(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1種の有機カーボネート(A)と、官能性が3以上の少なくとも1種のアルコール(B)及び少なくとも1種の化合物(C)との反応によって得られる、少なくとも1種の高分岐ポリカーボネートを含有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー分散液であって、
前記化合物(C)が、
・炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC8〜C32脂肪族炭化水素基、及び
・ヒドロキシ基又はカーボネート基に対して反応性の官能基
を有する、前記ポリマー分散液。
請求項9に記載のポリマー分散液であって、エマルジョンポリマーを製造するためにさらに、使用するモノマーの全質量に対して、少なくとも1種のモノマーM2)を最大60質量%使用し、
当該モノマーM2)が、エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸、エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物と半エステル、(メタ)アクリルアミド、C1〜C10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、C1〜C10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリエーテル(メタ)アクリレート、尿素基含有モノマー、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物から選択されている、前記ポリマー分散液。
前記工程b)においてヒドロキシ基含有の高分岐ポリカーボネート(P)を製造する、請求項15に記載の製造方法であって、前記ポリカーボネート(P)が、ヒドロキシ基を1分子当たり、少なくとも4個有する、前記製造方法。
請求項1から7までのいずれか1項に記載の、又は請求項14から17までのいずれか1項に記載の方法により得られる少なくとも1種の高分岐ポリカーボネートを、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーM)がベースのエマルジョンポリマーを含有する被覆剤用添加剤として、当該被覆剤から製造される被覆の硬化プロセスを改善させるために用いる使用。
請求項1から7までのいずれか1項に記載の、又は請求項14から17までのいずれか1項に記載の方法により得られる少なくとも1種の高分岐ポリカーボネートを、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーM)がベースのエマルジョンポリマーを含有する被覆剤用添加剤として、当該被覆剤から製造される被覆の最終硬度を向上させるために用いる使用。
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和脂肪酸基を有する高分岐ポリカーボネートを含有するポリマー分散液に関する。本発明はさらに、不飽和脂肪酸から誘導される基を有する、高分岐ポリカーボネート、このような高分岐ポリカーボネートの製造方法、及び当該高分岐ポリカーボネートを、水性アクリレート分散液がベースの被覆剤の硬化特性を改善させるための使用に関する。
【0002】
被覆剤(例えば塗料)の重要な特性は、適用後の硬化プロセスであり、このプロセスは、どのように塗膜の硬度が形成され、また接着性が形成されて、最終的な硬度に達するのかを説明するものである。さらには、硬化特性が改善された被覆剤に対する需要がある。この特性は例えば、硬化時間の短縮、有機溶剤の割合が少ない場合における良好な硬化特性、又は比較的高い最終硬度を反映し得る。ここで他の重要な応用技術特性(例えば光沢、薬品耐性など)は、できる限り悪化させるべきではない。
【0003】
アルキド樹脂とは、多塩基酸、多価アルコール(ポリオール)、及びモノカルボン酸を組み込まれて含有するポリエステル樹脂である。これらは今もなお、塗料製造にとって重要な結合剤クラスである。酸化架橋性(酸化乾燥性)のアルキド樹脂は、特に多価不飽和脂肪酸を含有する。塗膜硬化は、これらの脂肪酸において化学的架橋により、空気中の酸素を取り込んで行われる。ここで乾燥特性は例えば、製造に使用されるモノカルボン酸の種類と量によって影響されることがある。また、乾燥促進触媒、いわゆる乾燥物質(乾燥剤)を用いることもできる。旧来のアルキド結合剤は通常、溶剤ベースであり、こうしたものを用いるのは、VOC低減の観点から、今日ではもはや望ましくない。構成要素であるポリカルボン酸、ポリオール、及びモノカルボン酸の他に、さらなる構成要素、例えばスチレン、アクリレート、ポリアミド、ウレタン、エポキシド、シリコーンを含有する合成樹脂は、「変性アルキド樹脂」と呼ばれる。
【0004】
塗料着色剤、又は皮革、紙、プラスチックなどを被覆するためのコーティング剤などを製造するための別の重要な結合剤クラスは、水性分散媒体が蒸発してポリマー塗膜が形成される水性ポリマー分散液である。このポリマー分散液を、適切な添加剤によって改善させること、又は特定の適用領域(例えば硬化特性の最適化)という観点で改善させることは、これまでにも試みられてきた。しかしながらこれらの添加剤には多くの欠点があり、例えば一定の湿分は、そのようにして得られる被覆のVOC値に対して否定的な作用をもたらす。
【0005】
WO 2005/003186は、コポリマーベースの水性ポリマー分散液の製造方法を記載しており、当該コポリマーは、少なくとも1種の疎水性アリルモノマー、ビニルモノマー、マレインモノマー、又はジエンモノマーを重合導入されて含有し、ここでこの重合は、少なくとも1種の樹枝状ポリマーの存在下で行われる。
【0006】
WO 2005/026234は、高官能性で高分岐若しくは超分岐のポリカーボネート、またその製造方法と、印刷インキの製造に用いる使用を記載している。
【0007】
WO 2006/089940は、高官能性で高分岐若しくは超分岐のポリカーボネート、またその製造方法と、塗料系の製造に用いる使用を記載している。
【0008】
WO 2007/135032は、超分岐ポリカーボネートを顔料用分散剤として用いる使用を記載している。
【0009】
WO 2008/071801は、高分岐ポリカーボネートを含有するポリマー分散液を記載している。
【0010】
WO 2009/065867は、高分岐ポリマーを、凍結/露点安定性が改善されたポリマー分散液の製造方法に用いる使用を記載している。この高分岐ポリマーとは、ポリカーボネートであり得る。
【0011】
WO 2009/065867は、高分岐ポリマーを、光沢塗料用ポリマー分散液の製造に用いる使用を記載している。この高分岐ポリマーとは、ここでもポリカーボネートであり得る。
【0012】
WO 2009/109622は、少なくとも1種の高分岐ポリマーを含有するポリウレタン分散液を記載している。この高分岐ポリマーとは、ここでもポリカーボネートであり得る。
【0013】
上述の文献に記載されたポリカーボネートは、架橋反応には適した不飽和基を有していない。
【0014】
WO 2004/016700は、水ベースの水性コポリマー分散液を記載しており、これはアルキレン基で官能化された少なくとも1種の樹枝状ポリマー(不飽和モノマーのポリマー骨格をベースとする)の共重合によって得られるものである。こうして得られるコポリマー分散液は、塗料用結合剤として適しており、相応する被覆のブロッキング耐性が改善されていることによって特徴付けられる。アルキレン基で変性された高分岐ポリカーボネート、及び特に酸化架橋性の高分岐ポリカーボネートは、記載されていない。水性ポリマー分散液の硬化特性を改善させるために、樹枝状ポリマーを用いることも、開示されていない。
【0015】
WO 2004/016701は、WO 2004/016700とは異なり、ホモポリマー又はコポリマーの分散液に関し、当該分散液は、不飽和モノマーのホモポリマー又はコポリマーと、アルキレンで官能化された少なくとも1種との樹枝状ポリマーとの物理的混合物を含有するものである。
【0016】
WO 2003/062306は、鎖が延長された樹枝状ポリエーテルを記載している。これらは特に、不飽和脂肪酸から誘導される末端基を有することができる。可能な使用領域としては、水ベース被覆剤用の顔料分配剤として用いることが記載されている。
【0017】
EP 2 009 072 A1は、自動的に酸化可能な材料と、エマルジョンポリマーとを含有する水性ポリマー組成物を記載しており、ここでこのエマルジョンポリマーは、カルボニル基を有するエチレン性不飽和モノマーを重合導入して含有するものである。この水性ポリマー組成物は、乾燥の間の再塗布性が改善された被覆剤の製造に適している。
【0018】
WO 2004/037928は、空気乾燥性の水性樹脂組成物を記載しており、当該組成物は、脂肪酸で官能化された超分岐ポリマー(空気で乾燥するもの)、両親媒性ではないアルキド樹脂、乾燥物質、及び安定剤から成るものである。この文献にも、酸化架橋性のアルケニル基で変性された高分岐ポリカーボネートは記載されていない。水性ポリマー分散液の硬化特性を改善させるために、脂肪酸で官能化された超分岐ポリマーを用いることも、開示されていない。
【0019】
WO 2009/029479は、包装材料内で酸素捕捉剤として作用する樹枝状ポリマーを記載している。この文献の意味合いにおいて樹枝状ポリマーとは、構造的に非常に多様な、何らかの形で分岐したポリマーであり得る。これには例えば、本来の意味でのデンドリマー(すなわち、100%という理想的な分枝度)、また分岐状グラフトコポリマーも含まれる。このポリマーはさらに、異なるポリマー分類の多数のものから選択され、ここでポリカーボネートは単に、あり得るが好ましくはない態様として言及されているに過ぎない。これらの文献の教示によれば、樹枝状ポリエステルを用いるのが好ましく、具体的にはPerstorp社のBOLTORN(登録商標)U3000とW3000が好ましい。酸素捕捉基とは、極めて一般的に、C−C二重結合を少なくとも1つ有する有機基であり得る。これらはまた、異なる多数の基から選択されており、ここであり得る実施態様としては、不飽和脂肪酸から誘導される基も言及されている。実施例には、PETペレットと、BOLTORN U3000との、若しくはリノレン酸で変性されたBOLTORN W3000との共押出体が記載されている。これらの共押出体から、ブロー成形によりプラスチックボトルが製造され、このボトルは、従来のPETボトルよりも酸素透過性が低いとのことである。水性ポリマー分散液、及びこれをベースとする塗料(不飽和脂肪酸基を有する少なくとも1種の高分岐ポリカーボネートを含有するもの)は、WO 2009/029479には記載されていない。加えて、不飽和脂肪酸基を有する単純な高分岐状ポリエステル、特にBOLTORN U3000(不飽和脂肪酸基で変性された樹枝状ポリマー)が、ポリマー分散液の硬化プロセスを改善させるためには、本発明により使用される不飽和脂肪酸基を有する高分岐ポリカーボネートよりも明らかに不適切であることが示されている。
【0020】
本発明は、被覆材用の新規添加剤、特に水性ポリマー分散液用の新規添加剤を提供するという課題に基づく。この添加剤は、改善された適用技術特性、特に改善された硬化プロセス、及び/又は向上した最終硬度を有するべきである。
【0021】
意外なことにこの課題は、長鎖の一価又は多価不飽和炭化水素鎖を有する高分岐ポリカーボネートを用いることによって解決することが判明した。
【0022】
従って本発明の対象は、
少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和モノマーM)のエマルジョンポリマー、及び
炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1個有する、少なくとも1種の高分岐ポリカーボネート
を含有する、水性ポリマー分散液Pd)である。
【0023】
本発明のさらなる対象は、
先に、また以下でも定義する水性ポリマー分散液Pd)、
任意で少なくとも1種の顔料
任意で少なくとも1種の充填材、
任意でさらなる助剤、及び
水
を含有する塗料である。
【0024】
特別な実施態様は、クリアコートの形での塗料、及び分散液着色剤の形での塗料である。
【0025】
本発明のさらなる対象は、炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1個有する高分岐ポリカーボネートである。
【0026】
本発明による高分岐ポリカーボネート、及び本発明により使用される高分岐ポリカーボネートの特別な実施態様は、酸化架橋性高分岐ポリカーボネートである。酸化架橋性のアルキド樹脂の場合のように酸化架橋性高分岐ポリカーボネートのアルケニル基は、少なくとも部分的に脂肪酸から誘導され、当該脂肪酸は、炭素−炭素二重結合を2つ以上(例えば3つ、4つ、又は5つ)有するものである。言い換えれば、この酸化架橋性アルキド樹脂は、形式的には相応する二価若しくは多価のC
8〜C
32カルボン酸から、カルボキシ基の除去によって得られるアルケニル基を有する。
【0027】
本発明による高分岐ポリカーボネート、及び本発明により使用される高分岐ポリカーボネートは好ましくは、C
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1個有し、当該アルケニル基は、活性化されていない炭素−炭素二重結合のみを有するものである。活性化されていない炭素−炭素二重結合とは、本発明の範囲では、二重結合の炭素原子が、酸素原子とエーテル結合で直接結合しておらず、かつ−C(=O)基(カルボニル基又はカルボキシ基)に直接結合していないものと理解される。
【0028】
本発明による高分岐ポリカーボネート、及び本発明により使用される高分岐ポリカーボネートは好ましくは、C
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1個有し、当該アルケニル基は、隔離された(非共役型)炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ有するものである。
【0029】
本発明によるポリカーボネート、及び本発明により使用されるポリカーボネートはさらに、C
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1個有し、当該アルケニル基は、共役型の炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ有するものである。これにより通常、酸化性架橋の促進につながり、このことは架橋性の変性に適している。
【0030】
本発明による高分岐ポリカーボネート、及び本発明により使用される高分岐ポリカーボネートはさらに、C
8〜C
32アルキル基(すなわち、飽和C
8〜C
32炭化水素基)を少なくとも1個有することができる。
【0031】
本発明のさらなる対象は、炭素−炭素二重結合を少なくとも1個有するC
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1個有する高分岐ポリカーボネートの製造方法であって、この製造方法は、少なくとも1種の有機カーボネート(A)を、官能性が3以上の少なくとも1種のアルコール(B)、及び少なくとも1種の化合物(C)と反応させるものであり、ここで当該化合物(C)は、炭素−炭素二重結合を少なくとも1個有するC
8〜C
32アルケニル基と、ヒドロキシ基又はカーボネート基に対して反応性の官能基とを有するものである。
【0032】
好ましいのは、炭素−炭素二重結合を少なくとも1個有するC
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1個有する高分岐ポリカーボネートの製造方法であって、当該製造方法では、
(a)少なくとも1種の有機カーボネート(A)を、官能性が3以上の少なくとも1種のアルコール(B)と反応させて、アルコールを脱離させながら縮合生成物(K)にし、
(b)当該縮合生成物(K)を、さらにアルコールを脱離させながら反応させて高分岐ポリカーボネート(P)にし、ここで脱離したアルコールの少なくとも一部を、反応混合物から除去し、
ここで、前記工程b)における反応のために少なくとも1種の化合物(C)を使用し、当該化合物(C)は、炭素−炭素二重結合を少なくとも1個有するC
8〜C
32アルケニル基と、ヒドロキシ基若しくはカーボネート基に対して反応性の官能基を有し、かつ/又は高分岐ポリカーボネート(P)を、工程b)に連続して、少なくとも1種の化合物(C)と反応させる。
【0033】
本発明のさらなる対象は、上記の、及び以下で述べる方法により得られる高分岐ポリカーボネートである。
【0034】
本発明のさらなる対象は、少なくとも1種のモノマーM)のラジカル重合による、水性ポリマー分散液Pd)の製造方法であって、エマルジョン重合の前、及び/又はその間、及び/又はその後に、少なくとも1種の高分岐ポリカーボネートを(上述のように、また以下に記載するように)添加するものである。
【0035】
ここでエマルジョン重合後の添加には、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和モノマーM)をベースとするエマルジョンポリマーを含有する生成物の調製の範囲における添加も含まれる。このためには、少なくとも1種の高分岐ポリカーボネート(先に、またこれ以降定義するもの)を添加剤として、例えば塗料又は紙用塗料材料に添加することができる。
【0036】
本発明のさらなる対象は、少なくとも1種の高分岐ポリカーボネート(先に、また以下に定義のもの)を、被覆剤用の添加剤として用いる使用であって、当該被覆剤は、同被覆剤から製造される被覆の硬化プロセスを改善させるために、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーがベースのエマルジョンポリマーを含有するものである。
【0037】
本発明のさらなる対象は、少なくとも1種の高分岐ポリカーボネート(先に、また以下に定義のもの)を、被覆剤用の添加剤として用いる使用であって、当該添加剤は、同被覆剤から製造される被覆の最終硬度を向上させるために、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーがベースのエマルジョンポリマーを含有するものである。
【0038】
本発明による高分岐ポリカーボネートの使用により、以下の利点のうち少なくとも1つが得られる:
・高分岐ポリカーボネートの添加による、水性ポリマー分散液をベースとする被覆における硬化プロセスの改善、
・高分岐ポリカーボネートの添加による、水性ポリマー分散液をベースとする被覆における最終硬度の改善、
・使用される高分岐ポリカーボネートと、多様な分散液との良好な相容性、
並びにさらに:
・高分岐ポリカーボネートを添加しない水性ポリマー分散液よりも、粘度が減少する可能性、
・高分岐ポリカーボネートを添加せずに製造された分散液よりも、高い固体含分で水性ポリマー分散液を製造する可能性、
・エマルジョン重合の前、及び/又はその間に添加することにより、水性ポリマー分散液Pd)中に含まれるエマルジョンポリマーのガラス転移点Tgを制御する可能性、
・特にエマルジョン重合後の添加により、最低塗膜形成温度MFTを低下させる可能性、
・分散液のVOC含分を上昇させる添加剤を、少なくとも一部使わないですむ。
【0039】
被覆の硬化プロセス、及び得られる最終硬度に対する適切な測定値は、Koenigによる振り子硬度(DIN 53157により測定)である。硬化の過程で、例えば被覆の適用後1時間から被覆適用後28日の幅で、ペンデル硬度を繰り返し測定することにより、起こった硬化プロセスと、様々な被覆の硬化性とを比較することができる。被覆の硬化プロセスと得られる最終硬度に対する別の適切な測定値は、鉛筆硬度である。適切なのはまた、動的機械特性熱分析(DMTA)である。このために、材料試料に対してくぼめるように往復する力を加え、材料の変形を測定する。この際に、加えた力についての振幅、及び相移行を測定する。この測定値から、試料の粘弾特性が、時間と温度の積として測定できる。これはガラス転移点Tgの他に、これは材料の弾性モジュールEと剪断モジュールGである。
【0040】
以下で「高分岐ポリマー」という記載は、別記しない限り、本発明による高分岐ポリカーボネートと、本発明により使用される高分岐ポリカーボネートを言い、これらは炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1個有するものであり、また、さらに炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1個導入する必要がある高分岐ポリカーボネート中間生成物のことも指す。
【0041】
本発明の範囲で"高分岐ポリマー"という表現は、きわめて一般的に、著しい分岐構造と高い官能性を特徴とするポリマーをいう。高分岐ポリマーの一般的な定義に関しては、P.J.Flory,J.Am.Chem.Soc.1952,74,2718およびH.Frey et al.,Chem.Eur.J.2000,6,Nr.14,2499も引用される(ここでは「超分岐ポリマー」という定義で呼ばれている点で異なる)。
【0042】
本発明の意味合いにおいてこの分岐ポリマーに該当するのは、星型ポリマー、デンドリマー、アルボロール(Arborol)、及びこれらとは異なる高分岐ポリマー、例えば超分岐ポリマーである。
【0043】
"星形ポリマー"は、中心から3つ以上の鎖が出ているポリマーである。ここで、その中心は単独の原子または原子群であり得る。
【0044】
デンドリマーは構造的に星形ポリマーから誘導され、ここで、個々の鎖はそれぞれ星状に分岐している。このデンドリマーは小さい分子から出発して、継続的に繰り返される一連の反応によって生じ、ここで、常により高い分岐が生じ、それらの末端にはまたさらなる分岐のための出発点である官能基がそれぞれ存在する。そうしてモノマー末端基の数は各反応工程とともに指数的に増加し、ここで理想的な場合、末端に球形の樹形構造(Baumstruktur)が生じる。デンドリマー特有の特徴は、その構造を得るために実施される反応工程(世代)の数である。その一様な構造が原因で(理想的な場合には、すべての枝が、まったく同じ数のモノマー単位を有する)、デンドリマーは実質的に単分散性である、すなわち、通常は規定の分子量を有する。
【0045】
分子(例えば構造的に一様な高分岐ポリマー)は、以下でも統一してデンドリマーと呼ぶ。
【0046】
「超分岐ポリマー」とは、本発明の範囲では、前述のデンドリマーとは異なり、分枝状の、また構造的に一様ではない、高分岐ポリマーである。これらの高分岐ポリマーは、様々な長さの側鎖及び/又は側枝、分枝、並びに分子量分布(多分散性)を有する。高分岐ポリマーは好適には、1分子あたりの分枝度(Degree of Branching、DB)が10〜100%、好ましくは10〜90%、特に10〜80%である。ここで分枝度DBは、
DB(%)=(T+Z)/(T+Z+L)×100
と定義され、式中、
Tは末端に結合されたモノマー単位の平均数であり、
Zは、分枝を形成するモノマー単位の平均数であり、
Lは線状に結合されたモノマー単位の平均数である。
【0047】
デンドリマーは一般的に、分枝度DBが少なくとも99%、特に99.9〜100%である。
【0048】
超分岐ポリマーは好適には、分枝度DBが10〜95%、好ましくは25〜90%、特に30〜80%である。
【0049】
有利な応用技術特性を達成するためには、構造的に、また分子的に統一されたデンドリマーも、超分岐ポリマーも使用することができる。しかしながら超分岐ポリマーは通常、比較的簡単に、ひいては経済的にデンドリマーとして製造できる。よって例えば、モノ分散性デンドリマーの製造は、各結合工程で保護基を導入し、再度除去しなければならないこと、及び新たな各成長段階の前に、強力な精製処理が必要なことによって複雑化し、このためデンドリマーは通常、実験室レベルでしか製造できない。
【0050】
本発明による、また本発明により使用される高分岐ポリカーボネートは好ましくは、超分岐ポリカーボネートである。
【0051】
本願発明の意味合いにおいてポリカーボネートという言葉は、カーボネート基の他にさらなる官能基を有する化合物も包含し、例えばポリ(エステルカーボネート)、ポリ(エーテルカーボネート)、ポリ(エーテルエステルカーボネート)などである。しかしながら本発明にとって重要なのは、カーボネート基(−O−(C=O)−O−)の存在である。
【0052】
本発明による、また本発明により使用される高分岐ポリカーボネート(炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1個有するもの)は好ましくは、質量平均分子量M
wが、約500〜100,000g/mol、好ましくは750〜75,000g/mol、特に1,000〜50,000の範囲である。ここで分子量測定はゲル透過クロマトグラフィーによって、ポリメチルメタクリレート標準で行うことができる。
【0053】
高分岐ポリカーボネートの添加は、Pd)を製造するためのラジカルエマルジョン重合の前、その間、及び/又はその後に、行うことができる。特別な態様は、適切な影響に特定された応用技術特性も考慮して、以下に記載する通りである。
【0054】
本発明の範囲内で、アルキルという表現は、直鎖及び分枝鎖のアルキル基を含む。適切な短鎖アルキル基は例えば、直鎖又は分子鎖のC
1〜C
7アルキル基、好ましくはC
1〜C
6アルキル基、特に好ましくはC
1〜C
4アルキル基である。アルキル基に該当するのは特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、2−エチルペンチル、1−プロピルブチルなどである。
【0055】
適切な長鎖のC
8〜C
32アルキル基は、直鎖状、及び分枝鎖状のアルキル基である。ここで好ましいのは、例えば天然若しくは合成の脂肪酸と脂肪アルコール中に、またオキソアルコール中にも存在する、主として線状のアルキル基である。これに該当するのは例えば、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−ノナデシルなどである。アルキルという表現には、非置換のアルキル基と、置換されたアルキル基が含まれる。
【0056】
アルキルについての上記説明は、アリールアルキル中のアルキル部分にも当てはまる。好ましいアリールアルキル基は、ベンジルとフェニルエチルである。
【0057】
本願発明の範囲においてC
8〜C
32アルケニルは、直鎖及び分枝鎖のアルケニル基であり、当該アルケニル基は、一価、二価、又は多価不飽和であり得る。これは好適には、C
10〜C
20アルケニルである。アルケニルという表現は、非置換のアルケニル基と、置換されたアルケニル基を含むものである。これは特に、例えば天然または合成の脂肪酸および脂肪アルコールならびにオキソアルコール中にも存在する、主として線状のアルケニル基である。これに該当するのは特に、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、リノリル、リノレニル、エレオステアリル、及びオレイル(9−オクタデセニル)である。
【0058】
本願発明においてアルキレンという表現は、炭素数が1〜7の直鎖又は分枝鎖アルカンジイル基を表し、これは例えば、メチレン、1,2−エチレン、1,3−プロピレンなどである。
【0059】
シクロアルキルは好適には、C
4〜C
8シクロアルキル、例えばシクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、又はシクロオクチルを表す。
【0060】
本発明の範囲においてアリールという表現は、非置換又は置換された、単環又は多環の(ein- oder mehr kernig)芳香族炭化水素基を含むものである。このアリールという表現は好ましくは、フェニル、トルイル、キシリル、メスチリル、ジュリル(Duryl)、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、又はフェナントレニルであり、特に好ましくはフェニル又はナフチルであり、ここでこれらのアリール基が置換されている場合、当該アリール基は1個、2個、3個、4個、又は5個の置換基を、好ましくは1個、2個、又は3個の置換基を有することができる。
【0061】
アルキル基を有する高分岐ポリカーボネートの製造
炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC
8〜C
32アルキレン基を少なくとも1個有する高分岐ポリカーボネートを製造するために好ましいのは、少なくとも1種の有機カーボネート(A)を、官能性が3以上の少なくとも1種のアルコール(B)及び少なくとも1種の化合物(C)と反応させる方法であって、
炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC
8〜C
32アルケニル基、及び
ヒドロキシ基又はカーボネート基に対して反応性の官能基
を有するものである。ここで(C)との反応は、(A)と(B)との反応の間、及び/又はその後に行うことができる。
【0062】
成分(A)
好ましい有機カーボネート(A)は、一般式R
aOC(=O)OR
bであり、ここでR
aとR
bはそれぞれ互いに独立して、直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基、アリールアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基から選択され、ここでR
aとR
bはまた、基−OC(=O)O−(この基にR
aとR
bが結合している)とともに環状カーボネートであり得る。
【0063】
基R
aとR
bは、同じ意味であっても、異なる意味であってもよい。特別な態様では、R
aとR
bが同一の意味を有する。R
aとR
bは好適には、冒頭で定義した通り、C
1〜C
20アルキル、C
5〜C
7シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、及びC
6〜C
10アリール、C
1〜C
20アルキルから選択されている。R
aとR
bはまた、ともにC
2〜C
6アルキレンであり得る。特に好ましくは、R
aとR
bが、直鎖状及び分枝鎖状のC
1〜C
5アルキルから選択されている。
【0064】
ジアルキルカーボネート又はジアリールカーボネート(A)は例えば、脂肪族、芳香脂肪族又は芳香族のアルコールの反応から、好適にはモノアルコールとホスゲンとの反応から製造できる。前記カーボネートはさらに、COを用いて、貴金属、酸素又はNO
xの存在下、アルコール又はフェノールを酸化カルボニル化することにより製造できる。ジアリールカーボネート又はジアルキルカーボネートの製造法については、"Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry", 第6版, 2000 Electronic Release, Verlag Wiley-VCHも参照のこと。
【0065】
適切なカーボネート(A)の例は、脂肪族、又は芳香族のカーボネート、例えばエチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート又は1,3−プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ジキシリルカーボネート、ジナフチルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、ジデシルカーボネート、及びジドデシルカーボネートを含む。
【0066】
好ましくは、脂肪族カーボネート(A)、殊に基が1〜5個のC原子を有する脂肪族カーボネート、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、又はジイソブチルカーボネートを使用する。
【0067】
成分(B)
有機カーボネートは、少なくとも3個のOH基を有する少なくとも1種の脂肪族、環式脂肪族、又は芳香族アルコール(B)、又は2種以上の異なるアルコール(B)の混合物と反応させる。
【0068】
少なくとも3個のOH基を有するアルコールの例は、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミン、トリス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミン、ペンタエリトリット、ビス(トリメチロールプロパン)、ジ(ペンタエリトリット)、ジグリセリン、トリグリセリン、若しくはオリゴグリセリン、又は糖、例えばグルコース、三官能性若しくは高官能性のアルコールとエチレンオキシドとをベースとする三官能性若しくは高官能性ポリエーテルオール、プロピレンオキシド、又はブチレンオキシドである。ここで、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリトリット、並びにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドをベースとするこれらのポリエーテルオール(少なくとも三官能性のアルコール1molあたり、1〜20molのアルキレンオキシドと反応されたもの)が、特に好ましい。
【0069】
高分岐ポリカーボネートを製造するためにはさらにまた、上述のアルコール(B)少なくとも1種、及び以下に記載する様々なアルコールB’のアルコール(C)を用いることができる。アルコールB’は、単官能性アルコール、二官能性のアルコール、及びこれらの混合物から選択されている。適切な単官能性アルコールは、C
4〜C
20アルカノール、例えばn−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、シクロアルカノール、例えばシクロヘキサノール、芳香族アルコール、例えばフェノール、単官能性ポリエーテルオール、及びこれらの混合物である。適切な二官能性アルコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及び、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−、1,3−、及び1,4−ブタンジオール、1,2−、1,3−、及び1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、二官能性ポリエーテルオール、及びこれらの混合物である。
【0070】
好ましくは、使用する全てのアルコールBの平均OH官能性、及び存在する場合にはB’が、合わせて2より大きい。
【0071】
成分(C)
化合物(C)は、C
8〜C
32アルケニル基を有し、当該アルケニル基は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合、及びヒドロキシ基若しくはカーボネート基に対して反応性の官能基を有するものである。
【0072】
ヒドロキシ基に対して反応性の官能基は好適には、カルボン酸基、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、及びカルボン酸エステルから選択されている。ハロゲン化物として好ましいのは、塩化物である。エステルとして好ましいのは、メチルエーテル、エチルエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリド、並びにこれらの混合物である。
【0073】
カーボネート基に対して反応性の官能基は好適には、ヒドロキシ基、チオアルコール、及び第一級及び/又は第二級アミンから選択されている。
【0074】
好ましい化合物(C)は、炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC
8〜C
32モノカルボン酸、又はその誘導体である。適切な誘導体は、無水物、ハロゲン化物、及びエステルである。ハロゲン化物として好ましいのは、塩化物である。エステルとして好ましいのは、メチルエーテル、エチルエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリド、並びにこれらの混合物である。
【0075】
モノカルボン酸(C)は直鎖状、分枝鎖状、脂環式、又は芳香族の炭化水素基を有することができる。好ましいのは、炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC
8〜C
32アルケニル基を有する直鎖状(非分枝鎖状)のモノカルボン酸である。好ましいのは、C
10〜C
22モノカルボン酸である。
【0076】
特に好ましくは化合物(C)として、炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC
8〜C
32アルケニル基を有する少なくとも1種のモノカルボン酸を使用する。
【0077】
特別な実施態様では化合物(C)として、分離された(非共役型)炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ有するC
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1個有する、少なくとも1種のモノカルボン酸を使用する。
【0078】
特に好ましくは、少なくともC
8〜C
32アルケニル基の一部に、二重結合が相互に相対的に1,4位又は1,4,7位に存在する。すなわちアルケニル基は、二重結合を相互に相対的に1,4位又は1,4,7位に有する脂肪酸から、部分的に、又は完全に誘導される。本願の範囲では、1,4位及び1,4,7位によって、二重結合の相対的な位置を相互に記載する。カルボキシ基から数える。カルボキシ基に対して最も近くにある、第一の二重結合の二重結合炭素原子に、番号1を振る。カルボキシ基に対して最も近くにある第二の二重結合の炭素原子がこれに続き、存在する場合には、第三の二重結合が続く。α−リノール酸(C
17H
29COOH)は、二重結合を絶対位9、12、及び15に有し、このためモノカルボン酸の例は、1,4,7位に二重結合を有する。
【0079】
それからさらに、少なくとも1種のさらなるモノカルボン酸(C)を使用することができ、当該モノカルボン酸(C)は、共役型炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ有するC
8〜C
32アルケニル基を有するものである。こうして、本発明による高分岐ポリカーボネート、又は本発明による高分岐ポリカーボネートを含有する被覆剤を迅速に硬化させることができる。
【0080】
モノカルボン酸(C)として好ましいのは、天然由来の脂肪酸、及び脂肪酸混合物である。脂肪酸は天然に、油又は脂肪として、トリグリセリドの形で存在する。脂肪酸は、本発明によるポリカーボネートを製造するために、遊離脂肪酸又は誘導体の形で、特にモノグリセリド、ジグリセリド、又はトリグリセリドの形で、使用できる。
【0081】
モノカルボン酸(C)は好ましくは、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アマニ油由来の脂肪酸、大豆油由来の脂肪酸、ヒマシ油由来の脂肪酸、魚油由来の脂肪酸、ヤシ油由来の脂肪酸、パーム核油由来の脂肪酸、ナタネ油由来の脂肪酸、オイチシカ油由来の脂肪酸、木材油(桐油)由来の脂肪酸、リシン油由来の脂肪酸、トール油由来の脂肪酸、ケシ油由来の脂肪酸、ナッツ油由来の脂肪酸、大麻油由来の脂肪酸、及びこれらの誘導体と混合物である。適切な誘導体は、無水物、ハロゲン化物、モノグリセリド、ジグリセリド、及び特にトリグリセリドである。
【0082】
好ましいモノカルボン酸誘導体(C)は、アマニ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、紅花油、ヒマシ油、魚油、ヤシ油、パーム核油、ナタネ油、オイチシカ油、木材油(桐油)、大麻油、及びこれらの混合物である。
【0083】
本発明によるポリカーボネートを製造するために、モノカルボン酸(C)若しくはその無水物、ハロゲン化物、又は一価アルコールとのエステルを使用し、ヒドロキシ基含有高分岐出発ポリカーボネート(P)のOH基1molに対して、好適には10〜100mol%の量、特に好適には30〜100mol%の量、特に50〜100mol%の量で使用する。
【0084】
本発明によるポリカーボネートを製造するために、モノカルボン酸ジグリセリド(C)を、ヒドロキシ基含有高分岐出発ポリカーボネート(P)のOH基1molに対して、好適には5〜50mol%の量、特に好適には15〜50mol%の量、特に25〜50mol%の量で使用する。
【0085】
本発明によるポリカーボネートを製造するために、モノカルボン酸トリグリセリドを、ヒドロキシ基含有高分岐出発ポリカーボネート(P)のOH基1molに対して、好適には3.4〜33mol%の量、特に好適には10〜33mol%の量、特に16.7〜33mol%の量で使用する。
【0086】
さらなる好ましい化合物(C)は、炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC
8〜C
32モノアルコールである。特に好ましくは化合物(C)として、炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ有するC
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1個有する少なくとも1種のモノアルコールを使用する。特別な実施態様では化合物(C)として、分離された(非共役型)炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ有するC
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1個有する、少なくとも1種のモノアルコールを使用する。特に好ましくは、少なくともC
8〜C
32アルケニル基の一部に、二重結合が相互に相対的に1,4位又は1,4,7位に存在する。それからさらに、少なくとも1種のさらなるモノアルコール(C)を使用することができ、当該モノアルコール(C)は、共役型炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ有するC
8〜C
32アルケニル基を有するものである。こうして、本発明による高分岐ポリカーボネート、又は本発明による高分岐ポリカーボネートを含有する被覆剤を迅速に硬化させることができる。
【0087】
モノアルコール(C)として好ましいのは、天然に存在する脂肪酸及び脂肪酸混合物のカルボキシ基の反応によって得られるものである。これについては、モノカルボン酸(C)で先に挙げた脂肪酸及び脂肪酸混合物を、全範囲で引用する。不飽和脂肪アルコールは、広く普及した界面活性剤であり、市販で手に入る。その製造は例えば、不飽和脂肪酸から、特に脂肪酸メチルエステルから出発して行われる。これらは、トリグリセリドから通常の方法で、例えばグリセリンと脂肪酸への分裂によって、及び引き続いたメタノールによるエステル化によって得られる。こうして得られるメチルエステルは例えば、クロム又は亜鉛含有混合触媒の存在下で選択的に水素化できる(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Verlag Chemie, Weinheim, 5. ed. on CD-ROM (1997), "Fatty Alcohols, 3. Unsaturated Fatty Alcohols")。代替的にはまた、ブーボーブラン法による、カルボキシ基とナトリウムとの選択的な反応も可能である。
【0088】
成分(C)として好ましい不飽和脂肪アルコールは、パルモレイルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、ペトロセリニルアルコール、リノリルアルコール、リノレニルアルコール、リシノールアルコール、12−ヒドロキシステアリルアルコール、ガドレイルアルコール、エルシルアルコール、及びこれらの混合物から選択されている。実際にはまた、純粋な不飽和脂肪アルコールの代わりに、飽和同族体との工業的な混合物も使用できる。この「主に不飽和の」脂肪アルコールは例えば、ヨウ素価が50〜150の範囲である。ここで「主に不飽和」という用語は、脂肪アルコール混合物の少なくとも50mol%が、不飽和同族体であると理解されるべきである。不飽和脂肪アルコールの含分が50mol%未満(10〜49.9mol%の範囲)の脂肪アルコール混合物の使用もまた、適切である。この際に、いわゆる「半乾燥系」が生成する。
【0089】
さらなる好ましい化合物(C)は、炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC
8〜C
32モノアミンである。特に好ましくは化合物(C)として、炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ有するC
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1個有する少なくとも1種のモノカルボン酸を使用する。特別な実施態様では化合物(C)として、分離された(非共役型)炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ有するC
8〜C
32アルケニル基を有する、少なくとも1種のモノアミンを使用する。特に好ましくは、少なくともC
8〜C
32アルケニル基の一部に、二重結合が相互に相対的に1,4位又は1,4,7位に存在する。それからさらに、少なくとも1種のさらなるモノアミン(C)を使用することができ、当該モノアミン(C)は、共役型炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ有するC
8〜C
32アルケニル基を有するものである。こうして、本発明による高分岐ポリカーボネート、又は本発明による高分岐ポリカーボネートを含有する被覆剤を迅速に硬化させることができる。モノアミン(C)として好ましいのは、天然に存在する相応する脂肪酸及び脂肪酸混合物から得られるものである。これについては、モノカルボン酸(C)で先に挙げた脂肪酸及び脂肪酸混合物を、全範囲で引用する。不飽和脂肪アミンは、市販で得られる。その製造は例えば、不飽和カルボン酸ニトリルから出発して、適切な触媒を用いた還元により行う。カルボン酸ニトリルは、カルボン酸とアンモニアから水素化触媒の存在下で得られる。US 4,234,509は、相応するトリグリセリドから、特に天然油と脂肪から、脂肪酸ニトリルとグリセリンを製造する方法を記載している。不飽和ニトリルのニトリル基の選択的な還元は、例えばUS 4,845,298に記載の方法によって、ニッケル触媒及びカルボン酸アミドの存在下で水素と反応させる。
【0090】
成分(C)として好ましい不飽和脂肪アミンは、パルモレイルアミン、オレイルアミン、エライジルアミン、ペトロセリニルアミン、リノリルアミン、リノレニルアミン、リシノールアミン、1,2−ヒドロキシステアリルアミン、ガドレイルアミン、エルシルアミン、及びこれらの混合物から選択される。実際にはまた、純粋な不飽和脂肪アミンの代わりに、飽和同族体との工業的な混合物も使用できる。
【0091】
好ましいのは、炭素−炭素二重結合を少なくとも1個有するC
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1個高分岐ポリカーボネートの製造方法であって、当該製造方法では、
少なくとも1種の有機カーボネート(A)を、官能性が3以上の少なくとも1種のアルコール(B)と反応させて、アルコールを脱離させながら縮合生成物(K)にし、
当該縮合生成物(K)を、さらにアルコールを脱離させながら反応させて、高分岐ポリカーボネート(P)にし、ここで脱離したアルコールの少なくとも一部を、反応混合物から除去し、
ここで、工程b)における反応のために少なくとも1種の化合物(C)を使用し、当該化合物(C)は、炭素−炭素二重結合を少なくとも1個有するC
8〜C
32アルケニル基と、ヒドロキシ基若しくはカーボネート基に対して反応性の官能基を有し、かつ/又は高分岐ポリカーボネート(P)を、工程b)に連続して、少なくとも1種の化合物(C)と反応させる。
【0092】
工程a)及びb)は好ましくは、ワンポット合成(Eintopfsynthese)として、すなわち、縮合生成物(K)の単離無しで行う。
【0093】
工程b)における反応は、さらに化合物B)及びC)とは異なる単官能性及び/又は二官能性のアルコールを使用することができる(B’と呼ぶ)。
【0094】
少なくとも1種のアルコール(B)との、及び存在する場合にはB’とのカーボネート(A)の反応は、エステル交換で行われる。この際に、あらゆる縮合工程によって、式R−OC(=O)OR
bの使用される有機カーボネート(A)のアルコキシエステルに相応するアルコールR
a−OH、又はR
b−OHが得られる。
【0095】
放出されるアルコールを留去すべき場合、反応の際に、沸点が140℃未満のアルコールR
a−OH又はR
b−OHを放出するカーボネート(A)を用いることが有利である。
【0096】
前述の方法によれば、カーボネート(A)と、少なくとも1種のアルコール(B)との反応によって、及び存在する場合にはB’との反応によって、高分岐ポリカーボネート(P)が形成され、当該ポリカーボネート(P)は、(化合物(C)との反応無しで)カーボネート基、及び任意で少なくとも1種のアルコール性ヒドロキシ基若しくはヒドロキシ基、及び任意で少なくとも1種の有機カーボネート基を有するものである。炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC
8〜C
32アルケニル基を有する高分岐ポリカーボネートの変性は、少なくとも1種の化合物(C)との反応によって行われる。
【0097】
本発明の方法の特別な態様では、カーボネート(A)と、少なくとも1種のアルコール(B)との反応によって、及び存在する場合にはB’との反応によって、アルコール性ヒドロキシ基を少なくとも1個有する高分岐ポリカーボネート(P)が形成される。このポリカーボネート(P)を引き続き、炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC
8〜C
32モノカルボン酸から選択される化合物(C)と、又はその誘導体とさらに反応させる。
【0098】
ヒドロキシ基を有する高分岐ポリカーボネート(P)を製造するための適切な方法は、原則的に公知であり、例えば、WO 2005/026234、及びWO 2006/089940に記載されており、これらについては、ここでその全範囲を引用したものとする。これらの高分岐ポリカーボネート(P)は、アルコール性ヒドロキシ基を少なくとも1個有する。ここで「アルコール性ヒドロキシ基」という用語には、芳香族化合物に結合されたOH基が含まれる。好適には工程b)で得られるポリカーボネート(P)は、少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個、特に少なくとも6個のヒドロキシ基を有する。ヒドロキシ基の最大数は通常、重要ではない。しかしながらその最大数は、200を越えない。工程a)で用意したポリカーボネートは4〜100個、特に5〜80個、特には6〜50個のアルコール性ヒドロキシ基を有する。
【0099】
工程b)で得られるヒドロキシ基含有高分岐ポリカーボネート(P)は好適には、OH数(DIN 53240により測定)が、ポリマー1gあたり少なくとも20mgKOH、特に好適にはポリマー1gあたり少なくとも50mgKOH、極めて特に好適にはポリマー1gあたり少なくとも100mgKOHである。
【0100】
工程b)で用意されたヒドロキシ基含有高分岐ポリカーボネート(P)は、アルコール性ヒドロキシ基、及び合成の際に生じるカーボネート基の他に、さらなる官能基を有することができる。特別な実施態様において、工程b)で用意されたポリカーボネート(P)は、少なくとも1個、特に少なくとも2個、特には少なくとも4個のさらなる官能基を有する。さらなる官能基の最大数は通常、重要ではない。しかしながらこの最大数は通常、200を越えず、特に1〜100、特には2〜80、さらには6〜50である。
【0101】
工程b)で用意されるヒドロキシ基含有高分岐出発ポリカーボネートを有することができるさらなる(任意の)官能基は、好適には−COOH、−COOR
x、−CONH
2、−CONHR、NH
2、−NHR、又はSO
3H(ただし、R
x=H、アルキル、シクロアルキル、又はアリール)から相互に独立して選択される。
【0102】
工程a)及びb)
工程a)で得られる非ポリマー性縮合生成物(K)は、好適には単離せず、本発明によれば反応して好ましくは分子間で高官能性重縮合生成物(P)を形成する。以下、これを重縮合生成物(P)と呼ぶ。
【0103】
工程a)及びb)における反応は、同じ温度であっても、異なる温度であってもよい。
【0104】
工程b)における温度は例えば、縮合反応を完全にするため、工程a)における温度より高くてもよい。段階的、又は連続的な温度変更が可能である。
【0105】
工程a)における反応は好適には、0〜250℃の範囲、特に好ましくは60〜200℃の範囲で行う。
【0106】
工程b)における反応は好適には、0〜250℃の範囲、特に好ましくは60〜200℃の範囲で行う。
【0107】
この反応は好適には、バルクで、又は溶液で行う。このことは、工程a)及び工程b)について一般的に当てはまる。ここで一般的には、それぞれの出発原料に対して不活性なあらゆる溶剤が使用できる。好ましくは、有機溶剤、例えばデカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、又はソルベントナフサを使用する。
【0108】
好ましい実施態様において、縮合反応はバルクで実施する。反応の際に放出される脂肪族又は芳香族のアルコール(R
a−OH又はR
b−OH)は、反応を促進させるため、反応混合物から蒸留によって除去できる。蒸留によるアルコール除去は好ましくは、工程b)で行う。この蒸留は任意で、減圧下で行うことができる。
【0109】
工程b)における反応は、好適には0.1mbar〜20barの圧力範囲、特に好適には1mbar〜5barの圧力範囲で行う。
【0110】
工程a)、b)における反応、及び工程b)に引き続く反応は、このために通常の反応器又は反応器カスケードで行うことができる。これらの反応はバッチ法、半バッチ法、又は連続的に行うことができる。
【0111】
反応を促進させるために、触媒又は触媒混合物を添加することができる。適切な触媒は、エステル化反応又はエステル交換反応を触媒する化合物であり、それは例えばアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、好適にはナトリウム、カリウム若しくはセシウムの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、第三級アミン、グアニジン、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、アルミニウム、スズ、亜鉛、チタン、ジルコニウム、又はビスマスの有機化合物、さらに例えばDE 10138216又はDE 10147712中に記載されたようないわゆる複合金属シアン化物(DMC)触媒である。
【0112】
好適には触媒として、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、チタンテトラブチレート、チタンテトライソプロピレート、ジブチルスズ酸化物、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジオクタン酸スズ、ジルコンアセチルアセトネート、又はこれらの混合物を使用する。
【0113】
触媒の添加は一般的に、使用するアルコール又はアルコール混合物の量に対して50〜10,000質量ppm、好ましくは100〜5,000質量ppmの量で行なう。
【0114】
工程a)、b)で、及び工程b)に引き続いて用いられる触媒は、同じであっても、異なっていてもよい。
【0115】
適切な触媒の添加、また適切な温度の選択によって、分子間重縮合反応を制御することもできる。
【0116】
さらには、出発成分の組成によって、及び反応時間及び/又は反応率によって、ポリマー(P)の平均分子量を調整することができる。この際、実際の反応を測定するためには例えば、形成されたアルコールを反応混合物から連続的に除去し、この除去されたアルコール量を測定することができる。工程b)における反応は好ましくは、完全反応の際に得られるアルコール量の20〜90%、好適には30〜80%が反応混合物から除去された後に中断する。
【0117】
分子間重縮合反応を中断するためには、様々な手段が存在する。例えば、反応が停止し、かつ生成物(K)又は高分岐出発ポリカーボネートが貯蔵安定性であるような範囲に、温度を低下させることができる。前述のように、このようにして用意されたヒドロキシ基含有高分岐出発ポリカーボネートは、所望の場合、工程b)に引き続く更なる反応前に単離し、後処理及び/又は生成することができる。好ましくは、反応中断後に得られる反応混合物を、単離無しで工程b)に引き続き、さらなる反応のために用いる。工程a)、b)、及び工程b)に引き続く工程は、好ましくは1容器反応で行う。このために、冷却した反応混合物に、炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有する少なくとも1種のC
8〜C
32モノカルボン酸を加え、更なる反応を行う。
【0118】
高温で製造された縮合生成物(K)又は重縮合生成物(P)は、室温で通常は、比較的長い時間にわたり安定的である。よって、前述の方法で用意したヒドロキシ基含有高分岐ポリカーボネート(P)(工程b))は、所望の場合には、引き続く更なる反応の前に単離し、当業者に公知の方法によって後処理及び/又は精製にかけることができる。カーボネート(A)とアルコール(B)(任意でさらなる成分)との反応の反応混合物中に含まれるヒドロキシ基含有高分岐ポリカーボネート(P)は、単離無しで、アルケニル基導入のためのさらなる反応に用いることができる。工程a)、b)、及び工程b)に引き続く工程は、好ましい態様においては1容器反応で行うことができる。
【0119】
縮合生成物(K)の性質に基づき、縮合反応から、分枝鎖を有するが、架橋を有しない異なる構造を有する重縮合生成物(P)(すなわち、ヒドロキシ基含有高分岐ポリカーボネート)を生成させることができる。ここで重縮合生成物(P)のヒドロキシ基の数は、使用された縮合生成物(K)の状態及び重縮合度から生じる。
【0120】
工程b)における本発明によるポリカーボネートの製造は、エステル化によって公知の方法で行うことができる。適切な方法は例えば、「U II-mann's Enzyklopaedie der technischen Chemie」 Verlag Chemie Weinheim, 4. Auflage (1980), Band 19, 61pp、又はH. Wagner und H. F. Sarx, 「Lackkunstharze」 Carl Hanser Verlag, Muenchen (1971)、p. 86-52に詳細に記載されている。
【0121】
工程b)における反応は好適には、不活性ガス(例えば窒素、ヘリウム、又はアルゴン)の存在下で行う。
【0122】
工程b)に引き続く反応は、任意で通常のエステル化触媒の触媒量の存在下で、行うことができる。これに該当するのは例えば、酸素、塩基、これらの塩、又は遷移金属化合物である。適切なエステル化触媒は前述のものであり、これについてはここでその全範囲を引用する。エステル化触媒として適切なのはまた、リン(I)化合物であり、これは例えばリン酸(亜リン酸)又は燐(I)酸の塩(ホスフィン酸塩、次亜リン酸塩)である。エステル化触媒として適切なのはさらに、チタン酸塩、好ましくはテトラアルコキシオルトチタネート、特にテトライソプロピルチタネート、及びテトラブチルチタネートである。
【0123】
工程b)に引き続く反応のための触媒量は一般的に、使用するポリカーボネートとモノカルボン酸の全体量に対して、50〜10,000質量ppm、好ましくは100〜5,000ppmである。
【0124】
工程b)に引き続く反応は、好ましくは100〜300℃の範囲の温度で、特に好ましくは120〜260℃の範囲の温度で行う。
【0125】
工程b)に引き続く反応はまた、連続的に、又は段階的に温度を上昇させて行うこともできる。
【0126】
工程b)に引き続く反応で形成される低分子縮合生成物(水又はエステル変換時のアルコール)は好適には、反応混合物から連続的に除去する。低分子量の縮合生成物の除去は、好適には蒸留により行う。付加的に、連行剤(例えばトルエン又はキシレン)を使用できる。
【0127】
本発明によるポリカーボネートのヒドロキシ数及び酸価の制御は、使用する出発原料の種類(特に、そのヒドロキシ当量、及びカルボン酸当量)、使用する出発原料、及び/又はエステル化の反応時間によって、行うことができる。よって重縮合は通常、分析制御下で行う場合、ヒドロキシ数及び酸価について目標値が得られるまで行う。本発明によるポリカーボネートの分子量は分析により、例えばGPCによって測定できる。
【0128】
本発明の対象はまた、前記方法によって得られるポリカーボネートである。
【0129】
本発明による高分岐ポリカーボネート、及び本発明により使用される高分岐ポリカーボネートは好適には、数平均分子量M
nが、700〜50,000g/molである。
【0130】
本発明による高分岐ポリカーボネート、及び本発明により使用される高分岐ポリカーボネートは好適には、質量平均分子量M
wが、1,000〜100,000g/molである。
【0131】
本発明による高分岐ポリカーボネート、及び本発明により使用される高分岐ポリカーボネートは好適には酸価(DIN 53402、ISO 21 14により測定)が、ポリマー1gあたり0〜100mgKOHの範囲、特に好適には0〜50mgKOHの範囲である。
【0132】
本発明による高分岐ポリカーボネート、及び本発明により使用される高分岐ポリカーボネートは好適には酸価(DIN 53240により測定)が、ポリマー1gあたり少なくとも20mgKOH、特に好適には少なくとも50mgKOH、特に好適には少なくとも100mgKOHである。
【0133】
別の態様において、本発明による高分岐ポリカーボネート、及び本発明により使用される高分岐ポリカーボネートは、既に反応によって得られる官能基の他に、更なる官能基を有することができる。ここでこの官能化は、工程b)、工程b)に引き続く成分(C)との反応の間、又はそれに引き続いて行うことができる。
【0134】
工程b)の前又はその間に、ヒドロキシル基又はカーボネート基の他に、他の官能基又は官能性要素を有する成分を添加すると、ランダムに分布された、カーボネート基又はヒドロキシル基とは異なる官能性を有するポリカーボネートポリマーが得られる。
【0135】
この種の効果は、例えばヒドロキシル基、カーボネート基又はカルバモイル基の他に、他の官能基又は官能性要素、例えばメルカプト基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、若しくは第三級アミノ基、エーテル基、カルボン酸の誘導体、スルホン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、アリール基又は長鎖アルキル基を有する化合物の添加によって、重縮合の間に達成することができる。カルバメート基による変性のためには、例えばエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、2−(ブチルアミノ)エタノール、2−(シクロヘキシルアミノ)エタノール、2−アミノ−1−ブタノール、2−(2′−アミノエトキシ)エタノール、若しくはアンモニアの高級アルコキシル化生成物、4−ヒドロキシピペリジン、1−ヒドロキシエチルピペラジン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、又はイソホロンジアミンを使用することができる。
【0136】
メルカプト基による変性のためには例えば、メルカプトエタノール又はチオグリセリンが使用できる。第三級アミノ基は、例えばN−メチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、又はN,N−ジメチルエタノールアミンを組み込むことによって製造することができる。エーテル基は例えば、二官能価ポリエーテロール又は多官能価ポリエーテロールを縮合導入することによって生成できる。長鎖アルカンジオールとの反応によって、長鎖アルキル基を導入することができ、アルキルジイソシアネート又はアリールジイソシアネートとの反応は、アルキル基、アリール基、及びウレタン基を有するポリカーボネートを生成させる。
【0137】
事後的な官能化は、工程b)で、又は工程b)に引き続いて得られた高分岐ポリカーボネートを、適切な官能化試薬と反応させることにより得られ、当該官能化試薬は、ポリカーボネートのOH基及び/又はカーボネート基と反応することができるものである。しかしながらこの際、本発明による高分岐ポリカーボネートが、炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1種有することが前提となる(先に定義の通り)。
【0138】
ヒドロキシ基は例えば、酸基又はイソシアネート基を含有する分子(工程b)で使用される、炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC
8〜C
32モノカルボン酸又はその誘導体とは異なるもの)の添加によって、変性できる。酸基を含有するポリカーボネートは例えば、環状無水物との反応によって得られる。
【0139】
更に、ヒドロキシル基を含有する高官能性のポリカーボネートは、アルキレンオキシド(例えば酸化エチレン、酸化プロピレン、若しくは酸化ブチレン)との反応によっても、高官能性のポリカーボネート−ポリエーテルポリオールに変換できる。
【0140】
ポリマー分散液Pd)
前述の通り本発明の対象は、エマルジョンポリマーが少なくとも1種のα,β−不飽和モノマーM)、及び少なくとも1種の高分岐ポリカーボネートを含有する水性分散液Pd)であって、当該ポリカーボネートは、炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するC
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1種有するものである。適切かつ好ましい高分岐ポリカーボネートについては、先の説明を全範囲で引用する。
【0141】
水性ポリマー分散液Pd)は好適には、本発明による高分岐ポリカーボネートを少なくとも1種、水性ポリマー分散液Pd)の全物質含分に対して(すなわち、本発明による高分岐ポリカーボネートx%は、ポリマー分散液Pd)の非揮発性割合y%に対して、x+y=100)0.1〜30質量%の量で、特に好適には0.5〜20質量%の量で、とりわけ1.0〜10質量%の量で含有する。
【0142】
ポリマー分散液Pd)を製造するためには、α,β−エチレン性不飽和モノマーM)を少なくとも1種使用し、当該モノマーM)は好適には、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸とC
1〜C
20アルカノールとのエステル、ビニル芳香族化合物、ビニルアルコールとC
1〜C
30モノカルボン酸とのエステル、エチレン性不飽和ニトリル、ハロゲン化ビニル、モノエチレン性不飽和カルボン酸及びスルホン酸、リン含有モノマー、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸と、C
2〜C
30アルカンジオールとのエステル、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸と、C
2〜C
30アミノアルコール(第一級若しくは第二級アミノ基を有するもの)とのアミド、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸の第一級アミド、及びそのN−アルキル誘導体とN,N−ジアルキル誘導体、N−ビニルラクタム、開鎖状N−ビニルアミド化合物、アリルアルコールとC
1〜C
30モノカルボン酸のエステル、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸及びジカルボン酸とアミノアルコールとのエステル、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸及びジカルボン酸と、第一級若しくは第二級アミノ基を少なくとも1個有するジアミンとのアミド、N,N−ジアリルアミン、N,N−ジアリル−N−アルキルアミン、ビニル置換及びアリル置換された窒素複素環、ビニルエーテル、C
2〜C
8モノオレフィン、共役型二重結合を少なくとも2つ有する非芳香族炭化水素、ポリエーテル(メタ)アクリレート、尿素基含有モノマー、及びこれらの混合物から選択されるものである。
【0143】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸とC
1〜C
20アルカノールとの適切なエステルは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、エチルエタクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチルメタクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルエタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、1,1,3,3−テトラメチルブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ウンデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、アラキニル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、リグノセリル(メタ)アクリレート、セロチニル(メタ)アクリレート、リノレニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物である。
【0144】
ビニル芳香族化合物として好ましいのは、スチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−(n−ブチル)スチレン、4−(n−ブチル)スチレン、4−(n−デシル)スチレンであり、特に好ましいのはスチレンである。
【0145】
ビニルアルコールとC
1〜C
30モノカルボン酸との適切なエステルは例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル、及びこれらの混合物である。
【0146】
適切なエチレン性不飽和ニトリルは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及びこれらの混合物である。
【0147】
適切なハロゲン化ビニルとハロゲン化ビニリデンは、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、及びこれらの混合物である。
【0148】
適切なエチレン性不飽和カルボン酸及びスルホン酸、又はこれらの誘導体は、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、フマル酸、炭素数が4〜10、好適には4〜6のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸の半エステル(例えばマレイン酸モノメチルエステル)、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホエチルアクリレート、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルアクリレート、スルホプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロキシプロピルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピルスルホン酸、スチレンスルホン酸、及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。好ましいのは例えば、スチレンスルホン酸、例えばスチレン−4−スルホン酸とスチレン−3−スルホン酸、及びこれらのアルカリ土類金属塩又はアルカリ金属塩であり、例えばナトリウム−スチレン−3−スルホネートとナトリウム−スチレン−4−スルホネートである。特に好ましいのは、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの混合物である。
【0149】
リン含有モノマーの例は、例えばビニルホスホン酸とアリルホスホン酸である。さらに適切なのは、ホスホン酸及びリン酸と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノエステル及びジエステル、特にモノエステルである。さらに適切には、ホスホン酸及びリン酸のジエステルは、1種のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートによって一度、さらにこれとは異なる1種のアルコール(例えばアルカノール)で一度エステル化されたものである。これらのエステルのために適切なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを、以下で個別のモノマーとして挙げると、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどである。相応するリン酸二水素エステルモノマーには、ホスホアルキル(メタ)アクリレート、例えば2−ホスホエチル(メタ)アクリレート、2−ホスホプロピル(メタ)アクリレート、3−ホスホプロピル(メタ)アクリレート、ホスホブチル(メタ)アクリレート、及び3−ホスホ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが含まれる。適切なのはまた、ホスホン酸及びリン酸と、アルコキシ化されたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのエステル、例えば(メタ)アクリレートのエチレンオキシド縮合体、例えばH
2C=C(CH
3)COO(CH
2CH
2O)
nP(OH)
2、及びH
2C=C(CH
3)COO(CH
2CH
2O)
nP(=O)(OH)
2であり、ここでnは1〜50である。さらに適切なのは、ホスホアルキルクロトネート、ホスホアルキルマレエート、ホスホアルキルフマレート、ホスホジアルキルメタクリレート、ホスホジアルキルクロトネート、及びアリルホスホネートである。さらなる適切なリン基含有モノマーは、WO 99/25780、及びUS 4,733,005に記載されており、これについては、ここで引用する。
【0150】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸とのC
2〜C
30アルカンジオールとの適切なエステルは例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルエタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタアクリレート、3−ヒドロキシ−2−エチルヘキシルアクリレート、3−ヒドロキシ−2−エチルヘキシルメタクリレート等である。
【0151】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸の適切な第一級アミド、及びそのN−アルキル誘導体とN,N−ジアルキル誘導体は、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(t−ブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(n−オクチル)(メタ)アクリルアミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)(メタ)アクリルアミド、N−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(n−ノニル)(メタ)アクリルアミド、N−(n−デシル)(メタ)アクリルアミド、N−(n−ウンデシル)(メタ)アクリルアミド、N−トリデシル(メタ)アクリルアミド、N−ミリスチル(メタ)アクリルアミド、N−ペンタデシル(メタ)アクリルアミド、N−パルミチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘプタデシル(メタ)アクリルアミド、N−ノナデシル(メタ)アクリルアミド、N−アラキニル(メタ)アクリルアミド、N−ベヘニル(メタ)アクリルアミド、N−リグノセニル(メタ)アクリルアミド、N−セロチニル(メタ)アクリルアミド、N−メリシニル(メタ)アクリルアミド、N−パルミトレイニル(メタ)アクリルアミド、N−オレイル(メタ)アクリルアミド、N−リノリル(メタ)アクリルアミド、N−リノレニル(メタ)アクリルアミド、N−ステアリル(メタ)アクリルアミド、N−ラウリル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、モルホリニル(メタ)アクリルアミドである。
【0152】
適切なN−ビニルラクタムとその誘導体は、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタムである。
【0153】
適切な開鎖状N−ビニルアミド化合物は、例えばN−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニル−N−メチルプロピオンアミド、及びN−ビニルブチルアミドである。
【0154】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸と、アミノアルコールとの適切なエステルは、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及びN,N−ジメチルアミノシクロヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0155】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸とジアミンとの適切なアミドは、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]メタクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]メタクリルアミド、N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)シクロヘキシル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)シクロヘキシル]メタクリルアミド等である。
【0156】
適切なモノマーM)はさらに、N,N−ジアリルアミン、及びN,N−ジアリル−N−アルキルアミン、及びその酸付加塩と第四級化生成物である。ここでアルキルとは、好ましくはC
1〜C
24アルキルである。好ましいのは、N,N−ジアリル−N−メチルアミン、及びN,N−ジアリル−N,N−ジメチルアンモニウム化合物であり、例えば塩化物と臭化物である。
【0157】
適切なモノマーM)はさらに、ビニル置換及びアリル置換された窒素複素環、例えばN−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾールであり、ビニル置換及びアリル置換された複素環式芳香族化合物、例えば2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−アリルピリジン、4−アリルピリジン、及びこれらの塩である。
【0158】
適切なC
2〜C
8モノオレフィン、及び共役型二重結合を少なくとも2つ有する非芳香族炭化水素は、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、イソプレン、ブタジエンなどである。
【0159】
適切なポリエーテル(メタ)アクリは、下記一般式(E)の化合物であり、
【化1】
前記式中、
アルキレンオキシド単位の順序は任意であり、
k及びlは相互に独立して0〜100の整数であり、ここでkとlとの合計は、少なくとも3であり、
R
aは水素、C
1〜C
30アルキル、C
5〜C
8シクロアルキル、又はC
6〜C
14アリールでであり、
R
bは水素、又はC
1〜C
8アルキルであり、
YはO又はNR
cであり、ここでR
cは水素、C
1〜C
30アルキル、又はC
5〜C
8シクロアルキルである。
【0160】
kは好ましくは3〜50の整数、特に4〜25の整数である。lは好ましくは3〜50の整数、特に4〜25の整数である。
【0161】
式(E)中でR
aは好適には、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ラウリル、パルミチル、又はステアリルである。
【0162】
R
bは好ましくは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、又はn−ヘキシルであり、特に水素、メチル、又はエチルである。R
bは特に好ましくは、水素又はメチルである。
【0163】
式(A)中でYは好適には、Oである。
【0164】
特別な態様では、ラジカルエマルジョン重合においてPd)を製造するために、少なくとも1種のポリエーテル(メタ)アクリレートを使用する。このポリエーテル(メタ)アクリレートは好適には、モノマーM)の全質量に対して最大25質量%、好適には最大20質量%の量で使用する。特に好ましくは、エマルジョン重合のために、少なくとも1種のポリエーテル(メタ)アクリレートを0.1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%使用する。適切なポリエーテル(メタ)アクリレートは例えば、前述のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及び/又はジカルボン酸、及びこれらの酸塩化物、酸アミド、及び酸無水物と、ポリエーテルオールとの重縮合生成物である。適切なポリエーテルオールは、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド及び/又はエピクロロヒドリンと、開始剤分子(例えば水若しくは短鎖アルコールR
a−OH)との反応によって、容易に製造できる。アルキレンオキシドは、個別に、相互に入れ替えて、又は混合物として使用できる。ポリエーテルアクリレートは、単独で、又は混合物で、本発明により使用するエマルジョンポリマーを製造するために使用できる。
【0165】
ポリマー分散液Pd)は好適には、以下の一般式I又はIIの化合物、又はこれらの混合物から選択される少なくとも1種のポリエーテル(メタ)アクリレートを含有する:
【化2】
前記式中、
nは3〜15の整数、好適には4〜12であり、
R
aは水素、C
1〜C
20アルキル、C
5〜C
8シクロアルキル、又はC
6〜C
14アリールであり、
R
bは水素、又はメチルである。
【0166】
適切なポリエーテル(メタ)アクリレートは市販で得られ、それは例えばイギリスのLaporte Performance Chemicals社のBisomer(登録商標)という名称の様々な製品の形である。これに該当するのは例えば、Bisomer(登録商標)MPEG 350 MAである(メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート)。
【0167】
別の好ましい態様によれば、ラジカルエマルジョン重合においてPd)を製造するために、ポリエーテル(メタ)アクリレートを使用しない。
【0168】
さらなる特別な態様では、ラジカルエマルジョン重合においてPd)を製造するために、尿素基を有するモノマーを少なくとも1種使用する。このモノマーは好適には、モノマーM)の全質量に対して最大25質量%、好適には最大20質量%の量で使用する。特に好ましくは、エマルジョン重合のために、少なくとも1種の尿素基含有モノマーを0.1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%使用する。適切な尿素基含有モノマーは例えば、N−ビニル尿素、又はN−アリル尿素、又はイミダゾリジン−2−オンの誘導体である。これに該当するのは、N−ビニルイミダゾリジン−2−オン、N−アリルイミダゾリジン−2−オン、N−ビニルオキシエチルイミダゾリジン−2−オン、N−(2−(メタ)アクリルアミドエチル)イミダゾリジン−2−オン、N−(2−(メタ)アクリロキシエチル)イミダゾリジン−2−オン(=2−ウレイド(メタ)アクリレート)、N−[2−((メタ)アクリロキシアセトアミド)エチル]イミダゾリジン−2−オンなどである。
【0169】
好ましい尿素基含有モノマーは、
N−(2−アクリロキシエチル)イミダゾリジン−2−オン、及びN−(2−メタクリロキシエチル)イミダゾリジン−2−オンである。
【0170】
特に好ましいのは、N−(2−メタクリロキシエチル)イミダゾリジン−2−オン(2−ウレイドメタクリレート、UMA)である。
【0171】
架橋基を有する適切なビニルモノマーは、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエステル、アセトアセトキシアミド、ケト官能性及びアルデヒド官能性のビニルモノマー、ケト基含有アミド、及びシラン官能性(メタ)アクリルモノマーである。好ましいのは、ジアセトンアクリルアミド、アセトアセトキシエチルアクリレート、及びアセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)である。これらのビニルモノマーは、官能基を有する架橋剤と反応させることができ、当該官能基は、ビニルモノマーの相補的な架橋基と反応可能なものである。適切な架橋剤は例えば、ジヒドロアジド、例えばアジピン酸ジヒドロアジド(ADDH)などである。
【0172】
別の好ましい態様によれば、ラジカルエマルジョン重合においてPd)を製造するために、尿素基を有するモノマーを使用しない。
【0173】
前述のモノマーM)は、個別に、モノマー群内部での混合物の形で、又は異なるモノマー群の混合物の形で使用できる。
【0174】
エマルジョン重合のために好適には、モノマーM)の全質量に対して、少なくとも1種のモノマーM1)を少なくとも40質量%、特に好ましくは少なくとも60質量%、特に少なくとも80質量%使用し、当該モノマーM1)は、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及び/又はジカルボン酸とC
1〜C
20アルカノールとのエステル、ビニル芳香族化合物、ビニルアルコールとC
1〜C
30モノカルボン酸とのエステル、エチレン性不飽和ニトリル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、及びこれらの混合物から選択されるものである。モノマーM1)は好適には、モノマーM)の全質量に対して最大99.9質量%の量で、特に好適には最大99.5質量%の量で、特に最大99質量%の量で、エマルジョン重合のために用いる。
【0175】
主モノマーM1)は好適には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、及びこれらの混合物から選択されている。
【0176】
主モノマーM1)に加えて、ラジカルエマルジョン重合においてPd)を製造するために、少なくとも1種のさらなるモノマーM2)を使用することができ、当該モノマーM2)は一般的に、二次的な程度に存在する(副モノマー)。エマルジョン重合のために好適には、モノマーM)の全質量に対して、少なくとも1種のモノマーM2)を最大60質量%、特に好適には最大40質量%、特に最大20質量%使用し、当該モノマーM2)は、エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸、エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物と半エステル、(メタ)アクリルアミド、C
1〜C
10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、C
1〜C
10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリエーテル(メタ)アクリレート、尿素基含有モノマー、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物から選択されるものである。モノマーM2)が存在する場合、これを好適には、モノマーM)の全質量に対して少なくとも0.1質量%の量で、特に好適には少なくとも0.5質量%の量で、特に少なくとも1質量%の量で、エマルジョン重合のために用いる。
【0177】
特に好ましくは、エマルジョン重合のために0.1〜60質量%、好ましくは0.5〜40質量%、特に0.1〜20質量%で、少なくとも1種のモノマーM2)を使用する。モノマーM2)は特に、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、2−ウレイドメタクリレート、アセトアセトキシメタクリレート、及びこれらの混合物から選択される。
【0178】
本発明による方法にとって特に好適なモノマー組み合わせは、以下に記載する通りである:
C
1〜C
10アルキル(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物、特に
エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート;
n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート;
n−ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート
の混合物。
【0179】
少なくとも1種のC
1〜C
10アルキル(メタ)アクリレートと、少なくとも1種のビニル芳香族との混合物は、特に、
n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレン;
n−ブチルアクリレート、スチレン;
n−ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、スチレン;
エチルヘキシルアクリレート、スチレン;
エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレン;
の混合物。
【0180】
少なくとも1種のビニル芳香族と、少なくとも1種のオレフィンとの混合物であって、当該オレフィンが、C
2〜C
8モノオレフィン、及び共役二重結合を少なくとも2つ有する非芳香族炭化水素(特にスチレン、ブタジエン)から選択されているもの。
【0181】
前記特に適切なモノマーの組み合わせはさらに、僅少量の別のモノマーM2)を含有することができる。これらは好適には、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、2−ウレイドメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、及びこれらの混合物から選択されている。
【0182】
本発明によるポリマー分散液の製造においては、前記モノマーM)に加えてさらに、少なくとも1種の架橋剤を用いることができる。
【0183】
架橋官能性を有するモノマーは、重合可能なエチレン性不飽和の非共役型二重結合を分子中に少なくとも2つ有する化合物である。この架橋は例えば、官能基によって行うことができ、当該官能基は、これに対して補完的な官能基によって、化学的架橋反応を引き起こすことができるものである。ここで、補償的な官能基はともに、エマルジョンポリマーに結合されていてよい。架橋のために、エマルジョンポリマーの官能基によって、化学的な架橋反応を引き起こすことができる架橋剤を用いることができる。
【0184】
適切な架橋剤は例えば、少なくとも二価のアルコールのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アリルエーテル、又はビニルエーテルである。ここで、ベースとなるアルコールのOH基は、完全に若しくは部分的にエーテル化又はエステル化されていてもよいが、架橋剤は少なくとも2個のエチレン系不飽和基を含有する。
【0185】
ベースとなるアルコールの例は、2価アルコール、例えば1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ブテ−2−エン−1,4−ジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、2,5−ジメチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバリン酸−ネオペンチルグリコールモノエステル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシプロピル)フェニル]プロパン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、3−チアペンタン−1,5−ジオール、並びに分子量がそれぞれ200〜10,000の、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラヒドロフランである。エチレンオキシド又はプロピレンオキシドのホモポリマー以外にまた、エチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドから構成されるブロックコポリマー、又はエチレンオキシドとプロピレンオキシド基が組み込まれているコポリマーを使用することができる。OH基を2個以上有するベースアルコールの例は、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリット、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、シアヌル酸、ソルビタン、糖(例えばサッカロース、グルコース、マンノース)である。多価アルコールはもちろん、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドと反応させた後でも、相応するエトキシレート又はプロポキシレートとして使用できる。多価アルコールはまた、まずエピクロロヒドリンと反応させることによって、相当するグリシジルエーテルに変換することができる。
【0186】
他の適した架橋剤は、ビニルエステルであるか、又は一価の不飽和アルコールと、エチレン性不飽和C
3〜C
6カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸若しくはフマル酸とのエステルである。このようなアルコールの例は、アリルアルコール、1−ブテン−3−オール、5−ヘキセン−1−オール、1−オクテン−3−オール、9−デセン−1−オール、ジクロロペンテニルアルコール、10−ウンデセン−1−オール、ケイ皮アルコール、シトロネロール、クロチルアルコール、又はシス−9−オクタデセン−1−オールである。また、一価の不飽和アルコールを多価カルボン酸(例えばマロン酸、酒石酸、トリメリット酸、フタル酸、テレフタル酸、クエン酸、又はコハク酸)でエステル化することもできる。
【0187】
他の適した架橋剤は、不飽和カルボン酸と前記多価アルコールとのエステルであり、例えばオレイン酸、クロトン酸、ケイ皮酸、又は10−ウンデセン酸のエステルである。
【0188】
架橋剤として適しているのはさらに、直鎖又は分枝の、線状又は環式の、脂肪族又は芳香族炭化水素であり、当該炭化水素は、少なくとも2つの二重結合を有していてもよく、脂肪族炭化水素の場合には非共役であってもよく、それは例えばジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、4−ビニル−1−シクロヘキサン、トリビニルシクロヘキサン、又はポリブタジエンであり、これらの分子量は200〜20,000である。
【0189】
架橋剤としてはさらに、少なくとも2価のアミンのアクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、及びN−アリルアミンが適している。このようなアミンは例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,12−ドデカンジアミン、ピペラジン、ジエチレントリアミン、又はイソホロンジアミンである。同様に適しているのは上述のように、アリルアミンと、不応和カルボン酸(例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、又は少なくとも2価のカルボン酸)とのアミドである。
【0190】
さらに、トリアリルアミンと、トリアリルモノアルキルアンモニウム塩、例えばトリアリルメチルアンモニウムクロリド、又はトリアリルアンモニウムメチルスルフェートが、架橋剤として適している。
【0191】
また、尿素誘導体、少なくとも2価のアミド、シアヌレート、又はウレタンのN−ビニル化合物(例えば尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、若しくは酒石酸ジアミドのN−ビニル化合物)も適しており、それは例えばN,N’−ジビニルエチレン尿素、又はN,N’−ジビニルプロピレン尿素である。
【0192】
さらに適している架橋剤は、ジビニルジオキサン、テトラアリルシラン、又はテトラビニルシランである。もちろんまた、前記化合物の混合物を使用することができる。好適には、水溶性架橋剤を用いる。
【0193】
架橋性モノマーに該当するのはさらに、エチレン性不飽和二重結合の他に、添加された架橋剤と反応可能な反応性官能基(例えばアルデヒド基、ケト基、又はオキサラン基)を有するモノマーである。これらの官能基は好適には、ケト基又はアルデヒド基である。ケト基又はアルデヒド基は好適には、共重合可能なエチレン性不飽和化合物と、ケト基又はアルデヒド基との共重合によって、ポリマーに結合されている。このような化合物であって適切なのは、アクロレイン、メタクロレイン、アルキル基中に1〜20個、好適には1〜10個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン、ホルミルスチレン、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アルキル鎖中にケト基又はアルデヒド基を1個又は二個、或いはアルデヒド基とケト基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであって、ここで前記アルキル基は好適には、全部で3〜10個の炭素原子を有するものであり、それは例えば(メタ)アクリロキシアルキルプロピオネートである(例えばDE-A-2722097に記載のもの)。さらにまた、N−オキソアルキル(メタ)アクリルアミドが適しており、これは例えば、US-A-4226007、DE-A-2061213、又はDE-A-2207209から公知である。特に好ましいのは、アセトアセチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートであり、特にジアセトンアクリルアミドである。架橋剤は好適には、官能基を少なくとも2個、特に2〜5個有する化合物であり、当該官能基は、ポリマーの官能基、特にケト基又はアルデヒド基と、架橋反応を引き起こすことができるものである。これに該当するのは例えば、ケト基又はアルデヒド基の架橋のための官能基としての、ヒドラジド基、ヒドロキシアミン基、オキシムエーテル基、又はアミノ基である。ヒドラジド基を有する適切な化合物は例えば、分子量が最大500g/molのポリカルボン酸ヒドラジドである。特に好ましいヒドラジド化合物は、ジカルボン酸ジヒドラジドであり、好ましくは炭素数が2〜10のものである。これに該当するのは例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、及び/又はイソフタル酸ジヒドラジドである。特に重要になるのは、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、及びイソフタル酸ジヒドラジドである。ヒドロキシアミン基又はオキシムエーテル基との適切な化合物は例えば、WO 93/25588に記載されている。
【0194】
架橋性成分は好ましくは、重合に用いられるモノマーの全質量(架橋剤含む)に対して0.0005〜5質量%、好ましくは0.001〜2.5質量%、特に0.01〜1.5質量%、使用する。
【0195】
特別な実施態様は、架橋剤が重合導入されていないポリマー分散液Pd)に関する。
【0196】
モノマー混合物M)のラジカル重合は、少なくとも1種の制御剤の存在下で行うことができる。制御剤は好ましくは、重合に用いられるモノマーの全質量に対して0.0005〜5質量%、好ましくは0.001〜2.5質量%、特に0.01〜1.5質量%の使用量で用いる。
【0197】
制御剤(重合調整剤)とは、連鎖移動定数(Uebertragungskonstant)が高い一般的な化合物をいう。調整剤は連鎖移動反応を促進するので、生じるポリマーの重合度を減少させるが、総反応速度に影響を与えることはない。調整剤では、単官能性、二官能性、又は多官能性調整剤が、分子中の官能基の数によって区別され、この官能基により、1つ以上の連鎖移動反応につながる。適した調整剤は例えばK.C. Berger and G Brandrup著、J. Brandrup,E.H. Immergut, Polymer Handbook 3. Aufl., John Wiley & Sons, NewYork, 1989, p. H/81-11/141に詳細に記載されている。
【0198】
調整剤として適しているのは例えばアルデヒドであり、その例はホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオン酸アルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒドである。
【0199】
さらに調整剤を用いることもできる:蟻酸、ギ酸塩、又はギ酸エステル、例えばギ酸アンモニウム、2,5−ジフェニル−ヘキセン、ヒドロキシアンモニウムスルフェート、及びヒドロキシアンモニウムホスフェート。
【0200】
他の適した調整剤は、ハロゲン化合物(例えばアルキルハロゲン化物)であり、それは例えばテトラクロロメタン、クロロホルム、ブロモトリクロロメタン、ブロモホルム、アリルブロミド、及びベンジル化合物(例えば塩化ベンジル又は臭化ベンジル)である。
【0201】
さらなる適切な調整剤は、アリル化合物、例えばアリルアルコール、官能化されたアリルエーテル(例えばアリルエトキシレート、アルキルアリルエーテル、又はグリセリンモノマーアリルエーテル)である。
【0202】
好ましくは、調整剤として、硫黄を結合した形で含有する化合物を使用する。
【0203】
これらの種類の化合物は例えば、無機亜硫酸水素塩、二亜硫酸塩、及びジチオニットであるか、又は有機スルフィド、ジスルフィド、ポリスルフィド、スルホキシド、及びスルホンである。これに該当するのは、ジ−n−ブチルスルフィド、ジフェニルスルフィド、チオジグリコール、エチルチオエタノール、ジイソプロピルジスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジ−n−ヘキシルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド、ジエタノールスルフィド、ジ−t−ブチルトリスルフィド、ジメチルスルホキシド、ジアルキルスルフィド、ジアルキルジスルフィド、及び/又はジアリールスルフィドである。重合調整剤として適切な化合物はさらに、チオール(硫黄をSH−基の形で含有する化合物、メルカプタンとも呼ばれる)である。調整剤として好ましいのは、単官能性、二官能性、及び多官能性のメルカプタン、メルカプトアルコール、及び/又はメルカプトカルボン酸である。これらの化合物の例は、アリルチオグリコレート、エチルチオグリコーレート、システイン、2−メルカプトエタノール、1,3−メルカプトプロパノール、3−メルカプトプロパン−1,2−ジオール、1,4−メルカプトブタノール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオグリセリン、チオ酢酸、チオ尿素、及びアルキルメルカプタン、例えばブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、又はn−ドデシルメルカプタンである。
【0204】
2個の硫黄を結合された形で含有する二官能性調整剤の例は、二官能性チオール、例えばジメルカプトプロパンスルホン酸(ナトリウム塩)、ジメルカプトコハク酸、ジメルカプト−1−プロパノール、ジメルカプトエタン、ジメルカプトプロパン、ジメルカプトブタン、ジメルカプトペンタン、ジメルカプトヘキサン、エチレングリコール−ビス−チオグリコレート、及びブタンジオール−ビス−チオグリコレートである。多官能性調整剤の例は、2個以上の硫黄を結合された形で含有する化合物である。これについての例は、三官能性及び/又は四官能性メルカプタンである。
【0205】
すべての前記調整剤は、単独で、又は互いの組み合わせで使用できる。特別な実施態様は、ラジカルエマルション重合によって、調整剤を添加せずに製造される重合分散液Pd)に関する。
【0206】
ポリマーの製造のためには、モノマーをラジカル形成開始剤で重合させることができる。
【0207】
ラジカル重合のための開始剤としては、このために慣用のペルオキソ化合物及び/又はアゾ化合物が使用でき、それは例えばアルカリ金属ペルオキシ二硫酸塩、若しくはペルオキシ二硫酸アンモニウム、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、スクシニルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルピバレート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、t−ブチルペルマレイネート、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルバメート、ビス−(o−トルオイル)−ペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルイソブチレート、t−ブチルペルアセテート、ジ−t−アミルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、アゾ−ビス−イソブチロニトリル、2,2’−アゾ−ビス−(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、又は2−2′−アゾ−ビス−(2−メチル−ブチロニトリル)である。これらの開始剤の混合物も適している。
【0208】
開始剤としてはまた、還元/酸化(=レドックス)開始剤系が使用できる。レドックス開始剤系は、たいていは少なくとも1種の無機還元剤と、無機酸化剤若しくは有機酸化剤とからなる。酸化成分は例えば、前述の乳化重合用開始剤である。還元成分は例えば、亜硫酸のアルカリ金属塩、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸のアルカリ金属塩、例えば二亜硫酸ナトリウム、脂肪族アルデヒド及びケトンの重亜硫酸付加化合物、例えば重亜硫酸アセトン、又は還元剤、例えばヒドロキシメタンスルフィン酸とその塩、又はアスコルビン酸である。レドックス開始剤系は、溶解性金属化合物の併用下で使用でき、当該金属成分は、複数の価数段階で存在し得るものである。通例のレドックス開始剤系は、例えばアスコルビン酸/硫酸鉄(II)/ペルオキシ二硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド/二亜硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド/Na−ヒドロキシメタンスルフィン酸である。個々の成分、例えば還元成分は、混合物であってもよく、例えば、ヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩と二亜硫酸ナトリウムとからなる混合物であってもよい。
【0209】
開始剤の量は一般的に、重合すべきモノマーに対して0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。乳化重合の際に、異なる開始剤を複数使用することもできる。
【0210】
ポリマー分散液Pd)の製造は通常、少なくとも1種の界面活性化合物の存在下で行われる。適した保護コロイドは、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第XIV/1巻, Makromolekulare Stoffe, Georg- Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961 , 第411頁〜第420頁に詳細に記載されている。適切な乳化剤は、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie、第14/1巻、Makromolekulare Stoffe, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1961年、第192〜208頁にも見られる。
【0211】
乳化剤としては、アニオン性、カチオン性、また非イオン性乳化剤も適切である。界面活性物質として好適には通常、相対分子量が保護コロイドの分子量を下回る乳化剤を用いる。
【0212】
使用可能な非イオン性乳化剤は、芳香脂肪族若しくは脂肪族の非イオン性乳化剤、例えばエトキシ化モノ−、ジ−及びトリアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C
4〜C
10)、長鎖アルコールのエトキシレート(EO度:3〜100、アルキル基:C
8〜C
36)、並びにポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドのホモポリマーとコポリマーである。これらは、アルキレンオキシド単位をランダム分布で、又はブロックの形で重合導入されて含有することができる。良好に適しているのは例えば、EO/POブロックコポリマーである。好ましくは、長鎖アルカノールのエトキシレート(アルキル基C
1〜C
30、平均エトキシ化度5〜100)、その中でも特に好ましくは、直鎖状のC
12〜C
20アルキル基を有するものであって、かつ平均エトキシ化度が10〜50のもの、またモノアルキルフェノールを用いる。
【0213】
適切なアニオン性乳化剤は、例えばアルキルスルフェート(アルキル基:C
8〜C
12)、エトキシ化されたアルカノール(EO度:2〜50、アルキル基:C
12〜C
18)、及びエトキシ化されたアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C
4〜C
9)の硫酸半エステル、アルキルスルホン酸(アルキル基:C
12〜C
18)、及びアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C
9〜C
18)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩である。更なる適切な乳化剤は、Houben,Weyl,Methoden der organischen Chemie,Volume XIV/1,Makromolekulare Stoffe,Georg−Thieme−Verlag,Stuttgart,1961,pp.192−208に見出される。アニオン性乳化剤としては同様に、ビス(フェニルスルホン酸)エーテル、又はそのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩であって、一方又は両方の芳香族環にC
4〜C
24アルキル基を有するものが適している。これらの化合物は一般的に、例えばUS-A-4,269,749から公知であり、例えばDowfax(登録商標)2A1として(Dow Chemical Company)市販で得られる。
【0214】
適切なカチオン性乳化剤は好適には第四級ハロゲン化アンモニウムであり、例えばトリメチルセチルアンモニウムクロリド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、又はN−C
6〜C
20アルキルピリジン、N−C
6〜C
20アルキルモルホリン、又はN−C
6〜C
20アルキルイミダゾールの第四級化合物である。
【0215】
乳化剤の量は一般的に、重合すべきモノマー量に対して約0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0216】
本発明により使用される高分岐ポリカーボネートは、通常、水に分散可能である。これとは異なり水に分散できないのは、疎水性基とポリマー類似反応させた高分岐ポリカーボネートである。特別な実施態様において高分岐ポリカーボネートは、界面活性物質(乳化剤、保護コロイド、又は分散活性基を有するモノマー)を添加せずに、ポリマー分散液Pd)を製造するために適している。
【0217】
重合は一般的に、0〜150℃の範囲の温度、好ましくは20〜100℃の範囲の温度、特に好ましくは30〜95℃の範囲の温度で行う。重合は好適には常圧で行うが、高圧、例えば重合に用いる成分の固有圧(Eigendruck)で重合を行うこともできる。適切な実施では、重合を少なくとも1種の不活性ガス(例えば窒素又はアルゴン)の存在下で行う。
【0218】
重合媒体は、水のみからでも、また水、及び水と混合可能な液体(例えばメタノール)とからの混合物からなってもよい。好適には水のみを用いる。エマルジョン重合は、バッチ法でも、供給法(段階方式又は勾配方式を含む)の形でも実施することができる。好適なのは、重合出発物質の一部又はポリマーシードも装入し、重合温度に加熱し、部分的に重合し、引き続き重合出発物質の残部を、通常、その1つ以上がモノマーを純粋な形でまたは乳化された形で含有する、複数の空間的に分離された供給流を介して、連続的に、段階的に又は濃度勾配を重ね合わせて重合を維持しながら、重合帯域に供給する供給法である。
【0219】
開始剤をラジカル水性エマルション重合の過程で重合容器に添加する方法は、平均的な当業者に知られている。それは完全に重合容器中に装入してもよいし、ラジカル水性乳化重合の過程におけるその消費に応じて連続的にまたは段階的に使用してもよい。これは詳細には、開始剤系の化学的性質のみならず、重合温度にも依存する。好適には一部を装入し、残部は重合帯域の消費の度合いに応じて供給する。
【0220】
重合の際に生じる分散液は、物理的又は化学的重合法に引き続き、後処理にかけることができる。このような方法は例えば、残留モノマーを減少させるための公知の方法であり、例えば適切な温度での、重合開始剤の添加、又は複数の重合開始剤の混合物の添加による後処理、水蒸気若しくはアンモニア蒸気による重合溶液の後処理、又は不活性ガスによるストリッピング、又は反応混合物の酸化性若しくは還元性試薬による処理、吸着法、例えば選択された媒体(例えば活性炭又は限外濾過)で不純物を吸着する方法である。
【0221】
得られる水性分散液Pd)は通常、ポリマー分散液に対して固体含分が20〜70質量%、好適には40〜70質量%、特に好適には45〜70質量%、特に好適には45〜65質量%である。
【0222】
ポリマー分散液Pd)にはさらに、通常の助剤と添加剤を加えることができる。これに該当するのは例えば、pH値調整物質、還元剤、及び漂白剤、例えばヒドロキシメタンスルホン酸のアルカリ金属塩(例えばRongalit(登録商標)C、BASF株式会社)、錯形成剤、脱臭剤、調味料、香料、及び粘度調整剤、例えばアルコール、例えばグリセリン、メタノール、エタノール、t−ブタノール、グリコールなどである。これらの助剤と添加剤は、重合分散液に初期装入として、供給部で、又は重合終了後に添加することができる。
【0223】
本発明により使用する高分岐ポリカーボネート(炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有し、C
8〜C
32アルケニル基を少なくとも1個有するもの)により、重合分散液Pd)が化学的に後架橋可能になる。特別な態様において、架橋反応は酸化架橋である。この場合、後架橋を水性ポリマー分散液の添加により促進させることが有利であり得る。これは、後架橋を低温で行うべき場合、例えば周辺温度を下回る範囲、又は周辺温度の範囲(例えば−10〜50℃、特に0〜45℃)では、特にそうである。
【0224】
後架橋を促進させるための適切な添加剤は、ラジカル形成性開始剤及び/又は乾燥剤(吸湿剤)である。適切なラジカル開始剤は原則的に、有機過酸化物、有機アゾ化合物、C−C開裂性開始剤、例えばジアルキルペルオキシド、ペルオキソカルボン酸、ペルオキソジカーボネート、ペルオキシドエステル、ヒドロペルオキシド、ケトンペルオキシド、アゾジニトリル、ベンゾピナコールシリルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、及びこれらの組み合わせである。
【0225】
乾燥促進のためには、例えばCo又はMnをベースとする、水性アルキド樹脂用に推奨される金属化合物が適している(U. Poth, Polyester und Alkydharze, Vincentz Network 2005, pp.183に概要)。
【0226】
後架橋のための添加剤はそれぞれ、重合に用いられるモノマーの全質量(存在する場合には架橋剤含む)に対して0.0005〜5質量%、好ましくは0.001〜2.5質量%、特に0.01〜1.5質量%の量で、使用する。
【0227】
本発明により使用される高分岐ポリカーボネートは、多くの様々な分散液との良好な相容性を特徴とする。
【0228】
本発明により使用される高分岐ポリカーボネートは有利には、水性ポリマー分散液の接着性改善のために適している。
【0229】
ポリマー分散液Pd)の高分岐ポリカーボネートは好適には、エマルジョンポリマーの全質量に対して0.1〜30質量%、特に好適には0.5〜20質量%、特に1.0〜10質量%の量で添加する。高分岐ポリカーボネートの通常の使用量は例えば、ポリマー分散液Pd)中で、エマルジョンポリマーの質量割合に対して1〜5質量%の範囲である。
【0230】
エマルジョンポリマーと高分岐ポリカーボネートの含分(固体含分)は、水性ポリマー分散液Pd)中で、好適には30〜60%、特に好適には40〜50%である。
【0231】
エマルジョンポリマーと少なくとも1種の高分岐ポリカーボネートを含有する本発明による水性ポリマー分散液Pd)は、そのままで、又は別のポリマーと混合して、水性被覆剤(例えば塗料、例えば着色剤混合物、若しくは塗料混合物)中で結合剤組成物として、使用することができる。適切なさらなるポリマーは例えば、塗膜形成ポリマーである。これに該当するのは例えば、アルキド樹脂である。適切なアルキド樹脂は例えば、水溶性又は水に移行可能な(「水に還元可能な」、すなわち、水性NaOH又はNH
3によって溶剤中の溶液から水溶液に移行できる)溶剤、アルキド樹脂、好適には質量平均分子量が、5,000〜40,000g/molのものである。さらに、水性アルキド樹脂エマルジョン、又は変性された水性アルキド樹脂エマルジョンが適切である。ここで「変性された」とは、アルキド樹脂が、(ポリ)ウレタン、シランなどの基を有することを言う。このような変性されたアルキドエマルジョンは通常、質量平均分子量が比較的高い、すなわち、40,000g/mol超、特に100,000g/mol超である。
【0232】
アルキド樹脂は、乾性油、脂肪酸等でエステル化されているポリエステルと理解される(U. Poth, Polyester und Alkydharze, Vincentz Network 2005)。
【0233】
水性アルキド樹脂とは特に、任意で中和後に、水で希釈可能なアルキド樹脂と理解される。当該アルキド樹脂は、充分に高い酸価を有するアルキド樹脂をベースとしており、その酸価の範囲は好適には、固体のアルキド樹脂1gあたり20〜80mgKOHである。質量平均分子量は好適には5,000〜40,000ドルトンの範囲であり、特に好適には8,000〜35,000ドルトンであり、特に10,000〜35,000ドルトンである。この分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定できる。酸価とは、水酸化カリウムの量と理解され(mgで表記)、これは固体の試料1gを中和するのに必要な量である。使用される油又は脂肪酸は、特性決定成分である。これにより脂肪酸トリアシルグリセロール含分(油分、油長)(又は脂肪酸が確かに組み込まれているアルキドの場合、例えば以下に記載のように相応する計算により)による分類が可能になり、溶剤不含のアルキド樹脂に対して、トリアシルグリセロールが<40%のものは短油アルキド樹脂、40〜60%のものは中油アルキド樹脂、>60%のものは長油アルキド樹脂となる(脂肪酸含分は任意で、トリアシルグリセロールで換算、係数約1.045)(油含分)。
【0234】
固体含分は、一般的な慣行に従って、分散液の「水含分」を同定する。この分散液は通常、100〜140℃の温度で、質量定数まで乾燥させる(ISO標準1625参照)。固体含分は、全質量との比較で乾燥質量を記載する(%)。乾燥質量は、ポリマー、乳化剤、及び無機塩(開始剤分解と中和に由来するもの)を含む。揮発性成分に該当するのは、水と、重合の際に反応しなかったモノマーである。
【0235】
さらに使用されるアルキド樹脂の本発明による水性ポリマー分散液Pd)の油含分は、好ましくは25〜55%である。アルキド樹脂の固体含分は、納入形態で通常30〜80%であり、使用形態(すなわち、NH
3又はNaOH/水で希釈後)では、35〜50%である。
【0236】
好ましいアルキド樹脂は例えば、Worlee社の製品であるWorleeSol 61 A、WorleeSol 61 E、WorleeSol 65A、及び、Synthopol社の製品であるSynthalat W46又はSynthalat W48である。
【0237】
水性アルキド樹脂(省略してアルキドエマルジョン)とは、水に分散されたアルキド樹脂と理解され、任意で乳化剤が添加されたものである。水溶性又は水で希釈可能なアルキド樹脂と比較して、このためにはまた、平均分子量がより高いものも適している(U. Poth, Polyester und Alkydharze, Vincentz Network 2005,pp. 208)。
【0238】
水溶性ポリウレタンアルキド樹脂エマルジョンとは、水中に分散されたポリウレタン変性アルキド樹脂と理解される。ウレタン変性は、アルキド合成の場合に例えば、通常の無水フタル酸の一部をジイソシアネートで置き換えることによって行うことができる(U. Poth, Polyester und Alkydharze, Vincentz Network 2005, Punkt 4.4.3.3. "Urethanmodifizierte Alkydharze" 205p)。ウレタン変性はさらに、アルキドと少なくとも1種の二官能性ポリイソシアネートとの反応によって行うことができる(DE 10 2006 054237)。
【0239】
好ましいアルキド樹脂エマルジョンは、油含分が25〜55%であり、酸価が20〜60mgKOH/gであることを特徴とする。好ましいアルキド樹脂エマルジョン又はポリウレタン変性アルキド樹脂エマルジョンは、WorleeSol E 150 W、WorleeSol E 280 W、WorleeSol E 530 W、又はWorleeSol E 927 Wである。
【0240】
このようなさらなる塗膜形成性ポリマー(特にアルキド樹脂)の使用は、被覆剤のVOC含分を高めるため、場合によっては好ましくない。よって特別な実施態様は、被覆剤、特に塗料であって、少なくとも1種の分散液Pd)と、少なくとも1種の高分岐ポリカーボネートとを含有するが、ポリマー分散液中に含まれるエマルジョンポリマーとは異なる塗膜形成性ポリマーを含有しないものである。
【0241】
本発明による結合剤組成物は好適には、水性塗料で用いる。この塗料は例えば、顔料着色されていない系の形で(クリアラッカー)、又は顔料着色された系の形で存在する。顔料の割合は、顔料体積濃度(PVK)によって記載できる。このPVKは、全体積に対する、顔料の体積(V
P)と、充填材体積(V
F)との比であり、ここで全体積は結合剤の体積(V
B)、顔料、及び乾燥被膜の充填材からなる(%):
PVK=(V
P+V
F)×100/(V
P+V
F+V
B)。塗料はPVKを用いて、例えば以下のように区分される:
高充填性の内装用着色剤、耐洗浄性、白色/つや消し 約85
内装用着色剤、耐摩擦性、白色/つや消し 約80
半光沢着色剤、シルクつや消し 約35
半光沢着色剤、シルク光沢あり 約25
高光沢着色剤 約15〜20
外装用着色剤、白色 約45〜55
クリアラッカー 0。
【0242】
よって本発明のさらなる対象は、水性組成物の形態の塗料であって、
先に定義の結合剤組成物、
任意で、少なくとも1種の顔料、
任意で、少なくとも1種の充填材、
任意で、顔料と充填材以外の助剤、及び
水
を含有するものである。
【0243】
第一の好ましい態様は、クリアコートの形での塗料であり、顔料と充填材を含有しないものである。
【0244】
第二の好ましい態様は、分散着色剤の形の塗料である。
【0245】
好ましい塗料は、
先に定義の少なくとも1種の分散液Pd)を、固体含分に対して10〜60質量%、
無機充填材及び/又は無機顔料を10〜70質量%、
通常の助剤を0.1〜20質量%、及び
水を、合計で100質量%になる量で
含有する。
【0246】
上記被覆剤についてPd)の割合は、固体、すなわち、エマルジョンポリマーと高分岐ポリカーボネートに対するものである(水は含まず)。
【0247】
以下で、通常の分散着色剤の組成物を説明する。分散着色剤は通常、固体含分が30〜75質量%、好適には40〜65質量%である。これは水ではないが、少なくとも結合剤、充填材、顔料、可塑剤、及びポリマー助剤の全量である、配合物の全成分と理解されるべきである。溶剤、また難揮発性溶剤は、固体含分には該当しない。これに該当するのは例えば
a)ポリマー分散液Pd)3〜90質量%、特に10〜60質量%、
b)少なくとも1種の無機顔料0〜85質量%、好ましくは5〜60質量%、特に10〜50質量%、
c)無機充填材0〜85質量%、特に5〜60質量%、
d)通常の助剤0.1〜40質量%、特に0.5〜20質量%
である。
【0248】
本発明の範囲において顔料とは、全ての顔料と充填剤、例えば着色顔料、白色顔料、及び無機充填剤をまとめていう。これに該当するのは、無機白色顔料、例えば、二酸化チタン、好適にはルチル型のもの、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛、三酸化アンチモン、リトポン(硫化亜鉛+硫酸バリウム)、又は有色顔料、例えば酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト、亜鉛黄、亜鉛緑、ウルトラマリン、マンガン黒、アンチモン黒、マンガン紫、パリブルー、又はシュバインフルト緑(Schweinfurter Gruen)である。本発明による分散着色剤は無機顔料の他に、有機着色顔料、例えばセピア、ガンボージ、カッセルブラウン、トルイジンレッド、パラレッド、ハンザイエロー、インジゴ、アゾ染料、アントラキノイド染料、及びインジゴ染料、並びにジオキサジン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、及び金属錯体顔料を含有することができる。光散乱を向上させるために空気を取り込んだ合成白色顔料もまた、適している(例えばRopaque(登録商標)の分散液)。
【0249】
適切な充填剤は例えば、アルミノケイ酸塩、例えば長石、ケイ酸塩、例えばカオリン、タルク、雲母、マグネサイト、アルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸カルシウム(例えばカルサイトまたはチョークの形で)、炭酸マグネシウム、ドロマイト、アルカリ金属硫酸塩、例えば硫酸カルシウム、二酸化ケイ素等である。当然の事ながら、塗料中では微細な充填剤が好ましい。充填剤は、個々の成分として使用してもよい。しかしながら実際には、充填剤混合物、例えば炭酸カルシウム/カオリン、炭酸カルシウム/タルクがとりわけ適していることが実証されている。光沢塗料は通常、微細充填材を非常に僅かな量でのみ含有する。
【0250】
微細な充填材はまた、隠蔽力の向上及び/又は白色顔料の節約のために使用できる。色調の隠蔽力の調整、及び色の濃さの調整のため、好適には着色顔料と充填剤との混合物を用いる。
【0251】
本発明による被覆剤(水性塗料)は、ポリマー分散液Pd)と、少なくとも1種の本発明による高分岐ポリカーボネートの他に添加剤として、任意でさらなる塗膜形成性ポリマー、及び顔料/充填材、さらなる助剤を含有することができる。
【0252】
通常の助剤には、重合に際して使用される乳化剤の他に、湿潤剤または分散剤、例えばポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、又はポリリン酸アンモニウム、アクリル酸コポリマー又は無水マレイン酸コポリマーのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、ポリホスホネート、例えば1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸ナトリウム、並びにナフタリンスルホン酸塩、殊にそのナトリウム塩が含まれる。
【0253】
適切な助剤は、均展剤、消泡剤、殺虫剤、及び粘稠剤である。適切な粘稠剤は例えば、会合性粘稠剤、例えばポリウレタン粘稠剤である。粘稠剤の量は好適には、塗料の固体含分に対して粘稠剤が1質量%未満、特に好適には0.6質量%未満である。
【0254】
本発明による塗料の製造は公知の方法で、その製造用の通常の混合装置で成分を混合することによって行う。顔料、水、(及び任意で助剤)から水性のペースト又は分散液を準備し、その後に初めてポリマー結合剤、すなわち通常はポリマーの水性分散液を、顔料ペースト若しくは顔料分散液と混合するのが適切であると実証されている。
【0255】
本発明による塗料は不揮発性成分を、通常は30〜75質量%、好適には40〜65質量%含有する。これに含まれるのは、水ではないが、塗料の固体含分に対して、少なくとも結合剤、顔料、及び助剤の全体量である、配合物のあらゆる成分と理解されるべきである。揮発性成分とは、主に水である。
【0256】
適切な塗料はまた、高光沢性である。塗料の光沢の測定は、DIN67530に従って行うことができる。このために塗料を、240μmのギャップ幅でガラス板上に塗布し、72時間、室温で乾燥する。試験体を、較正された反射率計に取り付け、規定の入射角で、返ってきた光がどの程度まで反射又は散乱したのかを計測する。産出された反射率計値が、光沢の度合である(値が高ければ高いほど、その分だけ光沢は高くなる)。
【0257】
本発明による塗料は、通常の方法で、例えば刷毛塗り、噴霧、浸漬、ロール塗布、ドクターブレード塗布等によって基材に塗布できる。
【0258】
この塗料は好適には建築塗料として、すなわち、建築物又は建築物部材を被覆するために使用する。基材は鉱物性の下地、例えば下塗り、セッコウ又はセッコウボード、組積造又はコンクリート、木質材料、金属又は紙、例えば壁紙又はプラスチック、例えばPVCであってもよい。
【0259】
好適には建築内部用塗料、例えば内壁、屋内の扉、羽目(Vertaefelung)、階段、家具などに使用できる。この塗料は好適には、外部適用(例えば庭柵、手すり、木部など)にも使用できる。
【0260】
本発明による塗料の特徴は、容易な取り扱い、良好な加工特性、及び高い隠蔽力にある。この塗料は、有害物質が少ない。この塗料は例えば、良好な耐水性、良好な湿潤接着性(特にアルキド着色剤上でも)、及び良好な耐ブロッキング性、良好な重ね塗り性といった良好な適用技術特性を有し、塗布に際しては、良好な均展性を示す。使用する処理装置は、水で容易に洗浄可能である。
【0261】
紙塗工液で用いるための本発明によるポリマー分散液Pd)は、好適にはエマルジョンポリマー、少なくとも1種のモノマーM)、又はモノマー組み合わせを重合導入して含有し、これは以下のものから選択されている:
C
1〜C
10アルキル(メタ)アクリレート、及びその混合物、
少なくとも1種のC
1〜C
10アルキル(メタ)アクリレート、及び少なくとも1種のビニル芳香族化合物、特にスチレン、
少なくとも1種のビニル芳香族(特にスチレン)と、C
2〜C
8モノオレフィン、非共役型二重結合を少なくとも2つ有する非芳香族炭化水素(特にブタジエン)から選択される少なくとも1種のオレフィンとの混合物。
【0262】
エマルジョンポリマーの特別な態様は、ポリブタジエン結合剤であって、ブタジエンとビニル芳香族化合物(特にスチレン)、並びに任意で少なくとも1種の別のモノマーを重合導入して含むものである。ブタジエン対ビニル芳香族化合物の質量比は、例えば10:90〜90:10、好ましくは20:80〜80:20である。
【0263】
特に好ましいのは、ポリブタジエン結合剤であり、ここでエマルジョンポリマーは、少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも60質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%、殊に少なくとも90質量%が、2個の二重結合を有する炭化水素(殊にブタジエン)から、又はこのような炭化水素とビニル芳香族化合物(殊にスチレン)との混合物から成る。
【0264】
エマルジョンポリマーのさらなる特別な態様は、ポリアクリレート結合剤であって、少なくとも1種のC
1〜C
10アルキル(メタ)アクリレート、又は少なくとも1種のC
1〜C
10アルキル(メタ)アクリレートと、ビニル芳香族化合物(特にスチレン)との混合物を、重合導入して含有するものである。
【0265】
主モノマーの他に、ポリブタジエン結合剤及びポリカーボネート結合剤の中に含まれるエマルジョンポリマーは、別のモノマー、例えばカルボン酸基、スルホン酸基、又はホスホン酸基を有するモノマーを有することができる。好ましいのは、カルボン酸基、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、若しくはフマル酸、及びアコニット酸を有するモノマーである。好ましい態様においてエマルジョンポリマーは、少なくとも1種のエチレン性不飽和酸を、使用するモノマーの全質量に対して0.05〜5質量%の量で重合導入されて含む。
【0266】
さらに別のモノマーは、例えばヒドロキシル基も含有するモノマー、殊にC
1〜C
10−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、又はアミド、例えば(メタ)アクリルアミドである。
【0267】
成分として、紙塗工液は、殊に
a)結合剤
b)任意で増粘剤
c)任意で蛍光色素又はリン光色素、殊に蛍光増白剤として
d)顔料
e)さらなる助剤、例えば均染剤、又はそれ以外の染料
を含有する。
【0268】
結合剤としては、エマルジョンポリマーと高分岐ポリカーボネートとを含有する上述の水性ポリマー分散液Pd)を用いる。さらなる結合剤、例えばデンプンのような天然のポリマーも併用してよい。好ましくは、上述の水性ポリマー分散液の割合(固体、すなわちエマルジョンポリマー及び高分岐ポリカーボネートとして、水を含まずに計算)は、結合剤の全量に対して少なくとも50質量%、とりわけ好ましくは少なくとも70質量%、若しくは100質量%である。
【0269】
この紙塗工液は結合剤を、顔料100質量部に対して好ましくは1〜50質量部、特に好ましくは5〜20質量部の量で含有する。
【0270】
増粘剤b)として、合成ポリマーの他に、殊にセルロース、好ましくはカルボキシメチルセルロースが考慮される。
【0271】
顔料d)という用語は、ここでは無機固体と理解される。これらの固体は顔料として、紙塗工液の色(殊に白色)を調整し、かつ/又は単に不活性充填剤の機能を持つにすぎない。顔料は、一般的に白色顔料、例えば硫酸バリウム、炭酸カルシウム、スルホアルミン酸カルシウム、カオリン、タルク、二酸化チタン、酸化亜鉛、白亜、若しくはコーティングクレー(Streichclay)、又はケイ酸塩である。
【0272】
紙塗工液の製造は、通常の方法に従って行うことができる。
【0273】
本発明による紙塗工液は低い粘度を有し、かつ、例えば原紙またはボール紙のコーティングに良好に適している。コーティングおよび引き続く乾燥は、通常の方法に従って行うことができる。コーティングされた紙又はボール紙は良好な適用技術的な特性を有し、殊にそれらはまた公知の印刷法、例えばフレキソ印刷、凸版印刷、グラビア印刷、又はオフセット印刷で良好に印刷可能である。なかでもオフセット法の場合、それらは高い紙剥離強度、及び素早く良好なインク吸収性と水吸収性をもたらす。この紙塗工液によりコーティングされた紙は、全ての印刷法、殊にオフセット印刷において良好に使用することができる。
【0274】
本発明のさらなる対象は、先に定義した水性ポリマー分散液Pd)を、接着剤として膜製造に、皮革及び繊維用の結合剤又は助剤として、フリース物質の分野で、洗剤及び洗浄剤で、建築分野で、プラスチック変性のため、水硬性凝固材料で、トナー組成物用成分として、又は電気写真適用における添加剤として、用いる使用である。
【0275】
本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けることはない。
【0276】
実施例:
I.高分岐ポリマーの合成
使用物質:
ポリオール1:トリメチロールプロパンと、12倍モル過剰のエチレンオキシドとの反応生成物
DBTL:ジ−n−ブチルスズジラウレート
Nouracid HE30:ヒマワリ油の脂肪酸混合物;Emmerich在、OLEON GmbH社の製品であるD-46446。
【0277】
Nouracid LE80:亜麻仁油の脂肪酸混合物;Emmerich在、OLEON GmbH社の製品であるD-46446。
【0278】
超分岐ポリマーを、ゲル透過クロマトグラフィーを介して、検出器として屈折計を用いて分析した。移動相としてジメチルアセトアミドを用い、分子量を測定するための標準物質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を使用した。
【0279】
ヨウ素価の測定は、Kaufmann法によって測定した。酸価は、DIN 53402に従って測定した。このヒドロキシ価はDIN 53240、第2部により測定した。
【0280】
比較例1
不飽和脂肪酸無しの超分岐ポリカーボネートの合成
撹拌機、還流冷却器、内部温度計、及び窒素導管付きのHWS容器(5L)に、ポリオール1を3350.0g(5.00mol)、及びジエチルカーボネートを590.7g(5.00mol)装入し、この混合物に水酸化カリウム0.5gを添加して、pH値9に調節した。この混合物を、ゆっくりと撹拌しながら還流で加熱し、この沸騰している反応混合物を、140℃という反応混合物の沸点が、110℃の温度に下がるまで撹拌した。それから還流冷却器を、収容器を有する小型の(absteigend)冷却器で置き換え、反応混合物内に存在する低沸成分を留去し、ここで反応混合物の温度を最大200℃に上げた。留出物を集め、秤量し、理論的に可能な完全反応率をパーセンテージで算出した。88%の反応率に達した後(留出物405g)、反応混合物を冷却し、85%のリン酸を添加して、pH値を6に調整した。続いてこの反応混合物を140℃に加熱し、40mbarの真空下で10分間撹拌し、残留揮発成分を除去した。
【0281】
この超分岐ポリカーボネートは、以下のように同定された:Mn=2,750g/mol、Mw=5,660g/mol、OH数はポリマー1gあたり151mgKOH。
【0282】
実施例2:リノール酸残基による、超分岐ポリカーボネートの合成
撹拌機、還流冷却器、内部温度計、及び窒素導管付きの四つ首フラスコ(1,000mL)に、ポリオール1を508.4g(0.759mol)、及びジエチルカーボネートを122.2g(1.035mol)装入し、この混合物に水酸化カリウムを添加して、pH値9に調節した。この混合物を、ゆっくりと撹拌しながら還流で加熱し、この沸騰している反応混合物を、130℃という反応混合物の沸点が、112℃の温度に下がるまで撹拌した。それから還流冷却器を、収容器を有する小型の冷却器で置き換え、反応混合物内に存在する低沸成分を留去し、ここで反応混合物の温度を最大180℃に上げた。留出物を集め、秤量し、理論的に可能な完全変換率をパーセンテージで算出した。反応率が59%に達した後(留出物55.8g)、反応混合物を冷却し、Nouracid HE30を19.3g(0.069mol)、及びDBTLを一滴添加した。この反応を再度加熱し、4時間の間、200℃で撹拌した。それからこの反応を冷却し、85%のリン酸を添加してpH値を6に調節した。続いてこの反応混合物を140℃に加熱し、100mbarの真空下で1時間撹拌し、残留揮発成分を除去した。
【0283】
この超分岐ポリカーボネートは、リノール酸残基により以下のように同定された:Mn=3,090g/mol、Mw=8,640g/mol、酸価はポリマー1gあたり3mgKOH、ヨウ素価は、ポリマー100gあたりヨウ素4.3g。
【0284】
実施例3:リノレン酸残基による、超分岐ポリカーボネートの合成
撹拌機、還流冷却器、内部温度計、及び窒素導管付きの四つ首フラスコ(1,000mL)に、ポリオール1を508.5g(0.759mol)、及びジエチルカーボネートを122.3g(1.035mol)装入し、この混合物に水酸化カリウムを添加して、pH値9に調節した。この混合物を、ゆっくりと撹拌しながら還流で加熱し、この沸騰している反応混合物を、130℃という反応混合物の沸点が、112℃の温度に下がるまで撹拌した。それから還流冷却器を、収容器を有する小型の冷却器で置き換え、反応混合物内に存在する低沸成分を留去し、ここで反応混合物の温度を最大180℃に上げた。留出物を集め、秤量し、理論的に可能な完全変換率をパーセンテージで算出した。反応率が58%に達した後(留出物56g)、反応混合物を冷却し、Nouracid LE80を19.2g(0.069mol)、及びDBTLを一滴添加した。この反応体を再度加熱し、4時間の間、200℃で撹拌した。それからこの反応を冷却し、85%のリン酸を添加してpH値を6に調節した。続いてこの反応混合物を140℃に加熱し、100mbarの真空下で30分撹拌し、残留揮発成分を除去した。
【0285】
この超分岐ポリカーボネートは、リノレン酸残基により以下のように同定された:Mn=3,270g/mol、Mw=8,070g/mol、酸価はポリマー1gあたり4mgKOH、ヨウ素価は、ポリマー100gあたりヨウ素6.4g。
【0286】
実施例4:リノール酸残基による、超分岐ポリカーボネートの合成
撹拌機、還流冷却器、内部温度計、及び窒素導管付きの四つ首フラスコ(500mL)に、ポリオール1を238.2g(0.356mol)、及びジエチルカーボネートを57.3g(0.485mol)装入し、この混合物に水酸化カリウムを添加して、pH値9に調節した。この混合物を、ゆっくりと撹拌しながら還流で加熱し、この沸騰している反応混合物を、130℃という反応混合物の沸点が、112℃の温度に下がるまで撹拌した。それから還流冷却器を、収容器を有する小型の冷却器で置き換え、反応混合物内に存在する低沸成分を留去し、ここで反応混合物の温度を最大180℃に上げた。留出物を集め、秤量し、理論的に可能な完全変換率をパーセンテージで算出した。反応率が55%に達した後(留出物24.4g)、反応混合物を冷却し、Nouracid HE30を4.5g(0.016mol)、及びDBTLを一滴添加した。この反応体を再度加熱し、4時間の間、200℃で撹拌した。75%の反応率に達した後(留出物33.6g)、反応を冷却し、85%のリン酸を添加して、pH値を6に調整した。続いてこの反応混合物を140℃に加熱し、100mbarの真空下で1時間撹拌し、残留揮発成分を除去した。
【0287】
この超分岐ポリカーボネートは、リノール酸残基により以下のように同定された:Mn=4,000g/mol、Mw=20,000g/mol、酸価はポリマー1gあたり1mgKOH、ヨウ素価は、ポリマー100gあたりヨウ素3.6g。
【0288】
実施例5:リノレン酸残基による、超分岐ポリカーボネートの合成
撹拌機、還流冷却器、内部温度計、及び窒素導管付きの四つ首フラスコ(1,000mL)に、ポリオール1を487g(0.727mol)、及びジエチルカーボネートを117g(0.99mol)装入し、この混合物に水酸化カリウムを添加して、pH値9に調節した。この混合物を、ゆっくりと撹拌しながら還流で加熱し、この沸騰している反応混合物を、130℃という反応混合物の沸点が、112℃の温度に下がるまで撹拌した。それから還流冷却器を、収容器を有する小型の冷却器で置き換え、反応混合物内に存在する低沸成分を留去し、ここで反応混合物の温度を最大180℃に上げた。留出物を集め、秤量し、理論的に可能な完全変換率をパーセンテージで算出した。反応率が60%に達した後(留出物55g)、反応混合物を冷却し、Nouracid LE80を46g(0.165mol)、及びDBTLを一滴添加した。この反応を再度加熱し、4時間、200℃で、酸価がポリマー1gあたり4mgKOHに低下するまで撹拌した。それからこの反応を冷却し、85%のリン酸を添加してpH値を6に調節した。続いてこの反応混合物を140℃に加熱し、100mbarの真空下で1時間撹拌し、残留揮発成分を除去した。
【0289】
この超分岐ポリカーボネートは、リノレン酸残基により以下のように同定された:Mn=2,510g/mol、Mw=7,160g/mol、酸価はポリマー1gあたり4mgKOH、ヨウ素価は、ポリマー100gあたりヨウ素15.0g。
【0290】
II.ポリマー分散液の製造
実施例5:分散液Iの製造
供給装置と温度調整器を備える重合容器に、以下のものを装入した:
装入物:
水 528.0g
固体含分33%、平均粒径30nmのポリスチロールシード分散液 46.7g
15%のナトリウムラウリルスルフェート水溶液 3.67g。
【0291】
この後、撹拌しながら85℃に加熱した。引き続き、この温度を維持しながら供給流2の5質量%を添加し、5分攪拌した。その後、供給流1を180分で計量供給し、それと並行して供給流2の残量を195分で計量供給した。
【0292】
供給流1:
水 543.2g
15%のナトリウムラウリルスルフェート水溶液 125.4g
n−ブチルアクリレート 458.0g
メチルメタクリレート 399.6g
スチレン 165.1g
メタクリル酸 22.78g
ウレイドメタクリレート(N−(2−メタクリロキシエチル)イミダゾリン−2−オン) 21.45g
Bisomer MPEG 350 MA(英国在、Laporte Performance Chemicals社のメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート) 33.0g
供給流2:
水 83.6g
ペルオキソ二硫酸ナトリウム 4.4g。
【0293】
供給流1が終了した後、水22gを添加した;供給流2が終了した後、30分、後重合し、アンモニア7.47g(25%の水溶液)で中和した。その後、過酸化水素13.2g(5%の水溶液として)を添加し、水4.96g中のアスコルビン酸0.557gの溶液を60分で計量供給した。この後、この分散液を冷却し、125μmのフィルターで濾過した。46%の分散液が2.48kg得られた。
【0294】
III.応用技術的な実施例
1.ペンデル硬度の測定
アクリレート分散液Iを、添加なしで用いるか、又はそれぞれ95:5の比で(分散液と固体の超分岐ポリマーとの全質量に対して)、第1表に記載の超分岐ポリマーと混合した。引き続き、純粋な結合剤膜(湿潤層厚:250μm)を基材に塗布し、ペンデル硬度(DIN 53157準拠)のプロセスを時間とともにたどった。その結果は第1表にまとめられている。
【0295】
【表1】
【0296】
酸化架橋性超分岐ポリマーの添加時には、より迅速な硬化プロセスと、比較的高い最終硬度が得られることがわかる。
【0297】
2.水性塗料の製造
各成分(製造元は第1表と第2表を参照)を、以下の第3表に記載された量(質量部)と順序で、歯付きディスク攪拌機(Zahnscheibenruehrer)による攪拌下で計量供給した。二酸化チタン顔料の添加後に回転数を2000rpmに高め、顔料ペーストが滑らかになるまで、すなわち、小塊がなくなるまで分散させた。次いで、必要な場合には室温に冷却し、回転数を減少させた状態で残りの成分を加えた。
【0298】
【表2】
【0299】
【表3】
【0300】
【表4】
【0301】
3.水性塗料(被覆剤)の試験
【表5】
【0302】
乾燥剤あり/無しの着色剤
【表6】
【0303】
乾燥剤の添加により、最終硬度のさらなる向上が達成できる。