【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、農林水産省、超低コスト土地利用型作物生産技術の開発委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記移送面は、作動中にあっては、常時脱穀処理物を受けて、穀粒等の擦過力が作用し、フッ素コーティング層が比較的早期に剥げ落ち、上記撥水効果が低下してしまう。このため、上記撥水効果を維持するためには、上記フィン等の移送面を有する揺動選別部の部品を早期に交換する必要があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記フィン等の揺動選別部の部品を表裏引っ繰り返して用いることにより、前記撥水効果を維持する穀粒選別装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、脱穀された処理物を、揺動選別及び風選別により穀粒とわら屑等の夾雑物とに選別する穀粒選別装置(10)において、
その両端を支持部材(36)に取付けられて揺動枠(16)に支持され、前記処理物に一面にて接して、該処理物を選別しつつ移送する
チャフシーブ(22)におけるフィン(26)を備え、
前記フィン(26)は、表裏両面に亘って撥水層を有し、
かつ平坦部(35a)並びに該平坦部(35a)の上端部及び下端部において逆方向に突出する上突出部(35b)及び下突出部(35c)を有する、側面形状が上下点対称であり、
前記支持部材(36)は、前記フィン(26)を上下方向に引っ繰り返して付け替えることで該フィン(26)の表面及び裏面のいずれでも前記処理物に接して該処理物を選別しつつ移送することが可能であり、かつ前記上突出部(35b)又は前記下突出部(35c)の突出方向が逆となる誤取付けに際して、該逆方向に突出する突出部(35b、35c)が前記支持部材(36)に干渉して取付け不能となる、
ことを特徴とする穀粒選別装置にある。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明によると、チャフシーブのフィ
ンは、フッ素コーティング層等の撥水層を有し、湿材からなる処理物であっても、該処理物が
フィンに付着することを防止して、高い効率で穀粒の選別処理を行うことができるものでありながら、上記撥水層が
フィンの表面から剥げ落ちた場合、上記
フィンを引っ繰り返して揺動枠に付け替えることにより、撥水層が剥げ落ちていない裏面が処理物の選別機能面となり、前記高い効率による穀粒の選別処理時間を倍増でき、かつ
フィンは、引っ繰り返して用いるので、交換する場合に比して
フィンの無駄がなく、コストダウンを図ることができる。
【0011】
また、チャフシーブのフィンは、その揺動により処理物が移送し、かつフィンの間から穀粒等が漏下しつつ風選されるので、穀粒による擦過が激しく、比較的早期に前記撥水層が剥げ落ち易いが、該フィンは、その両端を支持部材により容易に取外し、取付けが可能であり、かつフィンは、平坦部、上下突出部からなる簡単な構造でかつ上下点対称であるので、上下方向に引っ繰り返して表面及び裏面を容易に処理物の接触する機能面として切換えることができる。
【0012】
また、フィンの表面及び裏面を引っ繰り返して付け替えする際、フィンは単純な形状からなるため、誤取付けの可能性があり、この場合、下突出部からなる籾受け部がなくなり、選別機能が低下するが、突出部の突出方向が逆の場合、支持部材が該逆の突出部と干渉して取付け不能としたので、上記誤取付けを確実に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に沿って本発明の実施の形態について説明する。コンバイン1は、
図1に示すように、クローラにより支持されている走行機体2を有しており、走行機体2には一(左)側に脱穀装置3が搭載され、他側に運転席5が配置され、その後方にグレンタンク6が配置されている。該走行機体2の前方には前処理部7が昇降自在に配置されている。また、走行機体2には穀粒排出オーガ6aが旋回及び上下揺動自在に配置されており、グレンタンク6内の穀粒をトラック等の所定位置に排出し得る。
【0015】
脱穀装置3は、
図2,
図3に示すように、脱穀部9と、脱穀部9で脱穀された処理物を穀粒とわら屑、塵芥等の夾雑物に選別する穀粒選別部(装置)10と、からなる。脱穀部9は、前処理部7で刈取られた穀稈が搬送されるフィードチェーン8及び扱胴11を有しており、フィードチェーン8で搬送される穀稈が回転する扱胴11により脱穀される。更に、扱胴11により稈から分離された穀粒、わら屑等の処理物は、受網12から穀粒選別部10に落下する。受網12から落下しない処理物は処理胴14を有する処理室18に搬送され、更に処理される。また、フィードチェーン8で搬送された稈(排わら)は、排わらチェーン13によりカッタ15に搬送されて切断される。
【0016】
前記穀粒選別装置10は、揺動駆動される揺動枠16、唐箕ファン17、ターボファン19及び排塵ファン70を有しており、脱穀部9の受網12から落下した処理物を、揺動選別すると共に風選別して、1番口20、2番口71及び排塵口72に分別する。1番口20に分別された穀粒は、1番オーガ28により揚穀筒24に移送されて、グレンタンク6内に搬入される。2番口71には穀粒、わら屑、秕等の夾雑物が分別され、これら処理物は、処理室18に搬送されて、再び穀粒選別部10に還流される。排塵口72からはわら屑等の比重の軽いものが機体外に排出される。
【0017】
揺動枠16には、前記受網12の下方に位置してグレンシーブ21が、その後方側にチャフシーブ22が、更に後方側にストローラック23が配置され、またチャフシーブ22の下方でかつ1番口20への流路を覆うように選別網25が配置されている。グレンシーブ21は、ノコ歯状の波板からなり、揺動により、処理物を、穀粒等の比重の重いものを下層にわら屑等の比重の軽いものを上層になるように分層しつつ後方に向けて移送する。チャフシーブ22は幅方向に長手となる多数の板状のフィン26を有し、これらフィン26の間隔が調整されて、唐箕ファン17からの風を受けて選別され、揺動により処理物を後方に移送しつつ、比重の重い穀粒等が上記間隔から落下され、比重の軽いわら屑等は排塵ファン70の吸気と相俟って飛ばされて排塵口72から排出される。ストローラック23は、前後方向に長手となる桟状の多数の板部材からなり、切わら等がその揺動により後方に移送されて排塵口72から排出される。選別網25は、チャフシーブ22から落下した穀粒等が揺動により篩にかけられ、穀粒が1番口20に落下し、それ以外は2番口71に導かれる。
【0018】
チャフシーブ22は、
図4〜
図6に示すように、前記揺動枠16を構成するチャフシーブ取付側板30,30を有し、これら左右の側板30,30に亘って固定フィン26
1,26
1が固定される。これら固定フィン26
1,26
1は、チャフシーブ22の前端及び後端のフィンからなり、その間の多数のフィン26…が回動(揺動)位置を調整可能な可動フィンからなる。可動フィン26…は、複数の群、本実施の形態では4群A,B,C,Dに分割されており、各フィン26は、それぞれ群毎に回動角を制御し得る。各可動フィン26…は、その上端部分が前記チャフシーブ取付側板30に回動支点軸31(
図6参照)により回動自在に支持され、各群A,B,C,D毎に配置された連結側板32…にその下端部分が回動自在に連結され、脱穀部9から穀粒選別部10に供給される処理物の量に応じて、各群A,B,C,Dのフィン26の回動角が制御される。例えば、グレンシーブ21の層厚を検出する層厚センサにより、又はチャフシーブ22を通過する風量を検出する風量センサにより、穀粒選別装置10に供給される処理物の量を検出し、処理物が多い高収量時には全群A,B,C,Dのフィン26…を開いた位置にして、多くの処理物をチャフシーブ22から漏下し、処理物の少ない低収量時には、前側の群から順次(A→B→C→D)閉じ位置として、チャフシーブ22からの漏下量を少なくする。
【0019】
各群A,B,C,D毎に1個の駆動フィン26
2が設けられており、該駆動フィン26
2はフィン開閉制御用モータに連動して、上述したように処理物の量により順次開閉操作される。これら駆動フィン26
2の回動により、上記取付側板30と連結側板32との間で平行リンクを構成する各群の従動フィン26
3…がそれぞれ駆動フィン26
2と同角度になるように開閉操作される。
【0020】
各従動フィン26
3(26)は、
図6に示すように、その両端において支持部材36,36に着脱自在に取付けられ、支持部材36はその上端部にて外側に向けて突出する回動支点軸31を有すると共にその下端部にて外側に向けて突出する連結軸37を有する。前記揺動枠16に一体に固定されている前記チャフシーブ取付側板30に前記回動支点軸31が回動自在にかつスペーサ40を介して抜止めして支持され、前記連結軸37が前記連結側板32に回転自在に連結されている。
【0021】
フィン26
3(26)は、
図7及び
図8(a)に示すように、平坦部35a及び該平坦部の上下縁部にて逆方向に折曲げられて突出する突出部35b,35cを有しており、その中央点Oを中心とする点対称に形成されている。前記支持部材36は、前記支点軸31及び連結軸37の反対面である内側に、前記フィン26
3の側面形状と同形状の溝41が形成されている。
【0022】
フィン26
3は、
図8(b)に示すように、鉄板44からなり、その表面及び裏面の全面に塗装42が施された後、全面に亘って撥水処理、例えばフッ素コーティングが施されて、撥水層(フッソコーティング層)43が形成されている。なお、
図6に示すように、フィン26の一部に無塗装部Eを設け、鉄板の上に直接フッ素コーティングを施すようにしてもよい。これにより、フッ素コーティングが剥落ちた場合、上記無塗装部Eが錆びて変色するので、フッ素コーティングが剥げたことを容易かつ確実に認識することができる。また、撥水層43は、フッ素コーティングに限らず、撥水性の高分子樹脂等の他の材料でよく、またフィン全体を撥水性材料で成形して、表面を撥水層としてもよい。
【0023】
前記支持部材36は、フィン26
3の両端を溝41に嵌合することによりフィン26
3の両端が支持部材36に一体に取付けられる。
【0024】
前記チャフシーブ22は、前述したように、その回動角を制御することにより隣接するフィン26の間隔を調整される。チャフシーブ22には、グレンシーブ21により移送された穀粒及びわら屑等の処理物が連続して供給され、該穀粒等は、上記フィン26の間を流下し又はその揺動により後方に向けて移送する。この際、例え処理物が朝露等で濡れていても、前記フィン26の表面は撥水層43からなるので、処理物がフィン26に付着することはなく、高い効率で選別処理される。また、上記フィン26は、その下端の突出部35cにより上記処理物を受け止め、この状態で唐箕ファン17からの風を作用して、わら屑等の比重の軽いものを分離し、又その上端の突出部35bにより隣接するフィンとの間の隙間を狭くして、該隙間にわら屑等が入り込むことを制限し、選別効果を向上する。
【0025】
上記フィン26は、その揺動に基づき、その上側(一面)F、即ち
図8(a)における平坦面35aの左側(上側)、
上突出部35bの上側及び受け部となる
下突出部35cの上側に常に穀粒等が擦過し、比較的早期に該上側(一面)Fのフッ素コーティング(撥水)層43が剥げ落ち、上記撥水層による効果が減少してしまう。本発明のフィン26は、その全表面に撥水層43が形成され、かつ表裏を入れ替えても同じ形状からなるので、上側の撥水層43が剥げ落ちると、フィン26の表裏を入れ替えて用いる。
【0026】
即ち、フィン26
3を支持部材36から取外す。この状態で、フィン26
3を
図8(a)の矢印に示すように、上下方向に(中央点Oを中心に)引っ繰り返し、今まで裏面Rであったものを表面(上側)Fとして、再びフィン本体の両端を溝41に嵌合して、支持部材36にフィン26
3を取付ける。この際、フィン26
3をその幅方向に引っ繰り返し、その上
突出部35b及び
下突出
部35c
の突出方向が
逆になるように取付けようとしても、溝41の形状と合わないため、このような誤取付けは防止される。
【0027】
なお、上記実施の形態は、可動フィンの内の従動フィン26
3について説明したが、駆動フィン26
2及び固定フィン26
1についても両面に撥水層43を設け、かつ表裏付け替えても同じ形状からなるように構成して、同様に、表裏付け替えることを可能にしてもよいことは勿論である。
【0028】
図9及び
図10は、フィン本体の取付構造を変更した実施の形態を示す。フィン26
3は、その両端部に取付けの孔a,aを有し、支持部材36,36は、上記取付け孔a,aに整合するネジ孔b,bを有する。該フィン26
3は、その両端裏面を支持部材36に当接して、ボルト45又はビスを上記取付け孔aを貫通してネジ孔bに締付ける。本フィン26
3も同様に、上下方向に引っ繰り返すことにより、その表裏を入れ替えることができる。この際、支持部材36は、その下端部36eがフィン26
3と略々同一長さとなるように構成されており、
図9(b)に示すように、フィンの突出部35b,35cが逆になるように誤取付けしようとした場合、支持部材下端部36eが逆方向に延びる突出部35bに干渉して、誤取付けが防止される。
【0029】
図11は、フィン26
3の構造を一部変更した実施の形態を示す。本フィン26
3は、平坦部35aの上部及び下部に直交逆方向に延びる突出部35b,35cを有しており、更にその上端及び下端に上記平坦部35aと平行となる延長部35e,35fが形成されている。支持部材36は、上記
図8,
図9と同様に、取付け孔b’を有し、フィン26
3の裏面に当接してボルト45及びナット46により取付ける。
図11において、(a)は、フィン26
3の表面Fを上側(機能面)にして取付けた状態を示し、(b)は裏面Rを上側(機能面)にして付け替えた状態を示し、(c)は、フィン26
3の引っ繰り返し方を誤った誤取付け状態を示し、この場合支持部材36の下端部36eが逆方向となる突出部35bにも干渉して、誤取付けを防止する。
【0030】
図12は、フィン26
3及び支持部材36を更に変更した実施の形態を示す。フィン26
3は、平坦部35aと、該平坦部の一(下)端において表裏両方向直交方向に延びる突出部(受け部)35g,35hを有する。支持部材36は、上記フィンの側面形状と同様な形状の溝41’を有する。本フィン26
3は、
図12に矢印で示すように、幅方向に(平坦部と通る上下軸線X−Xを中心に)引っ繰り返されて、表裏が付け替えられる。この際、突出部35g,35hの内の上(表)側となる方が処理物受け部として機能し、裏面側となる方は受け部として機能しない。本実施の形態にあっても、もしフィンを上下方向に反転して付け替えようとしても、支持部材36の溝41’と合わないので、誤取付けされることはない。
【0031】
図13は、更に変更したフィン26を示す。本実施の形態のフィン26は、平板状のプレート35
1と、該プレート35
1の下端に抜差して着脱固定自在な受け部35
2とからなる。プレート35
1は、鉄板にフッ素コーティング等の撥水層がその全表面に施されており、受け部35
2は撥水機能の高い合成樹脂から形成されている。
【0032】
本実施の形態にあっても、プレート部35
1は、表裏を逆にして付け替えて用いられ、また該付け替えに際して、受け部35
2は逆に付け替えられる。
【0033】
グレンシーブ21は、
図14に示すように、1枚のノコ刃状の波板49からなり、揺動枠16に取付けられている。該グレンシーブ21は、前後方向の中央Yを中心として点対称の形状からなり、かつその全面(表面、裏面)に亘って、フッ素コーティング層等の撥水層が形成されている。
【0034】
従って、
図14の矢印方向に引っ繰り返して、揺動枠16に付け替えることにより、表面F側の撥水層が剥れ落ちたとしても、裏面R側を処理物の移送面(機能面)として用いることができ、撥水状態を継続できる。
【0035】
図3に示す1番口20の穀粒搬送オーガ28のラセンに同様にフッ素コーティング層等の撥水層を形成する。これにより、穀粒とラセンとの摩擦を減少して、搬送中の穀粒の損傷を減少できる。なお、穀粒搬送オーガは、上記1番口のものに限らず、グレンタンク3内のオーガ、穀粒排出オーガ9、揚穀筒24のオーガ等、あらゆる穀粒搬送オーガのラセンに同様に上記フッ素コーティング層を形成することができる。
【0036】
図15は、脱穀部9におけるフィードチェーン8による扱室50の入口部分を示す。穀稈を扱胴11に導く脱穀入口板52に、フッ素コーティングを施し、撥水層を形成する。これにより、濡れた籾がフィードチェーン8により脱穀部9に供給されても、表面に上記撥水層を有する脱穀入口板52が、濡れた籾やわら屑を堆積に難しくして、堆積したわら屑等による脱穀入口部での籾溜りや搬送乱れを防止できる。また、上記脱穀入口板52の撥水層の効果が減少した場合は該脱穀入口板52を交換すればよい。
【0037】
図16は、カッタ15(
図2参照)を示し、排わらチェーン13から搬送される排わらをカッタ刃55に導く切換え板56を有する。該切換え板56に、フッ素コーティングを施した撥水層が全面(表面及び裏面)に形成されたガイドプレート57を固定する。排わらチェーンから搬送される排わらは、ガイドプレート57に案内されてカッタ刃55に落される。この際、ガイドプレート57は、表面に撥水層を有するので、排わらを滑らかに案内してカッタ刃55に導く。ガイドプレート57の撥水層が剥げ落ちた場合、ガイドプレート57を表裏引っ繰り返して付け替えるか、又は交換する。