特許第5745278号(P5745278)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許5745278-有機半導体配合物 図000014
  • 特許5745278-有機半導体配合物 図000015
  • 特許5745278-有機半導体配合物 図000016
  • 特許5745278-有機半導体配合物 図000017
  • 特許5745278-有機半導体配合物 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745278
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】有機半導体配合物
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/40 20060101AFI20150618BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20150618BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20150618BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20150618BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20150618BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   H01L29/28 310J
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250H
   H01L29/78 618B
   H05B33/10
   H05B33/14 A
   H05B33/22 D
【請求項の数】21
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2010-549030(P2010-549030)
(86)(22)【出願日】2009年2月6日
(65)【公表番号】特表2011-515835(P2011-515835A)
(43)【公表日】2011年5月19日
(86)【国際出願番号】EP2009000821
(87)【国際公開番号】WO2009109273
(87)【国際公開日】20090911
【審査請求日】2012年2月3日
(31)【優先権主張番号】08004121.3
(32)【優先日】2008年3月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ、 マーク
(72)【発明者】
【氏名】メイ、 フィリップ エドワード
【審査官】 綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/018271(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/125811(WO,A1)
【文献】 特開2007−204721(JP,A)
【文献】 特開2007−273957(JP,A)
【文献】 特開2006−054063(JP,A)
【文献】 PARK et al.,“F-TES ADT Organic Integrated Circuits on Glass and Plastic Substrates”,Electron Devices Meeting, 2007. IEDM 2007. IEEE International,米国,IEEE,2007年12月,p.225-228
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 27/28
H01L 29/786
H01L 51/00
H01L 51/05−51/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機電子(OE:organic electronic)デバイスを製造する方法であって、
a)基板上にフレキソ印刷またはグラビア印刷で配合物を堆積する工程と、
ただし、該配合物は、1種類の溶媒または2種類以上の溶媒を含む溶媒混合物に有機半導体(OSC)化合物を溶解して調製され、
該溶媒または該溶媒混合物が、該OSC化合物および添加剤を全く含まない状態で以下の条件:
溶媒の分配率logP、または、該溶媒混合物の分配率の重量平均(logP)が、1.5より大きいこと、および
溶媒の粘度、または、該溶媒混合物の粘度が、25℃において10cPより高いこと、および
溶媒の沸点、または、溶媒混合物の場合は該溶媒混合物中で最も沸点が高い溶媒の沸点が、1Torrの圧力において400℃より低いこと
を満たし、
b)蒸発によって、該溶媒または該溶媒混合物を除去する工程と
を含む方法。
【請求項2】
OSC化合物を、0.005〜50重量%の濃度で、溶媒または溶媒混合物に溶解することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該溶媒の沸点、または、該溶媒混合物中で最も沸点が低い溶媒の沸点が、大気圧において130℃より高いことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該溶媒の粘度、または、該溶媒混合物の粘度が、25℃において50cPより高いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該溶媒のlogP、または、該溶媒混合物の重量平均logPが、2.5より大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
添加剤を全く含まない該溶媒の表面張力、または該溶媒混合物の表面張力が、15dyne/cmより大きく、80dyne/cmより小さいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該溶媒または該溶媒混合物中の少なくとも1種類の溶媒は、1−シクロヘキシル−2−ピロリジノン、N−シクロヘキシル−ピロリジノン、テトラリン、デカリン、メチル化ベンゼン、テルペノイド、ナフトールおよびメチル化脂環式アルコールから成る群より選択されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該溶媒混合物中の少なくとも1種類の溶媒は、o−、m−およびp−キシレンから成る群より選択されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該テルペノイドは、α−テルピネオール、メントールおよびカルベオールから成る群より選択されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
該テルペノイドは、メントールおよびカルベオールから成る群より選択されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
該ナフトールは、デカヒドロ−2−ナフトールおよび1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトールから成る群より選択されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
該メチル化脂環式アルコールは、3−および4−メチルシクロヘキサノールおよび2,5−ジメチルシクロヘキサノールから成る群より選択されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
該溶媒混合物は高粘度溶媒および低粘度溶媒を含み、
該高粘度溶媒は、デカヒドロ−2−ナフトールおよび1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトールから成る群より選択され、
該低粘度溶媒は、メチル化ベンゼン、テトラリンおよびデカリンから成る群より選択されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
該メチル化ベンゼンは、o−、m−およびp−キシレンから成る群より選択されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該溶媒混合物は、
(1)比率が5/95〜40/60であるo−キシレン/デカヒドロ−2−ナフトールの二成分の混合物、
(2)比率が25/75〜50/50であるテトラリン/1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトールの二成分の混合物、および
(3)比率が25/75〜50/50であるデカリン/デカヒドロ−2−ナフトールの二成分の混合物
から成る群より選択されることを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
該OSC化合物が、置換ポリアセンまたはポリ(3−置換チオフェン)より選択されることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
該OSC化合物が、式I3の化合物から選択されることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【化1】
(式中、
およびYの一方は−CH=または=CH−を表し、他方は−X−を表し、
およびYの一方は−CH=または=CH−を表し、他方は−X−を表し、
Xは、−O−、−S−、−Se−または−NR’’’−であり、
Rは、複数出現する場合は互いに独立に、1〜20個、好ましくは1〜8個のC原子を有する環状、直鎖状または分岐状のアルキルまたはアルコキシ、または、2〜30個のC原子を有するアリールであり、それらは全てフッ素化またはペルフルオロ化されていてもよく、SiRは、好ましくは、トリアルキルシリルであり、
R’は、H、F、Cl、Br、I、CN、1〜20個、好ましくは1〜8個のC原子を有する、フッ素化またはペルフルオロ化されていてもよい直鎖状または分岐状のアルキルまたはアルコキシ、または、6〜30個のC原子を有する、フッ素化またはペルフルオロ化されていてもよいアリール、好ましくは、C、またはCOR”(式中、R”は、H、1〜20個のC原子を有する、フッ素化されていてもよいアルキル、または、2〜30個、好ましくは5〜20個のC原子を有する、フッ素化されていてもよいアリールである。)であり、
R’’’は、H、または、1〜10個のC原子を有する環状、直鎖状または分岐状のアルキル、好ましくは、Hであり、
mは、0または1であり、
oは、0または1であり、
ただし、XがSの場合、R’は水素ではない。)
【請求項18】
有機電子(OE:organic electronic)デバイスの製造で使用され、フレキソ印刷またはグラビア印刷用であり、1種類の溶媒または2種類以上の溶媒を含む溶媒混合物に有機半導体(OSC)化合物が溶解されている印刷インキであって、
該溶媒または該溶媒混合物が、該OSC化合物および添加剤を全く含まない状態で以下の条件:
該溶媒の分配率logP、または、該溶媒混合物の分配率の重量平均(logP)が、1.5より大きいこと、および
該溶媒の粘度、または、該溶媒混合物の粘度が、25℃において10cPより高いこと、および
該溶媒の沸点、または、該溶媒混合物の場合は該溶媒混合物中で最も沸点が高い溶媒の沸点が、1Torrの圧力において400℃より低いこと
を満たす印刷インキ。
【請求項19】
有機電子(OE:organic electronic)デバイスの製造で、フレキソ印刷またはグラビア印刷における請求項18に記載の印刷インキの使用。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法で製造されるOEデバイス。
【請求項21】
有機電界効果トランジスタ(OFET)、集積回路(IC)、薄膜トランジスタ(TFT)、無線識別(RFID)タグ、有機発光ダイオード(OLED)、有機発光トランジスタ(OLET)、電子発光ディスプレイ、有機光起電力(OPV)セル、有機太陽電池(O−SC)、フレキシブルOPVおよびO−SC、有機レーザーダイオード(O−laser)、有機集積回路(O−IC)、照明装置、センサーデバイス、電極材料、光導電体、光検出器、電子写真記録装置、キャパシタ、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、導電性基板、導電性パターン、光導電体、電子写真装置、有機メモリー素子、バイオセンサーおよびバイオチップより選択されることを特徴とする請求項20に記載のOEデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体(OSC:organic semiconductor)および1種類以上の有機溶媒を含む配合物の調製方法と、この方法によって得られる新規な配合物と、有機電子(OE:organic electronic)デバイス、特に、有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)および有機光起電力(OPV:organic photovoltaic)セルを製造するためのコーティングまたは印刷インキとしての該配合物の使用と、該新規な配合物を使用するOEデバイスの製造方法と、そのような方法または新規な配合物から製造されるOEデバイスとに関する。
【背景技術】
【0002】
OFETまたはOPVセルなどのOEデバイス、または、有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)などの有機発光デバイス、特に、フレキシブルデバイスを製造する際、OSC材料の層を塗工するために、通常、コーティングまたは印刷技術を使用する。OEデバイスの製造のために先行技術においてこれまで使用されてきた印刷配合物は、通常、溶液系であり、芳香族または脂肪族有機溶媒を含み、低粘度を有する傾向がある。この手法はスピンコートおよびインクジェット印刷(IJP:ink jet printing)製造方法に対しては良好に機能するが、最近、デバイスを製造するために、フレキソ印刷またはグラビア印刷などの従来の印刷技術を使用することに対する関心が高まっている。このため、特に、溶媒および粘度上昇剤などの任意成分である添加剤の選択に関して、異なるタイプの配合物が必要とされている。
【0003】
多くの印刷方法が、フレキソ印刷およびグラビア印刷用のインクのみならず、ホットジェットIJP、静電IJP、ソフトリソグラフィーおよびそれらの変法、またはマイクロスタンプ用のインクを含む、中程度の粘度(典型的には、10〜1000cP)を有する配合物を使用する。しかしながら、OSC材料を効率的に印刷するためには、幾つかの制限がある。
【0004】
よって、単一の溶媒または揮発性溶媒の混合物と、機能性材料を単独で、または追加の粘度調整剤またはバインダーを最低限添加して組み合わせることにより、印刷用に液体特性を修正する必要がある。これにより、典型的には、例えば、テトラリンまたはキシレン溶液などからのような、10cP未満の粘度を有する配合物となる。フレキソ印刷およびグラビア印刷は、典型的には、良好な印刷品質を得るためには10cPを超える粘度を必要とし、多くの場合、25〜100cPの範囲内、または5000cPまでさえの粘度を有する配合物が使用される。
【0005】
通常、活性物質の溶液が好ましい。例えば、上述の範囲内の粘度を有する高粘度ポリオールは、OSC材料の親水性のために、関心のある典型的なOSC材料を溶解しないか相溶しない。加えて、高粘度ポリオールは、多くの場合、基板および製造プロセスの他の部品と適合しない。
【0006】
しかしながら、一方で、有用な溶媒の粘度を10cPより高くまで上昇させる通常の粘度調整剤(例えば、シリカ、クレイなどの無機物、または、Mが非常に高いポリマー、ポリアルコールなど)は、OEデバイスの性能を破壊する傾向がある。加えて、シリカおよびクレイは、低剪断流に悪影響を及ぼし、インクをIJ、グラビア印刷およびフレキソ印刷に不適切なものにすることがある。
【0007】
例えば、スピンコートおよび標準的なIJP技術のためには、多くの場合、低粘度(10cP未満)が必要とされ、一方、例えば、スクリーン印刷、オフセットリソグラフ印刷などのためには、通常、高粘度(1000cPより高い)が必要とされる。
【0008】
米国特許第6,541,300号明細書(特許文献1)には、OSC材料と多成分の溶媒混合物とを混合し、得られる混合物を基板に塗工することにより、OEデバイスにおいて使用するためのOSCフィルムを製造する方法が開示されている。多成分の溶媒混合物の中の1種類の溶媒のみを使用して製造されるOSCフィルム、またはこのOSCフィルムを含むOEデバイスと比較して、溶媒混合物を使用して得られるOSCフィルムはより高い移動度を有し、得られるOEデバイスはより高いオン/オフ比を有することが主張されている。しかしながら、特許請求されている方法は、その望ましい結果、即ち、より高い移動度およびより高いオン/オフ比によってのみ特徴付けられており、この結果を達成することができる手段によっては特徴付けられていない。特に、当該文献には、当業者に対して、使用可能な配合物を得るために適切な溶媒をどのように選択するのかという明確な指針が与えられていない。当該文献は、溶媒混合物の溶媒が、以下の式によって与えられる複合極性(φ)が0.1〜1.0でなければならないと述べているのみである。
【0009】
【数1】
ここで、nは溶媒の数であり、φは溶媒混合物中の一溶媒の極性であり、χは溶媒混合物中の一溶媒のモル分率である。しかしながら、このパラメータを除けば、当該文献には、OSC化合物の選択、および、選択されたOSC化合物に最も適する溶媒の選択に関する限定または指針が全く与えられていない。当該文献には、OSC化合物のリスト(ポリマーおよび小分子を含む)、および、低い値から高い値までの極性を有する溶媒のリストが開示されているが、これら全ての溶媒が開示されるOSC化合物を容易に溶解するかは明らかではない。しかしながら、溶媒がOSC材料を溶解しない場合、得られるOSCフィルムの形態が損なわれ、OEデバイスの性能に悪影響を及ぼすことがあるため、得られる混合物は、しばしば、OSCフィルムおよびOEデバイスの製造には適さないことが知られている。従って、米国特許第6,541,300号明細書(特許文献1)の教示に鑑みると、当該文献において開示された所定のOSC材料に適切な溶媒を見出すためには、なお著しい労力が必要である。
【0010】
国際公開第03/069959号パンフレット(特許文献2)には、混合溶液を用いる湿式成膜法によって形成される、電子発光(EL:electroluminescent)デバイスにおいて使用するためのOSCフィルムが開示されている。この混合溶液は、少なくとも2種類の有機化合物を、揮発度および有機化合物に対する溶解度が異なる少なくとも2種類の有機溶媒を含む混合有機溶媒中に溶解することによって調製される。再び、当該文献においても、可能性のある溶媒および有機化合物の膨大なリストが開示されているが、所定の有機化合物に適切な溶媒をどのように選択できるのかという明確な指針は与えられていない。代わりに、異なる揮発度を有する少なくとも2種類の有機溶媒の選択が有機化合物の特性に依存することがあると述べられているにすぎない。
【0011】
欧州特許出願公開第1416069号明細書(特許文献3)には、OSC材料としてポリアセンを含むOSC要素が開示されている。当該文献には、更に、ポリアセンを溶媒に溶解できること、および、2種類以上の溶媒の組み合わせを使用できることが記載されている。しかしながら、標準的な溶媒のリストを除けば、どの特定の溶媒または溶媒の組み合わせが好ましいかは全く記載されておらず、適切な溶媒の選択に関する具体的な指針は与えられていない。
【0012】
国際公開第2005/041322号パンフレット(特許文献4)には、少なくとも1種類の有機ポリマー、第1の溶媒および第2の溶媒を含み、第1の溶媒は第2の溶媒よりも溶解度が低く、蒸発速度がより速く、第2の溶媒は非常に低い溶解度を有する、OEデバイスにおいて使用するための有機ポリマー溶液が開示されている。また、電極上に溶液を付着させ、それを乾燥させることによってOEデバイスを製造する方法が特許請求されている。溶媒が異なる溶解度および蒸発速度を有するために、実質的に均一なポリマー層が形成されると主張されている。しかしながら、適切な溶媒の選択のための基礎となる溶媒特性の具体的な値またはパラメータの範囲は与えられていない。
【0013】
欧州特許出願公開第1122793号明細書(特許文献5)には、有機EL材料、および、室温において最大で水の5重量%の溶解力を有する疎水性の有機溶媒または溶媒混合物を含むインクより製造される有機発光デバイスが開示されている。しかしながら、この値は、先行技術において既知の実質的に全てのOLED溶媒に当てはまり、従って、実際の限定とはならない。更に、インクは5000cP以下、好ましくは100cP以下の粘度を有していなければならないと記載されている。しかしながら、これらの値を達成するための具体的な溶媒をどのように選択するかという指針はない。このため、特に、不揮発性増粘剤を使用することなく、高粘度を有する小分子の希薄溶液を調製しようとする場合、適切な溶媒の選択はなお困難である。
【0014】
国際公開第03/053707号パンフレット(特許文献6)には、可溶性EL材料、120℃および200℃の間の沸点を有する有機溶媒、および50cPを超える粘度を維持するための粘度上昇剤を含むスクリーン印刷可能なELポリマーインクが開示されている。この有機溶媒は、好ましくは、8.8〜10.0(cal/cm1/2の溶解度パラメータを有していなければならない。当該文献において記載されている粘度調整剤の大多数は、ポリマーまたは無機粒子であり、1〜20%の濃度の抑制剤は、溶媒の蒸発を低減し、インクの安定性および加工性を向上させ、それらは市販されている製品であってもよい。しかしながら、この文献において提案されているように、加工添加剤を使用することは、これらの加工添加剤が溶媒の除去後にOSC層中に残存し、デバイスの性能に悪影響を及ぼし、破壊することさえもあるため、OEデバイスを製造するためのOSC印刷インキにおいては必ずしも望ましくはない。それよりも、加工添加剤を全く含まず、乾燥後に、OSC層中には純粋な活性OSC材料のみが残ることがより好ましい。従って、活性OSC材料を除いて、インクは、好ましくは、揮発性成分のみを含有するべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第6,541,300号明細書
【特許文献2】国際公開第03/069959号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願公開第1416069号明細書
【特許文献4】国際公開第2005/041322号パンフレット
【特許文献5】欧州特許出願公開第1122793号明細書
【特許文献6】国際公開第03/053707号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、OEデバイス、特に、OFETおよびOPVセルの製造に適したOSC材料の改良された配合物およびインクを提供する方法であって、適切な粘度を有し、デバイスの性能および寿命に悪影響を及ぼさない溶媒の広範だが正確な選択を可能にする方法に対する要求が依然としてある。本発明の一つの目的は、そのような方法を提供することである。本発明の他の目的は、そのような方法より得られる改良されたOSC配合物を提供することである。本発明の他の目的は、そのようなOSC配合物より得られる改良されたOEデバイスを提供することである。更なる目的は、以下の記載より当業者には直ちに明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の発明者らは、本発明において特許請求されているOSC配合物を提供する方法によって、これらの目的を達成でき、上述の問題を解決できることを見出した。特に、本発明の発明者らは、溶媒の分配率(logP)、および粘度、沸点などの他のパラメータによって適切な溶媒または溶媒混合物を選択することにより、OSC配合物を調製する方法を見出した。これらのパラメータの特定の範囲内において溶媒を適切に選択することにより、溶媒がOE化合物を有効なレベルで溶解し、更に、所望の印刷またはコーティング技術に適した揮発性を有する、改良されたOSC配合物を提供することができることが見出された。このパラメータは、純粋な溶媒、即ち、不揮発性添加剤を全く含まない溶媒について規定されるため、当業者が適切な溶媒および添加剤を選択することはより容易であり、当業者が適切な溶媒を選択し、例えば、粘度を調整するための増粘剤を使用する必要なく、OSCコーティングまたは印刷インキを調製することはより容易である。所望により、これらの溶媒より作製されるコーティングまたは印刷インキを、必要に応じて、粘度を調整するために、より低い粘度の溶媒で希釈することもできる。粘度上昇添加剤または粘度調整添加剤の使用は必ずしも必要ではないが、デバイスの性能に悪影響を及ぼさないように、それらを少量添加してもよい。
【0018】
<発明の概要>
本発明は、OSC配合物を調製する方法であって、有機半導体(OSC:organic semiconducting)化合物を溶媒、または2種類以上の溶媒を含む溶媒混合物に溶解する工程を含み、該溶媒が以下の条件:
添加剤を全く含まない該溶媒の分配率logP、または、該溶媒混合物の分配率の重量平均(logP)が1.5より大きいこと、および
添加剤を全く含まない該溶媒または該溶媒混合物の粘度が25℃において10cPより高いこと、および
添加剤を全く含まない該溶媒の沸点、または、溶媒混合物の場合は該溶媒混合物中で最も沸点が高い溶媒の沸点が1Torrの圧力において400℃より低いこと、
を満たすように溶媒を選択することを特徴とする方法に関する。
【0019】
本発明は、更に、この方法によって得られる、または得られた配合物に関する。
【0020】
本発明は、更に、OSC化合物と、有機溶媒、または2種類以上の有機溶媒の溶媒混合物を含む配合物であって、
添加剤を全く含まない該溶媒の分配率logP、または、該溶媒混合物の分配率の重量平均(logP)が、1.5より大きく、
添加剤を全く含まない該溶媒または該溶媒混合物の粘度が、25℃において10cPより高く、および
添加剤を全く含まない該溶媒または該溶媒混合物の沸点が、1Torrの圧力において400℃より低い
ことを特徴とする配合物に関する。
【0021】
本発明は、更に、コーティングまたは印刷インキとして、および/または、OEデバイスの製造のために、特に、OFETおよびOPVセルのために、非常に好ましくは、これらのタイプのフレキシブルデバイスのために、上および下に記載される通りの配合物を使用することに関する。
【0022】
本発明は、更に、有機電子(OE:organic electronic)デバイスを製造する方法であって、
a)基板上に、上および下で記載される通りの配合物を堆積する工程と、
b)例えば、蒸発によって、溶媒を除去する工程と
を含む方法に関する。
【0023】
本発明は、更に、上および下で記載される通りの配合物から、および/または方法によって製造されるOEデバイスに関する。
【0024】
OEデバイスとしては、これらに限定されないが、有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)、集積回路(IC:integrated circuit)、薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)、無線識別(RFID:Radio Frequency Identification)タグ、有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)、有機発光トランジスタ(OLET:organic light emitting transistor)、電子発光ディスプレイ、有機光起電力(OPV:organic photovoltaic)セル、有機太陽電池(O−SC:organic solar cell)、フレキシブルOPVおよびO−SC、有機レーザーダイオード(O−laser:organic laser diode)、有機集積回路(O−IC:organic integrated circuit)、照明装置、センサーデバイス、電極材料、光導電体、光検出器、電子写真記録装置、キャパシタ、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、導電性基板、導電性パターン、光導電体、電子写真装置、有機メモリー素子、バイオセンサーおよびバイオチップが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明によるボトムゲートOFETの構造を例示的および概略的に示す。
図2図2は、本発明によるトップゲートOFETの構造を例示的および概略的に示す。
図3図3は、本発明によるOPVデバイスの構造を例示的および概略的に示す。
図4図4は、本発明によるInverted OPVデバイスの構造を例示的および概略的に示す。
図5図5は、例2のOFETデバイスの性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<用語および定義>
文脈が特に明記していない限り、本明細書において使用される場合、本明細書中の用語の複数形は単数形を含むと解され、逆もまた同様である。
【0027】
本明細書の記載および特許請求の範囲を通して、用語「含む」および「含有する」およびその用語の変形、例えば、「含んでいる」および「含む」は、「これに限定されることなく含む」ことを意味し、他の成分を除外することを意図するものではない(除外するものではない)。
【0028】
用語「ポリマー」は、ホモポリマーおよびコポリマー、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体またはブロック共重合体を含む。加えて、以下本明細書で用いる用語「ポリマー」はデンドリマーも含み、それは、例えば、M.FischerおよびF.Vogtle、Angew.Chem.,Int.Ed.1999年、38巻、885頁に記載されているように、典型的には、多官能性のコア基から成り、このコア基に更に分岐状のモノマーが規則的に付加し、樹状構造になっている分岐状の高分子化合物である。
【0029】
用語「共役ポリマー」は、その骨格(または主鎖)中に主としてsp混成軌道、またはsp混成軌道でもよいC原子を含有するポリマーを意味し、ヘテロ原子で置換されていてもよく、介在するσ結合を越えて一方のπ軌道ともう一方のπ軌道との相互作用が可能である。最も単純な場合、これは、例えば、炭素−炭素(または炭素−ヘテロ原子)単結合と、多重(例えば、二重または三重)結合とが交互する骨格であるが、1,3−フェニレンなどの単位を含むポリマーも含まれる。これに関連して、「主として」は、共役の遮断になることがある、自然に発生する欠陥を有するポリマーであっても、共役ポリマーと見なすことを意味する。また、この意味には、骨格が、例えば、アリールアミン、アリールホスフィン、および/または、ある種のヘテロ環(即ち、N、O、PまたはS原子を介した共役)、および/または、金属有機錯体(即ち、金属原子を介した共役)などの単位を含むポリマーも含まれる。用語「共役連結基」は、sp混成軌道またはsp混成軌道のC原子またはヘテロ原子から成る2個の環(通常、芳香環)を連結する基を意味する。「IUPAC Compendium of Chemical terminology,Electronic version」も参照のこと。
【0030】
特に明記していない限り、分子量は数平均分子量Mまたは重量平均分子量Mで与えられ、特に明記していない限り、ポリスチレン標準に対するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。
【0031】
重合度(n)は数平均重合度を意味し、特に明記していない限り、n=M/M(式中、Mは、単一の繰り返し単位の分子量である。)で与えられる。
【0032】
用語「小分子」は、単量体、即ち重合体でない化合物を意味する。
【0033】
特に明記していない限り、固体のパーセンテージは重量パーセント(重量%,wt%)であり、液体のパーセンテージまたは比率(例えば、溶媒混合物中の、など)は容量パーセント(容量%,vol%)であり、温度は摂氏温度(℃)で与えられ、「室温(RT)」は25℃を意味し、「b.p.」は沸点を意味し、「大気圧」は760Torr、すなわち1013hPaを意味する。
【0034】
用語「揮発性物質」は、基板またはOEデバイス上にOSC材料を堆積した後、OSC材料またはOEデバイスを著しく損傷させない条件(温度および/または減圧など)下において、蒸発によってOSC材料から除去できる化合物または添加剤を意味する。好ましくは、このことは、添加剤が、用いられる圧力において、非常に好ましくは大気圧(1013hPa)において、300℃未満、より好ましくは135℃以下、最も好ましくは120℃以下の沸点または昇華温度を有することを意味する。用語「非揮発性物質」は、上記の通りの意味において揮発性ではない化合物または添加剤を意味する。
【0035】
化合物または溶媒の分配率logP(文献においては、「分配係数」とも呼ばれる)は、式(1)によって与えられる。
【0036】
【数2】
式中、[A]octはオクタノール中の化合物または溶媒の濃度であり、[A]aqは水中の化合物または溶媒の濃度である。
【0037】
(IUPAC Compendium of Chemical Terminology,Electronic version、http://goldbook.iupac.org/P04440.html、PAC 1993年、65巻、2385頁、および、C.Hansch、Acc.Chem.Res.2巻、232頁、(1969年)を参照のこと。)
【0038】
2種類以上の溶媒を含む溶媒混合物の場合、混合物の分配率は、式(2)によって与えられる通り、混合物に含有される全ての溶媒の分配率の重量平均(logP)として定義される。
【0039】
【数3】
式中、nは溶媒の数、logPは溶媒混合物中の一溶媒のlogP値、wは溶媒混合物中の当該溶媒の重量分率(重量%の濃度/100)である。
【0040】
特に明記していない限り、等しい容量の水およびオクタノールの希薄溶液を平衡化後、それぞれの相における濃度を測定して(例えば、GC、HPLC、UV/可視光などにより)logP値を測定するか、あるいは、Cambridge Soft社が製造・販売している「Chem Bio Draw Ultra version 11.0(2007年)」ソフトウェアを使用して、分子計算によりlogPを計算する。
【0041】
特に明記していない限り、粘度の値は、500s−1の剪断速度で、平行板回転粘度計またはレオメーター(TA Instruments社)によって測定する。
【0042】
特に明記していない限り、表面張力の値は、FTA表面張力計を使用して、液滴形状の解析によって測定する。
【0043】
特に明記していない限り、上記および下記の全ての物理的特性および値は25℃の温度に関する。
【0044】
<発明の詳細な記載>
本発明による方法により、好ましくは有機溶媒より選択され、OSC化合物を有効なレベルで溶解し、印刷法に適した範囲内の粘度、好ましくは、室温(25℃)において10〜700cP、より好ましくは10〜630cPの範囲内の粘度を有する具体的な溶媒および溶媒混合物を特定することが可能になる。
【0045】
さらに、溶媒混合物全体の粘度が10cPより高い限り、所望により、必要に応じて粘度を調整するために、これらの溶媒から作製されるインクを、より低粘度の溶媒で希釈することができる。
【0046】
配合物の重要なパラメータは、以下の通りである。
−添加剤を全く含まない溶媒または溶媒混合物が、25℃において10cPより高い粘度を有する。
−溶媒、または、溶媒混合物の場合は溶媒混合物中で最も沸点が高い溶媒が、1Torrにおいて400℃より低い沸点を有する。
−Cambridge Soft社が製造および販売している「Chem Bio Draw Ultra version 11.0(2007年)」ソフトウェアによって計算される溶媒の分配率の対数logP、または、溶媒混合物の分配率の重量平均(logP)が、1.5より大きい。
−好ましくは、OSC化合物を、0.005〜50重量%の濃度で、溶媒または溶媒混合物に溶解する。
【0047】
配合物の特性を向上させるために、1種類以上の以下の添加剤を加えてもよい。
a)好ましくは、それらがデバイスの性能に悪影響を及ぼさない濃度の1種類以上の粘度上昇剤。
b)1種類以上の界面活性剤。
c)印刷された配合物の物理的特性、電気的特性または安定性を改良する1種類以上のポリマー。
【0048】
粘度上昇剤a)の濃度は、好ましくは、OSC化合物の量に対して0.001〜200重量%である。好ましくは、粘度を更に上げるために、粘度上昇剤として1種類以上のポリマーを加える。適切で好ましいポリマーは、例えば、低Mポリエチレンのホモポリマーまたはコポリマー、低Mポリプロピレン、他の炭化水素骨格ポリマー、ポリブタジエン、ポリエチレンおよびプロピレンオキシド、ポリスチレン、α−メチルポリスチレン、会合性増粘剤、例えばSepton(登録商標)4099などのSepton(登録商標)ポリマー(Kuraray America社より入手可能)、ポリトリアリールアミン、または、バインダーとして使用するために米国特許出願公開第2007/0102696号明細書に開示されているポリマーなどの有機溶媒に可溶なポリマーから成る群より選択される。
【0049】
界面活性剤b)の濃度は、好ましくは、組成物全体に対して0.001〜1.0重量%、非常に好ましくは0.05〜0.5重量%である。これらの界面活性剤の主な目的は、ぬれ性を改善するために、溶液の表面エネルギーを低減させることである。適切で好ましい界面活性剤としては、これらに限定されないが、フッ化炭素、フッ素変性生成物、シリコーン系生成物、アセチレンジオールおよびポリアクリレート、または、アルコールアルコキシレートなどの他の生成物から成る群より選択されるものが挙げられる。これらの界面活性剤の多くは、例えば、「Fluor(登録商標)」(Cytonics社より)、「Zonyl(登録商標)」(Dow社より)、「Byk(登録商標)」(Byk Chemie/Altana社より)、「Tego(登録商標)」(Tego/Evonik社より)または「Surfynol(登録商標)」(Air Products社より)の名前で市販されている。フッ化炭素界面活性剤の例としては、これらに限定されないが、Fluor N361または362、Zonyl FSG(フッ素化メタクリレートポリマー)、Zonyl FSN100(エトキシ化非イオン性フッ素化界面活性剤)などが挙げられる。フッ素変性界面活性剤の例は、Byk 388(フッ素変性ポリアクリレート)、Byk 340(高分子量フッ素化界面活性剤)などである。シリコーン系界面活性剤の例としては、これらに限定されないが、Tego Wet 270(ポリエーテルシロキサンコポリマー)、Tego Wet KL245(ポリエーテルシロキサンコポリマー)、Tego Twin 4000(シロキサン系ジェミニ界面活性剤)、Byk 307(ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンコポリマー)、Byk 310(ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン)、Byk 331(ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンコポリマー)などが挙げられる。アセチレンジオールの例としては、これに限定されないが、Surfynol 104などが挙げられる。ポリアクリレート界面活性剤の例としては、これに限定されないが、Byk 361 Nなどが挙げられる。他の製品の例としては、これに限定されないが、Byk Dynwet 800(アルコールアルコキシレート)などが挙げられる。
【0050】
物理的特性を改良するポリマーc)の濃度は、好ましくは、OSC化合物の量に対して0.001〜200重量%である。好ましくは、これらのポリマーは、上述の粘度上昇剤a)と同一の群のポリマーより選択される。
【0051】
また、配合物は「ホットメルト」型インクであってもよく、即ち、その配合物は、ジェット温度または印刷温度においては液体であるが、室温では固体である。
【0052】
残渣を実質的に残さない必要がある場合、溶媒は、大気圧または減圧(10−7Torrまで)および/または加熱(500℃まで)で蒸発または昇華させることができることが好ましい。溶媒、または溶媒混合物中で最も沸点が高い溶媒の沸点は、1Torrおよび好ましくは大気圧において400℃より低く、より好ましくは、1Torrおよび好ましくは大気圧において300℃より低く、または、好ましくは20Torrにおいて200℃より低い。
【0053】
更に好ましくは、溶媒、または溶媒混合物中で最も沸点が低い溶媒の沸点は、大気圧において130℃以上、より好ましくは130℃より高い。
【0054】
25℃において溶媒が液体である場合、25℃における溶媒の粘度は10cPより高い。25℃における溶媒混合物の粘度は10cPより高い。溶媒または溶媒混合物は、好ましくは25℃において15cPより高い粘度、より好ましくは25℃において20cPより高い粘度、最も好ましくは25℃において50cPより高い粘度を有する。
【0055】
溶媒の分配率(logP)、または、溶媒混合物の分配率の重量平均(logP)の計算値は1.5より大きく、より好ましくは2より大きく、最も好ましくは2.5より大きい。好ましくは、これらの値は、それぞれの溶媒に対して計算されるlogPに関する。
【0056】
添加剤を全く含まない溶媒または溶媒混合物の表面張力は、好ましくは15dyne/cmより大きく、80dyne/cmより小さく、より好ましくは25dyne/cmより大きく、60dyne/cmより小さい。
【0057】
本発明による配合物またはインクを使用して、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、マイクロ密着印刷、ソフトリソグラフィー、スタンプなどのコーティングまたは印刷方法によって、基板またはデバイスに、OSC化合物などの機能性材料を塗工することができる。最も好ましくは、フレキソ印刷、グラビア印刷またはインクジェット印刷において本発明のインクを使用する。
【0058】
印刷される物の大きさは、それぞれ、直径約1μm以下の線または点から、数mの範囲の大面積まで、好ましくは10μm〜1mの範囲であることができる。印刷されたOSC層の厚さは、最も好ましくは50〜300nmである。
【0059】
任意成分として、配合物は、配合物の粘度を増加させる1種類以上の添加剤(粘度上昇剤)を含んでもよい。例えば、少量の、好ましくは、OSC化合物の量に対して0.001〜200重量%の1種類以上のポリマーを、粘度を更に上げるために、添加してもよい。適切で好ましいポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、Septon(登録商標)4099などのSepton(登録商標)ポリマー(Kuraray America社より入手可能)、ポリトリアリールアミンなど、または、バインダーとして使用するために米国特許出願公開第2007/0102696号明細書に開示されているポリマーが挙げられる。しかしながら、好ましくは、配合物は、OSC化合物以外に非揮発性の添加剤を全く含有しない。
【0060】
溶媒は、一般に、上述の物理的基準を満たす全ての化学物質類より選択することができ、これらに限定されないが、脂肪族または芳香族炭化水素、アミン、チオール、アミド、エステル、エーテル、ポリエーテル、アルコール、ジオールおよびポリオールが挙げられる。適切で好ましい溶媒としては、例えば、1−シクロヘキシル−2−ピロリジノン(N−シクロヘキシル−ピロリジノン)、o−、m−またはp−キシレンなどのメチル化ベンゼン、α−テルピネオール、メントールまたはカルベオールなどのテルペノイド、デカヒドロ−2−ナフトールまたは1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトールなどのナフトール、および3−または4−メチルシクロヘキサノールまたは2,5−ジメチルシクロヘキサノールなどのメチル化脂環式アルコールが挙げられる。
【0061】
高粘度の好ましい溶媒としては、例えば、デカヒドロ−2−ナフトールおよび1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトールが挙げられる。希釈剤として使用できる低粘度の適切な溶媒としては、例えば、o−、m−またはp−キシレンなどのメチル化ベンゼン、テトラリンおよびデカリンが挙げられる。
【0062】
高粘度の群より選択される1種類以上の溶媒と、低粘度の群より選択される1種類以上の溶媒とを含む溶媒混合物が特に好ましい。高粘度群は、25℃において10cPより高く、好ましくは50cPより高く、且つ、10000cPより低く、好ましくは5000cPより低い粘度を有する溶媒から成り、これらに限定されないが、デカヒドロ−2−ナフトールおよび1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトールなどの溶媒が挙げられる。低粘度群は、25℃において0.25cPより高く、好ましくは0.5cPより高く、且つ、10cPより低い粘度を有する溶媒から成り、これらに限定されないが、テトラリン、デカリン、および、例えば、o−、m−またはp−キシレンなどのメチル化ベンゼンなどの溶媒が挙げられる。
【0063】
比率が5/95〜40/60であるo−キシレン/デカヒドロ−2−ナフトールの二成分の混合物、更には、比率が25/75〜50/50であるテトラリン/1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトールの二成分の混合物、更には、比率が25/75〜50/50であるデカリン/デカヒドロ−2−ナフトールの二成分の混合物(全て比率は重量%で示している)、特に例1の表1に示される二成分の混合物が最も好ましい。
【0064】
OSC化合物は、当業者に知られており、文献に記載されている一般的な材料より選択できる。
【0065】
OSC化合物は、少なくとも3個の芳香族環を含有する共役芳香族分子であることができる。OSC化合物は、好ましくは、5員、6員または7員の芳香族環を含有し、より好ましくは、5員または6員の芳香族環を含有する。この材料はモノマー、オリゴマーまたはポリマーであってよく、混合物、分散物および混合物(ブレンド)であってもよい。
【0066】
それぞれの芳香族環は、Se、Te、P、Si、B、As、N、OまたはSより選択される、好ましくは、N、OまたはSより選択される1個以上のヘテロ原子を含有していてもよい。
【0067】
芳香族環は、アルキル、アルコキシ、ポリアルコキシ、チオアルキル、アシル、アリールまたは置換アリール基、ハロゲン、特にフッ素、シアノ、ニトロ、または−N(R)(R)で表される置換されていてもよい2級または3級アルキルアミンまたはアリールアミンで置換されていてもよい。ただし、RおよびRは、それぞれ互いに独立に、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、アルコキシまたはポリアルコキシ基を表す。Rおよび/またはRがアルキルまたはアリールを表す場合、これらはフッ素化されていてもよい。
【0068】
環は縮合していてもよく、または、−C(T)=C(T)−、−C≡C−、−N(R)−、−N=N−、(R)C=N−、−N=C(R)−などの共役連結基で結合されていてもよく、ただし、TおよびTは、それぞれ互いに独立に、H、Cl、F、−C≡N−または低級アルキル基、好ましくはC1〜4アルキル基を表し、RはH、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいアリールを表す。Rがアルキルまたはアリールの場合、これらはフッ素化されていてもよい。
【0069】
好ましいOSC化合物としては、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレンなどの共役炭化水素ポリマー(これらの共役炭化水素ポリマーのオリゴマーを含む);テトラセン、クリセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、コロネン、またはこれらの可溶性の置換誘導体などの縮合芳香族炭化水素;p−クォーターフェニル(p−4P)、p−クィンクフェニル(p−5P)、p−セクシフェニル(p−6P)、またはこれらの可溶性の置換誘導体などのパラ置換フェニレンオリゴマー;ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ−1,3,4−オキサジアゾール、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(2−置換アニリン)、ポリ(3−置換アニリン)、ポリ(2,3−二置換アニリン)、ポリアズレン、ポリピレンなどの共役ヘテロ環式ポリマー;ピラゾリン化合物;ポリセレノフェン;ポリベンゾフラン;ポリインドール;ポリピリダジン;ベンジジン化合物;スチルベン化合物;トリアジン;置換金属含有または金属を含まないポルフィン、フタロシアニン、フルオロフタロシアニン、ナフタロシアニンまたはフルオロナフタロシアニン;C60およびC70フラーレンまたはそれらの誘導体;N,N’−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリール−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドおよびフッ素化誘導体;N,N’−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリール、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド;バソフェナントロリン;ジフェノキノン;1,3,4−オキサジアゾール;11,11,12,12−テトラシアノナフト−2,6−キノジメタン;α,α’−ビス(ジチエノ[3,2−b2’,3’−d]チオフェン);2,8−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリールアントラジチオフェン;2,2’−ビベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンより選択される小分子(即ち、モノマー化合物)、ポリマー、オリゴマーおよびその誘導体が挙げられる。好ましい化合物は、上のリストのもの、およびそれらの可溶性の誘導体である。
【0070】
好ましいOSC化合物は、小分子(即ち、モノマー化合物)である。
【0071】
特に好ましいOSC化合物は、例えば、米国特許第6,690,029号明細書または米国特許出願公開第2007/0102696号明細書に記載されている6,13−ビス(トリアルキルシリルエチニル)ペンタセンまたはそれの誘導体などの置換ポリアセンである。
【0072】
更に好ましいOSC化合物は、ポリ(3−置換チオフェン)、非常に好ましくは、ポリ(3−アルキルチオフェン)(P3AT)であり、ここで、アルキル基は、好ましくは直鎖状であり、好ましくは1〜12個、最も好ましくは4〜10個のC原子を有し、例えば、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)などである。
【0073】
特に好ましいOSC化合物は、式I(ポリアセン)より選択される。
【0074】
【化1】
式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、独立に、水素、置換されていてもよいC〜C40のカルビルまたはヒドロカルビル基、置換されていてもよいC〜C40のアルコキシ基、置換されていてもよいC〜C40のアリールオキシ基、置換されていてもよいC〜C40のアルキルアリールオキシ基、置換されていてもよいC〜C40のアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいC〜C40のアリールオキシカルボニル基、シアノ基(−CN)、カルバモイル基(−C(=O)NH)、ハロホルミル基(−C(=O)−X;式中、Xはハロゲン原子を表す)、ホルミル基(−C(=O)−H)、イソシアノ基、イソシアネート基、チオシアネート基またはチオイソシアネート基、置換されていてもよいアミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、CF基、ハロ基(Cl、Br、F)、置換されていてもよいシリルまたはアルキニルシリル基を表し、
組RおよびR、RおよびR、RおよびR、RおよびR、RおよびR、および、RおよびR10は、それぞれ、独立に、架橋されてC〜C40の飽和または不飽和環を形成していてもよく、その飽和または不飽和環は、酸素原子、硫黄原子、または、式−N(R)−(式中、Rは、水素原子または置換されていてもよい炭化水素基である)の基が介在していてもよく、また置換されていてもよく、
ポリアセン骨格の1個以上の炭素原子は、N、P、As、O、S、SeおよびTeより選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよく、
ポリアセンの環の隣接する位置に位置する任意の2個以上の置換基R〜R12は、独立に、一緒になって、ポリアセンに融合し、O、Sまたは−N(R)(式中、Rは、上で定義される通りである)が介在してもよい更なるC〜C40の飽和または不飽和環、または、芳香族環系を形成していてもよく、
nは、0、1、2、3または4であり、好ましくは、nは、0、1または2であり、最も好ましくは、nは、0または2であり、これは、ポリアセン化合物がペンタセン化合物(n=2の場合)または「擬似ペンタセン」化合物(n=0の場合)であることを意味している。
【0075】
非常に好ましい式の化合物は、サブ式I1のもの(置換ペンタセン)である。
【0076】
【化2】
式中、R、R、R、R、R、R、R、R10、R15、R16、R17は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、置換されていてもよいC〜C40のカルビルまたはヒドロカルビル基、置換されていてもよいC〜C40のアルコキシ基、置換されていてもよいC〜C40のアリールオキシ基、置換されていてもよいC〜C40のアルキルアリールオキシ基、置換されていてもよいC〜C40のアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいC〜C40のアリールオキシカルボニル基、シアノ基(−CN)、カルバモイル基(−C(=O)NH)、ハロホルミル基(−C(=O)−X;式中、Xはハロゲン原子を表す)、ホルミル基(−C(=O)−H)、イソシアノ基、イソシアネート基、チオシアネート基またはチオイソシアネート基、置換されていてもよいアミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、CF基、ハロ基(Cl、Br、F)、置換されていてもよいシリル基を表し、
Aは、ケイ素またはゲルマニウムを表し、
組RおよびR、RおよびR、RおよびR、RおよびR、RおよびR、RおよびR10、R15およびR16、および、R16およびR17は、それぞれ、独立に、互いに架橋されてC〜C40の飽和または不飽和環を形成していてもよく、その飽和または不飽和環は、酸素原子、硫黄原子、または、式−N(R)−(式中、Rは、水素原子または炭化水素基である)の基が介在していてもよく、また置換されていてもよく、
ポリアセン骨格の1個以上の炭素原子は、N、P、As、O、S、SeおよびTeより選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよく、
a)少なくとも1つのR、R、R、R、R、R、R、R10は、置換されていてもよいC〜C40のカルビルまたはヒドロカルビル基、置換されていてもよいC〜C40のアルコキシ基、置換されていてもよいC〜C40のアリールオキシ基、置換されていてもよいC〜C40のアルキルアリールオキシ基、置換されていてもよいC〜C40のアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいC〜C40のアリールオキシカルボニル基、シアノ基(−CN)、カルバモイル基(−C(=O)NH)、ハロホルミル基(−C(=O)−X;式中、Xはハロゲン原子を表す)、ホルミル基(−C(=O)−H)、イソシアノ基、イソシアネート基、チオシアネート基またはチオイソシアネート基、置換されていてもよいアミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、CF基、ハロ基(Cl、Br、F)、置換されていてもよいシリル基であり、および/または、
b)RおよびR、RおよびR、RおよびR、RおよびR、RおよびR、および、RおよびR10の少なくとも一組は、互いに架橋されてC〜C40の飽和または不飽和環を形成していてもよく、その飽和または不飽和環は、酸素原子、硫黄原子、または、式−N(R)−(式中、Rは、水素原子または炭化水素基である)の基が介在していてもよく、また置換されていてもよい
ことを特徴とする。
【0077】
更に好ましい式の化合物は、サブ式I2のもの(置換ヘテロアセン)である。
【0078】
【化3】
式中、R、R、R、R、R15、R16、R17は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、置換されていてもよいC〜C40のカルビルまたはヒドロカルビル基、置換されていてもよいC〜C40のアルコキシ基、置換されていてもよいC〜C40のアリールオキシ基、置換されていてもよいC〜C40のアルキルアリールオキシ基、置換されていてもよいC〜C40のアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいC〜C40のアリールオキシカルボニル基、シアノ基(−CN)、カルバモイル基(−C(=O)NH)、ハロホルミル基(−C(=O)−X;式中、Xはハロゲン原子を表す)、ホルミル基(−C(=O)−H)、イソシアノ基、イソシアネート基、チオシアネート基またはチオイソシアネート基、置換されていてもよいアミノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、CF基、ハロ基(Cl、Br、F)、置換されていてもよいシリル基を表し、
Aは、ケイ素またはゲルマニウムを表し、
組RおよびR、RおよびR、R15およびR16、および、R16およびR17は、それぞれ、独立に、互いに架橋されてC〜C40の飽和または不飽和環を形成していてもよく、その飽和または不飽和環は、酸素原子、硫黄原子、または、式−N(R)−(式中、Rは、水素原子または炭化水素基である)の基が介在していてもよく、また置換されていてもよく、
ポリアセン骨格の1個以上の炭素原子は、N、P、As、O、S、SeおよびTeより選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよく、
およびR、および、RおよびRの少なくとも一組は、互いに架橋されて、酸素原子、硫黄原子、または、式−N(R)−(式中、Rは、水素原子または炭化水素基である)の基が介在している、また置換されていてもよいC〜C40の飽和または不飽和環を形成していることを特徴とする。
【0079】
更に好ましい式Iの化合物は、サブ式I3のもの(シリルエチニル化ヘテロアセン)である。
【0080】
【化4】
式中、
およびYの一方は−CH=または=CH−を表し、他方は−X−を表し、
およびYの一方は−CH=または=CH−を表し、他方は−X−を表し、
Xは、−O−、−S−、−Se−または−NR’’’−であり、
Rは、複数出現する場合は互いに独立に、1〜20個、好ましくは1〜8個のC原子を有する環状、直鎖状または分岐状のアルキルまたはアルコキシ、または、2〜30個のC原子を有するアリールであり、それらは全てフッ素化またはペルフルオロ化されていてもよく、SiRは、好ましくは、トリアルキルシリルであり、
R’は、H、F、Cl、Br、I、CN、1〜20個、好ましくは1〜8個のC原子を有する、フッ素化またはペルフルオロ化されていてもよい直鎖状または分岐状のアルキルまたはアルコキシ、または、6〜30個のC原子を有する、フッ素化またはペルフルオロ化されていてもよいアリール、好ましくは、C、またはCOR”(式中、R”は、H、1〜20個のC原子を有する、フッ素化されていてもよいアルキル、または、2〜30個、好ましくは5〜20個のC原子を有する、フッ素化されていてもよいアリールである。)であり、
R’’’は、H、または、1〜10個のC原子を有する環状、直鎖状または分岐状のアルキル、好ましくは、Hであり、
mは、0または1であり、
oは、0または1であり、
ただし、XがSの場合、R’は水素ではない。
【0081】
mおよびnが0であり、および/またはXがSであり、および/またはR’がFである式I3の化合物が特に好ましい。
【0082】
上および下で使用される場合、用語「カルビル基」は、非炭素原子を全く含有しない(例えば、−C≡C−など)か、またはN、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどの少なくとも1個の非炭素原子と組み合わされていてもよい(例えば、カルボニルなど)、少なくとも1個の炭素原子を含む一価または多価の有機基部分を表す。用語「ヒドロカルビル基」は、1個以上のH原子を追加的に含有し、例えば、N、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどのヘテロ原子を1個以上含有してもよいカルビル基を表す。
【0083】
また、3個以上のC原子鎖を含むカルビルまたはヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、および/または、スピロおよび/または縮合環を含む環状であってもよい。
【0084】
好ましいカルビルおよびヒドロカルビル基としては、アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシおよびアルコキシカルボニルオキシ(これらは、それぞれ、置換されていてもよく、1〜40個、好ましくは1〜25個、非常に好ましくは1〜18個のC原子を有する)、更に、6〜40個、好ましくは6〜25個のC原子を有する置換されていてもよいアリールまたはアリールオキシ、更に、アルキルアリールオキシ、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシおよびアリールオキシカルボニルオキシ(これらは、それぞれ、置換されていてもよく、6〜40個、好ましくは7〜40個のC原子を有する)が挙げられ、ただし、これらの基の全ては、特には、N、O、S、P、Si、Se、As、TeおよびGeより選択される1個以上のヘテロ原子を含有していてもよい。
【0085】
カルビルまたはヒドロカルビル基は、飽和または不飽和の非環式基、または飽和または不飽和の環式基であることができる。不飽和の非環式または環式基が好ましく、特に、アリール、アルケニルおよびアルキニル基(特に、エチニル)が好ましい。C〜C40カルビルまたはヒドロカルビル基が非環式の場合、その基は直鎖状であっても、分岐状であってもよい。C〜C40カルビルまたはヒドロカルビル基としては、例えば、C〜C40アルキル基、C〜C40アルケニル基、C〜C40アルキニル基、C〜C40アリル基、C〜C40アルキルジエニル基、C〜C40ポリエニル基、C〜C18アリール基、C〜C40アルキルアリール基、C〜C40アリールアルキル基、C〜C40シクロアルキル基、C〜C40シクロアルケニル基などが挙げられる。上述の基の中で、C〜C20アルキル基、C〜C20アルケニル基、C〜C20アルキニル基、C〜C20アリル基、C〜C20アルキルジエニル基、C〜C12アリール基およびC〜C20ポリエニル基のそれぞれが好ましい。また、例えば、シリル基、好ましくはトリアルキルシリル基で置換されているアルキニル基、好ましくはエチニル基などの、炭素原子を有する基とヘテロ原子を有する基の組み合わせも挙げられる。
【0086】
アリールおよびヘテロアリールは、好ましくは、25個までのC原子の単環式、二環式または三環式の芳香族またはヘテロ芳香族基を表し、この基は、縮合環を含んでいてもよく、1個以上の基Lで置換されていてもよく、ただし、Lは、ハロゲン、または、1個以上のH原子がFまたはClで置き換えられていてもよい、1〜12個のC原子のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニルまたはアルコキシカルボニル基である。
【0087】
特に好ましいアリールおよびヘテロアリール基は、さらに1個以上のCH基がNで置き換えられていてもよいフェニル、ナフタレン、チオフェン、セレノフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、フルオレンおよびオキサゾールであり、それらは全て、無置換であっても、上で定義される通りのLで1つ、または2つ以上が置換されていてもよい。
【0088】
式Iおよびそれのサブ式において、R1〜17は、好ましくは、1〜20個のC原子の直鎖状、分岐状または環状のアルキルを表し、このアルキルは無置換であるか、または、F、Cl、BrまたはIで1つ、または2つ以上が置換されており、O原子および/またはS原子が互いに直接結合しないように、1個以上の隣接していないCH基が、それぞれの場合で互いに独立に、−O−、−S−、−NR−、−SiR00−、−CX=CX−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、あるいは、好ましくは1〜30個のC原子を有する、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリールを表し、ここで、RおよびR00は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子のアルキルであり、XおよびXは、それぞれ互いに独立に、H、F、ClまたはCNである。
【0089】
1〜17の1つがアルキルまたはアルコキシ基、即ち、末端CH基が−O−によって置き換えられている場合、これは直鎖状であっても、分岐状であってもよい。それは、好ましくは、直鎖状で2〜8個の炭素原子を有し、従って、好ましくは、例えば、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ、ヘプトキシ、またはオクトキシ、更に、メチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ノノキシ、デコキシ、ウンデコキシ、ドデコキシ、トリデコキシまたはテトラデコキシである。n−ヘキシルおよびn−ドデシルが特に好ましい。
【0090】
1〜17の1つが、1個以上のCH基が−CH=CH−で置き換えられているアルキル基の場合、これは直鎖状であっても、分岐状であってもよい。それは、好ましくは、直鎖状で2〜12個のC原子を有し、従って、好ましくは、ビニル、1−プロペニルまたは2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニルまたは3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニルまたは4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニルまたは5−ヘキセニル、1−ヘプテニル、2−ヘプテニル、3−ヘプテニル、4−ヘプテニル、5−ヘプテニルまたは6−ヘプテニル、1−オクテニル、2−オクテニル、3−オクテニル、4−オクテニル、5−オクテニル、6−オクテニルまたは7−オクテニル、1−ノネニル、2−ノネニル、3−ノネニル、4−ノネニル、5−ノネニル、6−ノネニル、7−ノネニルまたは8−ノネニル、1−デカニル、2−デカニル、3−デカニル、4−デカニル、5−デカニル、6−デカニル、7−デカニル、8−デカニルまたは9−デカニル、1−ウンデカニル、2−ウンデカニル、3−ウンデカニル、4−ウンデカニル、5−ウンデカニル、6−ウンデカニル、7−ウンデカニル、8−ウンデカニル、9−ウンデカニルまたは10−ウンデカニル、1−ドデカニル、2−ドデカニル、3−ドデカニル、4−ドデカニル、5−ドデカニル、6−ドデカニル、7−ドデカニル、8−ドデカニル、9−ドデカニル、10−ドデカニルまたは11−ドデカニルである。アルケニル基は、C=C結合を含み、E体またはZ体、またはそれらの混合物であってもよい。
【0091】
1〜17の1つが、オキサアルキル、即ち、1個のCH基が−O−によって置き換えられている場合、好ましくは、例えば、直鎖状の2−オキサプロピル(=メトキシメチル)、2−オキサブチル(=エトキシメチル)または3−オキサブチル(=2−メトキシエチル)、2−、3−、または4−オキサペンチル、2−、3−、4−、または5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−、または6−オキサヘプチル、2−、3−、4−、5−、6−または7−オキサオクチル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−オキサノニルまたは2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−または9−オキサデシルである。
【0092】
1〜17の1つが、チオアルキル、即ち、1個のCH基が−S−によって置き換えられている場合、好ましくは、直鎖状のチオメチル(−SCH)、1−チオエチル(−SCHCH)、1−チオプロピル(=−SCHCHCH)、1−(チオブチル)、1−(チオペンチル)、1−(チオヘキシル)、1−(チオヘプチル)、1−(チオオクチル)、1−(チオノニル)、1−(チオデシル)、1−(チオウンデシル)または1−(チオドデシル)であり、好ましくは、sp混成軌道ビニル炭素原子に隣接しているCH基が置き換えられている。
【0093】
1〜17の1つが、フルオロアルキルの場合、それは、好ましくは、直鎖状のペルフルオロアルキルC2i+1(式中、iは1〜15の整数である)であり、特には、CF、C、C、C、C11、C13、C15またはC17、非常に好ましくは、C13である。
【0094】
非常に好ましくは、R1〜17は、1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいC〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C20アルコキシ、C〜C20チオアルキル、C〜C20シリル、C〜C20アミノまたはC〜C20フルオロアルキル、特に、その全てが直鎖状で、1〜12個、好ましくは5〜12個のC原子を有しているアルケニル、アルキニル、アルコキシ、チオアルキルまたはフルオロアルキル、最も好ましくは、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルまたはドデシルより選択される。
【0095】
−CX=CX−は、好ましくは、−CH=CH−、−CF=CF−または−CH=C(CN)−である。
【0096】
15〜17は、好ましくは、C〜C40アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル、最も好ましくはメチル、エチル、n−プロピルまたはイソプロピル、C〜C40アリール基、好ましくはフェニル、C〜C40アリールアルキル基、C〜C40アルコキシ基、またはC〜C40アリールアルキルオキシ基より選択される同一または異なる基であり、ただし、全てのこれらの基は、例えば、1個以上のハロゲン原子で置換されていてもよい。好ましくは、R15〜17は、それぞれ独立に、置換されていてもよいC1〜12アルキル、より好ましくはC1〜4アルキル、最も好ましくはC1〜3アルキル、例えば、イソプロピル、および置換されていてもよいC6〜10アリール、好ましくはフェニルより選択される。式−SiR1516のシリル基が更に好ましく、ここで、RはSi原子と共に環状シリルアルキル基を形成しており、好ましくは、1〜8個のC原子を有する。
【0097】
1つの好ましい実施形態において、R15〜17は同一の基であり、例えば、トリイソプロピルシリルにおける通り、同一で置換されていてもよいアルキル基である。非常に好ましくは、R15〜17は同一で、置換されていてもよいC1〜10、より好ましくはC1〜4、最も好ましくはC1〜3アルキル基である。この場合の好ましいアルキル基は、イソプロピルである。
【0098】
好ましい基−SiR151617としては、これらに限定されないが、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、ジメチルエチルシリル、ジエチルメチルシリル、ジメチルプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、ジプロピルメチルシリル、ジイソプロピルメチルシリル、ジプロピルエチルシリル、ジイソプロピルエチルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、トリイソプロピルシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルイソプロピルシリル、ジイソプロピルフェニルシリル、ジフェニルエチルシリル、ジエチルフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェノキシシリル、ジメチルメトキシシリル、ジメチルフェノキシシリル、メチルメトキシフェニルシリルなどが挙げられ、ただし、アルキル、アリールまたはアルコキシ基は置換されていてもよい。
【0099】
レオロジー特性を調整するために、OSC配合物は、任意成分として、1種類以上の有機バインダー、好ましくは、例えば米国特許出願公開第2007/0102696号明細書に記載されているポリマーバインダーを、好ましくは、OSC化合物に対するバインダーの比率が重量比で20:1〜1:20、好ましくは10:1〜1:10、より好ましくは5:1〜1:5で含むことができる。
【0100】
配合物中のOSC化合物の総濃度は、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。配合物は、1種類、または1種類より多くの、好ましくは1種類、2種類、3種類、または3種類より多くのOSC化合物を含むことができる。
【0101】
本発明による配合物は、例えば、表面活性化合物、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水化剤、粘着剤、流動性改良剤、消泡剤、脱気剤、反応性または非反応性であってよい希釈剤、助剤、着色剤、染料または顔料、増感剤、安定剤、ナノ粒子または阻害剤などの1種類以上の更なる成分を付加的に含むことができる。しかしながら、これらの更なる成分は、OSCを酸化させてはならず、別の方法でもOSCと化学反応できてはならず、OSCに対して電気的ドーピング効果を有していてはならない。
【0102】
OEデバイスを製造する方法においては、OSC層を基板上に堆積し、次いで、存在する全ての揮発性導電性添加剤と共に溶媒を除去する。OSC層は、好ましくは、上および下に記載されるように、本発明の配合物から、コーティングまたは印刷技術によって堆積する。
【0103】
基板は、OEデバイスの製造に適する基板のいずれでもよく、また、OEデバイス、またはその部品であってもよい。適切で好ましい基板は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミドのフレキシブルフィルム、または平坦化Siガラスである。
【0104】
溶媒および任意の揮発性添加剤の除去は、好ましくは、蒸発、例えば、堆積した層を高温および/または減圧に、好ましくは50〜135℃に曝露することによって達成される。
【0105】
OSC層の厚みは、好ましくは10nm〜50μm、より好ましくは20nm〜5μm、更に好ましくは50nm〜1μm、最も好ましくは50nm〜300nmである。
【0106】
上および下で記載される材料および方法に加えて、OEデバイスおよびその構成要素は、当業者に知られており、文献に記載されている一般的な材料および一般的な方法より製造することができる。
【0107】
特に好ましいOEデバイスは、OFETである。本発明による好ましいOFETは、以下の要素を含む:
−任意の要素として基板(1)、
−ゲート電極(2)、
−誘電体を含む絶縁体層(3)、
−ソースおよびドレイン電極(4)、
−OSC層(5)。
【0108】
図1に、基板(1)、ゲート電極(2)、誘電体層(3)、ソースおよびドレイン電極(4)、およびOSC層(5)を含む、本発明によるボトムゲート(BG)、ボトムコンタクト(BC)OFETデバイスを例示的および概略的に示す。
【0109】
そのようなデバイスは、基板(1)上にゲート電極(2)を塗工する工程と、ゲート電極(2)および基板(1)の上に誘電体層(3)を塗工する工程と、誘電体層(3)の上にソースおよびドレイン電極(4)を塗工する工程と、電極(4)および誘電体層(3)の上にOSC層(5)を塗工する工程とを含む方法によって製造することができる。
【0110】
図2に、基板(1)、ソースおよびドレイン電極(4)、OSC層(5)、誘電体層(3)、およびゲート電極(2)を含む、本発明によるトップゲート(TG)OFETデバイスを例示的および概略的に示す。
【0111】
そのようなデバイスは、基板(1)上にソースおよびドレイン電極(4)を塗工する工程と、電極(4)および基板(1)の上にOSC層(5)を塗工する工程と、OSC層(5)の上に誘電体層(3)を塗工する工程と、誘電体層(3)の上にゲート電極(2)を塗工する工程とを含む方法によって製造することができる。
【0112】
OPVセルにおける使用のための配合物の場合、配合物は、好ましくは、p型半導体およびn型半導体、または、アクセプターおよびドナー材料を含み、あるいは含有し、より好ましくはこれらから主として成り、非常に好ましくはこれらから完全に成る。このタイプの好ましい材料は、例えば、国際公開第94/05045号パンフレットに開示されているポリ(3−置換チオフェン)またはP3ATと、C60またはC70フラーレン、またはPCBM[(6,6)−フェニルC61−酪酸メチルエステル]などの修飾C60分子とのブレンドまたは混合物であり、ただし、P3ATとフラーレンの比は、好ましくは、重量比で2:1〜1:2、より好ましくは、重量比で1.2:1〜1:1.2である。
【0113】
図3および図4に、本発明による典型的で好ましいOPVデバイスを例示的および概略的に示す[Waldaufら、Appl.Phys.Lett.89巻、233517頁(2006年)も参照]。
【0114】
図3に示すOPVデバイスは、好ましくは、
−低仕事関数電極(1)(例えば、アルミニウムなどの金属)および高仕事関数電極(2)(例えば、ITO);これらの一方は透明である、
−好ましくはOSC材料より選択される正孔輸送材料および電子輸送材料を含み、電極(1、2)間に位置している層(3)(「活性層」とも呼ばれる);この活性層は、例えば、二重層または2つの別個の層またはp型半導体およびn型半導体のブレンドまたは混合物として存在できる、
−正孔にオーム接触を与えるために高仕事関数電極の仕事関数を修正するために、例えば、PEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート))のブレンドを含み、活性層(3)および高仕事関数電極(2)間に位置している任意要素の導電性ポリマー層(4)、
−電子にオーム接触を与えるために、低仕事関数電極(1)の活性層(3)に面している面の任意要素の(例えば、LiFの)コーティング(5)
を含む。
【0115】
図4に示すInverted OPVデバイスは、好ましくは、
−低仕事関数電極(1)(例えば、金などの金属)および高仕事関数電極(2)(例えば、ITO);これらの一方は透明である、
−好ましくはOSC材料より選択される正孔輸送材料および電子輸送材料を含み、電極(1、2)間に位置している層(3)(「活性層」とも呼ばれる);この活性層は、例えば、二重層または2つの別個の層またはp型半導体およびn型半導体のブレンドまたは混合物として存在できる、
−電子にオーム接触を与えるために、例えば、PEDOT:PSSのブレンドを含み、活性層(3)および低仕事関数電極(1)間に位置している任意要素の導電性ポリマー層(4)、
−正孔にオーム接触を与えるために、高仕事関数電極(2)の活性層(3)に面している面の任意要素の(例えば、TiOの)コーティング(5)
を含む。
【0116】
正孔輸送ポリマーは、例えば、ポリチオフェンである。電子輸送材料は、例えば、酸化亜鉛またはセレン化カドミウムなどの無機材料、または、フラーレン誘導体(例えば、PCBMなど)またはポリマー(例えば、Coakley,K.M.およびMcGehee,M.D.、Chem.Mater.、2004年、16巻、4533頁参照)などの有機材料である。二重層がブレンドの場合、デバイスの性能を最適化するために、任意工程であるアニール工程が必要となることがある。
【0117】
本発明の前述の実施形態の変更を、なお本発明の範囲内で行うことができることが分かるであろう。本明細書で開示されるそれぞれの態様は、特に明記していない限り、同一、同等または同様の目的にかなう代わりの態様によって置き換えることができる。よって、特に明記していない限り、開示されるそれぞれの態様は、包括的な一連の同等または同様の態様の単なる一例である。
【0118】
本明細書において開示される全ての態様は、そのような態様および/または工程の少なくとも一部が互いに両立しない組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせることができる。特に、本発明の好ましい態様は、本発明の全ての形態に適用でき、任意の組み合わせで使用できる。同様に、必須ではない組み合わせで記載される態様を、(組み合わせることなく)単独で使用してもよい。
【0119】
上記の態様の、特に好ましい実施形態の多くが、本発明の実施形態の単なる一部ではなく、それ自体で発明に値することが分かるであろう。現在特許請求されている発明に加えて、または代えて、独立に、これらの態様の保護を求める場合もある。
【実施例】
【0120】
ここで、以下の例を参照して本発明を更に詳細に説明するが、これらの例は単なる例示であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0121】
<例1>
有機半導体化合物Aの配合物を、表1に示される通りの本発明による溶媒および溶媒混合物中で調製する。表1の溶媒および溶媒混合物は、logPまたは(logP)の計算値が1.5未満であり、全て0.1重量%を超える濃度で化合物Aを容易に溶解する。
【0122】
化合物Aは、以下の異性体の混合物である。
【0123】
【化5】
化合物Aおよびその製法は、S.Subramanian、J.Anthonyら、J.Am.Chem.Soc.、2008年、130巻、2706〜2707頁(補助情報を含む)に開示されている。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
<比較例1>
有機半導体化合物Aの配合物を、表2に示す溶媒(沸点は全て400℃未満)中で調製する。これら全ての溶媒における化合物Aの溶解度は0.1重量%未満である。このことは、logPが1.5未満であり、固有粘度がより高い表2の溶媒は、例1に示す溶媒と比較して、OSC化合物にとって貧溶媒であることを示す。
【0126】
【表3】
<例2>
ボトムゲート、ボトムコンタクトOFETデバイスを、本発明によるインクをフレキソ印刷することにより製造する。
【0127】
基板PEN(帝人デュポンフィルム社製、Q65FA)を、ゲートマスクより僅かに大きい小片に切断する。次いで、この基板片を、メタノール中で2分間超音波処理することで洗浄し、メタノールですすぎ洗いし、圧縮空気で乾燥する。洗浄した基板にゲートマスクを配置し、蒸発器を使用して、ゲート電極として使用するための30nm厚のアルミニウムをコーティングする。
【0128】
接着促進剤Lisicon(商標)M009(メルク社、Darmstadt、ドイツ国より市販されている)を基板およびAlゲート電極上に10秒間1500rpmでスピンコートし、ホットプレート上に20秒間120℃で放置し、次いで、プロパン−2−オールで10秒間1500rpmで洗浄する。
【0129】
その後、誘電体材料の溶液Lisicon(商標)D180(メルク社、Darmstadt、ドイツ国より市販されている)を、先の層の上に30秒間1500rpmでスピンコートし、次いで、基板をホットプレート上に1分間120℃で放置し、次いで、254nmのUVランプ下で30秒間放置する。これに続いて、基板をホットプレート上に3分間120℃で放置する。
【0130】
その後、基板を、反応性洗浄液Lisicon(商標)M008(メルク社、Darmstadt、ドイツ国より市販されている)で1分間被覆し、THFで洗浄する。次いで、基板を、反応性洗浄液Lisicon(商標)M001(メルク社、Darmstadt、ドイツ国より市販されている)で1分間被覆し、プロパン−2−オールで洗浄する。次いで、ソースおよびドレインマスクを誘電体でコートされた基板上に配置し、Au電極を誘電体層上に蒸着する。
【0131】
40%o−キシレンおよび60%デカヒドロ−2−ナフトール(表1の14番参照)に2%の化合物(A)を溶解することにより、OSCインクを配合、作製する。5cm×5cm、1cm×1cm、5mm×5mmおよび2mm×2mmの大きさの複数の正方形ブロックの印刷領域で構成されているインプレッションローラーを使用して、FLEXI PROOF 100フレキソ印刷機で、誘電体層およびAu電極上に、このOSCインクを印刷する。使用する条件は、アニロックスローラー:55L/cmスクリーン、容量:18.09cm/m、印刷速度:30、アニロックス圧:50、インプレッションローラー圧:90である。
【0132】
次いで、Agilent 4155C半導体パラメータ解析器を使用し、ソースおよびドレイン電流およびゲート電流をゲート電圧の関数として測定して(トランジスタ特性)、デバイス性能の解析を行う。例えば、米国特許出願公開第2007/0102696号明細書に開示されているように、公知の方法によって電荷キャリア移動度を計算する。
【0133】
デバイスのトランジスタ特性、および線形および飽和移動度を図5に示す。このデバイスは、高い移動度(線形0.1cm/Vs、飽和0.3cm/Vs)および良好なオン/オフ比(10)を有する。
【0134】
このデータは、本発明によるインクは、フレキソ印刷技術を使用して印刷することができ、高い移動度および良好なオン/オフ比の両方を示す動作トランジスタデバイスを得ることができることを示す。
図1
図2
図3
図4
図5