特許第5741937号(P5741937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5741937カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物、接着剤及び成形材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5741937
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物、接着剤及び成形材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/26 20060101AFI20150611BHJP
   C09J 123/26 20060101ALI20150611BHJP
   C09J 151/06 20060101ALI20150611BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20150611BHJP
   C08F 255/00 20060101ALI20150611BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   C08L23/26
   C09J123/26
   C09J151/06
   C08F2/44 C
   C08F255/00
   C08K3/00
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-136239(P2011-136239)
(22)【出願日】2011年6月20日
(65)【公開番号】特開2013-1864(P2013-1864A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】梶川 正浩
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−157665(JP,A)
【文献】 特開平01−259049(JP,A)
【文献】 特開2002−363431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08F 2/00−2/60
C08F 255/00−255/10
C08K 3/00−3/40
C09J 123/00−123/36
C09J 151/00−151/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸価が10〜300であり、かつアミノ基を有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を含むことを特徴とするカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項2】
前記アミノ基が3級アミノ基である、請求項1に記載のカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項3】
前記アミノ基が、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の全量に対して30mmol/kg〜320mmol/kg含まれる、請求項1に記載のカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項4】
前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が、ポリオレフィン樹脂(a1)と、重合性二重結合を有するカルボン酸(無水物)及びアミノ基含有ビニル単量体を含むビニル単量体混合物(a2)とを反応させることによって得られるものである、請求項1に記載のカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリオレフィン樹脂(a1)が、エチレン、プロピレン及び1−ブテンからなる群より選ばれる1種以上を重合して得られるものである、請求項4に記載のカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項6】
更に水性媒体(B)を含有するものであって、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が前記水性媒体(B)中に溶解または分散したものである、請求項1に記載のカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物からなる接着剤。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物からなる、炭素材料用接着剤。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物と、充填材とを含有することを特徴とする成形材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤をはじめとする様々な用途で使用可能な水性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
家電製品等の製造に使用する部材としては、製品の軽量化を図る観点から、エチレン−酢酸ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂等のプラスチックからなる部材が広く使用されている。
【0003】
しかし、前記プラスチックとしては、例えばエチレン−酢酸ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂のように表面極性の低いものや、ポリエチレンテレフタレート等のように表面極性の高いものなど、様々な種類があるため、製品化の際に、表面極性の異なる複数のプラスチック部材を、1種類の接着剤を用いて接着しようとしても、十分に接着することができず、経時的に剥離等を引き起こす場合があった。また、一時的に接着できても、水等が付着する環境下に晒された場合に、接着強度が著しく低下し、剥離等を引き起こす場合があった。
【0004】
前記接着強度に優れた接着剤としては、例えば水系媒体中に酸変性ポリオレフィン樹脂とポリウレタン樹脂と脂肪酸アミドとテルペン系粘着付与材とを特定割合で含有する水性分散体からなる接着剤が知られており、かかる接着剤であれば熱可塑性樹脂基材に対する密着性に優れることが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
しかし、前記接着剤は、前記低極性基材と高極性基材との両方に対して優れた接着強度を有するものではないため、いずれかの基材と接着剤層との界面で経時的に剥離する場合があった。また、前記接着剤は、水(湿気)等にさらされることで劣化しやすいため、経時的に前記接着剤層の劣化や剥がれを引き起こす場合があった。
【0006】
ところで、自動車部品や浴室部材等の各種成形材料としては、通常、不飽和ポリエステル樹脂等のマトリックス樹脂をベースとして、強化繊維等の様々な充填材を含有するものが使用されている。
【0007】
なかでも、炭素繊維等の炭素材料は、高強度でかつ、軽量化を両立した成形品を製造する際の好適な材料として、近年、注目されている。
【0008】
しかし、前記炭素材料は、一般に、混合するマトリックス樹脂との相溶性や、樹脂中における分散性の向上を目的として、プラズマ処理や薬品処理等の表面処理がなされている場合が多く、前記表面処理の施された炭素材料の表面は、通常、酸性度が高い状態にある。そのため、前記炭素材料は、オレフィンのような低極性マトリックス樹脂との相溶性(分散性)の点で十分でなく、前記マトリックス樹脂中で均一に分散することができず、その結果、強度等のばらつきの大きい皮膜等の成形品が得られるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−235289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、例えば高極性基材や低極性基材のいずれの基材に対しても優れた接着強度を有するとともに、例えば炭素繊維等の、その表面の酸性度が高い材料に対しても優れた接着強度を備え、かつ、温水等の影響による経時的な剥離を引き起こさないレベルの耐水接着強度を備えたカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物を提供することである。
【0011】
また、本発明が解決しようとする課題は、炭素材料をはじめとする、その表面が高酸性である充填材と組み合わせ使用した場合であっても、前記充填材の偏りが生じにくく、比較的均一に分散した皮膜等の成形品を形成することが可能なレベルの分散性を備えたカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は前記課題を解決すべく検討するなかで、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂中に様々な官能基を導入することや、架橋剤をはじめとする他の成分を組み合わせ使用することを検討した。
【0013】
その中で、単にカルボン酸変性されたポリオレフィン樹脂組成物を使用するのではなく、10〜300という特定の酸価を有し、かつ、アミノ基を備えたカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物を用いた場合に、本発明の課題を解決できることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は、酸価が10〜300であり、かつアミノ基を有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を含むことを特徴とするカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物に関するものである。
【0015】
また、本発明は、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物からなる接着剤に関するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は、例えば高極性基材や低極性基材のいずれの基材に対しても優れた接着強度を有するとともに、例えば表面処理された炭素繊維等の、その表面が高酸性である材料に対しても優れた接着強度を備え、かつ、温水等の影響による経時的な剥離を引き起こさないレベルの耐水接着強度を備えていることから、接着剤やヒートシール剤あるいは分散剤等の様々な用途に使用することが可能である。
【0017】
また、本発明のカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は、炭素材料をはじめとする、その表面が高酸性である充填材と組み合わせ使用した場合であっても、前記充填材の偏りが生じにくく、比較的均一に分散した皮膜等の成形品を形成できることから、成形材料のマトリックス樹脂に使用することができる。
【0018】
また、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は、前記充填材の分散剤等に使用することができる。具体的には、ガラス繊維集束剤や炭素繊維集束剤、炭素系フィラーの分散剤等に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は、酸価が10〜300であり、かつアミノ基を有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、及び、必要に応じてその他の添加剤を含有することを特徴とするものである。
【0020】
本発明では、単に、カルボン酸によって変性されたポリオレフィン樹脂を使用するのではなく、更にアミノ基を有するものを使用することが重要である。
【0021】
前記アミノ基は、特に、その表面状態が高酸性であるために、各種接着剤等による接着が困難な材料に対して、優れた接着強度を付与するうえで必要である。
【0022】
ここで、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の代わりに、アミノ基を有さず、従来知られるマレイン酸等によって変性されたポリオレフィン樹脂を使用してられた組成物では、前記表面状態が高酸性である材料に対して優れた接着強度を付与することができない場合がある。また、前記組成物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体等からなる低極性基材や、ポリエチレンテレフタレート等からなる高極性基材に対して、比較的良好な接着強度を有するものの、温水等が付着する環境に晒された場合に、経時的に剥離を引き起こすなど、いわゆる耐水接着強度の向上を図ることができない場合がある。
【0023】
また、前記樹脂組成物と、前記表面状態が高酸性である充填材等とを混合し成形材料等に使用しても、前記樹脂組成物中における前記充填材等の偏りが著しく、その結果、成形品の一部分において折り曲げ強度をはじめとする機械特性の低下を引き起こす場合がある。
【0024】
前記アミノ基としては、1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基のいずれも使用できるが、なかでも表面の酸性度が高い材料に対する接着強度の向上を実現できるため、3級アミノ基を使用することが好ましい。
【0025】
前記アミノ基は、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の全量に対して30mmol/kg〜320mmol/kgの範囲で存在することが、前記優れた接着強度や耐水接着強度、及び、表面が高酸性である充填材と組み合わせ使用した場合の相溶性(分散性)を付与するうえで好ましく、30mmol/kg〜190mmol/kgの範囲であることがより好ましい。また、表面が高酸性である充填材と組み合わせ使用した場合であっても、前記充填材の偏りが生じにくく、比較的均一に分散した皮膜等の成形品を形成する観点からも、30mmol/kg〜320mmol/kgの範囲のアミノ基を有するものを使用することが好ましく、30mmol/kg〜190mmol/kgの範囲のアミノ基を有するものを使用することがより好ましい。
【0026】
また、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)としては、単にアミノ基を有するカルボン酸変性されたポリオレフィン樹脂を使用すればよいのではなく、10〜300の範囲の酸価を有するものを使用することが必要である。
【0027】
ここで、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の代わりに、酸価が90であるアミノ基含有カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂を使用して得られた組成物では、高極性基材に対する優れた接着強度を付与できない場合がある。また、表面が高酸性である充填材等の分散性の低下を引き起こす場合がある。
【0028】
一方、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の代わりに、酸価が350であるアミノ基含有カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂を使用して得られた組成物では、低極性基材に対する優れた接着強度を付与できない場合がある。また、表面が高酸性である充填材等の分散性の低下を引き起こし、表面が高酸性である充填材のマトリックス樹脂中における偏り等を引き起こす場合がある。
【0029】
前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)としては、10〜250の範囲の酸価を有するものを使用することが、前記優れた接着強度や耐水接着強度、及び、分散性を付与するうえで好ましく、180〜230の範囲であることがより好ましい。なお、本発明でいう酸価は、水酸化カリウム法によって算出した値である。
【0030】
前記酸価は、ポリオレフィン樹脂の変性に使用するカルボン酸が有するカルボキシル基由来であることが好ましい。前記カルボキシル基は、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を水性媒体(B)中に分散等して使用する場合に、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)に対して良好な水分散性を付与しうる。
【0031】
そのような場合、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の有するカルボキシル基は、その一部または全部が塩基性化合物によって中和され、カルボキシレート基を形成していてもよい。
【0032】
前記塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等の金属塩基化合物等を使用することができる。
【0033】
また、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)としては、接着層の凝集力保持の観点から、15000〜150000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、30000〜100000のものを使用することが好ましい。なお、前記重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定された値を指す。
【0034】
また、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、例えばポリオレフィン樹脂(a1)を製造する工程(1)、ならびに、前記工程(1)で得たポリオレフィン樹脂(a1)と、重合性二重結合を有するカルボン酸(無水物)及びアミノ基含有ビニル単量体を含むビニル単量体混合物(a2)とを反応させる工程(2)等を経ることによって製造することができる。
【0035】
前記工程(1)は、アルケンをラジカル重合することによって製造することができる。
前記アルケンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン等を使用することができ、エチレン、プロピレン及び1−ブテンからなる群より選ばれる1種以上を使用することができる。
【0036】
前記アルケンのラジカル重合は、例えば反応圧力約15bar〜60bar、約60℃〜100℃の反応温度条件で行うことができる。
【0037】
前記工程(1)で得られたポリオレフィン樹脂(a1)としては、前記アルケンが重合し形成したホモポリマーや、ランダムまたはブロック共重合体が挙げられる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、天然ゴム、合成イソプロピレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。なかでも、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体を使用することが、特に低極性基材に対する優れた接着強度を付与するうえでより好ましい。
【0038】
次に、前記工程(2)は、前記工程(1)で得たポリオレフィン樹脂(a1)と、重合性二重結合を有するカルボン酸(無水物)及びアミノ基含有ビニル単量体を含むビニル単量体混合物(a2)とを反応させる工程である。
【0039】
具体的には、前記ポリオレフィン樹脂(a1)の有機溶剤溶液を製造し、該有機溶剤溶液と、重合性二重結合を有するカルボン酸(無水物)及びアミノ基含有ビニル単量体を含むビニル単量体混合物(a2)とを混合し、前記ポリオレフィン樹脂(a1)の軟化温度または融点以上である、概ね120℃〜200℃の温度に加熱し、ラジカル重合反応及び水素引き抜き反応させる工程である。
【0040】
前記有機溶剤溶液を製造する際に使用可能な有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、シクロへキサノン、酢酸ブチル、酢酸エチル、イソブタノール、ノルマルブタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0041】
前記重合性二重結合を有するカルボン酸(無水物)としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸等を使用することができる。なかでも(無水)マレイン酸を使用することが、前記優れた接着強度や耐水接着強度及び分散性を付与するうえで好ましい。
【0042】
前記重合性二重結合を有するカルボン酸(無水物)は、最終的に得られる前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)中に含まれる酸価が10〜300となる範囲で使用することができ、その量は、ビニル単量体混合物(a2)の全量に対して概ね8質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、20質量%〜45質量%であることがより好ましい。
【0043】
前記アミノ基含有ビニル単量体としては、N,N’−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N’−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N’−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N’−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のN,N’−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートを使用することができる。なかでも、N,N’−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレートを使用することが、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)中にアミノ基を導入しやすいため好ましい。
【0044】
前記アミノ基含有ビニル単量体は、最終的に得られる前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)中に含まれるアミノ基の含有量が30mmol/kg〜320mmol/kgとなる範囲で使用することができ、その量は、ビニル単量体混合物(a2)の全量に対して概ね0.5質量%〜5.0質量%の範囲であることが好ましい。
【0045】
前記ビニル単量体混合物(a2)としては、前記重合性二重結合を有するカルボン酸(無水物)及びアミノ基含有ビニル単量体の以外に、必要に応じてその他のビニル単量体を組み合わせ使用することができる。
【0046】
前記その他のビニル単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル酸−1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−1,6−ヘキサンジオール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、ジ(メタ)アクリル酸グリセリン、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸エステルや、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロメチルスチレン等を使用することができる。なかでもメチル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
前記その他のビニル単量体は、ビニル単量体混合物(a2)の全量に対して概ね40質量%〜90質量%の範囲であることが好ましい。
【0047】
前記方法で得られたカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を含有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は、無溶剤のものであってもよいが、有機溶剤を溶媒として含有するものや、水性媒体(B)を溶媒として含有するものであってもよい。
前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物としては、良好な塗工作業性等を付与する観点から、前記有機溶剤や水性媒体(B)を溶媒として含有するものであることが好ましく、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物中に含まれるカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の質量割合が、良好な塗工作業性等を維持する観点から、10質量%〜90質量%であることが好ましく、10質量%〜50質量%であることがより好ましい。
【0048】
前記溶媒に使用可能な有機溶剤としては、例えばアセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル、n−ヘキサン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル等を使用することができる。
【0049】
また、前記溶媒に使用可能な前記水性媒体(B)としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類、等が挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0050】
前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、前記溶媒としての水性媒体(B)とを含有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は、例えば前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の有機溶剤溶液と、前記塩基性化合物とを混合することによって、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、次いで、前記水性媒体(B)と混合することによって、前記水性媒体(B)中に前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が溶解または分散したカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物を得ることができる。
【0051】
前記中和には、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の有するカルボキシル基の50〜100モル%を中和できる量の塩基性化合物を使用することが、良好な水分散安定性を付与するうえで好ましい。
【0052】
前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、前記水性媒体(B)中で樹脂粒子を形成し、安定して分散することが好ましい。前記樹脂粒子は、概ね5nm〜500nmの範囲の平均粒子径であることが好ましい。ここで言う平均粒子径とは、動的光散乱法により測定した体積基準での平均粒子径を指す。
【0053】
前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は、用途等に応じ、必要に応じて顔料や、シランカップリング剤などの硬化剤、硬化触媒、潤滑剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤等の添加剤、pH調整剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、分散安定剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、耐熱性付与剤、無機充填剤、有機充填剤、可塑剤、補強剤、触媒、抗菌剤、防カビ剤、防錆剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、顔料、染料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、結晶水含有化合物、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤を併用することができる。
【0054】
前記顔料としては、例えばカーボンブラックや酸化チタン、酸化鉄、アルミニウム・フレーク、チタンコート・マイカなどのような無機系顔料や、その他有機系顔料を使用することができる。
【0055】
また、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物としては、前記硬化反応を促進する観点から、硬化触媒を使用することができる。前記硬化触媒としては、例えばトリエチルアミン、N,N−ベンジルメチルアミン、N,N−ジメチルフェニルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどのアミン類;メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−メチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリフェニルフォスフィン、トリブチルフォスフィン等のフォスフィン類等を使用することができる。
【0056】
また、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は、用途等に応じ、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば酢ビ系、エチレン酢ビ系、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系等のエマルジョン;スチレン・ブタジエン系、アクリロニトリル・ブタジエン系、アクリル・ブタジエン系等のラテックス、更には、ポバールやセルロース類等の水溶性樹脂等と組み合わせ使用することもできる。
【0057】
前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は、高極性基材や低極性基材に対して優れた接着強度や耐水接着強度を有するとともに、表面が高酸性であって、通常の接着剤では貼り合せ等が困難な基材に対しても優れた接着強度や耐水接着強度を発現可能であることから、接着剤やヒートシール剤、コーティング剤等の様々な用途に使用することが可能である。
【0058】
前記接着剤等を適用可能な基材としては、例えば各種プラスチックやそのフィルム、金属、ガラス、紙、木材等が挙げられる。具体的には、高極性基材としてはポリエチレンテレフタレート基材や、エチレンビニルアルコール基材等が挙げられる。また、低極性基材としては、例えばエチレン−酢酸ビニル樹脂基材やポリプロピレン基材、エチレン基材等が挙げられる。
【0059】
また、表面が高酸性である基材としては、混合するマトリックス樹脂との相溶性や、樹脂中における分散性の向上を目的として、プラズマ処理や薬品処理等の表面処理の施された炭素材料が挙げられる。具体的には、補強剤等として一般に使用されるカーボンブラックや、炭素繊維等が挙げられる。前記接着剤は、特に、前記炭素材料のような表面が高酸性である基材に対して優れた接着強度を有することから、炭素材料用の接着剤として好適に使用することができる。
【0060】
前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物からなる接着剤等は、例えば刷毛塗りもしくはカーテンコーター法、フローコーター法、ロールコーター法、キスコーター法、刷毛塗り法、浸漬法、スプレー法等をはじめとする様々な方法で、各種基材表面に塗布することが可能である。
【0061】
前記塗布後、常温下または40℃〜120℃程度の温度範囲で加熱した条件下で乾燥することによって、前記基材表面に皮膜を形成することができる。前記加熱乾燥する際には、例えば加熱ローラーや熱風、熱板等を用いることができる。
【0062】
前記方法によって、一般に難付着性の基材とされる各種基材に対して優れた接着強度及び耐水接着強度を備えた皮膜や接着剤層が設けられた積層体を得ることができる。前記で形成された皮膜や接着剤層の厚みは、基材の使用される用途等に応じて適宜調整可能であるが、通常0.01μm〜100μm程度であることが好ましい。
【0063】
前記積層体は、水等に長期間晒された場合であっても、経時的な剥離等を引き起こしにくいことから、例えば屋根材や壁材などの建築部材、PET等のフィルム接着層等の様々な用途に使用することが可能である。
【0064】
また、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は、表面が高酸性であるために樹脂との相溶性が低い、例えば炭素繊維をはじめとする各種充填材に対して優れた相溶性を有する。したがって、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は、前記充填材等と組み合わせることによって各種成形材料に使用することが可能である。
【0065】
前記充填材としては、例えばガラス繊維等のガラス系材料や、カーボンブラックや炭素繊維等の炭素材料等に使用することができる。なかでも、前記分散剤は、表面が高酸性であり、接着剤等による貼り合せ等が困難な炭素繊維等の炭素材料に対して好適に使用することができる。
【0066】
前記炭素繊維としては、一般にポリアクリロニトリル系、ピッチ系等の炭素繊維を使用することができる。なかでも、前記炭素繊維としては、優れた強度を付与する観点から、ポリアクリロニトリル系の炭素繊維を使用することが好ましい。
【0067】
前記炭素繊維としては、より一層優れた強度等を付与する観点から、概ね0.5μm〜20μmの単糸径を有するものを使用することが好ましく、2μm〜10μmのものを使用することがより好ましい。
【0068】
前記炭素繊維としては、例えば撚糸、紡糸、紡績加工、不織加工したものを使用することができる。また、前記炭素繊維としてはフィラメント、ヤーン、ロービング、ストランド、チョップドストランド、フェルト、ニードルパンチ、クロス、ロービングクロス、ミルドファイバー等のものを使用することができる。
【0069】
前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物と前記充填材と、必要に応じて重合性単量体等とを含む成形材料としては、例えばプリプレグやシートモールディングコンパウンド(SMC)、あるいは炭素繊維チョップドストランドによるオレフィン等の熱可塑性マトリクスペレットとの押し出しにより射出成型材料等が挙げられる。
【0070】
前記プリプレグは、例えば前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物を離型紙上に塗布し、その塗布面に表面処理の施された炭素繊維を載置し、必要に応じてローラー等を用いて押圧含浸する方法が挙げられる。
【0071】
前記プリプレグを製造する際には、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂や、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0072】
また、前記シートモールディングコンパウンドは、例えば前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物と、スチレン等の重合性不飽和単量体との混合物を、前記炭素繊維等の充填材に十分含浸し、シート状に加工等することによって製造することができる。
【0073】
前記成形材料としては、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物の不揮発分100質量部に対して、前記充填材を0.1〜99.5質量部(固形分)となる範囲で含有するものを使用することが、前記樹脂組成物中における前記充填材の良好な分散性を維持するうえで好ましい。
【0074】
前記成形材料の硬化は、例えば加圧または常圧下、加熱または光照射によってラジカル重合させることによって進行する。かかる場合には、公知の熱硬化剤や光硬化剤等を組み合わせ使用することができる。
【0075】
前記成形材料を用いて得られた成形品は、高強度であることから、例えば自動車部材や航空機部材、産業用部材等に使用することができる。
【0076】
また、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は、表面が高酸性であるために、樹脂との相溶性が低く、前記樹脂中に均一に分散等することが困難な各種充填材の表面を改質し、前記充填材等に良好な分散性を付与することのできる分散剤に使用することも可能である。具体的には、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は、前記炭素繊維等の炭素材料に対して優れた接着強度を有することから、もっぱら炭素繊維の集束剤に使用することができる。
【0077】
前記充填材の表面を改質する方法としては、例えば、前記充填材に前記分散剤を塗布し、乾燥等することによって、前記充填材の表面に皮膜を形成する方法が挙げられる。
【0078】
前記充填材の表面に皮膜を形成する方法としては、前記接着剤を各種基材に塗布し接着剤層を形成する方法と同様の方法を適用することができる。
【0079】
前記炭素繊維の表面に形成された皮膜の付着量は、表面処理の施された炭素繊維束の全質量に対して概ね0.1質量%〜3質量%であることが好ましく、0.1質量%〜1.5質量%であることがより好ましい。
【0080】
前記方法で表面処理等の施された炭素繊維は、従来知られるマトリックス樹脂と組み合わせ使用することによって、例えば自動車部材や航空機部材、産業用部材等の様々な製品の製造に使用可能な成形材料として使用することができる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例及び比較例によって、より具体的に説明する。
【0082】
〔実施例1〕
攪拌機、温度計および冷却器を取り付けた3Lの反応容器中に、エチレンとプロピレンと1−ブテンとの共重合体(エチレン/プロピレン/1-ブテンの共重合比率(質量)65/24/11、重量平均分子量52000)1000g、ソルビトール1g、チバガイギー社製 Irganox1010{ペンタエリスチリルーテトラキス〔3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕}(以下、Irganox1010と記す)1g、チバガイギー社製 Irafos168〔トリス(2,4−ジ−ターシャリーブチルフェニル)ホスファイト〕(以下、Irgafos168と記す)1g、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gを入れ、窒素雰囲気下で、140℃に保たれた油浴中で溶解させた後、攪拌を行いながら、メチルアクリレート 386g、無水マレイン酸300g、ジメチルアミノエチルメタクリレート 14g、及び、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイド10gを添加し、反応容器内を130℃に保ったまま3時間反応を行った。
【0083】
次いで、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、プロピレングルコールモノメチルエーテルパーオキサイドと、未反応の無水マレイン酸、メチルアクリレート、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイド、及び、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイドが分解した低分子化合物の除去を1時間行い、減圧終了後、反応物を取り出し、冷却、乾燥することで、アミノ基を有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A−1)〔重量平均分子量50000、酸価202mgKOH/g〕を得た。なお、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A−1)の重量平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製 HLC−8120GPC、標準物質:ポリスチレン)を用いて測定した。また、前記酸価は、JIS K 2501−2003に基づいて求めた。アミノ基の量は、アミノ基含有ビニル単量体の使用量に基づいて算出した。以下、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量、酸価及びアミノ基含有量は、上記と同様の方法で求めた。
【0084】
攪拌機、温度計および冷却器を取り付けた3Lの反応容器中に、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A−1)を270g、ノルマル酢酸ブチルを205g、シクロへキサノンを200g投入し、100℃に昇温し1時間ホールドした。
【0085】
次いで、前記反応容器の温度を50℃に下げ、25質量%のアンモニア水溶液70gと純水70gとの混合物を約15分かけて徐々に添加、中和を行った。
【0086】
前記反応容器内の温度を50℃に保ち、更に純水を800g添加した後、反応容器の温度を60℃に上げ、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながらノルマル酢酸ブチル、シクロへキサノンを除去(脱溶剤)した。脱溶剤後、反応容器を冷却し、25質量%のアンモニア水溶液70gと純水70gとの混合物を用いて不揮発分及びpHを調整することによって、アミノ基を有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A−1)が水中に分散したカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物〔不揮発分22.8質量%、pH8.0〕を得た。
【0087】
〔実施例2〕
攪拌機、温度計および冷却器を取り付けた3Lの反応容器中に、エチレンとプロピレンと1−ブテンとの共重合体(エチレン/プロピレン/1-ブテンの共重合比率(質量)65/24/11、重量平均分子量52000)1000g、ソルビトール1g、チバガイギー社製 Irganox1010を1g、チバガイギー社製 Irafos168を1g、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gを入れ、窒素雰囲気下で、140℃に保たれた油浴中で溶解させた後、攪拌を行いながら、メチルアクリレートを350g、無水マレイン酸300g、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレート50g、及び、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイド10gを添加し、反応容器内を130℃に保ったまま3時間反応を行った。
【0088】
次いで、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、プロピレングルコールモノメチルエーテルパーオキサイドと、未反応の無水マレイン酸、メチルアクリレート、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイド、及び、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイドが分解した低分子化合物の除去を1時間行い、減圧終了後、反応物を取り出し、冷却、乾燥することで、アミノ基を有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A−2)〔重量平均分子量55000、酸価202mgKOH/g〕を得た。
【0089】
攪拌機、温度計および冷却器を取り付けた3Lの反応容器中に、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A−2)を270g、ノルマル酢酸ブチルを205g、シクロへキサノンを200g投入し、100℃に昇温し1時間ホールドした。
【0090】
次いで、前記反応容器の温度を50℃に下げ、25質量%のアンモニア水溶液70gと純水70gとの混合物を約15分かけて徐々に添加、中和を行った。
【0091】
前記反応容器内の温度を50℃に保ち、更に純水を800g添加した後、反応容器の温度を60℃に上げ、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながらノルマル酢酸ブチル、シクロへキサノンを除去(脱溶剤)した。脱溶剤後、反応容器を冷却し、25質量%のアンモニア水溶液70gと純水70gとの混合物を用いて不揮発分及びpHを調整することによって、アミノ基を有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A−2)が水中に分散したカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物〔不揮発分22.8質量%、pH7.7〕を得た。
【0092】
〔実施例3〕
攪拌機、温度計および冷却器を取り付けた3Lの反応容器中に、エチレンとプロピレンと1−ブテンとの共重合体(エチレン/プロピレン/1-ブテンの共重合比率(質量)65/24/11、重量平均分子量52000)1000g、ソルビトール1g、チバガイギー社製 Irganox1010を1g、チバガイギー社製 Irafos168を1g、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gを入れ、窒素雰囲気下で、140℃に保たれた油浴中で溶解させた後、攪拌を行いながら、メチルアクリレート250g、無水マレイン酸300g、ジメチルアミノエチルメタクリレート150g、及び、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイド10gを添加し、反応容器内を130℃に保ったまま3時間反応を行った。
【0093】
次いで、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、プロピレングルコールモノメチルエーテルパーオキサイドと、未反応の無水マレイン酸、メチルアクリレート、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイド、及び、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイドが分解した低分子化合物の除去を1時間行い、減圧終了後、反応物を取り出し、冷却、乾燥することで、アミノ基を有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A−3)〔重量平均分子量56000、酸価202mgKOH/g〕を得た。
【0094】
攪拌機、温度計および冷却器を取り付けた3Lの反応容器中に、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A−3)を270g、ノルマル酢酸ブチルを205g、シクロへキサノンを200g投入し、100℃に昇温し1時間ホールドした。
【0095】
次いで、前記反応容器の温度を50℃に下げ、25質量%のアンモニア水溶液70gと純水70gとの混合物を約15分かけて徐々に添加、中和を行った。
【0096】
前記反応容器内の温度を50℃に保ち、更に純水を800g添加した後、反応容器の温度を60℃に上げ、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながらノルマル酢酸ブチル、シクロへキサノンを除去(脱溶剤)した。脱溶剤後、反応容器を冷却し、25質量%のアンモニア水溶液70gと純水70gとの混合物を用いて不揮発分及びpHを調整することによって、アミノ基を有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A−3)が水中に分散したカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物〔不揮発分22.7質量%、pH7.5〕を得た。
【0097】
参考
攪拌機、温度計および冷却器を取り付けた3Lの反応容器中に、エチレンとプロピレンと1−ブテンとの共重合体(エチレン/プロピレン/1-ブテンの共重合比率(質量)65/24/11、重量平均分子量52000)1000g、ソルビトール1g、Irgafos168を1g、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gを入れ、窒素雰囲気下で、140℃に保たれた油浴中で溶解させた後、攪拌を行いながら、メチルアクリレート 536g、無水マレイン酸150g、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレート 14g、及び、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイド10gを添加し、反応容器内を130℃に保ったまま3時間反応を行った。
次いで、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、プロピレングルコールモノメチルエーテルパーオキサイドと、未反応の無水マレイン酸、メチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイド、及び、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイドが分解した低分子化合物の除去を1時間行い、減圧終了後、反応物を取り出し、冷却、乾燥することで、アミノ基を有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A−4)〔重量平均分子量52000、酸価101mgKOH/g〕を得た。
攪拌機、温度計および冷却器を取り付けた3Lの反応容器中に、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A−4)を270g、ノルマル酢酸ブチルを205g、シクロへキサノンを200g投入し、100℃に昇温し1時間ホールドした。
次いで、前記反応容器の温度を50℃に下げ、25質量%のアンモニア水溶液70gと純水70gとの混合物を約15分かけて徐々に添加、中和を行った。
前記反応容器内の温度を50℃に保ち、更に純水を800g添加した後、反応容器の温度を60℃に上げ、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながらノルマル酢酸ブチル、シクロへキサノンを除去(脱溶剤)した。脱溶剤後、反応容器を冷却し、25質量%のアンモニア水溶液70gと純水70gとの混合物を用いて不揮発分及びpHを調整することによって、アミノ基を有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A−4)が水中に分散したカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物〔不揮発分22.8質量%、pH7.9〕を得た。
【0098】
〔比較例1〕
攪拌機、温度計および冷却器を取り付けた3Lの反応容器中に、エチレンとプロピレンと1−ブテンとの共重合体(エチレン/プロピレン/1-ブテンの共重合比率(質量)65/24/11、重量平均分子量52000)1000g、ソルビトール1g、チバガイギー社製 Irganox1010を1g、チバガイギー社製 Irafos168を1g、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gを入れ、窒素雰囲気下で、140℃に保たれた油浴中で溶解させた後、攪拌を行いながら、メチルアクリレート400g、無水マレイン酸300g、及び、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイド10gを添加し、反応容器内を130℃に保ったまま3時間反応を行った。
【0099】
次いで、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、プロピレングルコールモノメチルエーテルパーオキサイドと、未反応の無水マレイン酸、メチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイド、及びジ−ターシャリーブチルパーオキサイドが分解した低分子化合物の除去を1時間行い、減圧終了後、反応物を取り出し、冷却、乾燥することで、アミノ基を有さない、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A’−1)〔重量平均分子量51000、酸価202mgKOH/g〕を得た。
【0100】
攪拌機、温度計および冷却器を取り付けた3Lの反応容器中に、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A’−1)を270g、ノルマル酢酸ブチルを205g、シクロへキサノンを200g投入し、100℃に昇温し1時間ホールドした。
【0101】
次いで、前記反応容器の温度を50℃に下げ、25質量%のアンモニア水溶液70gと純水70gとの混合物を約15分かけて徐々に添加、中和を行った。
【0102】
前記反応容器内の温度を50℃に保ち、更に純水を800g添加した後、反応容器の温度を60℃に上げ、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながらノルマル酢酸ブチル、シクロへキサノンを除去(脱溶剤)した。脱溶剤後、反応容器を冷却し、25質量%のアンモニア水溶液70gと純水70gとの混合物を用いて不揮発分及びpHを調整することによって、アミノ基を有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A−2)が水中に分散したカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物〔不揮発分22.6質量%、pH8.2〕を得た。
【0103】
〔比較例2〕
攪拌機、温度計および冷却器を取り付けた3Lの反応容器中に、エチレンとプロピレンと1−ブテンとの共重合体(エチレン/プロピレン/1-ブテンの共重合比率(質量)65/24/11、重量平均分子量52000)1000g、ソルビトール1g、Irganox1010を1g、Irgafos168を1g、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gを入れ、窒素雰囲気下で、140℃に保たれた油浴中で溶解させた後、攪拌を行いながら、メチルアクリレート 553g、無水マレイン酸133g、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレート 14g、及び、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイド10gを添加し、反応容器内を130℃に保ったまま3時間反応を行った。
次いで、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、プロピレングルコールモノメチルエーテルパーオキサイドと、未反応の無水マレイン酸、メチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイド、及び、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイドが分解した低分子化合物の除去を1時間行い、減圧終了後、反応物を取り出し、冷却、乾燥することで、アミノ基を有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A’−2)〔重量平均分子量50000、酸価89mgKOH/g〕を得た。
攪拌機、温度計および冷却器を取り付けた3Lの反応容器中に、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A’−2)を270g、ノルマル酢酸ブチルを205g、シクロへキサノンを200g投入し、100℃に昇温し1時間ホールドした。
次いで、前記反応容器の温度を50℃に下げ、25質量%のアンモニア水溶液70gと純水70gとの混合物を約15分かけて徐々に添加、中和を行った。
前記反応容器内の温度を50℃に保ち、更に純水を800g添加した後、反応容器の温度を60℃に上げ、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながらノルマル酢酸ブチル、シクロへキサノンを除去(脱溶剤)した。脱溶剤後、反応容器を冷却し、25質量%のアンモニア水溶液70gと純水70gとの混合物を用いて不揮発分及びpHを調整することによって、アミノ基を有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A’−2)が水中に分散したカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物〔不揮発分23.0質量%、pH8.0〕を得た。
【0104】
〔比較例3〕
攪拌機、温度計および冷却器を取り付けた3Lの反応容器中に、エチレンとプロピレンと1−ブテンとの共重合体(エチレン/プロピレン/1-ブテンの共重合比率(質量)65/24/11、重量平均分子量52000)1000g、ソルビトール1g、Irganox1010を1g、Irgafos168を1g、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gを入れ、窒素雰囲気下で、140℃に保たれた油浴中で溶解させた後、攪拌を行いながら、メチルアクリレート 186g、無水マレイン酸500g、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレート 14g、及び、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイド10gを添加し、反応容器内を130℃に保ったまま3時間反応を行った。
次いで、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、プロピレングルコールモノメチルエーテルパーオキサイドと、未反応の無水マレイン酸、メチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイド、及び、ジ−ターシャリーブチルパーオキサイドが分解した低分子化合物の除去を1時間行い、減圧終了後、反応物を取り出し、冷却、乾燥することで、アミノ基を有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A’−3)〔重量平均分子量50000、酸価337mgKOH/g〕を得た。
攪拌機、温度計および冷却器を取り付けた3Lの反応容器中に、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A’−3)を270g、ノルマル酢酸ブチルを205g、シクロへキサノンを200g投入し、100℃に昇温し1時間ホールドした。
次いで、前記反応容器の温度を50℃に下げ、25質量%のアンモニア水溶液70gと純水70gとの混合物を約15分かけて徐々に添加、中和を行った。
前記反応容器内の温度を50℃に保ち、更に純水を800g添加した後、反応容器の温度を60℃に上げ、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながらノルマル酢酸ブチル、シクロへキサノンを除去(脱溶剤)した。脱溶剤後、反応容器を冷却し、25質量%のアンモニア水溶液70gと純水70gとの混合物を用いて不揮発分及びpHを調整することによって、アミノ基を有するカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A’−3)が水中に分散したカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物〔不揮発分22.7質量%、pH7.8〕を得た。
【0105】
[接着強度及び耐水接着強度の評価方法]
(ポリプロピレン基材に対する接着強度及び耐水接着強度の評価方法)
前記実施例、参考例及び比較例で得たカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物とカーボンブラック#1000(三菱化学株式会社製)とを、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物の不揮発分100質量部に対して、前記カーボンブラック#1000が5gとなるような割合で混合し、それらを、攪拌機を用いて2000回転で5分間混合した。
【0106】
前記混合によって得られた混合物を、アプリケーターを用い、ポリプロピレン基材の表面に、乾燥膜厚が約10μmとなるように塗布し、次いで、80℃の条件下で30分間乾燥することによって、ポリプロピレン基材表面に皮膜が積層した積層体を得た。
【0107】
前記で得た積層体の皮膜に、1mmの間隔で10×10の碁盤の目を作成した後、その表面にセロハン粘着テープ(ニチバン(株)製)を貼付し、皮膜に対して90°方向に剥離した。
【0108】
前記剥離後、ポリプロピレン基材の表面に残留した皮膜からなる碁盤の目の数を数え、100個〜90個が基材表面に残留していたものを「○」、89個〜70個がポリプロピレン基材表面に残留していたものを「○△」、69個〜50個が残留していたものを「△」、49個〜10個が残留していたものを「×」、9個以下が残留していたものを「××」と評価した。
【0109】
また、前記と同様の方法で作製した積層体を、50℃の温水に2時間浸漬した。浸漬後の積層体の皮膜に、1mmの間隔で10×10の碁盤の目を作成した後、その表面にセロハン粘着テープ(ニチバン(株)製)を貼付し、皮膜に対して90°方向に剥離した。
【0110】
前記剥離後、ポリプロピレン基材の表面に残留した皮膜からなる碁盤の目の数を数え、100個〜90個が基材表面に残留していたものを「○」、89個〜70個がポリプロピレン基材表面に残留していたものを「○△」、69個〜50個が残留していたものを「△」、49個〜10個が残留していたものを「×」、9個以下が残留していたものを「××」と評価した。
【0111】
(ポリエチレンテレフタレート基材に対する接着強度及び耐水接着強度の評価方法)
前記ポリプロピレン基材の代わりに、ポリエチレンテレフタレート基材を使用すること以外は、前記と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレート基材に対する接着強度及び耐水接着強度を評価した。
【0112】
(炭素材料からなる基材に対する接着強度及び耐水接着強度の評価方法)
前記ポリプロピレン基材の代わりに、電解質液表面処理の施されたカーボン基材を使用すること以外は、前記と同様の方法で、カーボン基材に対する接着強度及び耐水接着強度を評価した。
【0113】
[分散性の評価方法]
前記実施例及び比較例で得たカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物とカーボンブラック#1000(三菱化学株式会社製)とを、前記カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂組成物の不揮発分100質量部に対して、前記カーボンブラック#1000が5gとなるような割合で混合し、それらを、攪拌機を用いて2000回転で5分間混合した。
【0114】
前記混合によって得られた混合物を、アプリケーターを用い、ポリプロピレン基材の表面に、乾燥膜厚が約10μmとなるように塗布し、次いで、80℃の条件下で30分間乾燥することによって、ポリプロピレン基材表面に皮膜が積層した積層体を得た。
【0115】
前記積層体を構成する皮膜の表面及び断面を、光学顕微鏡(MZ−95 ライカ社製)を用いて観察し、分散良好であったものを「○」、直径100nm〜500nmのカーボン凝集物があったものを「△」、直径500nm以上のカーボン凝集物があったものを「×」と評価した。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】