(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5741963
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】ヒンジ装置
(51)【国際特許分類】
F16C 11/10 20060101AFI20150611BHJP
E05D 3/02 20060101ALI20150611BHJP
B60R 7/04 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
F16C11/10 A
E05D3/02
B60R7/04 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-269340(P2012-269340)
(22)【出願日】2012年12月10日
(65)【公開番号】特開2014-114595(P2014-114595A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2014年12月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平井 洋司
【審査官】
堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−103697(JP,A)
【文献】
特開2009−286165(JP,A)
【文献】
特開2005−343460(JP,A)
【文献】
特開2000−343935(JP,A)
【文献】
特開2002−286284(JP,A)
【文献】
実開昭64−36714(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/00−11/12
E05D 1/00− 9/00
B60R 3/00− 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製ベースヒンジと、前記樹脂製ベースヒンジに回動軸を介して回動自在に係合される樹脂製アームヒンジと、を備え、
前記樹脂製ベースヒンジ又は前記樹脂製アームヒンジの一方が前記回動軸を、他方が前記回動軸を枢支する回動軸受けを有し、
前記回動軸と前記回動軸受けとの間に、前記回動軸側に配置される付勢部材と、前記回動軸受け側に配置される摺動体とを介在させた、ヒンジ装置であって、
前記摺動体がその外周面に凸部を有し、前記凸部の周囲には切り込み部が形成されており、前記凸部が前記回動軸受けの内周にて前記付勢部材側に押圧されて押し込まれるように変位する、ヒンジ装置。
【請求項2】
付勢部材が弾性部材である、請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
摺動体が樹脂製である、請求項1又は2に記載のヒンジ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能なリッド(蓋体)を備える車両用コンソールボックスのヒンジ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロアコンソールには、運転席と助手席との間に沿って、一般に、小物入れとしてのコンソールボックスが一体に付設され、種々のドライブ用小物類、或いはコンパクトディスク等を収納できるようにされている。そして、このコンソールボックスの上方開口を開閉自在に覆うリッド(蓋体)は、所謂、スライド式、或いはシェード式に形成される場合もあるが、アームレストを兼ねたリッドとして形成し、後端をボックス本体にヒンジ装置(蝶番)により結合することが一般的である(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
そして、車両用コンソールボックスは、箱状をなすコンソールボックス本体(ベース体)と、コンソールボックス本体の開口を開閉するリッドとを持つ。コンソールボックス本体とリッドとの一方は、ヒンジ装置(蝶番)の回動軸を持ち、他方はこの回動軸を枢支する、ヒンジ装置(蝶番)の回動軸受けを持つ。このためリッドは、開口を開く開位置と、開口を閉じる閉位置との間を回動する。
しかし、この場合にも、回動軸受けが精度高く成形されていないと、弾性体が回動軸受けまたは回動軸に引っかかるために回動荷重が大きくなり、回動操作性が十分に向上しない場合や、弾性体(付勢部材)を回動軸受けに組付けることが困難な場合がある。このため、弾性体の組付け性や、回動操作性に優れる回動装置(コンソールボックス)が望まれており、例えば、回動軸と回動軸受けとの間に、摩擦係数の小さな樹脂材料からなる摺動体を介在させ、回動操作性を改善させた回動装置(コンソールボックス)が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−0267852号公報
【特許文献2】特開2000−343935号公報
【特許文献3】特開2005−349936号公報
【特許文献4】特開2009−286165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンソールボックスのヒンジ装置(蝶番)において、弾性体(バネ等の付勢部材)を縮めて、ヒンジ装置(蝶番)の回動軸受けの中に組み入れるのが、製造作業上極めて煩雑な作業であり、原価をも押し上げている。
そこで、本発明は、前記課題等を解決するためのものであり、回動操作性及び組付け作業性に優れた、車両用コンソールボックスのヒンジ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の通りである。
(1) 樹脂製ベースヒンジと、前記樹脂製ベースヒンジに回動軸を介して回動自在に係合される樹脂製アームヒンジと、を備え、前記樹脂製ベースヒンジ又は前記樹脂製アームヒンジの一方が前記回動軸を、他方が前記回動軸を枢支する回動軸受けを有し、前記回動軸と前記回動軸受けとの間に、前記回動軸側に配置される付勢部材と、前記回動軸受け側に配置される摺動体とを介在させた、ヒンジ装置であって、前記摺動体がその外周面に凸部を有し、前記凸部の周囲には切り込み部が形成されており、前記凸部が前記回動軸受けの内周にて前記付勢部材側に押圧されて押し込まれるように変位する、ヒンジ装置。
(2) 付勢部材が弾性部材である、(1)に記載のヒンジ装置。
(3) 摺動体が樹脂製である、(1)又は(2)に記載のヒンジ装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、回動操作性及び組付け作業性に優れた、車両用コンソールボックスのヒンジ装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】自動車内装品としてのコンソールボックスを示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態のヒンジ装置を示す分解図である。
【
図3】本発明の一実施形態のヒンジ装置において、(a)は摺動体内に付勢部材が配置されている状態を示す平面図であり、(b)は回動軸受け内に摺動体が配置されている状態を示す平面図である。
【
図4】(a)は
図3(b)におけるa−a線の断面図であり、(b)は、回動軸が挿入された状態の部分断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態のヒンジ装置において、(a)は摺動体の有底側から観察した斜視図であり、(b)は摺動体の開口側から観察した斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態のヒンジ装置において、摺動体の側面図である。
【
図7】(b)は
図6のA−A’線での断面図であり、(c)は
図6のB−B’線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のヒンジ装置を、自動車内装品としてのコンソールボックスに用いた場合の一実施形態について説明する。
図1に、本実施形態のヒンジ装置を用いた、自動車内装品としてのコンソールボックスAの一部の斜視図を示す。このコンソールボックスAは、内部に小物などを収納する収納部aと、その上部にヒンジ装置1を介して回動されるリッド(蓋体)bを備えている。リッド(蓋体)bの上面には、例えば、自動車のドライバーが腕を置くアームレストが構成されており、シフトレバーを覆うセンタコンソールの一部として形成され、運転席と助手席との間に沿って設けられている。
そして、このコンソールボックスAは、一般的に、リッドbの後端部がコンソールボックス本体の後端に、本発明のヒンジ装置1により枢支されて取付けられており、後述する本発明のヒンジ装置1によれば、リッドbは任意の位置で保持される。
【0010】
図2は、本実施形態のヒンジ装置1の分解図である。
本実施形態のヒンジ装置1は、樹脂製ベースヒンジ3と、前記樹脂製ベースヒンジ3に回動軸4を介して回動自在に係合される樹脂製アームヒンジ2と、を備え、前記樹脂製ベースヒンジ3又は前記樹脂製アームヒンジ2の一方が前記回動軸4で保持され、他方が前記回動軸4を枢支する回動軸受け8を有し、前記回動軸4と前記回動軸受け8との間に、前記回動軸4側に配置される付勢部材5と、前記回動軸受け8側に配置される摺動体6とを介在させた、ヒンジ装置1であって、前記摺動体6がその外周面11に凸部を有し、前記凸部の周囲には切り込み部が形成されており、前記凸部が前記回動軸受け8の内周にて押圧されて前記付勢部材5側に押し込まれるように変位する。
また、前記凸部は、摺動体6の外周面11に、1箇所又は2箇所以上設けられている。また、付勢部材5が弾性部材であることが好ましく、また、摺動体6が樹脂製であることがより好ましい。また、本実施形態においては、樹脂化を行い軽量化されているため、部品削減を可能とし、作業性及び実用性に優れたヒンジ装置1となる。
【0011】
樹脂製ベースヒンジ3とは、プラスチック樹脂から成形されたものであり、固定されたベースなる部材側に設けられたものである。また、樹脂製アームヒンジ2とは、プラスチック樹脂から成形されたものであり、ベースなる部材に対して回動自在に取り付けられる部材側に設けられるものである。なお、プラスチック樹脂としては成形可能であれば特に限定しないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0012】
本実施形態のヒンジ装置1は、樹脂製ベースヒンジ3と、この樹脂製ベースヒンジ3に回動自在に係合される樹脂製アームヒンジ2とを備えているが、樹脂製ベースヒンジ3と樹脂製アームヒンジ2とが、回動軸4を介して、回動自在に係合されている。
図2に示すように、例えば、樹脂製アームヒンジ2には、回動軸挿入用の取付穴9が設けられおり、樹脂製ベースヒンジ3と、樹脂製アームヒンジ2とを組付け、樹脂製アームヒンジ2の回動軸挿入用の取付穴9と、樹脂製ベースヒンジ3の回動軸受け8内に設けられた付勢部材5とに、回動軸4を挿入し、リング7等を、回動軸4が外れないように、回動軸4に嵌め込み、樹脂製ベースヒンジ3と樹脂製アームヒンジ2とが、回動軸4を介して、回動自在に係合される。
なお、通常、樹脂製ベースヒンジ3と、樹脂製アームヒンジ2とを組付ける前に、回動軸受け8内に、付勢部材5と摺動体6を、予め、配置する。また、摺動体6は、その外周面に、リブ15が設けられており、摺動体6のリブ15は、樹脂製ベースヒンジ3のアーム25の先端に位置する回動軸受け8の内周面に形成された溝部28に入り込んでいる。
【0013】
図3(a)に示すように、樹脂製ベースヒンジ3と、樹脂製アームヒンジ2とを組付ける前に、摺動体6内に、付勢部材5を、予め、配置する。摺動体6は、樹脂製であり、強度や耐久性の点からポリアセタール樹脂製であることが好ましく、また、有底の略真円筒状であり、回動軸挿入用の取付穴29が形成されている。また、付勢部材5は、弾性体であり、例えば、湾曲した帯状をなす金属製の板バネからなる。金属製の板バネ(付勢部材)の略中央部である回動軸4の取付部12は、それぞれ、略真円弧状に湾曲している。また、金属製の板バネ(付勢部材)のなかで、取付部の両端側に位置する2つの摺接部13は、それぞれ、略円弧状に湾曲している。
【0014】
図3(b)に示すように、樹脂製ベースヒンジ3の回動軸受け(図示せず)に、付勢部材5が配置された摺動体6を組み入れることによって、摺動体6の凸部10が回動軸受けの内周にて押圧されて押し込まれるように変位し、周囲に切り込み部が形成された凸部10の一部が、内側(付勢部材5側)に突出して入り込み、付勢部材5にやや強く接する。
従って、前記凸部10は、樹脂製ベースヒンジ3と樹脂製アームヒンジ2とが、回動軸4を介して、回動自在に回動する範囲内において、付勢部材5(板バネ等)に当接するように摺動体6の外周面に設けられていることが好ましい。
また、摺動体6の内周面の円周上において、付勢部材5(板バネ等)の摺接部13の1つの中心角40は、80度以上160度以下であることが好ましい。これにより、樹脂製ベースヒンジと、樹脂製ベースヒンジが回動する範囲において、凸部10と付勢部材5は、当接する。
【0015】
図4(a)は、
図3(b)におけるa−a線の断面図である。
図4(a)に示すように、樹脂製ベースヒンジ3の回動軸受け8に、摺動体6と、付勢部材5とが配置されており、摺動体6の、切り込み部が周囲に形成された凸部10の一部が、付勢部材5に接している。摺動体6の、切り込み部が周囲に形成された凸部10の一部が、付勢部材5にやや強く接することにより、付勢部材5は摺動体6に対して、より弾性的に摺接する。
摺動体6内に、付勢部材5は、予め、配置されるが、摺動体6の内径は、付勢部材5の径と略等しく、摺動体6内に、付勢部材5を入り込ませ、配置することは容易である。
また、
図4(b)は、回動軸4が挿入された状態の部分断面図(樹脂製アームヒンジ等は不図示)であり、回動軸4と回動軸受け8との間において、付勢部材5が、前記回動軸4側に配置されており、摺動体6が回動軸受け8側に配置されている。すなわち、前記のように配置することによって、摺動体6は回動軸受け8に固定することが可能となり、また、付勢部材5は摺動体6と摺接することが可能となる。
【0016】
図5(a)は、摺動体6の有底側Cから観察した斜視図であり、
図5(b)は、摺動体6の開口側Dから観察した斜視図である。摺動体6は、その外周面11に凸部10を有し、前記凸部10は、押圧されて押し込まれるように変位させる切り込み部30,31が周囲に形成されている。
また、摺動体6は、その外周面に、リブ15が設けられている。摺動体6のリブ15は、回動軸受け8の内周面に形成された溝部に入り込んでいるため、摺動体6は回動軸受け8に固定されている。
また、前記リブ15の個数は限定するものではないが、負荷の分散の点から複数個設けられることが好ましい。また、リブ15が2個設けられる場合は、摺動体6の中心に対して、対称位置にすることが好ましい。また、リブ15が3個以上設けられる場合は、2個は対称位置に設け、3個目からは、誤組付け防止の点から、先の2個のリブ15と非対称位置に設けることが好ましい。
また、摺動体6のリブ15は、回動軸受け(不図示)の内周面に形成された溝部(不図示)に入り込んでいるため、摺動体6は回動軸受けに固定されているが、前記溝部の少なくとも1つは、樹脂製ベースヒンジ(不図示)のアーム(不図示)付近の回動軸受けの厚肉部に設けられていることが好ましい。
【0017】
図6は、摺動体6の側面図であり、
図7(a)は、
図6のA−A’線での断面図であり、
図7(b)は、B−B’線での断面図である。
凸部10が2箇所以上設けられている場合は、摺動体6の外周面に等角度間隔で設けられていることが好ましい。また、摺動体6の外周面の円周上において、1つの凸部10の中心角50は、30度以上180度以下が好ましく、60度以上160度以下がより好ましく、90度以上120度以下が特に好ましい。これにより、樹脂製ベースヒンジと、樹脂製ベースヒンジが回動する範囲において、凸部10と付勢部材(不図示)は、当接する。
前述したように、摺動体6の内径20は、付勢部材の径と略等しいか、あるいは、僅かに小さいか、あるいは、僅かに大きい。従って、摺動体6の開口側Dより、付勢部材を入り込ませる作業は容易である。
また、摺動体6の凸部10は、周囲3方向に切り込み部が形成されており、摺動体6の有底側Cの切り込み部30と、その切り込み部に垂直方向に、一対の切り込み部31がある。また、前記凸部10の高さは、有底側Cが低く、開口側Dに向けて徐々に高くなっている。従って、摺動体6に、付勢部材を配置した状態でも、外周面11への凸部10の突出は僅かであり、回動軸受け8に、摺動体6を入り込ませる作業も容易である。
そして、回動軸受け8に、摺動体6を配置することによって、摺動体6の外周面11に設けられた、切り込み部30,31が周囲に形成された凸部10が、前記回動軸受け8の内周にて、押圧されて押し込まれるように変位し、凸部10の一部(裏面側)が、付勢部材に接することにより、付勢部材は摺動体6に対して、弾性的に摺接する。
【符号の説明】
【0018】
A:コンソールボックス、a:収納部、b:リッド又は蓋体、1:ヒンジ装置、2:樹脂製アームヒンジ、3:樹脂製ベースヒンジ、4:回動軸、5:付勢部材、6:摺動体、7:リング、8:回動軸受け、9:回動軸挿入用の取付穴、10:(切り込み部を有する)凸部、11:摺動体の外周面、12:取付部、13:摺接部、15:リブ、20:摺動体の内径、25:樹脂製ベースヒンジのアーム、28:溝部、29:回動軸挿入用の取付穴、40:(摺接部に対応する)中心角、50:(凸部に対応する)中心角、30,31:切り込み部、C:摺動体の有底側、D:摺動体の開口側。