(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5741497
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】ウェーハの両面研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/08 20120101AFI20150611BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20150611BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
B24B37/04 F
B24B37/00 A
H01L21/304 621A
H01L21/304 622M
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-59341(P2012-59341)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-188860(P2013-188860A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年1月20日
(31)【優先権主張番号】特願2012-30929(P2012-30929)
(32)【優先日】2012年2月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一弥
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑宜
(72)【発明者】
【氏名】小林 修一
【審査官】
橋本 卓行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−141984(JP,A)
【文献】
特開2001−030164(JP,A)
【文献】
特開2010−152965(JP,A)
【文献】
特開2004−098264(JP,A)
【文献】
特開平03−251363(JP,A)
【文献】
特開平07−201789(JP,A)
【文献】
特開2011−067901(JP,A)
【文献】
特開2003−300153(JP,A)
【文献】
特開2002−333528(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/140595(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/08
B24B 37/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアの保持孔にウェーハを保持し、該保持されたウェーハを研磨布が貼付された上下定盤の間に挟み込み、前記キャリアを自転及び公転させて前記ウェーハの両面を同時に研磨し、該ウェーハの研磨をバッチ式に繰り返すウェーハの両面研磨方法であって、
前記バッチ式に繰り返すウェーハの研磨において、前記キャリアを公転させる方向をバッチ毎に反対方向に切り替え、
立上ドレッシング及びインターバルドレッシングにおいて、前記研磨布の目立ての逆目に対向する方向に接触式粗さ計を掃引したときの前記研磨布の表面凹凸の標準偏差によって示される粗さSMDが4μm以上、5μm以下となるように前記研磨布をドレッシングし、
前記インターバルドレッシングを実施するタイミングは、前記粗さSMDが4μm以上、5μm以下の範囲外となったときとすることを特徴とするウェーハの両面研磨方法。
【請求項2】
前記研磨布をドレッシングする工程において、ドレス面に#100以下のダイヤモンド砥粒が設けられたドレッシング手段を用いることを特徴とする請求項1に記載のウェーハの両面研磨方法。
【請求項3】
前記ドレッシング直後に実施する前記ウェーハの研磨バッチにおける前記キャリアの公転方向を、前記ドレッシング後の研磨布の目立ての逆目に対向する方向にすることを特徴とする請求項2に記載のウェーハの両面研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを研磨布が貼付された上下定盤の間に挟み込んでウェーハの両面を同時に研磨する両面研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウェーハ等のウェーハの製造では、インゴットをスライスしてウェーハを得た後、このウェーハに対して面取り、ラッピング、エッチング等の各工程が順次なされ、次いで少なくともウェーハの一主面を鏡面化する研磨が施される。研磨工程では、ウェーハの片面を研磨する片面研磨装置及びウェーハの両面を同時に研磨する両面研磨装置が用いられる。
【0003】
両面研磨装置としては、通常、不織布などからなる研磨布が貼付された上定盤と下定盤を具備し、
図5に示すように中心部にはサンギヤ107が、外周部にはインターナルギヤ108がそれぞれ配置された遊星歯車構造を有するいわゆる4ウェイ方式のものが用いられている。この両面研磨装置において、キャリア102に複数形成されたウェーハ保持孔103の内部にウェーハを挿入・保持し、その上方から研磨剤をウェーハに供給し、上下定盤を回転させながら研磨布をウェーハの表裏両面に押し付けるとともに、キャリア102をサンギヤ107とインターナルギヤ108との間で自転公転させることで各ウェーハの両面が同時に研磨される。
【0004】
両面研磨装置で同じ研磨布を用いて研磨を続けていくとウェーハ形状が次第に変化してしまうという問題がある。これは主に研磨布のライフに起因しており、研磨布の圧縮率の変化や目詰まり等が影響し、使用頻度が増えるにつれ、ウェーハの外周部が過剰に研磨されていわゆる外周ダレが生じ易くなる。そこで、これを防ぐため研磨布表面のドレッシングを行う必要がある。
【0005】
両面研磨装置に用いられる研磨布のドレッシングは、一般的に、ウェーハの研磨に使用するものと同じキャリア又はドレッシング専用キャリアの保持孔にドレッシングプレートをセットし、これを上定盤と下定盤との間に挟んで通常の研磨と同じように装置を稼動させることにより行われる。
研磨布をドレッシングする場合、研磨能力を安定かつ向上させるために、研磨布表面を毛羽立てるような目立てを行うことが重要である。このような目立てを十分に行うために、ドレッシングプレートの両面にダイヤモンドペレット等を貼り付けたものが使用される場合がある。
【0006】
シリコンウェーハ等のウェーハをバッチ式に繰り返し両面研磨する際、加工安定性を確保するため、研磨布の目立てを目的としたドレッシングは新しい研磨布の使用開始時(立上時)と所定バッチ毎のインターバルで行われている。ドレッシングにより成された研磨布の目立ての粗さは研磨バッチを繰り返すことで減少していき、それに伴ってウェーハの外周ダレが進行するため適宜インターバルドレッシングが必要となる。
研磨布の目立て方向には順目と逆目とがあり、この方向はドレッシング時のドレスプレートの公転方向に依存して決まる。特許文献1には、研磨時におけるキャリアの公転方向をドレッシング時のドレスプレートの公転方向と逆方向にすることで高平坦度のウェーハを安定して得るための方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004―98264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ドレッシング後しばらくは研磨を安定して行えても、ドレッシングのインターバルが長いと次第に研磨の安定性を確保できなくなり、特に外周ダレが生じることでウェーハの平坦度が悪化するようになる。一方、ドレッシングのインターバルを短くすると、ドレッシングに係る時間が増加し生産性が悪化することから、安定性と生産性との間にはトレードオフの関係があった。
【0009】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、ドレッシングによる生産性の低下を抑えつつ、高平坦度のウェーハを安定して得ることができるウェーハの両面研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明によれば、キャリアの保持孔にウェーハを保持し、該保持されたウェーハを研磨布が貼付された上下定盤の間に挟み込み、前記キャリアを自転及び公転させて前記ウェーハの両面を同時に研磨し、該ウェーハの研磨をバッチ式に繰り返すウェーハの両面研磨方法であって、前記バッチ式に繰り返すウェーハの研磨において、前記キャリアを公転させる方向をバッチ毎に反対方向に切り替えることを特徴とするウェーハの両面研磨方法が提供される。
【0011】
このような両面研磨方法であれば、研磨バッチを繰り返し行っても常にキャリアの公転方向を研磨布の目立ての逆目に対向する方向にすることができ、研磨布の目立ての状態を長時間安定して保つことができる。これにより、平坦度の悪化を抑制して高平坦度のウェーハを安定して得ることができ、また、ドレッシング頻度を低減してドレッシングによる生産性の低下を抑えることができる。
【0012】
このとき、前記研磨布の目立ての逆目に対向する方向に接触式粗さ計を掃引したときの前記研磨布の表面凹凸の標準偏差によって示される粗さSMDが4μm以上、5μm以下となるように前記研磨布をドレッシングする工程を有することが好ましい。
このような方法であれば、研磨布の目立ての状態をより長時間安定して保つことができ、長時間ドレッシングを行わなくても高平坦度のウェーハを安定して得ることができる。
【0013】
前記研磨布をドレッシングする工程において、ドレス面に#100以下のダイヤモンド砥粒が設けられたドレッシング手段を用いることができる。
このようにすれば、研磨布の粗さSMDを確実に4μm以上、5μm以下の範囲内にすることができる。
【0014】
またこのとき、前記ドレッシング直後に実施する前記ウェーハの研磨バッチにおける前記キャリアの公転方向を、前記ドレッシング後の研磨布の目立ての逆目に対向する方向にすることが好ましい。
このようにすれば、ドレッシング直後に実施する研磨バッチにおいて、確実に高平坦度のウェーハを得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、バッチ式に繰り返すウェーハの両面研磨において、キャリアを公転させる方向をバッチ毎に反対方向に切り替えてウェーハを研磨するので、常にキャリアを公転させる方向を研磨布の目立ての逆目に対向する方向にすることができ、研磨布の目立ての状態を長時間安定して保つことができる。これにより、特に外周ダレなどの平坦度の悪化を抑制して高平坦度のウェーハを安定して得ることができ、また、ドレッシング頻度を低減してドレッシングによる生産性の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の両面研磨方法で使用できる両面研磨装置の一例を示す概略図である。
【
図2】
図1の両面研磨装置の平面視による内部構造図である。
【
図3】本発明の両面研磨方法の一例を示すフロー図である。
【
図4】研磨布のドレッシング方法を説明する説明図である。
【
図5】4ウェイ方式の両面研磨装置を説明する説明図である。
【
図6】研磨布のドレッシング時のダイヤモンド砥粒番手と粗さSMDとの関係を示す図である。
【
図7】実施例、比較例のESFQR(max)の測定結果を示す図である。
【
図8】実施例、比較例の粗さSMDの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
一般的に、両面研磨装置を用いてウェーハをバッチ式に繰り返し両面研磨する際、加工安定性を確保するため、研磨布の目立てを目的としたドレッシングが新しい研磨布の立上時と所定バッチ毎のインターバルで行われている。
従来より、高平坦度のウェーハを安定して得るために研磨時のキャリアの公転方向をドレッシング時のドレスプレートの公転方向と逆方向にしてウェーハを研磨する方法が知られている。しかし、ドレッシング後しばらくは研磨を安定して行えても、研磨バッチを繰り返すうちに研磨布の目立て状態が悪化するので、所定バッチ毎のインターバルで実施するドレッシング(以降、インターバルドレッシングと言う)の頻度を低減できないという問題がある。
【0018】
そこで、本発明者等はウェーハの高平坦度品質を確保しつつ、インターバルドレッシングの頻度を低減するために鋭意検討を重ねた。その結果、従来のようにキャリアの公転方向を常に同じ方向にして研磨バッチを繰り返すと研磨布の目立てが悪化し易いことを見出した。さらに、本発明者等は、ウェーハの研磨後に研磨布の目立ての順目・逆目の方向が逆転するので、次の研磨バッチ時のキャリアの公転方向を前の研磨バッチ時と反対方向にすることにより、研磨時のキャリアの公転方向を常に研磨布の目立ての逆目に対向する方向にすることができ、研磨布の目立ての悪化を抑制するとともに、高平坦度のウェーハを安定して得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0019】
なお、研磨布の目立ての状態の指標として、例えば接触式粗さ計を用いて測定する粗さを用いることができる。接触式粗さ計を用いて測定する粗さは測定時の掃引方向によって異なる値となる。本発明ではこの指標として、研磨布の目立ての逆目に対向する方向に接触式粗さ計を掃引したときの研磨布の表面凹凸の標準偏差によって示される粗さSMD(mean deviation of surface roughness)を用いる。
【0020】
まず、本発明の両面研磨方法で用いることができる両面研磨装置について、
図1、2を参照して説明する。
図1に示すように、両面研磨装置1は、上定盤5、下定盤6、ウェーハWを保持するためのキャリア2を備えている。上定盤5と下定盤6は上下に相対向して設けられており、各定盤5、6には、それぞれ研磨布4が貼付されている。
図2に示すように、両面研磨装置1の中心部にはサンギヤ7が、周縁部にはインターナルギヤ8が設けられている。ウェーハWはキャリア2の保持孔3に保持され、上定盤5と下定盤6の間に挟まれる。
【0021】
また、サンギヤ7及びインターナルギヤ8の各歯部にはキャリア2の外周歯が噛合している。これにより、上定盤5及び下定盤6が不図示の駆動源によって回転されるのに伴い、キャリア2は自転しつつサンギヤ7の周りを公転する。このとき、キャリア2の保持孔3で保持されたウェーハWは、上下の研磨布4により両面を同時に研磨される。ウェーハWの研磨時には、不図示のノズルから研磨剤が供給される。
【0022】
図2では、キャリア2が1枚のウェーハWを保持するようになっているが、
図5に示すような複数の保持孔を有するキャリアを用いてキャリア内に複数枚のウェーハを保持しても良い。また、複数のキャリア2を備えた両面研磨装置を用いても良い。
【0023】
以下、本発明の両面研磨方法について
図1〜3を参照して説明する。
まず、使用する両面研磨装置1の研磨布4の立上ドレッシングを行う(
図3の(a))。この立上ドレッシングは新しい研磨布4の使用開始前に1度行うドレッシングである。研磨布4の立上ドレッシングは、例えば
図4に示すようなドレッシングプレートを用いて行うことができる。具体的には、
図4に示すように、複数個の保持孔を有するドレッシング専用キャリア9或いはウェーハの研磨に使用するものと同じキャリアにドレッシングプレート10をセットし、これを上定盤5と下定盤6との間に挟んで通常の研磨と同じように両面研磨装置1を稼動させることで上下両方の研磨布4が同時にドレッシングされる。
【0024】
ドレッシングプレートとして、例えば円板形状で、その表裏両面が上下の研磨布4と接してドレッシングを行うドレス面となるものを用いることができる。その材質として、例えばセラミックスのような硬質のもので、ドレス面に微小な凹凸を形成したものを用いることができる。その他ドレッシングプレートとして、例えば中央に孔が形成されたドーナツ形状のものや、ドレス面にダイヤモンド砥粒を設けたものなどを用いることができる。
【0025】
立上ドレッシング後に1番目の研磨バッチを実施する(
図3の(b))。
まず、キャリア2の保持孔3にウェーハWを保持する。
次に、保持されたウェーハWの上下表面を上下定盤5、6に貼付された研磨布4で挟み込む。そして、上下定盤5、6を回転させながらキャリア2を自転及び公転させて、研磨面に研磨剤を供給しながらウェーハWの両面を同時に研磨する。
【0026】
このとき、キャリア2の公転方向を、ドレッシング後の研磨布4の目立ての逆目に対向する方向にすることが好ましい。このようにすれば、研磨を安定して行うことができ、高平坦度のウェーハを得ることができる。
1番目の研磨バッチ後には、2番目の研磨バッチを行う(
図3の(c))。
このとき、キャリア2の公転方向を1番目の研磨バッチにおけるキャリア2の公転方向と反対方向として、その他は1番目の研磨バッチと同様にしてウェーハWを研磨する。
【0027】
上記したように、ウェーハの研磨を行うと研磨布4の目立ての順目、逆目の方向が逆転する。すなわち、2番目の研磨バッチにおいて、研磨布4の目立ての逆目方向は第1の研磨バッチにおける方向とは反対となっている。そのため、キャリア2の公転方向を1番目の研磨バッチにおけるキャリア2の公転方向と反対方向とすることにより、キャリア2の公転方向は研磨布4の目立ての逆目に対向する方向になる。
2番目の研磨バッチ後のバッチ式に繰り返すウェーハの研磨において(
図3の(d))、同様にキャリアを公転させる方向をバッチ毎に反対方向に切り替える。
【0028】
このように本発明の両面研磨方法は、研磨バッチを繰り返し行っても常にキャリアを公転させる方向を研磨布の目立ての逆目に対向する方向にすることができ、特にESFQR(max)に代表される平坦度が安定的に改善され、ウェーハを安定して高平坦に研磨できる。また、研磨布の目立ての状態を長時間安定して良好に保つことができ、バッチ毎の平坦度のばらつきも低減される。任意のバッチ間でインターバルドレッシングを行うこともできるが(
図3の(e))、その頻度は従来に比べ低減され、ドレッシングによる生産性の低下を抑えることができる。
【0029】
ここで、本発明の両面研磨方法での立上ドレッシング及びインターバルドレッシングにおいて、上記した粗さSMDが4μm以上、5μm以下となるように研磨布4をドレッシングすることが好ましい。このようにすれば、研磨布4の目立ての状態をより長時間安定して良好に保つことができ、長時間ドレッシングを行わなくても高平坦度のウェーハを安定して得ることができる。
また、インターバルドレッシングを実施するタイミングとして、粗さSMDが4μm以上、5μm以下の範囲外となったときとすることが好ましい。このようにすれば、平坦度を悪化させることなく、ドレッシングの頻度を著しく低減できる。
【0030】
これらドレッシングを行う工程において、ドレス面に#100以下のダイヤモンド砥粒が設けられたドレッシング手段を用いることができる。
図6は、番手が異なるダイヤモンド砥粒を用いてドレッシングしたときの研磨布の粗さSMDを示した図である。
図6に示すように、ダイヤモンド砥粒番手が#100以下の場合、研磨布の粗さSMDを確実に4μm以上、5μm以下の範囲内にすることができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
(実施例)
図1に示すような両面研磨装置(DSP−20B 不二越機械工業社製)を用い、直径300mmのシリコンウェーハ75枚を連続して繰り返し両面研磨し、研磨後のウェーハのESFQR(max)を評価した。ESFQR(max)の測定はWafer Sight(KLA−Tencor社製)を用いた。
キャリアとして、保持孔の内周部に樹脂製リングが形成されたTi製のキャリアを、研磨布として、ニッタハース製のMH S−15Aを、研磨剤として、粒径35nmのコロイダルシリカをKOHベースのアルカリに懸濁させた溶液をそれぞれ用いた。
【0033】
まず、
図4に示すようなドレッシング専用キャリア及びドレッシングプレートを用いて研磨布の立上ドレッシングを行った。ここで、ドレス面に#60のダイヤモンド砥粒が設けられたドレッシングプレートを用い、荷重を100g/cm
2とし、ドレッシング時間を60分とした。
立上ドレッシング後、バッチ間でインターバルドレッシングを行うことなく、ウェーハの研磨を連続して繰り返し行った。この際、キャリアを公転させる方向をバッチ毎に反対方向に切り替えた。また、1番目の研磨バッチでは、キャリアの公転方向を立上ドレッシング後の研磨布の目立ての逆目に対向する方向にした。
【0034】
研磨後のウェーハのESFQR(max)の結果を
図7に示す。
図7(A)に示すように、ESFQR(max)は安定して低く抑えられており、全ての研磨で目標値である90nm以下を達成できた。また、実施例1ではインターバルドレッシングを行っていないため工程時間を短縮できた。一方、後述する比較例では、ESFQR(max)のばらつきが大きく、目標値である90nmを超えてしまう場合があった。
【0035】
研磨後の研磨布の粗さSMDの測定結果を
図8に示す。
図8に示すように、粗さSMDは4μm以上、5μm以下の範囲内に維持され、研磨バッチの増加に伴って次第に減少していく傾向は見られなかった。これは、キャリアを公転させる方向をバッチ毎に反対方向に切り替えることで、研磨布の目立ての悪化が抑制されたためと考えられる。
このように、本発明の両面研磨方法は、ドレッシングによる生産性の低下を抑えつつ、高平坦度のウェーハを安定して得ることができることが確認できた。
【0036】
(比較例)
実施例と同一の両面研磨装置を用い、直径300mmのシリコンウェーハ75枚を両面研磨し、実施例と同様に評価した。ただし、比較例では、立上ドレッシング後にキャリアを公転させる方向を全てのバッチで同一として研磨バッチを繰り返し、5バッチ毎にインターバルドレッシングを行った。立上ドレッシング及びインターバルドレッシングは実施例と同様の方法で行い、インターバルドレッシングの時間を5分とした。
【0037】
研磨後のウェーハのESFQR(max)の結果を
図7に示す。
図7(B)に示すように、ドレッシング後、次第にESFQR(max)が悪化していき、ばらつきが大きくなることが分かった。その結果、目標値である90nmを超えてしまう場合があった。
研磨後の研磨布の粗さSMDの測定結果を
図8に示す。
図8に示すように、粗さSMDがドレッシング後に次第に減少していく傾向が見られた。これは研磨布の目立てが悪化していくことを示している。
【0038】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0039】
1…両面研磨装置、 2…キャリア、 3…保持孔、 4…研磨布、
5…上定盤、 6…下定盤、 7…サンギア、 8…インターナルギヤ、
9…ドレッシング専用キャリア、 10…ドレッシングプレート。