特許第5746402号(P5746402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5746402キャリア付銅箔、銅張積層板、プリント配線板、電子機器、及び、プリント配線板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5746402
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】キャリア付銅箔、銅張積層板、プリント配線板、電子機器、及び、プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/22 20060101AFI20150618BHJP
   C25D 1/04 20060101ALI20150618BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20150618BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20150618BHJP
   H05K 3/20 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   C25D1/22
   C25D1/04 311
   B32B15/01 H
   H05K1/09 A
   H05K3/20 B
【請求項の数】61
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2014-122895(P2014-122895)
(22)【出願日】2014年6月13日
(65)【公開番号】特開2015-16688(P2015-16688A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2014年6月23日
(31)【優先権主張番号】特願2013-124450(P2013-124450)
(32)【優先日】2013年6月13日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX日鉱日石金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】永浦 友太
(72)【発明者】
【氏名】石井 雅史
【審査官】 瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/080959(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/080958(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/046804(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/031913(WO,A1)
【文献】 特開2007−186782(JP,A)
【文献】 特開2007−186781(JP,A)
【文献】 特開2004−169181(JP,A)
【文献】 特開2002−76578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00
C25D 5/00
C25D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアと、中間層と、極薄銅層とをこの順で有するキャリア付銅箔であって、
キャリア付銅箔の極薄銅層側表面に回路を形成する工程、
前記回路が埋没するように前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に樹脂層を形成する工程、
前記樹脂層上に回路を形成する工程、
前記樹脂層上に回路を形成した後に、前記キャリアを剥離させる工程、及び、
前記キャリアを剥離させた後に、前記極薄銅層を除去することで、前記極薄銅層側表面に形成した、前記樹脂層に埋没している回路を露出させる工程
を含むプリント配線板の製造方法に用いられる前記キャリア付銅箔であり、
前記中間層はNiを含み、
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が400μg/dm2以下であり、
JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される前記極薄銅層の表面粗さRzが0.2μm以上1.5μm以下であり、前記表面粗さRzの標準偏差が0.6μm以下であるキャリア付銅箔。
【請求項2】
キャリアと、中間層と、極薄銅層とをこの順で有するキャリア付銅箔であって、
キャリア付銅箔の極薄銅層側表面に回路を形成する工程、
前記回路が埋没するように前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に樹脂層を形成する工程、
前記樹脂層上に回路を形成する工程、
前記樹脂層上に回路を形成した後に、前記キャリアを剥離させる工程、及び、
前記キャリアを剥離させた後に、前記極薄銅層を除去することで、前記極薄銅層側表面に形成した、前記樹脂層に埋没している回路を露出させる工程
を含むプリント配線板の製造方法に用いられる前記キャリア付銅箔であり、
前記中間層はNiを含み、
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が400μg/dm2以下であり、
JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される前記極薄銅層の表面粗さRzが0.2μm以上1.0μm以下であるキャリア付銅箔。
【請求項3】
キャリアと、中間層と、極薄銅層とをこの順で有するキャリア付銅箔であって、
前記中間層はNiを含み、
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が400μg/dm2以下であり、
JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される前記極薄銅層の表面粗さRzが0.2μm以上1.5μm以下であり、
前記表面粗さRzの標準偏差が0.1μm以下であるキャリア付銅箔。
【請求項4】
キャリアと、中間層と、極薄銅層とをこの順で有するキャリア付銅箔であって、
前記中間層はNiを含み、
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が400μg/dm2以下であり、
JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される前記極薄銅層の表面粗さRzが0.2μm以上1.0μm以下であり、
前記表面粗さRzの標準偏差が0.1μm以下であるキャリア付銅箔。
【請求項5】
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上である請求項1又は2に記載のキャリア付銅箔。
【請求項6】
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上300μg/dm2以下である請求項1、2、及び5のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項7】
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上250μg/dm2以下である請求項6に記載のキャリア付銅箔。
【請求項8】
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上200μg/dm2以下である請求項7に記載のキャリア付銅箔。
【請求項9】
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上150μg/dm2以下である請求項8に記載のキャリア付銅箔。
【請求項10】
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上100μg/dm2以下である請求項9に記載のキャリア付銅箔。
【請求項11】
JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される前記極薄銅層の表面粗さRzが0.2μm以上1.0μm以下である請求項1、2、及び5〜10のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項12】
JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される前記極薄銅層の表面粗さRzが0.2μm以上0.6μm以下である請求項11に記載のキャリア付銅箔。
【請求項13】
JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される前記極薄銅層の表面粗さRzが0.42μm以上である請求項1、2、及び5〜12のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項14】
前記中間層のNi含有量が、100μg/dm2以上40000μg/dm2以下である請求項1、2、及び5〜13のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項15】
前記中間層のNi含有量が、100μg/dm2以上5000μg/dm2以下である請求項14に記載のキャリア付銅箔。
【請求項16】
前記中間層が、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Zn、これらの合金、これらの水和物、これらの酸化物、有機物からなる群から選択される一種又は二種以上を含む請求項1、2、及び5〜15のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項17】
前記中間層が、Crを含む場合は、Crを5〜100μg/dm2含有し、Moを含む場合は、Moを10μg/dm2以上1000μg/dm2以下含有し、Coを含む場合は、Coを10μg/dm2以上1000μg/dm2以下含有し、Znを含む場合は、Znを1μg/dm2以上120μg/dm2以下含有する請求項1、2、及び5〜16のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項18】
前記中間層が有機物を厚みで25nm以上80nm以下含有する請求項16又は17に記載のキャリア付銅箔。
【請求項19】
前記有機物が、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択される1種又は2種以上からなる有機物である請求項16〜18のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項20】
前記表面粗さRzの標準偏差が0.6μm以下である請求項1、2、5〜19のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項21】
前記表面粗さRzの標準偏差が0.4μm以下である請求項20に記載のキャリア付銅箔。
【請求項22】
前記表面粗さRzの標準偏差が0.2μm以下である請求項21に記載のキャリア付銅箔。
【請求項23】
前記表面粗さRzの標準偏差が0.1μm以下である請求項22に記載のキャリア付銅箔。
【請求項24】
前記キャリアの両方の面に、前記中間層と、前記極薄銅層とをこの順で有する請求項1、2、及び5〜23のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項25】
前記極薄銅層及び前記キャリアの少なくとも一方の表面、又は、両方の表面に粗化処理層を有する請求項1、2、及び5〜24のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項26】
前記粗化処理層が、銅、ニッケル、コバルト、りん、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層である請求項25に記載のキャリア付銅箔。
【請求項27】
前記粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する請求項25又は26に記載のキャリア付銅箔。
【請求項28】
前記極薄銅層及び前記キャリアの少なくとも一方の表面、又は、両方の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する請求項1、2、及び5〜24のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項29】
前記極薄銅層の一方の表面、又は、両方の表面に、粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する請求項24に記載のキャリア付銅箔。
【請求項30】
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上である請求項3又は4に記載のキャリア付銅箔。
【請求項31】
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上300μg/dm2以下である請求項3、4、及び30のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項32】
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上250μg/dm2以下である請求項31に記載のキャリア付銅箔。
【請求項33】
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上200μg/dm2以下である請求項32に記載のキャリア付銅箔。
【請求項34】
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上150μg/dm2以下である請求項33に記載のキャリア付銅箔。
【請求項35】
前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上100μg/dm2以下である請求項34に記載のキャリア付銅箔。
【請求項36】
JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される前記極薄銅層の表面粗さRzが0.2μm以上1.0μm以下である請求項3、4、及び30〜35のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項37】
JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される前記極薄銅層の表面粗さRzが0.2μm以上0.6μm以下である請求項36に記載のキャリア付銅箔。
【請求項38】
JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される前記極薄銅層の表面粗さRzが0.42μm以上である請求項3、4、及び30〜37のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項39】
前記中間層のNi含有量が、100μg/dm2以上40000μg/dm2以下である請求項3、4、及び30〜38のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項40】
前記中間層のNi含有量が、100μg/dm2以上5000μg/dm2以下である請求項39に記載のキャリア付銅箔。
【請求項41】
前記中間層が、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Zn、これらの合金、これらの水和物、これらの酸化物、有機物からなる群から選択される一種又は二種以上を含む請求項3、4、及び30〜40のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項42】
前記中間層が、Crを含む場合は、Crを5〜100μg/dm2含有し、Moを含む場合は、Moを10μg/dm2以上1000μg/dm2以下含有し、Coを含む場合は、Coを10μg/dm2以上1000μg/dm2以下含有し、Znを含む場合は、Znを1μg/dm2以上120μg/dm2以下含有する請求項3、4、及び30〜41のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項43】
前記中間層が有機物を厚みで25nm以上80nm以下含有する請求項41又は42に記載のキャリア付銅箔。
【請求項44】
前記有機物が、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択される1種又は2種以上からなる有機物である請求項41〜43のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項45】
前記キャリアの両方の面に、前記中間層と、前記極薄銅層とをこの順で有する請求項3、4、及び30〜44のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項46】
前記極薄銅層及び前記キャリアの少なくとも一方の表面、又は、両方の表面に粗化処理層を有する請求項3、4、及び30〜45のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項47】
前記粗化処理層が、銅、ニッケル、コバルト、りん、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層である請求項46に記載のキャリア付銅箔。
【請求項48】
前記粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する請求項46又は47に記載のキャリア付銅箔。
【請求項49】
前記極薄銅層及び前記キャリアの少なくとも一方の表面、又は、両方の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する請求項3、4、及び30〜45のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項50】
前記極薄銅層の一方の表面、又は、両方の表面に、粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する請求項45に記載のキャリア付銅箔。
【請求項51】
前記極薄銅層上に樹脂層を備える請求項3、4、及び30〜45のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項52】
前記粗化処理層上に樹脂層を備える請求項46、47及び50のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項53】
前記耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層の上に樹脂層を備える請求項48〜50のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
【請求項54】
請求項1〜53のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔を用いて製造した銅張積層板。
【請求項55】
請求項1〜53のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔を用いて製造したプリント配線板。
【請求項56】
請求項55に記載のプリント配線板を用いて製造した電子機器。
【請求項57】
請求項3、4、及び30〜53のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、
その後、セミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって、回路を形成する工程を含むプリント配線板の製造方法。
【請求項58】
請求項1〜50のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に回路を形成する工程、
前記回路が埋没するように前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に樹脂層を形成する工程、
前記樹脂層上に回路を形成する工程、
前記樹脂層上に回路を形成した後に、前記キャリアを剥離させる工程、及び、
前記キャリアを剥離させた後に、前記極薄銅層を除去することで、前記極薄銅層側表面に形成した、前記樹脂層に埋没している回路を露出させる工程
を含むプリント配線板の製造方法。
【請求項59】
前記樹脂層上に回路を形成する工程が、前記樹脂層上に別のキャリア付銅箔を極薄銅層側から貼り合わせ、前記樹脂層に貼り合わせたキャリア付銅箔を用いて前記回路を形成する工程である請求項58に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項60】
前記樹脂層上に貼り合わせる別のキャリア付銅箔が、請求項3、4、及び30〜53のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔である請求項59に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項61】
前記樹脂層上に回路を形成する工程が、セミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって行われる請求項58〜60のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア付銅箔、銅張積層板、プリント配線板、電子機器、及び、プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は銅箔に絶縁基板を接着させて銅張積層板とした後に、エッチングにより銅箔面に導体パターンを形成するという工程を経て製造されるのが一般的である。近年の電子機器の小型化、高性能化ニーズの増大に伴い搭載部品の高密度実装化や信号の高周波化が進展し、プリント配線板に対して導体パターンの微細化(ファインピッチ化)や高周波対応等が求められている。
【0003】
ファインピッチ化に対応して、最近では厚さ9μm以下、更には厚さ5μm以下の銅箔が要求されているが、このような極薄の銅箔は機械的強度が低くプリント配線板の製造時に破れたり、皺が発生したりしやすいので、厚みのある金属箔をキャリアとして利用し、これに剥離層を介して極薄銅層を電着させたキャリア付銅箔が登場している。極薄銅層の表面を絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後、キャリアは剥離層を介して剥離除去される。露出した極薄銅層上にレジストで回路パターンを形成した後に、極薄銅層を硫酸-過酸化水素系のエッチャントでエッチング除去する手法(MSAP:Modified-Semi-Additive-Process)により、微細回路が形成される。
【0004】
ここで、樹脂との接着面となるキャリア付き銅箔の極薄銅層の表面に対しては、主として、極薄銅層と樹脂基材との剥離強度が十分であること、そしてその剥離強度が高温加熱、湿式処理、半田付け、薬品処理等の後でも十分に保持されていることが要求される。極薄銅層と樹脂基材の間の剥離強度を高める方法としては、一般的に、表面のプロファイル(凹凸、粗さ)を大きくした極薄銅層の上に多量の粗化粒子を付着させる方法が代表的である。
【0005】
しかしながら、プリント配線板の中でも特に微細な回路パターンを形成する必要のある半導体パッケージ基板に、このようなプロファイル(凹凸、粗さ)の大きい極薄銅層を使用すると、回路エッチング時に不要な銅粒子が残ってしまい、回路パターン間の絶縁不良等の問題が発生する。
【0006】
このため、WO2004/005588号(特許文献1)では、半導体パッケージ基板をはじめとする微細回路用途のキャリア付銅箔として、極薄銅層の表面に粗化処理を施さないキャリア付銅箔を用いることが試みられている。このような粗化処理を施さない極薄銅層と樹脂との密着性(剥離強度)は、その低いプロファイル(凹凸、粗度、粗さ)の影響で一般的なプリント配線板用銅箔と比較すると低下する傾向がある。そのため、キャリア付銅箔について更なる改善が求められている。
【0007】
そこで、特開2007−007937号公報(特許文献2)及び特開2010−006071号公報(特許文献3)では、キャリア付き極薄銅箔のポリイミド系樹脂基板と接触(接着)する面に、Ni層又は/及びNi合金層を設けること、クロメート層を設けること、Cr層又は/及びCr合金層を設けること、Ni層とクロメート層とを設けること、Ni層とCr層とを設けることが記載されている。これらの表面処理層を設けることにより、ポリイミド系樹脂基板とキャリア付き極薄銅箔との密着強度を粗化処理なし、または粗化処理の程度を低減(微細化)しながら所望の接着強度を得ている。更に、シランカップリング剤で表面処理したり、防錆処理を施したりすることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2004/005588号
【特許文献2】特開2007−007937号公報
【特許文献3】特開2010−006071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
キャリア付銅箔の開発においては、これまで極薄銅層と樹脂基材との剥離強度を確保することに重きが置かれていた。そのため、エッチング性に関しては未だ十分な検討がなされておらず、未だ改善の余地が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、所定の加熱処理がなされたキャリア付銅箔から極薄銅層を剥がしたときの、極薄銅層の剥離側表面のNiの付着量、及び、触針式粗度計を用いて測定される極薄銅層の表面粗さRzを制御することで、良好なエッチング性を有するキャリア付銅箔を提供することができることを見出した。
【0011】
以上の知見を基礎として完成された本発明は一側面において、キャリアと、中間層と、極薄銅層とをこの順で有するキャリア付銅箔であって、キャリア付銅箔の極薄銅層側表面に回路を形成する工程、前記回路が埋没するように前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に樹脂層を形成する工程、前記樹脂層上に回路を形成する工程、前記樹脂層上に回路を形成した後に、前記キャリアを剥離させる工程、及び、前記キャリアを剥離させた後に、前記極薄銅層を除去することで、前記極薄銅層側表面に形成した、前記樹脂層に埋没している回路を露出させる工程を含むプリント配線板の製造方法に用いられる前記キャリア付銅箔であり、前記中間層はNiを含み、前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が400μg/dm2以下であり、JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される前記極薄銅層の表面粗さRzが0.2μm以上1.5μm以下であり、前記表面粗さRzの標準偏差が0.6μm以下であるキャリア付銅箔である。
【0012】
本発明は別の一側面において、キャリアと、中間層と、極薄銅層とをこの順で有するキャリア付銅箔であって、キャリア付銅箔の極薄銅層側表面に回路を形成する工程、前記回路が埋没するように前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に樹脂層を形成する工程、前記樹脂層上に回路を形成する工程、前記樹脂層上に回路を形成した後に、前記キャリアを剥離させる工程、及び、前記キャリアを剥離させた後に、前記極薄銅層を除去することで、前記極薄銅層側表面に形成した、前記樹脂層に埋没している回路を露出させる工程を含むプリント配線板の製造方法に用いられる前記キャリア付銅箔であり、前記中間層はNiを含み、前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が400μg/dm2以下であり、JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される前記極薄銅層の表面粗さRzが0.2μm以上1.0μm以下であるキャリア付銅箔である。
【0013】
本発明のキャリア付銅箔は一実施形態において、前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上である。
【0014】
本発明のキャリア付銅箔は別の一実施形態において、前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上300μg/dm2以下である。
【0015】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上250μg/dm2以下である。
【0016】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上200μg/dm2以下である。
【0017】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上150μg/dm2以下である。
【0018】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記キャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上100μg/dm2以下である。
【0019】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される前記極薄銅層の表面粗さRzが0.2μm以上1.0μm以下である。
【0020】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される前記極薄銅層の表面粗さRzが0.2μm以上0.6μm以下である。
【0021】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記中間層のNi含有量が、100μg/dm2以上5000μg/dm2以下である。
【0022】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記中間層が、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Zn、これらの合金、これらの水和物、これらの酸化物、有機物からなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0023】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記中間層が、Crを含む場合は、Crを5〜100μg/dm2含有し、Moを含む場合は、Moを10μg/dm2以上1000μg/dm2以下含有し、Coを含む場合は、Coを10μg/dm2以上1000μg/dm2以下含有し、Znを含む場合は、Znを1μg/dm2以上120μg/dm2以下含有する。
【0024】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記中間層が有機物を厚みで25nm以上80nm以下含有する。
【0025】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記有機物が、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択される1種又は2種以上からなる有機物である。
【0026】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記表面粗さRzの標準偏差が0.6μm以下である。
【0027】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記表面粗さRzの標準偏差が0.4μm以下である。
【0028】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記表面粗さRzの標準偏差が0.2μm以下である。
【0029】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記表面粗さRzの標準偏差が0.1μm以下である。
【0033】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記キャリアの両方の面に、前記中間層と、前記極薄銅層とをこの順で有する。
【0034】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記キャリアが電解銅箔または圧延銅箔で形成されている。
【0035】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記極薄銅層及び前記キャリアの少なくとも一方の表面、又は、両方の表面に、粗化処理層を有する。
【0036】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記粗化処理層が、銅、ニッケル、コバルト、りん、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層である。
【0037】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する。
【0038】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記極薄銅層及び前記キャリアの少なくとも一方の表面、又は、両方の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する。
【0039】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記極薄銅層の一方の表面、又は、両方の表面に、粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する。
【0040】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記極薄銅層上に樹脂層を備える。
【0041】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記粗化処理層上に樹脂層を備える。
【0042】
本発明のキャリア付銅箔は更に別の一実施形態において、前記耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層の上に樹脂層を備える。
【0043】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔を用いて製造した銅張積層板である。
【0044】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔を用いて製造したプリント配線板である。
【0045】
本発明は更に別の一側面において、本発明のプリント配線板を用いて製造した電子機器である。
【0046】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、その後、セミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって、回路を形成する工程を含むプリント配線板の製造方法である。
【0047】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に回路を形成する工程、前記回路が埋没するように前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に樹脂層を形成する工程、前記樹脂層上に回路を形成する工程、前記樹脂層上に回路を形成した後に、前記キャリアを剥離させる工程、及び、前記キャリアを剥離させた後に、前記極薄銅層を除去することで、前記極薄銅層側表面に形成した、前記樹脂層に埋没している回路を露出させる工程を含むプリント配線板の製造方法である。
【0048】
本発明のプリント配線板の製造方法は一実施形態において、前記樹脂層上に回路を形成する工程が、前記樹脂層上に別のキャリア付銅箔を極薄銅層側から貼り合わせ、前記樹脂層に貼り合わせたキャリア付銅箔を用いて前記回路を形成する工程である。
【0049】
本発明のプリント配線板の製造方法は別の一実施形態において、前記樹脂層上に貼り合わせる別のキャリア付銅箔が、本発明のキャリア付銅箔である。
【0050】
本発明のプリント配線板の製造方法は更に別の一実施形態において、前記樹脂層上に回路を形成する工程が、セミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって行われる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、良好な加工精度を実現するキャリア付銅箔を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】A〜Cは、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例に係る、回路めっき・レジスト除去までの工程における配線板断面の模式図である。
図2】D〜Fは、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例に係る、樹脂及び2層目キャリア付銅箔積層からレーザー穴あけまでの工程における配線板断面の模式図である。
図3】G〜Iは、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例に係る、ビアフィル形成から1層目のキャリア剥離までの工程における配線板断面の模式図である。
図4】J〜Kは、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例に係る、フラッシュエッチングからバンプ・銅ピラー形成までの工程における配線板断面の模式図である。
図5】ドラム式の運箔方式を示す模式図である。
図6】九十九折の運箔方式を示す模式図である。
図7】エッチング時間と、エッチングにより減少した厚みとの関係を示すグラフである。
図8】XPS測定による炭素濃度のデプスプロファイルの評価におけるサンプルシートの測定箇所を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
<キャリア付銅箔>
本発明のキャリア付銅箔は、キャリアと、中間層と、極薄銅層とをこの順で有する。キャリア付銅箔自体の使用方法は当業者に周知であるが、例えば極薄銅層の表面を紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、フッ素樹脂フィルム等の絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がし、絶縁基板に接着した極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングし、最終的にプリント配線板を製造することができる。
【0055】
<キャリア>
本発明に用いることのできるキャリアは典型的には金属箔または樹脂フィルムであり、例えば銅箔、銅合金箔、ニッケル箔、ニッケル合金箔、鉄箔、鉄合金箔、ステンレス箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、絶縁樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、LCDフィルムの形態で提供される。
本発明に用いることのできるキャリアは典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で提供される。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。銅箔の材料としてはタフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100)や無酸素銅(JIS H3100 合金番号C1020またはJIS H3510 合金番号C1011)といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。
また、電解銅箔としては、以下の電解液組成及び製造条件にて作製することができる。
以下の条件で、電解銅箔を製造した場合、銅箔表面のTD(銅箔の製造設備での、銅箔の進行方向に直角の方向(幅方向))のRzが小さく、TDの60度光沢度が高い電解銅箔を得ることが出来る。
なお、本明細書に記載されている銅箔の製造、銅箔の表面処理又は銅箔のめっき等に用いられる処理液の残部は特に明記しない限り水である。
<電解液組成>
銅:90〜110g/L
硫酸:90〜110g/L
塩素:50〜100ppm
レベリング剤1(ビス(3スルホプロピル)ジスルフィド):10〜30ppm
レベリング剤2(アミン化合物):10〜30ppm
上記のアミン化合物には以下の化学式のアミン化合物を用いることができる。
【0056】
【化1】
(上記化学式中、R1及びR2はヒドロキシアルキル基、エーテル基、アリール基、芳香族置換アルキル基、不飽和炭化水素基、アルキル基からなる一群から選ばれるものである。)
【0057】
<製造条件>
電流密度:70〜100A/dm2
電解液温度:50〜60℃
電解液線速:3〜5m/sec
電解時間:0.5〜10分間
なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
【0058】
本発明に用いることのできるキャリアの厚さについても特に制限はないが、キャリアとしての役目を果たす上で適した厚さに適宜調節すればよく、例えば5μm以上とすることができる。但し、厚すぎると生産コストが高くなるので一般には35μm以下とするのが好ましい。従って、キャリアの厚みは典型的には8〜70μmであり、より典型的には12〜70μmであり、より典型的には18〜35μmである。また、原料コストを低減する観点からはキャリアの厚みは小さいことが好ましい。そのため、キャリアの厚みは、典型的には5μm以上35μm以下であり、好ましくは5μm以上18μm以下であり、好ましくは5μm以上12μm以下であり、好ましくは5μm以上11μm以下であり、好ましくは5μm以上10μm以下である。なお、キャリアの厚みが小さい場合には、キャリアの通箔の際に折れシワが発生しやすい。折れシワの発生を防止するため、例えばキャリア付銅箔製造装置の搬送ロールを平滑にすることや、搬送ロールと、その次の搬送ロールとの距離を短くすることが有効である。なお、プリント配線板の製造方法の一つである埋め込み工法(エンベッティド法(Enbedded Process))にキャリア付銅箔が用いられる場合には、キャリアの剛性が高いことが必要である。そのため、埋め込み工法に用いる場合には、キャリアの厚みは18μm以上300μm以下であることが好ましく、25μm以上150μm以下であることが好ましく、35μm以上100μm以下であることが好ましく、35μm以上70μm以下であることが更により好ましい。
【0059】
<中間層>
キャリア上にはNiを含む中間層を設ける。キャリアと中間層との間に他の層を設けてもよい。本発明で用いる中間層は、キャリア付銅箔が絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅層が剥離し難い一方で、絶縁基板への積層工程後にはキャリアから極薄銅層が剥離可能となるような構成であれば特に限定されない。例えば、本発明のキャリア付銅箔の中間層は、Niの他に、Cr、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Zn、これらの合金、これらの水和物、これらの酸化物、有機物からなる群から選択される一種又は二種以上を含んでも良い。また、中間層は複数の層であっても良い。また、中間層はキャリアの両面に設けてもよい。
【0060】
また、例えば、中間層はキャリア側からNiからなる単一金属層、或いは、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種又は二種以上の元素からなる合金層を形成し、その上にCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種又は二種以上の元素の水和物または酸化物からなる層を形成することで構成することができる。
【0061】
また、キャリアの片面又は両面上にはNiを含む中間層を設ける。中間層は、キャリア上にニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、及びクロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層がこの順で積層されて構成されているのが好ましい。そして、ニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、及び/または、クロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層に亜鉛が含まれているのが好ましい。ここで、ニッケルを含む合金とはニッケルと、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金のことをいう。ニッケルを含む合金は3種以上の元素からなる合金でも良い。また、クロム合金とはクロムと、コバルト、鉄、ニッケル、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金のことをいう。クロム合金は3種以上の元素からなる合金でも良い。また、クロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層はクロメート処理層であってもよい。ここでクロメート処理層とは無水クロム酸、クロム酸、二クロム酸、クロム酸塩または二クロム酸塩を含む液で処理された層のことをいう。クロメート処理層はコバルト、鉄、ニッケル、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタン等の元素(金属、合金、酸化物、窒化物、硫化物等どのような形態でもよい)を含んでもよい。クロメート処理層の具体例としては、純クロメート処理層や亜鉛クロメート処理層等が挙げられる。本発明においては、無水クロム酸または二クロム酸カリウム水溶液で処理したクロメート処理層を純クロメート処理層という。また、本発明においては無水クロム酸または二クロム酸カリウムおよび亜鉛を含む処理液で処理したクロメート処理層を亜鉛クロメート処理層という。
【0062】
また、中間層は、キャリア上にニッケル、ニッケル−亜鉛合金、ニッケル−リン合金、ニッケル−コバルト合金のいずれか1種の層、及び亜鉛クロメート処理層、純クロメート処理層、クロムめっき層のいずれか1種の層がこの順で積層されて構成されているのが好ましく、中間層は、キャリア上にニッケル層またはニッケル−亜鉛合金層、及び、亜鉛クロメート処理層がこの順で積層されて構成されている、又は、ニッケル−亜鉛合金層、及び、純クロメート処理層または亜鉛クロメート処理層がこの順で積層されて構成されているのが更に好ましい。ニッケルと銅との接着力はクロムと銅の接着力よりも高いので、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層とクロメート処理層との界面で剥離するようになる。また、中間層のニッケルにはキャリアから銅成分が極薄銅層へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。また、中間層にクロムめっきではなくクロメート処理層を形成するのが好ましい。クロムめっきは表面に緻密なクロム酸化物層を形成するため、電気めっきで極薄銅箔を形成する際に電気抵抗が上昇し、ピンホールが発生しやすくなる。クロメート処理層を形成した表面は、クロムめっきとくらべ緻密ではないクロム酸化物層が形成されるため、極薄銅箔を電気めっきで形成する際の抵抗になりにくく、ピンホールを減少させることができる。ここで、クロメート処理層として、亜鉛クロメート処理層を形成することにより、極薄銅箔を電気めっきで形成する際の抵抗が、通常のクロメート処理層より低くなり、よりピンホールの発生を抑制することができる。
キャリアとして電解銅箔を使用する場合には、ピンホールを減少させる観点からシャイニー面に中間層を設けることが好ましい。
【0063】
中間層のうちクロメート処理層は極薄銅層の界面に薄く存在することが、絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅層が剥離しない一方で、絶縁基板への積層工程後にはキャリアから極薄銅層が剥離可能であるという特性を得る上で好ましい。ニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル−亜鉛合金層)を設けずにクロメート処理層をキャリアと極薄銅層の境界に存在させた場合は、剥離性はほとんど向上しないし、クロメート処理層がなくニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル−亜鉛合金層)と極薄銅層を直接積層した場合は、ニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル−亜鉛合金層)におけるニッケル量に応じて剥離強度が強すぎたり弱すぎたりして適切な剥離強度は得られない。
【0064】
また、クロメート処理層がキャリアとニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル−亜鉛合金層)の境界に存在すると、極薄銅層の剥離時に中間層も付随して剥離されてしまう、すなわちキャリアと中間層の間で剥離が生じてしまうので好ましくない。このような状況は、キャリアとの界面にクロメート処理層を設けた場合のみならず、極薄銅層との界面にクロメート処理層を設けたとしてもクロム量が多すぎると生じ得る。これは、銅とニッケルは固溶しやすいので、これらが接触していると相互拡散によって接着力が高くなり剥離しにくくなる一方で、クロムと銅は固溶しにくく、相互拡散が生じにくいので、クロムと銅の界面では接着力が弱く、剥離しやすいことが原因と考えられる。また、中間層のニッケル量が不足している場合、キャリアと極薄銅層の間には微量のクロムしか存在しないので両者が密着して剥がれにくくなる。
【0065】
中間層のニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル−亜鉛合金層)は、例えば電気めっき、無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっき、或いはスパッタリング、CVD及びPDVのような乾式めっきにより形成することができる。コストの観点から電気めっきが好ましい。なお、キャリアが樹脂フィルムの場合には、CVD及びPDVのような乾式めっきまたは無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっきにより中間層を形成することができる。
また、クロメート処理層は、例えば電解クロメートや浸漬クロメート等で形成することができるが、クロム濃度を高くすることができ、キャリアからの極薄銅層の剥離強度が良好となるため、電解クロメートで形成するのが好ましい。
【0066】
また、中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2、クロムの付着量が5〜100μg/dm2、亜鉛の付着量が1〜70μg/dm2であるのが好ましい。上述のように、本発明のキャリア付銅箔は、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥離した後の極薄銅層の表面のNi量が制御されているが、このように剥離後の極薄銅層表面のNi量を制御するためには、中間層のNi付着量を少なくするとともに、Niが極薄銅層側へ拡散するのを抑制する金属種(Cr、Zn)を中間層が含んでいることが好ましい。このような観点から、中間層のNi含有量は、100〜40000μg/dm2であるのが好ましく、200μg/dm2以上20000μg/dm2以下であるのが更に好ましく、500μg/dm2以上10000μg/dm2以下であるのが更に好ましく、700μg/dm2以上5000μg/dm2以下であるのが更に好ましい。また、Crは5〜100μg/dm2含有するのが好ましく、8μg/dm2以上50μg/dm2以下であるのが更に好ましく、10μg/dm2以上40μg/dm2以下であるのが更に好ましく、12μg/dm2以上30μg/dm2以下であるのが更に好ましい。Znは1〜70μg/dm2含有するのが好ましく、3μg/dm2以上30μg/dm2以下であるのが更に好ましく、5μg/dm2以上20μg/dm2以下であるのが更に好ましい。
【0067】
本発明のキャリア付銅箔の中間層は、キャリア上にニッケル層、及び、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層の順で積層されて構成されており、中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2であってもよい。また、本発明のキャリア付銅箔の中間層は、キャリア上に窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層、及び、ニッケル層の順で積層されて構成されており、中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2であってもよい。上述のように、本発明のキャリア付銅箔は、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥離した後の極薄銅層の表面のNi量が制御されているが、このように剥離後の極薄銅層表面のNi量を制御するためには、中間層のNi付着量を少なくするとともに、Niが極薄銅層側へ拡散するのを抑制する窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層を中間層が含んでいることが好ましい。このような観点から、中間層のNi含有量は、100〜40000μg/dm2であるのが好ましく、200μg/dm2以上20000μg/dm2以下であるのが更に好ましく、300μg/dm2以上10000μg/dm2以下であるのが更に好ましく、500μg/dm2以上5000μg/dm2以下であるのが更に好ましい。また、当該窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物としては、BTA(ベンゾトリアゾール)、MBT(メルカプトベンゾチアゾール)等が挙げられる。
【0068】
また、中間層が含有する有機物としては、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択される1種又は2種以上からなるものを用いることが好ましい。窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のうち、窒素含有有機化合物は、置換基を有する窒素含有有機化合物を含んでいる。具体的な窒素含有有機化合物としては、置換基を有するトリアゾール化合物である1,2,3−ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、N’,N’−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア、1H−1,2,4−トリアゾール及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール等を用いることが好ましい。
硫黄含有有機化合物には、メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、チオシアヌル酸及び2−ベンズイミダゾールチオール等を用いることが好ましい。
カルボン酸としては、特にモノカルボン酸を用いることが好ましく、中でもオレイン酸、リノール酸及びリノレイン酸等を用いることが好ましい。
前述の有機物は厚みで25nm以上80nm以下含有するのが好ましく、30nm以上70nm以下含有するのがより好ましい。中間層は前述の有機物を複数種類(一種以上)含んでもよい。
なお、有機物の厚みは以下のようにして測定することができる。
【0069】
<中間層の有機物厚み>
キャリア付銅箔の極薄銅層をキャリアから剥離した後に、露出した極薄銅層の中間層側の表面と、露出したキャリアの中間層側の表面をXPS測定し、デプスプロファイルを作成する。そして、極薄銅層の中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをA(nm)とし、キャリアの中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをB(nm)とし、AとBとの合計を中間層の有機物の厚み(nm)とすることができる。
XPSの稼働条件を以下に示す。
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・到達真空度:3.8×10-7Pa
・X線:単色AlKαまたは非単色MgKα、エックス線出力300W、検出面積800μmφ、試料と検出器のなす角度45°
・イオン線:イオン種Ar+、加速電圧3kV、掃引面積3mm×3mm、スパッタリングレート2.8nm/min(SiO2換算)
【0070】
中間層が含有する有機物の使用方法について、以下に、キャリア箔上への中間層の形成方法についても述べつつ説明する。キャリア上への中間層の形成は、上述した有機物を溶媒に溶解させ、その溶媒中にキャリアを浸漬させるか、中間層を形成しようとする面に対するシャワーリング、噴霧法、滴下法及び電着法等を用いて行うことができ、特に限定した手法を採用する必要性はない。このときの溶媒中の有機系剤の濃度は、上述した有機物の全てにおいて、濃度0.01g/L〜30g/L、液温20〜60℃の範囲が好ましい。有機物の濃度は、特に限定されるものではなく、本来濃度が高くとも低くとも問題のないものである。なお、有機物の濃度が高いほど、また、上述した有機物を溶解させた溶媒へのキャリアの接触時間が長いほど、中間層の有機物厚みは大きくなる傾向にある。そして、中間層の有機物厚みが厚い場合、Niの極薄銅層側への拡散を抑制するという、有機物の効果が大きくなる傾向にある。
【0071】
また、中間層は、キャリア上に、ニッケルと、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金とがこの順で積層されて構成されていることが好ましい。ニッケルと銅との接着力は、モリブデンまたはコバルトと銅との接着力よりも高いので、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層とモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金との界面で剥離するようになる。また、中間層のニッケルにはキャリアから銅成分が極薄銅層へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。
【0072】
なお、前述のニッケルはニッケルを含む合金であっても良い。ここで、ニッケルを含む合金とはニッケルと、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金のことをいう。また、前述のモリブデンはモリブデンを含む合金であっても良い。ここで、モリブデンを含む合金とはモリブデンと、コバルト、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金のことをいう。また、前述のコバルトはコバルトを含む合金であっても良い。ここで、コバルトを含む合金とはコバルトと、モリブデン、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金のことをいう。
【0073】
モリブデン−コバルト合金はモリブデン、コバルト以外の元素(例えばコバルト、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素)を含んでも良い。
キャリアとして電解銅箔を使用する場合には、ピンホールを減少させる観点からシャイニー面に中間層を設けることが好ましい。
【0074】
中間層のうちモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層は極薄銅層の界面に薄く存在することが、絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅層が剥離しない一方で、絶縁基板への積層工程後にはキャリアから極薄銅層が剥離可能であるという特性を得る上で好ましい。ニッケル層を設けずにモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層をキャリアと極薄銅層の境界に存在させた場合は、剥離性はほとんど向上しない場合があり、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層がなくニッケル層と極薄銅層を直接積層した場合はニッケル層におけるニッケル量に応じて剥離強度が強すぎたり弱すぎたりして適切な剥離強度は得られない場合がある。
【0075】
また、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層がキャリアとニッケル層の境界に存在すると、極薄銅層の剥離時に中間層も付随して剥離されてしまう場合がある、すなわちキャリアと中間層の間で剥離が生じてしまうので好ましくない場合がある。このような状況は、キャリアとの界面にモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層を設けた場合のみならず、極薄銅層との界面にモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層を設けたとしてもモリブデン量またはコバルト量が多すぎると生じ得る。これは、銅とニッケルとは固溶しやすいので、これらが接触していると相互拡散によって接着力が高くなり剥離しにくくなる一方で、モリブデンまたはコバルトと銅とは固溶しにくく、相互拡散が生じにくいので、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層と銅との界面では接着力が弱く、剥離しやすいことが原因と考えられる。また、中間層のニッケル量が不足している場合、キャリアと極薄銅層の間には微量のモリブデンまたはコバルトしか存在しないので両者が密着して剥がれにくくなる場合がある。
【0076】
中間層のニッケル及びコバルトまたはモリブデン−コバルト合金は、例えば電気めっき、無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっき、或いはスパッタリング、CVD及びPDVのような乾式めっきにより形成することができる。また、モリブデンはCVD及びPDVのような乾式めっきのみにより形成することができる。コストの観点から電気めっきが好ましい。
【0077】
中間層において、ニッケルの付着量は100〜40000μg/dm2であり、モリブデンの付着量は10〜1000μg/dm2であり、コバルトの付着量は10〜1000μg/dm2であるのが好ましい。上述のように、本発明のキャリア付銅箔は、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥離した後の極薄銅層の表面のNi量が制御されているが、このように剥離後の極薄銅層表面のNi量を制御するためには、中間層のNi付着量を少なくするとともに、Niが極薄銅層側へ拡散するのを抑制する金属種(Co、Mo)を中間層が含んでいることが好ましい。このような観点から、ニッケル付着量は100〜40000μg/dm2とすることが好ましく、200〜20000μg/dm2とすることが好ましく、300〜15000μg/dm2とすることがより好ましく、300〜10000μg/dm2とすることがより好ましい。中間層にモリブデンが含まれる場合には、モリブデン付着量は10〜1000μg/dm2とすることが好ましく、モリブデン付着量は20〜600μg/dm2とすることが好ましく、30〜400μg/dm2とすることがより好ましい。中間層にコバルトが含まれる場合には、コバルト付着量は10〜1000μg/dm2とすることが好ましく、コバルト付着量は20〜600μg/dm2とすることが好ましく、30〜400μg/dm2とすることがより好ましい。
【0078】
なお、上述のように中間層は、キャリア上に、ニッケルと、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金とがこの順で積層した場合には、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層を設けるためのめっき処理での電流密度を低くし、キャリアの搬送速度を遅くするとモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層の密度が高くなる傾向にある。モリブデン及び/またはコバルトを含む層の密度が高くなると、ニッケル層のニッケルが拡散し難くなり、剥離後の極薄銅層表面のNi量を制御することができる。
【0079】
中間層を片面にのみ設ける場合、キャリアの反対面にはNiめっき層などの防錆層を設けることが好ましい。なお、中間層をクロメート処理や亜鉛クロメート処理やめっき処理で設けた場合には、クロムや亜鉛など、付着した金属の一部は水和物や酸化物となっている場合があると考えられる。
【0080】
本発明のキャリア付銅箔は、220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して極薄銅層を剥がしたとき、極薄銅層の中間層側の表面のNiの付着量が5μg/dm2以上300μg/dm2以下である。キャリア付銅箔を絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後に銅箔キャリアを剥がし、絶縁基板に接着した極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングするが、このとき、極薄銅層の表面(絶縁基板との接着側とは反対側の表面)に付着するNiの量が多いと、極薄銅層がエッチングされ難くなり、ファインピッチ回路を形成することが困難となる。このため、本発明のキャリア付銅箔は、上記のような剥離後の極薄銅層の表面のNi付着量が300μg/dm2以下となるように制御されている。当該Ni付着量が300μg/dm2を超えると、極薄銅層をエッチングして、L/S=30μm/30μmよりも微細な配線、例えばL/S=25μm/25μmの微細な配線、例えばL/S=20μm/20μmの微細な配線、例えばL/S=15μm/15μmの微細な配線を形成することが困難となる。なお、上記「220℃で2時間加熱」は、キャリア付銅箔を絶縁基板に貼り合わせて熱圧着する場合の典型的な加熱条件を示している。
【0081】
上記のような剥離後の極薄銅層の表面のNi付着量が少な過ぎると、銅箔キャリアのCuが極薄銅層側へ拡散する場合がある。そのような場合は、銅箔キャリアと極薄銅層の結合の程度が強くなり過ぎてしてしまい、極薄銅層を剥がす際に極薄銅層にピンホールが発生しやすくなる。また、樹脂と銅箔との密着力が劣化する場合がある。このため、当該Niの付着量は、5μg/dm2以上となるように制御されている。また、当該Ni付着量は、好ましくは5μg/dm2以上250μg/dm2以下であり、より好ましくは5μg/dm2以上200μg/dm2以下である。
【0082】
また、中間層は、上述のように、キャリア付銅箔が、220℃で2時間加熱した後、極薄銅層を剥がしたとき、極薄銅層の中間層側の表面のNiの付着量が300μg/dm2以下となる場合、このように剥離後の極薄銅層表面のNi付着量を制御するためには、中間層のNi含有量を少なくするとともに、Niが極薄銅層側へ拡散するのを抑制する金属種(Cr、Mo、Zn等)や有機物を中間層が含んでいる必要がある。このような観点から、中間層のNi含有量は、100μg/dm2以上5000μg/dm2以下であるのが好ましく、200μg/dm2以上4000μg/dm2以下であるのが更に好ましく、300μg/dm2以上3000μg/dm2以下であるのが更に好ましく、400μg/dm2以上2000μg/dm2以下であるのが更に好ましい。また、中間層が含有する金属種としては、Cr、Mo、Znからなる群から選択される一種又は二種以上が好ましい。Crを含む場合は、Crを5〜100μg/dm2含有するのが好ましく、5μg/dm2以上50μg/dm2以下含有するのがより好ましい。Moを含む場合は、Moを50μg/dm2以上1000μg/dm2以下含有するのが好ましく、70μg/dm2以上650μg/dm2以下含有するのがより好ましい。Znを含む場合は、Znを1μg/dm2以上120μg/dm2以下含有するのが好ましく、2μg/dm2以上70μg/dm2以下含有するのがより好ましく、5μg/dm2以上50μg/dm2以下含有するのがより好ましい。
【0083】
<極薄銅層>
中間層の上には極薄銅層を設ける。中間層と極薄銅層との間には他の層を設けてもよい。極薄銅層は、硫酸銅、ピロリン酸銅、スルファミン酸銅、シアン化銅等の電解浴を利用した電気めっきにより形成することができ、高電流密度での銅層形成が可能であることから硫酸銅浴が好ましい。極薄銅層の厚みは特に制限はないが、一般的にはキャリアよりも薄く、例えば12μm以下である。典型的には0.5〜12μmであり、より典型的には1〜5μmであり、更により典型的には1.5〜5μmであり、更により典型的には2〜5μmである。なお、極薄銅層はキャリアの両面に設けてもよい。また、極薄銅層の一方の表面、又は、両方の表面に、粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を設けてもよく、表面処理層を設けてもよい。表面処理層は粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層であってもよい。
【0084】
本発明において「極薄銅層の表面粗さ」とは、極薄銅層の表面の粗さ、又は、粗化処理等の各種表面処理が施されている場合はその表面処理層表面の最も外側の表面の粗さを示す。本発明の極薄銅層は、JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される表面粗さRz(十点平均粗さ)が0.2μm以上1.5μm以下である。JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される極薄銅層の表面粗さRz(十点平均粗さ)が0.2μm未満であるとキャリア付き銅箔を樹脂に積層した後に、銅箔からキャリアを剥がす際に、銅箔が樹脂から剥がれるという問題が生じる。また、JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される極薄銅層の表面粗さRzが1.5μm超であるとエッチング性が悪くなるという問題が生じる。
当該表面粗さRzは、0.2μm以上1.0μm以下がより好ましく、0.20μm以上0.90μm以下がより好ましく、0.25μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.28μm以上0.7μm以下、0.28μm以上0.6m以下が更により好ましい。
なお、Rzを低くするためにはキャリアのTD方向のRzを低くし、かつ60度光沢度を高くすることが有効である。また、極薄銅層表面へ粗化処理を行う場合には、粗化処理における電流密度を高くし、かつ/または、粗化処理時間を短くし、かつ/または、銅合金めっきにより粗化処理をすることが有効である。
【0085】
中間層形成前のキャリアの処理側の表面のTDの粗さ(Rz)及び光沢度を以下のように制御する。具体的には、表面処理前の銅箔のTDの表面粗さ(Rz)が好ましくは0.20〜1.30μm、より好ましくは0.20〜1.00μm、より好ましくは0.20〜0.90μm、より好ましくは0.20〜0.80μm、より好ましくは0.20〜0.60μm、より好ましくは0.20〜0.50μmである。このような銅箔としては、圧延油の油膜当量を調整して圧延を行う(高光沢圧延)または圧延ロールの表面粗さを調整して圧延を行う(例えばロールの円周方向と直角の方向に測定した場合において、圧延ロール表面の算術平均粗さRa(JIS B0601)を0.01〜0.25μmとすることができる。圧延ロール表面の算術平均粗さRaの値が大きい場合、銅箔表面のTDの粗さ(Rz)が大きく、光沢度が低くなる傾向がある。また、圧延ロール表面の算術平均粗さRaの値が小さい場合、銅箔のTDの粗さ(Rz)が小さく、光沢度が高くなる傾向がある。)、或いは、ケミカルエッチングのような化学研磨やリン酸溶液中の電解研磨により作製することができる。このように、処理前の銅箔のTDの表面粗さ(Rz)と光沢度とを上記および下記範囲にすることで、処理後の銅箔の表面粗さ(Rz)を制御しやすくすることができる。
また、表面処理前の銅箔は、TDの60度光沢度が150〜910%であるのが好ましく、200〜810%であるのがより好ましく、400〜750%であることがより好ましい。表面処理前の銅箔のMDの60度光沢度が150%未満であると150%以上の場合よりも銅箔表面のTDの粗さRzが大きくなるおそれがあり、910%を超えると、製造することが難しくなるという問題が生じるおそれがある。
なお、高光沢圧延は以下の式で規定される油膜当量を10000〜24000以下とすることで行うことが出来る。
油膜当量={(圧延油粘度[cSt])×(通板速度[mpm]+ロール周速度[mpm])}/{(ロールの噛み込み角[rad])×(材料の降伏応力[kg/mm2])}
圧延油粘度[cSt]は40℃での動粘度である。
油膜当量を10000〜24000とするためには、低粘度の圧延油を用いたり、通板速度を遅くしたりする等、公知の方法を用いればよい。
化学研磨は硫酸−過酸化水素−水系またはアンモニア−過酸化水素−水系等のエッチング液で、通常よりも濃度を低くして、長時間かけて行う。
【0086】
また、粗化処理等の各種表面処理を施した後の極薄銅層の表面(「表面処理面」ともいう。)は、当該触針式粗度計を用いて測定される表面粗さRzの標準偏差が0.6μm以下であるのが好ましい。JIS B0601−1982に準拠して触針式粗度計を用いて測定される極薄銅層の表面粗さRzの標準偏差が0.6μm超であるとエッチング性のばらつきが大きくなるという問題が生じるおそれがある。当該表面粗さRzの標準偏差は、0.5μm以下であるのがより好ましく、0.4μm以下であるのが更により好ましく、0.3μm以下であるのがより好ましく、0.25μm以下であるのがより好ましく、0.2μm以下であるのがより好ましく、0.15μm以下であるのがより好まし、0.1μm以下であるのがより好ましい。なお、標準偏差の下限は特に限定する必要はないが、例えば0.001μm以上、例えば0.005μm以上、例えば0.01μm以上である。
なお、極薄銅層表面上に表面処理層を形成する際に、キャリア付き銅箔と、電極との距離(極間距離)を従来よりも均一に近い状態に保つことで、上記表面粗さRzの標準偏差を低減することができる。
電極との距離(極間距離)を従来よりも均一に近い状態に保つ方法としては、陰極に陰極ドラムを用いる、または、搬送ロール間の距離を小さくし(例えば200〜500mm)かつ搬送張力を従来よりも高くする(例えば3kgf/mm2以上)事などが挙げられる。
【0087】
極薄銅層を形成するめっき条件の制御にて上述の表面粗さを調整する場合、電解めっきを用いるが、その場合、極薄銅層は、以下の電解液組成及び製造条件にて作製することができる。上述の表面粗さは、極薄銅層形成時の電解液温度を高くし、および/または、メッキ(電解)液の線流速を高くし、および/または、電解液に所定のレべリング剤を添加することで調整することができる。
<電解液組成>
銅:90〜110g/L
硫酸:90〜110g/L
塩素:50〜100ppm
レベリング剤1(ビス(3スルホプロピル)ジスルフィド):10〜30ppm
レベリング剤2(アミン化合物):10〜30ppm
上記のアミン化合物には以下の化学式のアミン化合物を用いることができる。
【0088】
【化2】
(上記化学式中、R1及びR2はヒドロキシアルキル基、エーテル基、アリール基、芳香族置換アルキル基、不飽和炭化水素基、アルキル基からなる一群から選ばれるものである。)
【0089】
<製造条件>
電流密度:70〜100A/dm2
電解液温度:50〜60℃
電解液線速:3〜5m/sec
電解時間:0.5〜10分間
【0090】
一方、極薄銅層の表面に粗化処理を施して粗化処理層を設けることで上述の表面粗さを調整する場合、当該粗化処理は、例えば、銅又は銅合金で粗化粒子を形成することにより行うことができる。粗化処理は微細なものであっても良い。粗化処理層は、銅、ニッケル、りん、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム、コバルト及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層などであってもよい。また、銅又は銅合金で粗化粒子を形成した後、更にニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で二次粒子や三次粒子を設ける粗化処理を行うこともできる。
上述の表面粗さは、粗化処理層を設ける場合には銅と、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデン、亜鉛、ヒ素、クロムおよびりんからなる群から選択される一種以上の元素とを含むめっき液を用いて、従来よりも電流密度を高く(例えば38〜60A/dm2)し、処理時間を短く(例えば0.1〜1.5秒)することで調整することができる。
【0091】
例えば、上述の表面粗さを制御するための粗化処理としての銅−コバルト−ニッケル合金めっきは、電解めっきにより、付着量が15〜40mg/dm2の銅−100〜3000μg/dm2のコバルト−100〜1500μg/dm2のニッケルであるような3元系合金層を形成するように実施することができる。
【0092】
このような3元系銅−コバルト−ニッケル合金めっきを形成するためのめっき浴及びめっき条件の一例は次の通りである:
めっき浴組成:Cu10〜20g/L、Co1〜10g/L、Ni1〜10g/L
pH:1〜4
温度:30〜50℃
電流密度Dk:38〜55A/dm2
めっき時間:0.3〜1.5秒、より好ましくは0.3〜1.3秒
また、上述の表面粗さは、粗化処理でないNiを含む合金めっき層(例えばNi−W合金メッキ、Ni−Co−P合金メッキ、Ni−Zn合金めっき)を設ける場合には、めっき液中のNiの濃度をその他の元素の濃度の2倍以上とし、電流密度を0.1〜2A/dm2と従来よりも低くし、めっき時間を20秒以上と長く(例えば20秒〜40秒)することで調整することができる。
【0093】
また、キャリア付銅箔は、粗化処理層上に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層およびシランカップリング処理層からなる群から選択された層を一つ以上備えてもよい。
また、前記粗化処理層上に、耐熱層、防錆層を備えてもよく、前記耐熱層、防錆層上にクロメート処理層を備えてもよく、前記クロメート処理層上にシランカップリング処理層を備えてもよい。
また、前記キャリア付銅箔は前記極薄銅層上、あるいは前記粗化処理層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいはクロメート処理層、あるいはシランカップリング処理層の上に樹脂層を備えても良い。前記樹脂層は絶縁樹脂層であってもよい。
また、キャリア付銅箔は、キャリア上に粗化処理層を備えてもよく、キャリア上に粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層およびシランカップリング処理層からなる群から選択された層を一つ以上備えてもよい。前記粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層およびシランカップリング処理層は、公知の方法を用いて設けてもよく、本願明細書、特許請求の範囲、図面に記載の方法により設けてもよい。キャリアに前記粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層、シランカップリング処理層から選択された層を一つ以上設けることは、前記粗化処理層等を有する表面側から、キャリアを樹脂基板等の支持体に積層する場合に、キャリアと支持体が剥離しにくくなるという利点を有する。
【0094】
前記樹脂層は接着剤であってもよく、接着用の半硬化状態(Bステージ状態)の絶縁樹脂層であってもよい。半硬化状態(Bステージ状態)とは、その表面に指で触れても粘着感はなく、該絶縁樹脂層を重ね合わせて保管することができ、更に加熱処理を受けると硬化反応が起こる状態のことを含む。
【0095】
また前記樹脂層は熱硬化性樹脂を含んでもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。また、前記樹脂層は熱可塑性樹脂を含んでもよい。前記樹脂層は公知の樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等を含んでよい。また、前記樹脂層は例えば国際公開番号WO2008/004399号、国際公開番号WO2008/053878、国際公開番号WO2009/084533、特開平11−5828号、特開平11−140281号、特許第3184485号、国際公開番号WO97/02728、特許第3676375号、特開2000−43188号、特許第3612594号、特開2002−179772号、特開2002−359444号、特開2003−304068号、特許第3992225、特開2003−249739号、特許第4136509号、特開2004−82687号、特許第4025177号、特開2004−349654号、特許第4286060号、特開2005−262506号、特許第4570070号、特開2005−53218号、特許第3949676号、特許第4178415号、国際公開番号WO2004/005588、特開2006−257153号、特開2007−326923号、特開2008−111169号、特許第5024930号、国際公開番号WO2006/028207、特許第4828427号、特開2009−67029号、国際公開番号WO2006/134868、特許第5046927号、特開2009−173017号、国際公開番号WO2007/105635、特許第5180815号、国際公開番号WO2008/114858、国際公開番号WO2009/008471、特開2011−14727号、国際公開番号WO2009/001850、国際公開番号WO2009/145179、国際公開番号WO2011/068157、特開2013−19056号に記載されている物質(樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等)および/または樹脂層の形成方法、形成装置を用いて形成してもよい。
【0096】
また、前記樹脂層は、その種類は格別限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、多官能性シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、ポリマレイミド化合物、マレイミド系樹脂、芳香族マレイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテルスルホン(ポリエーテルサルホン、ポリエーテルサルフォンともいう)、ポリエーテルスルホン(ポリエーテルサルホン、ポリエーテルサルフォンともいう)樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂ポリマー、ゴム性樹脂、ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミドイミド樹脂、ゴム変成エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、カルボキシル基変性アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、熱硬化性ポリフェニレンオキサイド樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボン酸の無水物、多価カルボン酸の無水物、架橋可能な官能基を有する線状ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、リン含有フェノール化合物、ナフテン酸マンガン、2,2−ビス(4−グリシジルフェニル)プロパン、ポリフェニレンエーテル−シアネート系樹脂、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂、シアノエステル樹脂、フォスファゼン系樹脂、ゴム変成ポリアミドイミド樹脂、イソプレン、水素添加型ポリブタジエン、ポリビニルブチラール、フェノキシ、高分子エポキシ、芳香族ポリアミド、フッ素樹脂、ビスフェノール、ブロック共重合ポリイミド樹脂およびシアノエステル樹脂の群から選択される一種以上を含む樹脂を好適なものとして挙げることができる。
【0097】
また前記エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであって、電気・電子材料用途に用いることのできるものであれば、特に問題なく使用できる。また、前記エポキシ樹脂は分子内に2個以上のグリシジル基を有する化合物を用いてエポキシ化したエポキシ樹脂が好ましい。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ブロム化(臭素化)エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ゴム変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N-ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミン化合物、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル化合物、リン含有エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、の群から選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることができ、又は前記エポキシ樹脂の水素添加体やハロゲン化体を用いることができる。
前記リン含有エポキシ樹脂として公知のリンを含有するエポキシ樹脂を用いることができる。また、前記リン含有エポキシ樹脂は例えば、分子内に2以上のエポキシ基を備える9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドからの誘導体として得られるエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0098】
(樹脂層が誘電体(誘電体フィラー)を含む場合)
前記樹脂層は誘電体(誘電体フィラー)を含んでもよい。
上記いずれかの樹脂層または樹脂組成物に誘電体(誘電体フィラー)を含ませる場合には、キャパシタ層を形成する用途に用い、キャパシタ回路の電気容量を増大させることができるのである。この誘電体(誘電体フィラー)には、BaTiO3、SrTiO3、Pb(Zr−Ti)O3(通称PZT)、PbLaTiO3・PbLaZrO(通称PLZT)、SrBi2Ta29(通称SBT)等のペブロスカイト構造を持つ複合酸化物の誘電体粉を用いる。
【0099】
誘電体(誘電体フィラー)は粉状であってもよい。誘電体(誘電体フィラー)が粉状である場合、この誘電体(誘電体フィラー)の粉体特性は、粒径が0.01μm〜3.0μm、好ましくは0.02μm〜2.0μmの範囲のものであることが好ましい。なお、誘電体を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真撮影し、当該写真上の誘電体の粒子の上に直線を引いた場合に、誘電体の粒子を横切る直線の長さが最も長い部分の誘電体の粒子の長さをその誘電体の粒子の径とする。そして、測定視野における誘電体の粒子の径の平均値を、誘電体の粒径とする。
【0100】
前述の樹脂層に含まれる樹脂および/または樹脂組成物および/または化合物を例えばメチルエチルケトン(MEK)、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、トルエン、メタノール、エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの溶剤に溶解して樹脂液(樹脂ワニス)とし、これを前記キャリア付銅箔の極薄銅層側の表面に、例えばロールコータ法などによって塗布し、ついで必要に応じて加熱乾燥して溶剤を除去しBステージ状態にする。乾燥には例えば熱風乾燥炉を用いればよく、乾燥温度は100〜250℃、好ましくは130〜200℃であればよい。前記樹脂層の組成物を、溶剤を用いて溶解し、樹脂固形分3wt%〜70wt%、好ましくは、3wt%〜60wt%、好ましくは10wt%〜40wt%、より好ましくは25wt%〜40wt%の樹脂液としてもよい。なお、メチルエチルケトンとシクロペンタノンとの混合溶剤を用いて溶解することが、環境的な見地より現段階では最も好ましい。なお、溶剤には沸点が50℃〜200℃の範囲である溶剤を用いることが好ましい。
また、前記樹脂層はMIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して測定したときのレジンフローが5%〜35%の範囲にある半硬化樹脂膜であることが好ましい。
本件明細書において、レジンフローとは、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して、樹脂厚さを55μmとした樹脂付表面処理銅箔から10cm角試料を4枚サンプリングし、この4枚の試料を重ねた状態(積層体)でプレス温度171℃、プレス圧14kgf/cm2、プレス時間10分の条件で張り合わせ、そのときの樹脂流出重量を測定した結果から数1に基づいて算出した値である。
【0101】
【数1】
【0102】
前記樹脂層を備えた表面処理銅箔(樹脂付き表面処理銅箔)は、その樹脂層を基材に重ね合わせたのち全体を熱圧着して該樹脂層を熱硬化せしめ、ついで表面処理銅箔がキャリア付銅箔の極薄銅層である場合にはキャリアを剥離して極薄銅層を表出せしめ(当然に表出するのは該極薄銅層の中間層側の表面である)、表面処理銅箔の粗化処理されている側とは反対側の表面から所定の配線パターンを形成するという態様で使用される。
【0103】
この樹脂付き表面処理銅箔を使用すると、多層プリント配線基板の製造時におけるプリプレグ材の使用枚数を減らすことができる。しかも、樹脂層の厚みを層間絶縁が確保できるような厚みにしたり、プリプレグ材を全く使用していなくても銅張積層板を製造することができる。またこのとき、基材の表面に絶縁樹脂をアンダーコートして表面の平滑性を更に改善することもできる。
【0104】
なお、プリプレグ材を使用しない場合には、プリプレグ材の材料コストが節約され、また積層工程も簡略になるので経済的に有利となり、しかも、プリプレグ材の厚み分だけ製造される多層プリント配線基板の厚みは薄くなり、1層の厚みが100μm以下である極薄の多層プリント配線基板を製造することができるという利点がある。
この樹脂層の厚みは0.1〜120μmであることが好ましい。
【0105】
樹脂層の厚みが0.1μmより薄くなると、接着力が低下し、プリプレグ材を介在させることなくこの樹脂付き表面処理銅箔を内層材を備えた基材に積層したときに、内層材の回路との間の層間絶縁を確保することが困難になる場合がある。一方、樹脂層の厚みを120μmより厚くすると、1回の塗布工程で目的厚みの樹脂層を形成することが困難となり、余分な材料費と工数がかかるため経済的に不利となる場合がある。
なお、樹脂層を有する表面処理銅箔が極薄の多層プリント配線板を製造することに用いられる場合には、前記樹脂層の厚みを0.1μm〜5μm、より好ましくは0.5μm〜5μm、より好ましくは1μm〜5μmとすることが、多層プリント配線板の厚みを小さくするために好ましい。
【0106】
更に、プリント配線板に電子部品類を搭載することで、プリント回路板が完成する。本発明において、「プリント配線板」にはこのように電子部品類が搭載されたプリント配線板およびプリント回路板およびプリント基板も含まれることとする。
また、当該プリント配線板を用いて電子機器を作製してもよく、当該電子部品類が搭載されたプリント回路板を用いて電子機器を作製してもよく、当該電子部品類が搭載されたプリント基板を用いて電子機器を作製してもよい。以下に、本発明に係るキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造工程の例を幾つか示す。
【0107】
本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板を極薄銅層側が絶縁基板と対向するように積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、その後、セミアディティブ法、モディファイドセミアディティブ法、パートリーアディティブ法及びサブトラクティブ法の何れかの方法によって、回路を形成する工程を含む。絶縁基板は内層回路入りのものとすることも可能である。
【0108】
本発明において、セミアディティブ法とは、絶縁基板又は銅箔シード層上に薄い無電解めっきを行い、パターンを形成後、電気めっき及びエッチングを用いて導体パターンを形成する方法を指す。
【0109】
従って、セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0110】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と、前記絶縁樹脂基板とにスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチング等により除去することにより露出した前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0111】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と、前記絶縁樹脂基板とにスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記極薄銅層をエッチング等により除去することにより露出した前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0112】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂の表面について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0113】
本発明において、モディファイドセミアディティブ法とは、絶縁層上に金属箔を積層し、めっきレジストにより非回路形成部を保護し、電解めっきにより回路形成部の銅厚付けを行った後、レジストを除去し、前記回路形成部以外の金属箔を(フラッシュ)エッチングで除去することにより、絶縁層上に回路を形成する方法を指す。
【0114】
従って、モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストを設けた後に、電解めっきにより回路を形成する工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストを除去することにより露出した極薄銅層をフラッシュエッチングにより除去する工程、
を含む。
【0115】
モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0116】
本発明において、パートリーアディティブ法とは、導体層を設けてなる基板、必要に応じてスルーホールやバイアホール用の孔を穿けてなる基板上に触媒核を付与し、エッチングして導体回路を形成し、必要に応じてソルダレジストまたはメッキレジストを設けた後に、前記導体回路上、スルーホールやバイアホールなどに無電解めっき処理(必要に応じて更に電解めっき処理)によって厚付けを行うことにより、プリント配線板を製造する方法を指す。
【0117】
従って、パートリーアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について触媒核を付与する工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して露出した前記絶縁基板表面に、ソルダレジストまたはメッキレジストを設ける工程、
前記ソルダレジストまたはメッキレジストが設けられていない領域に無電解めっき層を設ける工程、
を含む。
【0118】
本発明において、サブトラクティブ法とは、銅張積層板上の銅箔の不要部分を、エッチングなどによって、選択的に除去して、導体パターンを形成する方法を指す。
【0119】
従って、サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面に、電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層および前記電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0120】
サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面にマスクを形成する工程、
マスクが形成されいない前記無電解めっき層の表面に電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0121】
スルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、及びその後のデスミア工程は行わなくてもよい。
【0122】
ここで、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例を図面を用いて詳細に説明する。なお、ここでは粗化処理層が形成された極薄銅層を有するキャリア付銅箔を例に説明するが、これに限られず、粗化処理層が形成されていない極薄銅層を有するキャリア付銅箔を用いても同様に下記のプリント配線板の製造方法を行うことができる。
まず、図1−Aに示すように、表面に粗化処理層が形成された極薄銅層を有するキャリア付銅箔(1層目)を準備する。
次に、図1−Bに示すように、極薄銅層の粗化処理層上にレジストを塗布し、露光・現像を行い、レジストを所定の形状にエッチングする。
次に、図1−Cに示すように、回路用のめっきを形成した後、レジストを除去することで、所定の形状の回路めっきを形成する。
次に、図2−Dに示すように、回路めっきを覆うように(回路めっきが埋没するように)極薄銅層上に埋め込み樹脂を設けて樹脂層を積層し、続いて別のキャリア付銅箔(2層目)を極薄銅層側から接着させる。
次に、図2−Eに示すように、2層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、図2−Fに示すように、樹脂層の所定位置にレーザー穴あけを行い、回路めっきを露出させてブラインドビアを形成する。
次に、図3−Gに示すように、ブラインドビアに銅を埋め込みビアフィルを形成する。
次に、図3−Hに示すように、ビアフィル上に、上記図1−B及び図1−Cのようにして回路めっきを形成する。
次に、図3−Iに示すように、1層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、図4−Jに示すように、フラッシュエッチングにより両表面の極薄銅層を除去し、樹脂層内の回路めっきの表面を露出させる。
次に、図4−Kに示すように、樹脂層内の回路めっき上にバンプを形成し、当該はんだ上に銅ピラーを形成する。このようにして本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板を作製する。
【0123】
上記別のキャリア付銅箔(2層目)は、本発明のキャリア付銅箔を用いてもよく、従来のキャリア付銅箔を用いてもよく、さらに通常の銅箔を用いてもよい。また、図3−Hに示される2層目の回路上に、さらに回路を1層或いは複数層形成してもよく、それらの回路形成をセミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって行ってもよい。
【0124】
また、前記1層目に用いられるキャリア付銅箔は、当該キャリア付銅箔のキャリア側表面に基板を有してもよい。当該基板を有することで1層目に用いられるキャリア付銅箔は支持され、しわが入りにくくなるため、生産性が向上するという利点がある。なお、前記基板には、前記1層目に用いられるキャリア付銅箔を支持する効果するものであれば、全ての基板を用いることが出来る。例えば前記基板として本願明細書に記載のキャリア、プリプレグ、樹脂層や公知のキャリア、プリプレグ、樹脂層、金属板、金属箔、無機化合物の板、無機化合物の箔、有機化合物の板、有機化合物の箔を用いることができる。
【0125】
キャリア側表面に基板を形成するタイミングについては特に制限はないが、キャリアを剥離する前に形成することが必要である。特に、前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に樹脂層を形成する工程の前に形成することが好ましく、キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に回路を形成する工程の前に形成することがより好ましい。
【0126】
本発明に係るキャリア付銅箔は、極薄銅層の表面粗さが制御されているため、エッチング性が良好であり、上述のようなプリント配線板の例えば図1−Cに示すような製造工程において、ファインピッチングの回路めっきを精度良く形成することが可能となる。また、上述のようなプリント配線板の製造方法によれば、回路めっきが樹脂層に埋め込まれた構成となっているため、例えば図4−Jに示すようなフラッシュエッチングによる極薄銅層の除去の際に、回路めっきが樹脂層によって保護され、その形状が保たれ、これにより微細回路の形成が容易となる。また、回路めっきが樹脂層によって保護されるため、耐マイグレーション性が向上し、回路の配線の導通が良好に抑制される。このため、微細回路の形成が容易となる。また、図4−J及び図4−Kに示すようにフラッシュエッチングによって極薄銅層を除去したとき、回路めっきの露出面が樹脂層から凹んだ形状となるため、当該回路めっき上にバンプが、さらにその上に銅ピラーがそれぞれ形成しやすくなり、製造効率が向上する。
なお、埋め込み樹脂(レジン)には公知の樹脂、プリプレグを用いることができる。例えば、BT(ビスマレイミドトリアジン)レジンやBTレジンを含浸させたガラス布であるプリプレグ、味の素ファインテクノ株式会社製ABFフィルムやABFを用いることができる。また、前記埋め込み樹脂は熱硬化性樹脂を含んでもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。また、前記埋め込み樹脂は熱可塑性樹脂を含んでもよい。前記埋め込み樹脂の種類は格別限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、多官能性シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ブロック共重合ポリイミド樹脂、ブロック共重合ポリイミド樹脂などを含む樹脂や、紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、フッ素樹脂フィルムなどを好適なものとしてあげることができる。
【0127】
<剥離強度(N/m)>
本発明のキャリア付銅箔は、極薄銅層側を絶縁基板に、(1)常温常圧状態(常態)および/又は、(2)大気中、圧力:20kgf/cm2にて220℃×2時間の加熱を行うことで熱圧着させて貼り付けた後に、および/又は、(3)大気中、圧力:20kgf/cm2にて220℃×2時間の加熱を行うことで熱圧着させて貼り付けた後に窒素雰囲気中、常圧下(すなわち圧力を加えない状態、大気圧下)で180℃×1時間の加熱を2回行った後に、引張試験機にてキャリア側を引っ張り、JIS C 6471に準拠して極薄銅層を剥がしたときの各剥離強度は、好ましくは2〜100N/mである。当該剥離強度が2N/m未満であると、プリント配線板の製造中に極薄銅層がキャリアから剥離するおそれがあり、100N/m超であると剥離の際に余計な力がかかってしまい、例えば、上述の埋め込み工法(エンベッティド法(Enbedded Process))において、埋め込み樹脂と極薄銅層との界面で剥がれてしまうおそれがある。当該剥離強度は、より好ましくは2〜50N/mであり、更により好ましくは2〜20N/mである。
【実施例】
【0128】
以下、実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例のみに制限されるものではない。
【0129】
1.キャリア付銅箔の製造
キャリアとして、表1、3、5に記載の厚さを有する長尺の電解銅箔又は圧延銅箔を用意した。
電解銅箔は、表1、3、5に記載の条件にて製造した、或いは、JX日鉱日石金属社製JTC箔を用いた。
圧延銅箔は以下のように製造した。所定の銅インゴットを製造し、熱間圧延を行った後、300〜800℃の連続焼鈍ラインの焼鈍と冷間圧延を繰り返して1〜2mm厚の圧延板を得た。この圧延板を300〜800℃の連続焼鈍ラインで焼鈍して再結晶させ、表1、3、5の厚みまで最終冷間圧延し、銅箔を得た。表1、3、5に、このときの圧延条件(高光沢圧延又は通常圧延、油膜当量)を示す。「高光沢圧延」及び「通常圧延」は、それぞれ、最終の冷間圧延(最終の再結晶焼鈍後の冷間圧延)を表1、3、5に記載の油膜当量の値で行ったことを意味する。表1、3、5の「タフピッチ銅」はJIS H3100 C1100に規格されているタフピッチ銅を示す。表1、3、5の「無酸素銅」はJIS H3100 C1020に規格されている無酸素銅を示す。表1、3、5に記載の添加元素の「ppm」は、質量ppmを示す。また、例えば表1、3、5のキャリアの種類欄の「タフピッチ銅+Ag180ppm」はタフピッチ銅にAgを180質量ppmを添加したことを意味する。
この銅箔の光沢面(シャイニー面)に対して、以下の条件でロール・トウ・ロール型の連続めっきラインで電気めっきすることにより中間層を形成した。
【0130】
「Ni」:ニッケルめっき
(液組成)硫酸ニッケル:270〜280g/L、塩化ニッケル:35〜45g/L、酢酸ニッケル:10〜20g/L、ホウ酸:15〜25g/L、光沢剤:サッカリン、ブチンジオール:5〜15ppm、ドデシル硫酸ナトリウム:55〜75ppm
(pH)4〜6
(液温)55〜65℃
(電流密度)1〜11A/dm2
(通電時間)1〜20秒
【0131】
・「Ni−Zn」:ニッケル亜鉛合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中に硫酸亜鉛(ZnSO4)の形態の亜鉛を添加し、亜鉛濃度:0.05〜5g/Lの範囲で調整してニッケル亜鉛合金めっきを形成した。
【0132】
・「Cr」:クロムめっき
(液組成)CrO3:200〜400g/L、H2SO4:1.5〜4g/L
(pH)1〜4
(液温)45〜60℃
(電流密度)10〜40A/dm2
(通電時間)1〜20秒
【0133】
・「クロメート」:電解純クロメート処理
(液組成)重クロム酸カリウム:1〜10g/L、亜鉛:0g/L
(pH)7〜10
(液温)40〜60℃
(電流密度)0.1〜2.6A/dm2
(クーロン量)0.5〜90As/dm2
(通電時間)1〜30秒
【0134】
・「Zn−クロメート」:亜鉛クロメート処理
上記電解純クロメート処理条件において、液中に硫酸亜鉛(ZnSO4)の形態の亜鉛を添加し、亜鉛濃度:0.05〜5g/Lの範囲で調整して亜鉛クロメート処理を行った。
【0135】
・「Ni−Mo」:ニッケルモリブデン合金めっき
(液組成)硫酸Ni六水和物:50g/dm3、モリブデン酸ナトリウム二水和物:60g/dm3、クエン酸ナトリウム:90g/dm3
(液温)30℃
(電流密度)1〜4A/dm2
(通電時間)3〜25秒
【0136】
・「有機」:有機物層形成処理
濃度1〜30g/Lのカルボキシベンゾトリアゾール(CBTA)を含む、液温40℃、pH5の水溶液を、20〜120秒間シャワーリングして噴霧することにより行った。
【0137】
・「Co−Mo」:コバルトモリブデン合金めっき
(液組成)硫酸Co:50g/dm3、モリブデン酸ナトリウム二水和物:60g/dm3、クエン酸ナトリウム:90g/dm3
(液温)30℃
(電流密度)1〜4A/dm2
(通電時間)3〜25秒
【0138】
・「Ni−P」:ニッケルリン合金めっき
(液組成)Ni:30〜70g/L、P:0.2〜1.2g/L
(pH)1.5〜2.5
(液温)30〜40℃
(電流密度)1.0〜10.0A/dm2
(通電時間)0.5〜30秒
【0139】
引き続き、ロール・トウ・ロール型の連続めっきライン上で、中間層の上に表1、3、5に記載の厚みの極薄銅層を表1、3、5に示す条件で電気めっきすることにより形成して、キャリア付銅箔を製造した。
【0140】
前述の極薄銅層の表面に、表2、4、6に示す表面処理条件(表面処理1〜3)にて表面処理を行った。ここで、表面処理方式について、ドラムによる運箔方式を用いた電解めっき工程の模式図を図5に示す。また、九十九折による運箔方式を用いた電解めっき工程の模式図を図6に示す。また、表面処理方式について「ドラム」と記載されている実施例及び比較例は、表面処理1〜3についてそれぞれ全て「ドラム」によって処理を行った。同様に、「九十九折」と記載されている実施例及び比較例は、表面処理1〜3についてそれぞれ全て「九十九折」によって処理を行った。
また、実施例3、5、7、10〜18のキャリア付き銅箔については表面処理層の上に、以下の耐熱処理、クロメート処理、シランカップリング処理を行った。
また、実施例20については、耐熱処理のみ行った。実施例24についてはシランカップリング処理のみ行った。実施例1、26についてはクロメート処理ならびにシランカップリング処理をこの順で行った。
【0141】
・耐熱処理(耐熱層を形成)
液組成 :ニッケル5〜20g/L、コバルト1〜8g/L
pH :2〜3
液温 :40〜60℃
電流密度 :5〜20A/dm2
クーロン量:10〜20As/dm2
【0142】
・クロメート処理(クロメート処理層を形成)
液組成 :重クロム酸カリウム1〜10g/L、亜鉛0〜5g/L
pH :3〜4
液温 :50〜60℃
電流密度 :0〜2A/dm2(浸漬クロメート処理のため)
クーロン量:0〜2As/dm2(浸漬クロメート処理のため)
【0143】
・シランカップリング処理(シランカップリング処理層を形成)
0.2〜2質量%のアルコキシシランを含有するpH7〜8、60℃の水溶液を噴霧することで、でシランカップリング剤塗布処理を行った。
なお、上記表面処理のめっき浴を表7に、極薄銅層形成のめっき浴を表8に示す。
【0144】
2.キャリア付銅箔の評価
上述のようにして作製した実施例及び比較例の各サンプルについて、各種評価を下記の通り行った。
【0145】
・中間層の金属付着量;
ニッケル付着量はサンプルを濃度20質量%の硝酸で溶解してSII社製のICP発光分光分析装置(型式:SPS3100)を用いてICP発光分析によって測定し、亜鉛及びクロム付着量はサンプルを温度が100℃である濃度7質量%の塩酸にて溶解して、VARIAN社製の原子吸光分光光度計(型式:AA240FS)を用いて原子吸光法により定量分析を行うことで測定し、モリブデン付着量はサンプルを硝酸と塩酸の混合液(硝酸濃度:20質量%、塩酸濃度:12質量%)にて溶解して、VARIAN社製の原子吸光分光光度計(型式:AA240FS)を用いて原子吸光法により定量分析を行うことで測定した。なお、前記ニッケル、亜鉛、クロム、モリブデン付着量の測定は以下のようにして行った。まず、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥離した後、極薄銅層の中間層側の表面付近のみを溶解して(極薄銅層の厚みが1.4μm以上である場合には極薄銅層の中間層側の表面から0.5μm厚みのみ溶解する、極薄銅層の厚みが1.4μm未満の場合には極薄銅層の中間層側の表面から極薄銅層厚みの20%のみ溶解する。)、極薄銅層の中間層側の表面の付着量を測定する。また、極薄銅層を剥離した後に、キャリアの中間層側の表面付近のみを溶解して(表面から0.5μm厚みのみ溶解する)、キャリアの中間層側の表面の付着量を測定する。そして、極薄銅層の中間層側の表面の付着量とキャリアの中間層側の表面の付着量とを合計した値を、中間層の金属付着量とした。
なお、サンプルが上記濃度20質量%の硝酸または上記濃度7質量%の塩酸に溶解しにくい場合には、硝酸と塩酸の混合液(硝酸濃度:20質量%、塩酸濃度:12質量%)にてサンプルを溶解した後に、上述の方法によって、ニッケル、亜鉛、クロムの付着量を測定することができる。
なお、「金属付着量」とは、サンプル単位面積(1dm2)当たりの当該金属付着量(質量)のことを言う。
【0146】
・中間層の有機物厚み
キャリア付銅箔の極薄銅層をキャリアから剥離した後に、露出した極薄銅層の中間層側の表面と、露出したキャリアの中間層側の表面をXPS測定し、デプスプロファイルを作成した。そして、極薄銅層の中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをA(nm)とし、キャリアの中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをB(nm)とし、AとBとの合計を中間層の有機物の厚み(nm)とした。
なお、深さ方向(x:単位nm)の金属の原子濃度の測定間隔は0.18〜0.30nm(SiO2換算)とするとよい。本実施例においては、深さ方向の金属の原子濃度を0.28nm(SiO2換算)間隔で測定した(スパッタリング時間で、0.1分おきに測定した)。
なお、上記XPS測定による炭素濃度のデプスプロファイルは、露出した極薄銅層の中間層側の表面および露出したキャリアの中間層側の表面について、それぞれ、各サンプルシートの長辺方向において、両端から50mm以内の領域内の各1箇所、中央部の50mm×50mmの領域内の1箇所の合計3箇所、すなわち、露出した極薄銅層の中間層側の表面および露出したキャリアの中間層側の表面において合計6箇所について作成した。当該露出した極薄銅層の中間層側の表面3箇所、露出したキャリアの中間層側の表面の3箇所の測定箇所を図8に示す。続いて、露出した極薄銅層の中間層側の表面および露出したキャリアの中間層側のそれぞれの3箇所の領域について作成されたデプスプロファイルから、それぞれ上述の極薄銅層の中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さA(nm)、及び、キャリアの中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さB(nm)を算出し、A(nm)の算術平均値とB(nm)の算術平均値との合計を中間層の有機物の厚み(nm)とした。
なお、サンプルの大きさが小さい場合には、上述の両端から50mm以内の領域ならびに中央部の50mm×50mmの領域は重なってもよい。
XPSの稼働条件を以下に示す。
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・到達真空度:3.8×10-7Pa
・X線:単色AlKαまたは非単色MgKα、エックス線出力300W、検出面積800μmφ、試料と検出器のなす角度45°
・イオン線:イオン種Ar+、加速電圧3kV、掃引面積3mm×3mm、スパッタリングレート2.8nm/min(SiO2換算)
なお、XPSとはX線光電子分光法のことを意味する。本発明においては、アルバックファイ社のXPS測定装置(型式5600MC又は、アルバックファイ社が製造販売する同等の測定装置)を用いることを前提とするが、こうした測定装置が入手できないような場合には、深さ方向の各元素濃度の測定間隔を0.10〜0.30nm(SiO2換算)とし、スパッタリングレートを1.0〜3.0nm/min(SiO2換算)とすれば、その他のXPS測定装置を用いてもよい。
【0147】
・極薄銅層表面のNi付着量;
キャリア付銅箔を極薄銅層側をBT樹脂(トリアジン−ビスマレイミド系樹脂、三菱瓦斯化学株式会社製)に貼り付けて220℃で2時間加熱圧着した。その後、JIS C 6471(方法A)に準拠して極薄銅層を銅箔キャリアから剥がした。続いて、極薄銅層の中間層側の表面のNiの付着量を、サンプルを濃度20質量%の硝酸で溶解してSII社製のICP発光分光分析装置(型式:SPS3100)を用いてICP発光分析することで測定した。なお、極薄銅層の中間層側の表面とは反対側の表面にNiを含む表面処理がされている場合には、極薄銅層の中間層側の表面付近のみを溶解する(極薄銅層の厚みが1.4μm以上である場合には極薄銅層の中間層側の表面から0.5μm厚みのみ溶解する、極薄銅層の厚みが1.4μm未満の場合には極薄銅層の中間層側の表面から極薄銅層厚みの20%のみ溶解する。)ことで、極薄銅層の中間層側の表面のNiの付着量を測定することができる。
【0148】
・エッチング性;
作製したキャリア付銅箔と基材(三菱ガス化製:GHPL-832NX-A、0.05mm x 4枚)とを積層して220℃で2時間加熱圧着した後、銅箔キャリアを引き剥がし、極薄銅層を露出させてサンプルサイズ250×250mm2とした。硫酸−過酸化水溶液(三菱瓦斯化製SE07)にて極薄銅層に対して各厚みエッチングできる量を調整し、全面エッチングを小型エッチングマシーン(二宮システム製 小型ハーフエッチング装置 No.K-07003)により実施した。そして、全面に樹脂が露出するまでに必要であったエッチングの回数でキャリア付き銅箔のエッチング性を評価した。このときのエッチング条件を以下に示す。
(エッチング条件)
・エッチング液として、硫酸−過酸化水溶液:三菱ガス化学製SE−07を20vol%(原液を水で5倍希釈、銅濃度18g/L)を用いた。
・エッチング液の温度を35±2℃に管理した。
・スプレー圧力:0.1MPa(スプレーは、エッチング対象の銅層に対して垂直にエチング液が当たるように行った。)
・エッチング速度(エッチング相当量):0.3μm/回(エッチングマシーン1パス当たり30秒)
上記硫酸−過酸化水溶液:三菱ガス化学製SE−07にて極薄銅層に対して各厚みエッチングできる量については、あらかじめ、JX日鉱日石金属社製 電解銅箔JTC(厚み35μm)の全面をエッチングしたときの電解銅箔JTCの重量法で測定したエッチング量(銅層厚みの減少量)と、そのときのエッチング時間との関係を図7に示すようなグラフにして求めておき、実施例及び比較例で実際にかかったエッチング時間によって、エッチング量(銅層厚みの減少量)を推算して求めた。
エッチング量(銅層厚みの減少量)の測定方法は以下の式で求めた。
エッチング量(銅層厚みの減少量)(μm)=(エッチング前の重量(g))−(エッチング後の重量(g))/(エッチング面積(μm2)×銅の密度(g/μm3))
銅の密度=8.96g/cm3=8.96×10-12g/μm3とした。
具体的には、エッチングで除去した極薄銅層の相当厚みB=エッチング時間(秒)×係数α(=0.0336)との関係を得て、これによってエッチング時間からエッチングで除去した極薄銅層の相当厚みBを求めた。すなわち、例えばエッチングで除去した極薄銅層の相当厚みB=5μmとは、5μm÷係数α(=0.0336)=148.8秒間エッチングをした場合のことを意味する。
このようにして、エッチング回数、当該エッチング回数の平均、エッチング回数の最大値−最小値を測定した。極薄銅層の厚みに対するエッチング回数の判定基準、及び、エッチング回数のバラツキの判定基準を表10に示す。
【0149】
・表面粗さの評価;
(1)極薄銅層の表面粗さRz
極薄銅層の表面粗さRz(触針)(十点平均粗さ)を、JIS B0601−1982に準拠して、株式会社小阪研究所製接触粗さ計Surfcorder SE−3C触針式粗度計を用いて測定した。Rz(触針)を任意に10箇所測定し、そのRz(触針)の平均値をRz(触針)の値とした。また、Rz(触針)について10箇所の値の標準偏差を算出した。
(2)中間層形成側表面の、キャリアの表面粗さ
中間層形成側表面の、キャリアのTD方向における表面粗さRz(触針)を、JIS B0601−1982に準拠して、株式会社小阪研究所製接触粗さ計Surfcorder SE−3C触針式粗度計を用いて測定した。Rz(触針)を任意に10箇所測定し、そのRz(触針)の平均値をRz(触針)の値とした。
【0150】
・極薄銅層と埋め込み樹脂との密着性;
キャリア付銅箔の極薄銅層の粗化処理層上にレジストを塗布し、露光・現像を行い、レジストをライン状にエッチングした。次に、回路用のCuめっきを形成した後、レジストを除去することで、ライン状の回路めっきを形成した。次に、回路めっきが埋没するように極薄銅層上に埋め込み樹脂(三菱ガス化学製 BTレジン(ビスマレイミド トリアジン樹脂))を設けて樹脂層を積層した。続いて、キャリアを極薄銅層との界面で剥がすことを試み、このときの、樹脂層と極薄銅層との界面で剥がれた回数を計測した。樹脂層と極薄銅層との界面で剥がれた回数が、10回中0回の場合には「◎◎」、10回中1回の場合には「◎」、10回中2〜3回の場合には「○」、10回中4〜5回の場合には「△」、10回中6回以上の場合には「×」とした。
【0151】
・中間層形成側表面のキャリアのTD方向の光沢度(%)
JIS Z8741に準拠した日本電色工業株式会社製光沢度計ハンディーグロスメーターPG−1を使用し、圧延銅箔については、圧延方向(圧延時の銅箔の進行方向、すなわち幅方向)に直角な方向(TD)の入射角60度で光沢度(%)を測定した。また、電解銅箔については、電解処理時の銅箔運搬方向に直角な方向(すなわち幅方向)(TD)の入射角60度でマット面について光沢度(%)を測定した。
【0152】
・剥離強度(N/m)
キャリア付銅箔を極薄銅層側をBT樹脂(トリアジン−ビスマレイミド系樹脂、三菱瓦斯化学株式会社製)に、大気中、圧力:20kgf/cm2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させて貼り付けた。続いて、引張試験機にてキャリア側を引っ張り、JIS C 6471に準拠して極薄銅層を剥がしたときの剥離強度を測定した。(表9の「220℃, 2hベーク後(N/m)」欄にその値を示す。)
また、上記220℃×2時間の加熱の後に、更に窒素雰囲気中で、圧力を加えずに(常圧下、すなわち大気圧下で)180℃×1時間の加熱を2回行った以外は同様の条件にて各試料の剥離強度を測定した。(表9の「180℃, 1h×2回ベーク後(N/m)」欄にその値を示す。)
さらに、上記樹脂との加熱圧着前(常温常圧状態、すなわち常態)の各試料についても、極薄銅層側から樹脂基板に粘着テープに貼り付けた後に、引張試験機にてキャリア側を引っ張り、JIS C 6471に準拠して極薄銅層を剥がしたときの剥離強度を測定しておいた。(表9の「常態(N/m)」欄にその値を示す。)
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
【表4】
【0157】
【表5】
【0158】
【表6】
【0159】
【表7】
【0160】
【表8】
【0161】
【表9】
【0162】
【表10】
【0163】
(評価結果)
実施例1〜21及び24〜35は、いずれもキャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して極薄銅層を剥がしたとき、極薄銅層の中間層側の表面のNiの付着量が400μg/dm2以下であり、且つ、極薄銅層の表面粗さRzが0.2μm以上1.5μm以下であり、表面粗さRzの標準偏差が0.6μm以下であり、少なくともエッチング性が良好であった。
比較例1〜9は、いずれもキャリア付銅箔を220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠して極薄銅層を剥がしたとき、極薄銅層の中間層側の表面のNiの付着量が400μg/dm2超であり、或いは、極薄銅層の表面粗さRzが0.2μm未満又は1.5μm超であり、或いは、表面粗さRzの標準偏差が0.6μm超であり、少なくともエッチング性が不良であった。

図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7