特許第5742957号(P5742957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5742957導体回路を有する構造体及びその製造方法並びに熱硬化性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5742957
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】導体回路を有する構造体及びその製造方法並びに熱硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20150611BHJP
【FI】
   H05K3/46 B
   H05K3/46 N
【請求項の数】18
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2013-538543(P2013-538543)
(86)(22)【出願日】2012年10月9日
(86)【国際出願番号】JP2012076130
(87)【国際公開番号】WO2013054790
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2014年1月20日
(31)【優先権主張番号】特願2011-224341(P2011-224341)
(32)【優先日】2011年10月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】蔵渕 和彦
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 薫平
(72)【発明者】
【氏名】名越 俊昌
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−274727(JP,A)
【文献】 特開2003−163323(JP,A)
【文献】 特開2008−306227(JP,A)
【文献】 特開2000−101244(JP,A)
【文献】 特開平01−307293(JP,A)
【文献】 特開2011−018830(JP,A)
【文献】 特開2010−016336(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/101163(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体回路を有する支持体の表面に形成した絶縁層に開口が設けられると共に、前記導体回路に接続される配線部が前記開口に形成されてなる導体回路を有する構造体の製造方法であって、
前記導体回路を覆うように前記支持体上に第1の感光性樹脂層を形成する第1の感光性樹脂層形成工程と、
前記第1の感光性樹脂層に露光処理及び現像処理を施してパターン化する第1のパターン化工程と、
前記第1の感光性樹脂層のパターンを覆うように前記支持体上に熱硬化性樹脂層を形成する熱硬化性樹脂層形成工程と、
前記熱硬化性樹脂層の一部を除去して前記第1の感光性樹脂層のパターンの所定箇所を前記熱硬化性樹脂層から露出させるパターン露出工程と、
前記熱硬化性樹脂層から露出した前記第1の感光性樹脂層を除去して前記導体回路を露出させる開口を前記熱硬化性樹脂層に形成する開口形成工程と、
を備え
前記熱硬化性樹脂層形成工程の直後の工程として、前記熱硬化性樹脂層を熱硬化する熱硬化工程を更に備え、
前記パターン露出工程及び前記開口形成工程において、プラズマ処理とデスミア処理とを施すことにより、前記熱硬化後の熱硬化性樹脂層の一部の除去と、前記熱硬化性樹脂層から露出した前記第1の感光性樹脂層の除去とを行う、導体回路を有する構造体の製造方法。
【請求項2】
導体回路を有する支持体の表面に形成した絶縁層に開口が設けられると共に、前記導体回路に接続される配線部が前記開口に形成されてなる導体回路を有する構造体の製造方法であって、
前記導体回路を覆うように前記支持体上に第1の感光性樹脂層を形成する第1の感光性樹脂層形成工程と、
前記第1の感光性樹脂層に露光処理及び現像処理を施してパターン化する第1のパターン化工程と、
前記第1の感光性樹脂層のパターンを覆うように前記支持体上に熱硬化性樹脂層を形成する熱硬化性樹脂層形成工程と、
前記熱硬化性樹脂層の一部を除去して前記第1の感光性樹脂層のパターンの所定箇所を前記熱硬化性樹脂層から露出させるパターン露出工程と、
前記熱硬化性樹脂層から露出した前記第1の感光性樹脂層を除去して前記導体回路を露出させる開口を前記熱硬化性樹脂層に形成する開口形成工程と、
を備え
前記熱硬化性樹脂層形成工程の直後の工程として、前記熱硬化性樹脂層を熱硬化する熱硬化工程を更に備え、
前記パターン露出工程及び前記開口形成工程において、デスミア処理を施すことにより、前記熱硬化後の熱硬化性樹脂層の一部の除去と、前記熱硬化性樹脂層から露出した前記第1の感光性樹脂層の除去とを行う、導体回路を有する構造体の製造方法。
【請求項3】
導体回路を有する支持体の表面に形成した絶縁層に開口が設けられると共に、前記導体回路に接続される配線部が前記開口に形成されてなる導体回路を有する構造体の製造方法であって、
前記導体回路を覆うように前記支持体上に第1の感光性樹脂層を形成する第1の感光性樹脂層形成工程と、
前記第1の感光性樹脂層に露光処理及び現像処理を施してパターン化する第1のパターン化工程と、
前記第1の感光性樹脂層のパターンを覆うように前記支持体上に熱硬化性樹脂層を形成する熱硬化性樹脂層形成工程と、
前記熱硬化性樹脂層の一部を除去して前記第1の感光性樹脂層のパターンの所定箇所を前記熱硬化性樹脂層から露出させるパターン露出工程と、
前記熱硬化性樹脂層から露出した前記第1の感光性樹脂層を除去して前記導体回路を露出させる開口を前記熱硬化性樹脂層に形成する開口形成工程と、
を備え
前記熱硬化性樹脂層形成工程の直後の工程として、前記熱硬化性樹脂層を熱硬化する熱硬化工程を更に備え、
前記パターン露出工程において、研磨処理を施すことにより、前記熱硬化後の熱硬化性樹脂層の一部の除去を行い、前記開口形成工程において、デスミア処理を施すことにより、前記熱硬化性樹脂層から露出した前記第1の感光性樹脂層の除去を行う、導体回路を有する構造体の製造方法。
【請求項4】
導体回路を有する支持体の表面に形成した絶縁層に開口が設けられると共に、前記導体回路に接続される配線部が前記開口に形成されてなる導体回路を有する構造体の製造方法であって、
前記導体回路を覆うように前記支持体上に第1の感光性樹脂層を形成する第1の感光性樹脂層形成工程と、
前記第1の感光性樹脂層に露光処理及び現像処理を施してパターン化する第1のパターン化工程と、
前記第1の感光性樹脂層のパターンを覆うように前記支持体上に熱硬化性樹脂層を形成する熱硬化性樹脂層形成工程と、
前記熱硬化性樹脂層の一部を除去して前記第1の感光性樹脂層のパターンの所定箇所を前記熱硬化性樹脂層から露出させるパターン露出工程と、
前記熱硬化性樹脂層から露出した前記第1の感光性樹脂層を除去して前記導体回路を露出させる開口を前記熱硬化性樹脂層に形成する開口形成工程と、
を備え
前記熱硬化性樹脂層形成工程の直後の工程として、前記熱硬化性樹脂層を熱硬化する熱硬化工程を更に備え、
前記パターン露出工程及び前記開口形成工程において、プラズマ処理を施すことにより、前記熱硬化後の熱硬化性樹脂層の一部の除去と、前記熱硬化性樹脂層から露出した前記第1の感光性樹脂層の除去とを行う、導体回路を有する構造体の製造方法。
【請求項5】
導体回路を有する支持体の表面に形成した絶縁層に開口が設けられると共に、前記導体回路に接続される配線部が前記開口に形成されてなる導体回路を有する構造体の製造方法であって、
前記導体回路を覆うように前記支持体上に第1の感光性樹脂層を形成する第1の感光性樹脂層形成工程と、
前記第1の感光性樹脂層に露光処理及び現像処理を施してパターン化する第1のパターン化工程と、
前記第1の感光性樹脂層のパターンを覆うように前記支持体上に熱硬化性樹脂層を形成する熱硬化性樹脂層形成工程と、
前記熱硬化性樹脂層の一部を除去して前記第1の感光性樹脂層のパターンの所定箇所を前記熱硬化性樹脂層から露出させるパターン露出工程と、
前記熱硬化性樹脂層から露出した前記第1の感光性樹脂層を除去して前記導体回路を露出させる開口を前記熱硬化性樹脂層に形成する開口形成工程と、
を備え
前記パターン露出工程と前記開口形成工程との間の工程として、前記熱硬化性樹脂層を熱硬化する熱硬化工程を更に備え、
前記パターン露出工程において、プラズマ処理を施すことにより、熱硬化前の熱硬化性樹脂層の一部を除去し、前記開口形成工程において、プラズマ処理を施すことにより、前記熱硬化後の熱硬化性樹脂層から露出した前記第1の感光性樹脂層の除去を行う、導体回路を有する構造体の製造方法。
【請求項6】
導体回路を有する支持体の表面に形成した絶縁層に開口が設けられると共に、前記導体回路に接続される配線部が前記開口に形成されてなる導体回路を有する構造体の製造方法であって、
前記導体回路を覆うように前記支持体上に第1の感光性樹脂層を形成する第1の感光性樹脂層形成工程と、
前記第1の感光性樹脂層に露光処理及び現像処理を施してパターン化する第1のパターン化工程と、
前記第1の感光性樹脂層のパターンを覆うように前記支持体上に熱硬化性樹脂層を形成する熱硬化性樹脂層形成工程と、
前記熱硬化性樹脂層の一部を除去して前記第1の感光性樹脂層のパターンの所定箇所を前記熱硬化性樹脂層から露出させるパターン露出工程と、
前記熱硬化性樹脂層から露出した前記第1の感光性樹脂層を除去して前記導体回路を露出させる開口を前記熱硬化性樹脂層に形成する開口形成工程と、
を備え
前記パターン露出工程及び前記開口形成工程において、プラズマ処理を施すことにより、熱硬化前の熱硬化性樹脂層の一部の除去と、前記熱硬化性樹脂層から露出した前記第1の感光性樹脂層の除去とを行い、
前記開口形成工程の後工程として、前記熱硬化性樹脂層を熱硬化する熱硬化工程を更に備える、導体回路を有する構造体の製造方法。
【請求項7】
前記熱硬化工程において、前記熱硬化性樹脂層の温度を150℃〜250℃とし、且つ加熱時間を30分〜300分とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の導体回路を有する構造体の製造方法。
【請求項8】
前記熱硬化工程において、不活性ガスの雰囲気で前記熱硬化を行う、請求項1〜7のいずれか一項に記載の導体回路を有する構造体の製造方法。
【請求項9】
前記開口を形成した後の熱硬化性樹脂層の少なくとも一部を覆うように、無電解めっき法により前記配線部の下地となるシード層を形成するシード層形成工程と、
前記シード層を覆うように、第2の感光性樹脂層を形成後、前記第2の感光性樹脂層に露光処理及び現像処理を施してパターン化する第2のパターン化工程と、
前記シード層を少なくとも覆うように、電解めっき法により前記配線部を形成後、はく離処理により前記第2の感光性樹脂層のパターンをはく離して前記配線部をパターン化する配線部パターン化工程と、
前記配線部が形成されていない領域のシード層を除去するシード層除去工程と、を更に備える請求項1〜のいずれか一項に記載の導体回路を有する構造体の製造方法。
【請求項10】
前記第1の感光性樹脂層形成工程において、前記第1の感光性樹脂層の厚さTを2μm〜50μmとする、請求項1〜のいずれか一項に記載の導体回路を有する構造体の製造方法。
【請求項11】
前記熱硬化性樹脂層形成工程おいて、前記熱硬化性樹脂層の厚さTを2μm〜50μmとする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の導体回路を有する構造体の製造方法。
【請求項12】
前記熱硬化性樹脂層形成工程おいて、前記第1の感光性樹脂層の厚さTに対する前記熱硬化性樹脂層の厚さTの比(T/T)を1.0〜2.0とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の導体回路を有する構造体の製造方法。
【請求項13】
前記開口形成工程おいて、前記熱硬化性樹脂層に形成する前記開口のうち、最小の開口の直径Rminに対する当該開口の深さDの比(D/Rmin)を0.1〜1.0とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の導体回路を有する構造体の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の導体回路を有する構造体の製造方法によって製造された導体回路を有する構造体であって、
前記熱硬化性樹脂層が有する開口の直径が60μm以下である、導体回路を有する構造体。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の導体回路を有する構造体の製造方法に用いられる感光性樹脂組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の感光性樹脂組成物からなるドライフィルムレジスト。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の導体回路を有する構造体の製造方法において使用される熱硬化性樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂及び熱硬化性ポリイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含む樹脂組成物と、
最大粒径が5μm以下であり且つ平均粒径が1μm以下である無機フィラーと、
を含有する熱硬化性樹脂組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の熱硬化性樹脂組成物からなる熱硬化性樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体回路を有する構造体及びその製造方法並びに熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
導体回路を有する構造体の一つであるプリント配線基板は、コア基板上に複数の配線層が形成されたものであり、コア基板となる銅張積層体、各配線層間に設けられる層間絶縁材及び最表面に設けられるソルダーレジストを備えている。プリント配線基板上には、通常、ダイボンディング材やアンダーフィル材を介して半導体素子が実装される。また、必要に応じて、トランスファー封止材によって全面封止される場合や、放熱性の向上を目的とした金属キャップ(蓋)が装着される場合がある。近年、半導体装置の軽薄短小化は留まるところを知らず、半導体素子や多層プリント配線基板の高密度化が進んでいる。また、半導体装置の上に半導体装置を積むパッケージ・オン・パッケージといった実装形態も盛んに行われており、今後、半導体装置の実装密度は一段と高くなると予想される。
【0003】
ところで、プリント配線基板の層間絶縁材には、上下の配線層を電気的に接続するためのビア(開口)を設ける必要がある。プリント配線基板上に実装されるフリップチップのピン数が増加すれば、そのピン数に対応する開口を設ける必要がある。しかし、従来のプリント配線基板は実装密度が低く、また、実装する半導体素子のピン数も数千ピンから一万ピン前後の設計となっているため、小径で狭ピッチな開口を設ける必要がなかった。
【0004】
しかしながら、半導体素子の微細化が進展し、ピン数が数万ピンから数十万ピンに増加するに従って、プリント配線基板の層間絶縁材に形成する開口も半導体素子のピン数に合わせて、狭小化する必要性が高まっている。最近では、熱硬化性樹脂材料を用いて、レーザにより開口を設けるプリント配線基板の開発が進められている(例えば特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−279678号公報
【特許文献2】特開平11−054913号公報
【特許文献3】特開2001−217543号公報
【特許文献4】特開2003−017848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜4に記載されているプリント配線基板は、熱硬化性樹脂材料を用いてレーザにより開口を設けている。
【0007】
図12は、従来の多層プリント配線基板の製造方法を示す図である。図12(f)に示す多層プリント配線基板100Aは表面及び内部に配線パターンを有する。多層プリント配線基板100Aは、銅張積層体、層間絶縁材及び金属箔等を積層するとともにエッチング法やセミアディティブ法によって配線パターンを適宜形成することによって得られる。
【0008】
まず、表面に配線パターン102を有する銅張積層体101の両面に層間絶縁層103を形成する(図12(a)参照)。層間絶縁層103は、熱硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷機やロールコータを用いて印刷してもよいし、熱硬化性樹脂組成物からなるフィルムを予め準備し、ラミネータを用いて、このフィルムをプリント配線基板の表面に貼り付けることもできる。次いで、外部と電気的に接続することが必要な箇所を、YAGレーザや炭酸ガスレーザを用いて開口104を形成し、開口104周辺のスミア(残渣)をデスミア処理により除去する(図12(b)参照)。次いで、無電解めっき法によりシード層105を形成する(図12(c)参照)。上記シード層105上に感光性樹脂組成物をラミネートし、所定の箇所を露光、現像処理して配線パターン106を形成する(図12(d)参照)。次いで、電解めっき法により配線パターン107を形成し、はく離液により感光性樹脂組成物の硬化物を除去した後、上記シード層105をエッチングにより除去する(図12(e)参照)。以上を繰り返し行い、最表面にソルダーレジスト108を形成することで多層プリント配線基板100Aを作製することができる(図12(f)参照)。
【0009】
このようにして得られた多層プリント配線基板100Aは、対応する箇所に半導体素子が実装され、電気的な接続を確保することが可能である。しかしながら、このような方法で製造された多層プリント配線基板100Aは、レーザ等の新規な設備導入が必要であること、比較的大きな開口又は60μm以下の微小な開口を設けることが困難であること、開口径に合わせて使用するレーザを使い分ける必要があること、特殊な形状を設けることが困難であること等の問題がある。また、レーザを用いて開口を形成する場合、各開口を一つずつ形成しなければならないため、多数の微細な開口を設ける必要がある場合に時間が掛かること、また開口部周辺に樹脂の残渣が残るため、残渣を除去しない限り、得られる多層プリント配線基板の信頼性が低下するといった問題もある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、絶縁層に微細な開口を有し且つ優れた信頼性を有する構造体を充分に効率的に製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明は上記方法によって製造された導体回路を有する構造体(例えばプリント配線基板)、並びに、これらの構造体を製造するのに適した熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決のため、本発明に係る導体回路を有する構造体の製造方法は、導体回路を有する支持体の表面に形成した絶縁層に開口が設けられると共に、導体回路に接続される配線部が開口に形成されてなる導体回路を有する構造体の製造方法であって、導体回路を覆うように支持体上に第1の感光性樹脂層を形成する第1の感光性樹脂層形成工程と、第1の感光性樹脂層に露光処理及び現像処理を施してパターン化する第1のパターン化工程と、第1の感光性樹脂層のパターンを覆うように支持体上に熱硬化性樹脂層を形成する熱硬化性樹脂層形成工程と、熱硬化性樹脂層の一部を除去して第1の感光性樹脂層のパターンの所定箇所を熱硬化性樹脂層から露出させるパターン露出工程と、熱硬化性樹脂層から露出した第1の感光性樹脂層を除去して導体回路を露出させる開口を熱硬化性樹脂層に形成する開口形成工程と、を備える。
【0012】
この導体回路を有する構造体の製造方法では、熱硬化性樹脂層に形成する開口の形状に合わせて、第1のパターン化工程において第1の感光性樹脂層をパターン化することにより、様々な開口を容易に形成することができる。また、このプリント配線基板の製造方法では、レーザで開口を形成する場合と異なり、複数の開口を同時に形成できることに加え、開口周辺の樹脂の残渣を低減できる。このため、半導体素子のピン数が増加し、多数の微細な開口を設ける必要が生じた場合でも、優れた信頼性を有するプリント配線基板を効率的に製造することができる。
【0013】
また、熱硬化性樹脂層形成工程の直後の工程として、熱硬化性樹脂層を熱硬化する熱硬化工程を更に備え、パターン露出工程及び開口形成工程において、プラズマ処理及びデスミア処理を施すことにより、熱硬化後の熱硬化性樹脂層の一部の除去と、熱硬化性樹脂層から露出した第1の感光性樹脂層の除去とを行うことが好ましい。この場合、プラズマ処理及びデスミア処理によって速やかに第1の感光性樹脂層を露出させることができると共に、開口周辺の残渣をより確実に低減できる。
【0014】
また、熱硬化性樹脂層形成工程の直後の工程として、熱硬化性樹脂層を熱硬化する熱硬化工程を更に備え、パターン露出工程及び開口形成工程において、デスミア処理を施すことにより、熱硬化性樹脂層の一部の除去と、熱硬化性樹脂層から露出した第1の感光性樹脂層の除去とを行うことが好ましい。この場合、デスミア処理によって速やかに第1の感光性樹脂層を露出させることができると共に、開口周辺の残渣をより確実に低減できる。
【0015】
また、熱硬化性樹脂層形成工程の直後の工程として、熱硬化性樹脂層を熱硬化する熱硬化工程を更に備え、パターン露出工程において、研磨処理を施すことにより、熱硬化後の熱硬化性樹脂層の一部の除去を行い、開口形成工程において、デスミア処理を施すことにより、熱硬化性樹脂層から露出した第1の感光性樹脂層の除去を行うことが好ましい。この場合、研磨処理又はデスミア処理によって速やかに第1の感光性樹脂層を露出させることができると共に、デスミア処理によって開口周辺の残渣をより確実に低減できる。
【0016】
また、熱硬化性樹脂層形成工程の直後の工程として、熱硬化性樹脂層を熱硬化する熱硬化工程を更に備え、パターン露出工程及び開口形成工程において、プラズマ処理を施すことにより、熱硬化後の熱硬化性樹脂層の一部の除去と、熱硬化性樹脂層から露出した第1の感光性樹脂層の除去とを行うことが好ましい。この場合、プラズマ処理によって速やかに第1の感光性樹脂層を露出させることができると共に、開口周辺の残渣をより確実に低減できる。
【0017】
また、パターン露出工程と開口形成工程との間の工程として、熱硬化性樹脂層を熱硬化する熱硬化工程を更に備え、パターン露出工程において、プラズマ処理を施すことにより、熱硬化前の熱硬化性樹脂層の一部の除去し、開口形成工程において、プラズマ処理を施すことにより、熱硬化後の熱硬化性樹脂層から露出した第1の感光性樹脂層の除去とを行うことが好ましい。この場合、プラズマ処理によって速やかに第1の感光性樹脂層を露出させることができると共に、開口周辺の残渣をより確実に低減できる。
【0018】
パターン露出工程及び開口形成工程において、プラズマ処理を施すことにより、熱硬化前の熱硬化性樹脂層の一部の除去と、熱硬化性樹脂層から露出した第1の感光性樹脂層の除去とを行い、開口形成工程の後工程として、熱硬化性樹脂層を熱硬化する熱硬化工程を更に備える行うことが好ましい。この場合、プラズマ処理によって速やかに第1の感光性樹脂層を露出させることができると共に、開口周辺の残渣をより確実に低減できる。
【0019】
また、熱硬化工程において、熱硬化性樹脂層の温度を150℃〜250℃とし、且つ加熱時間を30分〜300分とすることが好ましい。熱硬化性樹脂層の温度を150℃以上、加熱時間を30分以上とすると、熱硬化性樹脂層を充分に硬化することができるため、その後のパターン露出工程及び開口形成工程において、熱硬化性樹脂層を除去し易くなり、導体回路を露出し易くなる。一方、熱硬化性樹脂層の温度を250℃以下、加熱時間を300分以下とすると、導体回路表面の銅の酸化を抑えることができ、銅界面で熱硬化性樹脂層がはく離することを防げる。
【0020】
また、熱硬化工程において、不活性ガスの雰囲気で熱硬化を行うことが好ましい。不活性ガスの雰囲気で熱硬化を行うことにより、熱硬化工程において導体回路表面の銅の酸化を抑制することができる。
【0021】
また、開口を形成した後の熱硬化性樹脂層の少なくとも一部を覆うように、無電解めっき法により配線部の下地となるシード層を形成するシード層形成工程と、シード層を覆うように、第2の感光性樹脂層を形成後、第2の感光性樹脂層に露光処理及び現像処理を施してパターン化する第2のパターン化工程と、シード層を少なくとも覆うように、電解めっき法により配線部を形成後、はく離処理により第2の感光性樹脂層をはく離して配線部をパターン化する配線部パターン化工程と、配線部が形成されていない領域のシード層を除去するシード層除去工程と、を更に備えることが好ましい。シード層を形成することにより、電解めっき法による配線部の形成が可能になり、配線部を選択的にパターン化することができる。
【0022】
また、第1の感光性樹脂層形成工程において、第1の感光性樹脂層の厚さTを2μm〜50μmとすることが好ましい。第1の感光性樹脂層の厚さTを2μm以上とすると、第1の感光性樹脂層の形成に用いる感光性樹脂組成物を成膜し易くなるため、プリント配線基板の製造に用いるフィルム状の感光性樹脂組成物を容易に作製することができる。第1の感光性樹脂層の厚さTを50μm以下とすると、第1の感光性樹脂層に微細なパターンを形成することが容易になる。
【0023】
また、熱硬化性樹脂層形成工程おいて、熱硬化性樹脂層の厚さTを2μm〜50μmとすることが好ましい。熱硬化性樹脂層の厚さTを2μm以上とすると、熱硬化性樹脂層の形成に用いる熱硬化性樹脂組成物を成膜し易くなるため、プリント配線基板の製造に用いるフィルム状の熱硬化性樹脂組成物を容易に作製することができる。熱硬化性樹脂層の厚さTを50μm以下とすると、熱硬化性樹脂層に微細なパターンを形成することが容易になる。
【0024】
また、熱硬化性樹脂層形成工程おいて、第1の感光性樹脂層の厚さTに対する熱硬化性樹脂層の厚さTの比(T/T)を1.0〜2.0とすることが好ましい。(T/T)を1.0以上とすると、熱硬化性樹脂層形成工程において、第1の感光性樹脂層のパターンを熱硬化性樹脂組成物で埋め込みやすくなるため、得られる導体回路を有する構造体の信頼性をより高めることができる。一方、(T/T)を2.0以下とすると、後続する工程において熱硬化性樹脂層が除去し易くなり、短時間で開口を熱硬化性樹脂層に形成できるため、導体回路を有する構造体をより効率的に製造することができる。
【0025】
また、開口形成工程おいて、熱硬化性樹脂層に形成する開口のうち、最小の直径Rminに対する当該開口の深さDの比(D/Rmin)を0.1〜1.0とすることが好ましい。(D/Rmin)を0.1以上とすると、熱硬化性樹脂層の厚さが薄くなり過ぎないため、熱硬化性樹脂層に微細な開口を形成する場合であっても、開口の形状を安定に保つことができる。一方、(D/Rmin)を1.0以下とすると、第1の感光性樹脂層が除去し易くなり、直径60μm以下の微細な開口をより形成し易くなる。
【0026】
また、本発明に係る導体回路を有する構造体は、上述した導体回路を有する構造体の製造方法によって製造された導体回路を有する構造体であって、熱硬化性樹脂層が有する開口の直径が60μm以下であることが好ましい。上述した製造方法によって製造された導体回路を有する構造体は、図12に示される従来の導体回路を有する構造体と比べて、絶縁層に微細な開口を有し且つ優れた信頼性を持たせることができる。また、導体回路を有する構造体における熱硬化性樹脂層が有する開口の直径が60μm以下であることにより、ピン数が数万ピンから数十万ピンの多数のピンを備えた半導体素子を実装するのに適したものとなる。
【0027】
また、本発明は上述した導体回路を有する構造体の製造方法に用いられる感光性樹脂組成物に関する。
【0028】
また、本発明は上述した導体回路を有する構造体の製造方法に用いられる感光性樹脂組成物からなるドライフィルムレジストに関する。
【0029】
また、本発明に係る導体回路を有する構造体は、上述した導体回路を有する構造体の製造方法において使用される熱硬化性樹脂組成物であって、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂及び熱硬化性ポリイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含む樹脂組成物と、最大粒径が5μm以下であり且つ平均粒径が1μm以下である無機フィラーと、を含有する熱硬化性樹脂組成物であることが好ましい。このような熱硬化性樹脂組成物を用いて熱硬化性樹脂層を形成することにより、熱硬化性樹脂層に形成した開口の表面が平滑となり、開口上にシード層を形成し易くなる。
【0030】
また、本発明は上述した熱硬化性樹脂組成物からなる熱硬化性樹脂フィルムに関する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、絶縁層に微細な開口を有し且つ優れた信頼性を有する導体回路を有する構造体を充分に効率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係るプリント配線基板の製造方法を示す断面図である。
図2図1の後続となる第1の感光性樹脂層形成工程を示す断面図である。
図3図2の後続となる第1のパターン化工程を示す断面図である。
図4図3の後続となる熱硬化性樹脂層形成工程を示す断面図である。
図5図4の後続となるパターン露出工程を示す断面図である。
図6図5の後続となる開口形成工程を示す断面図である。
図7図6の後続となるシード層形成工程を示す断面図である。
図8図7の後続となる第2のパターン化工程を示す断面図である。
図9図8の後続となる配線部パターン化工程において、配線部を形成した状態を示す断面図である。
図10図8の後続となる配線部パターン化工程において、配線部をパターン化した状態を示す断面図である。
図11】配線部を形成した表面にソルダーレジスト及びニッケル/金層を有する多層プリント配線基板を模式的に示す端面図である。
図12】従来の多層プリント配線基板の製造方法を示す断面図である。
図13】実施例1で形成した開口を示すSEM写真である。
図14】実施例32で形成した開口を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0034】
本発明の導体回路を有する構造体の製造方法は、半導体素子を実装するためのプリント配線基板の製造に好適に用いられる。特に、フリップチップ型の半導体素子を実装するためのプリント配線基板の製造に加え、コアレス基板、WLP(Wafer Level Package)、eWLB(embeded Wafer Level Ball Grid Array)等の基板レスパッケージの再配線方法にも好適に用いることができる。中でも、実装される半導体素子のサイズが大きく、半導体素子の表面にエリアアレイ状に配置された数万ものバンプと電気的に接続するためのプリント配線基板に特に好適である。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態に係るプリント配線基板の製造方法を示す断面図である。図1(a)に示すように、まず、支持体である両側の表面に銅箔2を有する銅張積層体1を準備する。次いで、図1(b)に示すように、銅張積層体1の銅箔2の不要な箇所をエッチングにより除去して導体回路2a、2bを形成しプリント配線基板10を得る。なお、回路の材質は、銅に限定されない。
【0036】
次いで、図2に示すように、導体回路2a、2bをそれぞれ覆うようにプリント配線基板10に後述する感光性樹脂組成物からなる第1の感光性樹脂層3を形成する(第1の感光性樹脂層形成工程)。第1の感光性樹脂層3の厚さTは、好ましくは2μm〜50μmであり、より好ましくは5μm〜30μmである。第1の感光性樹脂層の厚さTを2μm以上とすると、第1の感光性樹脂層の形成に用いる感光性樹脂組成物を成膜し易くなるため、プリント配線基板の製造に用いるフィルム状の感光性樹脂組成物を容易に作製することができる。第1の感光性樹脂層の厚さTを50μm以下とすると、第1の感光性樹脂層に微細なパターンを形成することが容易になる。なお、第1の感光性樹脂層の厚さTは、図2に示すとおり、導体回路2a、2b上の第1の感光性樹脂層3の厚さをいう。
【0037】
その後、マスクパターンを通して活性光線を照射することにより、第1の感光性樹脂層3において、後の現像処理後に除去しない部分を露光し、露光部の第1の感光性樹脂層3を光硬化させる(第1のパターン化工程の露光処理)。活性光線の光源としては、公知の光源を用いることができるが、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射するものを使用できる。また、直接描画方式のダイレクトレーザ露光を用いてもよい。露光量は使用する装置や感光性樹脂組成物の組成によって異なるが、10mJ/cm〜600mJ/cmとすることが好ましく、20mJ/cm〜400mJ/cmとすることがより好ましい。露光量を10mJ/cm以上とすると感光性樹脂組成物を充分に光硬化させることができ、露光量を600mJ/cm以下とすると光硬化が過剰となり過ぎず、現像後に第1の感光性樹脂層3のパターンを安定して形成することができる。
【0038】
次いで、現像により露光部以外の第1の感光性樹脂層3の両表面を除去することで、図3に示すようにプリント配線基板の両面に第1の感光性樹脂層のパターン3a、3bを形成する(第1のパターン化工程の現像処理)。第1の感光性樹脂層のパターン3a、3bは、後述の開口形成工程において除去され、熱硬化性樹脂層4に形成される微細な開口となる(図6参照)。このときに用いる現像液としては、例えば、20℃〜50℃の炭酸ナトリウムの溶液(1〜5質量%水溶液)等のアルカリ現像液が用いられ、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング及びスクラッピング等の公知の方法により現像する。これにより所定の第1の感光性樹脂層のパターン3a、3bが形成される。
【0039】
現像処理後、図4に示すように、第1の感光性樹脂層のパターン3a、3bを覆うように、プリント配線基板10上に後述する熱硬化性樹脂組成物からなる熱硬化性樹脂層4を形成する(熱硬化性樹脂層形成工程)。熱硬化性樹脂層4を形成する工程では、液状の場合は公知のスクリーン印刷、ロールコータにより塗布する工程、フィルム状の場合は真空ラミネート等により貼り付ける工程を経ることにより、熱硬化性樹脂層4をプリント配線基板上に形成させる。熱硬化性樹脂層の形成に用いる熱硬化性樹脂組成物としては、液状及びフィルム状のいずれも適用可能であるが、熱硬化性樹脂層4の厚さを精度良く制御するには、予め厚さを管理しているフィルム状のものを好適に用いることができる。
【0040】
熱硬化性樹脂層4の厚さTは、好ましくは2μm〜50μmであり、より好ましくは5μm〜30μmである。熱硬化性樹脂層4の厚さTを2μmとすると、熱硬化性樹脂層4の形成に用いる熱硬化性樹脂組成物を成膜し易くなるため、プリント配線基板の製造に用いるフィルム状の熱硬化性樹脂組成物を容易に作製することができる。熱硬化性樹脂層の厚さTを50μm以下とすると、熱硬化性樹脂層4に微細なパターンを形成することが容易になる。熱硬化性樹脂層4の厚さTは、図4に示すとおり、導体回路2a、2b上の熱硬化性樹脂組成物の厚さをいう。また、第1の感光性樹脂層3の厚さTと熱硬化性樹脂層4の厚さTは同じ厚さであることが好ましい。
【0041】
熱硬化性樹脂層形成工程において、第1の感光性樹脂層3の厚さTに対する熱硬化性樹脂層4の厚さTの比(T/T)を1.0〜2.0とすることが好ましく、1.0〜1.5とすることがより好ましい。(T/T)を1.0以上とすると、熱硬化性樹脂層形成工程において、第1の感光性樹脂層のパターン3a、3bを熱硬化性樹脂組成物で埋め込みやすくなるため、得られるプリント配線基板の信頼性をより高めることができる。一方、(T/T)を2.0以下とすると、短時間で熱硬化性樹脂層4に開口を形成でき、プリント配線基板をより効率的に製造することができるため、デスミア処理を用いた場合に薬液の劣化を防ぐことができる。
【0042】
次いで、形成した熱硬化性樹脂層4を熱硬化させる(熱硬化工程)。熱硬化処理において、温度を150℃〜250℃とし、加熱時間を30分〜300分とすることが好ましい。また、温度を160℃〜200℃とし、加熱時間を30分〜120分とすることがより好ましい。温度を150℃以上、加熱時間を30分以上とすると、熱硬化性樹脂層4を充分に硬化することができるため、その後のパターン露出工程及び開口形成工程において、熱硬化性樹脂層4を除去し易くなり、導体回路2a、2bを露出し易くなる。一方、温度を250℃以下、加熱時間を300分以下とすると、導体回路2a、2bの表面の酸化を抑えることができ、導体回路2a、2b界面で熱硬化性樹脂層4がはく離することを抑えられる。なお、熱硬化には、クリーンオーブンが一般的に用いられ、銅の酸化を抑制するため、窒素等の不活性ガスの雰囲気中で硬化を行ってもよい。
【0043】
次いで、デスミア処理を施すことにより、熱硬化後の熱硬化性樹脂層4の一部を除去して第1の感光性樹脂層のパターン3a、3bの所定箇所を熱硬化性樹脂層4から露出させる(パターン露出工程)。
【0044】
デスミア処理は、例えば、過マンガン酸ナトリウム液、水酸化ナトリウム液、過マンガン酸カリウム液、クロム液、硫酸等の混合液に被処理基板を浸漬することによって実施できる。具体的には、熱湯や所定の膨潤液を用いて被処理基板を膨潤処理した後、過マンガン酸ナトリウム液等で残渣等を除去し、還元(中和)を行った後、水洗、湯洗、乾燥を行う。1回の処理を行っても充分な開口が形成されない場合は複数回処理を行ってもよい。なお、デスミア処理は上記のものに限定されない。また、デスミア処理後に、再度、熱硬化工程を行ってもよい。用いる熱硬化性樹脂によっても効果は異なるが、熱硬化させること、ガラス転移温度を上げることができるだけでなく、低熱膨張化を図ることができるからである。
【0045】
第1の感光性樹脂層のパターン3a、3bを熱硬化性樹脂層4から露出させた後、デスミア処理によって熱硬化性樹脂層4から露出した第1の感光性樹脂層のパターン3a、3bを除去し、図6に示すように、導体回路2a、2bを露出させる(開口形成工程)。こうして、熱硬化性樹脂層4に開口4hが形成される。
【0046】
なお、パターン露出工程において、デスミア処理の代わりに、プラズマ処理又は研磨処理を用いて熱硬化性樹脂層4を除去しても構わない。デスミア処理、プラズマ処理又は研磨処理のうち、二以上の処理を併用して熱硬化性樹脂層4を除去しても構わない。熱硬化性樹脂層4の厚さTが厚い場合にはサンドブラストや機械研磨や化学機械研磨(CMP)等による研磨処理により熱硬化性樹脂層4を除去することが好ましい。また、開口形成工程において、デスミア処理の代わりに、プラズマ処理を用いて第1の感光性樹脂層のパターン3a、3bを除去してもよいし、デスミア処理とプラズマ処理を併用して第1の感光性樹脂層のパターン3a、3bを除去してもよい。パターン露出工程及び開口形成工程は各々個別の装置で行ってもよいし、これら処理を一連の工程として組み込んだ装置で行っても構わない。
【0047】
プラズマ処理は、例えば、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス、モノシランガス、酸素ガス、水素ガス、塩素ガスといった活性及び不活性ガスを用いることができる。また、これらを併用することもできる。プラズマ処理装置としては、バレル型や平行平板型のプラズマ処理装置を用いることができる。尚、プラズマ処理の出力、流量、処理時間は適宜選択することができる。
【0048】
研磨処理は、具体的には、研磨機やグラインダー等の装置を用いて、紙や布等に研磨材を接着した研磨布紙やサンドペーパーで熱硬化性樹脂層4を研削する。特に、研磨材は限定するものではないが、溶融アルミナ、炭化ケイ素等の人造研磨材やガーネットやエメリー等の天然研磨材が利用される。特に、砥粒の粒度は限定するものではないが、表面に傷が残らないように、最後には#1500以上で研削することが望ましい。
【0049】
開口形成工程において、熱硬化性樹脂層4に形成する開口の直径(図6に示すR)は、60μm以下とすることが好ましい。また、熱硬化性樹脂層4に形成する開口のうち、最小の開口の直径Rminに対する当該開口の深さの比(D/Rmin)を、0.1〜1.0とすることが好ましく、0.2〜0.8とすることがより好ましい。(D/Rmin)を0.1以上とすると、熱硬化性樹脂層4の厚さが薄くなり過ぎないため、熱硬化性樹脂層4に微細な開口を形成する場合であっても、開口4hの形状を安定に保つことができる。一方、(D/Rmin)を1.0以下とすると、第1の感光性樹脂層3が除去し易くなり、直径60μm以下の微細な開口をより形成し易くなる。開口4hの形状は、円形状であるが、楕円形等であってもよい。なお、開口の形成が円以外の場合、直径Rminは、円相当直径を用いればよい。
【0050】
次いで、図7に示すように、開口4hを形成した後の熱硬化性樹脂層4の少なくとも一部を覆うように、無電解めっき法によりシード層5を両面に形成する(シード層形成工程)。シード層形成工程では、開口4hが設けられていない部分の熱硬化性樹脂層4の表面4sと、開口4hが設けられた部分における熱硬化性樹脂層4の壁面4w及び露出している導体回路2a、2bの表面とに、シード層5を形成する。上記シード層5の厚さは特に制限はないが、通常0.1μm〜1.0μmとすることが好ましい。シード層5の形成は無電解銅めっき法の他に、スパッタ法によっても形成できる。ターゲットは適宜選択できるが、Tiの後にCuを蒸着するのが一般的である。TiやCuの厚みは特に制限はないが、Tiで20nm〜100nm、Cuで100nmから500nm程度が好適である。
【0051】
次いで、フィルム状の感光性樹脂組成物を両面に貼着して第2の感光性樹脂層を形成後、所定のパターンを形成したフォトツールを密着させ、露光処理及び現像処理を行い、図8に示すように、両面の第2の感光性樹脂層をパターン化する(第2のパターン化工程)。両面に形成された第2の感光性樹脂層のパターン6a、6bは、半導体素子を実装する面により近い部分に微細な配線パターンを形成するため、第2の感光性樹脂層のパターン6bよりも第2の感光性樹脂層のパターン6aパターンの方がパターンのピッチが狭くなっている。
【0052】
次いで、図9に示すように、シード層5の少なくとも一部を覆うように、銅電解めっき等の電解めっき法により配線部7を形成する。この工程では、第2の感光性樹脂層のパターン6a、6bが形成されている領域以外のシード層5の表面に配線部7を形成する。開口4hが形成された領域では、壁面4wと導体回路2a、2bの表面に形成されたシード層5上に配線部7を形成する。配線部7の厚さは、1μm〜20μmとすることが好ましい。その後、はく離液により、第2の感光性樹脂層のパターン6a、6bをはく離して配線パターン7a、7bを形成する(配線部パターン化工程)。次いで、エッチング液を用いて配線部7が形成されていない領域のシード層5をエッチングにより除去する(シード層除去工程)。
【0053】
以上の工程を経て図10に示すように、表面に配線部(配線パターン7a、7b)を有する多層プリント配線基板100を得ることができる。更に、多層プリント配線基板100の表裏の両面に対し、上述した感光性樹脂層形成工程からシード層除去工程の一連の工程を繰り返し行った後、最外層にソルダーレジスト8を形成し、市販の無電解ニッケル/金めっき液等を用いてめっき処理を施すことによりニッケル/金層9を形成することで、図11に示すような多層プリント配線基板200を得ることができる。例えば、多層プリント配線基板200は、感光性樹脂層形成工程からシード層除去工程の一連の工程を3回繰り返し行うことにより、配線部(配線パターン7a、7b)を3層有したものである。多層プリント配線基板200は、各熱硬化性樹脂層4に形成された配線部(配線パターン7a、7b)がそれぞれ電気的に接続されている。
【0054】
上記の多層プリント配線基板100,200は、微細化及び高密度化が進むフリップチップ型の半導体素子を実装するためのプリント配線基板として好適である。中でも、実装される半導体素子のサイズが大きく、半導体素子の表面にエリアアレイ状に配置された数万ものバンプと電気的に接続するためのプリント配線基板に特に好適である。
【0055】
次に、上述の多層プリント配線基板100,200の製造に用いられる感光性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂組成物について詳細に説明するが、本発明はこれらの樹脂組成に限定されるものではない。
【0056】
多層プリント配線基板100,200の製造に用いる感光性樹脂組成物は、特に限定するものではないが、以下のものが好適である。すなわち、感光性樹脂層の形成に好適な感光性樹脂組成物は、
(a)バインダーポリマーと、
(b)エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光重合性化合物と、
(c)光重合開始剤と、
を含有する、ことが好ましい。この感光性樹脂組成物は、第1の感光性樹脂層及び第2の感光性樹脂層の両方の層を形成する際に用いることができる。
【0057】
感光性樹脂組成物は、(d)無機フィラーを含まないことが好ましい。この場合、現像後の解像度が向上し、微細なパターンを形成でき、デスミア処理ではく離した後の開口部側面が平滑になる傾向にある。なお、感光性樹脂組成物に、(d)無機フィラーを含める場合は、最大粒径が5μm以下、平均粒径が1μm以下であることが好ましい。
【0058】
上記(a)バインダーポリマー(以下、便宜的に「(a)成分」という場合がある)としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、及びフェノール系樹脂等が挙げられる。アルカリ現像性の観点からは、アクリル系樹脂が好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(a)バインダーポリマーは、例えば、重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。
【0059】
上記重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、及びα−メチルスチレン等のα−位若しくは芳香族環において置換されている重合可能なスチレン誘導体、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド、アクリロニトリル及びビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
また、(a)バインダーポリマーは、アルカリ現像性の見地から、カルボキシル基を含有させることが好ましく、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記カルボキシル基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸が好ましく、中でもメタクリル酸がより好ましい。
【0061】
上記(a)バインダーポリマーのカルボキシル基含有量(使用する全重合性単量体に対するカルボキシル基を有する重合性単量体の割合)は、アルカリ現像性とアルカリ耐性のバランスの見地から、好ましくは12〜50質量%であり、より好ましくは12〜40質量%であり、更に好ましくは15〜30質量%であり、特に好ましくは15〜25質量%である。このカルボキシル基含有量が12質量%以上であると、アルカリ現像性が良好になり、50質量%以下であるとアルカリ耐性を高めることができる。
【0062】
(a)バインダーポリマーの重量平均分子量は、機械強度及びアルカリ現像性のバランスの見地から、好ましくは20,000〜300,000であり、より好ましくは40,000〜150,000であり、更に好ましくは50,000〜120,000である。重量平均分子量が、20,000以上であると耐現像液性が高まり、300,000以下であると現像時間を短縮化できる。なお、本実施形態において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定され、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算された値でとする。
【0063】
(b)エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光重合性化合物(以下、便宜的に「(b)成分」という)としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物にα、β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、ノニルフェノキシブタエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレンオキシ(メタ)アクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシプロピル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0064】
(b)成分の含有量は、光感度及び解像性のバランスの見地から、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、好ましくは10〜40質量部であり、より好ましくは20〜30質量部である。
【0065】
上記(c)成分の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3ーベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1ークロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル1,4−ナフトキノン、及び2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、及びベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、及びエチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、及び9,10−ジペントキシアントラセン等の置換アントラセン類、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、及び2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、クマリン系化合物、オキサゾール系化合物、ピラゾリン系化合物等が挙げられる。ここで、2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は同一で対象な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。また、密着性及び感度のバランスの見地から、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体がより好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0066】
上記(a)バインダーポリマーの含有量は、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、好ましくは30〜80質量部であり、より好ましくは40〜75質量部であり、更に好ましくは50〜70質量部である。(a)成分の含有量がこの範囲であると、感光性樹脂組成物の塗膜性及び光硬化物の強度がより良好となる。上記(b)エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光重合性化合物の含有量は、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、好ましくは20〜60質量部であり、より好ましくは30〜55質量部であり、更に好ましくは35〜50質量部である。(b)成分の含有量がこの範囲であると、感光性樹脂組成物の光感度及び塗膜性がより良好となる。
【0067】
上記(c)光重合開始剤の含有量は、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01〜30質量部であり、より好ましくは0.1〜20質量部であり、更に好ましくは0.2〜10質量部である。(c)成分の含有量がこの範囲であると、感光性樹脂組成物の光感度及び内部の光硬化性がより良好となる。
【0068】
感光性樹脂組成物は、(d)無機フィラーを充填しないフィラーレスであることが好ましいが、少量であれば充填しても構わない。(d)無機フィラーを少量充填することで、収縮量が小さくなるとともに、剛性が高くなり、厚さ寸法精度を向上させることができる。(d)無機フィラーの充填量が感光性樹脂組成物の総量100質量部に対して5質量%未満である場合、解像性を高めることができる。
【0069】
(d)無機フィラーとしては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、粉状酸化珪素、無定形シリカ、タルク、クレー、焼成カオリン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉等の無機充填剤が使用できる。特に好ましくは、シリカフィラーで一次粒径のまま、凝集することなく樹脂中に分散させるために、シランカップリング剤を用いたものが望ましい。(d)無機フィラーの最大粒径は、好ましくは2μm以下であり、より好ましくは1μm以下である。また、(d)無機フィラーの平均粒径は、解像度の観点から、好ましくは300nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。
【0070】
また、感光性樹脂組成物には、必要に応じて、マラカイトグリーン、ビクトリアピュアブルー、ブリリアントグリーン、及びメチルバイオレット等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット、ジフェニルアミン、ベンジルアミン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン、o−クロロアニリン及びターシャリブチルカテコール等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤、重合禁止剤等を(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して各々0.01〜20質量部含有することができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0071】
感光性樹脂組成物には、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解して固形分30〜60質量%の溶液として塗布することができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0072】
感光性樹脂組成物には、特に制限はないが、金属面、例えば、銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金、好ましくは銅、銅系合金、鉄系合金の表面上に、液状レジストとして塗布して乾燥後、必要に応じて保護フィルムを被覆して用いるか、感光性エレメントの形態で用いられることが好ましい。
【0073】
感光性エレメントの形態とは、支持体と、該支持体上に上記感光性樹脂組成物の溶液を均一に塗布、乾燥して形成された感光性樹脂組成物層(樹脂層)とを備えるものであり、感光性樹脂組成物の層上にはそれを被覆する保護フィルムをさらに備えていてもよい。支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルム上に感光性樹脂組成物を塗布、乾燥することにより得られる。透明性の見地からは、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましい。
【0074】
多層プリント配線基板100,200の製造に用いる熱硬化性樹脂組成物は、特に限定するものではないが、以下のものが好適である。すなわち、熱硬化性樹脂層4の形成に好適な熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含む樹脂組成物と、最大粒径が5μm以下であり且つ平均粒径が1μm以下である無機フィラーと、を含むことが好ましい。
【0075】
エポキシ樹脂としては、分子内に1つ以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂が好ましい。無機フィラーの充填量は、好ましくは0〜90質量%の範囲、より好ましくは20〜70質量%の範囲、更に好ましくは30〜60質量%である。
【0076】
エポキシ樹脂は、2個以上のグリシジル基を持つエポキシ樹脂ならば、すべて使用することができるが、好適には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビキシレノールジグリシジルエーテル等のビキシレノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールAグリシジルエーテル等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び、それらの二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等であり、単独、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0077】
市販のエポキシ樹脂としては、DIC(株)製EXA4700(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製NC−7000(ナフタレン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のナフタレン型エポキシ樹脂;日本化薬(株)EPPN−502H(トリスフェノールエポキシ樹脂)等のフェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物(トリスフェノール型エポキシ樹脂);DIC(株)製エピクロンHP−7200H(ジシクロペンタジエン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ樹脂;日本化薬(株)製NC−3000H(ビフェニル骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;DIC(株)製エピクロンN660、エピクロンN690、日本化薬(株)製EOCN−104S等のノボラック型エポキシ樹脂;日産化学工業(株)製TEPIC等のトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、DIC(株)製エピクロン860、エピクロン900−IM、エピクロンEXA―4816、エピクロンEXA−4822、旭チバ(株)製アラルダイトAER280、東都化成(株)製エポトートYD−134、ジャパンエポキシレジン(株)製JER834、JER872、住友化学工業(株)製ELA−134等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;DIC(株)製エピクロンHP−4032等のナフタレン型エポキシ樹脂;DIC(株)製エピクロンN−740等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールとサリチルアルデヒドの縮合物のエポキシ樹脂;日本化薬(株)製EPPN−500シリーズ等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
上記エポキシ樹脂の中でも、銅との密着性や絶縁性に優れる点で、日本化薬(株)製NC−3000H(ビフェニル骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂が好ましく、また、架橋密度が高く高Tgが得られる点で、日本化薬(株)製EPPN−500シリーズを用いることがより好ましい。
【0079】
上記エポキシ樹脂の含有量は、無機フィラー成分を除く樹脂成分100重量部に対して、30〜90質量部であることが好ましく、40〜80質量部であることがより好ましい。
【0080】
エポキシ樹脂と組み合わせる硬化剤としては、従来公知の各種エポキシ樹脂硬化剤もしくはエポキシ樹脂硬化促進剤を配合することができる。例えば、フェノール樹脂、イミダゾール化合物、酸無水物、脂肪族アミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、第3級アミン、ジシアンジアミド、グアニジン類、又はこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したもののほか、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム、テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン系化合物、DBUもしくはその誘導体等、硬化剤もしくは硬化促進剤の如何に拘らず、公知慣用のものを単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。エポキシ樹脂の硬化を進行させれば特に限定されないが、具体的には、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、3,3’-ジメチル−4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、9,9’−ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等を例示でき、単独、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0081】
シアネートエステル樹脂は、加熱によりトリアジン環を繰り返し単位とする硬化物を生成する樹脂であり、硬化物は誘電特性に優れるため、特に高周波特性が要求される場合などに用いられることが多い。シアネートエステル樹脂としては、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,α’−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、フェノールノボラック及びアルキルフェノールノボラックのシアネートエステル化物等が挙げられる。その中でも、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンは硬化物の誘電特性と硬化性のバランスが特に良好であり、コスト的にも安価であるため好ましい。またシアネートエステル化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。また、ここで用いられるシアネートエステル化合物は予め一部が三量体や五量体にオリゴマー化されていても構わない。さらに、シアネート樹脂に対して硬化触媒や硬化促進剤を入れてもよい。硬化触媒としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の金属類が用いられ、具体的には、2−エチルヘキサン酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩等の有機金属塩及びアセチルアセトン錯体などの有機金属錯体として用いられる。これらは、単独で使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。硬化促進剤としてはフェノール類を使用することが好ましく、ノニルフェノール、パラクミルフェノールなどの単官能フェノールや、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどの二官能フェノールあるいはフェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多官能フェノールなどを用いることができる。これらは、単独で使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0082】
熱硬化性樹脂組成物は、分子構造中に少なくとも2個の不飽和N−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物を含有することが好ましい。具体的には、例えば、N,N'−エチレンビスマレイミド、N,N'−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N'−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N'−[1,3−(2−メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N'−[1,3−(4−メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N'−(1,4−フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、ビス(4−マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4−ビス(4−マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル] −1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、2,2'−ビス(4−マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド等が挙げられ、これらのマレイミド化合物は、単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0083】
また、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂や各種カルボン酸含有樹脂をエポキシ樹脂と反応させる別な樹脂として使用してもよい。ポリアミドイミド樹脂としては、東洋紡の「バイロマックスHR11NN」、「バイロマックスHR12N2」、「バイロマックスHR16NN」等が挙げられる。カルボン酸含有樹脂としては、アクリル樹脂や酸変性エポキシアクリレート、酸含有ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0084】
上記硬化剤の含有量は、無機フィラー成分を除く樹脂成分100重量部に対して、5〜50質量部であることが好ましく、10〜40質量部であることがより好ましい。
【0085】
無機フィラーとしては従来公知の全ての無機充填剤及び有機充填剤が使用でき、特定のものに限定されない。例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の体質顔料や、銅、錫、亜鉛、ニッケル、銀、パラジウム、アルミニウム、鉄、コバルト、金、白金等の金属粉体が挙げられる。
【0086】
シリカフィラーを用いる場合は、フィラーで一次粒径のまま、凝集することなく樹脂中に分散させるために、シランカップリング剤を用いたものが望ましい。最大粒径は5μm以下であることが好ましく、更に1μm以下であることが望ましい。シランカップリング剤としては、一般的に入手可能なものを用いることができ、例えば、アルキルシラン、アルコキシシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、アクリルシラン、メタクリルシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン、サルファーシラン、スチリルシラン、アルキルクロロシラン等が使用可能である。
【0087】
具体的な化合物名としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ドデシルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニルシラノール、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチルデン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノシラン等がある。
【0088】
無機フィラーの平均粒径は、好ましくは300nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。無機フィラーの平均粒径が小さいほど、デスミア処理後の表面が平滑となり、その後のフリップチップ実装時にアンダーフィル材の充填性が良くなる傾向にある。無機フィラーの充填量は、好ましくは0〜90質量%であり、より好ましくは20〜70質量%であり、更に好ましくは30〜60質量%である。
【0089】
以上説明したように、本実施形態に係るプリント配線基板の製造方法では、熱硬化性樹脂層4に形成する開口の形状に合わせて、第1のパターン化工程において第1の感光性樹脂層3をパターン化することにより、様々な形状の開口4hを容易に形成することができる。また、本実施形態に係るプリント配線基板の製造方法では、複数の開口4hを同時に形成できることに加え、レーザで開口を形成する場合とは異なり、開口4h周辺の感光性樹脂の残渣を低減できる。このため、半導体素子のピン数が増加し、多数の微細な開口4hを設ける必要があっても、優れた信頼性を有するプリント配線基板を充分に効率的に製造することができる。
【0090】
また、本実施形態では、熱硬化性樹脂層形成工程の直後の工程として、熱硬化性樹脂層4を熱硬化する熱硬化工程を更に備え、パターン露出工程及び開口形成工程において、プラズマ処理及びデスミア処理を施すことにより、熱硬化性樹脂層4の一部の除去と、熱硬化性樹脂層4から露出した第1の感光性樹脂層3の除去を行っている。この場合、プラズマ処理及びデスミア処理によって速やかに第1の感光性樹脂層3を露出させることができると共に、デスミア処理によって開口4h周辺の残渣をより確実に低減できる。
【0091】
また、本実施形態では、熱硬化性樹脂層形成工程の直後の工程として、熱硬化性樹脂層4を熱硬化する熱硬化工程を更に備え、パターン露出工程及び開口形成工程において、デスミア処理を施すことにより、熱硬化後の熱硬化性樹脂層4の一部を除去し、熱硬化性樹脂層4から露出した第1の感光性樹脂層3を除去している。この場合、デスミア処理によって速やかに第1の感光性樹脂層3を露出させることができると共に、開口4h周辺の残渣をより確実に低減できる。
【0092】
また、本実施形態では、熱硬化性樹脂層形成工程の直後の工程として、熱硬化性樹脂層を熱硬化する熱硬化工程を更に備え、パターン露出工程において、研磨処理を施すことにより、熱硬化後の熱硬化性樹脂層4の一部を除去し、開口形成工程において、デスミア処理を施すことにより、熱硬化性樹脂層4から露出した第1の感光性樹脂層3を除去している。この場合、研磨処理及びデスミア処理によって速やかに第1の感光性樹脂層3を露出させることができると共に、デスミア処理によって開口4h周辺の残渣をより確実に低減できる。
【0093】
また、本実施形態では、熱硬化性樹脂層形成工程の直後の工程として、熱硬化性樹脂層4を熱硬化する熱硬化工程を更に備え、パターン露出工程及び開口形成工程において、プラズマ処理を施すことにより、熱硬化後の熱硬化性樹脂層4の一部を除去し、熱硬化性樹脂層4から露出した第1の感光性樹脂層3を除去している。この場合、プラズマ処理によって速やかに第1の感光性樹脂層3を露出できると共に、開口4h周辺の残渣をより確実に低減できる。
【0094】
また、本実施形態では、開口4hを形成した後の熱硬化性樹脂層4の少なくとも一部を覆うように、無電解めっき法により配線パターン7a、7bの下地となるシード層5を形成するシード層形成工程と、シード層5を覆うように、第2の感光性樹脂層を形成後、第2の感光性樹脂層に露光処理及び現像処理を施してパターン化する第2のパターン化工程と、シード層5を覆うように、電解めっき法により配線部7を形成後、はく離処理により第2の感光性樹脂層のパターン6a、6bをはく離して配線部7をパターン化する配線部パターン化工程と、配線部が形成されていない領域のシード層5を除去するシード層除去工程と、を更に備えることが好ましい。シード層5を形成することにより、電解めっき法による配線部7の形成が可能になり、配線部7を選択的にパターン化することができる。
【0095】
また、本発明に係るプリント配線基板100は、本実施形態に係るプリント配線基板の製造方法によって製造されたプリント配線基板であって、熱硬化性樹脂層4が有する開口4hの直径が60μm以下である。このようなプリント配線基板100によれば、図12に示される従来のプリント配線基板と比べて、熱硬化性樹脂層4に微細な開口4hを有し且つ優れた信頼性を持たせることができる。また、このようなプリント配線基板100は、熱硬化性樹脂層4が有する開口4hの直径が60μm以下であるため、ピン数が数万ピンから数十万ピンの半導体素子を実装するのに適したものとなる。また、プリント配線基板100は、プリント配線基板に一般的に行われている各種加工処理、例えば、表面配線パターン上のニッケル/金めっきやはんだ処理等を施すことができる。
【0096】
以上、本発明に係るプリント配線基板の製造方法及び樹脂組成物の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行ってもよい。
【0097】
例えば、上記実施形態では、熱硬化性樹脂層形成工程の直後の工程として、熱硬化性樹脂層4を熱硬化する熱硬化工程を備えていたが、パターン露出工程及び開口形成工程において、プラズマ処理を施すことにより、熱硬化性樹脂層4の一部を除去と、熱硬化性樹脂層4から露出した第1の感光性樹脂層3の除去を行う場合は、パターン露出工程と開口形成工程との間の工程として又は開口形成工程の後工程として、熱硬化工程をそれぞれ備えていても構わない。
【実施例】
【0098】
<導体回路を有するプリント配線基板の準備>
まず、厚さ12μmの銅箔2が両面に貼着された銅張積層体1(日立化成工業株式会社製 MCL−E−679FG)を準備した。銅張積層体1の厚さは400μmであった(図1(a)参照)。銅箔2をエッチング処理し、所定パターン形状に加工した(図1(b)参照)。
【0099】
<第1の感光性樹脂層の形成>
次いで、図2に示すように、感光性樹脂組成物としてドライフィルムレジスト(日立化成工業株式会社 Photec H−7025)をベースに、膜厚が10μmから40μmのものを準備し、ロールラミネーターで両面に貼着し、パターンを形成したフォトツールを密着させ、オーク製作所社製EXM‐1201型露光機を使用して、50mJ/cmのエネルギー量で露光を行った。次いで、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、90秒間スプレー現像を行い、感光性樹脂組成物を開口させて第1の感光性樹脂層のパターン3a、3bを形成した(図3参照)。
【0100】
<熱硬化性樹脂層4の形成に用いる熱硬化性樹脂組成物>
プリント配線基板の熱硬化性樹脂層4(層間絶縁層)の形成に使用する熱硬化性樹脂組成物として、以下に示すものを調製した。
【0101】
<熱硬化性樹脂組成物A>
エポキシ樹脂としては、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、製品名NC−3000H(日本化薬株式会社製)70質量部を用いた。硬化剤の合成実施例1:温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス(4−アミノフェニル)スルホン:26.40gと、2,2’−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン:484.50gと、p−アミノ安息香酸:29.10g、及びジメチルアセトアミド:360.00gを入れ、140℃で5時間反応させて分子主鎖中にスルホン基を有し、酸性置換基と不飽和N−置換マレイミド基を有する硬化剤(A−1)の溶液を得た。本硬化剤を30質量部配合した。
【0102】
無機フィラー成分としては、平均粒径が50nm、ビニルシランでシランカップリング処理したシリカフィラーを用いた。なお、無機フィラー成分は、樹脂分に対し、30質量%になるように配合した。分散状態は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計「UPA−EX150」(日機装社製)、及びレーザ回折散乱式マイクロトラック粒度分布計「MT−3100」(日機装社製)を用いて測定し、最大粒径が1μm以下となっていることを確認した。
【0103】
<熱硬化性樹脂組成物B>
エポキシ樹脂としては、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、製品名NC−3000H(日本化薬株式会社製)70質量部を用いた。硬化剤の合成実施例2:ジアミン化合物としてワンダミンHM(WHM)〔(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、新日本理化製、商品名〕52.7g、反応性官能基を有するジアミンとして3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル6g、トリカルボン酸無水物として無水トリメリット酸(TMA)108g及び非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1281gを入れ、フラスコ内の温度を80℃に設定して30分間撹拌した。撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン192gをさらに添加し、フラスコ内の温度を160℃に昇温して2.5時間還流した。水分定量受器に理論量の水が貯留され、水の留出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水及びトルエンを除去しながら、フラスコ内の温度を180℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。フラスコ内の溶液を60℃まで冷却した後、長鎖炭化水素鎖骨格(炭素原子数約50)を有するジカルボン酸として水添α,ω−ポリブタジエンジカルボン酸(CI−1000、日本曹達製、商品名)309.5gを入れ、10分間撹拌した。撹拌終了後、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)119.7gを添加し、フラスコ内の温度を160℃に上昇させて2時間反応させ、樹脂溶液を得た。このポリアミドイミド樹脂溶液の重量平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ47000であった。ポリアミドイミド1分子あたりの平均反応性官能基数Nは4.4であった。本硬化剤を30質量部配合した。無機フィラー成分としては、熱硬化性樹脂組成物Aと同様のものを用いた。
【0104】
<熱硬化性樹脂組成物C>
シアネートエステル樹脂としてビスフェノールAジシアネートのプレポリマー,製品名BA230S75(ロンザジャパン株式会社製,不揮発分75質量%のメチルエチルケトン溶液60重量部用いた。エポキシ樹脂としては,ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、製品名NC−3000H(日本化薬株式会社製)40質量部を用い、硬化触媒として,コバルト(II)アセチルアセトナート(東京化成株式会社製)を30ppmとなるように加えた。無機フィラー成分としては、熱硬化性樹脂組成物Aと同様のものを用いた。
【0105】
<熱硬化性樹脂組成物D>
エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、製品名エピクロンN660(DIC株式会社製)70質量部を用いた。硬化剤として、フェノキシ樹脂YP−55(新日鉄化学株式会社製)、メラミン変性フェノールノボラック樹脂LA7054(DIC株式会社製)30質量部を用いた。無機フィラー成分としては、平均粒径が300nmの硫酸バリウムを、スターミルLMZ(アシザワファインテック株式会社製)で、直径1.0mmのジルコニアビーズを用い、周速12m/sにて3時間分散して調整した。分散状態を、樹脂Aと同様の方法で測定し、最大粒径が2μmであることを確認した。
【0106】
上述のように得た各熱硬化性樹脂組成物の溶液を支持層である16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(G2−16、帝人社製、商品名)上に均一に塗布することにより熱硬化性樹脂組成物層を形成した。その後、熱風対流式乾燥機を用いて熱硬化性樹脂組成物層を100℃で約10分間乾燥することによってフィルム状熱硬化性樹脂組成物を得た。フィルム状熱硬化性樹脂組成物の膜厚は10μm〜90μmのものを準備した。
【0107】
次いで、熱硬化性樹脂組成物層に埃等が付着しないように、支持層と接している側とは反対側の表面上にポリエチレンフィルム(NF−15、タマポリ社製、商品名)を保護フィルムとして貼り合わせ、熱硬化性フィルムタイプの樹脂組成物を得た。
【0108】
得られた熱硬化性フィルムタイプの樹脂組成物を用いて、プリント配線基板上に熱硬化性樹脂層4を形成した(図4参照)。詳細には、まず、熱硬化性樹脂組成物A、B、C又はDからなる熱硬化性フィルムタイプの樹脂組成物の保護フィルムのみを剥がし、プリント配線基板10の両面(第1の感光性樹脂層パターン3a、3b及び導体回路2a、2b上)に熱硬化性樹脂組成物を載置した。プレス式真空ラミネータ(MVLP−500、名機製作所製、商品名)を用いてプリント配線基板の表面に熱硬化性樹脂組成物を積層した。プレス条件は、プレス熱板温度80℃、真空引き時間20秒、ラミネートプレス時間30秒、気圧4kPa以下、圧着圧力0.4MPaとした。次いで、クリーンオーブンで所定温度、所定時間で熱硬化性樹脂層4を熱硬化させた。
【0109】
その後、表1に示す工程に沿って除去処理を行うことで、熱硬化性樹脂層4を研削して第1の感光性樹脂層のパターン3a、3bを露出させると共に、第1の感光性樹脂層のパターン3a、3bを除去し、熱硬化性樹脂層4の一部を開口させた(図5図6参照)。また、必要に応じて除去処理(デスミア処理又はプラズマ処理)を繰り返し実施した。実施例におけるプリント配線基板の製造時における開口形成プロセス条件を表2及び表3にそれぞれ示す。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
その後、図7に示すように、熱硬化性樹脂層4を覆うように、無電解銅めっき法により厚さ1μmのシード層5を形成した。次いで、図8に示すように、第2の感光性樹脂組成物としてドライフィルムレジスト6(日立化成工業株式会社 Photec RY−3525)をロールラミネーターで両面に貼着し、パターンを形成したフォトツールを密着させ、オーク製作所社製EXM‐1201型露光機を使用して、100mJ/cmのエネルギー量で露光を行った。次いで、30℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液で、90秒間スプレー現像を行い、ドライフィルムレジスト6を開口させた(第2の感光性樹脂層のパターン6a、6b)。次いで、図8に示すように、電解銅めっき法により、シード層5の少なくとも一部を覆うように、厚さ10μmの銅めっき(配線部7)を形成した(図9参照)。次いで、図9に示すように、はく離液により、第2の感光性樹脂層のパターン6a、6bをはく離し、配線パターン7a、7bを形成した。次いでシード層5をエッチング液より除去した(図10参照)。この工程を表裏ともに3回繰り返し、最外層にソルダーレジスト8を形成した後、市販の無電解ニッケル/金めっき液を用いて、ニッケルめっき厚5μm、金めっき厚0.1μmとなるようにめっき処理を行い、ニッケル/金層9を形成した。このようにして多層プリント配線基板200を得た(図11参照)。
【0114】
多層プリント配線基板200は、基板サイズが45mm×45mmであり、中心部20mm×20mmの範囲にエリアアレイ状に直径30μm、50μm、70μm及び90μmの開口をそれぞれ設けた。
【0115】
熱硬化性樹脂層への埋め込み性については、以下の基準に基づいて評価した。
A:空隙がなく埋め込みが特に良好なもの。
C:開口への埋め込みが良好なもの。
【0116】
熱硬化性樹脂層の耐薬品性については、目視で確認して以下の基準に基づいて評価した。除去処理とは、露出工程及び開口形成工程におけるプラズマ処理又はデスミア処理である。
A:除去処理後に熱硬化性樹脂層がはく離しないもの。
C:除去処理後に熱硬化性樹脂層のはく離が確認されたが、プリント配線基板を製造する上で問題ないもの。
【0117】
解像性(開口性)については、電子顕微鏡(SEM)で観察して以下の基準に基づいて評価した。
AA:直径30μm以下で開口できたもの。
A:直径50μm以下で開口できたもの。
B:直径70μm以下で開口できたもの。
C:直径90μm以下で開口できたもの。
【0118】
開口の壁面平滑性については、電子顕微鏡で確認して以下の基準に基づいて評価した。
A:壁面が平滑なもの。
C:壁面にフィラーの欠落や段差が確認されたが、プリント配線基板を製造する上で問題ないもの。
【0119】
開口の残渣除去性については、以下の基準に基づいて評価した。
A:銅表面にドライフィルムレジストの残渣がなく、はく離及び除去できているもの。
C:ドライフィルムレジストの残渣が確認されたが、プリント配線基板を製造する上で問題ないもの。
【0120】
無電解銅めっき性については、以下の基準に基づいて評価した。
A:平滑に全面めっき処理されているもの。
C:開口の銅表面にめっきむらが確認されたが、プリント配線基板を製造する上で問題ないもの。
【0121】
結果を表4及び5に示す。本処理はプリント配線基板の層間接続に限定するものでなく、ソルダーレジストの開口プロセスやウェハレベルパッケージの再配線プロセス等、微細かつ高密度な開口部を設けるもの全てに適用することができる。
【0122】
【表4】
【0123】
【表5】
【0124】
プラズマ処理を用いて開口を形成した場合も同様に評価した。プラズマ処理にはプラズマ処理装置(株式会社モリエンジニアリング PB−1000S)を用いた。プラズマ処理は、表6で示す条件に従って酸素ガスとアルゴンガスを併用して行い、15分処理毎に水洗(超音波洗浄:100Hz5分)した。プラズマ処理を行うことで、熱硬化性樹脂層4を一部除去して第1の感光性樹脂層のパターン3a、3bを露出させると共に、第1の感光性樹脂層のパターン3a、3bを除去し、熱硬化性樹脂層4の一部を開口させた(図5図6参照)。また、必要に応じてプラズマ処理を繰り返し実施した。実施例におけるプリント配線板の製造時における開口形成プロセス条件を表7及び表8にそれぞれ示す。なお、実施例31では、熱硬化性樹脂層4の熱硬化を行わなかった。
【0125】
【表6】
【0126】
【表7】
【0127】
【表8】
【0128】
その後、実施例1から実施例15と同様の方法でプリント配線基板を作製し、埋め込み性、解像性、壁面平滑性、残渣除去性、無電解銅めっき性を評価した。結果を表9及び表10に示す。
【0129】
【表9】
【0130】
【表10】
【0131】
プラズマ処理とデスミア処理を併用して開口を形成した場合も同様に評価した。プラズマ処理の条件は表6と同様である。プラズマ処理後に水洗(超音波洗浄:100Hzで5分)した。デスミア処理の条件については表1のデスミア粗化時間のみ30分から15分に変更して実施した。プラズマ処理を行うことで、熱硬化性樹脂層4の一部を除去して第1の感光性樹脂層のパターン3a、3bを露出させ、次いでデスミア処理を行うことで、第1の感光性樹脂層のパターン3a、3bを除去して、導体回路2a、2bを露出させる開口4hを熱硬化性樹脂層4に形成した(図5図6参照)。また、必要に応じてプラズマ処理やデスミア処理を繰り返し実施した。実施例におけるプリント配線板の製造時における開口形成プロセス条件を表11及び表12にそれぞれ示す。
【0132】
【表11】
【0133】
【表12】
【0134】
その後、実施例1から実施例15と同様の方法でプリント配線基板を作製し、埋め込み性、耐薬品性、解像性、壁面平滑性、残渣除去性、無電解銅めっき性を評価した。結果を表13及び表14に示す。
【0135】
【表13】
【0136】
【表14】
【符号の説明】
【0137】
1…銅張積層体、2a、2b…導体回路(銅箔)、3…第1の感光性樹脂層、3a、3b…第1の感光性樹脂層のパターン、4…熱硬化性樹脂層、4h…開口、5…シード層、6a、6b…第2の感光性樹脂層のパターン、7…配線部、7a、7b…配線パターン、8…ソルダーレジスト、9…ニッケル/金層、10…プリント配線基板(内層基板)、100…多層プリント配線基板、200…ソルダーレジスト及びニッケル/金層を有する多層プリント配線基板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14