属膜の材料としては、特に限定されないが、例えば、Ag(銀)またはAu(金)を用いることが好ましく、特にAgを用いることが好ましい。Auは光を吸収しやすい特性を備えているが、例えばAuめっきの表面にTiO
2膜をさらに形成することで、光反射率を高めることができる。また、AgはAuよりも可視光に対する光反射率が高いため、Au単独でめっきを行うよりも、発光装置1の光の取り出し効率を向上させることができる。なお、金属膜の厚さは特に限定されず、目的および用途に応じて適宜選択することができる。
【0066】
<導電部材(正極および負極)>
導電部材(金属部材)20は、
図1および
図2に示す正極23および負極24を構成するものであり、基材2上の複数の発光素子3や保護素子等の電子部品と、外部電源とを電気的に接続し、これらの電子部品に対して外部電源からの電圧を印加するためのものである。すなわち、導電部材20(正極23および負極24)は、外部から通電させるための電極、またはその一部としての役割を担うものである。
【0067】
正極23および負極24は、
図2に示すように、略矩形状のパッド部(給電部)23a,24aと、線状の配線部23b,24bと、を有しており、パッド部23a,24aに印加された電圧が配線部23b,24bを介して実装エリア11,12に配置された複数の発光素子3へと印加されるように構成されている。
【0068】
パッド部23a,24aは、外部電源からの電圧が印加されるためのものである。
パッド部23a,24aは、
図2に示すように、基材2上の角部における対角線の位置に、一対で形成されている。そして、パッド部23a,24aは、導電性のワイヤ13によって、図示しない外部電源と電気的に接続されている。
【0069】
配線部23b,24bは、外部電源からパッド部23a,24aに印加された電圧を、実装エリア11,12上の発光素子3へと伝達するためのものである。配線部23b,24bは、
図2に示すように、パッド部23a,24aから延出するように形成されるとともに、実装エリア12の周囲に略L字状で形成されている。
【0070】
正極23および負極24を構成する導電部材20の素材は、Auを用いることが好ましい。これは、後記するように、ワイヤ13の材料として熱伝導性が向上したAuを用いた場合に、同素材であるワイヤ13を強固に接合することができるためである。
【0071】
正極23および負極24を構成する導電部材20の形成方法としては、前記した実装エリア11,12上の金属膜の形成方法と同様に、電解めっきまたは無電解めっきで形成することが好ましい。なお、正極23および負極24を構成する導電部材20の厚さは特に限定されず、ワイヤ13の数等、目的および用途に応じて適宜選択することができる。
【0072】
ここで、配線部23b,24bの一部、すなわち導電部材20の一部は、
図1および
図2に示すように、壁9によって被覆されている。そのため、配線部23b,24bを、前記したように光を吸収しやすいAuで形成した場合であっても、発光素子3から出射された光が配線部23b,24bには到達せずに壁9によって反射される。従って、出射光のロスを軽減することができ、発光装置1の光の取り出し効率を向上させることができる。
【0073】
なお、
図1および
図2に示すAMはパッド部23aが正極23であることを示すアノードマーク、CMはパッド部24aが負極24であることを示すカソードマークであり、
図2に示す符号28は発光装置1の温度計測ポイントであり、これらもめっき等により形成される。
【0074】
<ワイヤ>
ワイヤ13は、発光素子3や保護素子等の電子部品と、正極23や負極24等を電気的に接続するための導電性の配線である。ワイヤ13の材料としては、Au、Cu(銅)、Pt(白金)、Al(アルミニウム)等の金属、および、それらの合金を用いたものが挙げられるが、特に、熱伝導率等に優れたAuを用いるのが好ましい。なお、ワイヤ13の径は特に限定されず、目的および用途に応じて適宜選択することができる。
【0075】
ここで、ワイヤ13と、正極23、負極24との接続部分は、
図2に示すように、壁9によって覆われている。そのため、前記したように、ワイヤ13を構成する材料として光を吸収しやすいAuを用いた場合であっても、発光素子3から出射された光はワイヤ13には吸収されずに壁9によって反射される。従って、出射光のロスを軽減することができ、発光装置1の光の取り出し効率を向上させることができる。
【0076】
≪発光装置の製造方法≫
次に、本発明の実施形態に係る発光装置の製造方法について、ここでは
図1〜3の形態のものを例にとり、適宜、図面を参照しながら説明する。
【0077】
本発明に係る発光装置1の製造方法は、ダイボンディング工程と、壁形成工程と、封止部材被覆工程と、を含む。
また、本製造方法の前提として、ダイボンディング工程の前に、基材作製工程とを含む。さらにここでは、めっき工程、ワイヤボンディング工程、保護素子接合工程を含む。
以下、各工程について説明する。なお、発光装置1の構成については前記説明したとおりであるので、ここでは適宜、説明を省略する。
【0078】
<基材作製工程>
基材作製工程は、めっき用配線が形成された基材2を作製する工程である。基材作製工程では、基材2上の実装エリア11,12や、正極23および負極24となる部位を所定の形状にパターニングすることで形成する。また、基材作製工程では、電解めっきによって基材2上の実装エリア11,12に金属膜を形成するためのめっき用配線を形成する。
【0079】
<めっき工程>
めっき工程は、前記めっき配線が形成された基材2上に、少なくとも正極23および負極24を構成する導電部材20を形成する工程であり、好ましくは無電解めっきにより正極23および負極24を構成する導電部材20を形成するとともに、基材2上の実装エリア11,12上に、電解めっきにより金属膜を形成する工程である。
【0080】
めっきの具体的な方法としては、例えば、正極23、負極24と実装エリア11,12上の金属膜との両方にAuめっきを行う方法、正極23、負極24にAuめっきを行い、実装エリア11,12上にAgめっきを行う方法、等が挙げられる。なお、金属膜を形成しない場合は、正極23、負極24のみにAuめっきを行い、実装エリア11,12上の金属膜を形成しない方法が挙げられる。また、実装エリア11,12上には、AuめっきやAgめっきを行う場合はAuまたはAgの表面に、まためっきを行わない場合は直接基材2表面に、さらにTiO
2膜を形成することが好ましい。
【0081】
<ダイボンディング工程>
ダイボンディング工程は、基材2上に発光素子3を載置する工程である。ダイボンディング工程は、発光素子載置工程と、加熱工程と、からなる。
【0082】
[発光素子載置工程]
発光素子載置工程は、基材2上(ここでは実装エリア11,12の金属膜上)に、接合部材(図示省略)を介して、発光素子3を載置する工程である。
発光素子3は、接合部材により、基材2上の実装エリア11,12の金属膜と接合する。なお、発光素子3の裏面には、予め、フラックスを塗布しておいてもよい。ここで、接合部材は、金属膜と発光素子3との間に介在するように設ければよいため、金属膜のうち、発光素子3を載置する領域に設けてもよく、発光素子3側に設けてもよい。あるいは、その両方に設けてもよい。
【0083】
液状またはペースト状の接合部材を金属膜上に設ける場合、粘度等に応じてポッティング法、印刷法、転写法等の方法から適宜選択することができる。そして、接合部材を設けた箇所に発光素子3を載置する。なお、固体状の接合部材を用いる場合も、固体状の接合部材を載置した後、液状またはペースト状の接合部材を用いる場合と同じ要領で、金属膜上に発光素子3を載置することができる。また、固体状やペースト状の接合部材は、加熱等により一度溶融させることで、発光素子3を金属膜上の所望の位置に固定させてもよい。
【0084】
[加熱工程]
加熱工程は、発光素子3を載置した後に、接合部材を加熱し、発光素子3を基材2上(実装エリア11,12の金属膜上)に接合する工程である。
接合部材は絶縁性部材であってもよく、加熱工程における加熱は、接合部材の少なくとも一部が揮発する温度よりも高い温度で行う。また、接合部材が熱硬化性樹脂を含有する場合は、熱硬化性樹脂の硬化が起こる温度以上に加熱することが好ましい。このようにすることで、発光素子3を熱硬化性樹脂で接着固定することができる。さらに、接合部材として、例えばロジンを含有する樹脂組成物と、低融点の金属とを用いた場合において、金属膜上に、この低融点の金属が載置されている場合、この低融点の金属が溶融する温度以上に加熱することが好ましい。
【0085】
また、加熱工程において、前記加熱に続けて、さらに洗浄工程を行うことができる。
例えば、接合部材に樹脂組成物を用いた場合、加熱により樹脂組成物の一部を揮発によって消失させた後に、残留した樹脂組成物を、さらに洗浄等によって除去してもよい(残留接合部材洗浄工程)。特に、樹脂組成物がロジン含有の場合には、加熱後に洗浄するのが好ましい。洗浄液としては、グリコールエーテル系有機溶剤等を用いるのが好ましい。
【0086】
<保護素子接合工程>
保護素子接合工程は、正極23の配線部23b上に、
図1では図示を省略した保護素子(
図9参照:以下、保護素子25と表記する)を載置して接合する工程である。保護素子25の接合は、発光素子3の接合と同時に行ってもよいが、発光素子3の接合よりも先、あるいは後に行ってもよい。保護素子25を載置、接合する方法は、前記ダイボンディング工程と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0087】
<ワイヤボンディング工程>
ワイヤボンディング工程は、ダイボンディング工程の後に、発光素子3と、この発光素子3に電圧を印加する導電部材20とをワイヤ13によって電気的に接続する工程である。すなわち、導電部材20の正極23と、発光素子3上部にある電極端子(パッド電極)とを、ワイヤ13で電気的に接続する工程である。同じく、発光素子3上部にある電極端子(パッド電極)と導電部材20の負極24とを、ワイヤ13で電気的に接続する工程である。さらにこの工程では、複数の発光素子3を、それぞれ電極端子(パッド電極)を介して接続する。また、保護素子25と負極24との電気的な接続もこの工程で行えばよい。すなわち、保護素子25上部にある電極端子と負極24とをワイヤ13で接続する。ワイヤ13の接続方法は、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法で行えばよい。
【0088】
<壁形成工程>
壁形成工程は、基材2上に一部の発光素子3を取り囲むように光反射性の部材からなる壁6を形成すると共に、基材2上に平面視において壁6と同心形状に、壁6の外側に載置された発光素子3を取り囲むように光反射性の部材からなる壁9を形成する工程である
なお、これらの壁6,9は、後から形成する封止部材4と同心形状に形成される。
ここでは、ワイヤボンディング工程の後に、実装エリア11の周縁に沿って、実装エリア11,12を跨いだ発光素子3のペアの間に張られたワイヤ13を被覆するように壁6を形成する。また、実装エリア12の周縁に沿って、導電部材20の一部、すなわち、少なくとも正極23および負極24の配線部23b,24bの一部である、導電部材20のワイヤ13との接続部分を被覆するように壁9を形成する。
【0089】
壁6,9の形成は、例えば、固定された基材2の上側において、基材2に対して上下方向あるいは水平方向等に移動(可動)させることができる樹脂吐出装置(図示省略)を用いて行うことができる(特開2009−182307号公報参照)。
すなわち、樹脂が充填された樹脂吐出装置をその先端のノズルから液体樹脂を吐出しながら移動させることで、実装エリア11の周縁に沿って壁6を形成し、かつ、実装エリア12の周縁の一部を覆うように壁9を形成していく。樹脂吐出装置の移動速度は、用いる樹脂の粘度や温度等に応じて適宜調整することができる。複数の発光装置1にそれぞれ形成された複数の壁6,9がそれぞれ略同じ幅となるようにするには、少なくとも樹脂を吐出中は一定の速度で移動させるのが好ましい。移動中に樹脂の吐出を一時中断する場合等は、その間の移動速度は変更することもできる。樹脂の吐出量についても、一定とするのが好ましい。さらに、樹脂吐出装置の移動速度と樹脂の吐出量ともに、一定とするのが好ましい。吐出量の調整は、吐出時にかかる圧力等を一定にする等により調整することができる。
【0090】
<封止部材被覆工程>
封止部材被覆工程は、蛍光体7を含有した封止部材4を壁6の内側に載置された発光素子3の上に被覆するように設けると共に、蛍光体8を含有した封止部材5を壁6の外側に載置された発光素子3の上に被覆するように設ける工程である。
すなわち、発光素子3、実装エリア11,12上の金属膜およびワイヤ13等を被覆する透光性の封止樹脂を、基材2上に形成された壁6の内側と、基材2上に形成された壁6と壁9との間と、に注入し、その後加熱や光照射等によって硬化することで形成する工程である。
【0091】
≪発光装置の性能≫
次に、本発明の実施形態に係る発光装置の性能について、ここでは
図1〜3の形態のものを例にとり、従来の発光装置の性能と比較しながら説明する。
まず、従来の蛍光体分離型の発光装置と性能を比較する。
図4(a)に断面で示す発光装置は、
図2の水平方向の中心線で切断した断面を簡略化して示したものである。ここでは、発光装置は、基材2と、基材2上に配置された3個の発光素子3と、中央の発光素子3を被覆する封止部材4と、両側の発光素子3を被覆する封止部材5と、封止部材4と封止部材5との間に設けられた光反射性の部材からなる壁6(2箇所)と、封止部材5の外側に設けられた壁9(2箇所)とを備える。
【0092】
また、中央の発光素子3を被覆する封止部材4が含有する蛍光体7によって、封止部材4の上方に赤色の光が所定の角度範囲に放射されるものとする。また、両側の発光素子3を被覆する封止部材5が含有する蛍光体8によって、封止部材5の上方に黄色の光が前記所定の角度範囲に放射されるものとする。
図4(a)において、発光装置の上面より上方において、2色の光、およびそれらの混合された光についてハッチングを区別して模式的に示す。このハッチングは
図4(a)と
図4(b)で共通である。なお、ここでは、本発明の実施形態に係る発光装置の発光する光を、従来のものと比較して説明することを主眼としているので、以下に示す発光の状態は模式的なものであり、実際とは異なる場合がある。
【0093】
図4(a)に示すように、発光装置の上面から上方に距離L1までの範囲では、放射された赤色の光と黄色の光とは分離している。
また、発光装置の上面から上方に距離L1からL2までの範囲では、放射された赤色の光と黄色の光とは一部で分離して残っているが、残りは赤色の光と黄色の光とが左右で混合している。
さらに、発光装置の上面から上方に距離L2からL3までの範囲では、放射された黄色の光は一部で分離して残っているが、残りの一部は赤色の光と黄色の光とが左右で混合し、さらに、その混合した光の領域に左右の黄色の光が混合している(ドットで表す領域)。なお、L3以上の範囲については以下同様である。
【0094】
発光装置の上面から上方に距離L3の位置に見える光の状態の模式図を
図4(b)に示す。
図4(b)に示すように、視野の中心の狭い範囲には、赤色の光と黄色の光とが混合し、さらに、その混合した光の領域に左右の黄色の光が混合している領域(ドットで表す領域)が現れる。
また、ドットで表す領域の外周の範囲には、赤色の光と黄色の光とが混合している領域が、ドットで表す領域と同心形状に現れる。
さらに、視野の外周縁に近い範囲には、両側の発光素子3を被覆する封止部材5が含有する蛍光体8の発光する黄色の光の領域が、ドットで表す領域と同心形状に現れる。
つまり、視野の中心ほど光が混合される割合が高くなっている。また、それぞれの光の領域が同心形状となる理由は、発光装置1の発光面において、封止部材5が封止部材4と同心形状であることを反映している。
【0095】
次に、
図4(a)に断面で示す発光装置の比較例を
図5(a)に示す。
図5(a)に断面で示す発光装置は、特許文献2に記載の発光装置と同様な形状である。この比較例の発光装置は、基材102と、基材102上に配置された2個の発光素子103と、右の発光素子103を被覆する封止部材104と、左の発光素子103を被覆する封止部材105と、封止部材104と封止部材105との間に設けられた光反射性の部材からなる壁106と、封止部材104、105の外側に設けられた壁109(2箇所)とを備える。なお、壁106は、左右の封止部材104,105を単純に分離するものである。
【0096】
また、右の発光素子103を被覆する封止部材104が含有する蛍光体107によって、封止部材104の上方に赤色の光が所定の角度範囲に放射されるものとする。また、左の発光素子103を被覆する封止部材105が含有する蛍光体108によって、封止部材105の上方に黄色の光が前記所定の角度範囲に放射されるものとする。
図5(a)において、発光装置の上面より上方において、2色の光、およびそれらの混合された光をハッチングを区別して模式的に示す。このハッチングは
図5(a)と
図5(b)で共通である。なお、以下に示す発光の状態は模式的なものであり、実際とは異なる場合がある。
【0097】
図5(a)に示すように、発光装置の上面から上方に距離L1までの範囲では、放射された赤色の光と黄色の光とは分離している。
また、発光装置の上面から上方に距離L1からL2およびL3までの範囲では、放射された赤色の光と黄色の光とは一部で分離して残っているが、残りは赤色の光と黄色の光とが左右で混合している。なお、L3以上の範囲については以下同様である。
【0098】
比較例の発光装置の上面から上方に距離L3の位置に見える光の状態の模式図を
図5(b)に示す。
図5(b)に示すように、視野の中心の領域には、縦長の帯状に、赤色の光と黄色の光とが混合している領域が現れる。
また、視野の左側の領域には、縦長の帯状に、放射された黄色の光の領域が現れる。
さらに、視野の右側の領域には、縦長の帯状に、放射された赤色の光の領域が現れる。
【0099】
つまり、視野の中心ほど光が混合される割合が高くなっているものの、
図4に示すドットの領域は現れず、かつ、それぞれの光の領域は縦長の帯状である点が相違する。
ここで、
図4に示すドットの領域が現れないことは、比較例の発光装置の上面から上方に距離L2の位置を越えた範囲においても、放射された赤色の光だけの領域が現れ続けていることを意味する。つまり、左側は、黄色光の強度が強く、右側は赤色光の強度が強いという偏りが生じる。そのため、比較例の発光装置の構造では、壁106の中心から左右に放射する方向に沿って、赤色と黄色とを混合した割合が異なり、左右均等に発光することができず、色ムラが生じる。特に、各封止部材に複数の発光素子を配置する場合には、各封止部材の面積が増大し、このような色ムラはさらに顕著となる。これに対して、
図4(a)に示す発光装置は、蛍光体7を含有した封止部材4の両側に、蛍光体8を含有した封止部材5が封止部材4と同心形状に配置されているので、
図4(b)に示すように、封止部材4の中心から放射する方向に沿って、赤色と、黄色とを混合した割合が等しく、均等に発光することができ、色ムラを低減することができる。このような構成は、特に、各封止部材に複数の発光素子を配置する発光装置に適している。
【0100】
次に、従来の蛍光体ブレンド型の発光装置と性能を比較する。
ここでは、発光装置1において、基材2の中央領域に配置された発光素子3を被覆する封止部材4が含有する蛍光体7を、赤色蛍光体の一例であるSCASNとする。また、基材2の周辺領域に配置された発光素子3を被覆する封止部材5が含有する蛍光体8を、黄色蛍光体の一例であるYAGとする。
【0101】
図6に蛍光体の発光スペクトルを示す。
図6のグラフの横軸は、480nm以上の範囲において光の波長[nm]を示し、縦軸は任意単位で相対発光強度[a.u.]を示している。
図6(a)においてS01で示す曲線は、SCASNの発光スペクトルを示している。図示するようにSCASNの発光スペクトルは、約630nm付近にピークを有している。
図6(a)においてS02で示す曲線は、YAGの発光スペクトルを示している。図示するようにYAGの発光スペクトルは、約550nm付近にピークを有している。
【0102】
ここで、
図6(a)のグラフは、SCASNが単独で存在する場合の発光スペクトルと、YAGが単独で存在する場合の発光スペクトルとを、相対発光強度を合わせた上で、形式的に重ねて表示したものである。図示するように、SCASNの発光スペクトルと、YAGの発光スペクトルとは、約530〜730nmの波長範囲で重なりが生じ、約600nmの波長にてほぼ等しい発光強度を有している。
【0103】
図6(b)に示すグラフは、
図6(a)に示すグラフと同様に作成したものであるが、下記の点で相違する。第1の相違点は、
図6(b)においてS02bで示す曲線は、YAGの発光がSCASNに吸収される場合の発光スペクトルを模式的に示している。なお、SCASNの吸収スペクトルは、
図6(b)においてS04で示す。
図6(b)に示すように、YAGの発光スペクトルは、約550nm付近にピークを有している点は共通するが、ピーク近傍の約450〜500nm(緑の波長に対応する所定波長範囲)の相対発光強度が約30%程度減少している。これは、長波長側のSCASNによって、短波長側のYAGの発光する光が吸収されて、YAGの発光スペクトルが変化したことを表している。
【0104】
第2の相違点は、
図6(b)においてS03で示す曲線が付加されている。S03で示す曲線は、緑色蛍光体であるクロロシリケートが単独で存在する場合の発光スペクトルを模式的に示している。図示するようにクロロシリケートの発光スペクトルは、約530nm付近にピークを有している。クロロシリケートは、YAGの発光する光が吸収される影響を相殺するために加えるものである。
【0105】
ここで、
図6(b)のグラフは、SCASNが単独で存在する場合の発光スペクトルと、SCASNと共にブレンドされて発光の一部が吸収される場合のYAGの発光スペクトルと、クロロシリケートが単独で存在する場合の発光スペクトルとを、相対発光強度を合わせた上で、形式的に重ねて表示したものである。なお、
図6(b)には、SCASNの吸収スペクトルも示した。
【0106】
本発明の実施形態に係る発光装置1は、発光素子3の光と、壁6の内側に設けられた封止部材4に含有されたSCASNで波長変換された光と、壁6の外側に設けられた封止部材5に含有されたYAGで波長変換された光と、が混合した光を発光する。この発光装置1が発光する光の発光スペクトル(実施例)を測定した。
また、蛍光体ブレンド型の比較例の発光装置として、SCASN、YAGおよびクロロシリケートの3種類をブレンドした封止部材で発光素子を被覆した発光装置が発光する光の発光スペクトル(実施例)を測定した。比較結果を
図7に示す。
【0107】
図7のグラフの横軸は、350nm以上の範囲において光の波長[nm]を示し、縦軸は任意単位で相対発光強度[a.u.]を示している。
図7においてS11で示す実線の曲線は、実施例を示し、S12で示す破線の曲線は、比較例を示している。実施例も比較例も約610nm近辺の波長にてピークを有している。これは、
図6(a)に示すように、SCASNの発光スペクトルと、YAGの発光スペクトルとが、約600nmの波長にて重なり、かつ、ほぼ等しい発光強度を有していることを反映している。なお、
図7において約450nm付近のピークは、発光素子の発光波長を反映している。
【0108】
S11で示す実線の曲線は、S12で示す破線の曲線と同様に、530nm付近に緩やかなピークを有している。このピーク付近における発光は、S12で示す比較例の発光装置においては、
図6(b)のS03で示すクロロシリケートによって補強されたものであるが、S11で示す本発明の発光装置1においては、クロロシリケートを含有していない状態で、同様の結果が得られている。
【0109】
より具体的には、大局的に、S11で示す実線の曲線と、S12で示す破線の曲線とは、一方と他方とがほぼ一致し、一致しないときであっても一方が他方を上回る波長領域と、他方が一方を上回る波長領域とがほぼ等しい。したがって、すべての波長範囲で概ね一致している。演色性についての平均演色評価数(Ra)は、本発明の実施形態に係る発光装置1と、3種類の蛍光体をブレンドした比較例の発光装置とで、ほぼ同程度である。さらに、発光効率(lm/w)は、本発明の実施形態に係る発光装置1が、従来の発光装置に比べて約16%向上している。
【0110】
第1実施形態によれば、発光装置1は、壁6を仕切りとして異なる蛍光体7,8を別々にそれぞれが含有した封止部材4,5を分離して同心形状となるように設けたので、従来の蛍光体分離型の発光装置よりも色ムラが低減すると共に、従来の3種類の蛍光体をブレンドした発光装置よりも発光効率を向上させることができる。
【0111】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る発光装置1Aについて
図8を参照して説明する。なお、前記した発光装置1と同一構成のものについては同一の符号を付して、以下では主に相違点についてのみ説明する。
図1に示す発光装置1は、封止部材4,5を透過して平面で視た場合、複数の発光素子3の実装エリアを矩形であるものとして説明したが、封止部材4,5を透過して平面で視た場合、複数の発光素子3の実装エリアを円形としてもよい。この場合の発光装置1Aを平面視で簡略化して
図8に示す。
【0112】
図8に示すように、発光装置1Aでは、封止部材4が基材2上に円形状に形成されている。これに対応して、封止部材4で被覆される複数の発光素子3の実装エリアは円形状に形成されている。また、
図8に示すように、壁6が基材2上において封止部材4を取り囲むように円環状に形成されている。これに対応して、封止部材5で被覆される複数の発光素子3の実装エリアは円環状に形成されている。また、
図8に示すように、壁9が基材2上において封止部材5を取り囲むように円環状に形成されている。なお、
図8において、中心から各頂点方向に向いた4本の白抜き矢印の方向および長さは、円形状の実装エリアに配置されたすべての発光素子3(
図8では封止されているため不図示)が発光する光の混ざり方および広がり方が水平方向のどの方向でも均一であることを示している。
【0113】
ここで、
図2に対応させて、封止部材4,5を透過して平面で視た場合の複数の発光素子3の実装エリアの一例を
図9に示す。なお、
図9に示す例は、
図8に模式的に示した発光装置とは細部が異なるので異なる符号1Bを付した。この例では、発光装置1Bの壁9は、配線部23b,24bの一部、保護素子25およびこれらに接続されるワイヤ13を覆うように形成されている。なお、
図9に示す発光装置1Bにおいて、
図2に示す発光装置1と同一構成のものについては同一の符号を付して、説明を省略する。なお、
図9に示す発光装置1Bにおいては、内側の壁6が外側の壁9よりも幅が小さいが、壁6の幅を壁9の幅と同程度とすることもできる。
【0114】
保護素子25は、実装エリア11,12に実装された複数の発光素子3を、過大な電圧印加による素子破壊や性能劣化から保護するための素子である。保護素子25は、具体的には、規定電圧以上の電圧が印加されると通電状態になるツェナーダイオード(Zener Diode)である。保護素子25は、図示は省略したが、前記した発光素子3と同様にp電極とn電極とを有する半導体素子であり、発光素子3のp電極とn電極に対して逆並列となるように、ワイヤ13によって負極24の配線部24bと電気的に接続される。
なお、
図9に示す符号29は、発光素子3のボンディング位置を認識するための認識マークであり、めっき等により形成される。
【0115】
第2実施形態によれば、発光装置1A,1Bは、複数の発光素子3の実装エリアを円形としたので、基材2の中心に配設された複数の発光素子を封止する封止部材4が円形状に形成され、かつ、封止部材5が基材2上に円環状に形成されているので、封止部材4の中心から放射する方向に沿って、長波長側の蛍光体による色と、短波長側の蛍光体による色とを混合した割合が等しく、かつ、周方向に沿って、色を混合した割合が略等しくなる。したがって、均等に発光することができ、色ムラを低減することができる。
【0116】
(第2実施形態の変形例)
図示を省略するが、同様に、発光装置1を封止部材4,5を透過して平面で視た場合、複数の発光素子3の実装エリアを楕円形状としてもよい。この場合、封止部材4が基材2上に楕円形状に形成される。これに対応して、封止部材4で被覆される複数の発光素子3の実装エリアは楕円形状に形成される。また、壁6が基材2上において封止部材4を取り囲むように楕円の環形状に形成される。これに対応して、封止部材5で被覆される複数の発光素子3の実装エリアは楕円の環形状に形成される。また、壁9が基材2上において封止部材5を取り囲むように楕円の環形状に形成される。
【0117】
第2実施形態の変形例によれば、同様に、発光装置1は、基材2の中心に配設された複数の発光素子を封止する封止部材4が楕円形状に形成され、かつ、封止部材5が基材2上に楕円の環形状に形成されているので、封止部材4の中心から放射する方向に沿って、長波長側の蛍光体による色と、短波長側の蛍光体による色とを混合した割合が等しく、かつ、周方向に沿って、色を混合した割合が、矩形の実装エリアの場合よりも緩やかに変化する。したがって、均等に発光することができ、色ムラを低減することができる。
【0118】
(第3実施形態)
第3実施形態は、第1実施形態と同様の構成なので同様な構成には同様の符号を付して
図1および
図2を用いて説明する。発光装置1が備える複数の発光素子3は、蛍光体7および蛍光体8を励起することができれば、必ずしも単一の素子である必要はない。第3実施形態の発光装置1は、例えば、蛍光体8(例えば黄色蛍光体)の波長よりも短い波長(例えば青色)を発光する複数の発光素子(第1発光素子)と、この第1発光素子の発光波長(例えば青色)と蛍光体8の発光波長(例えば黄色)との間の波長(例えば青緑色や緑色)を発光する複数の発光素子(第2発光素子)とを備えることとした。
【0119】
第1発光素子は、例えば、青色発光素子とすることができる。第2発光素子は、例えば、青緑色発光素子や緑色発光素子とすることができる。より具体的には、第1発光素子としては、発光波長が445nm〜465nmのものを用い、第2発光素子としては、発光波長が495nm〜520nmのものを用いることができる。第2発光素子としては、少なくとも第1発光素子と発光波長が異なるものが選択され、さらには、蛍光体を励起しないもの、少なくとも第1発光素子よりも蛍光体を励起する割合(吸収される割合)の少ないものを選択することが好ましい。これによって、第2発光素子の発光が蛍光体に吸収されることなく外部に取り出すことができるため、光の取り出し効率が向上し、発光効率が向上した高演色性の発光装置を得ることができる。この場合、封止部材4は第1発光素子を被覆しており、封止部材5は第1発光素子および第2発光素子を被覆していることが好ましい。
図2に封止部材4,5を透過して平面視で示す複数(例えば、9行×10列の合計90個)の発光素子3の例において、第1行目および第9行目のハッチングを付した20個を、第2発光素子とし、かつ、他の70個を第1発光素子とすることができる。
【0120】
第3実施形態によれば、発光装置1は、発光面の平面視において、壁6の内側に配置された封止部材4が含有する蛍光体7によって、第1発光素子が発光する光が発光する光が波長変換されると共に、壁6の外側に配置された封止部材5が含有する蛍光体8によって、第1発光素子が発光する光と、第2発光素子が発光する光と、が別々に波長変換される。したがって、発光装置1は、第2発光素子の個数や配置を適宜変更することで、発光面全体としての発光スペクトルが補正されて、演色性を容易に向上させることができる。
【0121】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。すなわち、前記に示す発光装置の各形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置を例示するものであって、本発明は、発光装置を前記の各形態に限定するものではない。また、特許請求の範囲に示される部材等を、実施の形態の部材に特定するものではない。特に、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0122】
例えば、各実施形態では、蛍光体7の発光波長が蛍光体8の発光波長よりも長いものとして説明したが、蛍光体8の発光波長が蛍光体7の発光波長よりも長いものとしてもよい。このように構成した場合、実装エリア11の広さは、実装エリア12の広さよりも広いことが好ましく、また、実装エリア11に実装された発光素子3の個数は、実装エリア12に実装された発光素子3の個数よりも多いことが好ましい。すなわち、蛍光体の発光波長が長い方を含有した封止部材の側にて被覆する発光素子3の実装エリアの方を広くして、多くの個数の発光素子3を載置することが好ましい。なお、この場合であっても発光素子3の実装エリアの形状は前記した矩形や円形等のいずれでも構わない。
【0123】
また、各実施形態では、光反射性の部材からなる2つの壁6,9を備えることとしたが、例えば、封止部材5が粘度の高い樹脂で形成される場合、内側の壁6だけを備えることとしてもよい。また、発光装置の平面視で、壁6は封止部材4と同心形状でなくても構わない。また、壁6の形状と、封止部材4の外形とは、必ずしも一致していなくてもよい。例えば、封止部材4,5の外形が円形で、壁6の内側の形状が円形かつ壁6の外側の形状が正8角形等であってもよい。
【0124】
また、例えば、各実施形態では、基材2として、基板を用いた場合について説明したが、基材2としては樹脂パッケージ等でもよい。
また、各実施形態では、発光素子3として、フェースアップ(FU)素子を用いた場合について説明したが、フェースダウン(FD)素子や対向電極構造の素子であってもよい。なお、発光素子や発光装置の形態によっては、導電部材20、保護素子25、ワイヤ13、金属膜等は備えない構成のものであってもよく、また、基材作製工程、めっき工程、ワイヤボンディング工程、保護素子接合工程等を含まない製造方法であってもよい。
【0125】
さらに、発光装置の製造方法においては、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、前記した工程以外の工程を含めてもよい。例えば、基材を洗浄する基材洗浄工程や、ごみ等の不要物を除去する不要物除去工程や、発光素子や保護素子の載置位置を調整する載置位置調整工程等、他の工程を含めてもよい。