(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A)オルガノポリシロキサン
(A)成分は、下記式(4)で表される基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンである。
【化2】
該オルガノポリシロキサンは、25℃での粘度が100〜5000mPa・sであり、好ましくは200〜3000mPa・s、より好ましくは300〜2000mPa・s、さらに好ましくは400〜1000mPa・sである。本発明において粘度は、BM型粘度計(東京計器社製)により25℃で測定した値である。該直鎖状オルガノポリシロキサンは途中少量の分岐構造を有していてもよい。該直鎖状オルガノポリシロキサン中、上記式(4)で表される基はポリシロキサン骨格のケイ素原子に結合しており、分子末端及び分子途中のいずれに存在してもよい。該オルガノポリシロキサンは1分子中に上記式(4)で表される基を少なくとも1個、好ましくは2個以上、特には2〜10個有するのが良い。
【0014】
上記式(4)中、R
5は炭素数1〜8の2価炭化水素基である。該2価炭化水素基としては、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、及びテトラメチレン基等のアルキレン基が好ましく、中でもトリメチレン基が好ましい。aは0〜4の整数であり、好ましくは1又は2である。
【0015】
上記式(4)中、R
6は互いに独立に、水素原子または−CH
2−CH(OH)CH
2O−(C
2H
4O)
b−(C
3H
6O)
c−Zで示されるポリオキシアルキレン含有有機基である。本発明のオルガノポリシロキサンは、1分子中に該ポリオキシアルキレン含有有機基を2個以上、好ましくは3個以上有する。前記式中、bは2〜30の整数であり、好ましくは2〜20の整数である。bが上記下限値より小さいと、親水性(吸水性)を有する柔軟性を繊維に付与する効果が不十分となり、上記上限値より大きいと柔軟性が不十分となるため好ましくない。cは0〜20の整数であり、好ましくは0〜10の整数であり、更に好ましくは0又は1〜5の整数である。cが上記上限値より大きいと繊維の親水性(吸水性)が不十分となる。ポリオキシエチレン単位及びポリオキシプロピレン単位は、1種の重合体又は2種類の共重合体でもよく、またブロック重合体でもランダム重合体でもよい。
【0016】
上記ポリオキシアルキレン含有有機基において、Zは水素原子、炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜8の、置換又は非置換の1価炭化水素基、またはアシル基である。該1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基 ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、及びエイコシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、及びトリル基等のアリール基;ビニル基、及びアリル基等のアルケニル基、及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が、塩素、フッ素等のハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基等が挙げられる。中でも、Zは、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等のアルキル基;アセチル基、及びベンゾイル基等のアシル基であることが好ましく、特には、メチル基、ブチル基、及びアセチル基が好ましい。
【0017】
(A)成分は、好ましくは、下記一般式(1)、(2)又は(3)で表されるオルガノポリシロキサンの少なくとも1種である。
【化3】
【化4】
【化5】
(式中、R
4は互いに独立に、上記式(4)で示される基である。)
【0018】
上記式(1)〜(3)において、R
2は、互いに独立に、炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜8の、置換又は非置換の1価炭化水素基である。該1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基 ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、及びエイコシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、及びトリル基等のアリール基;ビニル基、及びアリル基等のアルケニル基、及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が、塩素、フッ素等のハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基等が挙げられる。中でも、工業的にメチル基が好ましい。
【0019】
上記式(1)〜(3)において、R
3は互いに独立に、−OXで示される基である。Xは水素原子または上記R
2の選択肢の中から選ばれる基である。該Xは、好ましくは、水素原子または、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基である。中でもR
3は、水酸基、メトキシ基、またはエトキシ基であるのがよい。
【0020】
上記式(1)〜(3)において、R
1は、互いに独立に、R
2またはR
3の選択肢の中から選ばれる基である。qは互いに独立に0〜3の整数であり、rは互いに独立に0または1であり、各末端においてq+rは0〜3である。但し、式(1)及び式(3)は少なくとも1の末端にR
4を有する。上記式(1)〜(3)は、分子中に少なくとも1のR
3を有するのが好ましく、qは1または2、より好ましくは1であり、特には両末端においてq=1であるのがよい。式(1)において好ましくは両末端にあるrが1である。
【0021】
上記式(1)〜(3)において、nは10〜200の整数であり、好ましくは20〜100の整数である。nが上記下限値より小さいと、繊維に柔軟性または平滑性を付与する効果が不十分となる。また、nが上記上限値より大きいと、ポリオキシアルキレン基を導入後のオルガノポリシロキサンが高粘度となり、取扱いや乳化が難しくなるため好ましくない。mは1〜5の整数である。
【0022】
上記式(1)〜(3)で表されるオルガノポリシロキサンは、各分子中、R
6で示される基の2個以上、好ましくは3個以上が上記ポリオキシアルキレン含有有機基である。これにより、優れた親水性(吸水性)を有する柔軟性を繊維に付与することができ、また、繊維の黄色化を低減させることができる。R
6で示される基の合計個数のうちポリオキシアルキレン含有有機基の個数は、2個以上であることが必要であり、多ければ多い方が好ましい。特には、各式においてR
6で示される基の合計個数のうち好ましくは67%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは100%が上記ポリオキシアルキレン含有有機基であるのがよい。
【0023】
上記式(1)〜(3)で示されるオルガノポリシロキサンとしては、例えば下記のものが挙げられる。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
(上記式中、R
2、R
3、R
4、n及びmは上述の通りである。)
【0024】
中でも、下記式で表されるオルガノポリシロキサンが特に好ましい。
【化12】
(上記式中、R
2、R
3、R
4及びnは上述の通りである。)
【0025】
上記式(1)〜(3)で表されるオルガノポリシロキサンは、下記一般式(5)〜(7)で表されるオルガノポリシロキサンと、下記一般式(8)で表されるポリオキシアルキレングリシジルエーテルとの反応により容易に得ることができる。
【化13】
【化14】
【化15】
上記式(5)〜(7)において、R
1、R
2、R
3、n、m、q及びrは上述の通りである。Yは−R
5(NHCH
2CH
2)
aNH
2で示される基である(R
5及びaは上述の通りである)。
【化16】
上記式(8)中、b、c及びZは上述の通りである。
【0026】
上記式(5)〜(7)で示されるオルガノポリシロキサンとしては、例えば下記のものが挙げられる。
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
(上記式中、n及びmは上述の通りである。)
【0027】
上記式(8)で表されるポリオキシアルキレンモノグリシジルエ−テルとしては、例えば下記のものが挙げられる。
【化24】
【化25】
(上記式中、b及びcは上述の通りである。)
【0028】
上記式(5)〜(7)で示されるオルガノポリシロキサンと、上記式(8)で示されるポリオキシアルキレンモノグリシジルエーテルは、得られるオルガノポリシロキサンにおいてR
6で示される基の2個以上が−CH
2−CH(OH)CH
2O−(C
2H
4O)
b−(C
3H
6O)
c−Zで示される基となるような配合比で反応させればよい。特には、上記式(5)〜(7)で示されるオルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(−NH)の合計個数に対する、上記式(8)で示されるポリオキシアルキレンモノグリシジルエーテルのグリシジル基の個数の比が、0.67以上、好ましくは0.85以上、より好ましくは1.0となるように反応させるのがよい。アミノ基含有オルガノポリシロキサンとポリオキシアルキレンモノグリシジルエーテルとの反応は従来公知の方法に従えばよく特に制限されない。例えば、無溶剤下または低級アルコール、トルエン、キシレンなどの溶剤存在下にて、50℃〜100℃で1〜5時間反応させればよい。
【0029】
上記式(5)で表されるアミノ基含有オルガノポリシロキサンは、公知の合成方法により容易に得ることができる。例えば、無触媒下あるいはアルカリ金属水酸化物などの触媒存在下に、両末端ヒドロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンと、3−アミノプロピルジエトキシシランあるいはN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランとを脱メタノール反応することにより得られる。
【0030】
上記式(6)または(7)で表されるアミノ基含有オルガノポリシロキサンも、公知の合成方法により容易に得ることができる。例えば、アルカリ金属水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの触媒存在下に、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサンと、3−アミノプロピルジエトキシシランあるいはN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、またはその加水分解物、及びその他の原料としてヘキサメチルジシロキサン等から選択される化合物とを平衡化反応することにより得られる。なお、(A)成分は、オルガノポリシロキサン骨格中に分岐を有しても良い。
【0031】
本発明においてマイクロエマルション組成物中の(A)成分の含有量は、全成分の合計質量に対して80〜98質量%、好ましくは85〜95質量%である。(A)成分の含有量が上記下限値未満では高濃度ではなく、経済的ではない。また上記上限値超ではエマルションの保存安定性、希釈性が低下する。
【0032】
(B)ノニオン性界面活性剤
(B)成分は、12〜16の範囲内、好ましくは13〜15の範囲内のHLB値を有する、1種類以上のノニオン性界面活性剤である。(B)成分のHLB値が前記範囲にあることによりマイクロエマルションを良好に得ることができる。該ノニオン性界面活性剤は、上記HLB値を有すればよく、公知のノニオン性界面活性剤から選択すればよい。
【0033】
(B)成分は、1種類のHLB値を有するノニオン性界面活性剤単独であってもよいし、異なるHLB値を有する2種類以上のノニオン性界面活性剤の混合物でもよい。2種類以上のノニオン性界面活性剤を組み合せる場合は、少なくとも2種類のノニオン性界面活性剤のHLB値の差が1以上、好ましくは2以上であり、かつ、混合物全体のHLB値が12〜16の範囲内、好ましくは13〜15の範囲内となるように組み合わせるのが好ましい。また、HLB値が12〜16の範囲外にあるノニオン性界面活性剤を混合してもよいが、その場合は、混合物全体のHLB値が12〜16の範囲内、好ましくは13〜15の範囲内となるように組み合わせることが好ましい。ここで、混合物全体のHLB値とは各ノニオン性界面活性剤が有するHLB値の加重平均である。
【0034】
該ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンソルビタンアルキルエステル等が使用できる。これらの中でも、一般式RO(C
2H
4O)
p(C
3H
6O)
uHで示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい。上記式において、Rは炭素数8〜30、好ましくは炭素数8〜13の、直鎖又は分岐のアルキル基であり、p及びuは互いに独立に0〜50、好ましくは0〜25であり、但しp+uは1以上である。また、ポリオキシエチレン単位及びポリオキシプロピレン単位は、1種の重合体又は2種類の共重合体でもよく、またブロック重合体でもランダム重合体でもよい。
【0035】
(B)成分の配合量は(A)成分の質量に対して1〜10質量%、好ましくは3〜8質量%である。上記下限値未満ではマイクロエマルションが得られない。また、上記上限値超では得られるエマルションの保存安定性が低下する。
【0036】
(C)アニオン性界面活性剤
(C)成分はアニオン性界面活性剤である。アニオン性界面活性剤は公知のものから適宜選択することができる。好ましくは、一般式R’OSO
3M又はR’−Ph−OSO
3Mで示されるものがよい。上記式において、R’は炭素数8〜30の、好ましくは8〜12の、直鎖又は分岐のアルキル基である。Mは水素原子あるいは金属元素であり、特に好ましくは、水素原子、アルカリ金属元素、又はアルカリ土類金属元素である。
【0037】
該アニオン性界面活性剤としては、例えば、ヘキシルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、セチルベンゼンスルホン酸、ミスチルベンゼンスルホン酸、及びその塩等が挙げられる。また、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸等の高級脂肪酸およびその塩、一般式R’O(EO)
s(PO)
tSO
3M、又はR’−Ph−O(EO)
s(PO)
tSO
3Mで表されるポリオキシエチレンモノアルキルエーテルの硫酸エステル、アルキルナフチルスルホン酸及びその塩等を使用することもできる(上記式中、R’及びMは上述の通りであり、s、tは互いに独立に0〜30の整数であり、但し、s+tは1以上である。EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、Phはフェニル基を意味する)。中でも、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルの硫酸エステルが好ましい。
【0038】
(C)成分の含有量は、(A)成分の質量に対して0〜3質量%、好ましくは0.5〜2質量%である。
【0039】
(D)有機酸
(D)成分は有機酸である。本発明の組成物は有機酸を含有することにより、乳化の際に(A)成分のアミノ基の一部と(D)有機酸が四級塩を形成して、マイクロエマルションを形成することができる。(D)成分の含有量は(A)成分の質量に対して0.5〜2質量%、好ましくは1.0〜1.5質量%である。これはモル当量に換算とすると、(A)成分が有するアミノ基(−NR
6、−NR
62)の合計モル当量に対して、(D)成分が0.1〜0.4モル当量、好ましくは0.2〜0.3モル当量となる量である。有機酸の量が上記上限値を超えると、エマルションの粘度が高くなり、また保存経時で黄色化するため好ましくない。また希釈時の分散性が悪く無色透明な処理剤を得ることができないおそれがある。また有機酸の量が上記下限値未満ではマイクロエマルションとならない。
【0040】
有機酸は従来公知のものから適宜選択することができる。例えば、蟻酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、オキシグルタミン酸、酪酸、グリコール酸、及びヒドロキシ酸等が挙げられる。中でも、蟻酸、酢酸、乳酸等のカルボン酸、またはヒドロキシ酸が好ましい。
【0041】
(E)水
本発明はマイクロエマルション組成物中に水を含有する。本発明において、マイクロエマルション組成物中の水の含有量は、組成物中に1〜5質量%、好ましくは1.5〜4質量%、さらに好ましくは2〜4質量%となる量である。該水とは、例えば相転移の為の水(転相水)である。
【0042】
マイクロエマルション組成物の製造方法は、従来公知の方法に従えばよい。例えば、上記(A)〜(D)成分、及び(E)水を配合し、せん断力下に油中水型から水中油型に相転移させ、混錬し、分散させることにより製造できる。(C)アニオン性界面活性剤を水溶液として使用する場合は、該水溶液中に含まれる水を(E)成分の水とすればよく、それ以上の水は配合しなくてもよい。乳化機は、特に制限されるものでなく、例えばホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、万能混合攪拌機、コンビミックス、ラインミキサーなどを使用することができる。例えばホモミキサーを使用する場合、1000〜5000rpm程度混合して相転移した後、更に1000〜2000rpmで10〜30分程度混合をすることが好ましい。
【0043】
本発明のマイクロエマルション組成物は、広い希釈濃度範囲で水に良好に分散することができ無色透明であることができる。希釈物の外観が無色透明であることはハーゼン色数(APHA)により判断することができる。特には、マイクロエマルション組成物の希釈物が、ハーゼン色数(APHA)10以下を有するのがよい。ハーゼン色数の測定は肉眼でおこなっても、ハーゼンメーターを使用して行ってもよい。肉眼での測定は、例えば、ハーゼン色数の異なる多数の標準液、例えばハーゼン色数10〜1000までの範囲において、10から100までは10刻み、100〜1000までは100刻みの標準液を用意し、試料の外観色がどの標準液の色に近いかを目視で比較することにより決定できる。本発明のマイクロエマルション組成物は、特に、30質量%以下となる濃度に水で希釈した場合において分散性が良好であり無色透明であることができる。
【0044】
本発明のマイクロエマルション組成物は、乳化粒子の平均粒径が50nm以下、好ましくは40nm以下、特に好ましくは30nm以下であることができ、さらに好ましくは20nm以下であることができる。マイクロエマルション組成物中の乳化粒子の平均粒径が上記上限値より大きいと希釈物の外観の透明性、希釈物中のエマルション組成物の分散性が低下するため好ましくない。本発明において、マイクロエマルション組成物中の乳化粒子の平均粒径は、動的光散乱法により測定した値である。具体的には、ベックマン・コールター株式会社製のN4 Plus submicron Particle Size Analyzerにより測定できる。
【0045】
本発明は上記マイクロエマルション組成物を含有する繊維処理剤を提供する。マイクロエマルション組成物の配合量は、効果の発現及び使用性の点から、繊維処理剤中に0.5〜30質量%となる量が好ましく、更に好ましくは1〜5質量%となる量である。配合量が上記下限値より少ないと繊維に柔軟性を付与する効果が十分に得られない場合があり、上記上限値を超えるとべたつき、油感などが生じ、好ましくない感触となるおそれがある。繊維処理剤の調製方法は従来公知の方法に従えばよく、例えばマイクロエマルション組成物を所望の濃度となるように水で希釈して調製することができる。
【0046】
本発明の繊維処理剤には、上記マイクロエマルション組成物に加え、目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を配合することができる。その他の成分としては、例えば、増粘剤、防しわ剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防腐剤、防錆剤、乳化剤、乳化助剤、香料、及び染料等が挙げられる。
【0047】
本発明の繊維処理剤で処理可能な繊維又は繊維製品は特に限定されるものでない。例えば、綿、絹、麻、ウール、アンゴラ、及びモヘア等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル、及びスパンデックス等の合成繊維等に対して使用することができる。また、繊維の形態及び形状も制限されるものでなく、ステープル、フィラメント、トウ、糸等のような原材料形状に限らず、織物、編み物、詰め綿、不織布等の多様な加工形態の繊維製品も、本発明の繊維処理剤で処理可能である。本発明の繊維処理剤による繊維の処理方法は従来公知の方法に従えばよい。例えば、繊維製品を繊維処理剤に浸漬して製品に処理剤を付着させ、ロール、遠心分離機等を用いて余分の処理液を除去して付着量を調整した後、乾燥または加熱することにより行うことができる。
【0048】
本発明のマイクロエマルション組成物は、優れた保存安定性と希釈性を有する繊維処理剤を提供することができ、かつ、繊維に優れた柔軟性、特に親水性(吸水性)を有する柔軟性を付与することができ、風合い向上効果に優れる。従って本発明のマイクロエマルション組成物は各種繊維の処理剤として幅広く使用可能である。
【実施例】
【0049】
以下、実施例と比較例をあげて本発明を更に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0050】
下記における粘度は、BM型粘度計(東京計器社製)により25℃で測定した値である。揮発分は、熱風循環式恒温器(ヤマト科学社製)を用いて加熱残量法により測定した値である。HLB値はグリフィン法(即ち、HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量)にて算出した値である。
【0051】
[合成例1]
温度計、撹拌装置、還流冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量500mlのセパラブルフラスコに、下記式(A)で示されるアミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン(分子量4066、アミン当量:1010g/モル、粘度:78mm/s
2、揮発分:2.1%)100g、下記式(B)で示されるポリエチレングリコールモノブチルモノグリシジルエーテル(分子量349)52g(アミノアルキル基含有オルガノポリシロキサン中の窒素原子に結合する水素原子(−NH)の合計個数に対する、ポリエチレングリコールモノブチルモノグリシジルエーテルのグリシジル基の個数の比が1.0となる量)、及びイソプロピルアルコール7.4gを仕込み、窒素ガスを導入した後に密閉して、80℃で4時間付加反応を行なった。反応終了後、10mmHgの減圧下、80℃で1時間、低沸点留分の除去を行なったところ、下記式(C)で示されるオイル状化合物145gが得られた(以下、化合物Cという)。該化合物Cの外観は淡黄色半透明であり、粘度は497mPa・s、アミン当量は2940g/モル、揮発分は2.1%であった。
【化26】
【化27】
【化28】
【0052】
[実施例1]
容量が0.2リットルのポリエチレン製デスカップに、化合物C90g、ポリオキシアルキレン分岐デシルエ−テル(ノイゲンXL−80:HLB13.8、第一工業製薬社製)6g、ポリオキシエチレンラウリルエ−テル硫酸ナトリウム水溶液(エマール20C、有効成分:25%、水:75%、花王製)2.7g、酢酸1.3g(化合物Cが有するアミノ基(−NR、−NR
2)の合計モル当量に対して0.25モル当量)を仕込み、ホモミキサ−を用いて3500rpmで20分間混合し、転相乳化をした。その後、回転数1500rpmで20分間攪拌し、淡黄色透明なマイクロエマルション組成物を得た。該マイクロエマルション組成物中の各成分の配合(質量%)を表1に示す。尚、表1に記載される水の量は上記ポリオキシエチレンラウリルエ−テル硫酸ナトリウム水溶液中に含まれる水の量であり、アニオン性界面活性剤の量は上記ポリオキシエチレンラウリルエ−テル硫酸ナトリウム水溶液中に含まれる有効成分の量である。また、(B)〜(D)成分について括弧内の数値は、(A)成分の質量に対する(B)成分、(C)成分または(D)成分の質量%である。
【0053】
[実施例2]
ポリオキシアルキレン分岐デシルエ−テルをポリオキシエチレンアルキルエ−テル(エマルゲン1108:HLB13.4、花王製)に変更した他は実施例1と同じ組成及び方法にてマイクロエマルション組成物を調製した。該マイクロエマルション組成物中の各成分の配合(質量%)を表1に示す。
【0054】
[実施例3]
ポリオキシエチレンラウリルエ−テル硫酸ナトリウム水溶液をイオン交換水に変更した他は実施例1と同じ組成及び方法にてマイクロエマルション組成物を調製した。該マイクロエマルション組成物中の各成分の配合(質量%)を表1に示す。
【0055】
[実施例4]
ポリオキシエチレンラウリルエ−テル硫酸ナトリウム水溶液の量を2.2gに変更し、酢酸の量を1.8gに変更した他は実施例1と同じ組成及び方法にてマイクロエマルション組成物を調製した。該マイクロエマルション組成物中の各成分の配合(質量%)を表1に示す。
【0056】
[比較例1]
ノイゲンXL-80をノイゲンXL-40(HLB10.5、第一工業製薬社製)に変更した他は実施例1と同じ組成及び方法にてマイクロエマルション組成物を調製した。該マイクロエマルション組成物中の各成分の配合(質量%)を表1に示す。
【0057】
[比較例2]
ノイゲンXL-80をノイゲンXL-160(HLB16.3、第一工業製薬社製)に変更した他は実施例1と同じ組成及び方法にてマイクロエマルション組成物を調製した。該マイクロエマルション組成物中の各成分の配合(質量%)を表1に示す。
【0058】
[比較例3]
酢酸の量を0.4gに変更し、転相水0.9gを加えた他は実施例1と同じ組成にて各成分を仕込み、ホモミキサ−を用いて3500rpmで20分間混合し、転相乳化をした。その後、回転数1500rpmで20分間攪拌し、淡黄色透明なマイクロエマルション組成物を得た。該マイクロエマルション組成物中の各成分の配合(質量%)を表1に示す。
【0059】
[比較例4]
化合物C87g、ポリオキシアルキレン分岐デシルエ−テル(ノイゲンXL−80)9g、酢酸3g、及びイオン交換水1gを仕込み、ホモミキサ−を用いて3500rpmで20分間混合し、転相乳化をした。その後、回転数1500rpmで20分間攪拌し、淡黄色透明なマイクロエマルション組成物を得た。該マイクロエマルション組成物中の各成分の配合(質量%)を表1に示す。
【0060】
[比較例5]
化合物C98g、ポリオキシアルキレン分岐デシルエ−テル(ノイゲンXL−80)1g、及び酢酸1gを仕込み、ホモミキサ−を用いて3500rpmで20分間混合し、転相乳化をした。その後、回転数を1500rpmで20分間攪拌し、淡黄色透明なマイクロエマルション組成物を得た。該マイクロエマルション組成物中の各成分の配合(質量%)を表1に示す。
【0061】
上記各マイクロエマルション組成物について調製直後の粘度、pH、不揮発分、及び組成物中の乳化粒子の平均粒径を、以下に示す方法により測定した。結果を表2に示す。
(1)粘度は、BM型粘度計(東京計器社製)により25℃で測定した。
(2)pHは、pHメータ−(HORIBA社製)を用いて25℃にて測定した。
(3)不揮発分は、熱風循環式恒温器(ヤマト科学社製)を用いて加熱残量法により測定した。
(4)マイクロエマルション組成物中の乳化粒子の平均粒径は、ベックマン・コールター株式会社製のN4 Plussubmicron Particle Size Analyzerにより測定した。
【0062】
[評価試験]
各マイクロエマルション組成物について以下に示す評価試験を行った。結果を表2に示す。
1.希釈濃度での分散性及び保存安定性の評価
各マイクロエマルション組成物の希釈濃度での分散性、及び各マイクロエマルション組成物をイオン交換水で希釈して得られた処理剤の外観(ハーゼン色数)及び保存安定性を評価した。
(1)28%濃度品の調製
25g透明ガラス瓶にマイクロエマルション組成物7gとイオン交換水18gを入れて蓋を閉じた後、振とう器にて250rpm×2分間振とうした。
(2)13%濃度品の調製
25g透明ガラス瓶にマイクロエマルション組成物2.8gとイオン交換水18gを入れて蓋を閉じた後、振とう器にて250rpm×2分間振とうした。
(3)分散性
振とう中のマイクロエマルション組成物の分散性を以下に示す基準に従い評価した。
A:2分間以内に完全に分散し透明になる。
B:2分間以内に殆ど分散するが、やや濁りがある。
C:白濁又はダマ状になり分散しない(透明にならない)。
(4)処理剤の外観の評価
振とう後静置し、得られた各処理剤の外観を観察しハーゼン色数を決定した。
ハーゼン色数(APHA)は、色数標準液と試料を肉眼で比較して測定をした。詳細には、ハーゼン色数10〜1000までの範囲において、10から100までは10刻み、100〜1000までは100刻みの標準液を用意し、マイクロエマルション組成物の外観色がどの標準液の色に近いかを肉眼で比較してハーゼン色数を決定した。色数10の標準液よりも色が薄い試料はハーゼン色数10以下とした。また、試料が半透明であり無色の判断がしにくい試料は測定不可とした。
(5)処理剤の保存安定性の評価
各処理剤を25℃で30日間保管した後の外観を観察し、上記方法に従いハーゼン色数を決定した。
【0063】
2.柔軟性
各マイクロエマルション組成物にイオン交換水を加え、固形分0.5質量%に希釈して試験液を調製した。該試験液にポリエステル/綿ブロード布(65%/35%、谷頭商店社製)を1分間浸漬した後、絞り率1100%の条件でロールを用いて絞り、100℃で2分間乾燥後、さらに150℃で2分間加熱処理して柔軟性評価用の処理布を作製した。該処理布を三人のパネラーが手触りし、柔軟性を以下の基準により評価した。
A:触り心地が非常に良好である。
B:触り心地が良好である。
C:触り心地が悪い。
【0064】
3.吸水性
各マイクロエマルション組成物にイオン交換水を加え、固形分0.5質量%に希釈して試験液を調製した。該試験液に綿ブロード布を1分間浸漬した後、絞り率100%の条件でロールを用いて絞り、100℃で2分間乾燥後、さらに150℃で2分間加熱処理して吸水性評価用の処理布を作製した。該処理布の表面の3ヶ所にスポイトで水滴を滴下し、完全に吸収されるまでの時間を測定し、以下の基準により評価した。
A:1秒以内に完全に吸収する。
B:1〜30秒程度で吸収する。
C:30秒以上でも吸収しない。
【0065】
4.保存安定性
各マイクロエマルション組成物100gをガラス瓶に取り、40℃の恒温槽に30日間静置し保存した後、外観及び上層と下層の不揮発分を目視観察して、以下の基準により保存安定性を評価した。
A:上層と下層で濃淡分離が全く認められない。
B:上層と下層でわずかに濃淡分離が確認される。
C:完全に二層に分離している。
【0066】
5.機械的安定性
各マイクロエマルション組成物をイオン交換水で2質量%に希釈し、ホモミキサーを用いて5000rpmで10分間攪拌した後、表面状態を目視にて観察した。以下の基準により機械的安定性を評価した。
A:オイル浮き、干渉膜等が全くない。
B:干渉膜が確認される。
C:オイル浮きが確認される。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
表2に示される通り、本発明のマイクロエマルション組成物は、アミノ基とポリオキシアルキレン基を有するオルガノポリシロキサンを高濃度で含有し、かつ、広い希釈濃度範囲で外観が無色透明であり、さらに保存安定性に優れる。本発明のマイクロエマルション組成物を希釈して得られる繊維処理剤は、優れた保存安定性及び機械的安定性を有する。さらに、該繊維処理剤で処理された繊維は、優れた柔軟性、及び吸水性を有する。