【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、かかる課題を解決するために、R−Fe−B系焼結磁石体の表面に、生産性の観点から最も優れている酸化物の塗布に対し、拡散量を増大させるべく創意工夫した結果、DyやTb等の希土類を含有した酸化物にDyやTb等の希土類を含有した金属間化合物を混合させることで熱処理時に酸化物が部分的に還元され、フッ化物や酸化物等の希土類無機化合物粉末を塗布した後に熱処理を施す方法と比較して、より多量のDyやTbを粒界部を経路として磁石内の主相粒の界面近傍に導入することが可能で、残留磁束密度の低下を抑制しつつ保磁力を増大できることを見出し、従来の方法に比べて生産性に優れていることを知見し、この発明を完成したものである。
【0014】
即ち、生産性の観点から最も優れている酸化物の塗布に対し、拡散量を増大させるべく創意工夫した結果、DyやTb等の希土類を含有した酸化物にDyやTb等の希土類を含有した金属間化合物を混合させることで熱処理時に酸化物が部分的に還元され、フッ化物や酸化物などの希土類無機化合物粉末を塗布した後に熱処理を施す方法と比較して、より多量のDyやTbを磁石内に導入することが可能であることを見出し、本発明に至った。
【0015】
即ち、本発明は、以下の希土類永久磁石及びその製造方法を提供する。
請求項1:
組成R
aT
1bM
cB
d(RはY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、T
1はFe及びCoのうちの1種又は2種、MはAl、Si、C、P、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Pb、Biから選ばれる1種又は2種以上、Bはほう素、a、b、c、dは原子百分率を示し、12≦a≦20、0≦c≦10、4.0≦d≦7.0、bは残部で、a+b+c+d=100)からなる焼結磁石体に対し、組成R
1iM
1j(R
1はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、M
1はAl、Si、C、P、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Pb、Biから選ばれる1種又は2種以上、i、jは原子百分率を示し、15<j≦99、iは残部で、i+j=100)からなり、かつ金属間化合物相を70体積%以上含む平均粒子径500μm以下の合金粉末と平均粒子径が100μm以下のR
2の酸化物(R
2はSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)を10質量%以上含有した混合粉体を上記焼結磁石体の表面に存在させた状態で、当該焼結磁石体及び当該混合粉体を当該焼結磁石体の焼結温度以下の温度で真空又は不活性ガス中において熱処理を施すことにより、R
1、R
2、M
1の1種又は2種以上の元素を当該焼結磁石体の内部の粒界部、及び/又は、焼結磁石体主相粒内の粒界部近傍に拡散させることを特徴とする希土類永久磁石の製造方法。
請求項2:
組成R
aT
1bM
cB
d(RはY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、T
1はFe及びCoのうちの1種又は2種、MはAl、Si、C、P、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Pb、Biから選ばれる1種又は2種以上、Bはほう素、a、b、c、dは原子百分率を示し、12≦a≦20、0≦c≦10、4.0≦d≦7.0、bは残部で、a+b+c+d=100)からなる焼結磁石体に対し、組成R
1iM
1jH
k(R
1はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、M
1はAl、Si、C、P、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Pb、Biから選ばれる1種又は2種以上、Hは水素であり、i、j、kは原子百分率を示し、15<j≦99、0<k≦(i×2.5)、iは残部で、i+j+k=100)からなり、かつ金属間化合物相を70体積%以上含む平均粒子径500μm以下の合金粉末と平均粒子径が100μm以下のR
2の酸化物(R
2はSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)を10質量%以上含有した混合粉体を上記焼結磁石体の表面に存在させた状態で、当該焼結磁石体及び当該混合粉体を当該焼結磁石体の焼結温度以下の温度で真空又は不活性ガス中において熱処理を施すことにより、R
1、R
2、M
1の1種又は2種以上の元素を当該焼結磁石体の内部の粒界部、及び/又は、焼結磁石体主相粒内の粒界部近傍に拡散させることを特徴とする希土類永久磁石の製造方法。
請求項3:
熱処理を、焼結磁石体の焼結温度T
S℃に対し(T
S−10)℃以下200℃以上の温度で1分〜30時間とすることを特徴とする請求項1又は2記載の希土類永久磁石の製造方法。
請求項4:
混合粉体を有機溶媒もしくは水中に分散させたスラリーに焼結磁石体を浸してから引き上げた後乾燥させることで、混合粉体を焼結磁石体表面に塗布し、次いで熱処理を施すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の希土類永久磁石の製造方法。
請求項5:
組成R
aT
1bM
cB
d(RはY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、T
1はFe及びCoのうちの1種又は2種、MはAl、Si、C、P、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Pb、Biから選ばれる1種又は2種以上、Bはほう素、a、b、c、dは原子百分率を示し、12≦a≦20、0≦c≦10、4.0≦d≦7.0、bは残部で、a+b+c+d=100)からなる焼結磁石体に対し、組成R
1xT
2yM
1z(R
1はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、T
2はFe及び/又はCo、M
1はAl、Si、C、P、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Pb、Biから選ばれる1種又は2種以上、x、y、zは原子百分率を示し、5≦x≦85、15<z≦95、x+z<100、yは残部(但し、y>0)で、x+y+z=100)からなり、かつ金属間化合物相を70体積%以上含む平均粒子径500μm以下の合金粉末と平均粒子径が100μm以下のR
2の酸化物(R
2はSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)を10質量%以上含有した混合粉体を当該焼結磁石体の表面に存在させた状態で、上記焼結磁石体及び当該混合粉体を当該焼結磁石体の焼結温度以下の温度で真空又は不活性ガス中において熱処理を施すことにより、R
1、R
2、T
2、M
1の1種又は2種以上の元素を当該焼結磁石体の内部の粒界部、及び/又は、焼結磁石体主相粒内の粒界部近傍に拡散させることを特徴とする希土類永久磁石の製造方法。
請求項6:
熱処理を、焼結磁石体の焼結温度T
S℃に対し(T
S−10)℃以下200℃以上の温度で1分〜30時間とすることを特徴とする請求項5記載の希土類永久磁石の製造方法。
請求項7:
混合粉体を有機溶媒もしくは水中に分散させたスラリーに焼結磁石体を浸してから引き上げた後乾燥させることで、混合粉体を焼結磁石体表面に塗布し、熱処理を施すことを特徴とする請求項5又は6記載の希土類永久磁石の製造方法。
請求項8:
熱処理される焼結磁石体の最小部の寸法が20mm以下の形状を有する請求項1乃至7のいずれか1項記載の希土類永久磁石の製造方法。
請求項9:
組成R
aT
1bM
cB
d(RはY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、T
1はFe及びCoのうちの1種又は2種、MはAl、Si、C、P、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Pb、Biから選ばれる1種又は2種以上、Bはほう素、a、b、c、dは原子百分率を示し、12≦a≦20、0≦c≦10、4.0≦d≦7.0、bは残部で、a+b+c+d=100)からなる焼結磁石体に対し、組成R
1iM
1j(R
1はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、M
1はAl、Si、C、P、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Pb、Biから選ばれる1種又は2種以上、i、jは原子百分率を示し、15<j≦99、iは残部で、i+j=100)からなり、かつ金属間化合物相を70体積%以上含む平均粒子径500μm以下の合金粉末と平均粒子径が100μm以下のR
2の酸化物(R
2はSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)を10質量%以上含有した混合粉体を上記焼結磁石体の表面に存在させた状態で、当該焼結磁石体及び当該混合粉体を当該焼結磁石体の焼結温度以下の温度で真空又は不活性ガス中において熱処理を施すことにより、R
1、R
2、M
1の1種又は2種以上の元素を当該焼結磁石体の内部の粒界部、及び/又は、焼結磁石体主相粒内の粒界部近傍に拡散させて、元の焼結磁石体より保磁力を高めたことを特徴とする希土類永久磁石。
請求項10:
組成R
aT
1bM
cB
d(RはY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、T
1はFe及びCoのうちの1種又は2種、MはAl、Si、C、P、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Pb、Biから選ばれる1種又は2種以上、Bはほう素、a、b、c、dは原子百分率を示し、12≦a≦20、0≦c≦10、4.0≦d≦7.0、bは残部で、a+b+c+d=100)からなる焼結磁石体に対し、組成R
1iM
1jH
k(R
1はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、M
1はAl、Si、C、P、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Pb、Biから選ばれる1種又は2種以上、Hは水素であり、i、j、kは原子百分率を示し、15<j≦99、0<k≦(i×2.5)、iは残部で、i+j+k=100)からなり、かつ金属間化合物相を70体積%以上含む平均粒子径500μm以下の合金粉末と平均粒子径が100μm以下のR
2の酸化物(R
2はSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)を10質量%以上含有した混合粉体を当該焼結磁石体の表面に存在させた状態で、上記焼結磁石体及び当該混合粉体を当該焼結磁石体の焼結温度以下の温度で真空又は不活性ガス中において熱処理を施すことにより、R
1、R
2、M
1の1種又は2種以上の元素を当該焼結磁石体の内部の粒界部、及び/又は、焼結磁石体主相粒内の粒界部近傍に拡散させて、元の焼結磁石体より保磁力を高めたことを特徴とする希土類永久磁石。
請求項11:
組成R
aT
1bM
cB
d(RはY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、T
1はFe及びCoのうちの1種又は2種、MはAl、Si、C、P、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Pb、Biから選ばれる1種又は2種以上、Bはほう素、a、b、c、dは原子百分率を示し、12≦a≦20、0≦c≦10、4.0≦d≦7.0、bは残部で、a+b+c+d=100)からなる焼結磁石体に対し、組成R
1xT
2yM
1z(R
1はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上、T
2はFe及び/又はCo、M
1はAl、Si、C、P、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Pb、Biから選ばれる1種又は2種以上、x、y、zは原子百分率を示し、5≦x≦85、15<z≦95、x+z<100、yは残部(但し、y>0)で、x+y+z=100)からなり、かつ金属間化合物相を70体積%以上含む平均粒子径500μm以下の合金粉末と平均粒子径が100μm以下のR
2の酸化物(R
2はSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)を10質量%以上含有した混合粉体を当該焼結磁石体の表面に存在させた状態で、当該焼結磁石体及び当該混合粉体を当該焼結磁石体の焼結温度以下の温度で真空又は不活性ガス中において熱処理を施すことにより、R
1、R
2、T
2、M
1の1種又は2種以上の元素を当該焼結磁石体の内部の粒界部、及び/又は、焼結磁石体主相粒内の粒界部近傍に拡散させて、元の焼結磁石体より保磁力を高めたことを特徴とする希土類永久磁石。