(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
<透明導電フィルム用樹脂組成物>
本発明の透明導電フィルム用樹脂組成物は、イオン含有ポリマーと、フィルム形成用ポリマーと、を含むことを特徴としている。
本発明の透明導電フィルム用樹脂組成物においては、イオン含有ポリマーが、(1)Si−H基を有するポリマーに、イオン液体と、硬化性化合物とが結合してなる態様と、(2)Si−H基を有するポリマーに、イオン液体と、ラジカル重合性化合物とが結合してなる態様とがある。(1)の態様は、硬化性化合物としてエポキシ基を有する化合物を主として説明することから、便宜上「エポキシ硬化の態様」と呼び、後者は「ラジカル硬化の態様」と呼び、以下にそれぞれについて分説する。
【0022】
(1)エポキシ硬化の態様
[イオン含有ポリマー]
イオン含有ポリマーは、電気伝導の担い手として機能するポリマーであり、本態様においては、Si−H基を有するポリマーに、イオン液体と、硬化性化合物とが結合してなり、該硬化性化合物の一部にはさらに前記フィルム形成用ポリマーとの相溶性を付与する化合物が結合している。
以下に、Si−H基を有するポリマー、イオン液体、及び硬化性化合物の各々について説明する。
【0023】
(Si−H基を有するポリマー)
当該ポリマーとしては、例えば、Si−H基を有する、ポリシロキサン、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、無色透明であるポリマーが用いられる。本発明において、当該ポリマーの重量平均分子量は、粘度を適正範囲に限定するため及びイオン性ポリマとの相溶性を確保する観点から1000〜1000000であることが好ましく、3000〜500000であることがより好ましく、10000〜300000であることがさらに好ましい。
また、Si−H基を有するポリマーは、溶媒への溶解性が高いことが好ましい。特に、活性プロトン(OH基、NH基、COOH基等)を有さない有機溶媒への溶解性が高いことが好ましい。このようなSi−H基を有するポリマーの溶媒に対する溶解度は10質量%以上であることが好ましい。
【0024】
(イオン液体)
イオン液体は、カチオンとアニオンとからなり、常温において液体で存在する物質である。本発明においては、導電性及び透明性に優れた透明導電フィルムを得るためには、イオン液体はイオン伝導性及び透明性が高いものを用いることが好ましい。また、既述のSi−H基を有するポリマーのSi−H基と結合させるため、カチオン部位に、Si−H基との反応性が高いアリル基又は水酸基を有することが好ましく、特にアリル基を有することが好ましい。
以下に、イオン液体のカチオン及びアニオンについて順次説明する。
【0025】
(1)カチオン
本発明において、イオンを構成するカチオン成分は、置換又は非置換のイミダゾリウムイオン、置換又は非置換のピリジニウムイオン、置換又は非置換のピロリウムイオン、置換又は非置換のピラゾリウムイオン、置換又は非置換のピロリニウムイオン、置換又は非置換のピロリジニウムイオン、置換又は非置換のピペリジニウムイオン、置換又は非置換のトリアジニウムイオン、および置換又は非置換のアンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0026】
前記置換又は非置換のイミダゾリウムイオンの具体例としては、例えば、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン等が挙げられ、中でも、以上のカチオンのアルキル基をアリル基又は水酸基で置換したものが好ましく、特にアリル基で置換したものが好ましい。そのようなカチオンとしては、1−ブチル−3−アリルイミダゾリウムイオン、1―エチル−3−アリルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−アリルイミダゾリウムイオン、1,3―ジアリルイミダゾリウムイオン等が挙げられる。
【0027】
前記置換又は非置換のアンモニウムイオンの具体例としては、例えば、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0028】
前記置換又は非置換のピリジニウムイオンの具体例としては、例えば、N−メチルピリジニウムイオン、N−エチルピリジニウムイオン、N−プロピルピリジニウムイオン、N−ブチルピリジニウムイオン、N−ヘキシルピリジニウムイオン、1−エチル−2−メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムイオン、1−ヘキシル−4−メチルピリジニウムイオン、1−ヘキシル−3−メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−2,4−ジメチルピリジニウムイオン等が挙げられる。
【0029】
前記置換又は非置換のピロリウムイオンの具体例としては、例えば、1,1−ジメチルピロリウムイオン、1−エチル−1−メチルピロリウムイオン、1−メチル−1−プロピルピロリウムイオン、1−ブチル−1−メチルピロリウムイオン等が挙げられる。
【0030】
前記置換又は非置換のピラゾリウムイオンの具体例としては、例えば、1,2−ジメチルピラゾリウムイオン、1−エチル−2−メチルピラゾリウムイオン、1−プロピル−2−メチルピラゾリウムイオン、1−ブチル−2−メチルピラゾリウムイオン等が挙げられる。
【0031】
前記置換又は非置換のピロリニウムイオンの具体例としては、例えば、1,2−ジメチルピロリニウムイオン、1−エチル−2−メチルピロリニウムイオン、1−プロピル−2−メチルピロリニウムイオン、1−ブチル−2−メチルピロリニウムイオン等が挙げられる。
【0032】
前記置換又は非置換のピロリジニウムイオンの具体例としては、例えば、1,1−ジメチルピロリジニウムイオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムイオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムイオン、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムイオン等が挙げられる。
【0033】
前記置換又は非置換のピペリジニウムイオンの具体例としては、例えば、1,1−ジメチルピペリジニウムイオン、1−エチル−1−メチルピペリジニウムイオン、1−メチル−1−プロピルピペリジニウムイオン、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムイオン等が挙げられる。
【0034】
前記置換又は非置換のトリアジニウムイオンの具体例としては、例えば、1,3−ジエチル−5−メチルトリアジニウムイオン、1,3−ジエチル−5−ブチルトリアジニウムイオン、1,3−ジメチル−5−エチルトリアジニウムイオン、1,3、5−トリブチルトリアジニウムイオン等が挙げられる。
【0035】
これらの中でも、前記カチオン成分は、置換又は非置換のイミダゾリウムイオン、置換又は非置換のピリジニウムイオン、置換又は非置換のピロリジニウムイオン、および置換又は非置換のアンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。入手容易性および長時間の安定性の観点から、前記カチオン成分は、置換又は非置換のイミダゾリウムイオンであることが特に好ましい。
【0036】
(2)アニオン
アニオンの具体例としては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン、硝酸イオン(NO
3−)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF
4−)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF
6−)、(FSO
2)
2N
−、AlCl
3−、乳酸イオン、酢酸イオン(CH
3COO
−)、トリフルオロ酢酸イオン(CF
3COO
−)、メタンスルホン酸イオン(CH
3SO
3−)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF
3SO
3−)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン((CF
3SO
2)
2N
−)、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドイオン((C
2F
5SO
2)
2N
−)、BF
3C
2F
5−、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)炭素酸イオン((CF
3SO
2)
3C
−)、過塩素酸イオン(ClO
4−)、ジシアンアミドイオン((CN)
2N
−)、有機硫酸イオン、有機スルホン酸イオン、R
1COO
−、HOOCR
1COO
−、
−OOCR
1COO
−、NH
2CHR
1COO
−(この際、R
1は置換基であり、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、エーテル基、エステル基、またはアシル基である。また、前記置換基はフッ素原子を含んでもよい。)などが挙げられる。
【0037】
これらの中でも、前記アニオン成分は、ハロゲン化物イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、有機硫酸イオン、及び有機スルホン酸イオンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。入手容易性および形成されるイオン液体が高いイオン伝導性を示すという観点から、前記アニオンとしては、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、臭化物イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、テトラフルオロボレートイオンが特に好ましい。
【0038】
本発明において、イオン液体としては、1−ブチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−アリルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−アリルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−アリルイミダゾリウムブロマイドが好ましい。
【0039】
(硬化性化合物)
硬化性化合物は、エポキシ基、イソシアネート基等の硬化性反応基を有する化合物であり、中でも、硬化性反応基としてエポキシ基を有するものが好ましい。
また、本発明において、硬化性化合物としては、前記Si−H基を有するポリマーのSi−H基と結合(反応)させるため、アリル基又は水酸基を有することが好ましく、特にアリル基を有することが好ましい。本発明においては以上の観点から、硬化性化合物としては、アリルグリシジルエーテル、グリシドール等が挙げられ、中でも、アリルグリシジルエーテル、が特に好ましい。
【0040】
一方、前記硬化性化合物の一部には、フィルム形成用ポリマーとの相溶性を付与する化合物が結合しているが、当該化合物が存在しないとイオン含有ポリマーとフィルム形成用ポリマーとが分子レベルでの相溶性が得られず、両者は相分離してしまう。
フィルム形成用ポリマーとの相溶性を付与する化合物としては、2級アミンが好ましい。2級アミンとしては、例えば、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−エチルメタノールアミン、ピペリジン、N−メチルピペラジン、N−エチルアニリン、1−シクロヘキシルピペラジン、ジブチルアミン等が挙げられ、中でも、着色が少ないこと、及びアクリルとの高い相溶性との観点から、1−メチルピペラジン、N−エチルメタノールアミン、1−シクロヘキシルピペラジン、ジブチルアミンが好ましい。
【0041】
また、Si−H基を有するポリマーに結合した全硬化性化合物に対する、フィルム形成用ポリマーとの相溶性を付与する化合物が結合している硬化性化合物の比率は、フィルム形成用ポリマーとの十分な相溶性を確保するという観点から、10〜95%であることが好ましく、20〜90%であることがより好ましく、40〜85%であることがさらに好ましい。
【0042】
本態様におけるイオン含有ポリマーを合成するには、まずSi−H基を有するポリマーと、イオン液体と、硬化性化合物とを反応させ、Si−H基を有するポリマーのSi−H基にイオン液体及び硬化性化合物とを結合させた中間体を合成する。次いで、合成した中間体に結合した硬化性化合物の一部にフィルム形成用ポリマーとの相溶性を付与する化合物が結合するように当該化合物を反応させてイオン含有ポリマーを得る。
【0043】
上記中間体の合成において、各成分の使用量はSi−H基を有するポリマー100質量部に対して、イオン液体60〜670質量部、硬化性化合物20〜170質量部とすることが好ましい。使用する溶媒としては、メチルエチルケトン、トルエン、メチルイソブチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、THF、ジオキサン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等を好適に使用することができる。触媒として金属白金の有機錯体を使用し、反応温度は50〜150℃、反応時間は3〜50時間とすることが好ましい。上記金属白金の有機錯体としては、具体的には、Platinum(0)-2,4,6,8-tetravinyl-2,4,6,8-tetramethyl-cyclotetrasiloxane complex(和光純薬製)が挙げられる。
【0044】
また、上記中間体からイオン含有ポリマーを合成する場合においては、上記中間体100質量部に対して、フィルム形成用ポリマーとの相溶性を付与する化合物(2級アミン)の使用量は、フィルム形成用ポリマーとの十分な相溶性を確保するため、5〜95質量部とすることが好ましく、10〜85質量部とすることがより好ましく、15〜70質量部とすることがさらに好ましい。この場合において使用する溶媒としては、メタノール、メチルエチルケトン、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、メチルイソブチルケトン、THF、ジオキサン及びこれらの混合溶媒等を好適に使用することができる。反応温度は30〜200℃、反応時間は5〜0.5時間とすることが好ましい。
【0045】
以上のようにして得られるイオン含有ポリマーの一例を以下に示す。以下の化学式において、(A)はイオン液体が結合したセグメントを、(B)は硬化性化合物が結合したセグメントを、(C)は硬化性化合物にさらにフィルム形成用ポリマーとの相溶性を付与する化合物が結合したセグメントを示す。
【0047】
本発明に係るイオン含有ポリマーにおいて、セグメント(A)、セグメント(B)、セグメント(C)の比率は、導電性及びフィルム形成用ポリマーとの相溶性の観点から、xを1としたとき、yは0.1〜7.0、zは0.25〜3.0であることが好ましい。
【0048】
[フィルム形成用ポリマー]
フィルム形成用ポリマーは、フィルム形成能の担い手として機能するポリマーである。特に、本発明においては、透明であって、かつ既述のイオン含有ポリマーとの分子レベルでの相溶化を図るため、前記イオン含有ポリマー(具体的には、イオン含有ポリマーに結合した、フィルム形成用ポリマーとの相溶性を付与する化合物)との相溶性を付与するモノマーを有することが好ましい。従って、フィルム形成用ポリマーは、高い透明性を有するベースモノマーと、イオン含有ポリマーとの相溶性を付与するモノマーとが共重合してなるコポリマーであることが好ましい。
【0049】
前記ベースモノマーとしては、(メタ)アクリル酸ブチルモノマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、炭素数5〜12の炭化水素がエステル結合した(メタ)アクリレート、トリシクロデシル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリル酸ブチルモノマー、ブチルメタクリレート、トリシクロデシル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
なお、本明細書中、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリロイル基などの表記はそれぞれ、「アクリル酸及びメタクリル酸」や「アクリロイル基及びメタクリロイル基」を包含して意味するものである。
【0050】
一方、イオン含有ポリマーとの相溶性を付与するモノマーとしては、カルボン酸を有するモノマーであることが好ましい。カルボン酸を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸、フェノール性水酸基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0051】
フィルム形成用ポリマーにおいて、ベースモノマー及びイオン含有ポリマーとの相溶性を付与するモノマーの共重合比は、イオン含有ポリマーとの相溶性及び硬化性を両立できる観点から、99:1〜1:99が好ましく、90:10〜10:90がより好ましく、70:30〜30:70であることがさらに好ましい。
【0052】
フィルム形成用ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、−60〜130℃が好ましく、−50〜100℃がより好ましく、−30〜80℃がさらに好ましい。Tgが低いほど電気抵抗を小さくすることができる。
【0053】
本態様の透明導電フィルム用樹脂組成物において、イオン含有ポリマーの含有率は、高い導電性を確保するため、5〜95質量%とすることが好ましく、20〜90質量%とすることがより好ましく、40〜85%であることがさらに好ましい。
【0054】
(2)ラジカル硬化の態様
[イオン含有ポリマー]
本態様においては、イオン含有ポリマーが、Si−H基を有するポリマーに、イオン液体と、ラジカル重合性化合物とが結合してなる。Si−H基を有するポリマー、及びイオン液体は、既述の(1)エポキシ硬化の態様と同じであるから、ラジカル重合性化合物について以下に説明する。
【0055】
(ラジカル重合性化合物)
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を有する化合物であり、ラジカル重合性基としては、具体的には、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基(アリル基とメタアリル基を含む。以下も同様である。)、エチニル基、イソプロペニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、ビニルケトン基、ビニルエステル基、ビニルアミノ基などが挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基、ビニル基が好ましい。
【0056】
また、ラジカル重合性化合物は、前記Si−H基を有するポリマーのSi−H基と結合(反応)させるため、アリル基又は水酸基を有することが好ましく、特にアリル基を有することが好ましい。
【0057】
以上より、ラジカル重合性化合物としては、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0058】
本態様におけるイオン含有ポリマーを合成するには、まずSi−H基を有するポリマーと、イオン液体と、ラジカル重合性化合物とを反応させ、Si−H基を有するポリマーのSi−H基にイオン液体及びラジカル重合性化合物とを結合させる。次いで、架橋剤としてのジビニル化合物及び/又はモノビニル化合物と、重合開始剤とを混合して、溶媒を除去し、加熱硬化する。
なお、本態様における重合はラジカル重合であるため、酸素阻害の影響を考慮し、加熱硬化時には酸素を遮断することが好ましい。
【0059】
上記重合開始剤としては、特に制限はなく、光重合開始剤、熱重合開始剤として用いられている公知の重合開始剤を使用することができる。また、その使用量も適宜設定することができる。
【0060】
本態様におけるイオン含有ポリマーの合成において、各成分の使用量は、Si−H基を有するポリマー100質量部に対して、イオン液体60〜670質量部、ラジカル重合性化合物20〜170質量部とすることが好ましい。使用する溶媒としては、メチルエチルケトン、トルエン、メチルイソブチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、THF、ジオキサン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等を好適に使用することができる。触媒として上記のような金属白金の有機錯体を使用し、反応温度は50〜150℃、反応時間は3〜50時間とすることが好ましい。
【0061】
以上のようにして得られるイオン含有ポリマーの一例を以下に示す。以下の化学式において、(A)はイオン液体が結合したセグメントを、(B)はラジカル重合性化合物が結合したセグメントを示す。
【0063】
本発明に係るイオン含有ポリマーにおいて、セグメント(A)、セグメント(B)の比率(x:y)は、導電性及びフィルム形成用ポリマーとの相溶性の観点から、5:95〜95:5であることが好ましい。
【0064】
[フィルム形成用ポリマー]
フィルム形成用ポリマーは、イオン含有ポリマーとの相溶性を付与するモノマーが必須ではない点で、既述の(1)エポキシ硬化の態様とは異なる。フィルム形成用ポリマーは、既述のベースモノマーのみが重合したホモポリマーであってもよい。
【0065】
本態様の透明導電フィルム用樹脂組成物において、イオン含有ポリマーの含有率は、高い導電性を確保するため、5〜95質量%とすることが好ましく、30〜90質量%とすることがより好ましく、40〜85質量%とすることがさらに好ましい。
【0066】
本発明の透明導電フィルム用樹脂組成物は、いずれの態様においても、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を配合してもよい。配合可能な成分としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、ナノフィラー等が挙げられる。
【0067】
<透明導電フィルム>
本発明の透明導電フィルムは、既述の本発明の透明導電フィルム用樹脂組成物を硬化してなることを特徴としている。
本発明の透明導電フィルムは、既述の本発明の透明導電フィルム用樹脂組成物をPETやガラスなどの基板上に塗布し、乾燥、硬化することで得られる。この場合において、乾燥温度は、50〜120℃とすることが好ましく、乾燥時間は0.1〜1時間とすることが好ましい。また、透明導電フィルムの厚みは、透明導電フィルム用樹脂組成物の塗膜の膜厚を調節することで制御することができる。本発明の透明導電フィルムの厚みは特に制限はないが、例えば、0.5〜80μmとすることができる。
なお、本発明の透明導電フィルムは、上述の通り、PETやガラス等の基板に塗布し、乾燥、硬化して製造されるものであるが、製造後は基板から剥離し、そのまま透明導電フィルムとして使用することができる。すなわち、本発明の透明導電フィルムは、従来のような基板上に透明導電膜を形成してなるような積層構造ではなく、単一の樹脂組成物からなるフィルムでありながら透明性及び導電性を有する。
【0068】
本発明の透明導電フィルムは、例えば、タッチパネル用透明電極、有機ELディスプレイ用透明電極等ように使用することができる。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
[実施例1]
(イオン含有ポリマーの合成)
攪拌装置、冷却管を備えた200mlの3口フラスコに、Si−H基を有するポリマーとしてポリシロキサン(旭化成ワッカー社製)を10.0g、イオン液体として1−ブチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(関東化学社製)を37.0g、硬化性化合物としてアリルグリシジルエーテル(和光純薬社製)を9.5g、更にメチルエチルケトンを113g入れて、均一になるまで攪拌した後、白金触媒としてPlatinum(0)-2,4,6,8-tetravinyl-2,4,6,8-tetramethyl-cyclotetrasiloxane complex(和光純薬製)を0.17g投入し、約80℃の温度で24時間かけて還流し中間体を得た。還流後、減圧下に脱溶剤を行った後、中間体をメタノールに溶解し、さらに
N−メチルピペラジンを1.7g添加し60℃で3時間かけて反応させた。次いで、脱溶剤を行い新たにメタノール・メチルエチルケトンの混合溶媒を投入しイオン含有ポリマーの50%溶液を得た。以上の反応をまとめると以下のようになる。
【0071】
【化3】
【0072】
(フィルム形成用ポリマーの合成)
攪拌装置、冷却管を備えた200mlの3口フラスコに、メタクリル酸ブチルモノマー44.5gと、メタクリル酸11.5gと、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.07gとを投入し、窒素ガスを400ml/分の流量で15分間吹き込み、酸素を除去した後65℃で14時間反応しフィルム形成用ポリマーを得た。重合率は98%であった。
【0073】
(透明導電フィルム用樹脂組成物の調製)
上記のようにして得られたイオン含有ポリマー溶液10.0gと、フィルム形成用ポリマー溶液6.7gとを混合し、透明導電フィルム用樹脂組成物溶液を調製した。調製した樹脂組成物溶液は、相分離することなく均一に混合しているのが確認できた。
【0074】
(透明導電フィルムの作製)
上記のようにして調製した透明導電フィルム用樹脂組成物を、ガラス基板の上に塗工し、150℃で1時間乾燥させ硬化し、透明導電フィルム(厚み:30μm)を得た。
【0075】
[評価]
作製した透明導電フィルムについて、以下の評価項目について評価を行った。
(1)比抵抗
三菱化学社製、MCP−T360を用い、室温にて表面比抵抗を測定したところ、0.45×10
4[Ω・cm]であった。
(2)透明性
日立製作所社製、U−3410を用い、波長450nmの光に対する透過率(透明性)を測定したところ、91.2[%]であった。
【0076】
[実施例2]
実施例1の「透明導電フィルム用樹脂組成物の調製」において、イオン含有ポリマー及びフィルム形成用ポリマーの使用量をそれぞれ10.0g、12.5gに変更したこと以外は実施例1と同様にして透明導電フィルムを作製した。作製した透明導電フィルムについて、実施例1と同様に評価を行ったところ、比抵抗は1.21×10
4[Ω・cm]であり、透過率(透明性)は、92.5[%]であった。
【0077】
[実施例3]
実施例1の「透明導電フィルム用樹脂組成物の調製」において、イオン含有ポリマー及びフィルム形成用ポリマーの使用量をそれぞれ10.0g、15.3gに変更したこと以外は実施例1と同様にして透明導電フィルムを作製した。作製した透明導電フィルムについて、実施例1と同様に評価を行ったところ、比抵抗は7.85×10
5[Ω・cm]であり、透過率(透明性)は、92.5[%]であった。
【0078】
[実施例4]
(イオン含有ポリマーの合成)
攪拌装置、冷却管を備えた200mlの3口フラスコに、Si−H基を有するポリマーとしてポリシロキサン(旭化成ワッカー社製)を10.0g、イオン液体として1−ブチル−3−アリルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(関東化学社製)を37.0g、ラジカル重合性化合物としてアリルメタクリレート(和光純薬社製)を10.5g、ハイドロキノン(和光純薬社製)を0.005g、更にメチルエチルケトン113gを入れ、均一になるまで攪拌した後、白金触媒を0.08g投入し、約80℃の温度で24時間かけて還流し、イオン含有ポリマーを得た。この溶液を減圧下に脱溶剤を行いイオン含有ポリマーを50%に調製した。以上の反応をまとめると以下のようになる。
【0079】
【化4】
【0080】
(透明導電フィルム用樹脂組成物の調製)
フィルム形成用ポリマーとしてはポリアクリル酸ブチルを用い、上記のようにして得られたイオン含有ポリマー10.0gと、ジプロピレングリコールジメタクリレート5gを混合し、減圧下に脱溶剤を行い溶媒を除去したのち、ベンゾイルパーオキサイドを0.01g添加溶解し、透明導電フィルム用樹脂組成物を調製した。調製した樹脂組成物は、相分離することなく均一に混合しているのが確認できた。
【0081】
(透明導電フィルムの作製)
上記のようにして調製した透明導電フィルム用樹脂組成物を、ガラス基板の上に塗工し、もう一枚のガラス基板でサンドイッチし、そのまま150℃で1時間硬化し、透明導電フィルム(厚み:30μm)を得た。次いで、実施例1と同様に評価を行ったところ、比抵抗は1.34×10
4[Ω・cm]であり、透過率(透明性)は、91.5[%]であった。