(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
赤外波長領域の光を選択的に透過する赤外光透過性基材と、その一方の面上に形成された、前記赤外光透過性基材の透過波長帯域の短波長側に光吸収端を有する近赤外線吸収剤を含む短波長側赤外光吸収膜と、を具備し、
前記赤外光透過性基材が、可視波長領域の光を吸収する可視光吸収剤を含む透明材料からなることを特徴とする赤外光透過フィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下では本発明の実施の形態を図面に基づいて説明するが、それらの図面は図解のために提供されるものであり、本発明はそれらの図面に何ら限定されない。
【0022】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態による赤外光透過フィルタの一部を概略的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の赤外光透過フィルタ10は、赤外光透過性基材1と、その一方の面に形成された、近赤外線吸収剤を含む(短)赤外光吸収膜2と、これらの両面に設けられた反射防止膜3とを備える。
【0023】
赤外光透過性基材1は、可視波長領域の光を吸収する可視光吸収剤を含む透明樹脂から構成される。ここで、「透明樹脂」とは赤外波長領域の光を透過する合成樹脂をいう。透明樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル樹脂、アリルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドエーテル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂等が挙げられる。
【0024】
また、可視波長領域の光を吸収する可視光吸収剤としては、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、アゾ系化合物、ジアゾ系化合物等が挙げられる。可視光吸収剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
赤外光透過性基材1における可視光吸収剤の含有量は、0.01〜10質量%が好ましい。可視光吸収剤の含有量が0.01質量%未満では、可視光を十分に吸収できないおそれがあり、また、10質量%を超えると、赤外光の透過性が低下するおそれがある。
【0026】
透明樹脂には、可視光吸収剤の他に、さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、熱安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0027】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−−t−ブチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
【0028】
赤外光透過性基材1は、例えば、透明樹脂、可視光吸収剤、及び必要に応じて配合される他の添加剤を、分散媒または溶媒に分散または溶解させて液状樹脂組成物を調製し、この液状樹脂組成物を剥離性の支持体上にキャスティングし、乾燥させた後、剥離性支持体から剥離することにより製造できる。赤外光透過性基材1は、また、透明樹脂、可視光吸収剤、及び必要に応じて配合される他の添加剤を混合して樹脂組成物を調製し、これを溶融成形することにより製造できる。
【0029】
なお、可視光吸収剤を含む透明樹脂からなる赤外光透過性基材及びその材料となる可視光吸収剤を含む透明樹脂は市販されており、このような市販品から適宜選択して使用してもよい。例えば、板状の赤外光透過性基材として、三菱レイヨン(株)製のアクリフィルターIR75(商品名)等が挙げられる。また、ペレット状の透明樹脂として、(株)クラレ製のパラフィルター(商品名)等が挙げられる。
【0030】
赤外光透過性基材1の厚みは、特に限定されないが、軽量化、薄肉化を図る点からは、0.1〜3mmの範囲が好ましく、0.1〜1mmの範囲がより好ましい。
【0031】
近赤外線吸収剤を含む(短)赤外光吸収膜2は、近赤外線吸収剤を含む透明樹脂から構成される。透明樹脂としては、赤外光透過性基材1で用いたものと同様のものを使用できる。また、近赤外線吸収剤としては、赤外光透過性基材1の透過波長帯域の短波長側に光吸収端を有するもの、好ましくは光吸収端の波長が730〜830nmであるものが使用される。このような吸収特性を有する近赤外線吸収剤としては、例えば、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、ジイモニウム系化合物、ジチオール金属錯体系化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。近赤外線吸収剤の好ましい具体例としては、約760nmに光吸収端を有する山田化学工業(株)製のNIR−43V、QCR Solutions Corp.製のNIR757A(以上、商品名)等が挙げられる。
【0032】
(短)赤外光吸収膜2における近赤外線吸収剤の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。近赤外線吸収剤の含有量が0.1質量%未満では、使用による効果が十分に得られないおそれがあり、また、10質量%を超えると、赤外波長領域の光の透過性が低下するおそれがある。
【0033】
(短)赤外光吸収膜2を構成する透明樹脂には、近赤外線吸収剤の他に、さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、赤外光透過性基材1で用いたものと同様の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、熱安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等が含有されていてもよい。
【0034】
近赤外線吸収剤を含む(短)赤外光吸収膜2は、近赤外線吸収剤、及び必要に応じて配合される他の添加剤を含む透明樹脂を、分散媒または溶媒に分散または溶解させて塗工液を調製し、この塗工液を上記赤外光透過性基材1の一方の面に塗工し、乾燥させることにより形成される。塗工、乾燥は、複数回に分けて行うことができる。
【0035】
分散媒または溶媒としては、水、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、アルデヒド、アミン、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。塗工液には、必要に応じて分散剤を配合できる。分散剤としては、例えば、界面活性剤、シラン化合物、シリコーンレジン、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤等が使用される。
【0036】
塗工液の調製には、自転・公転式ミキサー、ビーズミル、遊星ミル、超音波ホモジナイザ等の撹拌装置を使用できる。高い透明性を確保するためには、撹拌を十分に行うことが好ましい。撹拌は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。
【0037】
また、塗工液の塗工には、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、キャスト法、スプレーコート法、ビードコート法、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法、ローラーコート法、カーテンコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、スリットリバースコート法、マイクログラビア法、コンマコート法等を使用できる。塗工、乾燥は、複数回に分けて行ってもよい。
【0038】
(短)赤外光吸収膜2の厚みは、0.01〜100μmの範囲が好ましく、0.05〜50μmの範囲がより好ましい。0.01μm未満では、所定の吸収能が得られないおそれがあり、また、100μmを超えると、乾燥時に乾燥ムラが生じるおそれがある。
【0039】
反射防止膜3は、赤外光透過フィルタ10に入射した光の反射を防止することにより透過率を向上させ、効率良く入射光を利用する機能を有するもので、従来より知られる材料及び方法により形成できる。具体的には、反射防止膜3は、スパッタリング法、真空蒸着法、プラズマCVD法等により形成したシリカ、チタニア、五酸化タンタル、フッ化マグネシウム、ジルコニア、アルミナ等の1層以上の膜や、ゾルゲル法、塗布法等により形成したシリカケート系、シリコーン系、フッ化メタクリレート系等から構成される。反射防止膜3の厚みは、通常、100〜600nmの範囲である。
【0040】
本実施形態の赤外光透過フィルタ10は、赤外光透過性基材1の一方の面に、赤外光透過性基材1の透過波長帯域の短波長側に光吸収端を有する近赤外線吸収剤を含む(短)赤外光吸収膜2を備えるので、透過率が急峻に変化する良好な赤外光選択透過性を具備できる。
【0041】
特に、近赤外線吸収剤として、光吸収端の波長が730〜830nmであるものを使用した場合には、半導体レーザ(LD)や発光ダイオード(LED)等から発する赤外光を被写体に当て、その反射光を赤外線カメラで撮像し、演算処理することにより、被写体のジェスチャーを認識するモーションキャプチャー等に好適な赤外光透過特性を具備できる。
【0042】
すなわち、上記モーションキャプチャーでは、近赤外波長領域の光が使用され、特に830〜850nmの波長帯域の光が多く使用されている。LDの中心波長が830nmの場合、製造バラツキ及び温度特性を考慮すると810〜860nmの範囲となる。同様にLDの中心波長が850nmの場合は830〜880nmの範囲となるため、波長領域としては810〜880nmを考慮する必要がある。一方、赤外線カメラに使用されているCCD等の固体撮像素子は、600〜700nmの波長帯域の感度ピークを有する。このため、S/N比を向上させるためには、短波長側の光に対する遮光特性が重要となる。可視光にある600〜700nmの光をカットするフィルタとして光吸収端の波長が730〜830nmである近赤外線吸収剤を使用することにより、そのような短波長側の光を十分に遮光でき、S/N比の向上を実現できる。
【0043】
本実施形態の赤外光透過フィルタ10は、また、ガラスや重金属を使用しないため、コスト高となることはなく、軽量化も実現できる。さらに、誘電体多層膜を使用しないため、入射角依存性も問題とならない。
【0044】
なお、赤外光透過フィルタ10は、下式で表わされる透過率の変化量D’が、1%以上であるが好ましく、1.5%以上がより好ましい。
D’(%/nm)=[T
810(%)−T
760(%)]/[810(nm)−760(nm)]
(式中、T
810は、分光透過率曲線における波長810nmの透過率であり、T
760は、分光透過率曲線における波長760nmの透過率である)
【0045】
透過率の変化量D’が、1%以上であれば、波長730〜830nmの間における透過率の変化が十分に急峻となり、上記モーションキャプチャー等の用いる赤外光透過フィルタに好適となる。
【0046】
(第2の実施の形態)
図2は、第2の実施の形態による赤外光透過フィルタの一部を概略的に示す断面図である。なお、本実施形態以降、重複する説明を避けるため、第1の実施の形態と共通する点については説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0047】
図2に示すように、第2の実施の形態による赤外光透過フィルタ20においては、赤外光透過性基材1の他方の面((短)赤外光吸収膜2形成面の反対側の面)に、一方の面に誘電体多層膜からなる(長)赤外光反射膜5を形成したガラス基材4が、(長)赤外光反射膜5を外側に向けて接着剤6を介して接着されている。
【0048】
(長)赤外光反射膜5は、透過波長帯域の長波長側の光を反射して遮光する機能を有する膜、例えば、垂直に入射する光に対する反射波長帯域が860〜1100nmの膜である。この(長)赤外光反射膜5は、例えば、誘電体層Aと、誘電体層Aが有する屈折率よりも高い屈折率を有する誘電体層Bとを、スパッタリング法や真空蒸着法等により、交互に積層した誘電体多層膜から構成される。また、入射角依存性を低減するため、次のように構成してもよい。
【0049】
すなわち、(長)赤外光反射膜5は、低屈折率の誘電体層Aの光学膜厚をn
Ld
L、高屈折率の誘電体層Bの光学膜厚をn
Hd
Hとしたとき、n
Hd
H/n
Ld
L≧5を満足する誘電体層の層数が10以上で、かつ誘電体層の全層数が15以上である誘電体多層膜から構成してもよい。
【0050】
誘電体層Aを構成する材料としては、屈折率が1.6以下、好ましくは1.2〜1.6の材料が使用される。具体的には、シリカ(SiO
2)、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が使用される。また、誘電体層Bを構成する材料としては、屈折率が1.7以上、好ましくは1.7〜2.5の材料が使用される。具体的には、チタニア(TiO
2)、ジルコニア、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、イットリア、酸化亜鉛、硫化亜鉛等が使用される。(長)赤外光反射膜5を構成する誘電体多層膜の積層数は、通常、15〜80層、好ましくは20〜50層である。
【0051】
接着剤6は、特に限定されないが、赤外光透過性基材1の特性の低下を防止し、またスループットを高める観点からは、アクリル系、エン・チオール系、エポキシ系等の光硬化型接着剤の使用が好ましく、さらに、ガラス基材4と赤外光透過性基材1との接着信頼性の観点から、光硬化型接着剤のなかでも、アクリル系、エン・チオール系が好ましい。また、その厚みも、ガラス基材4と赤外光透過性基材1との接着信頼性や、赤外光透過性基材1の歪みの発生を防止する観点から、0.1〜10μmの範囲が好ましい。
【0052】
第2の実施の形態の赤外光透過フィルタ20においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。加えて、透過波長帯域の長波長側の光を反射して遮光する(長)赤外光反射膜5を備えるので、赤外波長領域の中の特定の波長領域の光を選択的に透過させるバンドパスフィルタとして使用できる。
【0053】
特に、垂直に入射する光に対する反射波長帯域が860〜1100nmの(長)赤外光反射膜5を設けた場合には、前述したモーションキャプチャーにさらに好適な赤外光透過特性を具備できる。
【0054】
すなわち、前述したように、上記モーションキャプチャーでは、近赤外波長領域の光が使用され、特に830〜850nmの波長帯域の光が多く使用されている。一方、誘電体多層膜の遮光特性は入射角依存性により短波長側にシフトする。したがって、このような入射角依存性を考慮して、垂直に入射する光に対する反射波長帯域が860〜1100nmの(長)赤外光反射膜5を設けることにより、830〜850nmの波長帯域の光を十分に、かつ選択的に透過でき、S/N比のさらなる向上を実現できる。
【0055】
なお、誘電体多層膜からなる(長)赤外光反射膜5は、
図3に示す赤外光透過フィルタ30のように、接着剤6及びガラス基材4を介さず、赤外光透過性基材1の他方の面に直接設けてもよく、
図2に示す赤外光透過フィルタ20と同様の効果が得られる。ただし、この場合、赤外光透過性基材1を構成する材料として、(長)赤外光反射膜5を形成する際の熱等の影響で変形したり特性が損なわれたりしないものを選択するか、あるいは、赤外光透過性基材1が変形したり特性が損なわれたりしない条件で赤外高反射膜5を形成することが好ましい。特に、赤外光透過性基材1が歪んでしまうと、それを透過してカメラに入ってくる像も歪んでしまうためジェスチャーを認識する際に誤った判定を行うおそれがある。そのため、赤外光透過性基材1に歪みが発生しない製膜方法が必要である。前記フィルタに波長830nmのレーザー光を平行光で照射した際に、レーザー光の照射中心から直径60mmの領域内に発生するニュートンリングの最大本数は8本以下が好ましい。また、具体的な製膜方法については、赤外光透過性基材1の耐熱温度以下、例えば100℃以下で、スパッタリング法、真空蒸着法、プラズマCVD法等の方法により行うことが好ましい。
【0056】
さらに、図示は省略したが、上記のような誘電体多層膜からなる(長)赤外光反射膜5は、(短)赤外光吸収膜2側に、すなわち、(短)赤外光吸収膜2の赤外光透過性基材1とは反対側の面に設けるようにしてもよく、
図2に示す赤外光透過フィルタ20や
図3に示す赤外光透過フィルタ30と同様の効果が得られる。なお、この場合も、赤外光透過性基材1を構成する材料として、(長)赤外光反射膜5を形成する際の熱等の影響で変形したり特性が損なわれたりしないものを選択するか、あるいは、赤外光透過性基材1が変形したり特性が損なわれたりしない条件で(長)赤外光反射膜5を形成することが好ましい。反射防止膜3は、赤外光透過性基材1の他方の面に形成される。
【0057】
(第3の実施の形態)
図4は、第3の実施の形態による赤外光透過フィルタの一部を概略的に示す断面図である。
【0058】
図4に示すように、第3の実施の形態による赤外光透過フィルタ40においては、赤外光透過性基材1の他方の面((短)赤外光吸収膜2形成面の反対側の面)に、一方の面に誘電体多層膜からなる(短)赤外光反射膜7を形成したガラス基材4が、(短)赤外光反射膜7を外側に向けて接着剤6を介して接着されている。
【0059】
(短)赤外光反射膜7は、後述するような通常の可視光反射膜の可視光領域の光に対する遮光効果を犠牲することによって入射角依存性を低減したもので、その垂直に入射する光に対する反射波長帯域は、例えば730〜810nmである。この(短)赤外光反射膜7は、(長)赤外光反射膜5と同様、例えば、誘電体層Aと、誘電体層Aが有する屈折率よりも高い屈折率を有する誘電体層Bとを、スパッタリング法や真空蒸着法等により、交互に積層することにより形成されるが、入射角依存性を低減するため、特に次のように構成されている。
【0060】
すなわち、(短)赤外光反射膜7は、低屈折率の誘電体層Aの光学膜厚をn
Ld
L、高屈折率の誘電体層Bの光学膜厚をn
Hd
Hとしたとき、n
Hd
H/n
Ld
L≧5を満足する誘電体層の層数が10以上で、かつ誘電体層の全層数が15以上である誘電体多層膜から構成されている。なお、誘電体層A及び誘電体層Bを構成する材料には、(長)赤外光反射膜5を構成する誘電体多層膜の場合と同様の材料が使用される。
【0061】
第3の実施の形態の赤外光透過フィルタ40においては、入射角依存性の低い(短)赤外光反射膜7を備えるので、可視光寄りの赤外光の選択透過性をより向上させることができる。
【0062】
なお、誘電体多層膜からなる(短)赤外光反射膜7は、図示は省略したが、接着剤6及びガラス基材4を介さず、赤外光透過性基材1の他方の面に直接設けてもよく、また、
図5に示す赤外光透過フィルタ50のように、(短)赤外光吸収膜2側に、すなわち、(短)赤外光吸収膜2の赤外光透過性基材1とは反対側の面に設けるようにしてもよい(この場合、反射防止膜3は、赤外光透過性基材1の他方の面に形成される)。いずれも、
図4に示す赤外光透過フィルタ40と同様の効果が得られる。ただし、これらの場合には、
図3に示した赤外光透過フィルタ30等の場合と同様、赤外光透過性基材1を構成する材料として、誘電体多層膜からなる(短)赤外光反射膜7を形成する際の熱等の影響で変形したり特性が損なわれたりしないものを選択するか、あるいは、赤外光透過性基材1が変形したり特性が損なわれたりしない条件で(短)赤外光反射膜7を形成することが好ましい。具体的には、赤外光透過性基材1の耐熱温度以下、例えば100℃以下で、スパッタリング法、真空蒸着法、プラズマCVD法等の方法により行うことが好ましい。
【0063】
(第4の実施の形態)
図6は、第4の実施の形態による赤外光透過フィルタの一部を概略的に示す断面図である。
【0064】
図6に示すように、第4の実施の形態による赤外光透過フィルタ60においては、赤外光透過性基材1の他方の面((短)赤外光吸収膜2形成面の反対側の面)に、一方の面に誘電体多層膜からなる(短)赤外光反射膜7を形成したガラス基材4が、(短)赤外光反射膜7を外側に向けて接着剤6を介して接着される一方、(短)赤外光吸収膜2側に、すなわち、(短)赤外光吸収膜2の赤外光透過性基材1とは反対側の面に、(長)赤外光反射膜5が形成されている。
【0065】
第4の実施の形態の赤外光透過フィルタ60においては、入射角依存性の低い(短)赤外光反射膜7を備えるので、第3の実施の形態と同様、可視光寄りの赤外光の選択透過性をより向上させることができる。また、透過波長帯域の長波長側の光を反射して遮光する(長)赤外光反射膜5を備えるので、赤外波長領域の中の特定の波長領域の光を選択的に透過させるバンドパスフィルタとして使用できる。
【0066】
なお、本実施形態においては、図示は省略したが、誘電体多層膜からなる(短)赤外光反射膜7を、接着剤6及びガラス基材4を介さず、赤外光透過性基材1の他方の面に直接設けてもよく、また、
図7に示す赤外光透過フィルタ70のように、(短)赤外光吸収膜2側に、すなわち、(短)赤外光吸収膜2の赤外光透過性基材1とは反対側の面に設けるようにしてもよい(この場合、赤外光透過性基材1の他方の面に(長)赤外光反射膜5が形成される)。いずれも、
図6に示す赤外光透過フィルタ60と同様の効果が得られる。これらの場合にも、
図3に示した赤外光透過フィルタ30等の場合と同様、赤外光透過性基材1を構成する材料として、誘電体多層膜からなる(短)赤外光反射膜7を形成する際の熱等の影響で変形したり特性が損なわれたりしないものを選択するか、あるいは、赤外光透過性基材1が変形したり特性が損なわれたりしない条件で(短)赤外光反射膜7を形成することが好ましい。具体的には、赤外光透過性基材1の耐熱温度以下、例えば100℃以下で、スパッタリング法、真空蒸着法、プラズマCVD法等の方法により行うことが好ましい。
【0067】
(第5の実施の形態)
図8は、第5の実施の形態による赤外光透過フィルタの一部を概略的に示す断面図である。
【0068】
図8に示すように、第5の実施の形態による赤外光透過フィルタ80においては、第2の実施形態と同様のガラス基材4の一方の面に、可視波長領域、例えば400〜700nmの波長領域の光を反射する誘電体多層膜からなる可視光反射膜8を設け、他方の面に第1の実施の形態の赤外光透過フィルタ10と同様の(短)赤外光吸収膜2を形成した構造を有する。(短)赤外光吸収膜2上には、さらに、反射防止膜3を設けている。この実施形態においては、ガラス基材4及び可視光反射膜8が、第1の実施の形態における赤外光透過性基材1としての機能を有している。
【0069】
第5の実施の形態の赤外光透過フィルタ80においては、第1の実施の形態と同様の効果が得られる上に、ガラス基材4及び可視光反射膜8を赤外光透過性基材1として機能させているので、第1〜第4の実施の形態に比べて、全体の厚みをより薄肉にできる利点を有する。さらに、(短)赤外光吸収膜2によって、誘電体多層膜からなる可視光反射膜8の分光特性の入射角依存性が実質的に低減される。
【0070】
(第6の実施の形態)
図9は、第6の実施の形態による赤外光透過フィルタの一部を概略的に示す断面図である。
【0071】
図9に示すように、本実施形態による赤外光透過フィルタ90は、第5の実施の形態による赤外光透過フィルタ80において、ガラス基材4と(短)赤外光吸収膜2の間に、可視光乃至近赤外線吸収剤を含む1層乃至複数層からなる光吸収膜9を介在させるとともに、可視光反射膜8に代えて、入射角依存性の低い誘電体多層膜からなる(短)赤外光反射膜7を備えた構造を有する。
図9の例では、光吸収膜9は、ガラス基材4側の可視光吸収剤を含む可視光吸収膜9Aと、(短)赤外光吸収膜2側の、(短)赤外光吸収膜2に含まれるものと異なる近赤外線吸収剤を含む(短)赤外光吸収膜9Bから構成されている(以下、本実施形態の説明において、理解を容易にするため、(短)赤外光吸収膜2を第1の(短)赤外光吸収膜、(短)赤外光吸収膜9Bを第2の(短)赤外光吸収膜、第1の(短)赤外光吸収膜2に含まれる近赤外線吸収剤を第1の近赤外線吸収剤、第2の(短)赤外光吸収膜9Bに含まれる近赤外線吸収剤を第2の近赤外線吸収剤と称する。)。この実施形態においては、ガラス基材4及び光吸収膜9が、第1の実施の形態における赤外光透過性基材1としての機能を有している。
【0072】
可視光吸収膜9Aは、可視光吸収剤を含む透明樹脂から構成される。また、第2の(短)赤外光吸収膜9Bは、第2の近赤外線吸収剤を含む透明樹脂から構成される。透明樹脂及び可視光吸収剤としては、赤外光透過性基材1で用いたものと同様のものを使用できる。また、第2の近赤外線吸収剤としては、近赤外領域の光を吸収するものであれば特に制限なく使用されるが、可視光吸収剤と第1の近赤外線吸収剤を光吸収特性を補完して、赤外光透過フィルタ70に良好な赤外選択透過性を付与し得るものが好ましい。
【0073】
可視光吸収膜9Aにおける可視光吸収剤の含有量は10〜60質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。可視光吸収剤の含有量が10質量%未満では可視光吸収能が十分得られないおそれがあり、60質量%を超えると可視光吸収剤の透明樹脂への溶解性や樹脂の膜質が低下するおそれがある。また、第2の(短)赤外光吸収膜9Bにおける第2の近赤外線吸収剤の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。近赤外線吸収剤の含有量が0.1質量%未満では使用による効果が十分に得られないおそれがあり、10質量%を超えると赤外波長領域の光の透過性が低下するおそれがある。
【0074】
可視光吸収膜9A及び第2の(短)赤外光吸収膜9Bには、それぞれ可視光吸収剤及び第2の近赤外線吸収剤の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、赤外光透過性基材1で用いたものと同様の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、熱安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等が含有されていてもよい。
【0075】
可視光吸収膜9A及び第2の(短)赤外光吸収膜9Bは、第1の(短)赤外光吸収膜2の場合と同様の方法で形成できる。また、それらの各厚みは、いずれも0.01〜500μmの範囲が好ましく、0.05〜50μmの範囲がより好ましい。0.01μm未満では、所定の吸収能が得られないおそれがあり、また、500μmを超えると、乾燥時に乾燥ムラが生じるおそれがある。
【0076】
第6の実施の形態の赤外光透過フィルタ90においては、第1の実施の形態と同様の効果が得られる上に、ガラス基材4及び光吸収膜9を赤外光透過性基材1として機能させているので、第1〜第4の実施の形態に比べて、全体の厚みをより薄肉にできる利点を有する。さらに、本実施形態では、可視光吸収膜9A及び第2の(短)赤外光吸収膜9B、さらに入射角依存性の低い(短)赤外光反射膜7を備えるので、第5の実施の形態に比べて、より良好な赤外光選択透過性を具備できる。
【0077】
なお、本実施形態においては、
図10に示す赤外光透過フィルタ100のように、(短)赤外光吸収膜2上に、反射防止膜3に代えて透過波長帯域の長波長側の光を反射して遮光する(長)赤外光反射膜5を設けるようにしてもよい。このような赤外光透過フィルタ100においては、第2及び第4の実施の形態の赤外光透過フィルタと同様、赤外波長領域の中の特定の波長領域の光を選択的に透過させるバンドパスフィルタとして使用できる。
【0078】
また、図示を省略したが、場合により、第1の(短)赤外光吸収膜2、可視光吸収膜9A及び第2の(短)赤外光吸収膜9Bを、単層構造としたり、あるいは第1の(短)赤外光吸収膜2と第2の(短)赤外光吸収膜9Bを単層とし、これに可視光吸収膜9Aを積層するようにしてもよい。さらに、各吸収膜の積層順等も特に限定されるものではない。
【0079】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は、以上説明した実施の形態の記載内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはいうまでもない。
【実施例】
【0080】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。なお、実施例及び比較例における赤外光透過フィルタや赤外光透過性基材等の分光透過率曲線は、分光光度計(大塚電子(株)MCPD−3000)を用いて測定した。
【0081】
(実施例1)
約760nmに光吸収端を有する近赤外線吸収剤(山田化学工業(株)製 商品名「NIR−43V」)とポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、商品名「バイロン103」;屈折率1.60〜1.61)とをシクロヘキサノンに溶解し、近赤外線吸収剤1質量%及びポリエステル樹脂99質量%を含有する溶液を調製した。この溶液を、厚さ1mmの赤外光透過性基材(三菱レイヨン(株)製 商品名「アクリフィルターIR75」)の一方の面にスピンコータ(ミカサ(株)製 スピンコータMS−A200)を用いて塗布し、100℃で1分間加熱乾燥させて、厚さ15μmの(短)赤外光吸収膜を形成した。
【0082】
次いで、この(短)赤外光吸収膜を形成した赤外光透過性基材の両面に、シリカ、チタニアからなる厚さ約580nmの5層反射防止膜を形成し、赤外光透過フィルタを得た。
【0083】
得られた赤外光透過フィルタの分光透過率曲線を測定した。結果を
図11に示す。また、上記赤外光透過性基材について測定した分光透過率曲線を
図12に、(短)赤外光吸収膜について測定した内部透過率曲線を
図13に示す。
【0084】
これらの図から明らかなように、(短)赤外光吸収膜が形成される前の赤外光透過性基材では、約720nmまでの波長領域における透過率は約0%、約820nm以上の波長領域における透過率は90%以上で、これらの領域間(約720〜約820nm)で透過率が緩やかに変化していたのに対し、実施例1で得られた赤外光透過フィルタでは、400〜770nmの波長領域における透過率が約0%、830〜900nmの波長領域における透過率は95%以上で、透過率はこれらの領域間(約770〜約830nm)で十分に急峻に変化しており、約760nmに光吸収端を有する近赤外線吸収剤を含む(短)赤外光吸収膜を形成したことにより、赤外光透過性基材の短波長側の光に対する遮光特性の向上が確認された。
【0085】
(比較例)
厚さ0.3mmのガラス基板(B270(ショット製))の一方の面に、真空蒸着法により、シリカ(SiO
2;屈折率1.45(波長830nm))層とチタニア(TiO
2;屈折率2.25(波長830nm))層とを交互に積層して、表1に示すような構成からなる誘電体多層膜(31層)を形成し、赤外光透過フィルタを得た。
【0086】
【表1】
【0087】
得られた赤外光透過フィルタの分光透過率曲線(入射角度0度、入射角度20度及び40度のP偏光及びS偏光)を測定した。結果を
図14に示す。
【0088】
図14から明らかなように、比較例で得られた赤外光透過フィルタは、入射角度0度の入射光に対しては、実施例1と同等の遮光特性を示すが、入射角度が変わると透過率曲線も変動しており、入射角度±40度の範囲では、実施例1で用いた赤外光透過性基材(「アクリフィルターIR75」)と同等の遮光特性を示した。
【0089】
この図から明らかなように、誘電多層膜での遮光フィルタの課題である入射角度0度と±40度では遮光波長が70nm以上も可視光側に移動しており、十分に可視光の遮光をしているとは言い難い。
【0090】
(実施例2)
約760nmに光吸収端を有する近赤外線吸収剤(山田化学工業(株)製 商品名「NIR−43V」)と、ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、商品名 バイロン103;屈折率1.60〜1.61)とをシクロヘキサノンに溶解し、近赤外線吸収剤1質量%及びポリエステル樹脂99質量%を含有する溶液を調製した。この溶液を、厚さ1mmの赤外光透過性基材(三菱レイヨン(株)製 商品名「アクリフィルターIR75」)の一方の面にスピンコータ(ミカサ(株)製 スピンコータMS−A200)を用いて塗布し、100℃で1分間加熱乾燥させて、厚さ15μmの(短)赤外光吸収膜を形成した。
【0091】
また、厚さ0.3mmのガラス基板(B270(ショット製))の一方の面に、真空蒸着法により、シリカ(SiO
2;屈折率1.45)層とチタニア(TiO
2;屈折率2.25)層とを交互に積層して、表2に示すような構成からなる誘電体多層膜(23層)を形成した。
【0092】
【表2】
【0093】
この誘電体多層膜を形成したガラス基板の他方の面(誘電体多層膜非形成面)に、紫外線硬化型接着剤を約10μmの厚さに塗布し、その上に上記の(短)赤外光吸収膜を形成した赤外光透過性基材を、(短)赤外光吸収膜非形成面側をガラス基板に向けて積層し、ガラス基板側から紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を硬化させ、一体に接着した。その後、(短)赤外光吸収膜の表面にシリカ、チタニアからなる厚さ約580nmの5層反射防止膜を形成し、赤外光透過フィルタを得た。
【0094】
得られた赤外光透過フィルタの分光透過率曲線を測定した。結果を
図15に示す。また、誘電体多層膜を形成したガラス基板について測定した分光透過率曲線(入射角度0度、入射角度20度及び40度のP偏光及びS偏光)を
図16に示す。
【0095】
図15から明らかなように、実施例2で得られた赤外光透過フィルタは、400〜770nm及び970〜1100nmの両波長領域における透過率が約0%、810〜920nmの波長領域における透過率が87%以上で、約770〜約810nm及び約920〜約970nmの非常に狭い波長領域で透過率が変化しており、(短)赤外光吸収膜と、
図16に示すような分光特性を有する誘電体多層膜形成ガラス基板を設けたことにより、810〜920nmの波長領域における光を選択的に透過させるバンドパスフィルタとして高い特性を有することが確認された。この赤外光透過フィルタは、半導体レーザ(LD)等から830〜850nmの波長の光を被写体に当て、その反射光を赤外線カメラで撮像し、演算処理することにより、被写体のジェスチャーを認識するモーションキャプチャー等の用途に非常に有用である。
【0096】
また、この例では長波長側で入射角度依存性がみられるが、撮像素子の感度の弱い波長領域であるため可視光側と比べ入射角度依存性による遮光波長の変化は赤外線カメラのS/N比に大きくは影響しない。
【0097】
(実施例3)
厚さ0.3mmのガラス基板(B270(ショット製))の一方の面に、スパッタリング法により、シリカ(SiO
2;屈折率1.45)層とチタニア(TiO
2;屈折率2.25)層とを交互に積層して、表3に示すような構成からなる誘電体多層膜(39層)を形成した。
【0098】
【表3】
【0099】
この誘電体多層膜を形成したガラス基板の他方の面(誘電体多層膜非形成面)に、実施例1と同様に調製した、約760nmに光吸収端を有する近赤外線吸収剤(「NIR−43V」)1質量%、及びポリエステル樹脂(「バイロン103」)99質量%を含有する溶液を、スピンコータ(「スピンコータMS−A200」)を用いて塗布し、100℃で1分間加熱乾燥させて、厚さ15μmの(短)赤外光吸収膜を形成した。その後、(短)赤外光吸収膜の表面にシリカ、チタニアからなる厚さ約580nmの反射防止膜を形成し、赤外光透過フィルタを得た。
【0100】
得られた赤外光透過フィルタの分光透過率曲線(入射角度0度、入射角度20度及び40度のP偏光及びS偏光)を測定した。結果を
図17に示す。また、誘電体多層膜を形成したガラス基板について測定した分光透過率曲線(入射角度0度、入射角度20度及び40度のP偏光及びS偏光)を
図18に示す。
【0101】
図17から明らかなように、実施例3で得られた赤外光透過フィルタは、約760〜約810nmの非常に狭い波長領域で透過率が変化しており、しかも、入射角依存性も低減されている。
【0102】
(実施例4)
厚さ0.3mmのガラス基板(B270(ショット製))の一方の面に、スパッタリング法により、シリカ(SiO
2;屈折率1.46)層と酸化タンタル(Ta
2O
5;屈折率2.14)層とを交互に積層して、表4に示すような構成からなる誘電体多層膜(38層)を形成した。
【0103】
【表4】
【0104】
また、可視光吸収剤(稲畑産業(株)製 商品名「AI7100」)とポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、商品名「バイロン103」;屈折率1.60〜1.61)とをシクロヘキサノンに溶解し、可視光吸収剤40質量%及びポリエステル樹脂60質量%を含有する溶液(I)を調製した。同様にして、約720nmに光吸収端を有する近赤外線吸収剤1質量%及びポリエステル樹脂99質量%を含有する溶液(II)、及び、約760nmに光吸収端を有する近赤外線吸収剤(QCR Solutions Corp製 商品名「NIR757A」)1質量%及びポリエステル樹脂99質量%を含有する溶液(III)を調製した。
【0105】
次いで、これらの溶液(I)〜(III)を、溶液(I)、溶液(II)、溶液(III)の順に、上記の誘電体多層膜を形成したガラス基板の他方の面(誘電体多層膜非形成面)にスピンコータ(ミカサ(株)製 スピンコータMS−A200)を用いて塗布し、それぞれ100℃で1分間加熱乾燥させて、厚さ300μmの光吸収膜(I)、厚さ50μmの光吸収膜(II)、及び厚さ25μmの光吸収膜(III)を形成した。
【0106】
その後、上記光吸収膜(III)の表面に、シリカ、チタニアからなる厚さ約580nmの5層反射防止膜を形成し、赤外光透過フィルタを得た。
【0107】
得られた赤外光透過フィルタの分光透過率曲線(入射角度0度、入射角度20度、30度及び40度のP偏光及びS偏光)を測定した。結果を
図19に示す。また、誘電体多層膜を形成したガラス基板について測定した分光透過率曲線(入射角度0度、入射角度10度、20度、30度及び40度のP偏光、S偏光及び平均(Ave))を
図20に示す。さらに、光吸収膜(I)の内部透過率曲線を
図21に、光吸収膜(II)の内部透過率曲線を
図22に、光吸収膜(III)の内部透過率曲線を
図23に、光吸収膜(I)〜(III)全体の内部透過率曲線を
図24に示す。
【0108】
図19から明らかなように、実施例4で得られた赤外光透過フィルタは、約760〜約810nmの非常に狭い波長領域で透過率が変化しており、かつ入射角依存性は実施例3に比べ、より低減されている。