特許第5743043号(P5743043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5743043
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】コンクリート補修材
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/63 20060101AFI20150611BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   C04B41/63
   E04G23/02 B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-505747(P2015-505747)
(86)(22)【出願日】2014年8月26日
(86)【国際出願番号】JP2014072246
【審査請求日】2015年1月29日
(31)【優先権主張番号】特願2013-225451(P2013-225451)
(32)【優先日】2013年10月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】入江 博美
(72)【発明者】
【氏名】松本 高志
【審査官】 延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−344837(JP,A)
【文献】 特開2002−201802(JP,A)
【文献】 特開平10−120764(JP,A)
【文献】 特開平7−252402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B41/00−41/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性樹脂(A)、ラジカル重合性単量体(B)、並びに、シクロデキストリン及び/又はその誘導体(C)を含有することを特徴とするコンクリート補修材。
【請求項2】
前記シクロデキストリン及び/又はその誘導体(C)の含有量が、前記ラジカル重合性樹脂(A)及び前記ラジカル重合性単量体(B)の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲である請求項1記載のコンクリート補修材。
【請求項3】
前記シクロデキストリン及び/又はその誘導体(C)が、アルキル化シクロデキストリンである請求項1記載のコンクリート補修材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿潤したコンクリートに対する接着性に優れるコンクリート補修材に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の補修等の土木建築業界では、笹子トンネル崩落事故などを背景にインフラ補強に対する注目度が高まっている。高度経済成長期以降に建設されたコンクリート構造物は、今後30年間に築50年を経過するため、コンクリート補修の需要は増加傾向にある。
【0003】
現在のコンクリート補修材としては、エポキシ樹脂系補修材や(メタ)アクリル系補修材が大半を占めている(例えば、特許文献1を参照。)。これらのコンクリート補修材は、乾燥したコンクリートに対する接着性は優れているものの、雨により濡れた場合や下水道など多湿な環境で使用された場合には、所望の接着性が得られない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−201802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、乾燥したコンクリートのみならず、湿潤したコンクリートに対する接着性に優れるコンクリート補修材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ラジカル重合性樹脂(A)、ラジカル重合性単量体(B)、並びに、シクロデキストリン及び/又はその誘導体(C)を含有することを特徴とするコンクリート補修材を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコンクリート補修材は、乾燥したコンクリートに対する接着性(以下、「乾燥面接着性」と略記する。)のみならず、湿潤したコンクリートに対しても優れた接着性(以下、「湿潤面接着性」と略記する。)を示すものである。また、本発明のコンクリート補修材は、作業性、引張物性等の機械的強度にも優れ、臭気も非常に少ないものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のコンクリート補修材は、ラジカル重合性樹脂(A)、ラジカル重合性単量体(B)、並びに、シクロデキストリン及び/又はその誘導体(C)を必須成分として含有するものである。
【0009】
前記ラジカル重合性樹脂(A)としては、例えば、不飽和ポリエステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等を用いることができる。これらの樹脂は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0010】
前記不飽和ポリエステルとしては、例えば、α,β−不飽和二塩基酸を含む二塩基酸と多価アルコールとを従来公知の方法で反応させて得られるものを用いることができる。
【0011】
前記α,β−不飽和二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等を用いることができる。これらの二塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0012】
前記α,β−不飽和二塩基酸以外に用いることができる二塩基酸としては、飽和二塩基酸を用いることができ、例えば、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン2酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、またこれらのジアルキルエステル等を用いることができる。これらの二塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル、1,3−ブタンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、水素化ビスフェノ−ルA、1,4−ブタンジオ−ル、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、1,3−プロパンジオ−ル、1,2−シクロヘキサングリコ−ル、1,3−シクロヘキサングリコ−ル、1,4−シクロヘキサングリコ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、パラキシレングリコ−ル、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオ−ル、2,6−デカリングリコ−ル、2,7−デカリングリコ−ル等を用いることができる。これらの多価アルコールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0014】
前記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノール型エポキシ化合物又はビスフェノール型エポキシ化合物とノボラック型エポキシ化合物とを混合したエポキシ化合物と、不飽和一塩基酸とを従来公知の方法で反応して得られるものを用いることができる。
【0015】
前記ビスフェノール型エポキシ化合物としては、例えば、エピクロルヒドリンとビスフェノールA又はビスフェノールFとの反応により得られる1分子中に2個以上のエポキシ基を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物、メチルエピクロルヒドリンとビスフェノールA又はビスフェノールFとを反応させて得られるジメチルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とエピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキ化合物等を用いることができる。これらのエポキシ化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記ノボラックタイプ型エポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック又はクレゾールノボラックと、エピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ化合物等を用いることができる。これらのエポキシ化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記不飽和一塩基酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、モノメチルマレート、モノプロピルマレート、モノブテンマレート、ソルビン酸、モノ(2−エチルヘキシル)マレート等を用いることができる。これらの不飽和一塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する飽和ポリエステル又は不飽和ポリエステルを用いることができる。前記飽和ポリエステルは、飽和二塩基酸と多価アルコールとを縮合反応させたものであり、また、前記不飽和ポリエステルとは、α,β−不飽和二塩基酸と多価アルコールとを縮合反応させたものであり、いずれも末端に(メタ)アクリロイル基を有するものである。
【0019】
前記飽和二塩基酸、α,β−不飽和二塩基酸及び多価アルコールは、前記不飽和ポリエステルの合成に用いるものと同様のものを用いることができる。
【0020】
前記ポリエステル(メタ)アクリレートの製造方法としては、飽和ポリエステル又は不飽和ポリエステルとグリシジル(メタ)アクリレートと公知の方法により反応する方法が挙げられる。
【0021】
前記水酸基を有するウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート、水酸基又はイソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物を従来公知の方法で反応させて得られるものを用いることができる。
【0022】
前記ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、カプロラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、メチレンジフェニルジシソシアネートのホルマリン縮合体、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体等の芳香族系ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレートなどを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記イソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0026】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基とアクリロイル基の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル化合物」とは、アクリル化合物とメタクリル化合物の一方又は両方をいう。
【0027】
前記ラジカル重合性樹脂(A)の数平均分子量としては、引張物性及び湿潤面接着性をより一層向上できる点から、500〜10,000の範囲であることが好ましく、800〜5,000の範囲がより好ましく、1,000〜3,000の範囲が更に好ましい。なお、前記ラジカル重合性樹脂(A)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0028】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0029】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0030】
前記ラジカル重合性単量体(B)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル単量体;ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の沸点が100℃以上の(メタ)アクリル単量体等を用いることできる。これらの単量体は単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記ラジカル重合性単量体(B)としては、常温乾燥性をより一層向上できる点から、メチル(メタ)アクリレート及び/又は沸点が100℃以上の(メタ)アクリル単量体を用いることが好ましく、更に施工時の臭気をより一層向上できる点から、沸点が100℃以上の(メタ)アクリル単量体を用いることがより好ましい。
【0031】
前記ラジカル重合性樹脂(A)と前記ラジカル重合性単量体(B)との質量比[(A)/(B)]としては、引張物性及び湿潤面接着性の点から、10/90〜90/10の範囲であることが好ましく、20/80〜80/20の範囲がより好ましい。
【0032】
前記シクロデキストリン及び/又はその誘導体(C)は、湿潤面接着性を付与する上で必須の成分である。
【0033】
前記シクロデキストリン及び/又はその誘導体(C)としては、例えば、シクロデキストリン;アルキル化シクロデキストリン、アセチル化シクロデキストリン、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン等のシクロデキストリンのグルコース単位の水酸基の水素原子を他の官能基で置換したものなどを用いることができる。また、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体におけるシクロデキストリン骨格としては、6個のグルコース単位からなるα−シクロデキストリン、7個のグルコース単位からなるβ−シクロデキストリン、8個のグルコース単位からなるγ−シクロデキストリンのいずれも用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ラジカル重合性樹脂(A)及び前記ラジカル重合性単量体(B)との相溶性をより一層向上でき、湿潤面接着性をより一層向上できる点から、シクロデキストリン誘導体を用いることが好ましく、アルキル化シクロデキストリンを用いることがより好ましい。
【0034】
前記シクロデキストリン誘導体における他の官能基の置換度としては、前記ラジカル重合性樹脂(A)及び前記ラジカル重合性単量体(B)との相溶性及び湿潤面接着性の点から、0.3〜14個/グルコースの範囲であることが好ましく、0.5〜8個/グルコースの範囲であることがより好ましい。
【0035】
前記アルキル化シクロデキストリンとしては、例えば、メチル−α−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、メチル−γ−シクロデキストリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記アセチル化シクロデキストリンとしては、例えば、モノアセチル−α−シクロデキストリン、モノアセチル−β−シクロデキストリン、モノアセチル−γ−シクロデキストリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンとしては、例えば、ヒドロキシプロピル−α−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記シクロデキストリン及び/又はその誘導体(C)の含有量としては、前記ラジカル重合性樹脂(A)及び前記ラジカル重合性単量体(B)との相溶性、引張物性及び湿潤面接着性をより一層向上できる点から、前記ラジカル重合性樹脂(A)及び前記ラジカル重合性単量体(B)の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲であることが好ましく、0.5〜10質量部の範囲がより好ましく、1.5〜8質量部の範囲が更に好ましい。
【0039】
本発明で用いるコンクリート補修材は、前記ラジカル重合性樹脂(A)、前記ラジカル重合性単量体(B)、並びに、前記シクロデキストリン及び/又はその誘導体(C)を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0040】
前記その他の添加剤は、例えば、硬化剤、硬化促進剤、重合禁止剤、顔料、チキソ性付与剤、酸化防止剤、溶剤、充填剤、補強材、骨材、難燃剤、石油ワックス等を用いることができる。
【0041】
前記硬化剤としては、常温での表面乾燥性の点から有機過酸化物を用いることが好ましく、例えば、ジアシルパーオキサイド化合物、パーオキシエステル化合物、ハイドロパーオキサイド化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物、ケトンパーオキサイド化合物、パーオキシケタール化合物、アルキルパーエステル化合物、パーカーボネート化合物等を用いることができる。これらの硬化剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、保存安定性の点から、ハイドロパーオキサイド化合物を用いることが好ましい。
【0042】
前記硬化剤の使用量としては、硬化性の点から、コンクリート補修材中0.001〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0043】
前記硬化促進剤は、前記硬化剤の有機過酸化物をレドックス反応によって分解し、活性ラジカルの発生を容易にする作用のある物質であり、例えば、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト等のコバルト有機酸塩、オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等の金属石鹸、バナジウムアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート;アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジンのエチレンオキサイド付加物、N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン;N,N−置換−p−トルイジン、4−(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン化合物などを用いることができる。これらの硬化促進剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記硬化促進剤の使用量としては、硬化性の点から、コンクリート補修材中0.001〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0046】
[合成例1]ウレタンメタクリレート(A−1)の合成
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量1,400のポリブタジエンジオールを500質量部、トリレンジイソシアネートを114質量部仕込み、窒素気流下80℃で4時間反応させた。イソシアネート基当量が600とほぼ理論値となったのを確認して、50℃まで冷却した。次いで、空気気流下でハイドロキノン0.07質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを89質量部を加え、90℃で5時間反応させた。イソシアネート%が0.1%以下となった時点でターシャリーブチルカテコールを0.07質量部加え、数平均分子量;2607のウレタンメタクリレート(A−1)を得た。
【0047】
[合成例2]ウレタンメタクリレート(A−2)の合成
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量1,000のポリプロピレングリコールを500質量部、トリレンジイソシアネートを174質量部仕込み、窒素気流下80℃で4時間反応させた。イソシアネート基当量が600とほぼ理論値となったのを確認して、50℃まで冷却した。次いで、空気気流下でハイドロキノン0.07質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを131質量部を加え、90℃で5時間反応させた。イソシアネート%が0.1%以下となった時点でターシャリーブチルカテコールを0.07質量部加え、数平均分子量;1584のウレタンメタクリレート(A−2)を得た。
【0048】
[実施例1]
合成例1で得られたウレタンメタクリレート(A−1)を30質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートを70質量部、「メチル−β−シクロデキストリン」(純正化学株式会社製)を1質量部を混合、撹拌してラジカル重合性樹脂組成物を得た。 次いで、前記ラジカル重合性樹脂組成物20質量部を計量し、25℃に調製した後、クメンハイドロパーオキサイドを1質量部添加し、コンクリート補修材を得た。
【0049】
[実施例2〜3及び比較例1〜3]
用いるラジカル重合性樹脂、ラジカル重合性単量体及びシクロデキストリン及び/又はその誘導体の種類及び/又は量を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にしてコンクリート補修材を得た。
【0050】
[接着性の評価方法]
40mm×40mm×80mmのモルタル板2つを向い合せて1mmの隙間を作り、テープで固定した。作製した隙間に実施例及び比較例で得たコンクリート補修材を注入して23℃、湿度50%の環境下で1週間養生した。養生後、JISA6024:2008に準拠して接着性試験を行い、接着強度(MPa)と破壊状態を観察し、乾燥面接着性を評価した。また、前記モルタル板を純粋に24時間浸漬したものを使用し、同様にしてコンクリート補修材を注入し、23℃、湿度50%の環境下で1週間養生した後に、同様に接着強度(MPa)及び破壊状態を観察し、湿潤面乾燥性を評価した。
【0051】
【表1】
【0052】
本発明のコンクリート補修材である実施例1〜3は、乾燥面接着性のみならず。湿潤面乾燥性にも優れることが分かった。
【0053】
一方、比較例1〜3はシクロデキストリン及び/又はその誘導体(C)を含有しない態様であるが、湿潤面乾燥性が不良であった。
【要約】
本発明が解決しようとする課題は、乾燥したコンクリートのみならず、湿潤したコンクリートに対する接着性に優れるコンクリート補修材を提供することである。本発明は、ラジカル重合性樹脂(A)、ラジカル重合性単量体(B)、並びに、シクロデキストリン及び/又はその誘導体(C)を含有することを特徴とするコンクリート補修材を提供するものである。発明のコンクリート補修材は、乾燥したコンクリートに対する接着性のみならず、湿潤したコンクリートに対しても優れた接着性を示すものである。また、本発明のコンクリート補修材は、作業性、引張物性等の機械的強度にも優れ、臭気も非常に少ないものである。前記シクロデキストリン及び/又はその誘導体(C)の含有量は、前記ラジカル重合性樹脂(A)及び前記ラジカル重合性単量体(B)の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲であることが好ましい。