【実施例】
【0053】
合成例1 DD4Hの合成
DD4OH(下記式における化合物1、7,160g)、ジメチルクロロシラン(2,850g)、トルエン72.6kgを反応器に仕込み、窒素雰囲気下、トリエチルアミン(3,230g)を20分間で滴下した。このとき、溶液温度が35℃〜40℃になるよう滴下速度を調節した。滴下終了後、1時間攪拌を継続し、反応を完結させた。反応終了後、イオン交換水(16.7kg)を投入して過剰量のジメチルクロロシランを加水分解し、有機層と水層に分けた。有機層を水洗により中性とした後、ロータリーエバポレーターを用いて85℃で減圧濃縮を行い、得られた残渣をメタノール(19.95kg)で洗浄し、8,587.6gの無色固体を得た。この無色固体を酢酸メチル(9.31kg)で洗浄し、減圧乾燥してDD4H(下記式における化合物2)を得た。
【0054】
【化11】
【0055】
合成例2 DDQ4Hの合成
DD4OH(56g)、テトラアセトキシシラン(42g)、酢酸エチル900mLを反応器に仕込み、窒素雰囲気下60℃で5時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却してイオン交換水100gを添加し、固形物を析出させた。固形物を濾過したのち50℃で濃縮して約850mLの溶剤を留去した。そして得られた濃縮液を濾過して固体を得た。得られた固体は70℃で2時間減圧乾燥を行い、白色固体(下記式における化合物3)を得た。次いで、ジメチルクロロシラン(23g)とトルエン400mLを別の反応器に仕込み、窒素雰囲気下トリエチルアミン(22g)を滴下した。次いで化合物3(48g)を酢酸エチル210mLに溶解して、反応液の温度が35℃以下に保たれるように前記の反応器中の溶剤に滴下し、3時間反応を行った。水(50g)加え30分間撹拌を継続した後、分液漏斗で有機相と水相に分けた。得られた有機相は水洗して中性としたのち、無
水硫酸マグネシウムで乾燥した。次に無水硫酸マグネシウムを濾過で除去したのち50℃で減圧濃縮した。得られた残渣にメチルアルコール(120mL)を加え、4時間撹拌した後濾過してDDQ4H(下記式における化合物4)を得た。
【0056】
【化12】
【0057】
合成例3 DDQDD4OHの合成
DD4OH(6.4g)、テトラアセトキシシラン(2.2g)、酢酸エチル120mLを反応器に仕込み、窒素雰囲気下75℃で4時間反応を行った。室温まで冷却した後、テトラアセトキシシラン(1.1g)を加えて75℃で1時間反応させた。得られた反応液を室温まで冷却したのち水を加え遠心分離を行い、固液分離を行った。得られた溶液にトルエンを(40mL)添加し、再度、遠心分離を行い、固液分離する操作を3度繰り返して行った。このようにして得られた濾液を、減圧濃縮を行うことでDDQDD4OH(下記式における化合物5)を得た。
【0058】
【化13】
【0059】
合成例4 DDQDD4Hの合成
DD4OHの代わりに合成例3で得られるDDQDD4OHを用いる以外は、合成例1
と同様の操作を行うことにより、DDQDD4H(下記式における化合物6)を得ることができる。
【0060】
【化14】
【0061】
合成例5 DDQDDQDD4OHの合成
DD4OH(1.0g)、テトラアセトキシシラン(0.8g)、酢酸エチル40mLを反応器に仕込み、窒素雰囲気下55℃で5時間反応を行った。室温まで冷却した後、DD4OH(6.4g)をテトラヒドロフラン20mLに溶解して添加し、55℃で6時間反応させた。て室温まで冷却したのち中和、水洗、濾過、濃縮を行い、白色固体(7.8g)得た。次に得られた白色固体に酢酸エチル(30mL)加え撹拌したのち固液分離を行った。そして得られた濾液にトルエン(40mL)を加え生成した固体を濾別した。さらに濾液にヘキサンを加えて再結晶を行うことでDDQDDQDD4OH(下記式における化合物7)を得た。
【0062】
【化15】
【0063】
合成例6 DDQDDQDD4Hの合成
DD4OHの代わりに合成例5で得られるDDQDDQDD4OHを用いる以外は、合成例1と同様の操作を行うことにより、DDQDDQDD4H(下記式における化合物8)を得ることができる。
【0064】
【化16】
【0065】
合成例7 4DEG−2P−DDSQの合成
DD4H(2.6g)とジ(エチレングリコール)ビニルエステル(1.37mL)をトルエン5mLに溶解させ、アルゴン雰囲気下、0℃で白金触媒(白金ジビニルテトラメチルジシロキサン(Pt(dvs))3重量%キシレン溶液)を10μL加え、室温で12時間反応させ、4DEG−DDSQ(下記式における化合物9)を得た。4DEG−DDSQ(1g)をピリジン(10mL)に溶解させ、過剰量(4DEG−DDSQに対して(40)モル当量)のPOCl
3を加え、45℃で6時間反応させた。反応終了後、水
による分液操作により未反応のPOCl
3を除去し、Xが式(X−1)で表される式(1
−1)においてRがフェニルでありR
1がメチルであり、aが0であり、mが1であり、
nが2である末端にリン酸部位を有する4DEG−2P−DDSQ(下記式における化合物10)を得た。
【0066】
【化17】
得られた合成物の構造をFT−IR、
1H−NMR、
31P−NMR、MS、及びXPS
により解析した。FT−IRスペクトルにおいて、4DEG−2P−DDSQ(
図1における線b)は4DEG−DDSQ(
図1における線a)に観測されたOH基由来の吸収(3,430cm
-1)が消失し、4DEG−DDSQの末端のOH基がPOCl
3と反応し
たことが確認された(
図1)。さらにSi−O−Siかご形構造に由来するIR吸収が反応前後に変化がないことから反応前後においてSi−O−Siかご構造が維持されていることが確認された
【0067】
1H−NMR及び
31P−NMRの測定はCDCl
3を溶媒に用いて行った。
1H−NMR
スペクトルは、フェニル基(40H,7.0〜7.6ppm)、エチレングリコール基(40H,3.0〜3.7ppm)、CH
2−Siに由来するメチン基(8H,0.90p
pm)、Si(CH
3)に由来するメチル基(12H,0.01ppm)のピークが観測
された(
図2)。また
31P−NMRよりリンに由来するピークが−21.4ppmに観測された(
図3)。
【0068】
MSでは、MALDI−TOF質量分析装置としてブルカーダルトニクス社製のREFLEXIIIを用い、マトリックスにジスラアノールとトリフルオロ酢酸銀とを用い、ポ
ジティブモードで試料をイオン化し、加速電圧を20kVとして質量分析を行った。質量スペクトルでは、4DEG−DDSQのジアニノンと一つの銀イオンとからなる成分のピーク(
図4中の矢印で示すピーク)が2,058(理論値は2,059.29)として検出された(
図4)。
【0069】
XPSでは、パーキンエルマー社製のPHI5600を用い、炭素の1sピークを285.0eVとし、光電子の取り出し角度を45°としてX線光電子分光を行った。XPSスペクトルでは、リンが「PO
3」の状態で存在することを示すリン由来のピークが13
4keVに検出された(
図5及び
図6)。
【0070】
これらの解析結果から、得られた合成物がリンを架橋基とする環状化合物10(4DEG−2P−DDSQ)であると同定した。
【0071】
合成例8 4DEG−4P−DDSQの合成
反応溶剤をジオキサン、反応温度を10℃以下とする以外は、合成例7と同様の操作を行うことにより、Xが式(X−2)で表される式(1−1)においてRがフェニルでありR
1がメチルであり、aが0であり、mが1であり、nが2である4DEG−4P−DD
SQ(下記式における化合物11)を得ることができる。
【0072】
【化18】
【0073】
合成例9 4DEG−2P−DDQSQの合成
DD4Hの代わりに合成例2で得られるDDQ4Hを用いる以外は、合成例7と同様の操作を行うことにより、Yが式(Y−1)で表される式(2−1)においてRがフェニルでありR
1がメチルであり、bが1であり、mが1であり、nが2である4DEG−2P
−DDQSQ(下記式における化合物12)を得ることができる。
【0074】
【化19】
【0075】
合成例10 4DEG−4P−DDQSQの合成
DD4Hの代わりに合成例2で得られるDDQ4Hを用いる以外は、合成例8と同様の操作を行うことにより、Yが式(Y−2)で表される式(2−1)においてRがフェニルでありR
1がメチルであり、bが1であり、mが1であり、nが2である4DEG−4P−
DDQSQ(下記式における化合物13)を得ることができる。
【0076】
【化20】
【0077】
合成例11 4DEG−2P−DDQDDSQの合成
DD4Hの代わりに合成例4で得られるDDQDD4Hを用いる以外は、合成例7と同様の操作を行うことにより、Yが式(Y−1)で表される式(2−1)においてRがフェニルでありR
1がメチルであり、bが2であり、mが1であり、nが2である4DEG−
2P−DDQDDSQ(下記式における化合物14)を得ることができる。
【0078】
【化21】
【0079】
合成例12 4DEG−4P−DDQDDSQの合成
DD4Hの代わりに合成例4で得られるDDQDD4Hを用いる以外は、合成例8と同様の操作を行うことにより、Yが式(Y−2)で表される式(2−1)においてRがフェニルでありR
1がメチルであり、bが2であり、mが1であり、nが2である4DEG−
4P−DDQDDSQ(下記式における化合物15)を得ることができる。
【0080】
【化22】
【0081】
合成例13 4DEG−2P−DDQDDQDDSQの合成
DD4Hの代わりに合成例6で得られるDDQDDQDD4Hを用いる以外は、合成例7と同様の操作を行うことにより、Xが式(X−1)で表される式(1−1)においてRがフェニルでありR
1がメチルであり、aが2であり、mが1であり、nが2である4D
EG−2P−DDQDDQDDSQ(下記式における化合物16)を得ることができる。
【0082】
【化23】
【0083】
合成例14 4DEG−4P−DDQDDQDDSQの合成
DD4Hの代わりに合成例6で得られるDDQDDQDD4Hを用いる以外は、合成例
8と同様の操作を行うことにより、Xが式(X−2)で表される式(1−1)においてRがフェニルでありR
1がメチルであり、aが2であり、mが1であり、nが2である4D
EG−4P−DDQDDQDDSQ(下記式における化合物17)を得ることができる。
【0084】
【化24】
【0085】
合成例15 2DEG−2P−DDSQの合成
DD4Hの代わりにDD2H(下記式における化合物18)を用いる以外は、合成例8と同様の操作を行うことにより、Yが式(Y−3)で表される式(2−1)においてRがフェニルでありR
1がメチルであり、bが1であり、mが1であり、nが2である2DE
G−2P−DDSQ(下記式における化合物19)を得ることができる。
【0086】
【化25】
【0087】
[DEG−2P−DDSQから構成される膜のプロトン伝導度の測定]
合成例7で得られた4DEG−2P−DDSQをクロロホルムに0.07重量%の濃度で溶解し、得られた溶液を、平滑な表面を有する基材の表面に塗布し、膜厚が1μmのキャスト膜を作製し、相対湿度95%で種々の温度における前記キャスト膜のプロトン伝導度をインピーダンス測定により算出した。
【0088】
キャスト膜の膜厚は、レーザー顕微鏡によって測定した。インピーダンス測定には、誘電体測定システム126096型(ソーラトロン社製)を用い、測定周波数が1Hz〜10MHz、印加電圧10mV
p-pの条件でインピーダンス測定を行った。
【0089】
インピーダンス測定において、種々の温度におけるインピーダンスの実部と挙部の関係を示すCole−Coleプロットでは、高周波数側において半円が示され、その半径は温度とともに減少した。この半円の半径を膜抵抗とし、前記キャスト膜のプロトン伝導度を算出した結果を
図7に示す。プロトン伝導度は温度が増加するにつれて増加し、相対湿度(RH)が95%において35℃で4.8×10
-3、55℃で2.7×10
-2、85℃で1.5×10
-1S/cmを示した。
【0090】
また、相対湿度を55〜95%の範囲で変更し、それぞれの湿度において温度を変更したときの前記キャスト膜のインピーダンスを前述と同様に測定し、このときのキャスト膜のプロトン伝導度を求めた。結果を
図8に示す。
【0091】
また、相対湿度を0%で一定とし、温度を変更したときの前記キャスト膜のインピーダンスを前述と同様に測定し、このときのキャスト膜のプロトン伝導度を求めた。結果を
図9に示す。プロトン伝導度は、165℃にピークを示し、100℃で2.58×10
-5S/cm、165℃で2.00×10
-4S/cmを示した。