(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード素子等の発光素子を用いた発光装置の高輝度、白色化に伴い、このような発光装置が照明、各種ディスプレイ、大型液晶TVのバックライト等に用いられている。発光装置としては、例えば発光素子が搭載される銅を主体とするリードフレームを有し、このリードフレームの発光素子が搭載される搭載部を取り囲むように反射枠体、いわゆるリフレクタが設けられたものが知られている。このような発光装置によれば、リードフレームの熱伝導率が高いために、比較的簡単な構造で良好な放熱性を得ることができる。
【0003】
発光装置におけるリフレクタは、例えばチタニア等の白色無機顔料を分散させた樹脂材料からなるものであり、リードフレームの搭載部を取り囲むように一体的に形成されている。しかし、樹脂材料からなるリフレクタについては、発光素子からの光による経年劣化により着色し、反射率が低下するおそれがある。特に、紫外光、近紫外光、または青色光を発光する発光素子を用いた場合、このような経年劣化による着色や反射率の低下が顕著となる。
【0004】
経年劣化による着色や反射率の低下を抑制するために、例えばリフレクタをセラミックス材料からなるものとすることが知られている。セラミックス材料は無機材料であるために、有機材料である樹脂材料に比べて、経年劣化による着色や反射率の低下を抑制しやすい。しかし、セラミックス材料は1500℃を超えるような温度で焼成する必要があり、必ずしも生産性に優れず、また銅等からなるリードフレームと一体に焼成して製造する場合、リードフレームが溶融するおそれがある。また、セラミックス材料からなるリフレクタについては、必ずしも高い反射率を得ることができない。
【0005】
反射率を向上させるために、例えばセラミックス材料からなるリフレクタに気泡による空隙を存在させることが知られている。しかし、空隙が多くなると発光装置の製造工程中に使用される各種の処理液が侵入しやすく、結果として発光装置の信頼性が低下するおそれがある。また、リフレクタの内側に封止材を充填し、発光素子等を封止した場合であっても、リフレクタと封止材との界面に水や水蒸気が侵入しやすく、必ずしも発光装置の信頼性を十分なものとすることができない。
【0006】
また、一般的なホウケイ酸系ガラスからなるリフレクタ、これにアルミナ、マグネシア、硫酸バリウム等を含有させたリフレクタも知られているが、ホウケイ酸系ガラスの具体的組成等については必ずしも明確にはなっておらず、その反射率等の特性や信頼性についても必ずしも明確とはなっていない(例えば、特許文献1参照)。
一方で、ガラス粉末とセラミックスフィラーとを含有するガラスセラミックス組成物からグリーンシート成形し、このグリーンシートを複数枚積層し、その後850〜900℃で焼成後、分割により個片化する発光素子搭載用基板が知られている(特許文献2参照)。このグリーンシートを用いて、発光素子搭載用基板を形成する場合、分割時の欠けや割れなどの不具合を防ぐために、抗折強度を高くする必要がある。そのためには、焼結密度を高くすることが必要であり、ガラスセラミックス組成物を焼結する際、空隙が残らないように緻密に焼結している(空隙率としては、ほぼ0%である)。また、放熱構造は配線導体や導通ビアとして使用される銀導体を主として行われる。これに加えて基板自身の熱伝導率を高くすることも望まれている。ここで、焼結した基板に空隙が生じていると、熱伝導率が極端に低下し、放熱性を損ねる原因となる。すなわち、強度の観点からも、放熱性の観点からも、ガラスセラミックス組成物を焼結した後、空隙が残らないように緻密に焼結している。
また、グリーンシートは、柔軟でハンドリング可能なシートにするために、多量の樹脂を含有する必要がある。このため、焼成過程で樹脂を熱分解する必要があり、400〜500℃で5時間程度の熱処理工程を要するのが通常である。
また、グリーンシートを用いる低温焼成基板技術は、印刷などで形成される銀導体層と同時焼成することを本来の目的としており、銀導体層が充分に焼結することができる850℃以上の焼成温度を必要としている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の発光素子用反射枠体と、これを有する発光素子用基板および発光装置の一例を示す断面図である。
【0017】
発光装置1は、発光素子用基板11(以下、単に基板11という)と、この基板11に搭載される発光素子12とを有している。基板11は、発光素子12が搭載される搭載部13を有する金属部材14と、この金属部材14の少なくとも搭載部13を取り囲むように設けられる発光素子用反射枠体15(以下、単に反射枠体15という)とを有している。反射枠体15は、リフレクタとも呼ばれるものであり、主として発光素子12からの発光を反射させて光の取出し効率を向上させるために設けられている。
【0018】
発光素子12は、図示しない電極がボンディングワイヤ16等により金属部材14と電気的に接続されている。反射枠体15は、例えば略平板状の基台部151と、この基台部151上において搭載部13を取り囲むように設けられる枠部152とを有している。この反射枠体15は、基台部151と枠部152との間に金属部材14が配置される構造となっている。また、この反射枠体15は、金属部材14が側面部から突出する構造となっている。枠部152は、例えば内側に基台部151に向かって縮径する円形状の孔が形成されている。
【0019】
このような反射枠体15の内側には、図示しない蛍光体を含有する封止材17が充填されており、この封止材17によって発光素子12やボンディングワイヤ16が封止されている。
【0020】
発光素子12としては、例えば、その発光により封止材17に含有される蛍光体を励起して混合色として白色光を得るものが挙げられる。このようなものとしては、例えば青色発光タイプの発光ダイオード素子や紫外発光タイプの発光ダイオード素子が挙げられる。
【0021】
金属部材14は、発光素子12を搭載することができ、また発光素子12と電気的に接続されて電極としての機能を有するものであればよく、公知の銅または銅合金からなる薄型の金属板、例えばリードフレーム等からなるものとすることができる。金属部材14としては、特に熱伝導率が300W/m・K以上の銅または銅合金からなる薄型の金属板が好ましく、例えば銅含有率99.9%以上の無酸素銅系合金からなるものが好ましい。このようなものとすることで、より放熱性を良好にすることができる。なお、金属部材14としては、銅または銅合金からなるものが好ましいが、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鉄/ニッケル合金、メッキ(ニッケルメッキ等)を施したアルミニウム合金等からなるものであってもよい。
【0022】
封止材17は、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂材料からなるものである。これらの中でも、シリコーン樹脂は、耐光性および耐熱性の点で優れているために好ましい。このような樹脂材料中には蛍光体等が添加されていてもよい。樹脂材料中に蛍光体等を含有させることで、得られる光の色を適宜調整することができる。
【0023】
反射枠体15は、ガラス材料とセラミックス粉末とを含む焼結体からなるものである。この焼結体は、900℃以下で焼成されたものであり、空隙率が15%以下、かつ厚さが1mmのときの波長400〜700nmにおける平均反射率が86%以上のものである。
また、この焼結体におけるガラス材料は、酸化物基準で、SiO
2 15〜75mol%、B
2O
3 0〜40mol%、ZnO 0〜10mol%、Li
2O+Na
2O+K
2O 0〜30mol%、CaO 5〜35mol%、CaO+MgO+BaO+SrO 5〜40mol%、TiO
2 0〜20mol%、Al
2O
3 0〜10mol%を含有するものである。
【0024】
上記した発光素子用基板11および発光装置1によれば、金属部材14を有するために、比較的簡単な構造で良好な放熱性を得ることができる。また、このような発光素子用基板11および発光装置1における反射枠体15を、上記した焼結体からなるものとすることで、放熱性以外の光の取出し効率、信頼性、生産性等についても良好にすることができる。
【0025】
すなわち、900℃以下で焼成されたものとすることで、例えばアルミナ等のセラミックスからなるものに比べて焼成温度を抑制し、生産性の良好なものとすることができる。また、焼成が900℃以下であれば、銅または銅合金からなる金属部材14の溶融も抑制することができ、これと一体に焼成して製造することもできる。なお、焼結体は、必ずしも金属部材14と一体に焼成される必要はなく、個別に焼成したものを接着して金属部材14に一体化したものであってもよい。焼成温度は、900℃以下であれば特に限定されるものではなく、またガラス組成によっても異なるが、通常、500〜900℃である。
【0026】
空隙率が15%を超える場合、発光装置1の製造工程中に使用される各種の処理液が侵入しやすく、発光装置1の信頼性が低下するおそれがある。また、焼結体、すなわち反射枠体15の内側に封止材17を充填した場合であっても、焼結体と封止材17との界面に水や水蒸気が侵入しやすく、必ずしも発光装置1の信頼性を十分なものとすることができない。さらに、製造時のハンドリングで欠けやすく、生産性に支障をきたすおそれがある。また、製造後においても、衝撃に対する強度が十分でないために破損のおそれがある。焼結体の空隙率は、発光装置1の信頼性を確保する観点から、14%以下が好ましい。反射枠体15の内部の散乱反射を増加させるためには、空隙率が1.5%以上あることが好ましく、さらに好ましくは4%以上であり、さらに好ましくは6%以上である。
【0027】
なお、空隙率は以下に示す式により求められる。ここで、嵩密度はアルキメデス法、もしくは寸法からの計算の体積と質量により測定することができ、真密度は気相置換法(ピクノメータ法)により測定することができる。
空隙率[%]=(1−(嵩密度/真密度))×100
【0028】
平均反射率が86%未満の場合、発光装置1における光の取出し効率が十分でなくなるおそれがある。平均反射率は、発光装置1の光取出し効率を向上させる観点から、90%以上が好ましく、92%以上がより好ましい。なお、平均反射率は、波長400〜700nmの範囲において20nmごとに測定された反射率から算出される平均の反射率である。平均反射率を向上させるためには、焼結体中のセラミックス粉末の含有量を増やしたり、ガラス材料との屈折率差がより大きいセラミックス粉末を使用したりするのが好ましい。
【0029】
このような焼結体は、ガラス材料とセラミックス粉末とからなるものであり、かつ、ガラス材料を上記したガラス組成を有するものとすることで得ることができる。すなわち、このようなガラス材料とセラミックス粉末とからなるものとすることで、900℃以下で焼成することができ、これにより空隙率が15%以下、平均反射率が86%以上、好ましくは90%以上であるものを得ることができる。特に、上記したガラス組成を有するガラス材料によれば、セラミックス粉末を多量に含有させても焼結させることができ、セラミックス粉末を多量に含有させて反射率を向上させつつ、空隙率の低いものを得ることができる。
【0030】
以下、ガラス材料の各成分について説明する。
SiO
2は、ガラスのネットワークフォーマーであり、化学的耐久性、特に耐酸性を向上させる成分であり必須である。SiO
2の含有量が15mol%未満の場合、化学的耐久性が低下するおそれがある。一方、SiO
2の含有量が75mol%を超える場合、ガラス溶融温度が高くなる、またはガラス軟化点(Ts)が過度に高くなるおそれがある。
【0031】
B
2O
3は、必須成分ではないが、ガラスのネットワークフォーマーであり、また軟化点を低下させる成分であることから、含有させることが好ましい。B
2O
3の含有量が40mol%を超える場合、安定なガラスを得ることが難しく、また化学的耐久性も低下するおそれがある。
【0032】
ZnOは、必須成分ではないが、軟化点を低下させる成分であり有用である。ZnOの含有量が10mol%を超えると、化学的耐久性が低下するおそれがある。また、焼成時にガラスが結晶化しやすくなり、焼結を阻害し、焼結体の空隙率が低減しないおそれがある。
【0033】
アルカリ金属酸化物であるLi
2O、Na
2O、およびK
2Oは、必須成分ではないが、軟化点を低下させる成分であり有用である。Li
2O、Na
2O、およびK
2Oは、1種または2種のみが含有されていてもよい。これらの合計した含有量が30mol%を超えると、化学的耐久性、特に耐酸性が低下するおそれがある。
【0034】
CaOは、ガラスの安定性を高めるとともに、軟化点を低下させる成分であり、特に焼成時のアルミナ粉末とガラスとの濡れ性を向上する成分であり、焼結体の空隙率を低減する効果のある成分であり必須である。また、熱膨張係数を高める成分であり、他の基板材料等との熱膨張係数の整合性をとる場合に有用である。CaOの含有量が5mol%未満の場合、ガラスの安定性を十分に高めることができず、また軟化点も十分に低下させることができないおそれがある。一方、CaOの含有量が35mol%を超える場合、過度に含有量が多いために、焼成時にガラスが結晶化しやすくなり、焼結を阻害し、焼結体の空隙率が低減しないおそれがある。また、ガラスの安定性が低下するおそれがある。
【0035】
また、CaOと同様にガラスの安定性を高めるとともに、軟化点を低下させる成分として、MgO、BaO、およびSrOから選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。この場合、MgO、BaO、およびSrOの含有量は、CaOの含有量と合わせて40mol%以下である。CaO、MgO、BaO、およびSrOの合計した含有量が40mol%を超えると、ガラスの安定性が低下するおそれがある。なお、CaOを除いた、MgO、BaO、およびSrOの合計した含有量は、15mol%以下が好ましい。
【0036】
TiO
2は、必須成分ではないが、ガラスの耐候性を高める成分として有用である。TiO
2の含有量が20mol%を超える場合、ガラスの安定性が低下するおそれがある。
【0037】
Al
2O
3は、必須成分ではないが、ガラスの安定性、化学的耐久性を高める成分として有用である。Al
2O
3の含有量が10mol%を超える場合、軟化点が過度に高くなるおそれがある。Al
2O
3の含有量は、例えばSiO
2の含有量が、40mol%以上となる場合、2mol%以上が好ましく、3mol%以上がより好ましい。
【0038】
ガラス材料は、基本的に上記成分からなることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限度において、上記成分以外の他の成分を含有することができる。例えば、ガラスの安定性を高めるとともに、軟化点を低下させるためにP
2O
5を含有させてよい。また、例えば、ガラスの安定性を高めるためにSb
2O
3を含有させてよい。なお、その他の成分を含有させる場合には、その合計した含有量は10mol%以下であり、5mol%以下が好ましい。
【0039】
以下、上記したガラス材料の例として、より好ましい第1のガラス材料〜第3のガラス材料について説明する。
【0040】
第1のガラス材料は、酸化物基準で、SiO
2 40〜75mol%、B
2O
3 0〜20mol%、ZnO 0〜5mol%、Li
2O+Na
2O+K
2O 0.1〜10mol%、CaO 10〜35mol%、CaO+MgO+BaO+SrO 10〜35mol%、TiO
2 0〜5mol%、Al
2O
3 0〜10mol%を含有するものである。
第1のガラス材料は、SiO
2を多量に含むものであり、多量のセラミックス粉末を含有させた場合であっても有効に焼結させることができ、また化学的耐久性にも優れるために好ましい。第1のガラス材料としては、以下に示すような第1のガラス材料(a)、第1のガラス材料(b)がより好ましい。
【0041】
第1のガラス材料(a)は、酸化物基準で、SiO
2 55〜65mol%、B
2O
3 10〜20mol%、ZnO 0〜5mol%、Li
2O+Na
2O+K
2O 1〜5mol%、CaO 10〜20mol%、CaO+MgO+BaO+SrO10〜25mol%、TiO
2 0〜5mol%、Al
2O
3 0〜10mol%を含有するものである。
第1のガラス材料(a)によれば、特に多量のセラミックス粉末を含有しても有効に焼結させることができ、また化学的耐久性にも優れるために好ましい。
【0042】
第1のガラス材料(a)は、より好ましくは、酸化物基準で、SiO
2 57〜63mol%、B
2O
3 12〜18mol%、ZnO 0〜3mol%、Li
2O+Na
2O+K
2O 1〜5mol%、CaO 12〜18mol%、CaO+MgO+BaO+SrO 12〜20mol%、TiO
2 0〜3mol%、Al
2O
3 2〜8mol%を含有するものである。
【0043】
第1のガラス材料(b)は、酸化物基準で、SiO
2 65〜75mol%、B
2O
3 0〜5mol%、ZnO 0〜5mol%、Li
2O+Na
2O+K
2O 5〜12mol%、CaO 15〜25mol%、CaO+MgO+BaO+SrO 15〜30mol%、TiO
2 0〜5mol%、Al
2O
3 0〜5mol%を含有するものである。
第1のガラス材料(b)は、第1のガラス材料(a)に比べて、SiO
2およびアルカリ金属酸化物(Li
2O等)を多量に含むものであり、セラミックス粉末の含有量が比較的少量であっても高い反射率を得ることができるために好ましい。
【0044】
第1のガラス材料(b)は、より好ましくは、酸化物基準で、SiO
2 67〜73mol%、B
2O
3 0〜3mol%、ZnO 0〜3mol%、Li
2O+Na
2O+K
2O 6〜11mol%、CaO 16〜22mol%、CaO+MgO+BaO+SrO 16〜25mol%、TiO
2 0〜3mol%、Al
2O
3 0〜3mol%を含有するものである。
【0045】
第2のガラス材料は、酸化物基準で、SiO
2 15〜25mol%、B
2O
3 25〜40mol%、ZnO 0〜10mol%、Li
2O+Na
2O+K
2O 0〜5mol%、CaO 20〜35mol%、CaO+MgO+BaO+SrO 20〜40mol%、TiO
2 0〜5mol%、Al
2O
3 0〜5mol%を含有するものである。
第2のガラス材料は、第1のガラス材料に比べて、SiO
2を少なく、B
2O
3を多く含むものであり、第1のガラス材料に比べて低温、例えば800℃以下、通常は700〜800℃で焼成することができ、また空隙率の低いものが得られるために好ましい。
【0046】
第2のガラス材料は、より好ましくは、酸化物基準で、SiO
2 17〜23mol%、B
2O
3 32〜38mol%、ZnO 2〜7mol%、Li
2O+Na
2O+K
2O 0〜3mol%、CaO 22〜30mol%、CaO+MgO+BaO+SrO 30〜38mol%、TiO
2 0〜3mol%、Al
2O
3 1〜4mol%を含有するものである。
【0047】
第3のガラス材料は、酸化物基準で、SiO
2 15〜45mol%、B
2O
3 0〜10mol%、ZnO 0〜5mol%、Li
2O+Na
2O+K
2O 15〜30mol%、CaO5〜20mol%、CaO+MgO+BaO+SrO 5〜20mol%、TiO
2 5〜20mol%、Al
2O
3 0〜10mol%を含有するものである。
第3のガラス材料は、第2のガラス材料に比べて、アルカリ金属酸化物(Li
2O、Na
2OおよびK
2O)を多量に含むものであり、第2のガラス材料に比べて低温、例えば600℃以下、通常は500〜600℃で焼成することができるために好ましい。なお、アルカリ金属酸化物(Li
2O、Na
2O、およびK
2O)を多量に含有するものは耐酸性が低下しやすいことから、耐酸性を高めるためにTiO
2を多量に含有させている。
【0048】
第3のガラス材料は、より好ましくは、酸化物基準で、SiO
2 35〜42mol%、B
2O
3 2〜8mol%、ZnO 0〜3mol%、Li
2O+Na
2O+K
2O 24〜30mol%、CaO 5〜10mol%、CaO+MgO+BaO+SrO 6〜12mol%、TiO
2 11〜16mol%、Al
2O
3 0〜3mol%を含有するものである。
【0049】
一方、セラミックス粉末としては、例えばアルミナ粉末、ジルコニア粉末、チタニア粉末、またはこれらの混合物を好適に用いることができる。これらの中でも、アルミナ粉末、ジルコニア粉末、またはこれらの混合物を好適に用いることができる。
【0050】
このようなセラミックス粉末の含有量は、ガラス材料とセラミックス粉末との合計量中、35〜60体積%が好ましく、45〜60体積%がより好ましい。セラミックス粉末の含有量が35体積%未満の場合、十分な反射率を得ることができないおそれがある。一方、セラミックス粉末の含有量が60体積%を超える場合、焼結性が低下し、十分な強度を得ることができないおそれがある。
【0051】
セラミックス粉末の50%粒径(D
50)は、必ずしも限定されるものではないが、例えば0.5〜4μmが好ましく、1.0〜3.0μmがより好ましい。なお、本明細書において、50%粒径(D
50)は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定したものをいう。
【0052】
上記した焼結体、すなわち反射枠体15は、上記したガラス組成を有するガラス粉末とセラミックス粉末とを混合して得られる混合物であるガラスセラミックス組成物を所定の形状に成形し、焼成することにより製造することができる。
【0053】
ガラス粉末は、上記したガラス組成を有するガラスを溶融法によって製造した後、乾式粉砕法や湿式粉砕法によって粉砕することにより製造することができる。湿式粉砕法の場合、溶媒として水を用いることが好ましい。粉砕は、例えばロールミル、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて行うことができる。
【0054】
ガラス粉末の50%粒径(D
50)は0.5〜4μmが好ましく、1.0〜3.0μmがより好ましい。ガラス粉末の50%粒径が0.5μm未満の場合、ガラス粉末が凝集するために取り扱いが困難となり、また粉末化に要する時間も長くなるおそれがある。一方、ガラス粉末の50%粒径が4μmを超える場合、軟化温度の上昇や焼結不足が発生するおそれがある。また、ガラス粉末の最大粒径は20μm以下であることが好ましい。最大粒径が20μmを超えると、ガラス粉末の焼結性が低下し、焼結体中に未溶解成分が残留して、反射率が低下するおそれがある。ガラス粉末の最大粒径は、より好ましくは10μm以下である。粒径の調整は、例えば粉砕後に必要に応じて分級することにより行うことができる。
【0055】
このようなガラス粉末とセラミックス粉末とからなるガラスセラミックス組成物は、金型等を用いて成形することができる。この場合、金型へ充填するときの流動性を持たせるために、造粒粉もしくはペーストやスラリー状に加工することが好ましい。造粒粉は、粉末に熱分解性の良好な水溶性の樹脂および水を混合し、スプレードライヤーにより乾燥させて顆粒状としたものが代表的であるが、その他、転動造粒法等の公知の方法によって得られるものであってもよい。また、ペーストやスラリーは、粉末に熱分解性の良好な樹脂、適度な乾燥性および樹脂溶解性をもつ溶剤等を混合し、均質に分散させることにより得ることができる。特に、造粒粉を用いて、発光素子用反射枠体15を成形する場合、微量な樹脂の添加で成形できるので、脱脂のための400〜500℃での熱処理は、短時間もしくは不要となるため、生産性を向上させることができる。
【0056】
図2は、枠部152の成形方法の一例を示す断面図である。以下、枠部152となるガラスセラミックス組成物、これを成形して得られる成形体について、いずれも同じ符号を付して説明する。造粒粉等とされたガラスセラミックス組成物152は、例えば枠部152と同形状の凹部を有する金型31に充填した後、この金型31にプレス板32を被せ、プレス成形機等により圧力を加えて押し固めるように押圧成形することで成形体152とすることができる。このような成形体152は、金型31から取り出して焼成し、冷却することで、枠部152とすることができる。
【0057】
基台部151についても、
図3に示すように、基台部151と同形状の凹部を有する金型33に造粒粉等とされたガラスセラミックス組成物151を充填した後、この金型33にプレス板34を被せ、プレス成形機等により圧力を加えて押し固めるように押圧成形することで成形体151とすることができる。このような成形体151は、金型33から取り出して焼成し、冷却することで、基台部151とすることができる。なお、成形体151、152の焼成は、必ずしも金型31、33から取り出して行う必要はなく、金型31や金型33に入れた状態で焼成してもよい。
【0058】
そして、基台部151の金属部材14や枠部152が配置される主面側に、例えば公知の有機系または無機系の接着剤を塗布し、
図4に示すように金属部材14、枠部152を所定の位置に配置し、加熱等を行って接着剤を反応させて接着することで、金属部材14に基台部151と枠部152とからなる反射枠体15が一体化された基板11を得ることができる。このようにして得られる基板11には、発光素子12を実装した後、封止材17による封止を行うことで、発光装置1とすることができる。
【0059】
しかしながら、基台部151と枠部152とを個別に成形、焼成したものを接着するより、基台部151と枠部152を一体に成形、焼成した方が、低コストで製造できる。この場合、
図5に示すように金属部材14を挟むように金型31、33を配置し、それぞれにガラスセラミックス組成物151、152を充填し、成形し、全体を一体に焼成する。この際、金属部材14に貫通孔を開けるなど工夫を凝らしたり、金属部材14の両主面に無機接着剤を塗布したりすることにより、金属部材14と基台部151および枠部152との接着性を向上することができる。
【0060】
焼成は、ガラス組成によっても異なるが、例えば500〜900℃で10〜60分間保持することにより行うことが好ましい。焼成温度が500℃未満の場合、ガラスセラミックス組成物151、152の焼結が十分でなく、例えば空隙率が15%以下のものを得られないおそれがある。一方、焼成温度が900℃を超える場合、例えば銅または銅合金からなる金属部材14と一体に焼成した場合に、この金属部材14が溶融するおそれがある。また、焼成温度を750℃以下、さらには600℃以下とすることにより、腐食しにくいアルミニウム、アルミニウム合金、鉄/ニッケル合金、メッキ(ニッケルメッキ等)を施したアルミニウム合金などの金属部材を使用できるため、良好な信頼性、生産性を得ることができる。また、焼成時間が10分未満の場合、ガラスセラミックス組成物151、152の焼結が十分でなく、例えば空隙率が15%以下のものを得られないおそれがある。一方、焼成時間は60分程度もあれば十分であり、60分を超えて焼成しても効果的に緻密化を進行させることはできず、かえって生産性が低下するおそれがある。
【0061】
以上、本発明の反射枠体15について一例を挙げて説明したが、本発明の反射枠体15は少なくとも金属部材14の搭載部13を取り囲む部分を有するものであればよく、その他の形状等については特に制限されるものではない。例えば、本発明の反射枠体15は、必ずしも基台部151と枠部152とを有する必要はなく、基台部151を有しない実質的に枠部152のみからなるものであってもよい。
【0062】
また、金属部材14は、必ずしも反射枠体15の外側に突出される必要はなく、また必ずしも反射枠体15の内部、例えば基台部151と枠部152との境界部分に埋設されている必要もなく、反射枠体15の内側表面、例えば基台部151や枠部152の内側表面に沿って配置されるものであってもよい。
【0063】
本発明の反射枠体15によれば、金属部材14を有する放熱性の良好な、基板11および発光装置1に用いることで、放熱性以外の光の取出し効率、信頼性、生産性等についても良好なものとすることができる。また、本発明の発光素子用基板11および発光装置1によれば、金属部材14、および反射枠体15を有することにより、良好な放熱性に加えて、良好な光の取出し効率、信頼性、生産性等を得ることができる。このため、例えば液晶ディスプレイ等のバックライト、小型情報端末の操作ボタンにおける発光部、自動車用もしくは装飾用の照明、その他の光源として好適に用いることができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明について実施例を参照してさらに詳細に説明が、これらに限定して解釈されるものではない。
【0065】
(実施例1)
SiO
2 60.4mol%、B
2O
3 15.6mol%、Na
2O 1.0mol%、K
2O 2.0mol%、CaO 15.0mol%およびAl
2O
3 6.0mol%(第1のガラス材料(a)に相当)となるように各原料を配合し、混合した後、この原料混合物を白金ルツボに入れて1400〜1500℃で60分間溶融させた。その後、この溶融状態のガラスを流し出し、冷却した。このガラスをアルミナ製ボールミルにより6〜12時間乾式粉砕した後、更に7〜15時間湿式粉砕してガラス粉末を製造した。なお、粉砕時の溶媒には水を用いた。
【0066】
このガラス粉末にアルミナ粉末(住友化学社製、商品名AL−M43)が38体積%となるように配合し、混合してガラスセラミックス組成物を製造した。このガラスセラミックス組成物を875℃で20分間焼成し、発光素子用反射枠体としての厚みが1.0mm、大きさ約50mm×50mmの板状の試験片を製造した。
【0067】
(実施例2)
実施例1のガラスセラミックス組成物の製造において、アルミナ粉末が53体積%となるように配合し、混合してガラスセラミックス組成物を製造した。以降は実施例1と略同様にして、このガラスセラミックス組成物を875℃で20分間焼成し、厚みが1.1mmである発光素子用反射枠体としての試験片を製造した。
【0068】
(実施例3)
実施例1のガラスセラミックス組成物の製造において、アルミナ粉末が30体積%、ジルコニア粉末(第一稀元素社製、商品名:HSY−3F−J)が14体積%となるように配合し、混合してガラスセラミックス組成物を製造した。以降は実施例1と略同様にして、このガラスセラミックス組成物を875℃で20分間焼成し、厚みが1.1mmである発光素子用反射枠体としての試験片を製造した。
【0069】
(実施例4)
SiO
2 70.3mol%、Na
2O 4.5mol%、K
2O 3.7mol%、CaO 18.9mol%およびAl
2O
3 2.6mol%(第1のガラス材料(b)に相当)となるように各原料を配合し、混合した後、この原料混合物を白金ルツボに入れて1400〜1500℃で60分間溶融させた。その後、この溶融状態のガラスを流し出し、冷却した。このガラスをアルミナ製ボールミルにより6〜12時間乾式粉砕した後、更に7〜15時間湿式粉砕してガラス粉末を製造した。なお、粉砕時の溶媒には水を用いた。
【0070】
このガラス粉末にアルミナ粉末(住友化学社製、商品名AL−M43)が39体積%となるように配合し、混合してガラスセラミックス組成物を製造した。このガラスセラミックス組成物を875℃で20分間焼成し、発光素子用反射枠体としての厚みが1.2mmである板状の試験片を製造した。
【0071】
(実施例5)
SiO
2 20.0mol%、B
2O
3 35.0mol%、ZnO 4.5mol%、CaO 25.0mol%、SrO 5.0mol%、BaO 5.0mol%およびAl
2O
3 2.5mol%(第2のガラス材料に相当)となるように各原料を配合し、混合した後、この原料混合物を白金ルツボに入れて1300〜1400℃で60分間溶融させた。その後、この溶融状態のガラスを流し出し、冷却した。このガラスをアルミナ製ボールミルにより6〜12時間乾式粉砕した後、更に7〜15時間湿式粉砕してガラス粉末を製造した。なお、粉砕時の溶媒には水を用いた。
【0072】
このガラス粉末にアルミナ粉末(住友化学社製、商品名AL−M43)が50体積%となるように配合し、混合してガラスセラミックス組成物を製造した。このガラスセラミックス組成物を750℃で20分間焼成し、発光素子用反射枠体としての厚みが1.4mmである板状の試験片を製造した。
【0073】
(実施例6)
SiO
2 37.9mol%、B
2O
3 4.5mol%、Li
2O 3.0mol%、Na
2O 17.4mol%、K
2O 6.5mol%、CaO 7.5mol%、SrO 1.4mol%、Al
2O
3 0.3mol%、P
2O
5 1.6mol%、Sb
2O
3 0.6mol%およびTiO
2 14.0mol%(第3のガラス材料に相当)となるように各原料を配合し、混合した後、この原料混合物を白金ルツボに入れて1300〜1400℃で60分間溶融させた。その後、この溶融状態のガラスを流し出し、冷却した。このガラスをアルミナ製ボールミルにより6〜12時間乾式粉砕した後、更に7〜15時間湿式粉砕してガラス粉末を製造した。なお、粉砕時の溶媒には水を用いた。
【0074】
このガラス粉末にアルミナ粉末(住友化学社製、商品名AL−M43)が57体積%となるように配合し、混合してガラスセラミックス組成物を製造した。このガラスセラミックス組成物を600℃で20分間焼成し、発光素子用反射枠体としての厚みが1.0mmである板状の試験片を製造した。
【0075】
次に、実施例の各試験片について、以下に示す方法により空隙率および平均反射率を測定した。結果を表1に示す。なお、比較のために、2種のアルミナ基板(北陸セラミック社製、96%アルミナ基板0.65mm厚み、および1.1mm厚み)の反射率を併せて示した。
【0076】
(空隙率)
空隙率は以下に示す式により求めた。
空隙率[%]=(1−(嵩密度/真密度))×100
なお、嵩密度はアルキメデス法により測定し、真密度は気相置換法(ピクノメータ法)により測定した。
【0077】
(平均反射率)
平均反射率は、ミノルタ社製CM−508dをSCIモードにして、波長400〜700nmの範囲において20nmごとに反射率を測定し、この反射率の平均を算出した。なお、機器校正用のリファレンスとしてはアルミナ製白色校正板を使用した。
【0078】
【表1】
【0079】
表1から明らかなように、実施例1〜6の各試験片については、いずれも900℃以下での焼成が可能であり、また空隙率が15%以下、平均反射率が86%以上となり、発光装置に好適であることが認められた。特に、実施例2〜6の各試験片については、90%以上の反射率を得ることができ、発光装置に好適であることが認められた。