特許第5742301号(P5742301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5742301画像投影装置、デジタルカメラ及び光学機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5742301
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】画像投影装置、デジタルカメラ及び光学機器
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20150611BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   G03B21/14 Z
   G03B21/00 E
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-45890(P2011-45890)
(22)【出願日】2011年3月3日
(65)【公開番号】特開2012-181473(P2012-181473A)
(43)【公開日】2012年9月20日
【審査請求日】2014年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】福島 岳寿
【審査官】 田井 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−262037(JP,A)
【文献】 特開2010−122585(JP,A)
【文献】 特開2009−093076(JP,A)
【文献】 特開2008−033130(JP,A)
【文献】 特開2010−181556(JP,A)
【文献】 特開2005−108027(JP,A)
【文献】 特開2010−028412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00−21/30
G09G 5/00− 5/42
H04N 5/66− 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像を記録する画像記録部と、
画像を投影する画像投影部と、
前記画像投影部の方向を取得する方向取得部と、
前記方向取得部により取得された方向に基づいて、前記画像記録部に記録された画像の中から投影すべき画像を選択する画像選択部と、
前記画像選択部により選択された画像を前記画像投影部の方向に基づいて補正する画像補正部とを備え
前記画像補正部は、前記画像選択部により選択された画像に対して所定範囲内にある複数の画像について、該画像を投影する際に前記画像投影部が向くと予測される方向に基づいて予め補正しておき、
前記画像選択部は、前記方向取得部により取得された方向に基づいて、前記画像補正部により補正された画像の中から投影すべき画像を選択することを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
前記画像補正部は、前記画像の形状を補正することを特徴とする請求項に記載の画像投影装置。
【請求項3】
前記画像補正部は、前記画像の投影条件を補正することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像投影装置。
【請求項4】
前記画像投影部の位置を取得する位置取得部をさらに備え、
前記画像選択部は、前記方向取得部により取得された方向および前記位置取得部により取得された位置に基づいて、投影すべき画像を選択することを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の画像投影装置。
【請求項5】
現在時間を取得する時間取得部をさらに備え、
前記画像選択部は、前記方向取得部により取得された方向、前記位置取得部により取得された位置、および前記時間取得部により取得された時間に基づいて、投影すべき画像を選択することを特徴とする請求項に記載の画像投影装置。
【請求項6】
外部装置から無線通信により転送された画像を前記画像記録部に記録させる通信部をさらに備えることを特徴とする請求項の何れか一項に記載の画像投影装置。
【請求項7】
被写体の像を撮影して前記画像記録部に記録させる撮影部と、
請求項1〜の何れか一項に記載の画像投影装置と
を備えることを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項8】
前記撮影部の出力に基づくコントラストの変化に基づいて、前記画像投影部による画像投影の際のフォーカス調整を行うことを特徴とする請求項に記載のデジタルカメラ。
【請求項9】
被写体を撮影する撮影部と、
選択された選択画像を投影する投影部と、
前記投影部による投影方向を検出する検出部と、
前記撮影部により撮影された画像のうち前記検出部により検出された方向から所定範囲内の角度で撮影された前記画像を前記検出部により検出された方向を用いて補正する補正部と
前記補正部に補正された前記画像を前記選択画像として選択する選択部とを備えることを特徴とする光学機器。
【請求項10】
請求項9に記載された光学機器であって、
前記補正部は、前記検出部により検出された方向から前記所定範囲内の角度で撮影された前記画像に台形補正を行い、前記検出部により検出された方向から前記所定範囲内の角度で撮影されていない前記画像に台形補正を行わず、
前記選択部は、前記補正部に補正された前記画像のうち、前記検出部により検出された方向から最も近い角度で撮影された前記画像を前記選択画像として選択することを特徴とする光学機器。
【請求項11】
請求項10に記載された光学機器であって、
前記撮影部の出力を用いて前記投影部に投影される前記選択画像のフォーカス調整を行うフォーカス調整部を含むことを特徴とする光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置、デジタルカメラ及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の表示画面(表示パネル)を備える携帯端末の位置や方向(傾き)に応じて、蓄積された撮影画像を検索して、該表示画面上に表示するようにした画像表示システムが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−134881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近時、持ち運びが可能なコンパクトなプロジェクタやプロジェクタ付きのデジタルカメラが実用されている。このような画像投影装置に上述した従来技術を適用して、画像投影装置の位置や方向に応じて、蓄積された撮影画像を検索して、フラット面を投影面として投影表示することを考えた場合、画像投影装置の投影方向(投影光学系の光軸の方向)を投影面に対して実質的に垂直に設定して画像を表示している状態から、表示中の画像と撮影方向が異なる他の画像(隣接する画像)を閲覧しようとして、画像投影装置を傾ける(方向を変更する)と、該投影面に対して該光軸が垂直ではなくなるため、投影される画像が歪む、画像の大きさや明るさが変わる、ピントがずれるといった現象を生じ、画像の表示品質が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、投影表示させる画像を変更するために装置の姿勢を変更した場合に、良好な表示品質を実現することができる画像投影装置、デジタルカメラ及び光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像投影装置は、複数の画像を記録する画像記録部と、画像を投影する画像投影部と、前記画像投影部の方向を取得する方向取得部と、前記方向取得部により取得された方向に基づいて、前記画像記録部に記録された画像の中から投影すべき画像を選択する画像選択部と、前記画像選択部により選択された画像を前記画像投影部の方向に基づいて補正する画像補正部とを備え、前記画像補正部は、前記画像選択部により選択された画像に対して所定範囲内にある複数の画像について、該画像を投影する際に前記画像投影部が向くと予測される方向に基づいて予め補正しておき、前記画像選択部は、前記方向取得部により取得された方向に基づいて、前記画像補正部により補正された画像の中から投影すべき画像を選択することを特徴とする。
また、本発明に係るデジタルカメラは、被写体の像を撮影して前記画像記録部に記録させる撮影部と、本発明の画像投影装置とを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る光学機器は、被写体を撮影する撮影部と、選択された選択画像を投影する投影部と、前記投影部による投影方向を検出する検出部と、前記撮影部により撮影された画像のうち前記検出部により検出された方向から所定範囲内の角度で撮影された前記画像を前記検出部により検出された方向を用いて補正する補正部と前記補正部に補正された前記画像を前記選択画像として選択する選択部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、投影表示させる画像を変更するために装置の姿勢を変更した場合に、良好な表示品質を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の画像投影装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態の画像投影装置の処理を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態における画像補正の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は本実施形態の画像投影装置の構成を示すブロック図である。この画像投影装置1は、例えば、プロジェクタ付きのデジタルカメラである。画像投影装置1は、制御部11、撮影部12、画像記録部13、操作部14、位置情報取得部15、方位情報取得部16、距離情報取得部17、傾斜情報取得部18、移動情報取得部19、時間情報取得部20、サーバ画像取得部21、および画像投影部22を概略備えて構成されている。
【0010】
制御部11は、CPU、メモリ、およびその他の周辺回路によって構成され、画像投影装置1の全体を統括的に制御する。なお、制御部11を構成するメモリは、例えばSDRAM等の揮発性のメモリである。このメモリは、CPUがプログラム実行時にプログラムを展開するためのワークメモリ、データ(後述する補正画像に係るデータ等)を一時的に記録するためのバッファメモリを含む。
【0011】
撮影部12は、撮影レンズ23を介して結像される被写体の像を撮影し、電気信号に変換して出力するCMOS等の撮像素子、該撮像素子から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路、該A/D変換回路でA/D変換された画像データに対して各種の画像処理を行う画像処理回路を備え、該画像処理回路で処理された画像データに所定の付加情報を付加して撮影画像として、画像記録部13に記録する。
【0012】
画像記録部13は、不図示のスロットに着脱可能に装着されるメモリカード等からなる情報記録媒体からなり、画像記録部13には、撮影部12により撮影された撮影画像が付加情報とともに記録される。撮影画像には、静止画像、動画像が含まれる。撮影画像に付加される付加情報としては、撮影画像が撮影された位置を表す位置情報、撮影画像が撮影された方向情報(方位および仰角または俯角)、撮影画像の撮影時刻に関する時間情報(年月日時分秒)等が含まれる。なお、画像記録部13には、撮影部12により撮影された撮影画像のみならず、後述するサーバ画像取得部21を介して転送された画像が記録される場合もある。
【0013】
操作部14は、ユーザが操作するボタン、キー、ダイヤル等からなり、撮影の指示、画像投影の開始や終了の指示、モード選択(例えば、後述するプラネタリウムモードの選択)、各種のモード設定等を行うものである。
【0014】
位置情報取得部15は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)機能を備えており、画像投影装置1の現在の位置に関する位置情報を取得する。位置情報には、例えば経度、緯度、高度の各情報が含まれる。
【0015】
方位情報取得部16は、地球が生じている南北の地磁気を検出して方角(方位)を求める電子コンパス(地磁気センサ)を備えており、画像投影装置1の現在の方位(鉛直軸周りの方向)に関する方位情報を取得する。方位情報は、例えば真北に対する時計周りの角度で表される。
【0016】
距離情報取得部17は、赤外線式距離センサやレーザ式距離センサ等の距離センサを備えており、画像投影装置1と投影面(スクリーン、天井、壁面等)2との距離に関する距離情報を取得する。撮影部12が例えばAF(オートフォーカス)用に測距センサを備えている場合には、該撮影部12の測距センサと兼用することができる。
【0017】
傾斜情報取得部18は、3軸(水平面内の2軸および鉛直軸)周りの回転を検出する傾斜センサを備えており、画像投影装置1の水平面に対する傾斜情報(仰角または俯角)を取得する。本実施形態では、傾斜情報取得部18は、鉛直軸周りの角度も取得できるようになっている。
【0018】
移動情報取得部19は、加速度センサを備えており、画像投影装置1の水平方向の移動量を取得する。時間情報取得部20は、タイマーを備えており、現在日時(年月日時分秒)を取得する。
【0019】
サーバ画像取得部21は、図外のサーバが記録保持している画像の転送を受ける通信部を備えており、該通信部としては、無線LANモジュールやBluetooth(ブルートゥース)モジュールなどを例示することができる。なお、該通信部としては、このような無線通信モジュールに加えて、またはそれとは別に、有線LANモジュールやUSBインターフェースなどを用いて有線接続して通信するモジュールを設けてもよい。
【0020】
画像投影部22は、例えば、照明光を出射する光源、画像を形成する液晶素子(反射型または透過型)、および投影光学系(レンズ系)24を概略備えて構成されている。本実施形態では、投影光学系24はズーム補正およびAF(オートフォーカス)補正を光学的に行う機能を備えている。投影光学系24を含む画像投影部22は、この画像投影装置1に一体的に設けられており、投影方向(投影光学系24の光軸の向き)の変更は、画像投影装置1自体の傾き(姿勢)を変更することにより行う。但し、画像投影部22を画像投影装置1の本体に対して2軸周りに回動し得るように支持して、画像投影部22のみの傾き(姿勢)を変更できるようにしてもよい。
【0021】
制御部11は、CPUが所定のプログラムを実行することによって実現する機能構成として、画像選択部31および画像補正部32等を備えている。画像選択部31は、位置情報取得部15により取得された位置情報、方位情報取得部16により取得された方位情報、傾斜情報取得部18により取得された傾斜情報、移動情報取得部19により取得された移動情報、および時間情報取得部20により取得された時間情報のうちの1つまたは2以上の組み合わせ基づいて、画像記録部13に記録された画像または後述する画像補正部32により補正された画像の中から投影すべき画像を選択する。
【0022】
画像補正部32は、画像選択部31により選択された画像を画像投影装置1(画像投影部22)の方向(姿勢)に基づいて補正するものであり、画像の形状を補正(本実施形態では、台形補正)する画像処理部33および画像の投影条件(ズームおよびフォーカス)を補正するために、投影光学系24に制御信号を送る駆動部34を備えている。本実施形態では、画像補正部32は、画像選択部31により最初に選択された画像に対して所定範囲内にある複数の画像について、該画像を投影する際に画像投影装置1(画像投影部22)が向くと予測される方向に基づいて予め一括的に補正する。なお、画像補正部32は、画像選択部31により選択された画像を、方位情報取得部16により取得された方位情報および傾斜情報取得部18により取得された傾斜情報の一方または両方に基づいて補正するようにしてもよい。
【0023】
次に、図2に示すフローチャートを参照して、画像投影装置1の主要な動作(プラネタリウムモード)について説明する。プラネタリウムモードは、例えば、キャンプの夜のテントの中で、投影面2としての天井(略水平なフラット面とする)に向けて画像を投影すると、画像投影装置1の投影方向(投影光学系24の光軸の方向)に見えるであろう星空の写真が映し出され、画像投影装置1を傾ける(姿勢を変化させる)とその傾けた方向に見えるであろう星空の写真が映し出されるものである。
【0024】
このプラネタリウムモードを実行する前提として、画像投影装置1の撮影部12を用いて、例えば、前年のほぼ同日時に、同じ位置からに、方向(方位および仰角)を変化させて撮影した星空の撮影画像が複数枚、画像記録部13に記録されており、それら撮影画像を画像投影装置1により投影表示させるものとする。画像記録部13に記録された各画像には、位置情報取得部15により取得された位置情報、方位情報取得部16により取得された方位情報、傾斜情報取得部18により取得された傾斜情報(ここでは、仰角)、時間情報取得部20により取得された時計情報が付加情報として付加されているものとする。なお、投影画像は撮影部12により撮影されて画像記録部13に保存された複数枚の撮影画像でもよいし、シームレス画像(パノラマ画像を含む)であってもよい。また、画像記録部13に記録された画像は、撮影部12により撮影されたもののみならず、他のデジタルカメラ等により撮影され、画像記録部13に記録されたものであってもよい。さらに、画像記録部13に記録された画像は、サーバ画像取得部21を介して外部装置としてのサーバから転送を受け、画像記録部13に記録された画像であってもよい。
【0025】
まず、この画像投影装置1のユーザは、画像投影装置1を投影したい方向(ここでは、鉛直上方向、即ち投影面2としての天井面に対して略直交する方向とする)に向け、投影表示を開始するため、操作部14の投影釦をオン(On)にする。制御部11は、操作部14の投影釦がオンされたか否かを判断し(ステップS1)、オンされた場合(Yesの場合)には、位置情報取得部15による位置情報、方位情報取得部16による方位情報、傾斜情報取得部18による傾斜情報、および時間情報取得部20による時間情報を取得する(ステップS2)。
【0026】
次に、制御部11(画像選択部31)は、これらの情報(位置情報、方位情報、傾斜情報および時間情報)に基づいて、画像記録部13に記録されている各画像の付加情報を検索し、例えば、前年の同日時(月日時分秒)に、同じ位置から、同じ方向(方位および仰角)で撮影した星空の撮影画像を検索・選択する(ステップS3)。なお、ステップS3での画像選択の際に、日時、位置および方向(方位および仰角または俯角)において、完全に一致するものがない場合には、より近いものを選択するものとする。
【0027】
次に、制御部11は、画像投影装置1と投影面2としての天井面との距離情報を距離情報取得部17から取得し(ステップS4)、取得した距離情報により投影する画像のフォーカスを自動で調整する(ステップS5)。なお、投影画像のAF(オートフォーカス)は撮影部12からの情報のコントラストの変化を検出して、最適なコントラストを実現できるように調整してもよい。この場合には、撮影部12の駆動は、省エネルギの観点から、フォーカス調整時にのみ行うことが好ましい。
【0028】
次に、制御部11は、ステップS3で選択された画像を、ステップS5でフォーカス調整を行った上で投影する(ステップS6)。その後、ステップS3で選択した画像(即ち、ステップS6で投影した画像)に対して、所定範囲内にある複数の撮影画像(例えば、方向および時間が比較的に近い撮影画像)である周辺画像を検索し、検索したそれぞれの画像に対して、その画像を投影する際の画像投影装置1の傾きを考慮して、台形補正を事前に一括的に行い、補正後の画像(補正画像)として別ファイルに保存しておく(ステップS7)。
【0029】
ここで、台形補正とは、投影方向(投影光学系24の光軸の方向)が投影面2に対して直交しないために台形状に表示されることを抑制するため、投影面2上の画像が矩形(長方形)をなすように画像の形状を補正する処理である。補正画像には、補正された画像であることを示す情報が付加情報として付加されるとともに、原則して、補正前と同じ付加情報(位置情報、方位情報、傾斜情報、時間情報等)が付加されるものとする。なお、上記の所定範囲としては、枚数または角度範囲として予め登録されたものを用いることができる。補正画像の記録場所としては、ここでは、制御部11が備える揮発性メモリの作業領域(バッファメモリ)を用いるものとする。但し、画像記録部13を用いてもよい。
【0030】
次に、制御部11は、ユーザが別の撮影画像を投影させるために画像投影装置1を傾けたか否かを、傾斜情報取得部18で取得される傾斜情報に基づいて判断し(ステップS8)傾けたと判断した場合(Yesの場合)には、当該傾斜情報を取得する(ステップS9)。次に、制御部11(画像選択部31)は、ステップS9で取得された画像投影装置1の傾斜情報に基づいて、ステップS7で記録した補正画像の付加情報(傾斜情報)を検索し、傾斜情報に係る角度が最も近い補正画像を選択する(ステップS10)。なお、ここで選択された画像は既に台形補正されているため、選択してから台形補正をして投影する場合と比較してスムーズに投影できる。但し、ステップS7を省略して、ステップS9で取得された傾斜情報に基づいて、画像記録部13に記録された撮影画像の付加情報を検索し、傾斜情報に係る角度が最も近い撮影画像を選択し、ここで選択された画像をステップS9で取得された傾斜情報に基づいて台形補正するようにしてもよい。
【0031】
次に、制御部11(画像補正部32)は、ステップS9で取得された画像投影装置1の傾斜情報から、投影する画像のズーム(倍率)とフォーカスを自動補正し(ステップS11)、ステップS10で選択された画像を投影する(ステップS12)。その後、ステップS15に進む。
【0032】
ステップS8において、画像投影装置1が傾けられていないと判断した場合(Noの場合)には、ステップS13に進んで、画像投影装置1が平行移動されたか否かを、移動情報取得部19により取得される移動情報に基づいて判断し、平行移動されたと判断した場合(Yesの場合)には、当該移動量情報を取得して(ステップS14)、ステップS3に戻る。この場合には、ステップS3において、取得された位置情報をステップS14で取得された移動量で補正した位置情報に基づいて、撮影画像の再検索・選択が行われる。ここで再検索される撮影画像には台形に係る歪みは無いため、ステップS7で台形補正されていない元の画像(画像記録部13に記録された画像)から選択され、ステップS6で該画像が投影される。ステップS13において、平行移動されていないと判断した場合(Noの場合)には、ステップS15に進む。
【0033】
ステップS15において、制御部11は、操作部14の投影釦がオフ(OFF)されたか否かを判断し、オフされていない場合(Noの場合)には、ステップS8に戻って、ステップS8〜S13の処理を繰り返し、投影釦がオフされた場合(Yesの場合)には、ステップS7で台形補正した各補正画像を消去して(ステップS16)、このプラネタリウムモードに係る投影処理を終了する。
【0034】
図3は、画像補正(台形補正)の一例を説明するための図である。ここでは、天井面を投影面2として所定のX方向およびこれに直交するY方向にそれぞれ5mの投影可能領域を考えている。操作部14の投影釦をオンにして最初に投影する画像として画像P1が選択されるものとし、このときは、画像投影装置1を鉛直上方向に向ける(即ち投影光学系24の光軸と投影面2とは実質的に直交する)ものとする。この場合には、画像記録部13に記録されている画像から選択された画像を形状補正することなくそのまま投影すれば、同図に画像P1として示すように矩形状の投影画像が表示される。
【0035】
このように鉛直上向きに向けた状態から、例えばX軸周りに+15°、Y軸周りに−15°だけ画像投影装置1(画像投影部22)を傾けて、同図に画像P2として示す画像が選択されるとした場合に、同図に示すように、当該傾けた角度分だけ、台形状に歪んで表示されることになる。画像P1を投影した際の画像投影装置1と投影面2との距離、傾けた角度、投影光学系24の情報から、画像投影装置1を上記のように傾けた場合に適正な矩形状の画像P3を投影表示するための補正量は、幾何学的に算出できるため、この補正を行った画像を予め作成し保存しておくようにしている。
【0036】
従って、投影表示する画像を変更するために画像投影装置1を傾けた場合に、最初の画像と同様に適正な矩形状の画像として2枚目以降の画像を投影表示することができ、高い表示品質を実現することができる。なお、本実施形態では、最初に表示する画像が選択されると、その周辺の複数枚の画像(所定範囲内の画像)について、事前に台形補正を施し、補正画像を生成して保存しておくようにしている(図2のステップS7参照)。これにより、ユーザが実際に画像投影装置1の向きを傾けた際には、これに対応する補正画像が事前に準備されているため、当該補正計算に要する時間分だけ画像の表示を高速化することができ、スムーズな画像表示を実現することができる。
【0037】
また、投影表示する画像を変更するために画像投影装置1を傾けた場合には、その傾けた分だけ、最初の画像の投影時のズームおよびフォーカスから、最適値がシフトする(ずれる)が、これらをも考慮してズーム補正およびフォーカス補正を行うようにしている(図2のステップS11参照)。従って、投影表示する画像を変更するために画像投影装置1を傾けた場合に、最初の画像とほぼ同様の画質で2枚目以降の画像を投影表示することができ、これによっても高い表示品質を実現することができる。
【0038】
なお、画像記録部13に記録されている画像がシームレス画像(パノラマ画像を含む)である場合には、当該シームレス画像のうち、最初に投影する範囲を中心として、隣接する部分に係る複数の投影範囲をその位置に応じて予め台形補正しておけばよい。画像投影装置1を傾けるとそれに応じて補正された投影範囲が表示される。
【0039】
上述した実施形態では、画像投影装置1としてプロジェクタ付きのデジタルカメラを例示したが、撮影機能を備えないプロジェクタやプロジェクタ付きの他の電子装置(携帯電話機、PDA、タブレット型コンピュータ等)にも適用することができる。
【0040】
また、上述した実施形態では、プラネタリウムモードとして、画像投影装置1を天井面に向けてその方向に見えるであろう星空の画像を画像投影装置1の向きに応じて切り換えて表示させるようにしたが、壁面(略鉛直面)を投影面として、画像投影装置1を略水平に向けた場合に鉛直上向きに見えるであろう星空の画像を投影表示し、水平から傾けた角度に応じて、鉛直上向きから当該角度だけ傾けた場合に見えるであろう星空の画像を投影させるようにしてもよい。
【0041】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。従って、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0042】
1…画像投影装置、2…投影面、11…制御部、12…撮影部、13…画像記録部、14…操作部、15…位置情報取得部、16…方位情報取得部、17…距離情報取得部、18…傾斜情報取得部、19…移動情報取得部、20…時間情報取得部、21…サーバ画像取得部、22…画像投影部、23…撮影レンズ、24…投影光学系、31…画像選択部、32…画像補正部、33…画像処理部、34…駆動部。
図1
図2
図3