特許第5740977号(P5740977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5740977感光性ポリイミド前駆体及び感光性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740977
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】感光性ポリイミド前駆体及び感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20150611BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20150611BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20150611BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20150611BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   G03F7/027 514
   G03F7/027 502
   G03F7/004 501
   C08G73/10
   H01L23/14 R
   H01L21/30 502R
【請求項の数】5
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2010-294036(P2010-294036)
(22)【出願日】2010年12月28日
(65)【公開番号】特開2012-141447(P2012-141447A)
(43)【公開日】2012年7月26日
【審査請求日】2013年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】田中 明
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−187613(JP,A)
【文献】 特開2011−192773(JP,A)
【文献】 特開2011−192774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00−73/26
G03F 7/00− 7/42
H01L 21/00−23/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖中に、式(a)
【化1】
(式中、Rは4価の有機基を表す。)で表されるテトラカルボン酸又はその酸無水物と、式(b)
【化2】
(式中、Rは芳香族基を有する2価の有機基を表す。)で表される芳香族ジアミンとを重縮合させることによって得られる、式(1)
【化3】
(式中、R、Rは前記と同じ意味を表す。)
で表される繰り返し単位を有し、
その両末端に化学線官能基が導入された感光性ポリイミド前駆体であって、
前記式(a)で表されるテトラカルボン酸又はその酸無水物が、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸、及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる剛直構造の芳香族テトラカルボン酸又はその酸無水物を、前記テトラカルボン酸又はその酸無水物全モル数に対し70〜100モル%含有するものであり、
前記式(b)で表される芳香族ジアミンが、式(2)
【化4】
(式中、r、r、r、r、r、r、r、r、r、及びr10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1〜6アルキル基、C1〜6アルコキシ基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)で表されるチオフェン含有芳香族ジアミンと、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−5,5’−ビスベンゾオキサゾール、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−5,5’−ビスベンズイミダゾール、3,6−(4−アミノフェニル)ピリダジン、及び4,4’−ジアミノベンズアニリドからなる群から選ばれる剛直構造の芳香族ジアミンとを、(式(2)で表されるチオフェン含有芳香族ジアミン)と(前記剛直構造の芳香族ジアミン)とのモル比で、3:97〜30:70の割合で含有するものであり、かつ、
前記化学線官能基が、式(c)
【化5】
(式中、Aは光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する基を表す。)で表される基、又は、式(d)
【化6】
(式中、Aは光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する基を表す。)で表される基であることを特徴とする感光性ポリイミド前駆体。
【請求項2】
式(3)
【化7】
〔式中、R、Rは前記と同じ意味を表す。Zは、式(4)
【化8】
(式中、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基を表し、Xは、−C(=O)−O−、−O−、−C(=O)−CH−O−、−O−C(=O)−O−、−SO−、−SO−、又は単結合を表し、jは0又は1であり、kは1〜3の整数である。kが2又は3のとき、式(e)
【化9】
で表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。)で表される化学線官能基を示し、iは5〜10000の整数を表す。〕で表される請求項1に記載の感光性ポリイミド前駆体。
【請求項3】
式(5)
【化10】
〔式中、R、Rは前記と同じ意味を表す。Zは、式(6)
【化11】
(式中、R、R、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立して、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基を表し、qは0又は1である。)で表される化学線官能基を示し、pは5〜10000の整数を表す。〕で表される化合物である請求項1に記載の感光性ポリイミド前駆体。
【請求項4】
(A)請求項1に記載の感光性ポリイミド前駆体、(B)光重合性官能基を有する感光助剤、(C)1H−テトラゾール誘導体、(D)光重合開始剤、及び(E)溶剤を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(B)光重合性官能基を有する感光助剤が、式(7)
【化12】
(式中、s、tはそれぞれ独立して、2〜16の整数を表し、R13、R14はそれぞれ独立して、水素原子、カルボキシル基、−CONH又はシアノ基を表し、R15、R16はそれぞれ独立して、水素原子又はC1〜5アルキル基を表す。)で表されるチオフェンカルボン酸エステル誘導体を含有することを特徴とする請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張率と残留応力が小さく、銅基板や銅配線等との密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド樹脂膜を形成することができ、しかもシリコンウエハ上に膜を形成したとき、シリコンウエハに生じる反りが小さい感光性ポリイミド前駆体、及びこの感光性ポリイミド前駆体を含有する感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜を形成する感光性樹脂組成物として、電気的特性、機械的特性、及び耐熱性に優れる感光性ポリイミド樹脂が、好適に使用されている。
しかしながら、ポリイミド樹脂からなる膜(ポリイミド樹脂膜)には、次のような問題がある。すなわち、ポリイミド樹脂膜の熱膨張率は、一般に、20ppm/℃以上である。これに対して、金属基板の熱膨張率は、通常、20ppm/℃以下であり、シリコンウエハの熱膨張率は、約3〜4ppm/℃である。このように、金属配線や各種基板の熱膨張率は、一般にポリイミド樹脂膜のそれよりも小さい。
基板上にポリイミド樹脂膜を形成したとき、基板とポリイミド樹脂膜との間の熱膨張率の差が大きい場合においても、半導体素子の製造工程や使用時における加熱や発熱により、クラックの発生、配線の断絶、基板の反り等が生じるおそれがある。また、ポリイミド樹脂膜の残留応力が大きいと、同様の問題が生じやすい。特に、最近ではシリコンウエハの大型化(例えば、直径300mmの基板)に伴い、ポリイミド樹脂から形成されたパッシベーション膜に起因する応力によって、基板に反りが発生することが大きな問題となっている。
このように、ポリイミド樹脂膜を絶縁膜とする多層回路基板の製造も検討されている現在、極めて薄いシリコンウエハ(例えば、厚み50μm以下の基板)を用いた半導体素子において、基板の反りの低減は、極めて重要な課題の一つとなっている。
【0003】
また、最近注目されている、使用最高温度が175℃以上となる薄板化シリコンパワー半導体素子や、高耐電圧次世代パワー半導体素子(半導体基板としてSiC,GaNを使用するもの)等の素子封止絶縁膜には、さらなる高耐熱性、高温密着性、高絶縁破壊電圧性等の特性が求められている。
さらに、デバイス配線材料においては、従来のアルミ配線から銅配線への切り替えが進んでいるが、従来の感光性ポリイミドは一般的に銅との密着性に難点があり、改良が求められている。
【0004】
このような課題の解決策として、熱膨張率の低いポリイミド樹脂膜で半導体素子の表面を被覆し、基板と絶縁膜との界面で生じる熱応力を緩和して、半導体素子の使用時や製造時における絶縁膜のクラックや、基板の反りを抑制する試みが行われている。
【0005】
例えば、特許文献1には、シリコンウエハに形成された回路上に、主鎖中にテトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミンとの重縮合生成物から形成された繰り返し単位を有し、その両末端に化学線官能基を有する感光性ポリイミド前駆体を成膜することが開示されている。またこの文献には、このようにして成膜されたポリイミド樹脂膜の熱膨張率は、20ppm/℃以下であることが好ましいと記載されている。
【0006】
一方、非特許文献1には、特許文献1でシリコン基板と感光性ポリイミドを用いた場合、パターン形成時に架橋助剤の表面ブリードに起因すると考えられる膜表面の現像難溶化層の存在が報告されている。また、特許文献1に開示されている感光性ポリイミド樹脂組成物を使用した場合においても同様に、架橋助剤であるトリエチレングリコールジアクリレートを用いると、パターン表面に現像時難溶化層が存在し、この層を除去するために現像時間が長くなるという問題があった。現像液に長く曝されると膜特性が劣化するため好ましくない。特に密着性に課題がある銅基板(銅配線)上でのパターン形成においてはなおさらである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−285129号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】熊本大学大学院 自然科学研究科 平成17年2月修士論文(感光性を有する低熱膨張型ポリイミドの合成と評価)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来技術に鑑みてなされたものであり、熱膨張率と残留応力が小さく、銅基板や銅配線等との密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド樹脂膜を形成することができ、しかもシリコンウエハ上に膜を形成したとき、シリコンウエハに生じる反りが小さい感光性ポリイミド前駆体、及び、現像時に難溶化層を形成しない、銅基板密着性に優れたポリイミド樹脂膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した。その結果、特定のテトラカルボン酸又はその酸無水物と、特定の芳香族ジアミンとを重縮合させることによって得られる繰り返し単位を有し、その両末端に特定の化学線官能基が導入された、後述する式(3)又は(5)等で表される感光性ポリイミド前駆体は、熱膨張率と残留応力が小さく、現像時に難溶化層を形成せず、銅基板や銅配線等との密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド樹脂膜を形成することができ、しかもシリコンウエハ上に膜を形成したとき、シリコンウエハに生じる反りが小さいことを見出した。さらに、この感光性ポリイミド前駆体、及び、感光助剤として後述する式(7)で表されるチオフェンカルボン酸エステル誘導体等を含有する感光性樹脂組成物は、相溶性に優れ、銅との密着性に極めて優れるポリイミド樹脂膜を形成することができることを見出し、これらの知見を一般化することにより本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(3)の感光性ポリイミド前駆体が提供される。
(1)主鎖中に、式(a)
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、Rは4価の有機基を表す。)で表されるテトラカルボン酸又はその酸無水物と、式(b)
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、Rは芳香族基を有する2価の有機基を表す。)で表される芳香族ジアミンとを重縮合させることによって得られる、式(1)
【0016】
【化3】
【0017】
(式中、R、Rは前記と同じ意味を表す。)
で表される繰り返し単位を有し、
その両末端に化学線官能基が導入された感光性ポリイミド前駆体であって、
前記式(a)で表されるテトラカルボン酸又はその酸無水物が、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸又はその酸無水物を、前記テトラカルボン酸又はその酸無水物の全モル数に対し50〜100モル%含有するものであり、
前記式(b)で表される芳香族ジアミンが、式(2)
【0018】
【化4】
【0019】
(式中、r、r、r、r、r、r、r、r、r、及びr10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1〜6アルキル基、C1〜6アルコキシ基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。)で表されるチオフェン含有芳香族ジアミンと、剛直構造の芳香族ジアミンとを、(式(2)で表されるチオフェン含有芳香族ジアミン)と(剛直構造の芳香族ジアミン)とのモル比で、3:97〜50:50の割合で含有するものであり、かつ、
前記化学線官能基が、式(c)
【0020】
【化5】
【0021】
(式中、Aは光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する基を表す。)で表される基、又は、式(d)
【0022】
【化6】
【0023】
(式中、Aは光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する基を表す。)で表される基であることを特徴とする感光性ポリイミド前駆体。
(2)式(3)
【0024】
【化7】
【0025】
〔式中、R、Rは前記と同じ意味を表す。Zは、式(4)
【0026】
【化8】
【0027】
(式中、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基を表し、Xは、−C(=O)−O−、−O−、−C(=O)−CH−O−、−O−C(=O)−O−、−SO−、−SO−、又は単結合を表し、jは0又は1であり、kは1〜3の整数である。kが2又は3のとき、式(e)
【0028】
【化9】
【0029】
で表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。)で表される化学線官能基を示し、iは5〜10000の整数を表す。〕で表される(1)に記載の感光性ポリイミド前駆体。
(3)式(5)
【0030】
【化10】
【0031】
〔式中、R、Rは前記と同じ意味を表す。Zは、式(6)
【0032】
【化11】
【0033】
(式中、R、R、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立して、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基を表し、qは0又は1である。)で表される化学線官能基を示し、pは5〜10000の整数を表す。〕で表される化合物である(1)に記載の感光性ポリイミド前駆体。
【0034】
本発明の第2によれば、下記(4)、(5)の感光性樹脂組成物が提供される。
(4)(A)(1)に記載の感光性ポリイミド前駆体、(B)光重合性官能基を有する感光助剤、(C)1H−テトラゾール誘導体、(D)光重合開始剤、及び(E)溶剤を含有する感光性樹脂組成物。
(5)(B)光重合性官能基を有する感光助剤が、式(7)
【0035】
【化12】
【0036】
(式中、s、tはそれぞれ独立して、2〜16の整数を表し、R13、R14はそれぞれ独立して、水素原子、カルボキシル基、−CONH又はシアノ基を表し、R15、R16はそれぞれ独立して、水素原子又はC1〜5アルキル基を表す。)で表されるチオフェンカルボン酸エステル誘導体を含有することを特徴とする(4)に記載の感光性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0037】
本発明の感光性ポリイミド前駆体を用いることにより、熱膨張率と残留応力が小さく、銅基板や銅配線等との密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド樹脂膜を形成することができる。
また、本発明の感光性ポリイミド前駆体を用いて、シリコンウエハ上に膜を形成した場合、特にシリコンウエハの片面にのみ膜を形成した場合であっても、シリコンウエハに生じる反りが小さい。
本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、熱膨張率と残留応力が小さく、現像時に難溶化層を形成せず、銅基板や銅配線等との密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド樹脂膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を、1)感光性ポリイミド前駆体、及び、2)感光性樹脂組成物に項分けして、詳細に説明する。
【0039】
1)感光性ポリイミド前駆体
本発明の感光性ポリイミド前駆体は、
(α)主鎖中に、前記式(a)で表されるテトラカルボン酸又はその酸無水物と、前記式(b)で表される芳香族ジアミンとを重縮合させることによって得られる、前記式(1)で表される繰り返し単位を有し、その両末端に化学線官能基が導入された感光性ポリイミド前駆体であって、
(β)前記テトラカルボン酸又はその酸無水物が、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸又はその酸無水物を、前記テトラカルボン酸又はその酸無水物全モル数に対し50〜100モル%含有するものであり、
(γ)前記芳香族ジアミンが、前記式(2)で表されるチオフェン含有芳香族ジアミンと、剛直構造の芳香族ジアミンとを、(式(2)で表されるチオフェン含有芳香族ジアミン)と(剛直構造の芳香族ジアミン)とのモル比で、3:97〜50:50の割合で含有するものであり、かつ、
(δ)前記化学線官能基が、前記式(c)で表される基、又は、式(d)で表される基であることを特徴とする。
【0040】
(α)前記式(1)で表される繰り返し単位
本発明の感光性ポリイミド前駆体は、主鎖中に、前記式(a)で表されるテトラカルボン酸又はその酸無水物(以下、「テトラカルボン酸等(a)」ということがある。)と、前記式(b)で表される芳香族ジアミン(以下、「芳香族ジアミン(b)」ということがある。)とを重縮合させることによって得られる、前記式(1)で表される繰り返し単位を有する。
【0041】
(a)テトラカルボン酸等
本発明において、テトラカルボン酸等(a)は、前記式(a)で表される化合物(又は化合物群)であり、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸又はその酸無水物(以下、「剛直構造の芳香族テトラカルボン酸等」ということがある。)を、テトラカルボン酸等(a)の全モル数に対し50〜100モル%、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは85〜100モル%含有するものである。なお、本明細書においてテトラカルボン酸又はその酸無水物をまとめて「テトラカルボン酸等」ということがある。
本明細書において、「剛直構造」とは、運動性が低く、自身では湾曲し難い、棒状の剛直鎖からなる構造を意味する。剛直構造の芳香族テトラカルボン酸又はその酸無水物とは、(x)単環若しくは縮合環からなる芳香族環を有するテトラカルボン酸又はその酸無水物、及び(y)前記(x)の芳香族環が単結合で結合した構造を有するテトラカルボン酸又はその酸無水物をいう。(x)としては、例えば、ピロメリット酸やピロメリット酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸およびナフタレンテトラカルボン酸二無水物が、(y)としては、例えば、ビフェニルテトラカルボン酸やビフェニルテトラカルボン酸二無水物が、挙げられる。テトラカルボン酸等(a)中、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸等の含有割合が50モル%より小さいと、形成されるポリイミド樹脂膜の破断強度や破断伸びも低下する。また、熱膨張率や残留応力が増大し、シリコンウエハの反りを抑制することが困難となる。
【0042】
テトラカルボン酸等(a)としては、例えば、以下のような化合物が挙げられる。
剛直構造の芳香族テトラカルボン酸等としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,5,8−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−テトラクロロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3”,4,4”−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2”,3,3”−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3”,4”−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−プロパン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ペリレン−2,3,8,9−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−4,5,10,11−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−5,6,11,12−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,7,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,9,10−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその水添加物;シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクタ−7−エン−2−エキソ,3−エキソ,5−エキソ,6−エキソテトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−エキソ,3−エキソ,5−エキソ,6−エキソテトラカルボン酸2,3:5,6−二無水物等の脂環式酸二無水物;ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物等の複素環誘導体酸二無水物;これらに対応するテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0043】
これらの中でも、熱膨張率と残留応力が小さく、銅基板等との密着性に優れる膜をより簡便に得られることから、本発明においては、剛直構造の芳香族テトラカルボン酸等として、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ビフェニルテトラカルボン酸、及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0044】
本発明に用いるテトラカルボン酸等(a)は、前記剛直構造の芳香族テトラカルボン酸等の他、屈曲性を有するテトラカルボン酸等(柔軟構造のテトラカルボン酸等)を含んでいてもよい。柔軟構造のテトラカルボン酸等としては、2つ以上の芳香族環が、カルボニル基(>C=O)や酸素原子(−O−)により結合した構造の芳香族テトラカルボン酸等が挙げられる。なかでも、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を用いるのが好ましい。
【0045】
(b)芳香族ジアミン
本発明において用いる芳香族ジアミン(b)は、前記式(2)で表されるチオフェン含有芳香族ジアミン(以下、「芳香族ジアミン(2)」ということがある。)と、剛直構造の芳香族ジアミンとを、(芳香族ジアミン(2))と(剛直構造の芳香族ジアミン)とのモル比で、3:97〜50:50、好ましくは3:97〜30:70の割合で含有するものである。
前記式(b)中、Rとしての「2価の有機基」としては、例えば、前記式(2)で表されるチオフェン含有芳香族ジアミンの相当部分の他、剛直構造の芳香族ジアミンの剛直構造部分が挙げられる。剛直構造の芳香族ジアミンにおける「剛直構造」とは、棒状の剛直鎖を有する構造をいう。剛直構造の芳香族ジアミンは、剛直構造を有する点で、主鎖にエーテル結合やメチレン(−CH−)基等の単結合を有する屈曲性のある芳香族ジアミンとは区別される。
【0046】
芳香族ジアミン(b)として、芳香族ジアミン(2)を上記の割合で用いることにより、本発明の目的とする、熱膨張率と残留応力が小さく、銅基板等との密着性に優れ、破断強度や破断伸びが低下することなく、シリコンウエハの反りを抑制することのできる膜を簡便に得ることができる。
【0047】
前記式(2)中、r〜r10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1〜6アルキル基、C1〜6アルコキシ基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、及びC1〜6アルキル基などが挙げられる。
【0048】
〜r10のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。C1〜6アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基等が挙げられる。C1〜6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。置換基を有していてもよいフェニル基としては、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基等が挙げられる。
これらの中でも、r〜r10は、すべて水素原子であるのが好ましい。
芳香族ジアミン(2)は、例えば、下記に示す方法により製造することができる。
【0049】
【化13】
【0050】
(式中、r〜r10は前記と同じ意味を表し、Xは臭素原子等のハロゲン原子を表す。)
すなわち、式(f)で表される4−ニトロフェナシルハライドと硫化ナトリウム(水和物であっても良い。)とを、塩基の存在下で反応させて、式(g)で表されるジケトスルフィド誘導体を得た後、さらに、このものに式(h)で表されるグリオキサール類を反応させて、式(i)で表されるニトロベンゾイルチオフェン誘導体を得、このものを還元することにより目的物を得ることができる。
いずれの反応においても、反応は、0℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で円滑に進行する。
反応終了後は、常法に従い目的物を単離することができる。
【0051】
本発明に用いる剛直構造の芳香族ジアミンとしては、例えば、4,4′−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジトリフルオロメチルビフェニル、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−5,5’−ビスベンゾオキサゾール、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−5,5’−ビスベンズイミダゾール、3,6−(4−アミノフェニル)ピリダジン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、p−フェニレンジアミン(PPDA)、4,4’−ジアミノビフェニル、m−フェニレンジアミン、1−イソプロピル−2,4−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、4,4”−ジアミノ−p−テルフェニル、3,3”−ジアミノ−p−テルフェニル、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メテン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス(1,1−ジメチル−5−アミノペンチル)ベンゼン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、2,4−ジアミノトルエン、m−キシレン−2,5−ジアミン、p−キシレン−2,5−ジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0052】
これらの中でも、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−5,5’−ビスベンゾオキサゾール(略称=NPN)、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール(略称=OPO)、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−5,5’−ビスベンズイミダゾール、3,6−(4−アミノフェニル)ピリダジン(略称=DAPPZ)、4,4’−ジアミノベンズアニリド(略称=DABA)が好ましい。これらの化学式を下記に順に示す。
【0053】
【化14】
【0054】
【化15】
【0055】
【化16】
【0056】
【化17】
【0057】
【化18】
【0058】
また、本発明においては、前記芳香族ジアミンに加えて、形成されるポリイミド膜の柔軟性、金属や基板との密着性を高めるために、柔軟構造のジアミンを用いてもよい。
ここで、柔軟構造とは、前記剛直構造ではない意味である。
柔軟構造ジアミンを使用する場合、芳香族ジアミン(b)全体に対する柔軟構造ジアミンの割合は、通常30モル%以下、好ましくは20モル%である。
【0059】
柔軟構造ジアミンとしては、芳香族ジアミン(2)(例えば、2,5‐ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン)等の主鎖のヘテロ環に結合する置換基の結合位置がオルト位やメタ位となる構造を含有するジアミン;オキシジアニリン等の主鎖にエーテル構造を含有するジアミン;1,3−ジアミノプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等の主鎖にシロキサン構造を有するジアミン等が挙げられる。柔軟構造ジアミンの具体例としては、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、3,3’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、及び3,3’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0060】
本発明の感光性ポリイミド前駆体は、主鎖中に、前記テトラカルボン酸等(a)と、芳香族ジアミン(b)とを重縮合させることによって得られる、前記式(1)で表される繰り返し単位を有し、その両末端に化学線官能基が導入されたものである。
前記化学線官能基は、前記式(c)で表される基、又は前記式(d)で表される基である。前記式(c)、(d)中、A、Aはそれぞれ独立して、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する基を表す。
中でも、本発明の感光性ポリイミド前駆体としては、式(3)
【0061】
【化19】
【0062】
で表される化合物、又は、式(5)
【0063】
【化20】
【0064】
で表される化合物であるのが好ましい。
式(3)、(5)中、R、Rは前記と同じ意味を表し、i、pは5〜10000の整数を表す。i、pは、樹脂強度(膜機械特性)とワニスのハンドリングのし易さ(ワニスの粘度)のバランスから、好ましくは20〜500、より好ましくは30〜300である。
は、式(4)
【0065】
【化21】
【0066】
で表される化学線官能基を示す。
式(4)中、R〜Rは、それぞれ独立して、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基を表す。
【0067】
光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基としては、アクリロイルオキシメチレン基;メタクリロイルオキシメチレン基;置換基を有していてもよい、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、2−エチルブテニル基等のC2〜6のアルケニル基;等が挙げられる。C2〜6のアルケニル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;フェニル基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のC1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基等のC1〜4のアルコキシ基;等が挙げられる。
【0068】
Xは、−C(=O)−O−、−O−、−C(=O)−CH−O−、−O−C(=O)−O−、−SO−、−SO−、又は単結合を表し、−C(=O)−O−であるのが好ましい。
jは0又は1であり、kは1〜3の整数である。kが2又は3のとき、下記式
【0069】
【化22】
【0070】
で表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。また、該基の置換(結合)位置は、アミノ基に対してo−、m−、p−位の何れであっても構わない。
は、式(6)
【0071】
【化23】
【0072】
で表される化学線官能基を示す。
式中、R〜R12は、それぞれ独立して、前記R〜Rと同様の光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基を表し、qは0又は1である。また、下記式
【0073】
【化24】
【0074】
で表される基の置換(結合)位置は特に限定されない。
【0075】
本発明の感光性ポリイミド前駆体は、前記テトラカルボン酸等(a)と芳香族ジアミン(b)とを、常法により極性有機溶媒中で重縮合させることにより合成することができる。各モノマー〔前記テトラカルボン酸等(a)及び芳香族ジアミン(b)〕は、ほぼ等モルの割合で使用される。さらに、両末端に化学線官能基を導入するために、通常、これらモノマー成分の重縮合時に、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有し、かつ、テトラカルボン酸等(a)、又は芳香族ジアミン(b)と反応性を有する化合物を存在させる。
【0076】
両末端に化学線官能基Zを有する式(3)で表される化合物は、例えば、芳香族ジアミン(b)と後述のアミノベンゼン類との混合物に、テトラカルボン酸等(a)を加え、常法により重縮合反応させることにより得られる。この方法によると、安定して高分子量の式(3)で表されるポリマー化合物を得ることができる。
【0077】
より具体的には、(i)テトラカルボン酸等(a)1モルに対して、芳香族ジアミン(b)を通常0.850〜0.990モル、好ましくは0.900〜0.970モルの割合で使用し、(ii)芳香族ジアミン(b)1モルに対して、アミノベンゼン類を通常0.400〜0.020モル、好ましくは0.110〜0.040モル、より好ましくは0.100〜0.050モルの割合で使用し、さらに、(iii)テトラカルボン酸等(a)1モルに対して、芳香族ジアミン(b)とアミノベンゼン類とを合計量で、通常1.100〜0.900モル、好ましくは1.100〜0.950モル、より好ましくは1.060〜0.990モルの割合で使用する。
【0078】
重縮合反応は、ポリイミドを合成する常法に従って、各成分をジメチルアセトアミド等の極性有機溶媒中で反応させればよい。
反応温度は、通常−20℃〜+80℃の範囲で、反応時間は0.5〜80時間の範囲である。
【0079】
モノマーの反応系への溶解性が低い場合は、モノマーが溶解できる温度まで昇温し、反応系内で溶解可能なオリゴマーとなるまで予備的な反応をさせるといった処理をすることもできる。ただし、本発明の感光性ポリイミド前駆体は、特定の合成法に限定されるものではない。
【0080】
用いるアミノベンゼン類としては、下記式(4−1)で表される化合物が挙げられる。
【0081】
【化25】
【0082】
(式中、R〜R、X、j及びkは前記と同じ意味を表す。)
式(4−1)で表される化合物の具体例としては、o−アミノ安息香酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、o−アミノ安息香酸[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、m−アミノ安息香酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、m−アミノ安息香酸[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安息香酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安息香酸[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル、5−アミノ−イソフタル酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]ジエステル、5−アミノ−イソフタル酸[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]ジエステル、o−アミノ安息香酸[ペンタキス(メタクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、o−アミノ安息香酸[ペンタキス(アクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、m−アミノ安息香酸[ペンタキス(メタクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、m−アミノ安息香酸[ペンタキス(アクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安息香酸[ペンタキス(メタクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安息香酸[ペンタキス(アクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステル等が挙げられる。これらの中でも、p−アミノ安息香酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステルが、経済性、操作性、高感度、高解像度等の点で優れており、特に好ましい。
このようなアミノベンゼンカルボン酸エステル等のアミノベンゼン類は、特開平8−82931号公報に記載された方法に従って製造することができる。
【0083】
両末端に化学線官能基Zを有する式(5)で表される化合物は、例えば、芳香族ジアミン(b)に、トリメリット酸アンハイドライド[トリス(メタクロイル)ペンタエリスリトール]エステル等のトリメリット酸誘導体とテトラカルボン酸等(a)を加え、常法により縮合反応させることにより得られる。
また、式(5)で表される化合物は、テトラカルボン酸等(a)と芳香族ジアミン(b)とを常法により縮合反応させて得られたポリマーに、アミノベンゼンスルホン酸のような末端変性剤を後から加えて反応させることによっても製造することができる。これらの方法によれば、安定して高分子量の式(5)で表されるポリマー化合物を得ることができる。
【0084】
用いるトリメリット酸誘導体としては、下記式(6−1)で表される化合物が挙げられる。
【0085】
【化26】
【0086】
(式中、R〜R12、及びqは前記と同じ意味を表す。)
なかでも、下記式(6−2)
【0087】
【化27】
【0088】
(式中、Rは水素原子;又はメチル基、エチル基、n−プロピル基等のC1〜5アルキル基;を表す。)で表される化合物が好ましく、トリメリット酸アンハイドライド[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル〔前記式(6−2)中、R=Hの場合〕、トリメリット酸アンハイドライド[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル〔前記式(6−2)中、R=メチル基の場合〕が、経済性、操作性、高感度、高解像度等の点で優れており、特に好ましい。
【0089】
このようなトリメリット酸誘導体は、特開平8−95247号公報に記載された方法に従って合成することができる。
【0090】
両末端に式(6)で表される化学線官能基Zを導入した化合物は、芳香族ジアミン(b)に、トリメリット酸誘導体とテトラカルボン酸等(a)を加え、常法により縮合反応させるか、あるいは、芳香族ジアミン(b)とトリメリット酸誘導体との混合物に、テトラカルボン酸等(a)を加え、常法により縮合反応させることにより得ることができる。
【0091】
より具体的には、(i)芳香族ジアミン(b)1モルに対して、テトラカルボン酸等(a)を通常0.850〜0.990モル、好ましくは0.900〜0.970モルの割合で使用し(ii)テトラカルボン酸等(a)1モルに対して、トリメリット酸誘導体を通常0.400〜0.020モル、好ましくは0.110〜0.040モル、より好ましくは0.100〜0.050モルの割合で使用し、さらに、(iii)芳香族ジアミン(b)1モルに対して、テトラカルボン酸等(b)とトリメリット酸誘導体とを合計量で、通常1.100〜0.900モル、好ましくは1.100〜0.990モル、より好ましくは1.060〜1.020モルの割合で使用する。
【0092】
重縮合反応は、ポリイミドを合成する常法に従って、各成分をジメチルアセトアミド等の極性有機溶媒中で反応させればよい。反応温度は、通常−20℃〜+80℃の範囲で、反応時間は0.5〜80時間の範囲で行われる。
モノマーの反応系への溶解性が低い場合は、モノマーが溶解できる温度まで昇温し、反応系内で溶解可能なオリゴマーとなるまで予備的な反応をさせるといった処理をすることもできる。ただし、本発明の感光性ポリイミド前駆体は、特定の合成法に限定されるものではない。
【0093】
本発明の感光性ポリイミド前駆体を用いて形成されるポリイミド樹脂膜の熱膨張率は、通常2.0〜24ppm/℃、好ましくは2.5〜17ppm/℃であり、基板の熱膨張率に近いため、製造時や使用時に加熱や発熱によりクラックの発生、配線の断絶、基板の反り等が生じるおそれがない。熱膨張率は、後述の<熱膨張率の測定>に記載の方法により測定することができる。
【0094】
本発明の感光性ポリイミド前駆体を用いて形成されるポリイミド樹脂膜は、銅基板や銅配線等との密着性に優れる。密着性に優れることは、例えば、シリコンウエハ上に銅膜をスパッタプロセスで製膜して得た銅基板上に、ポリイミド樹脂膜を作製し、プレッシャークッカーテスト(121℃、2.1気圧、90℃、100時間)後にクロスカット剥離試験を行い剥離が無いこと等から確認することができる。
【0095】
2)感光性樹脂組成物
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)本発明の感光性ポリイミド前駆体、(B)光重合性官能基を有する感光助剤、(C)1H−テトラゾール誘導体、(D)光重合開始剤、及び(E)溶剤を含有することを特徴とする。
【0096】
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の感光性ポリイミド前駆体を含有する。従って、このものを用いることにより、熱膨張率と残留応力が小さく、銅基板や銅配線等との密着性に優れ、破断強度と破断伸びが大きいポリイミド樹脂膜を形成することができる。さらに、シリコンウエハ上に膜を形成したとき、シリコンウエハに生じる反りが小さい膜を形成することができる。
【0097】
(B)感光助剤
本発明の感光性樹脂組成物において用いる感光助剤は、光重合性官能基を有し、一般に光硬化モノマーとして使用されているものである。
例えば、特開平2004−285129公報に記載のもの、及び、式(7)
【0098】
【化28】
【0099】
で表されるチオフェンカルボン酸エステル誘導体等が挙げられる。
本発明においては、銅との密着性により優れる膜を形成できる観点から、前記式(7)で表されるチオフェンカルボン酸エステル誘導体を用いるのが特に好ましい。
【0100】
式(7)中、s、tはそれぞれ独立して、2〜16の整数を表し、R13、R14はそれぞれ独立して、水素原子、カルボキシル基、−CONH又はシアノ基を表し、
15、R16はそれぞれ独立して、水素原子;又は、メチル基、エチル基等のC1〜5アルキル基を表す。
【0101】
感光助剤の使用量は、用いる(A)本発明の感光性ポリイミド前駆体と相溶する限り特に限定されないが、感光性ポリイミド前駆体100重量部に対して、通常10〜50重量部、好ましくは15〜40重量部、より好ましくは20〜35重量部、特に好ましくは23〜28重量部である。感光助剤の使用量が多すぎる場合には、感光性ポリイミド前駆体の熱処理によるポリイミド化の際に分解・除去し難く、しかも膜の残留応力が高くなり、半導体素子基板にそり等の変形が生じやすくなるおそれがある。
【0102】
(C)1H−テトラゾール誘導体
本発明の感光性樹脂組成物には、(A)本発明の感光性ポリイミド前駆体、及び(B)光重合性官能基を有する感光助剤に加えて、さらに(C)1H−テトラゾール誘導体を含有する。
1H−テトラゾール誘導体を添加することにより、銅及び銅合金に対する腐食性を防止し、ひいては、形成されるポリイミド樹脂膜の基板に対する密着性の向上、感光性被膜の残膜防止等を図ることができる。
【0103】
1H−テトラゾール誘導体としては、1H−テトラゾール;5−メチル−1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール等の5置換−1H−テトラゾール;1−メチル−1H−テトラゾール等の1置換−1H−テトラゾール;1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール等の1置換−5置換−1H−テトラゾール;等が挙げられる。これらの中でも1H−テトラゾール、及び5置換−1H−テトラゾールが好ましい。
【0104】
1H−テトラゾール誘導体の使用量は、(A)感光性ポリイミド前駆体100重量部(固形分基準)に対して、通常0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.3〜3重量部である。この使用量が過小であると添加効果が得られず、逆に、過大であると効果が飽和する傾向がある。
【0105】
(D)光重合開始剤
本発明の感光性樹脂組成物には、(A)本発明の感光性ポリイミド前駆体、(B)光重合性官能基を有する感光助剤、及び(C)1H−テトラゾール誘導体に加えて、さらに(D)光重合開始剤を含有する。
光重合開始剤としては、従来公知の光重合開始剤を使用することができる。具体的には、特開平2004−285129公報に記載のものや、3,3′−ビスメトキシカルボニル−4,4′−ビス−t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4′−ビスメトキシカルボニル−4,3′−ビス−t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4′−ビスメトキシカルボニル−3,3′−ビス−t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられる。
光重合開始剤は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0106】
光重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、(A)本発明の感光性ポリイミド前駆体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは1〜5重量部である。
【0107】
(E)溶剤
本発明の感光性樹脂組成物に用いる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のイミド類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒類;γ−ブチロラクロン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジクロロメタン、1,2−ジクロルエタン、1,4−ジクロルブタン、トリクロルエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;等が挙げられる。
これらの溶剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、溶解性に優れるため、極性溶剤が好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドがより好ましい。
【0108】
溶剤の使用量は、各成分を均一に溶解するのに充分な量とする。具体的には、用いる成分の種類等によって異なるが、(A)感光性ポリイミド前駆体に対して、重量比で、通常3〜25倍量、好ましくは5〜20倍量、より好ましくは6〜10倍量である。
【0109】
本発明の感光性樹脂組成物には、本発明の目的とする効果を害しない範囲で、所望により他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、接着助剤、レベリング剤、重合禁止剤等が挙げられる。
【0110】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(A)本発明の感光性ポリイミド前駆体、(B)光重合性官能基を有する感光助剤、(C)1H−テトラゾール誘導体、(D)光重合開始剤、(E)溶剤、及び所望により他の成分を従来公知の方法により混合・混練することにより調製することができる。
【0111】
本発明の感光性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ということがある。)は、次のように用いることができる。
先ず、本発明の組成物を、シリコンウエハ、セラミック基板、アルミニウム基板等の適当な支持体表面に塗布する。
塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等の方法が挙げられる。塗布量に関しては特に制約はないが、塗布後、60〜100℃で1〜60分間でプリベークして塗膜を乾燥後の露光膜厚が通常1〜50μm、好ましくは2〜20μm、より好ましくは3〜15μmとなるように調整するのが好ましい。次いで、所望のパターン形状に化学線を照射する。化学線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線等が使用できるが、200〜500nmの範囲の波長のものが好ましい。
【0112】
次に、未照射部を現像液で溶解除去することによりレリーフパターンを得る。現像液としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤;シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状ケトン系溶剤;メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶剤;水;これらの混合溶剤;等が挙げられる。現像方法としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の各種方式を採用することができる。
【0113】
次いで、現像によって形成されたレリーフパターンをリンスする。リンス液としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;酢酸ブチル等のエステル類;等が挙げられる。次に、加熱処理を行ってイミド環を形成し、ポリアミック酸化合物をポリイミド化して、耐熱性に富む絶縁膜を得る。
【0114】
本発明による感光性樹脂組成物は、半導体素子関連の用途のみならず、多層回路の層間絶縁膜やフレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜や液晶配向膜等としても使用することができる。
【0115】
本発明の感光性樹脂組成物によれば、露光現像時の表面難溶化層の形成を抑制し、銅基板密着性に優れた低熱膨張感光性ポリイミド樹脂膜を形成することができる。また、シリコンウエハ上に多層回路基板を作製し、シリコンウエハを研磨して薄化しても、シリコンウエハにほとんど反りを生じさせることがない。本発明の感光性樹脂組成物は、薄膜の多層回路基板や薄板化パワー半導体基板の製造用として好適である。
【実施例】
【0116】
以下、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
(合成例1)2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェンの合成
【0117】
【化29】
【0118】
式(f−1)で表される4−ニトロフェナシルブロミド24.4gのアセトン300ml溶液中に、氷冷攪拌しながら、水に溶解した硫化ナトリウム・9水和物13gを滴下した。1時間攪拌した後、反応混合物に氷水300mlを加えて、析出した沈殿をろ過し、乾燥することで、式(g−1)で表されるジケトスルフィド誘導体14.6gを得た。
【0119】
得られたジケトスルフィド誘導体(g−1)7.2gと、式(h−1)で表されるグリオキサールの40%水溶液3.5gを、メタノール100mlとジクロロメタン100mlの混合溶媒中で攪拌しながら、28%ナトリウムメトキシド4mlを滴下し、40℃で6時間撹拌した。反応液から析出した沈殿をろ取して、式(i−1)で表されるニトロベンゾイルチオフェン誘導体6.1gを得た。得られたニトロベンゾイルチオフェン誘導体(i−1)3.8gを酢酸50mlに溶解させ、攪拌しながら、塩酸30mlに塩化スズ17.0gを溶解した溶液を滴下し、滴下終了後、100℃に昇温して4時間攪拌した。放冷後、反応混合物に水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した後、析出した沈殿をろ取した。エタノールから再結晶して、結晶2.2gを得た。
【0120】
得られた結晶体の融点及びNMRスペクトル測定により、結晶は、式(2−1)で表される2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェンであることが確認された。
・融点(mp):190〜192℃
H−NMRスペクトルデータ(核磁気共鳴装置:日本電子社製、JNM.ECM型500Mを使用):7.75ppm(d−d)4Hベンゼン環、7.72ppm(s)2Hチオフェン環、6.79ppm(d−d)4Hベンゼン環、6.30ppm(s)4Hアミノ基
【0121】
(実施例1)
反応器に、芳香族ジアミンとして、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール27.28g(0.0652モル)、2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン0.65g(0.002モル)、並びに、溶剤として、N,N−ジメチルアセトアミド 100g、及び、N−メチル−2−ピロリドン 100gを投入し、混合溶液とした。この溶液に、氷冷攪拌下、ピロメリット酸二無水物15.26g(0.07モル)を粉体のまま添加した。全容を氷冷下で2時間攪拌した後、反応温度を30℃に昇温し、2時間反応させた。反応液がほぼ均一になった時点で、反応液を10℃に冷却し、次いで、p−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステル2.57g(0.0056モル)を添加した。10℃で2時間、次いで、25℃で12時間反応させ、感光性ポリイミド前駆体1を含む溶液を樹脂濃度16重量%で得た。得られた感光性ポリイミド前駆体1の末端変性率は8%であった。
【0122】
(実施例2)
実施例1において、芳香族ジアミンを、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール26.71g(0.0638モル)、2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン1.1g(0.0034モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体2を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体2の末端変性率は8%であった。
【0123】
(実施例3)
実施例1において、芳香族ジアミンを、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール25.87g(0.0618モル)、2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン0.866g(0.0027モル)、1,3−ジアミノプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン1.392g(0.0056モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体3を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体3の末端変性率は8%であった。
【0124】
(実施例4)
実施例1において、酸無水物を、3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物20.60g(0.07モル)に、芳香族ジアミンを、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール25.87g(0.0618モル)、及び2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン1.74g(0.0054モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体4を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体4の末端変性率は8%であった。
【0125】
(実施例5)
実施例1において、酸無水物を、3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物20.60g(0.07モル)に、芳香族ジアミンを2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール23.02g(0.055モル)、及び2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン3.864g(0.012モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体5を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体5の末端変性率は8%であった。
【0126】
(実施例6)
実施例1において、酸無水物を、3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物20.60g(0.07モル)に、芳香族ジアミンを2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール20.25g(0.048モル)、及び2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン6.06g(0.0188モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体6を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体6の末端変性率は8%であった。
【0127】
(実施例7)
実施例1において、酸無水物を3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物20.60g(0.07モル)に、芳香族ジアミンを3,6−(4−アミノフェニル)ピリダジン17.10g(0.0652モル)、2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン0.65g(0.002モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体7を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体7の末端変性率は8%であった。
【0128】
(実施例8)
実施例1において、芳香族ジアミンを4,4’−ジアミノベンズアニリド14.82g(0.0652モル)、2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン0.65g(0.002モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体8を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体8の末端変性率は8%であった。
【0129】
(比較例1)
実施例1において、芳香族ジアミンを、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール28.12g(0.0672モル)のみに変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体9を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体9の末端変性率は8%であった。
【0130】
(比較例2)
実施例1において、芳香族ジアミンを、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール27.28g(0.0652モル)と1,3−ジアミノプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン0.5g(0.0020モル)とに変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体10を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体10の末端変性率は8%であった。
【0131】
(比較例3)
実施例1において、酸無水物を、3,3’−4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物20.60g(0.07モル)、芳香族ジアミンを、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール28.12g(0.0672モル)のみに変更した以外は、実施例1と同様にして感光性ポリイミド前駆体11を含む溶液を得た。
感光性ポリイミド前駆体11の末端変性率は8%であった。
【0132】
実施例1〜8及び比較例1〜3で得られた感光性ポリイミド前駆体1〜11について、モノマー組成、化学線官能基による末端変性率を下記第1表にまとめて示す。
【0133】
〈熱膨張率の測定〉
実施例1〜8及び比較例1〜3で得られた感光性ポリイミド前駆体1〜11を含む溶液のそれぞれを、6インチのシリコンウエハ(厚み625μm、シラン系カップリング剤処理品)上にスピナーで塗布し、オーブン中で60℃で30分間乾燥した。次いでイナートオーブン中、50℃で60分保持し、5℃/1分で昇温し、200℃で60分保持し、さらに5℃/1分で昇温し、400℃で60分保持し、その後室温に戻して4時間保持し、ポリイミド樹脂膜を作製した。
【0134】
次いで、50%フッ化水素酸処理してポリイミド樹脂膜をシリコン基板より剥離回収、十分水洗後、130℃で3時間真空乾燥して評価用ポリイミド樹脂膜を得た。得られた各ポリイミド樹脂膜の熱膨脹率を下記の装置、条件で測定した。その結果を下記第1表に示す。
【0135】
表中、略号は下記の意味を表す。
・PMDA:ピロメリット酸二無水物
・s−BPDA:3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
・NPN:2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール
・DABT:2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン
・Siジアミン:1,3−ジアミノプロピル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン
・DAPPZ:3,6−(4−アミノフェニル)ピリダジン
・DABA:4,4’−ジアミノベンズアニリド
・TMEA:p−アミノ安息香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール〕エステル
【0136】
・測定装置:セイコー電子工業社製TMA120c型
・測定条件:試験片形状=幅4mm、長さ25mm、測定長10mm、
・測定様式:引張り荷重=2g、
・測定温度:1サイクル=室温→300℃→20℃
2サイクル=20℃→200℃
昇温2サイクル目の20〜200℃での平均膨張率の変化を記載した。
・昇温速度:5℃/分
・測定雰囲気:窒素ガス中
【0137】
【表1】
【0138】
(実施例9〜17及び比較例4〜6)
実施例1〜8及び比較例1〜3で得られた感光性ポリイミド前駆体1〜11の100重量部に対して、感光助剤として、トリエチレングリコールジアクリレート:「3EG−A」及び2,5−チオフェンジカルボン酸ジ(2−アクリロイルオキシエチル)エステル「TCDAE」、光重合開始剤として、N−フェニルグリシン:「NPG」、及び「BT−2」(有機過酸ベンゾフェノン誘導体;チッソ株式会社製)、並びに1H−テトラゾールを、下記第2表に示す量(重量部)配合し、さらに、溶剤(ジメチルアセトアミド(DMAc):N−メチルピロリドン(NMP)=1:1重量比の混合溶剤)を加えて樹脂濃度13重量%に調整し、均一溶液(感光性樹脂組成物1〜12)とした。
【0139】
得られた感光性樹脂組成物1〜12につき、下記に示す方法に従って、感光性評価、銅基板密着性評価、パターン表面難溶化層の有無、および感光性ポリイミド樹脂膜の熱膨脹率の測定を行った。結果を下記第2表に示す。
【0140】
〈感光性樹脂組成物の評価〉
実施例9〜17及び比較例4〜6で得られた感光性樹脂組成物1〜12を、それぞれ、銅基板ウエハ(4インチシリコン基板上にスパッタプロセスで銅を製膜した基板にγ―APSカップリング剤で処理したもの)上にスピナーで塗布し、60℃で30分間オーブンで乾燥した(プリベーク後膜厚10μm)。得られた感光性ポリアミド酸樹脂膜に、PL−A501F(キャノン社製)により露光エネルギー500mj/cmでパターンマスクを介して露光した。次いで、現像液(CPN:NMP:HO=63:30:7重量比)に2分間浸漬し、イソプロピルアルコールに60秒間浸漬してリンスした後、窒素ガスでブローして解像パターンを乾燥後、基板をイナートオーブン中で、前記と同一の加熱条件で熱イミド化した。なお、CPNはシクロペンタノンである。
パターンをSEM観察(倍率:1000倍)して、L/S=20μmのパターンが綺麗に解像していること(難溶化層の有無確認)を確認し、難容化層がある場合を「あり」、難溶化層がない場合を「なし」と評価した。
【0141】
また、感光性評価として、パターン剥離(浮き)が無い場合を○、解像にムラが見られる、又は僅かなパターン剥離(浮き)が見られる場合を△、解像性不十分、又はパターン剥離が起きている場合を×と評価した。
【0142】
〈感光性ポリイミド樹脂膜の物性評価−熱膨張率の測定〉
シリコン基板(シランカップリング剤処理済み)に各感光性樹脂組成物をスピンコートした。次いで60℃で30分間乾燥後、シリコン基板全面に露光量500mj/cmで照射し、次いで現像、リンス、乾燥処理を行った。この基板を前記熱イミド化条件で加熱処理して感光性ポリイミド樹脂膜を得た。この膜を50%フッ酸を用い、シリコンウエハから剥離し、蒸留水で十分洗浄後、130℃で3時間真空乾燥し、感光性ポリイミド樹脂膜を得た。得られた膜の厚みは、約5μmであった。この膜の熱膨脹率を測定した(測定装置、測定条件等は前記に同じ)。
【0143】
〈銅との密着性評価〉
シリコンウエハ上に銅膜をスパッタプロセスで製膜して得た銅基板上に、感光性樹脂組成物1〜11をそれぞれ塗布し、前記と同様にしてポリイミド樹脂膜を作製した。
基板とポリイミド樹脂膜との密着性をクロスカット剥離試験で評価した。製膜直後及びプレッシャークッカーテスト(121℃、2.1気圧、90℃、100時間)後にクロスカット剥離試験を行い剥離が無い場合(0/25)を○、1点でも剥離がある場合を×と評価した。
【0144】
【表2】
【0145】
第2表より、本発明の感光性樹脂組成物は、熱膨脹率の制御、銅基板密着性を維持しながら銅基板上での実用レベルの感光性性能を有するポリイミド樹脂膜を形成できることがわかった。
さらに、感光助剤にチオフェンカルボン酸エステル誘導体を配合することで(実施例9〜16)、難溶化層の生成を抑制し、現像時の時間短縮、パターン表面の平坦化など優れた効果と同時に銅基板上でのパターン形成(現像密着性の向上)に効果が見られた。