特許第5745832号(P5745832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5745832
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】リソグラフィ装置用改善偏光設計
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20150618BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   H01L21/30 516A
   G03F7/20 521
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】66
(21)【出願番号】特願2010-273137(P2010-273137)
(22)【出願日】2010年12月8日
(65)【公開番号】特開2011-129907(P2011-129907A)
(43)【公開日】2011年6月30日
【審査請求日】2013年12月6日
(31)【優先権主張番号】61/286,716
(32)【優先日】2009年12月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503195263
【氏名又は名称】エーエスエムエル ホールディング エヌ.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,スティーブン,ジョージ
【審査官】 新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−258637(JP,A)
【文献】 特開2006−324664(JP,A)
【文献】 特表2006−511967(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/077154(WO,A2)
【文献】 特開2006−066440(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01630614(EP,A1)
【文献】 特開2005−183938(JP,A)
【文献】 特開2012−069945(JP,A)
【文献】 特開2012−074695(JP,A)
【文献】 特開2008−166777(JP,A)
【文献】 特開2009−111361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ装置を用いた基板上へのパターニングデバイスレイアウトの像の転写を向上させる方法であって、
複数の既定偏光条件の各々に対応する第1プロセスを実行してクリティカルフィーチャの相対的により良い再現と関連するリソグラフィ応答値をもたらす既定偏光条件を選択することと、
第2プロセスを実行して、既定偏光条件のセットのうち、前記第1プロセスで使用された前記既定偏光条件の1つ以上を使用し、前記リソグラフィ応答の所望の値をもたらすまで、反復的に前記既定偏光条件の偏光条件を調整することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記クリティカルフィーチャを含む前記パターニングデバイスレイアウトの少なくとも一部をエミュレートするテストフィーチャのセットを得ることと、
1つ以上のプロセスパラメータについて前記クリティカルフィーチャを再現する際にリソグラフィ応答の変化を表す性能測定基準を定義することと、
前記複数の既定偏光条件を選択することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1プロセスから得られた前記リソグラフィ応答値で性能測定基準を更新することを含み、前記第2プロセスは前記リソグラフィ応答の前記所望の値が得られるまで前記性能測定基準を反復的にさらに更新することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2プロセスは、
候補照明空間強度マップを得ることと、
前記空間強度マップの明照明点を別個のピクセルまたはピクセルグループに分割することと、
既定偏光条件のセットの各々の既定偏光条件を前記別個のピクセルまたはピクセルグループの各々に適用することによって前記別個のピクセルまたはピクセルグループの局所偏光を調整することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の既定偏光条件は、非偏光、TE偏光、TM偏光、TM/TE偏光、対角偏光、X偏光、Y偏光、X+Y偏光、およびY+X偏光からなるグループから選択される2つ以上の偏光条件、あるいはそれらのあらゆる組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の既定偏光条件はTM/TE偏光を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記リソグラフィ応答は、臨界線幅非均一性、クリティカルディメンジョンエラー、アスペクト比エラー、ピッチエラー、サイドエッジ配置エラー、コーナーエッジ配置エラー、パターニングデバイスエラー増大因子(MEEF)、ドーズ寛容度、焦点寛容度、あるいはそれらのあらゆる組合せからなるグループから選択される1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1プロセスは、前記複数の既定偏光条件の各々についての照明空間強度マップを得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1プロセスは、前記複数の既定偏光条件の各々についての規格化像ログスロープ(NILS)値を決定することと、高NILS値に対応する前記1つ以上の偏光条件を選択して、選択された偏光条件のセットを形成することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の既定偏光条件はTM/TE偏光を含み、放射システムの瞳面において、TM偏光を対角線に沿ってかけ、前記瞳面の各クアドラントにおいて、TM偏光はデカルト軸に向かってTE偏光に徐々にかつ対称的に変形する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
TM偏光のみ、TE偏光のみ、X偏光のみ、Y偏光のみ、対角偏光のみ、またはそれらの組み合わせが、σが0.3以下の値で、前記瞳面範囲内に適用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
σ>1の暗視野照明を含んで前記パターニングデバイスレイアウトを照明することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
リソグラフィ装置を用いたパターニングデバイスレイアウトの像の基板上への転写を構成する方法を実行する機械によって実行可能な機械実行可能命令を有するコンピュータ記憶製品であって、前記方法は、
複数の既定偏光条件の各々に対応する第1プロセスを実行してクリティカルフィーチャの相対的により良い再現と関連するリソグラフィ応答値をもたらす既定偏光条件を選択することと、
第2プロセスを実行して、既定偏光条件のセットのうち、前記第1プロセスで使用された前記既定偏光条件の1つ以上を使用し、前記リソグラフィ応答の所望の値をもたらすまで、反復的に前記既定偏光条件の偏光条件を調整することと、を含む、コンピュータ記憶製品。
【請求項14】
デバイス製造方法であって、
リソグラフィ装置内のパターン付与された放射のビームを放射感応性基板上に投影することを含み、前記放射は、
前記リソグラフィ装置の瞳面の対角線に沿ったTM偏光と、
前記瞳面の各クアドラントのTE偏光と、を含むTM/TE偏光条件を有し、
前記TM偏光は、デカルト軸の各々に向かってTE偏光に徐々にかつ対称的に変形し、
前記TM偏光は、前記瞳面の中央領域にかけられ、前記TM/TE偏光は、前記中央領域の周囲又は外側にかけられる、デバイス製造方法。
【請求項15】
デバイス製造方法であって、
リソグラフィ装置内のパターン付与された放射のビームを放射感応性基板上に投影することを含み、前記放射は、透過偏光板および/または回折光エレメントによって形成された空間変化偏光条件を有し、前記方法は、TE偏光を用いるソースマスク偏光最適化を暗視野照明に適用し、前記放射のビームにσ>1の暗視野照明を含めて前記放射のビームにパターン付与を行うパターニングデバイスを照明する、デバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2009年12月15日に出願された米国仮出願第61/286,716号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、デバイス製造プロセスにおいてより良い結像を達成するための、リソグラフィ装置における改善偏光照明に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上、通常、基板のターゲット部分上に付与する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に用いることができる。その場合、ICの個々の層上に形成される回路パターンを生成するために、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを用いることができる。このパターンは、基板(例えば、シリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば、ダイの一部、または1つ以上のダイを含む)に転写することができる。通常、パターンの転写は、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層上への結像によって行われる。一般には、単一の基板が、連続的にパターニングされる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。公知のリソグラフィ装置としては、ターゲット部分上にパターン全体を一度に露光することにより各ターゲット部分を照射する、いわゆるステッパ、および放射ビームによってある特定の方向(「スキャン」方向)にパターンをスキャンすると同時に、この方向に平行または逆平行に基板をスキャンすることにより各ターゲット部分を照射する、いわゆるスキャナが含まれる。パターンを基板上にインプリントすることにより、パターニングデバイスから基板にパターンを転写することも可能である。
【0004】
[0004] リソグラフィ装置を用いるデバイス製造プロセスにおける目標の一つは、パターニングデバイスを用いて基板上に所望のデバイスパターンを忠実に再現することである。このことを実現するために、照明を最適化して限界解像度またはその付近においてさえもより良い像コントラストを生じさせる必要がある。偏光照明は、特に、低k値を有するリソグラフィプロセスについて、より良い結像を達成するためのツールである。ここで、kは、式(1)のレイリー基準によって与えられる、達成可能解像度Rに関するプロセス依存調整係数である。
【0005】
[0005] R=k*(λ/NA)(1)
【0006】
[0006] ここで、λは、使用される放射の波長であり、NAは、使用される投影システムの開口数である。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 標準的な偏光、例えば、線形X偏光、線形Y偏光、X+Y偏光、TE(方位)偏光、TM(半径)偏光をリソグラフィプロセスで使用することができる。特定の結像の問題に対してこれらの偏光条件のうち最良条件を選択することによって、リソグラファ(lithographer)は、規格化像ログスロープ(NILS)値によって与えられる像コントラストを向上させるまたは最大化することができる。また、そのような偏光条件は、より高いドーズ寛容度、より低いマスクエラー増大因子(MEEF)、および/または、より低いラインエッジラフネスなどの1つ以上の他の所望の利点を提供することができ、それによって、より低いk値での結像をうまく行うことができる。例えば、TM偏光は、比較的低いk値を有する稠密な孔の正方形グリッドアレイにおいて有益であり得る。参考として、例えば、米国特許第7,090,964号、第7,352,443号、および第7,359,033号が挙げられる。
【0008】
[0008] 最適または有益な偏光選択は、さまざまな結像の問題について明らかではない。例えば、偏向選択は、最新のICやデバイスにおいて現れ得るさまざまな複雑な2次元パターンについて明らかでない。そのようなパターンは、複雑な屈折パターンを生成することができる。例えば、低k2次元パターンの標準的な偏光(例えば、X+Y偏光)は、最良の結像を提供しない場合がある。従って、事前に正しい偏光条件を予測することが難しい場合に、他の制御可能なリソグラフィパラメータとともに改善した照明偏光を選択するための汎用的な技術を提供することは有益であろう。
【0009】
[0009] 本発明の実施形態は、最適または有益な照明偏光条件を決定することによって、前述した現在のリソグラフィ技術の限界に対する解決策を提供する。そのような偏光条件の決定は、既定の空間変化する最適または有益な偏光を選択する、または所望のリソグラフィ応答の最良値の追跡に基づいて明照明点の局所偏光を空間的にカスタマイズすることによって達成することができる。偏光制御という形態でソース側での追加の自由度を導入することによって、偏光の最適化により従来のソースマスク最適化(SMO)の有効性が高められる。従って、当該プロセスはSMPOと略されるソースマスク偏光最適化と呼ぶことができる。
【0010】
[0010] 本発明の一態様によれば、リソグラフィ装置を使用する基板上へのパターニングデバイスレイアウトの像の転写を向上させる方法が開示される。当該方法は、複数の既定偏光条件の各々に対応する第1プロセスを実行してクリティカルフィーチャの比較的より良い再現と関連するリソグラフィ応答値をもたらす既定偏光条件を選択することと、第2プロセスを実行して前記リソグラフィ応答の所望の値をもたらす所望の空間変化自由偏光条件に反復的に到達することと、を含み、前記第2プロセスは、前記第1プロセスで使用された前記既定偏光条件の1つ以上を使用する。
【0011】
[0011] 本発明の他の態様によれば、いくつかの非従来型偏光条件、例えば、(別の偏光(TM、X、Y、またはY+X偏光など)を中央領域に有するまたは有さない)TM/TE偏光、対角偏光、および(暗視野照明の)Y+X偏光が開示され、それらは特定のリソグラフィ問題、特に低k値に対して結像の大きな利点を提供する。別の実施形態においては、X、Y、X+Y、TM、TEなどの偏光の種類ではなく、偏光の方向性を、ソース瞳面において局所的に変化させる(例えば、90°、45°、および22.5°の偏光)ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
[0012] 本発明の実施形態を、単なる例として、添付の概略図を参照して以下に説明する。これらの図面において同じ参照符号は対応する部分を示す。
【0013】
図1】[0013] 図1は、本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を示す。
図2A】[0014] 図2Aは、本発明の一実施形態に係る既定偏光条件を概略的に示す。
図2B】[0014] 図2Bは、本発明の一実施形態に係る既定偏光条件を概略的に示す。
図2C】[0014] 図2Cは、本発明の一実施形態に係る既定偏光条件を概略的に示す。
図2D】[0014] 図2Dは、本発明の一実施形態に係る既定偏光条件を概略的に示す。
図2E】[0014] 図2Eは、本発明の一実施形態に係る既定偏光条件を概略的に示す。
図2F】[0014] 図2Fは、本発明の一実施形態に係る既定偏光条件を概略的に示す。
図2G】[0015] 図2Gは、さまざまな既定偏光条件の偏光ベクトルの向きの違いを示す。
図2H】[0016] 図2Hは、本発明の実施形態に係る、さまざまな偏光条件を用いた矩形孔結像の結果を示す。
図2I】[0016] 図2Iは、本発明の実施形態に係る、さまざまな偏光条件を用いた矩形孔結像の結果を示す。
図2J】[0016] 図2Jは、本発明の実施形態に係る、さまざまな偏光条件を用いた矩形孔結像の結果を示す。
図2K】[0016] 図2Kは、本発明の実施形態に係る、さまざまな偏光条件を用いた矩形孔結像の結果を示す。
図2L】[0017] 図2Lは、本発明の実施形態に係る、OPCと偏光条件の相互作用を示す。
図2M】[0017] 図2Mは、本発明の実施形態に係る、OPCと偏光条件の相互作用を示す。
図2N】[0017] 図2Nは、本発明の実施形態に係る、OPCと偏光条件の相互作用を示す。
図2O】[0017] 図2Oは、本発明の実施形態に係る、OPCと偏光条件の相互作用を示す。
図2P】[0017] 図2Pは、本発明の実施形態に係る、OPCと偏光条件の相互作用を示す。
図3】[0018] 図3は、本発明の実施形態で使用されるテストパターンを概略的に示す。
図4】[0018] 図4は、本発明の実施形態で使用されるテストパターンを概略的に示す。
図5A】[0018] 図5Aは、本発明の実施形態で使用されるテストパターンを概略的に示す。
図5B】[0018] 図5Bは、本発明の実施形態で使用されるテストパターンを概略的に示す。
図6A】[0019] 図6Aは、本発明の実施形態で使用されるオフアクシス照明の空間マッピングを示す。
図6B】[0019] 図6Bは、本発明の実施形態で使用されるオフアクシス照明の空間マッピングを示す。
図6C】[0019] 図6Cは、本発明の実施形態で使用されるオフアクシス照明の空間マッピングを示す。
図7】[0020] 図7は、本発明の一実施形態に係る、偏光条件決定プロセスの処理フローの一例を示すフローチャート700である。
図8】[0021] 図8は、本発明の実施形態によって得られる測定基準(metric)の結果の一例を示す。
図9】[0021] 図9は、本発明の実施形態によって得られる測定基準の結果の一例を示す。
図10】[0021] 図10は、本発明の実施形態によって得られる測定基準の結果の一例を示す。
図11】[0021] 図11は、本発明の実施形態によって得られる測定基準の結果の一例を示す。
図12】[0021] 図12は、本発明の実施形態によって得られる測定基準の結果の一例を示す。
図13A】[0022] 図13Aは、本発明の実施形態に係る、偏光微調整の一例を示す。
図13B】[0022] 図13Bは、本発明の実施形態に係る、偏光微調整の一例を示す。
図14A】[0022] 図14Aは、本発明の実施形態に係る、偏光微調整の一例を示す。
図14B】[0022] 図14Bは、本発明の実施形態に係る、偏光微調整の一例を示す。
図15A】[0022] 図15Aは、本発明の一実施形態に係る、偏光微調整の一例を示す。
図15B】[0022] 図15Bは、本発明の一実施形態に係る、偏光微調整の一例を示す。
図15C】[0022] 図15Cは、本発明の一実施形態に係る、偏光微調整の一例を示す。
図16A】[0022] 図16Aは、本発明の一実施形態に係る、偏光微調整の一例を示す。
図16B】[0022] 図16Bは、本発明の一実施形態に係る、偏光微調整の一例を示す。
図16C】[0022] 図16Cは、本発明の一実施形態に係る、偏光微調整の一例を示す。
図16D】[0022] 図16Dは、本発明の一実施形態に係る、偏光微調整の一例を示す。
図17A】[0022] 図17Aは、本発明の一実施形態に係る、偏光微調整の一例を示す。
図17B】[0022] 図17Bは、本発明の一実施形態に係る、偏光微調整の一例を示す。
図17C】[0022] 図17Cは、本発明の一実施形態に係る、偏光微調整の一例を示す。
図17D】[0022] 図17Dは、本発明の一実施形態に係る、偏光微調整の一例を示す。
図18A】[0023] 図18Aは、ソースマスク偏光最適化と従来のソースマスク最適化の比較結果を示す。
図18B】[0023] 図18Bは、ソースマスク偏光最適化と従来のソースマスク最適化の比較結果を示す。
図18C】[0023] 図18Cは、ソースマスク偏光最適化と従来のソースマスク最適化の比較結果を示す。
図18D】[0023] 図18Dは、ソースマスク偏光最適化と従来のソースマスク最適化の比較結果を示す。
図18E】[0023] 図18Eは、ソースマスク偏光最適化と従来のソースマスク最適化の比較結果を示す。
図19A】[0024] 図19Aは、暗視野照明とY+X偏光の使用の利点を示す。
図19B】[0024] 図19Bは、暗視野照明とY+X偏光の使用の利点を示す。
図19C】[0024] 図19Cは、暗視野照明とY+X偏光の使用の利点を示す。
図19D】[0024] 図19Dは、暗視野照明とY+X偏光の使用の利点を示す。
図19E】[0024] 図19Eは、暗視野照明とY+X偏光の使用の利点を示す。
図20A】[0025] 図20Aは、どのように最適化偏光条件がパターニングデバイスの種類によって決まるかについての一例を示す。
図20B】[0025] 図20Bは、どのように最適化偏光条件がパターニングデバイスの種類によって決まるかについての一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0026] リソグラフィプロセスにおいて所望の解像度でクリティカルデバイスパターンを生成する際に、パターニングデバイス(例えば、マスク)のパターンの種類およびパターニングデバイスパターンの照明条件が重要なパラメータとなる。照明とパターンを組み合わせた最適化または決定は、一般にソースマスク最適化(SMO)として知られている。本発明の一実施形態は、偏光微調整と従来のまたはカスタマイズされたSMO技術を組み合わせて、パターンのクリティカルフィーチャの結像をさらに向上させる。
【0015】
[0027] 所与のリソグラフィツールの極限の解像力に近づくために、さまざまな解像度向上技術(RET)が、パターニングデバイス内またはパターニングデバイス上で広く用いられている。従来のバイナリマスクの他に、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスク(PSM)およびレベンソン型(alternating)位相シフトマスクPSMを使用することができる。さらに、適切なパターニングデバイスとオフアクシス照明技術の組合せ、ならびにリソグラフィツールが許容するNAおよび/またはシグマ(シグマは部分コヒーレンスまたはフィルファクター(fill factor)である)設定の変更によって、リソグラファに、所与のパターンの印刷条件を設定する際の幅広い可能性が提供される。
【0016】
[0028] 多くのリソグラファはX+Y偏光を用いて2次元の密パターンの結像を向上させてきた。しかし、本発明の一実施形態によって、非従来型(既定の、またはカスタマイズ可能な)偏光条件を有する偏光が従前の偏光技術以上に結像における有意な利点を有することが判明した。本明細書に記載される偏光決定および/または条件は、ソースマスク最適化(SMO)技術という既存または慣例の方法ならびに/もしくは本式または簡略化/修正光近接化補正(OPC)技術を併用して行うことができる。
【0017】
[0029] 特定の偏光条件が結像性能を向上させるかどうかを確かめるために、所定のプロセスバジェット内で固定されたまたは変化するプロセスパラメータを使用して、1つ以上のリソグラフィ応答値を比較することができる。コンピュータシミュレーションツール、例えば、PROLITHTM、LithoCruiserTM、および、TachyonTMSMOは、実際の実験を行わずにさまざまなリソグラフィプロセスパラメータをシミュレートするのに役立つ。パターニングデバイスパターンの実際のレイアウト、特にクリティカルフィーチャを含むレイアウト内の領域をエミュレートするさまざまなテストパターンフィーチャが使用される。テストパターン内の多数のカットライン(シミュレーション位置)にわたってシミュレーションを行うことができる。カットラインは、実際の構造のさまざまなテストパターンおよび/またはいくつかのキーピッチまたはコーナー領域上に配置することができる。所望のリソグラフィ応答値は性能測定基準を使用して追跡される。最も望ましいリソグラフィ応答値をもたらす、プロセスパラメータと、照明条件と、テストフィーチャとの組合せは、通常、実際のデバイス製造プロセスに対して選択される。
【0018】
リソグラフィツール
[0030] 本発明の実施形態が実施され得る典型的なリソグラフィ装置を示す。図1は、例示的なリソグラフィ装置を概略的に示している。装置は、
【0019】
[0031] −放射ビームB(例えば、紫外線またはDUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、
【0020】
[0032] −パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構成され、かつ特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1ポジショナPMに連結されたサポート構造(例えば、マスクテーブル)MTと、
【0021】
[0033] −基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、かつ特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2ポジショナPWに連結された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WTと、
【0022】
[0034] −パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付けられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSと、を備える。
【0023】
[0035] 照明システムとしては、放射を誘導し、整形し、または制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、またはその他のタイプの光コンポーネント、あるいはそれらのあらゆる組合せなどのさまざまなタイプの光コンポーネントを含むことができる。
【0024】
[0036] サポート構造は、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、および、パターニングデバイスが真空環境内で保持されているか否かなどの他の条件に応じた態様で、パターニングデバイスを保持する。サポート構造は、機械式、真空式、静電式またはその他のクランプ技術を使って、パターニングデバイスを保持することができる。サポート構造は、例えば、必要に応じて固定または可動式にすることができるフレームまたはテーブルであってもよい。サポート構造は、パターニングデバイスを、例えば、投影システムに対して所望の位置に確実に置くことができる。本明細書において使用される「レチクル」または「マスク」という用語はすべて、より一般的な「パターニングデバイス」という用語と同義であると考えるとよい。
【0025】
[0037] 本明細書において使用される「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分内にパターンを作り出すように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用できるあらゆるデバイスを指していると、広く解釈されるべきである。なお、留意すべき点として、放射ビームに付与されたパターンは、例えば、そのパターンが位相シフトフィーチャまたはいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分内の所望のパターンに正確に一致しない場合もある。通常、放射ビームに付けたパターンは、集積回路などのターゲット部分内に作り出されるデバイス内の特定機能層に対応することになる。
【0026】
[0038] パターニングデバイスは、透過型であっても、反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスク、プログラマブルミラーアレイ、およびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクは、リソグラフィでは公知であり、バイナリ、レべンソン型(alternating)位相シフト、およびハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどのマスク型、ならびに種々のハイブリッドマスク型を含む。プログラマブルミラーアレイの一例では、小型ミラーのマトリックス配列が用いられており、各小型ミラーは、入射する放射ビームを様々な方向に反射させるように、個別に傾斜させることができる。傾斜されたミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを付ける。
【0027】
[0039] 本明細書において使用される「投影システム」という用語は、使われている露光放射にとって、あるいは液浸液の使用または真空の使用といった他の要因にとって適切な、屈折型、反射型、反射屈折型、磁気型、電磁型、および静電型光学系、またはそれらのあらゆる組合せを含むあらゆる型の投影システムを包含していると広く解釈されるべきである。本明細書において使用される「投影レンズ」という用語はすべて、より一般的な「投影システム」という用語と同義であると考えるとよい。
【0028】
[0040] 本明細書に示されているとおり、リソグラフィ装置は、透過型のもの(例えば、透過型マスクを採用しているもの)である。また、リソグラフィ装置は、反射型のもの(例えば、上述のプログラマブルミラーアレイを採用しているもの、または反射型マスクを採用しているもの)であってもよい。
【0029】
[0041] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブル(および/または2つ以上のサポート構造)を有する型のものであってもよい。そのような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブル/サポート構造は並行して使うことができ、または予備工程を1つ以上のテーブル/サポート構造上で実行しつつ、別の1つ以上のテーブル/サポート構造を露光用に使うこともできる。
【0030】
[0042] 図1を参照すると、イルミネータILは、放射源SOから放射ビームを受ける。例えば、放射源がエキシマレーザである場合、放射源とリソグラフィ装置は、別個の構成要素であってもよい。そのような場合には、放射源は、リソグラフィ装置の一部を形成しているとはみなされず、また放射ビームは、放射源SOからイルミネータILへ、例えば、適切な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムBDを使って送られる。その他の場合においては、例えば、放射源が水銀ランプである場合、放射源は、リソグラフィ装置の一体部分とすることもできる。放射源SOおよびイルミネータILは、必要ならばビームデリバリシステムBDとともに、放射システムと呼んでもよい。
【0031】
[0043] イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調節するように構成されたアジャスタADを含むことができる。一般に、イルミネータの瞳面内の強度分布の少なくとも外側および/または内側半径範囲(通常、それぞれσ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCOといったさまざまな他のコンポーネントを含むことができる。イルミネータを使って放射ビームを調整すれば、放射ビームの断面に所望の均一性および強度分布をもたせることができる。
【0032】
[0044] 放射ビームBは、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されているパターニングデバイス(例えば、マスク)MA上に入射して、パターニングデバイスによってパターン形成される。パターニングデバイスMAを通り抜けた後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは、基板Wのターゲット部分C上にビームの焦点をあわせる。第2ポジショナPWおよび位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、または静電容量センサ)を使って、例えば、さまざまなターゲット部分Cを放射ビームBの経路内に位置付けるように、基板テーブルWTを正確に動かすことができる。同様に、第1ポジショナPMおよび別の位置センサ(図1には明示的に示されていない)を使い、例えば、マスクライブラリから機械的に取り出した後またはスキャン中に、パターニングデバイスMAを放射ビームBの経路に対して正確に位置付けることもできる。通常、サポート構造MTの移動は、第1ポジショナPMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)を使って達成することができる。同様に、基板テーブルWTの移動も、第2ポジショナPWの一部を形成するロングストロークモジュールおよびショートストロークモジュールを使って達成することができる。ステッパの場合は(スキャナとは対照的に)、サポート構造MTは、ショートストロークアクチュエータのみに連結されてもよく、または固定されてもよい。パターニングデバイスMAおよび基板Wは、パターニングデバイスアライメントマークM1およびM2と、基板アライメントマークP1およびP2とを使って、位置合わせされてもよい。例示では基板アライメントマークが専用ターゲット部分を占めているが、基板アライメントマークをターゲット部分とターゲット部分との間の空間内に置くこともできる(これらは、スクライブラインアライメントマークとして公知である)。同様に、複数のダイがパターニングデバイスMA上に設けられている場合、パターニングデバイスアライメントマークは、ダイとダイの間に置かれてもよい。
【0033】
[0045] 例示の装置は、以下に説明するモードのうち少なくとも1つのモードで使用できる。
【0034】
[0046] 1.ステップモードにおいては、サポート構造MTおよび基板テーブルWTを基本的に静止状態に保ちつつ、放射ビームに付けられたパターン全体を一度にターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一静的露光)。その後、基板テーブルWTは、Xおよび/またはY方向に移動され、それによって別のターゲット部分Cを露光することができる。ステップモードにおいては、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光時に結像されるターゲット部分Cのサイズが限定される。
【0035】
[0047] 2.スキャンモードにおいては、サポート構造MTおよび基板テーブルWTを同期的にスキャンする一方で、放射ビームに付けられたパターンをターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一動的露光)。サポート構造MTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPSの(縮小)拡大率および像反転特性によって決めることができる。スキャンモードにおいては、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光時のターゲット部分の幅(非スキャン方向)が限定される一方、スキャン動作の長さによって、ターゲット部分の高さ(スキャン方向)が決まる。
【0036】
[0048] 3.別のモードにおいては、プログラマブルパターニングデバイスを保持した状態で、サポート構造MTを基本的に静止状態に保ち、また基板テーブルWTを動かす、またはスキャンする一方で、放射ビームに付けられているパターンをターゲット部分C上に投影する。このモードにおいては、通常、パルス放射源が採用されており、さらにプログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTの移動後ごとに、またはスキャン中の連続する放射パルスと放射パルスとの間に、必要に応じて更新される。この動作モードは、前述の型のプログラマブルミラーアレイといったプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0037】
[0049] 上述の使用モードの組合せおよび/またはバリエーション、あるいは完全に異なる使用モードもまた採用可能である。
【0038】
偏光条件の種類
[0050] 上述の通り、本発明の一実施形態は、改善された結像をもたらす照明偏光条件を決定する。
【0039】
[0051] 図2A図2Fは、リソグラフィツールの瞳面での既定偏光条件の例を示している。図2A図2Eは、X+Y、TM、対角、TE、およびTM/TE偏光をそれぞれ示している。2次元デバイスパターンに対して、通常、X+Yはリソグラファによって用いられる。さらに、TM、TE,X、およびY偏光が知られている。例えば、XおよびY偏光は、特定の向きを有するパターン、例えば、すべてが互いに平行な線に対して使用されることが多い。
【0040】
[0052] 偏光条件の有用性は、通常のテストパターン、例えば、矩形孔グリッドアレイの回折パターンを分析することによって予測することができる。これらのテストパターンの像は、多数の回折次数によって形成されることが多く、より高い振幅の回折次数の最適なカップリングは、0次回折次数の偏光条件とは異なる偏光条件を必要とすることがある。例えば、TM偏光は、共鳴4極照明の方形孔グリッドについて有益な結果を提供する。ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクPSMを用いると、TM偏光はより良い結像をもたらす。というのは、高振幅の回折次数01および10は互いに干渉し合って像コントラストを向上させるからである。
【0041】
[0053] しかし、非従来型偏光条件は、パターニングデバイスパターンの全スペクトルについて結像の利点を利用し得ることが判明した。本発明の実施形態で使用される非従来型偏光条件の一部は、以下に示す通り、矩形孔アレイおよび他のパターンのさらにより良い結像をもたらす。
【0042】
[0054] 対角偏光:図2Cは、対角偏光条件を示しており、放射システムの瞳面での各クアドラントにおいて、偏光ベクトルの方向は各クアドラントの45°の対角線に平行である。この特性によって共鳴4極照明の回折次数01および10の偏光ベクトルのアライメントが向上し、それによって、TM偏光と比較して矩形孔グリッドの良い結像がもたらされると考えられる。
【0043】
[0055] TM/TE偏光:図2Eは、TM/TE偏光を示しており、放射システムの瞳面において、TM偏光は対角線に沿ってかけられる。瞳面の各クアドラントにおいて、TM偏光は、デカルトX軸およびY軸に向かってTE偏光に徐々にかつ対称的に変形する。なお、TM/TE偏光は標準的な用語ではなく、図2Eに示す偏光の種類を示すために本明細書において使用される。以下に述べる通り、TM/TE偏光は特定のパターン、例えば矩形孔グリッドの結像の利点をもたらす。この特性は、共鳴4極照明の回折次数01および10を互いに平行にし、それによってTM偏光および対角偏光と比較して矩形孔グリッドのより良い結像がもたらされると考えられる。
【0044】
[0056] Y+X偏光:本発明の実施形態で用いられ得る非従来型偏光条件の別の種類はY+X偏光であるが、図2に明示されていない。Y+X偏光において、偏光ベクトルの方向は、図2Aに示す標準的な条件の偏光ベクトルの方向に対して直交である。
【0045】
[0057] 上記偏光条件のあらゆる組合せを使用して瞳面での偏光をカスタマイズすることができる。例えば、1とは異なるフィルファクターσを用いて、図2Fの例に示すように、組合せ偏光条件を達成することができ、ここで、中央領域(破線による円の外形内に示す)はσ<3のTM偏光を有し、TM/TE偏光は瞳面の中央領域の周囲または外側にかけられる。一実施形態において、中央TM領域と周囲TM/TE領域の移行域は、実質的に継ぎ目のないように平滑にされる。しかし、低k結像についての最適または改善照明形状は「疎」”sparse”であるので、移行域の偏光定義は重要でないかもしれず、一方で移行域は明強度点を有さない場合がある。
【0046】
[0058] 図2Gは、さまざまな既定偏光条件に対応する、デカルトX、Y軸に対する異なる空間的位置での偏光ベクトルの方向を示している。
【0047】
[0059] 図2Iは、固定強度閾値でのZカットを示している。図2Jおよび図2Kは、それぞれXカットおよびYカットに沿った像強度グラフを示し、非従来型TM/TEおよび対角偏光が、図2H(k=0.385x0.7)に示す110nmx200nmの矩形グリッド上の55nmx100nmの矩形孔250(マスク開口252に囲まれている)に対してより良い結像結果をもたらすことを比較上示している。図2I図2Kによると、TM/TE偏光が全体として最良の結果を示し、対角偏光が全体として2番目に良い結果を示しているようである。TM偏光は非偏光放射と同じ総合結果を示しているようである。
【0048】
偏光条件決定
[0060] 本明細書でさらに述べるように、上述したものを含む既定偏光条件は、照明強度マップの明照明点の偏光を局所的に微調整することを含む偏光最適化の起点を有し得る。リソグラフィ応答のソフトウェアシミュレーションにおいて、非従来型偏光は、リソグラファが偏光最適化を探るために利用可能である入力スイート(input suite)に含まれ得る。
【0049】
[0061] なお、非従来型偏光がもたらす相対的な利点は、パターンデザインおよびOPC方法にも左右される。というのは、偏光条件とOPCの両方とも、結果として得られうる回折パターンによって決まるからである。2次元パターンに関して、さまざまなフィーチャのマスクアスペクト比が回折パターンに影響を及ぼし、照明の偏光がマスクアスペクト比に影響を及ぼす。偏光種類の選択に自由度を持たせることでOPCプロセスを簡略化することができ、またはOPCに冗長性を持たせることもできる。TM/TE偏光は、特定のリソグラフィ問題に対するOPCプロセスの必要性を大幅に低減させることができる。図2Pは、非偏光、TM偏光、対角偏光、TM/TE偏光、およびX+Y偏光についてテーブル260に示すようにマスクアスペクト比ならびにXおよびY方向のNILS値を表にして比較することによって、偏光最適化とOPCの相互作用を示している。このシミュレーションにおいて、NA=1.35においてk=0.315x0.42で、90nmx120nmの矩形グリッドに配置された50nm四方の孔が使用された。図2L図2Oは、これらの条件を用いてTM偏光、TM/TE偏光、対角偏光、およびX+Y偏光のそれぞれを使用してシミュレートされたZカットの結像結果を示している。こうした特定の条件について、TM偏光は最低のOPCを必要とする。すなわち、マスクアスペクト比はターゲットフィーチャアスペクト比におおよそ対応する。TM/TEは、ここで最良の偏光ではないものの、TM/TEは標準的なX+Y偏光より良い結果を示す。図2L図2Oにおいて、255L〜Oはコンタクトホールの像であり、256L〜Oは露光開口である。
【0050】
[0062] 孔が1:1のデューティサイクルを有する矩形グリッドについて(すなわち、孔のターゲットが60x45nmであろう120x190nmのピッチのグリッドについて)、共鳴角からの照明が与えられると、TM/TEはOPCを必要としないことが分かった。正方形グリッドという特別な場合には共鳴照明が対角線上にあるので、そのような場合は、TM/TEはTMと同様である。図2Hの例では、孔ターゲットは1:1のデューティサイクルを有さず、従って共鳴照明の効果が劣化する。
【0051】
テストパターンおよびパターニングデバイスの種類
[0063] 偏光条件決定を容易にするために、さまざまな種類のテストパターンおよび/またはパターニングデバイスを使用することができる。例えば、パターニングデバイスの典型的なリソグラフィパターンは、そのレイアウト内にさまざまな種類の2次元パターンを有しやすい。マスクレイアウトの一部は1つ以上のクリティカルフィーチャを含み、その高い正確性の再現はリソグラフィプロセスの基準である。実際のパターンを使用する実際のリソグラフィの前に、1つ以上のクリティカルフィーチャをエミュレートする1つ以上のテストパターンを使用してシミュレーションを行ってよい。そのようなテストパターンを使用して所望の偏光条件を決定してよい。
【0052】
[0064] いくつかの種類の2次元テストパターンをそのようなシミュレーションに用いて所望の偏光条件を決定してよい。図3は、変化するピッチを有するコンタクトホールの矩形グリッドの例を示しており、テストパターンとして使用され得る。各ホールは50nmx50nmの正方形である。コンタクトホールの他の断面形状が可能であり、コンタクトホールの代わりに金属コンタクトパッドを使用してもよい。ピッチは、パターン302(110nmx110nmのグリッドレイアウトと0.385のk値を有する)からパターン304(190nmx110nmのグリッドレイアウトと0.66x0.385のk値を有する)への移行に示すように1つのデカルト軸のみに沿って、または、パターン302からパターン303(190nmx190nmのグリッドレイアウトと0.66のk値を有する)への移行に示すように両方のデカルト軸に沿って変化させることができる。なお、結像は、より低いk値、例えば、パターン302について、より困難である。バイナリマスク、PSM(例えば、6%Att−PSM)、またはその他のあらゆる種類のパターニングデバイスを使用することができる。ピッチは、20nm単位で110nmから190nmまで変化させてよい。従って、20nm単位での110nmから190nmまでのすべてのx、y矩形アレイの組合せを検討することが可能である。矩形グリッドはマンハッタングリッドとも呼ばれる。矩形グリッドの特別な場合は正方形グリッドである。なお、本明細書で挙げるすべてのk値は、1.35NAの投影システムと193nmの放射とを用いるスキャニングリソグラフィ装置を使用してパターンが印刷されることを前提とする。
【0053】
[0065] 2次元テストパターンの別の例は、図4に示すようなスタガード格子であり、スタガード形に配置された孔を有する。ここでもまた、ピッチを1つ以上のデカルト方向に変化させてよい。図4の例においては、一番左で50nmx50nmの孔が110nmx110nmのグリッド内に配置され、ピッチは、一番右の190nmx190nmのグリッドまで右に向かって、各グリッドのxおよびy方向に20nm単位で増加する。
【0054】
[0066] テストパターンの変化の他の可能性としては、半径方向のピッチ変化、コンタクトホール/コンタクトパッドのアスペクト比変化、2つの層のオーバーレイ変化などが含まれる。
【0055】
[0067] さらに、現在のIC回路は、簡易なアレイより複雑な(ある程度周期的であることが多い)2次元パターンを有することが多い。この例を図5A図5Bに示す。パターン500内のさまざまなフィーチャ502、503、504は異なる寸法を有してよく、異なるピッチを有してよい。パターン500は現在のSRAM回路において見ることができる。パターンは、レジストプロセスの型に応じて明視野内の暗パッチ(図5Aのマスク500A)、または暗視野内の明パッチ(図5Bのマスク500B)によって表すことができる。そのようなパターンはデバイス製造の重要なターゲットを表すことが多く、従ってシミュレーションの良いテストケースである。
【0056】
[0068] 実際の回路が有限長密ラインパターンおよび/または不規則な多角形パターンを有する場合、また、クリティカルフィーチャがこうしたパターンを含む場合、パターンをエミュレートすることができる。
【0057】
[0069]シミュレーション中、テストフィーチャ上またはテストフィーチャ間の1つ以上のカットラインを配置して、選択されたシミュレーションセル内の別個のシミュレーション点の数を定義する。
【0058】
空間照明マッピング
[0070] 偏光条件決定を容易にするために、さまざまな空間照明分布を使用することができる。図6A図6Cはオフアクシス照明の例を示しており、これらの例において照明の空間強度マップは、別個のかつ孤立することが多い局在高強度領域を示す。図6A図6Cは、3つの異なるオフアクシス照明602、604、および606の空間マッピングを示し、それぞれ5つの極、8つの極、4つの極(四極)を有する。輪帯照明、ダイポール照明、CQuad照明などはオフアクシス照明のさらなる例である。従来のビーム整形素子を使用してオフアクシス照明を生成することができる。オフアクシス照明は、高解像度リソグラフィのために用いられる結像改良の1つである。
【0059】
[0071] 放射システムが発する照明の空間強度マップにおけるすべての明照明点に対して偏光条件を均一に適用することが可能である。例えば、図6A図6Cの空間強度マップの各明照明点は、非偏光照明の1つ、すなわちTM偏光照明、TE偏光照明などを用いて生成されてよい。図13図15により詳細に見られるように、偏光決定の間、空間強度マップは個々のピクセルまたはピクセルグループに分割される。これらのグループは、偏光ピクセルグループと呼ばれることがある。偏光条件の微調整には、偏光ピクセルグループの各々の偏光を、最良または所望のリソグラフィ応答をもたらす自由偏光条件に近付くように調整することが含まれる。シミュレーションの間、ビーム開口内の偏光ピクセルグループの物理座標が、シミュレータによって使用される入力ファイルに格納される。「偏光ピクセルグループ」という用語は、偏光条件があらかじめ定義可能である照明ソースマップの一部を示すためにシミュレーション領域での使用を主な目的として選択される命名に過ぎないことが当業者には理解されよう。リソグラフィ装置の実際のハードウェアの観点からいえば、同等の用語は「ソースピクセルグループ」、すなわち、ソースに接続されたミラーアレイによって偏光条件が予め定義可能であるソースの瞳上の領域であり、ここで偏光制御素子はミラーアレイに接続されている。物理ミラーおよび偏光制御素子の位置を機械的に制御することによって、既定偏光条件を有するソースピクセルグループを、ソース瞳面上で実現することができる。
【0060】
偏光条件の生成
[0072] 実際のリソグラフィツールにおいて、空間複合構造を有するクォーツまたはガラス板などの1つ以上の物理的光エレメントを製造し、放射システムの他の光エレメントと併用して、非従来型偏光条件を実施することができる。照明は、偏光条件の特定の態様で固有に偏光されてよく、または該当する場合に特定の所望の偏光に変換される非偏光放射であってもよい。偏光結晶などの1つ以上の光エレメントを使用して照明を選択的に偏光してよい。例えば、偏光変化属性を内部に有する、または偏光変化属性が関連付けられた、適切に設計された回折、屈折または反射光エレメント(例えば、透過偏光板)によって、所望の偏光を生成することができる。一実施形態において、照明形状および所望の偏光は、同一の光エレメントによって生成することができる。
【0061】
[0073] さらに、別の偏光を別の明照明点に適用することが可能である場合がある。これを達成するために、照明の空間強度分布を、例えば、異なる偏光を空間強度分布の異なる部分に選択的に適用し得る空間光変調器(例えば、ミラーアレイ)によって(例えば、異なる偏光光学系または偏光光学系の異なる部分を放射に通過させることによって、ならびに/もしくは空間光変調器に入射する放射を適切に偏光し、次に変調されたエレメントの割り当てを介して所望の偏光および/または照明形状を生成することによって)、生成または転写してよい。例えば、図6A図6Cの各極は異なる偏光を有することができ、図6A図6Cの各極内でさえも、偏光を空間的に変化させることができる。固定の偏光フィールドまたは設計が適用されると、個々の極の偏光角は、公知の方法で(角度に応じて)変化し得る。「照明システムおよびリソグラフィ装置」という名称の2010年4月29日に出願された同時係属および共同所有の米国仮出願第61/329,371号(P−3642,010)は、物理ハードウェアの詳細を開示している。
【0062】
性能測定基準
[0074] 偏光条件決定を容易にするために、性能測定基準を使用することができる。性能測定基準は、プロセスパラメータがプロセスバジェット内で変化するときにリソグラフィ応答について得られる値の変化を追跡する。性能測定基準のリソグラフィ応答としては、臨界線幅不均一性、クリティカルディメンジョンエラー、アスペクト比エラー、ピッチ誤差、サイドエッジ配置誤差、コーナーエッジ配置誤差、マスクエラー増大因子(MEEF)、ドーズ寛容度、焦点深度、プロセスウィンドウから選択される1つ以上、またはそれらのさまざまな組合せが含まれる。プロセスパラメータとしては、焦点、露光ドーズ、露光波長、パターニングデバイス減衰、パターニングデバイスバイアス、放射システムの開口数、放射源の形状、およびパターニングデバイスのフィールドの種類から選択される1つ以上が含まれる。本発明の範囲を限定することなく、他の種類のリソグラフィ応答およびプロセスパラメータを使用してもよい。
【0063】
[0075] プロセスパラメータのすべてを変化させる必要はない。例えば、特定の種類のマスク(例えば、6%Att−PSM)が特定のテストフィーチャに対して最もよく機能する場合、当該パラメータを一定に保ってシミュレーション中の計算負荷を低減させることができる。別の同様の例において、特定のテストフィーチャに対して明視野マスクがより良く機能する場合、暗視野マスクを使用する必要性を除外してよい。
【0064】
[0076] 性能測定基準がシミュレーション中に更新される一方、対象となるリソグラフィ応答は特定のターゲット値に収束する。ターゲット値は、最大値(例えば、最大NILS値)であったり、最低値(例えば、最低クリティカルディメンジョンエラー値)であったりする。リソグラフィ応答の現在値は各実行について格納され、現在の最良リソグラフィ応答に対応するプロセスパラメータが、より良い値が得られるかどうか確認するための次回のシミュレーションに対して適用される。リソグラフィ応答の有利な値が得られたら、シミュレーションを終了させてよい。このことは、見つけにくい「最良」または「最適」値には不十分であり得る。
【0065】
[0077] 反復シミュレーションの間、改善偏光条件は特定の既定測定基準値と関連付けられる。所望の結像結果は、実際に達成可能なプロセス寛容度に従って調整することができる。
【0066】
偏光最適化プロセスフロー
[0078] 図7のフローチャート700に示すように、偏光決定は、2つの主なプロセスにおいて行うことができる。プロセス705は、固定または既定偏光条件のセットを使用する修正SMOプロセスとして見ることができる。このプロセスは良好なリソグラフィ応答を生成するに十分であり得る。そうでない場合、プロセス705の結果を使用して、後続の自由偏光決定プロセス712を実行する。一実施形態において、プロセス705かプロセス712のどちらかのみを実行してよい。すなわち、プロセス712はプロセス705の前後に実行する必要はなく、また、プロセス705はプロセス712の前後に実行する必要はない。
【0067】
[0079] プロセス705の前に、いくつかの準備段階(ステップ702と総称される)を実行または達成してシミュレーションをセットアップする。照明形状、ドーズ、パターニングデバイスの種類、焦点設定、フィールドの種類など、さまざまなプロセスパラメータが選択される。また、1つ以上のテストパターンが選択され、テストパターンの1つ以上のクリティカルフィーチャが特定され、また、シミュレーション点またはカットラインがテストパターン内で定義される。プロセスパラメータのうちの1つ以上が一定であってよく、かつ他のプロセスパラメータのうちの1つ以上がプロセスエラーバジェット内で変化する性能測定基準が定義される。追跡されるリソグラフィ応答値はCDエラー、エッジ配置誤差または前述の他のパラメータとすることができる。
【0068】
[0080] さらに、候補既定偏光条件の初期セットが選択される。既定偏光条件は、瞳面全体に適用される固定偏光定義(例えば、非偏光、X+Y偏光、TE偏光、TM偏光、またはTM/TE偏光)を含み得る。あるいは、初期偏光定義は特定の固定偏光角に限定されてよい。角度は、ハードウェアの実施によって表される。例えば、固定角偏光板を、ソースビームパターニングを制御するミラーアレイ(製品の例は、ASMLのFlexrayTMである)で使用することができる。リソグラファは、洞察を、既定偏光条件の最も有効な初期セットに発展させることができる。説明のための非限定的な例において、0.5を超えるσ値については、偏光条件の初期セットとしてTM、Y+X、Y、およびX偏光条件を含むことができ、0.5未満のσ値については、偏光条件の初期セットとしてM/TE、TE、およびX+Y偏光条件を含むことができる。偏光条件の初期セットを経験に基づいて選択することは、シミュレーション中の計算負荷を減少させるのに役立つ。
【0069】
[0081] 準備条件がセットアップされると、一実施形態において、固定または既定偏光条件決定プロセス705が実行される。このプロセスにおいて、リソグラフィ応答は、公知の最良プロセスパラメータに対して初期に定義されたすべてのカットラインについて計算される。リソグラフィ応答値が所望の値に向かって実質的に収束するとき(例えば、最大CDエラー<0.05mm)、初期OPC調整プロセスを実行して本式OPCまたは簡易OPCとすることができる)、フィーチャエッジの配置を調整する。その後、リソグラフィ応答値は、プロセスパラメータのバジェットエラーについて計算される。例えば、CDエラーは、焦点範囲、ドーズ範囲、パターニングデバイス減衰範囲などについて追跡され得る。パターニングデバイスバイアスは、すべてのテストフィーチャに対して同時に適用することができる。個々のCDエラー値は分類されてCD均一(CDU)値を見つけることができ、測定基準を設定して、CDエラー値ではなく最も有利なCDU値を特定することができる。もちろん、性能測定基準によって追跡されることになる極限リソグラフィ応答として選択することができる非常に多くの可能性がある。連続するシミュレーションの実行の間、適切なOPC調整を同時に行ってシミュレーションの収束を補助することができる。
【0070】
[0082] プロセス705(修正SMOプロセス)は本明細書で述べられるさまざまな性能追跡可能性を包含し得るが、一実施形態において、プロセス705は、初期既定偏光条件の各々に対応する偏光条件決定プロセスを実行する。そのために、初期セットの偏光条件の各々に対する照明の各空間強度マップを決定して、偏光条件の各々についての最適または改善空間強度マップに到達する。修正SMOプロセスにおいて、プロセスパラメータおよび各初期既定偏光条件を用いて、該当するならば、適切なOPC調整を含む、各既定偏光条件についての所望のリソグラフィ応答のシミュレーションを実行して、リソグラフィ応答を決定する。
【0071】
[0083] 決定ブロック708で決まるように、達成されるべきリソグラフィ応答のターゲット値に応じて、プロセス705は、有益または最適な偏光条件を特定するに(さらなる偏光微調整無しに)十分であり得る(ステップ715)。例えば、σ>1の暗視野照明について、初期既定偏光条件Y+Xは最適または有益なリソグラフィ応答を提供すると決定されてよい。言い換えれば、初期セットの既定偏光条件のうちの1つは、特定の場合(特に比較的高いk値を伴うリソグラフィの問題)のリソグラフィ要件を満たし得る。
【0072】
[0084] しかし、所望のリソグラフィ応答がプロセス705において達成されない場合、プロセス705の最も期待できる結果に基づいて、1つ以上の既定偏光条件を選択してよい。プロセス705の最も期待できる結果は、最良の性能測定基準と関連付けられる偏光条件とすることができる。ステップ710において、偏光ピクセルグループは、プロセス712の前に特定される。
【0073】
[0085] プロセス712において、自由偏光微調整が実行される。図13図17を参照して以下に詳細に述べる通り、自由偏光微調整において、個別のピクセルまたはピクセルグループの各々に対して上述の既定偏光条件の初期セットのうちの偏光条件の1つ以上が適用され(例えば、当該1つ以上の既定偏光条件はプロセス705の最も期待できる結果に基づいて選択されてよい)、ことによるとさまざまな他の種類の既定偏光条件が適用される。換言すれば、ステップ712は、増加した偏光選択粒状度に対応することができる。偏光条件が変化しているとき、標準数値最適化技術を適用してリソグラフィ性能の向上を見出す。逐次ピクセルフリップは、最適化技術の第1ステップとすることができる。例えば、図13図14を参照すると、プロセス705中でTM/TE、TMおよびY偏光が最も期待できる偏光条件であると判断された場合、少なくともこれら3つの偏光条件すべてが、例示のピクセルグループ1310〜1313の各々に(順次、または最適化で使用される他の標準的な方法で)適用される。プロセス705と同様に、リソグラフィ応答は、偏光条件がピクセルグループまたは個別ピクセルレベルで局所的に摂動されるときに追跡される。この方法は「ピクセルフリップ」と呼ばれる。グループ内での単一のピクセルフリップまたは一対のピクセルフリップを試みてよい。ピクセルフリップの各ステップで、初期条件が現在の最良結果条件を用いて再定義される。線形感度分析方法を使用して、最終的なリソグラフィ応答を改善する有益な変化を格付けすることができる。また、比較的高い比率のピクセル(例えば、10%のピクセル)を「任意に」反転させることによって初期条件を激変させ、反復的な最適化プロセスを新たに開始させることができる。標準数値技術は最適化のために使用することができる。再び、適切なOPCおよびプロセスパラメータ調整を適用して同時に最良の複合結果に到達することができる。プロセス712は、複合パターニングデバイス偏光最適化プロセスと呼ぶことができる。
【0074】
偏光最適化の結果例
[0086] 図8図12は、明細書中で説明した技術を適用して改善偏光条件に到達する特定の例を示している。すなわち、図8図12図7で説明したプロセス705の結果を示している。
【0075】
[0087] 図8は、図6で説明したオフアクシス照明条件602、604、および606を使用した、変化するピッチ(最小ピッチ110nmに対応する最小k=0.385)を有する図3のマンハッタン正方形グリッドの例に対応する結果の例を示している。6%Att−PSMマスクがNA=1.35で使用された。50nm孔のグリッドのピッチは、110nmx110nmのピッチのグリッド302から190nmx190nmのピッチのグリッド303まで20nm単位で均等に変化させた。さらに、固定焦点ランプ(focus ramp)802が一部の例では使用される(例えば、5極照明602は、焦点ランプ有りでも焦点ランプ無しでも使用される)。示した4つの場合(クエーサー、8極、5極、および焦点ランプ無しの5極)の各々について、パラメトリックSMOが多数の偏光状態で行われた。性能測定基準内での追跡されたリソグラフィ応答は、ナノメートル単位での既定CDエラー測定基準である。図8で明らかなように、非偏光照明での最良結果は、固定焦点ランプ有りの5極照明について得られ、TM偏光照明での最良結果は、固定焦点ランプ有りの8極照明について得られる。図8で明らかなように、図に示す極と焦点ランプのすべての比較可能な組合せについて、非偏光照明からTM偏光への変化によってCD測定基準が著しく(10〜16%)改善される。
【0076】
[0088] 図9は、5極の場合のCD改善結果を示しているため、最良の偏光選択の相対的利点がより明確に分かる。非偏光パラメトリックSMO(変化する極位置、強度、パターニングデバイスのグローバルバイアス)結果は、焦点ランプを含むことによって8%改善された。しかし、TM放射と固定焦点ランプを用いることによって、さらなる10%の改善が得られた。偏光選択は、焦点ランプよりさらに有益である。
【0077】
[0089] 図10は、k値がより低いときに、改善または最適偏光条件がどのように異なるかを示している。さまざまなプロセスパラメータに対応する結果を表にした例示のプロセスパラメータテーブル1000は、低k値(95nmピッチに対応する最小k=0.33)を有するマンハッタン正方形グリッドの同様のテストパターンについて、テーブル1000に示すように、最適偏光条件は(すべての条件で焦点ランプをそのままにしておき)他の照明パラメータが調整された状態で、TMではなくTM/TEであると示している。6%Att−PSMマスクがNA=1.35で使用された。図11に示す8極照明は350nmで固定焦点ランプとともに使用される。50nm孔のグリッドのピッチは、95nmx95nmピッチから110nmx110nmピッチに変化させ、その後110nmx110nmピッチのグリッド302から190nmx190nmピッチのグリッド303へ20nm単位で均等に変化させた。
【0078】
[0090] 図12は、通常SRAM回路で見られるような、より複雑な2次元パターン、例えば、図5Aのパターン500Aを考慮し、また、そのパターンを使用する偏光条件決定の結果として生じる。最小k=0.384である明視野の6%Att−PSMマスクに関して、最良結果はTE偏光について見られる。ここで、CD測定基準は、CD均一性と最悪プロセスコーナーエラーを合わせたものとして定義される。TEの結果は、X+Yより約5%優れ、非偏光より約16%優れている。ここで、中央のTM偏光条件を有するTM/TEは最良の偏光条件ではない。図5Aのパターン500Aについて、TE偏光を用いるソースマスク偏光最適化(SMPO)が、従来使用されてきたX+Y偏光を用いる標準ソースマスク最適化SMOより優れた結像性能をもたらすことが実験的に証明されている。従って、図12の結果は、実験測定によって裏付けられる。また、図12は、本出願に開示された一般化可能な偏光最適化スキームが、前の経験からの固定偏光条件を単に受け入れることとは異なりハードウェアの実際的な偏光設定を選択することに関して、改善された自由度をリソグラファに提供することを強調している。
【0079】
[0091] 図8図12のさまざまな例は、改善または最適偏光条件はさまざまなプロセスパラメータおよびk値に依存するという理由で、当該改善または最適偏光条件を予測することが困難であることを示している。本発明の実施形態は、所望のリソグラフィ応答の体系的シミュレーションを使用した効率的な態様で改善または最適偏光に到達する手段を提供する。図8図12の例は、微調整された偏光条件ではなく、瞳面での既定偏光条件を前提とする。しかし、このような例は例示的なものに過ぎず、かつ本発明の範囲を限定するものではない。
【0080】
強度マップのピクセルレベルでの偏光微調整
[0092] 図13図16は、図7に示すプロセス712で行われる自由偏光微調整の例を示している。
【0081】
[0093] 図13A図14Bは、暗視野パターン、例えば、図5Bのパターン500Bを用いる場合を示しており、ここで既定の照明は、(図2Eに示す既定の偏光と同様である)TM/TEである。既定の偏光を伴う照明の強度マップが、図13Aにエレメント1300として示されている。図13Bのエレメント1302は1300の空間強度マップであり、輝点が別個の偏光ピクセルとして表示される。隣接の偏光ピクセルはさまざまな方法でグループ化可能である。例えば、1302において、ピクセルグループ1310、1311、1312、および1313が4つのクアドラントすべてにおいて対称的に繰り返される。既定のTM/TE偏光条件は、すべてのピクセルに対して最初に適用される。この状態は、6.1nmのCD測定基準を生成するプロセス705の結果であり得る。図14A図14Bは、偏光微調整の中間および最終ステップを示している。すべてのピクセルグループにわたる純粋なTM/TEから中央のピクセルグループのTMへの、中央でのピクセルの偏光の変化は、中間マップ1402A(図14A)に示す通り、CD測定基準を4.7nmへと著しく改善する。すなわち、偏光は中央においてσ<0.3のTMを含むTM/TEに変化する(図2Fに示す既定の偏光と同様に)。中央ピクセルをX偏光に変化させることによるさらなる偏光微調整によって、4.6nmというさらなる改善CD測定基準値に対応する最終マップ1402B(図14B)が生成される。
【0082】
[0094] 図15A図15Cに示す別の同様の例において、照明空間強度マップ1500(図15A)は偏光ピクセルグループに分割される。最初に、修正マップ1502A(図15B)に示す通りすべてのピクセルは非偏光照明を有しており、これは5.3nmのCD測定基準値に対応する。微調整の後、極にTM/TE偏光、かつ中央にX偏光が存在する修正マップ1502B(図15C)に示す通り、ピクセルグループの局所偏光が変化すると同時にCD測定基準は4.65nmという値に改善される。
【0083】
[0095] 図16は、図16Aの強度マップ1600に示すように、0.88/0.72に等しいσ-outer/σ-innerを有する輪帯照明を使用する偏光条件選択のさらなる例を示している。複雑な周期的2次元パターン1601(図16B)を有するバイナリ暗視野マスクを使用する。プロセス705を用いて、マップ1602A(図16C)に示すように既定のTE偏光が全体にわたった状態で最良結果が得られた。その結果は9.28nmのCDエラー測定基準であった。自由変更調整については、偏光最適化のために個別のピクセルを検討する。個別のピクセルの代わりに、多くのピクセルグループが直接隣接したピクセルとともに検討されてもよい。図16Dのマップ1602Bは、CDエラー測定基準改善を提供する微調整偏光条件を示している。当該修正マップにおいて、特定の照明ピクセルまたはピクセルグループの一部はTM/TE、X+Y,および非偏光に変化した。その結果は、8.93nmのCD測定基準である。
【0084】
[0096] 図17C図17Dは、偏光の種類ではなく偏光方向角度を強調する座標空間での最適偏光条件を表す別の方法を示している。図2Gに示すものと同様の空間の第1クアドラントにおいて、4偏光ビット構成は、偏光のX(0°)、Y(90°)、および±45°方向を補助することができ、8偏光ビット構成は、偏光のX、Y、±45°、±22.5°、および±67.5°方向を補助することができる。図17Aは、ソース瞳面全体においてX−Y偏光で均一に偏光されたソースの空間強度マップ1700を示している。図17C図17Dは、4偏光ビット構成および8偏光ビット構成の各々について、どのように空間強度マップ1700を瞳面のピクセルグループに離散化するかを示している。矢印はピクセルグループの偏光方向を示す。図17Cにおいて、上下のピクセルグループのみが−45°の偏光である(すなわち、第1クアドラントで−45°であり、対称性を保ちつつ他のクアドラントで適切な角度である)。他のピクセルグループの残りのピクセルは、Y偏光である。図17Dにおいて、ピクセルは、(他のクアドラントで適切な対称性を有しつつ)−67.5°偏光またはY偏光となっている。8偏光ビット構成では、各ピクセルでの偏光最適化の粒状度が増加し、その結果、より良いリソグラフィ応答が得られる。例えば、固定X+Y偏光を用い、図17Bに示すパターンについて、従来のSMOから得られるCD変動測定基準は8.92%である。同一のソースおよび同一のパターンを用いるものの、図17Cに示すようにさらに偏光最適化(4偏光ビット)を用いると、CD変動測定基準は8.61%まで改善される。同一のソースおよび同一のパターンを用いるものの、図17Dに示すように8偏光ビット最適化を用いることによって、8.09%までのCD変動測定基準のさらなる改善が得られる。
【0085】
[0097] 図18A図18Dは、異なる偏光条件についてのSMO(またはSMPO)の結果としての、同一ソースの離散化強度マップを比較している。これらは図5Bに示すパターンに対するさまざまな偏光条件の前提についての最適化されたソースである。図18Aは、従来のSMOを用いて最適化されたTE偏光ソースを示している。図18Bは、従来のSMOを用いて最適化されたX+Y偏光ソースを示している。図18Cは、従来のSMOを用いて最適化された非偏光ソースを示している。図18Dは、本願が提供する改良を用いて最適化された、すなわちSMPOを用いて最適化された同一のソースを示している。図18Eは、TE偏光ソース(図18E)、X+Y偏光ソース(図18B)、および非偏光ソース(図18C)と比較して、SMPO(図18Dの場合)についてオーバーラッピングプロセスウィンドウ(overlapping process window)が最良である(すなわち、最大ドーズ振幅および最大焦点深度が許容される)ことを示している。
【0086】
偏光および暗視野放射
[0098] 上述の偏光最適化技術の利点をさらに実証するために、SMPOを暗視野照明にも適用した。暗視野結像は、σ>1の照明を含む。例えば、通常の範囲は1.4≧σ≧1.0である。暗視野光の追加には、MEEFの減少を通じてリソグラフィ結像を向上させる可能性がある。
【0087】
[0099] 上述のSMPO技術は、ドーズ/バイアス最適化の多数の始点および終点とともに固定ドーズ/バイアスを使用する。暗視野を含むことは、ドーズ/バイアスの関係に影響を及ぼす(暗視野の解決策は、通常より高いドーズを必要とする)。従って、最適化手順は、最適化中にドーズを動的に調整可能とすることによってマスクバイアスを固定する(OPC後)ように修正される必要がある。暗視野条件について、照明強度マップの極は投影システム開口の外側に存在することができるので、追加のピクセルまたはピクセルグループが、領域1.4≧σ≧1.0に及ぶようにクアドラントごとに追加された。例えば、図19Aは、ソース開口の外側の追加のピクセルグループ1902A〜B(すべてのクアドラントでも対称的に繰り返される)を示している。暗視野を用いるSMPOに対して、ここでは4つの偏光条件(X、Y、および±45°)のみが用いられる。図19Bに示す特定のテストパターンについて、標準的なSMPO(暗視野は無し)は、固定X+Y偏光解決策と比較して19%良いCDU(CD均一性)をもたらすことが示されている。暗視野を用いるSMPOは、図19Cに示すようにCDU測定基準のさらなる9%の向上を提供する。図19Dは、暗視野光を用いるときにSMPOでのMEEF減少の利益がさらに向上することを示している。7.9の平均MEEFを有する固定X+Y偏光解決策と比較して、暗視野を用いないSMPOは4.9の平均MEEFを提供し、これは、暗視野を用いるSMPOを使用するとき、さらに4.2まで減少する。図19Bのパターン内の異なる位置での水平(H)および垂直(V)カットラインでのMEEF減少は、図19Dに示す平均MEEF値に近付くように平均される。図19Eは、暗視野を用いるSMPOおよびX+Y偏光を用いるSMOに対して暗視野条件のもとでSMPOを行ったときのオーバーラッピングプロセスウィンドウの比較を示している。一般に、暗視野SMPOは、標準暗視野マスクおよびポジ型現像プロセスが用いられるときにMEEF減少およびCDU向上をもたらすことが分かっている。
パターニングデバイスの種類への依存
図20は、偏光微調整が、使用するパターニングデバイスの種類に依存することを示している。4極照明で114nm四方ピッチ(k=0.4)の50nmの孔グリッドを使用して、マスクバイアスを変化させ、マスク透過の種類も変更した。その結果を図20Bのテーブル2002に示す。図20Aは、結果の比較をグラフによって示している。特に非偏光照明の代わりにTM偏光を用いるときに、18%Att−PSMが標準バイナリマスク(BIM)および6%Att−PSMと比べて良い結果をもたらすことが示されている。他の偏光条件について同様の比較を検討することができる。
【0088】
[00100] 本明細書において、IC製造におけるリソグラフィ装置の使用について具体的な言及がなされているが、本明細書記載のリソグラフィ装置が、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンスパターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造といった他の用途を有し得ることが理解されるべきである。当業者にとっては当然のことであるが、そのような別の用途においては、本明細書で使用される「ウェーハ」または「ダイ」という用語はすべて、それぞれより一般的な「基板」または「ターゲット部分」という用語と同義であるとみなしてよい。本明細書に記載した基板は、露光の前後を問わず、例えば、トラック(通常、基板にレジスト層を塗布し、かつ露光されたレジストを現像するツール)、メトロロジーツール、および/またはインスペクションツールで処理されてもよい。適用可能な場合には、本明細書中の開示内容を上記のような基板プロセシングツールおよびその他の基板プロセシングツールに適用してもよい。さらに基板は、例えば、多層ICを作るために複数回処理されてもよいので、本明細書で使用される基板という用語は、すでに多重処理層を包含している基板を表すものとしてもよい。
【0089】
[00101] 光リソグラフィの関連での本発明の実施形態の使用について上述のとおり具体的な言及がなされたが、当然のことながら、本発明は、他の用途、例えば、インプリントリソグラフィに使われてもよく、さらに状況が許すのであれば、光リソグラフィに限定されることはない。インプリントリソグラフィにおいては、パターニングデバイス内のトポグラフィによって、基板上に創出されるパターンが定義される。パターニングデバイスのトポグラフィは、基板に供給されたレジスト層の中にプレス加工され、基板上では、電磁放射、熱、圧力、またはそれらの組合せによってレジストは硬化される。パターニングデバイスは、レジストが硬化した後、レジスト内にパターンを残してレジストの外へ移動される。
【0090】
[00102] また、リソグラフィ装置は、投影システムの最終エレメントと基板との間の空間を満たすように、基板の表面が比較的高屈折率を有する液体(例えば水)に浸漬されるタイプのものであってもよい。また、リソグラフィ装置内の別の空間(例えば、パターニングデバイスと投影システムの最終エレメントとの間)に液浸液を加えてもよい。浸漬技術は、投影システムの開口数を増加させることで当技術分野において周知である。
【0091】
[00103] 本明細書で使用される「放射」および「ビーム」という用語は、紫外線(UV)(例えば、365nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長、またはおよそこれらの値の波長を有する)、および極端紫外線(EUV)(例えば、5〜20nmの範囲の波長を有する)、ならびにイオンビームや電子ビームなどの微粒子ビームを含むあらゆる種類の電磁放射を包含している。
【0092】
[00104] 「レンズ」という用語は、文脈によっては、屈折、反射、磁気、電磁気、および静電型光コンポーネントを含む様々な種類の光コンポーネントのいずれか1つまたはこれらの組合せを指すことができる。
【0093】
[00105] 以上、本発明の具体的な実施形態を説明してきたが、本発明は、上述以外の態様で実施できることが明らかである。例えば、本発明は、上記に開示した方法の性能をもたらすように構成された1つ以上の機械読取可能命令のシーケンスを含むコンピュータプログラムの形態、またはこのようなコンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ読取可能データ記憶媒体(例えば、半導体メモリ、磁気ディスクまたは光ディスク)の形態であってもよい。
【0094】
[00106] 上記の説明は、制限ではなく例示を意図したものである。したがって、当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本記載の発明に変更を加えてもよい。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図2L
図2M
図2N
図2O
図2P
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図20A
図20B