特許第5745705号(P5745705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5745705水圧破砕法に用いられるフラクチャリング流体の粘度制御剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745705
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】水圧破砕法に用いられるフラクチャリング流体の粘度制御剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 8/68 20060101AFI20150618BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20150618BHJP
   E21B 43/267 20060101ALI20150618BHJP
   E21B 43/22 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   C09K8/68
   C09K3/00 103P
   E21B43/267
   E21B43/22 A
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-543656(P2014-543656)
(86)(22)【出願日】2014年6月9日
(86)【国際出願番号】JP2014065198
(87)【国際公開番号】WO2014199938
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2014年9月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-121803(P2013-121803)
(32)【優先日】2013年6月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156845
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 威一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100112896
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏記
(72)【発明者】
【氏名】井戸 亨
(72)【発明者】
【氏名】山口 登
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−270786(JP,A)
【文献】 特開昭62−033995(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/031320(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/092146(WO,A1)
【文献】 特開2014−134090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 8/68
C09K 3/00
E21B 43/22
E21B 43/267
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水圧破砕法に用いられるフラクチャリング流体の粘度変化を制御するために使用される粘度制御剤であって、
ポリアルキレンオキシドと粘度低下剤とを含み、
前記粘度低下剤が、ラジカル発生剤、酸、及び酵素からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、
錠剤である、粘度制御剤。
【請求項2】
前記粘度制御剤における前記ポリアルキレンオキシドの割合が、30〜99.99質量%である、請求項1に記載の粘度制御剤。
【請求項3】
前記錠剤の質量が0.2g以上である、請求項1または2に記載の粘度制御剤。
【請求項4】
前記ポリアルキレンオキシドは、0.5質量%の水溶液としたときの25℃における粘度が20〜1,500mPa・sであるか、または5質量%の水溶液としたときの25℃における粘度が50〜80,000mPa・sである、請求項1〜3のいずれかに記載の粘度制御剤。
【請求項5】
前記ポリアルキレンオキシドを構成するモノマー単位の炭素数が2〜4である、請求項1〜のいずれかに記載の粘度制御剤。
【請求項6】
前記ポリアルキレンオキシドが、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、及びブチレンオキシド単位からなる群から選択された少なくとも1種のモノマー単位を含む、請求項1〜のいずれかに記載の粘度制御剤。
【請求項7】
前記ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、エチレンオキシド−ブチレンオキシド共重合体、及びプロピレンオキシド−ブチレンオキシド共重合体からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1〜のいずれかに記載の粘度制御剤。
【請求項8】
ポリアルキレンオキシドと、ラジカル発生剤、酸、及び酵素からなる群から選ばれた少なくとも1種の粘度低下剤とを含む錠剤の、水圧破砕法に用いられるフラクチャリング流体の粘度変化を制御するための使用。
【請求項9】
ポリアルキレンオキシドと、ラジカル発生剤、酸、及び酵素からなる群から選ばれた少なくとも1種の粘度低下剤とを含む錠剤を用いる、水圧破砕法に用いられるフラクチャリング流体の粘度変化の制御方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれかに記載の粘度制御剤と、水と、支持材と、ゲル化剤とを含む、水圧破砕法に用いられるフラクチャリング流体。
【請求項11】
原油または天然ガスの採掘方法であって、
地層に採掘孔を形成する工程と、
前記採掘孔に、請求項10に記載のフラクチャリング流体を導入し、前記地層の一部にフラクチャーを形成する工程と、
前記採掘孔から原油または天然ガスを採掘する工程と、
を備える、原油または天然ガスの採掘方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水圧破砕法に用いられるフラクチャリング流体の粘度制御剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原油、天然ガスなどの採掘において、水圧破砕法が用いられてきたが、近年、シェールガスやシェールオイルなどの採掘技術の進展に伴い、水圧破砕法の利用が広まっている。
【0003】
水圧破砕法においては、坑井内に高い圧力を加えて採掘層にフラクチャー(割れ目)を形成し、このフラクチャーに砂などの支持材を導入することにより、フラクチャーが閉塞することを防ぎ、採掘層内にガスや油の浸透性が高い通路を設けることによって、ガスや油を採掘する。坑井内に高い圧力を加える際には、一般に、水に支持材(例えば砂など)やゲル化剤などを含んだ粘度の高いフラクチャリング流体が圧入される。
【0004】
このようなフラクチャリング流体においては、採掘層に十分なフラクチャーを生成でき、かつ、砂などの支持材をフラクチャーに運搬し得る粘度を有することが求められる。さらに、フラクチャリング流体は、フラクチャーの形成後に坑井内から回収されるため、回収時には粘度が低下している必要がある。従って、フラクチャリング流体においては、フラクチャーの生成作業時には十分に高い粘度を有し、フラクチャリング流体の回収作業時には粘度が低下し、回収しやすく設計されていることが望まれる。
【0005】
例えば、特許文献1には、フラクチャリング流体として使用される水性組成物が開示されており、当該水性組成物には、(1)水和性重合物、(2)水性媒体の粘度を減少するに足る量のフリーラジカルを実質上生ずることのできる過酸素化合物、及び(3)亜硝酸イオン源が含まれることが開示されている。特許文献1においては、水性組成物の粘度を低下させる過酸素化合物が生じるフリーラジカルを亜硝酸イオン源で捕捉することにより、過酸素化合物によるフラクチャリング流体の早期の粘度低下を抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−33995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば特許文献1に開示されたような従来のフラクチャリング流体では、フラクチャリング流体の粘度低下を抑制し得るものの、フラクチャリング流体の粘度変化を種々のタイミングに制御することは困難である。
【0008】
本発明は、水圧破砕法におけるフラクチャーの生成作業時にはフラクチャリング流体の高い粘度を維持でき、フラクチャリング流体の回収作業時には粘度を低下させることができる、フラクチャリング流体の粘度制御剤、当該粘度制御剤を含むフラクチャリング流体、及び当該フラクチャリング流体を用いた原油または天然ガスの採掘方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、水圧破砕法に用いられるフラクチャリング流体の粘度変化を制御するために使用される粘度制御剤であって、ポリアルキレンオキシドと粘度低下剤とを含み、錠剤である粘度制御剤は、水圧破砕法におけるフラクチャーの生成作業時にはフラクチャリング流体の高い粘度を維持でき、フラクチャリング流体の回収作業時には粘度を低下させることができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0010】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 水圧破砕法に用いられるフラクチャリング流体の粘度変化を制御するために使用される粘度制御剤であって、
ポリアルキレンオキシドと粘度低下剤とを含み、錠剤である、粘度制御剤。
項2. 前記粘度制御剤における前記ポリアルキレンオキシドの割合が、30〜99.99質量%である、項1に記載の粘度制御剤。
項3. 前記錠剤の質量が0.2g以上である、項1または2に記載の粘度制御剤。
項4. 前記ポリアルキレンオキシドは、0.5質量%の水溶液としたときの25℃における粘度が20〜1,500mPa・sであるか、または5質量%の水溶液としたときの25℃における粘度が50〜80,000mPa・sである、項1〜3のいずれかに記載の粘度制御剤。
項5. 前記粘度低下剤が、ラジカル発生剤、酸、及び酵素からなる群から選ばれた少なくとも1種である、項1〜4のいずれかに記載の粘度制御剤。
項6. 前記ポリアルキレンオキシドを構成するモノマー単位の炭素数が2〜4である、項1〜5のいずれかに記載の粘度制御剤。
項7. 前記ポリアルキレンオキシドが、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、及びブチレンオキシド単位からなる群から選択された少なくとも1種のモノマー単位を含む、項1〜6のいずれかに記載の粘度制御剤。
項8. 前記ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、エチレンオキシド−ブチレンオキシド共重合体、及びプロピレンオキシド−ブチレンオキシド共重合体からなる群から選択された少なくとも1種である、項1〜7のいずれかに記載の粘度制御剤。
項9. ポリアルキレンオキシドと粘度低下剤とを含む錠剤の、水圧破砕法に用いられるフラクチャリング流体の粘度変化を制御するための使用。
項10. 項1〜8のいずれかに記載の粘度制御剤と、水と、支持材と、ゲル化剤とを含む、水圧破砕法に用いられるフラクチャリング流体。
項11. ポリアルキレンオキシドと粘度低下剤とを含む錠剤を用いる、水圧破砕法に用いられるフラクチャリング流体の粘度変化の制御方法。
項12. 原油または天然ガスの採掘方法であって、
地層に採掘孔を形成する工程と、
前記採掘孔に、項11に記載のフラクチャリング流体を導入し、前記地層の一部にフラクチャーを形成する工程と、
前記採掘孔から原油または天然ガスを採掘する工程と、
を備える、原油または天然ガスの採掘方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水圧破砕法におけるフラクチャーの生成作業時にはフラクチャリング流体の高い粘度を維持でき、フラクチャリング流体の回収作業時には粘度を低下させることができる、フラクチャリング流体の粘度制御剤を提供することができる。さらに、本発明によれば、当該粘度制御剤を含むフラクチャリング流体、及び当該フラクチャリング流体を用いた原油または天然ガスの採掘方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた粘度制御剤を用いたフラクチャリング流体における、40℃保存日数と粘度保持率との関係を示すグラフである。
図2】実施例1、5及び比較例1〜4で得られた粘度制御剤を用いたフラクチャリング流体における、40℃保存日数と粘度保持率との関係を示すグラフである。
図3】実施例6〜8及び比較例5〜9で得られた粘度制御剤を用いたフラクチャリング流体における、40℃保存日数と粘度保持率との関係を示すグラフである。
図4】実施例8〜11で得られた粘度制御剤を用いたフラクチャリング流体における、40℃保存日数と粘度保持率との関係を示すグラフである。
図5】実施例12〜15及び比較例10〜12で得られた粘度制御剤を用いたフラクチャリング流体における、40℃保存日数と粘度保持率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の粘度制御剤は、水圧破砕法に用いられるフラクチャリング流体の粘度変化を制御するために使用される粘度制御剤であって、ポリアルキレンオキシドと粘度低下剤とを含み、錠剤であることを特徴とする。以下、本発明のフラクチャリング流体の粘度制御剤、フラクチャリング流体、及び当該フラクチャリング流体を用いた原油または天然ガスの採掘方法について詳述する。
【0014】
<粘度制御剤>
本発明の粘度制御剤は、水圧破砕法に用いられるフラクチャリング流体の粘度変化を制御するために使用される粘度制御剤である。水圧破砕法とは、例えば原油、天然ガスなどの採掘に際し、坑井内に高い圧力を加えて採掘層にフラクチャー(割れ目)を形成し、このフラクチャーに砂などの支持材を導入することにより、フラクチャーが閉塞することを防ぎ、採掘層内にガスや油の浸透性が高い通路を設ける方法をいう。
【0015】
フラクチャリング流体とは、上記の通り、水圧破砕法に用いられ、坑井内に圧入される流体である。水圧破砕法に用いられるフラクチャリング流体は、一般に、水を主成分とし、砂、砂利などの支持材(プロパント)、ゲル化剤などを含む。後述の通り、本発明のフラクチャリング流体には、本発明の粘度制御剤が含まれる。
【0016】
本発明の粘度制御剤は、ポリアルキレンオキシドと粘度低下剤とを含み、錠剤である。ポリアルキレンオキシドとしては、アルキレンオキシドをモノマー単位として含むものであれば、特に制限されないが、フラクチャリング流体の粘度変化を効果的に制御する(すなわち、水圧破砕法におけるフラクチャーの生成作業時にはフラクチャリング流体の高い粘度を維持でき、フラクチャリング流体の回収作業時には粘度を低下させる)観点からは、0.5質量%の水溶液としたときの25℃における粘度が、20〜1,500mPa・s程度であるものが好ましく、20〜1,000mPa・s程度であるものがより好ましい。または、同様の観点から、ポリアルキレンオキシドとしては、5質量%の水溶液としたときの25℃における粘度が50〜80,000mPa・sであるものが好ましく、100〜80,000mPa・s程度であるものがより好ましい。なお、本発明において、ポリアルキレンオキシドを0.5質量%の水溶液としたときの粘度の測定方法は、以下の通りである。1L容のビーカーにイオン交換水497.5gを入れ、幅80mm、縦25mmの平板で先端周速が1.0m/sの条件下で攪拌しながらポリアルキレンオキシド2.5gを投入し、攪拌を3時間継続して水溶液を調製する。得られた水溶液を、25℃の恒温槽に30分以上浸し、B型回転粘度計(回転数12rpm、3分、25℃)により測定する。また、5質量%の水溶液としたときの粘度の測定方法は、以下の通りである。1L容のビーカーにイオン交換水475.0gを入れ、幅80mm、縦25mmの平板で先端周速が1.0m/sの条件下で攪拌しながらポリアルキレンオキシド25.0gを投入し、攪拌を3時間継続して水溶液を調製する。得られた水溶液を、25℃の恒温槽に30分以上浸し、B型回転粘度計(回転数12rpm、3分、25℃)により測定する。
【0017】
また、フラクチャリング流体の粘度変化を効果的に制御する観点からは、ポリアルキレンオキシドを構成するモノマー単位の炭素数としては、好ましくは2〜4程度、より好ましくは2〜3程度が挙げられる。
【0018】
好ましいアルキレンオキシド単位としては、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、ブチレンオキシド単位などの炭素数が2〜4の脂肪族アルキレンオキシド単位が挙げられ、より好ましくは、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位などの炭素数が2〜3の脂肪族アルキレンオキシド単位が挙げられる。なお、例えばプロピレンオキシド単位としては、1,2−プロピレンオキシド単位及び1,3−プロピレンオキシド単位が挙げられる。また、例えばブチレンオキシド単位としては、1,2−ブチレンオキシド単位、2,3−ブチレンオキシド単位、及びイソブチレンオキシド単位が挙げられる。これらのアルキレンオキシド単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。また、ポリアルキレンオキシドは、これらのアルキレンオキシド単位のうち少なくとも1種を含むブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0019】
特に好ましいポリアルキレンオキシドの具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、エチレンオキシド−ブチレンオキシド共重合体、プロピレンオキシド−ブチレンオキシド共重合体などが挙げられる。これらの共重合体は、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれであってもよい。ポリアルキレンオキシドは、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
ポリアルキレンオキシドは、従来公知の方法で製造してもよいし、市販品を使用してもよい。ポリアルキレンオキシドの市販品としては、例えば、住友精化株式会社製の商品名:PEO−1(5質量%水溶液粘度:50〜200mPa・s)、PEO−3(5質量%水溶液粘度:2,500〜5,500mPa・s)、PEO−8(0.5質量%水溶液粘度:20〜70mPa・s)、PEO−18(0.5質量%水溶液粘度:250〜430mPa・s)PEO−29(0.5質量%水溶液粘度:800〜1,000mPa・s)などが挙げられる。なお、「PEO」は、住友精化株式会社の登録商標である。
【0021】
粘度低下剤としては、フラクチャリング流体の粘度を低下させるものであれば特に制限されず、例えば、ラジカル発生剤、酸、酵素などが挙げられる。粘度低下剤は1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。上記の通り、フラクチャリング流体には、水、支持材、ゲル化剤などが含まれており、当該ゲル化剤によって水の粘度が高められている。粘度低下剤は、フラクチャリング流体中のゲル化剤などに作用して、フラクチャリング流体の粘度を低下させる機能を有し、ブレーカーなどと呼ばれることがある。
【0022】
粘度低下剤として使用されるラジカル発生剤(本明細書では、ラジカル開始剤と表記する場合もある)としては、特に制限されず、公知のものが使用でき、具体例としては、2,2'−アゾビス(2,4'−ジメチルバレロニトリル(ADVN)などのアゾ系ラジカル発生剤;過酸化水素、ペルオキソ二硫酸塩、t−ブチルヒドロパーオキサイドなどの過酸化物;モノ過硫酸のアンモニウム塩、モノ過硫酸のアルカリ金属塩、ジ過硫酸のアンモニウム塩、ジ過硫酸のアルカリ金属塩、次亜塩素酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、塩素化イソシアヌレートなどが挙げられる。フラクチャリング流体におけるゲル化剤として、例えば後述の水和性高分子化合物が用いられる場合、粘度制御剤がラジカル発生剤を含むことにより、水和性高分子化合物が低分子量化し、フラクチャリング流体の粘度を効果的に低下させることができる。
【0023】
粘度低下剤として使用される酸としては、特に制限されず、公知のものが使用でき、具体例としては、塩酸、硫酸、フマル酸などが挙げられる。
【0024】
粘度低下剤として使用される酵素としては、特に制限されず、公知のものが使用でき、具体例としては、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、オリゴグルコシダーゼ、サッカラーゼ、マルターゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼなどが挙げられる。フラクチャリング流体におけるゲル化剤として、例えば後述のポリサッカライドなどが用いられる場合、粘度制御剤が酵素を含むことにより、ポリサッカライドのグリコシド結合を加水分解し、フラクチャリング流体の粘度を効果的に低下させることができる。
【0025】
本発明の効果を阻害しないことを限度として、粘度制御剤は、ポリアルキレンオキシド及び粘度低下剤に加えて、他の成分を含んでいてもよい。
【0026】
本発明の粘度制御剤は、上記のポリアルキレンオキシドと上記粘度低下剤とを含み、錠剤であることにより、フラクチャリング流体の粘度低下を効果的に制御することができる。すなわち、フラクチャリング流体中において、錠剤がゆっくりと溶解することにより、所定期間はフラクチャリング流体の粘度を高粘度に維持し、所定の期間経過後にフラクチャリング流体中において粘度低下剤が分散し、フラクチャリング流体の粘度を低下させることができる。具体的には、本発明の粘度制御剤をフラクチャリング流体に用いることにより、水圧破砕法におけるフラクチャーの生成作業時には、フラクチャリング流体中において、本発明の粘度制御剤がゆっくりと溶解して、所定期間に亘ってフラクチャリング流体の粘度が高粘度に維持される。そして、所定期間が経過したフラクチャリング流体の回収作業時には、フラクチャリング流体中において錠剤中のポリアルキレンオキシドと粘度低下剤とが溶解し、粘度低下剤が分散してフラクチャリング流体中ゲル化剤に作用して、フラクチャリング流体の粘度を低下させることができる。
【0027】
本発明の粘度制御剤におけるポリアルキレンオキシドの割合は、フラクチャリング流体の粘度を高粘度から低粘度に変化させる所定期間に応じて、適宜設定することができ、好ましくは30〜99.99質量%程度、より好ましくは50〜99.99質量%程度、さらに好ましくは70〜99.9質量%程度が挙げられる。粘度制御剤におけるポリアルキレンオキシドの割合が高くなるほど、粘度低下剤のフラクチャリング流体中への分散(溶解)が遅くなるため、フラクチャリング流体の回収に適した粘度に低下させるまでの期間を長くすることができる。一方、粘度制御剤におけるポリアルキレンオキシドの割合が低くなるほど、粘度低下剤のフラクチャリング流体中への分散(溶解)が早くなるため、フラクチャリング流体の回収に適した粘度に低下させるまでの期間を短くすることができる。
【0028】
本発明の粘度制御剤において、錠剤の質量(大きさ)としては、フラクチャリング流体の粘度を高粘度から低粘度に変化させる所定期間に応じて、適宜設定することができ、好ましくは0.2g以上、より好ましくは0.2〜10g程度、さらに好ましくは0.5〜2g程度が挙げられる。錠剤の質量が大きくなるほど、粘度低下剤のフラクチャリング流体中への分散(溶解)が遅くなるため、フラクチャリング流体の回収に適した粘度に低下させるまでの期間を長くすることができる。一方、錠剤の質量が小さくなるほど、フラクチャリング流体の回収に適した粘度に低下させるまでの期間を短くすることができる。
【0029】
本発明の粘度制御剤の使用量は、特に制限されず、目的とするフラクチャリング流体のフラクチャー生成作業時及び回収作業時の設定粘度に応じて適宜設定すればよく、フラクチャリング流体中において、例えば0.01〜1質量%程度、好ましくは0.1〜0.5質量%程度が挙げられる。
【0030】
本発明の粘度制御剤において、錠剤におけるポリアルキレンオキシドと粘度低下剤の配置は、特に制限されず、例えば、ポリアルキレンオキシドと粘度低下剤が錠剤中に均一に分散したマトリックス型、粘度低下剤が錠剤の中心部(コア部)に位置し、ポリアルキレンオキシドが粘度低下剤の周囲(シェル部)に位置するコアシェル型などが挙げられる。錠剤がコアシェル型である場合、マトリックス型である場合よりも、フラクチャリング流体中における粘度低下剤の分散(溶解)が遅くなるため、回収に適した粘度低下までの期間を遅らせることができる。
【0031】
本発明の粘度制御剤は、ポリアルキレンオキシド、粘度低下剤、及び必要に応じて他の成分を混合し、錠剤形状に成形することにより製造することができる。すなわち、粘度制御剤は、ポリアルキレンオキシド、粘度低下剤、及び必要に応じて他の成分を混合した組成物とし、これを錠剤形状に成形することにより製造することができる。
【0032】
本発明の粘度制御剤は、例えばマトリックス型であれば、上記のポリアルキレンオキシドの粉末と上記の粘度低下剤の粉末とを均一に混合し、打錠機などを用いて錠剤形状に成形することにより製造することができる。また、コアシェル型であれば、粘度低下剤の粉末が中心部分、ポリアルキレンオキシドの粉末がその周りに位置するように配置して、打錠機などで成形することにより製造することができる。打錠圧などは、目的とする錠剤の質量(大きさ)等に応じて適宜設定することができる。
【0033】
本発明の粘度制御剤は、水圧破砕法におけるフラクチャリング流体に使用されることにより、水圧破砕法におけるフラクチャーの生成作業時にはフラクチャリング流体の高い粘度を維持でき、フラクチャリング流体の回収作業時には粘度を低下させることができるため、水圧破砕法に用いられるフラクチャリング流体の粘度変化を制御するために使用される粘度制御剤として、好適に使用することができる。
【0034】
<フラクチャリング流体>
本発明のフラクチャリング流体は、上記の粘度制御剤と、水と、支持材(プロパント)と、ゲル化剤とを含む。本発明のフラクチャリング流体は、水圧破砕法に用いられ、坑井内に圧入される流体である。水としては、特に制限されず、例えば、地下水、河川水、雨水、工業用水、水道水などを用いることができる。フラクチャリング流体中における水の割合は、通常、90〜99質量%程度である。
【0035】
支持材としては、特に制限されず、公知のフラクチャリング流体に使用される支持材を使用することができる。支持材としては、例えば、砂、砂利、ウォルナットシェル、タルクやベントナイトなどの鉱物類などが挙げられる。支持材は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。フラクチャリング流体における支持材の割合は、通常、0.1〜1質量%程度である。
【0036】
ゲル化剤としては、特に制限されず、公知のフラクチャリング流体に使用されるゲル化剤を使用することができる。ゲル化剤の具体例としては、ポリサッカライド、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミドコポリマー、ポリアルキレンオキシドなどの水和性高分子化合物が挙げられる。ポリサッカライドとしては、特に制限されないが、好ましくはグアーガム、ローカストビーンガム、カルボキシメチルガム、カラヤガム、ナトリウムカルボキシメチルグアー、ヒドロキシエチルグアー、ヒドロキシプロピルグアー、ナトリウムヒドロキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられる。ゲル化剤としては、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。フラクチャリング流体におけるゲル化剤の割合は、通常、0.1〜1質量%程度である。
【0037】
本発明のフラクチャリング流体中には、架橋剤、界面活性剤などの公知のフラクチャリング流体に含まれる他の添加剤がさらに含まれていてもよい。架橋剤の具体例としては、クロム(III)、アルミニウム(III)、チタン(IV)などの多価金属イオン、ボレートなどの多価アニオンなどが挙げられる。
【0038】
本発明のフラクチャリング流体は、水と、粘度制御剤と、支持材と、ゲル化剤と、必要に応じて他の添加剤とを混合することにより容易に製造することができる。本発明のフラクチャリング流体は、上記の粘度制御剤を含むため、水圧破砕法に用いられるフラクチャリング流体として好適に使用することができる。さらに、本発明のフラクチャリング流体は、後述の通り、原油または天然ガスの採掘方法において圧入されるフラクチャリング流体として好適に使用することができる。
【0039】
本発明のフラクチャリング流体の粘度は、特に制限されず、公知のフラクチャリング流体と同様とすることができる。フラクチャー生成作業に使用される際のフラクチャリング流体の粘度としては、例えば、500〜2,000mPa・s程度が挙げられる。また、フラクチャリング流体を回収する際のフラクチャリング流体の粘度としては、例えば、100mPa・s以下が挙げられる。なお、本発明において、フラクチャリング流体の粘度の測定方法は、次の通りである。フラクチャリング流体を、25℃の恒温槽に30分以上浸し、B型回転粘度計(回転数12rpm、3分、25℃)により測定する。
【0040】
<原油または天然ガスの採掘方法>
本発明の原油または天然ガスの採掘方法は、地層に採掘孔を形成する工程と、採掘孔に、本発明のフラクチャリング流体を導入し、地層の一部にフラクチャーを形成する工程と、採掘孔から原油または天然ガスを採収する工程とを備える。地層に採掘孔を形成する工程、採掘孔に、フラクチャリング流体を導入し、地層の一部にフラクチャーを形成する工程、及び採掘孔から原油または天然ガスを採収する工程は、公知の採掘方法に準じて行うことができる。本発明の原油または天然ガスの採掘方法においては、本発明の粘度制御剤を含むフラクチャリング流体を用いるため、フラクチャーの生成作業時にはフラクチャリング流体の高い粘度を維持でき、フラクチャリング流体の回収作業時には粘度を低下させることができる。このため、本発明の原油または天然ガスの採掘方法によれば、効率よく原油または天然ガスを採掘することができる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0042】
[実施例1]
ポリエチレンオキシド(住友精化株式会社製の商品名:PEO−29、0.5質量%の水溶液粘度:825mPa・s)0.5gとラジカル発生剤(ラジカル開始剤)(ADVN:2,2'−アゾビス(2,4'−ジメチルバレロニトリル))0.0025gとをドライブレンドし、直径10mmの臼に入れ、5kNの圧力で打錠し錠剤形状の粘度制御剤(マトリックス型)を得た。この粘度制御剤1錠を、上記ポリエチレンオキシド2.5gを水497.5gで溶解して得た0.5質量%のポリエチレンオキシド水溶液中に添加し、フラクチャリング流体を得た。得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間(0〜7日間)保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表1(実測値)及び図1,2(グラフ)に示す。なお、ポリエチレンオキシド水溶液中のポリエチレンオキシド量に対して、ラジカル発生剤(ラジカル開始剤)の量は1000ppmである。
【0043】
<粘度の測定方法>
実施例及び比較例において、粘度制御剤に用いたポリエチレンオキシドの粘度は以下のようにして測定した。1L容のビーカーにイオン交換水497.5gを入れ、幅80mm、縦25mmの平板で先端周速が1.0m/sの条件下で攪拌しながら試料2.5gを投入し、攪拌を3時間継続して水溶液を調製した。得られた水溶液を、25℃の恒温槽に30分以上浸し、B型回転粘度計(回転数12rpm、3分、25℃)により測定した。
また、実施例及び比較例で得られたフラクチャリング流体の粘度は、以下のようにして測定した。フラクチャリング流体を25℃の恒温槽に30分以上浸し、B型回転粘度計(回転数12rpm、3分、25℃)により測定した。
【0044】
<粘度保持率の測定方法>
実施例及び比較例において、粘度保持率(粘度低下率)は以下のようにして測定した。実施例及び比較例で得られたフラクチャリング流体の粘度(粘度Aとする)を0日目の粘度とした。また、40℃で保管後、所定の期間が経過したフラクチャリング流体の粘度を、それぞれ0日目と同様にして測定した(粘度Bとする)。粘度保持率は、粘度A及び粘度Bを用いて、以下の式により算出した。
粘度B/粘度A×100=粘度保持率(%)
【0045】
[実施例2]
ラジカル発生剤(ラジカル開始剤)を錠剤の中心部(コア部)に配置し、ポリエチレンオキシドをラジカル発生剤(ラジカル開始剤)の周り(シェル部)に配置した錠剤(コアシェル型)としたこと以外は、実施例1と同様にして、粘度制御剤を得た。次に、実施例1と同様にして、実施例2で得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表1及び図1に示す。
【0046】
[実施例3]
粘度制御剤の作製において、ポリエチレンオキシド(住友精化株式会社製の商品名:PEO−18、0.5質量%の水溶液粘度:250mPa・s)0.5gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘度制御剤を得た。次に、実施例1と同様にして、実施例3で得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表1及び図1に示す。
【0047】
[実施例4]
ラジカル発生剤(ラジカル開始剤)を錠剤の中心部(コア部)に配置し、ポリエチレンオキシドをラジカル発生剤(ラジカル開始剤)の周り(シェル部)に配置した錠剤(コアシェル型)としたこと以外は、実施例3と同様にして、粘度制御剤を得た。次に、実施例1と同様にして、実施例4で得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表1及び図1に示す。
【0048】
[実施例5]
粘度制御剤の作製において、ラジカル発生剤(ラジカル開始剤)(ADVN:2,2'−アゾビス(2,4’−ジメチルバレロニトリル))0.0025gを過硫酸アンモニウム0.0025gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粘度制御剤を得た。次に、実施例1と同様にして実施例5で得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表1及び図2に示す。
【0049】
[比較例1]
ポリエチレンオキシド(住友精化株式会社製の商品名:PEO−29、0.5質量%の水溶液粘度:825mPa・s)2.5gを水497.5gで溶解して得た0.5質量%のポリエチレンオキシド水溶液をフラクチャリング流体とし、40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表1及び図1,2に示す。
【0050】
[比較例2]
ポリエチレンオキシド(住友精化株式会社製の商品名:PEO−29、0.5質量%の水溶液粘度:825mPa・s)2.5gを水497.5gで溶解して得た0.5質量%のポリエチレンオキシド水溶液に、ラジカル発生剤(ラジカル開始剤)(ADVN:2,2'−アゾビス(2,4'−ジメチルバレロニトリル))0.0025gを添加してフラクチャリング流体とし、40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表1及び図1,2に示す。なお、ポリエチレンオキシド水溶液中のポリエチレンオキシド量に対して、ラジカル発生剤(ラジカル開始剤)の量は1000ppmである。
【0051】
[比較例3]
ポリエチレンオキシド(住友精化株式会社製の商品名:PEO−29、0.5質量%の水溶液粘度:825mPa・s)2.5gを水497.5gで溶解して得た0.5質量%のポリエチレンオキシド水溶液に、過硫酸アンモニウム0.0025gを添加してフラクチャリング流体とし、40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表1及び図2に示す。なお、ポリエチレンオキシド水溶液中のポリエチレンオキシド量に対して、過硫酸アンモニウムの量は1000ppmである。
【0052】
[比較例4]
ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製の商品名:クラレポバールPVA−403)0.5gと過硫酸アンモニウム0.0025gとをドライブレンドし、直径10mmの臼に入れ、5kNの圧力で打錠し錠剤形状の粘度制御剤(マトリックス型)を得た。この粘度制御剤1錠を、上記ポリエチレンオキシド2.5gを水497.5gで溶解して得た0.5質量%のポリエチレンオキシド水溶液中に添加し、フラクチャリング流体を得た。得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間(0〜7日間)保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表1及び図2に示す。なお、ポリエチレンオキシド水溶液中のポリエチレンオキシド量に対して、ラジカル発生剤(ラジカル開始剤)の量は1000ppmである。
【0053】
[実施例6]
ポリエチレンオキシド(住友精化株式会社製の商品名:PEO−29、0.5質量%の水溶液粘度:825mPa・s)0.5gとラジカル発生剤(ラジカル開始剤)(ADVN:2,2'−アゾビス(2,4’−ジメチルバレロニトリル))0.0025gとをドライブレンドし、直径10mmの臼に入れ、5kNの圧力で打錠し錠剤形状の粘度制御剤(マトリックス型)を得た。この粘度制御剤1錠を、グアーガム(和光純薬工業株式会社製)2.5gを水497.5gで溶解して得た0.5質量%のグアーガム水溶液中に添加し、フラクチャリング流体を得た。得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間(0〜7日間)保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表1及び図3に示す。なお、グアーガム水溶液中のグアーガム量に対して、ラジカル発生剤(ラジカル開始剤)の量は1000ppmである。
【0054】
[実施例7]
粘度制御剤の作製において、ラジカル発生剤(ラジカル開始剤)(ADVN:2,2'−アゾビス(2,4’−ジメチルバレロニトリル))0.0025gを過硫酸アンモニウム0.0025gに変更したこと以外は、実施例6と同様にして、粘度制御剤を得た。次に、実施例6と同様にして実施例7で得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表1及び図3に示す。なお、グアーガム水溶液中のグアーガム量に対して、過硫酸アンモニウムの量は1000ppmである。
【0055】
[実施例8]
粘度制御剤の作製において、過硫酸アンモニウム0.0025gを0.000625gに変更したこと以外は、実施例7と同様にして、粘度制御剤を得た。次に、実施例6と同様にして実施例8で得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表1及び図3,4に示す。なお、グアーガム水溶液中のグアーガム量に対して、過硫酸アンモニウムの量は250ppmである。
【0056】
[実施例9]
粘度制御剤の作製において、ポリエチレンオキシド(住友精化株式会社製の商品名:PEO−29、0.5質量%の水溶液粘度:825mPa・s)0.25gと過硫酸アンモニウム0.000625gとをドライブレンドし、直径5mmの臼に入れ、5kNの圧力で打錠し錠剤形状の粘度制御剤(マトリックス型)を得た。次に、実施例6と同様にして実施例9で得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表1及び図4に示す。なお、グアーガム水溶液中のグアーガム量に対して、過硫酸アンモニウムの量は250ppmである。
【0057】
[実施例10]
粘度制御剤の作製において、ポリエチレンオキシド(住友精化株式会社製の商品名:PEO−29、0.5質量%の水溶液粘度:825mPa・s)1.0gと過硫酸アンモニウム0.000625gとをドライブレンドし、直径10mmの臼に入れ、5kNの圧力で打錠し錠剤形状の粘度制御剤(マトリックス型)を得た。次に、実施例6と同様にして実施例10で得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表1及び図4に示す。なお、グアーガム水溶液中のグアーガム量に対して、過硫酸アンモニウムの量は250ppmである。
[実施例11]
粘度制御剤の作製において、ポリエチレンオキシド(住友精化株式会社製の商品名:PEO−29、0.5質量%の水溶液粘度:825mPa・s)0.125gと過硫酸アンモニウム0.000625gとをドライブレンドし、直径5mmの臼に入れ、5kNの圧力で打錠し錠剤形状の粘度制御剤(マトリックス型)を得た。次に、実施例6と同様にして実施例11で得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表1及び図4に示す。なお、グアーガム水溶液中のグアーガム量に対して、過硫酸アンモニウムの量は250ppmである。
【0058】
[比較例5]
グアーガム(和光純薬工業株式会社製)2.5gを水497.5gで溶解して得た0.5質量%のグアーガム水溶液をフラクチャリング流体とし、40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表2及び図3に示す。
【0059】
[比較例6]
グアーガム(和光純薬工業株式会社製)2.5gを水497.5gで溶解して得た0.5質量%のグアーガム水溶液に、ラジカル発生剤(ラジカル開始剤)(ADVN:2,2'−アゾビス(2,4’−ジメチルバレロニトリル))0.0025gを添加してフラクチャリング流体とし、40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表2及び図3に示す。なお、グアーガム水溶液中のグアーガム量に対して、ラジカル発生剤(ラジカル開始剤)の量は1000ppmである。
【0060】
[比較例7]
グアーガム(和光純薬工業株式会社製)2.5gを水497.5gで溶解して得た0.5質量%のグアーガム水溶液に、過硫酸アンモニウム0.0025gを添加してフラクチャリング流体とし、40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表2及び図3に示す。なお、グアーガム水溶液中のグアーガム量に対して、過硫酸アンモニウムの量は1000ppmである。
【0061】
[比較例8]
ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製の商品名:クラレポバールPVA−403)0.5gとラジカル発生剤(ラジカル開始剤)(ADVN:2,2'−アゾビス(2,4’−ジメチルバレロニトリル))0.0025gとをドライブレンドし、直径10mmの臼に入れ、5kNの圧力で打錠し錠剤形状の粘度制御剤(マトリックス型)を得た。この粘度制御剤1錠を、グアーガム(和光純薬工業株式会社製)2.5gを水497.5gで溶解して得た0.5質量%のグアーガム水溶液中に添加し、フラクチャリング流体を得た。得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間(0〜7日間)保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表2及び図3に示す。なお、グアーガム水溶液中のグアーガム量に対して、ラジカル発生剤(ラジカル開始剤)の量は1000ppmである。
【0062】
[比較例9]
ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製の商品名:クラレポバールPVA−403)0.5gと過硫酸アンモニウム0.0025gとをドライブレンドし、直径10mmの臼に入れ、5kNの圧力で打錠し錠剤形状の粘度制御剤(マトリックス型)を得た。この粘度制御剤1錠を、グアーガム(和光純薬工業株式会社製)2.5gを水497.5gで溶解して得た0.5質量%のグアーガム水溶液中に添加し、フラクチャリング流体を得た。得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間(0〜7日間)保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表2及び図3に示す。なお、グアーガム水溶液中のグアーガム量に対して、過硫酸アンモニウムの量は1000ppmである。
【0063】
[実施例12]
ポリエチレンオキシド(住友精化株式会社製の商品名:PEO−29、0.5質量%の水溶液粘度:825mPa・s)0.5gとラジカル発生剤(ラジカル開始剤)(ADVN:2,2'−アゾビス(2,4’−ジメチルバレロニトリル))0.0025gとをドライブレンドし、直径10mmの臼に入れ、5kNの圧力で打錠し錠剤形状の粘度制御剤(マトリックス型)を得た。この粘度制御剤1錠を、グアーガム(和光純薬工業株式会社製)2.5gと四ほう酸ナトリウム(無水)(和光純薬工業株式会社製)0.25gとを水497.5gで溶解して得たグアーガムゲル中に添加し、フラクチャリング流体を得た。得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間(0〜7日間)保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表2及び図5に示す。なお、グアーガムゲル中のグアーガム量に対して、ラジカル発生剤(ラジカル開始剤)の量は1000ppmである。
【0064】
[実施例13]
粘度制御剤の作製において、ラジカル発生剤(ラジカル開始剤)(ADVN:2,2'−アゾビス(2,4’−ジメチルバレロニトリル))0.0025gを過硫酸アンモニウム0.0025gに変更したこと以外は、実施例12と同様にして、粘度制御剤を得た。次に、実施例12と同様にして実施例13で得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表2及び図5に示す。なお、グアーガムゲル中のグアーガム量に対して、過硫酸アンモニウムの量は1000ppmである。
【0065】
[実施例14]
粘度制御剤の作製において、過硫酸アンモニウム0.0025gを0.000625gに変更したこと以外は、実施例12と同様にして、粘度制御剤を得た。次に、実施例12と同様にして実施例14で得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表2及び図5に示す。なお、アーガムゲル中のグアーガム量に対して、過硫酸アンモニウムの量は250ppmである。
【0066】
[実施例15]
粘度制御剤の作製において、過硫酸アンモニウムを0.00025gに変更したこと以外は、実施例13と同様にして、粘度制御剤を得た。次に、実施例13と同様にして実施例17で得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表2及び図5に示す。なお、アーガムゲル中のグアーガム量に対して、過硫酸アンモニウムの量は100ppmである。
【0067】
[比較例10]
グアーガム(和光純薬工業株式会社製)2.5gと四ほう酸ナトリウム(無水)(和光純薬工業株式会社製)0.25gとを水497.5gで溶解して得た0.5質量%のグアーガムゲルをフラクチャリング流体とし、40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表2及び図5に示す。
【0068】
[比較例11]
グアーガム(和光純薬工業株式会社製)2.5gと四ほう酸ナトリウム(無水)(和光純薬工業株式会社製)0.25gとを水497.5gで溶解して得た0.5質量%のグアーガムゲルに、過硫酸アンモニウム0.0025gを添加してフラクチャリング流体とし、40℃で一定期間保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表2及び図5に示す。なお、グアーガムゲル中のグアーガム量に対して、ラジカル発生剤(ラジカル開始剤)の量は1000ppmである。
【0069】
[比較例12]
ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製の商品名:クラレポバールPVA−403)0.5gと過硫酸アンモニウム0.0025gとをドライブレンドし、直径10mmの臼に入れ、5kNの圧力で打錠し錠剤形状の粘度制御剤(マトリックス型)を得た。この粘度制御剤1錠を、グアーガム(和光純薬工業株式会社製)2.5gと四ほう酸ナトリウム(無水)(和光純薬工業株式会社製)0.25gとを水497.5gで溶解して得た0.5質量%のグアーガムゲルに添加し、フラクチャリング流体を得た。得られたフラクチャリング流体を40℃で一定期間(0〜7日間)保管した際の粘度及び粘度保持率の推移を確認した。結果を表2及び図5に示す。なお、グアーガムゲル中のグアーガム量に対して、過硫酸アンモニウムの量は1000ppmである。
【0070】
【表1】
【表2】
【0071】
表1及び図1に示されるように、実施例1においては、1日目までは粘度制御剤を用いなかった比較例1と較べて有意差は無く粘度は安定しており、3日目から急激に粘度が低下しはじめ、5日目で粘度保持率が約10%にまで低下した。また、実施例2においては、2日目までは比較例1と較べて有意差は無く粘度は安定しており、3日目から粘度が低下しはじめ、7日目で粘度保持率が約30%にまで低下した。実施例3においては、1日目までは比較例1と較べて有意差は無く粘度は安定しており、2日目から急激に粘度が低下しはじめ、4日目で粘度保持率が約7%にまで低下した。実施例4においては、1日目までは比較例1と較べて有意差は無く粘度は安定しており、2日目から急激に粘度が低下しはじめ、4日目で粘度保持率が約11%にまで低下した。比較例1では、7日目においても、粘度保持率が約80%と高い粘度を保持していた。比較例2では、1日目で粘度保持率が約35%まで低下し、2日目には粘度保持率が約10%にまで低下した。実施例及び比較例の結果から、ポリエチレンオキシドとラジカル発生剤(ラジカル開始剤)とを含む粘度制御剤を用いた実施例1〜4のフラクチャリング流体では、一定期間は高粘度を保ち、一定期間経過後には、粘度を急激に低下させられることが明らかとなった。一方、粘度制御剤を用いなかった比較例1のフラクチャリング流体では、粘度が高いまま維持されること、ポリエチレンオキシドを用いなかった比較例2のフラクチャリング流体では、粘度が早期に低下してしまうことが明らかとなった。
【0072】
図1において、実施例1と実施例2との比較から、錠剤におけるラジカル発生剤(ラジカル開始剤)の配置を変更することで、粘度制御が可能となることが分かる。また、実施例1と実施例3、実施例2と実施例4との比較から、粘度制御剤に用いるポリエチレンオキシドの粘度を調整することによって、フラクチャリング流体の粘度変化を制御できることが分かる。
【0073】
図2に示される実施例5の結果から、粘度低下剤としてモノ過硫酸のアンモニウム塩を用いた場合にも粘度制御が可能となることが分かる。
【0074】
図1の比較例1のように、粘度低下剤(ラジカル発生剤)を用いない場合は、粘度低下が緩やかとなり、フラクチャリング流体は、長期間に亘って高い粘度を保持することが分かる。一方、図2の比較例2,3のように、粘度低下剤としてのラジカル発生剤またはモノ過硫酸のアンモニウム塩を錠剤の形態とせずに、フラクチャリング流体に直接添加すると、フラクチャリング流体の粘度が急激に低下することが分かる。
【0075】
図2に示されるように、ポリエチレンオキシドの代わりにポリビニルアルコールを粘度制御剤に用いた比較例4では、フラクチャリング流体の粘度が直ぐに低下し始め、実施例1〜5のように一定期間は高粘度を保ち、一定期間後に粘度を低下させることはできないことが分かる。
【0076】
図3に示されるように、フラクチャリング流体の組成として、0.5%ポリエチレンオキシド水溶液の代わりに、ポリサッカライドであるグアーガム水溶液(0.5%)を用いた実施例6,7においても、フラクチャリング流体の粘度調整が可能であることが分かる。また、実施例7,8の結果から、粘度低下剤の添加量を制御することによって、フラクチャリング流体の粘度調整を行うことができることも分かる。
【0077】
図4に示される実施例8〜11の結果から、粘度制御剤として使用する錠剤の質量(大きさ)を変更することによって、フラクチャリング流体の粘度調整を行えることが分かる。
【0078】
図3の比較例5のように、フラクチャリング流体の組成として、0.5%ポリエチレンオキシド水溶液の代わりに、ポリサッカライドであるグアーガム水溶液(0.5%)を用いたに場合おいても、粘度低下剤(ラジカル発生剤)を用いない場合は、粘度低下が緩やかとなり、フラクチャリング流体は、長期間に亘って高い粘度を保持することが分かる。一方、図3の比較例6,7のように、粘度低下剤としてのラジカル発生剤またはモノ過硫酸のアンモニウム塩を錠剤の形態とせずに、フラクチャリング流体に直接添加すると、フラクチャリング流体の粘度が急激に低下することが分かる。
【0079】
図3の比較例8,9のように、フラクチャリング流体の組成として、0.5%ポリエチレンオキシド水溶液の代わりに、ポリサッカライドであるグアーガムの水溶液(0.5%)を用いた場合においても、ポリエチレンオキシドの代わりにポリビニルアルコールを粘度制御剤に用いると、フラクチャリング流体の粘度が直ぐに低下し始め、図3または図4の実施例6〜11のように一定期間は高粘度を保ち、一定期間後に粘度を低下させることはできないことが分かる。
【0080】
図5に示されるように、フラクチャリング流体として、四ほう酸ナトリウム(0.05%)とグアーガム(0.5%)水溶液を用いた実施例12においても、フラクチャリング流体の粘度を調整することができる。また、実施例12〜15から、フラクチャリング流体として、四ほう酸ナトリウム(0.05%)とグアーガム(0.5%)水溶液を用いた場合にも、粘度低下剤の種類、粘度低下剤の濃度などを調整することにより、フラクチャリング流体の粘度を調整することができることが分かる。
【0081】
図5の比較例10のように、フラクチャリング流体として、四ほう酸ナトリウム(0.05%)とグアーガム(0.5%)水溶液を用いた場合においても、粘度低下剤(ラジカル発生剤)を用いない場合は、粘度低下が緩やかとなり、フラクチャリング流体は、長期間に亘って高い粘度を保持することが分かる。一方、図5の比較例11のように、粘度低下剤としてのラジカル発生剤を錠剤の形態とせずに、フラクチャリング流体に直接添加すると、フラクチャリング流体の粘度が急激に低下することが分かる。また、ポリエチレンオキシドの代わりにポリビニルアルコールを粘度制御剤に用いた比較例12では、フラクチャリング流体の粘度が直ぐに低下し始め、実施例12〜15のように一定期間は高粘度を保ち、一定期間後に粘度を低下させることはできないことが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5