(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の油脂組成物は、下記(a)〜(d)の条件を満たすことを特徴とする。
(a)全トリアシルグリセロール中のC44〜C48トリアシルグリセロール含量が14質量%以上
(b)全トリアシルグリセロール中のSU2トリアシルグリセロール及びU3トリアシルグリセロールの合計含量が40質量%以下
(c)全トリアシルグリセロール中のM2Lトリアシルグリセロール及びML2トリアシルグリセロールの合計含量が40質量%以下
(d)全トリアシルグリセロール中のPPOトリアシルグリセロール含量が8.5質量%以下
【0013】
(条件(a))
本発明の油脂組成物において、全トリアシルグリセロール中のC44〜C48トリアシルグリセロール含量は、14質量%以上であり、好ましくは14〜60質量%であり、より好ましくは15〜55質量%であり、更に好ましくは15〜50質量%であり、最も好ましくは30〜50質量%である。全トリアシルグリセロール中のC44〜C48トリアシルグリセロール含量が上記範囲にあると、バタークリームの起泡性、口溶けが良好になる。
なお、本発明において、C44〜C48トリアシルグリセロールとは、トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸残基の総炭素数が44〜48であるトリアシルグリセロールを意味する。脂肪酸残基の総炭素数が44であるトリアシルグリセロールとしては、例えば、脂肪酸残基がラウリン酸(炭素数12)、パルミチン酸(炭素数16)、パルミチン酸(炭素数16)から構成されるトリアシルグリセロール等が挙げられる。また、脂肪酸残基の総炭素数が46であるトリアシルグリセロールとしては、例えば、脂肪酸残基がラウリン酸(炭素数12)、パルミチン酸(炭素数16)、オレイン酸(炭素数18)から構成されるトリアシルグリセロール等が挙げられる。また、脂肪酸残基の総炭素数が48であるトリアシルグリセロールとしては、例えば、脂肪酸残基がラウリン酸(炭素数12)、オレイン酸(炭素数18)、オレイン酸(炭素数18)から構成されるトリアシルグリセロール等が挙げられる。
以後、C44〜C48トリアシルグリセロールはC44〜C48TAGと記載することがある。また、以後、トリアシルグリセロールはTAGと記載することがある。
【0014】
(条件(b))
本発明の油脂組成物において、全トリアシルグリセロール中のSU2トリアシルグリセロール及びU3トリアシルグリセロールの合計含量は、40質量%以下であり、好ましくは5〜40質量%であり、より好ましくは5〜38質量%であり、更に好ましくは7〜38質量%であり、最も好ましくは10〜32質量%である。全トリアシルグリセロール中のSU2トリアシルグリセロール及びU3トリアシルグリセロールの合計含量が上記範囲にあると、バタークリームの起泡性、口溶けが良好になる。
なお、本発明において、Sは炭素数16〜18の飽和脂肪酸残基を意味し、Uは炭素数18の不飽和脂肪酸残基を意味する。よって、本発明において、SU2トリアシルグリセロールとは、トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸残基の1つが炭素数16〜18の飽和脂肪酸残基、構成する脂肪酸残基の2つが炭素数18の不飽和脂肪酸残基であるトリアシルグリセロールを意味する。以後、SU2トリアシルグリセロールはSU2と記載することがある。また、本発明において、U3トリアシルグリセロールとは、トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸残基の3つ全てが炭素数18の不飽和脂肪酸残基であるトリアシルグリセロールを意味する。以後、U3トリアシルグリセロールはU3と記載することがある。
【0015】
(条件(c))
本発明の油脂組成物において、全トリアシルグリセロール中のM2Lトリアシルグリセロール及びML2トリアシルグリセロールの合計含量は、40質量%以下であり、好ましくは5〜40質量%であり、より好ましくは5〜35質量%であり、更に好ましくは10〜30質量%であり、最も好ましくは12〜30質量%である。全トリアシルグリセロール中のM2Lトリアシルグリセロール及びML2トリアシルグリセロールの合計含量が上記範囲にあると、バタークリームの起泡性、口溶けが良好になる。
なお、本発明において、Mは炭素数14以下の飽和脂肪酸残基を意味し(Mは好ましくは炭素数8〜14の飽和脂肪酸残基である。)、Lは炭素数16以上の飽和脂肪酸残基を意味する(Lは好ましくは炭素数16〜20の飽和脂肪酸残基である。)。よって、本発明において、M2Lトリアシルグリセロールとは、トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸残基の2つが炭素数14以下の飽和脂肪酸残基、構成する脂肪酸残基の1つが炭素数16以上の飽和脂肪酸残基であるトリアシルグリセロールを意味する。以後、M2LトリアシルグリセロールはM2Lと記載することがある。また、本発明において、ML2トリアシルグリセロールとは、トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸残基の1つが炭素数14以下の飽和脂肪酸残基、構成する脂肪酸残基の2つが炭素数16以上の飽和脂肪酸残基であるトリアシルグリセロールを意味する。以後、ML2トリアシルグリセロールはML2と記載することがある。
【0016】
(条件(d))
本発明の油脂組成物において、全トリアシルグリセロール中のPPOトリアシルグリセロール含量は、8.5質量%以下であり、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは1〜8質量%であり、更に好ましくは2〜7.5質量%であり、最も好ましくは2〜6質量%である。全トリアシルグリセロール中のPPOトリアシルグリセロール含量が上記範囲にあると、バタークリームの起泡性、口溶けが良好になる。
なお、本発明において、Pはパルミチン酸残基を意味し、Oはオレイン酸残基を意味する。よって、本発明において、PPOトリアシルグリセロールとは、トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸残基の1,2位がパルミチン酸残基、3位がオレイン酸残基であるトリアシルグリセロール、又は、トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸残基の1位がオレイン酸残基、2,3位がパルミチン酸残基であるトリアシルグリセロールを意味する。以後、PPOトリアシルグリセロールはPPOと記載することがある。
【0017】
(P2Oトリアシルグリセロール含量)
本発明の油脂組成物において、全トリアシルグリセロール中のP2Oトリアシルグリセロール含量は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは3〜35質量%であり、更に好ましくは3〜20質量%であり、最も好ましくは4〜10質量%である。
なお、本発明において、P2Oトリアシルグリセロールとは、トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸残基の2つがパルミチン酸残基、構成する脂肪酸残基の1つがオレイン酸残基であるトリアシルグリセロールを意味する。以後、P2OトリアシルグリセロールはP2Oと記載することがある。
【0018】
(POP含量に対するPPO含量の比)
本発明の油脂組成物において、全トリアシルグリセロール中のPOPトリアシルグリセロール含量に対するPPOトリアシルグリセロール含量の比(PPOトリアシルグリセロール含量/POPトリアシルグリセロール含量)は、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.2〜3.0であり、更に好ましくは1.2〜2.5であり、最も好ましくは1.5〜2.3である。
なお、本発明において、POPトリアシルグリセロールとは、トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸残基の1,3位がパルミチン酸残基、2位がオレイン酸残基であるトリアシルグリセロールを意味する。以後、POPトリアシルグリセロールはPOPと記載することがある。
【0019】
(炭素数14以下の飽和脂肪酸)
本発明の油脂組成物は全構成脂肪酸中に炭素数14以下の飽和脂肪酸(好ましくは炭素数8〜14の飽和脂肪酸)を含有することが好ましい。本発明の油脂組成物において、全構成脂肪酸中の炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は、好ましくは3〜48質量%であり、より好ましくは5〜40質量%であり、更に好ましくは5〜35質量%であり、最も好ましくは15〜35質量%である。
(不飽和脂肪酸)
また、本発明の油脂組成物は全構成脂肪酸中に不飽和脂肪酸(好ましくは炭素数16〜20の不飽和脂肪酸)を含有することが好ましい。本発明の油脂組成物において、全構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸含量は、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは15〜65質量%であり、更に好ましくは25〜55質量%であり、最も好ましくは30〜53質量%である。
【0020】
(トランス脂肪酸)
本発明の油脂組成物は全構成脂肪酸中にトランス脂肪酸を実質的に含有しないことが好ましい。本発明の油脂組成物において、全構成脂肪酸中のトランス脂肪酸含量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは2質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以下である。本発明の油脂組成物はトランス脂肪酸を多量含む部分水素添加油を使用せずとも製造することが可能であるため、全構成脂肪酸中にトランス脂肪酸を実質的に含有しないものとすることができる。
【0021】
(油脂組成物の調製に使用する油脂)
本発明の油脂組成物の調製に使用する油脂は、前記(a)〜(d)の条件や前記脂肪酸含量を満たせば、特に制限されることなく、通常の食用油脂(大豆油、菜種油、高エルシン酸菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、ごま油、綿実油、米油、オリーブ油、落花生油、亜麻仁油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、乳脂)や、これらの油脂の混合油、これらの油脂又は混合油の加工油脂(エステル交換油、分別油、水素添加油等)等を用いることができる。本発明の油脂組成物の調製に使用する油脂の好ましい例としては、下記C44〜C48TAG含有油脂、下記油脂A、下記液状油、パーム分別油(パーム中融点、パームオレイン、パームスーパーオレイン等)、パーム分別油のエステル交換油(パームオレインのエステル交換油等)等が挙げられる。
【0022】
(C44〜C48TAG含有油脂)
本発明の油脂組成物は、油相中にC44〜C48TAG含有油脂が配合されていることが好ましい。本発明においてC44〜C48TAG含有油脂とは、全トリアシルグリセロール中のC44〜C48TAGの合計含量が30〜60質量%、M2Lトリアシルグリセロール及びML2トリアシルグリセロールの合計含量が40質量%以下である油脂のことである。C44〜C48TAG含有油脂は、C44〜C48TAGの供給源として利用することができる。
【0023】
本発明の油脂組成物において、油相中のC44〜C48TAG含有油脂の配合量は、好ましくは20〜100質量%であり、より好ましくは30〜100質量%であり、更に好ましくは55〜100質量%であり、最も好ましくは75〜98質量%である。
【0024】
本発明で用いるC44〜C48TAG含有油脂において、全トリアシルグリセロール中のC44〜C48TAG含量は、30〜60質量%であり、好ましくは35〜55質量%であり、より好ましくは38〜53質量%であり、最も好ましくは40〜50質量%である。
また、本発明で用いるC44〜C48TAG含有油脂において、全トリアシルグリセロール中のM2Lトリアシルグリセロール及びML2トリアシルグリセロールの合計含量は、40質量%以下であり、好ましくは5〜40質量%であり、より好ましくは10〜35質量%であり、最も好ましくは17〜28質量%である。
【0025】
本発明で用いるC44〜C48TAG含有油脂において、全トリアシルグリセロール中のSU2トリアシルグリセロール及びU3トリアシルグリセロールの合計含量は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは3〜40質量%であり、更に好ましくは5〜30質量%であり、最も好ましくは7〜18質量%である。
また、本発明で用いるC44〜C48TAG含有油脂において、全構成脂肪酸中の炭素数14以下の飽和脂肪酸(好ましくは炭素数8〜14の飽和脂肪酸)含量は、好ましくは50質量%未満であり、より好ましくは5〜45質量%であり、更に好ましくは20〜40質量%である。最も好ましくは25〜35質量%である。
また、本発明で用いるC44〜C48TAG含有油脂において、全構成脂肪酸中の炭素数20〜24の飽和脂肪酸含量は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、更に好ましくは2質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以下である。
また、本発明で用いるC44〜C48TAG含有油脂において、全構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸(好ましくは炭素数16〜20の不飽和脂肪酸)含量は、好ましくは25〜50質量%であり、より好ましくは30〜45質量%であり、最も好ましくは31〜42質量%である。
【0026】
本発明で用いるC44〜C48TAG含有油脂は、5℃で流動性を有さない油脂である。
【0027】
本発明で用いるC44〜C48TAG含有油脂の好ましい例としては、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油が挙げられる。本発明においてラウリン系油脂とは、全構成脂肪酸中にラウリンを40質量%以上含有する油脂のことである。ラウリン系油脂の具体例としては、パーム核油、ヤシ油や、これらの混合油、これらの油脂又は混合油の加工油脂(エステル交換油、分別油、水素添加油等)が挙げられる。また、本発明においてパーム系油脂とは、パーム油自体や、パーム油の加工油脂(エステル交換油、分別油、水素添加油等)のことである。パーム系油脂の具体例としては、パーム油、パームオレイン、パームステアリン等が挙げられる。本発明で用いるラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油としては、パーム核油とパーム油とのエステル交換油が好ましい。
本発明で用いるラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油において、ラウリン系油脂とパーム系油脂の配合比は、ラウリン系油脂:パーム系油脂の質量比で、好ましくは30:70〜60:40であり、より好ましくは35:65〜50:50であり、最も好ましくは35:65〜45:55である。
【0028】
本発明で用いるラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油を調製するためのエステル交換反応としては、特に制限はなく、位置選択性の低いエステル交換反応である非選択的エステル交換(ランダムエステル交換)、位置選択性の高いエステル交換反応である選択的エステル交換(位置特異的エステル交換)のどちらでもよいが、非選択的エステル交換であることが好ましい。また、本発明で用いるラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油を調製するためのエステル交換の方法としては、特に制限はなく、化学的エステル交換、酵素的エステル交換のどちらの方法でもよいが、化学的エステル交換であることが好ましい。なお、化学的エステル交換は、触媒としてナトリウムメチラート等の化学触媒を用いて行われるものであり、反応は位置選択性の低い非選択的エステル交換となる。
化学的エステル交換は、例えば、常法に従って、原料油脂を十分に乾燥させ、触媒を原料油脂に対して0.1〜1質量%添加した後、減圧下、80〜120℃で0.5〜1時間攪拌しながら反応を行うことができる。エステル交換反応終了後は、水洗にて触媒を洗い流した後、通常の食用油の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を施すことができる。
【0029】
(油脂A)
本発明の油脂組成物は、油相中に下記油脂Aが配合されていることが好ましい。本発明において油脂Aとは、全トリアシルグリセロール中のM2Lトリアシルグリセロール及びML2トリアシルグリセロールの合計含量が45質量%以上、全構成脂肪酸中の炭素数14以下の飽和脂肪酸(好ましくは炭素数8〜14の飽和脂肪酸)含量が20〜60質量%、全構成脂肪酸中の炭素数16〜18の飽和脂肪酸含量が40〜80質量%であり、かつ、エステル交換することにより得られる油脂のことである。
【0030】
本発明の油脂組成物において、油相中の油脂Aの配合量は、好ましくは0.5〜16質量%であり、より好ましくは1〜15質量%であり、更に好ましくは2〜12質量%であり、最も好ましくは2〜10質量%である。油相中の油脂Aの配合量が上記範囲にあると、バタークリームの起泡性がより良好になる。
【0031】
本発明で用いる油脂Aにおいて、全トリアシルグリセロール中のM2Lトリアシルグリセロール及びML2トリアシルグリセロールの合計含量は45質量%以上であり、好ましくは45〜80質量%であり、更に好ましくは45〜65質量%であり、最も好ましくは50〜60質量%である。
また、本発明で用いる油脂Aにおいて、全構成脂肪酸中の炭素数14以下の飽和脂肪酸(好ましくは炭素数8〜14の飽和脂肪酸)含量は、20〜60質量%であり、好ましくは23〜45質量%であり、更に好ましくは25〜40質量%であり、最も好ましくは28〜38質量%である。
また、本発明で用いる油脂Aにおいて、全構成脂肪酸中の炭素数16〜18の飽和脂肪酸含量は、40〜80質量%であり、好ましくは50〜75質量%であり、更に好ましくは55〜70質量%であり、最も好ましくは60〜70質量%である。
【0032】
本発明で用いる油脂Aにおいて、全構成脂肪酸中の炭素数20〜24の飽和脂肪酸含量は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、更に好ましくは2質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以下である。
また、本発明で用いる油脂Aにおいて、全構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸(好ましくは炭素数16〜20の不飽和脂肪酸)含量は、15質量%以下であり、好ましくは10質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下であり、最も好ましくは3質量%以下である。
【0033】
本発明で用いる油脂Aは、5℃で流動性を有さない油脂である。
【0034】
本発明で用いる油脂Aの好ましい例としては、ラウリン系油脂とパーム系油脂との混合油をエステル交換し、その後、ヨウ素価10以下となるまで水素添加(完全水素添加であることが好ましい)することで得られる油脂を例示することができる。また、ラウリン系油脂とパーム系油脂をヨウ素価10以下となるようにそれぞれ別々に水素添加(完全水素添加であることが好ましい)を行い、その後、これらの混合油をエステル交換することで得られる油脂を例示することができる。また、ヨウ素価10以下のラウリン系油脂とヨウ素価20以下のパーム系油脂との混合油をエステル交換することで得られる油脂を例示できる。本発明で用いる油脂Aの原料油脂であるラウリン系油脂とパーム系油脂との組み合わせとしては、パーム核とパーム油、パーム核オレインとパームステアリン、パーム核ステアリンとハードステアリンが好ましい。
本発明で用いる油脂Aにおいて、ラウリン系油脂とパーム系油脂の配合比は、ラウリン系油脂:パーム系油脂の質量比で、好ましくは30:70〜70:30であり、より好ましくは40:60〜60:40である。
【0035】
本発明で用いる油脂Aを調製するためのエステル交換反応としては、特に制限はなく、非選択的エステル交換、選択的エステル交換のどちらでもよいが、非選択的エステル交換であることが好ましい。また、本発明で用いる油脂Aを調製するためのエステル交換の方法としては、特に制限はなく、化学的エステル交換、酵素的エステル交換のどちらの方法でもよいが、化学的エステル交換であることが好ましい。化学的エステル交換は、前記した条件で行うことができる。
また、本発明で用いる油脂Aを調製するための水素添加の方法としては、特に制限はなく、通常の方法により行うことができる。水素添加は、例えば、ニッケル触媒の下、水素圧0.02〜0.3Mpa、160〜200℃の条件にて行うことができる。
【0036】
(液状油)
本発明の油脂組成物は、油相中に液状油が配合されていることが好ましい。本発明において液状油とは、5℃で流動性を有する油脂のことを意味する。また、5℃で流動性を有する油脂は、好ましくは5℃で透明性を有する。
本発明で用いる液状油としては、5℃で流動性を有する油脂であれば、特に制限されることなく使用することができる。
【0037】
本発明で用いる液状油の具体例としては、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、ごま油、綿実油、米油、オリーブ油、落花生油、亜麻仁油やこれらの油脂のエステル交換、分別等の加工処理したものも用いることができる。これらの液状油は、1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0038】
本発明の油脂組成物において、油相中の液状油の配合量は、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは3〜35質量%であり、更に好ましくは5〜30質量%であり、最も好ましくは10〜25質量%である。
【0039】
(乳化剤)
本発明の油脂組成物には、乳化剤を配合することができる。本発明の油脂組成物に用いる乳化剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセライド)、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の合成乳化剤や、レシチン(大豆レシチン、卵黄レシチン等)、リゾレシチン(大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン等)、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の合成乳化剤でない乳化剤が挙げられる。これらの乳化剤は1種又は2種以上を併用して用いることもできるが、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチンから選ばれる1種又は2種以上を使用することが好ましい。本発明の油脂組成物において、乳化剤の含量は、好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.05〜3質量%であり、最も好ましくは0.1〜2質量%である。
【0040】
本発明の油脂組成物に用いる乳化剤としては、特にソルビタンオレイン酸エステルを使用することが好ましい。本発明の油脂組成物において、ソルビタンオレイン酸エステルの含量は、好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜3質量%であり、更に好ましくは0.2〜2質量%であり、最も好ましくは0.2〜1質量%である。油脂組成物中のソルビタンオレイン酸エステル含量が上記範囲にあると、バタークリームの起泡性がより良好になる。
【0041】
なお、後述するように、これらの乳化剤は、バタークリームの製造時に配合することもできる。
【0042】
(配合成分)
本発明の油脂組成物には、通常、バタークリームに用いられる油脂に配合される成分であれば、特に制限されることなく配合することができる。具体例としては、例えば、水、食塩、塩化カリウム等の塩味剤、β−カロテン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物(カテキン等)、ルチン等の酸化防止剤、香料等が挙げられる。
【0043】
(油脂組成物の特性)
本発明の油脂組成物は可塑性を付与した可塑性油脂組成物であることが好ましい。
また、本発明の油脂組成物としては、水相を有するものと、水相を有さないものが挙げられるが、水相を有さないものであること好ましい。なお、本発明において水相を有さない油脂組成物(好ましくは可塑性油脂組成物)とは、油相のみからなるショートニングのことである。また、本発明において水相を有する油脂組成物(好ましくは可塑性油脂組成物)とは、マーガリン、ファットスプレッド等の油中水型乳化物、油中水中油型乳化物のことである。
【0044】
本発明の油脂組成物は、固体脂含量(SFC)が、好ましくは20℃で5〜45%、25℃で2〜35%、30℃で0〜30%、35℃で0〜20%であり、より好ましくは20℃で5〜40%、25℃で4〜30%、30℃で0〜25%、35℃で0〜15%であり、最も好ましくは20℃で10〜35%、25℃で6〜25%、30℃で1〜20%、35℃で0〜10%である。以後、固体脂含量はSFCと記載することがある。
【0045】
(油脂組成物の製造方法)
本発明の油脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知のバタークリーム用油脂の製造条件及び製造方法により製造することができる。
具体的には、配合する油溶成分を混合溶解することで製造することができる。また、可塑性を付与する場合は、配合する油溶成分を混合溶解したものを油相とし、必要により調製した水相を混合乳化した後、冷却し、結晶化させることで製造することができる。冷却条件は、好ましくは−0.5℃/分以上、更に好ましくは−5℃/分以上である。この際、徐冷却より急冷却の方が好ましい。また、油相の調製後又は混合乳化後は、殺菌処理することが望ましい。殺菌方法としては、タンクでのバッチ式や、プレート型熱交換機、掻き取り式熱交換機を用いた連続式が挙げられる。
冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター、オンレーター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられる。また、冷却する機器としては、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組み合わせも挙げられる。
【0046】
(油脂組成物の用途)
本発明の油脂組成物は、フィリングクリーム、サンドクリーム、トッピングクリーム等のバタークリーム用の油脂として好適に使用することができる。
【0047】
本発明の油脂組成物をバタークリーム用の油脂として使用すると、バタークリームの起泡性、口溶けが良好になる。
【0048】
なお、油脂中の各トリアシルグリセロール含量は、ガスクロマトグラフ法(例えば、JAOCS,vol.70,No.11,1111−1114(1993)に準じて測定することができる。)及び銀イオンカラム−HPLC法(例えば、J.High Resol.Chromatogr.,18,105−107(1995)に準じて測定することができる。)により測定することができる。また、油脂中の各脂肪酸含量は、ガスクロマトグラフ法により測定することができる(例えば、AOCS Ce1f−96に準じて測定することができる。)。また、油脂のSFCは、社団法人日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の「2.2.9−2003 固体脂含量(NMR法)」に準じて測定することができる。また、油脂のヨウ素価は、社団法人日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の「2.3.4.1−1996 ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」に準じて測定することができる。
また、本発明において、全構成脂肪酸中の含量とは、油脂組成物に含まれる油脂(トリアシルグリセロール)を構成する脂肪酸全量に対する割合のことである。また、本発明において、SFCとは、油脂組成物に含まれる油脂のSFCのことである。
【0049】
(バタークリーム)
本発明のバタークリームは、本発明の油脂組成物を用いて製造したことを特徴とする。
本発明においてバタークリームとは、油脂組成物に糖類等の呈味成分を加えて起泡させたもの又は油脂組成物を起泡させたものに糖類等の呈味成分を加えたものである。なお、本発明のバタークリームは、油脂組成物に糖類等の呈味成分を加えた起泡前のものも包含する。
【0050】
本発明のバタークリームは、前記乳化剤を含まない本発明の油脂組成物又は前記乳化剤の含量が前記好ましい範囲を外れた本発明の油脂組成物を用い、バタークリームの製造時に前記乳化剤を配合して製造したものも包含する。バタークリームの製造時に乳化剤を配合する場合、乳化剤の配合量は前記油脂組成物のところで記載した範囲に相当する量を配合することができる。また、使用する乳化剤は前記油脂組成物のところで記載した乳化剤を使用することができる。
【0051】
本発明のバタークリームにおいて、本発明の油脂組成物の配合量は、好ましくは10〜55質量%であり、より好ましくは15〜50質量%であり、最も好ましくは23〜45質量%である。
【0052】
本発明のバタークリームは、好ましくは呈味成分を含有する。本発明のバタークリームに用いる呈味成分は、通常、バタークリームに用いられる呈味成分であれば、特に制限されることなく使用することができる。本発明のバタークリームに用いる呈味成分としては、例えば、ブドウ糖、マルトース、蔗糖(砂糖)、ラクトース、トレハロース、マルトトリオース、テトラオース、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ミルクペースト、水あめ、異性化液糖等の糖類(糖、糖アルコール)、チーズ、生クリーム、合成クリーム、ヨーグルト、練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、脱脂練乳、牛乳、濃縮乳等の乳製品、カカオマス、ココアパウダー、チョコレート等のカカオ製品、卵黄、粉末卵黄等の卵類、果肉ジャム類、果汁類、ナッツ類等が挙げられる。
本発明のバタークリームにおいて、呈味成分の配合量は、好ましくは40〜85質量%であり、より好ましくは45〜80質量%であり、最も好ましくは50〜75質量%である。
【0053】
本発明のバタークリームに用いる呈味成分としては、前記糖類(糖、糖アルコール)を用いることが好ましい。糖類の形状は特に限定されるものではなく、固形状の糖類、液糖(液状の糖類)のどちらを使用することもできるが、液糖を使用することがより好ましい。液糖を使用すると、バタークリームの口溶けがより良好になる。液糖のBrixは、好ましくは60〜80であり、より好ましくは65〜75である、最も好ましくは70〜75である。
本発明のバタークリームにおいて、糖類の配合量は、好ましくは10〜85質量%であり、より好ましくは30〜75質量%であり、最も好ましくは50〜75質量%である。
【0054】
本発明のバタークリームに用いる呈味成分としては、前記糖類を含む水中油型乳化物を用いることが好ましい。該水中油型乳化物は、更に澱粉を含むことがより好ましい。当該水中油型乳化物を使用すると、バタークリームの口溶けがより良好になる。
本発明のバタークリームにおいて、前記糖類を含む水中油型乳化物の配合量は、好ましくは5〜75質量%であり、より好ましくは10〜55質量%であり、最も好ましくは15〜45質量%である。
【0055】
本発明のバタークリームには、本発明の油脂組成物、呈味成分、乳化剤以外に、通常、バタークリームに配合されるものであれば、特に制限なく配合することができる。また、これらの配合量も、通常、バタークリームに配合される範囲で特に制限なく配合することができる。
【0056】
本発明のバタークリームは、本発明の油脂組成物を用いること以外は、公知の製造条件及び製造方法により製造することができる。
【0057】
本発明のバタークリームは、比重が好ましくは0.79未満であり、より好ましくは0.72未満であり、最も好ましくは0.65未満である。
【0058】
本発明のバタークリームは、フィリングクリーム、サンドクリーム、トッピングクリーム等として使用することができる。
【0059】
本発明のバタークリームは、起泡性、口溶けが良好なものである。特に、本発明のバタークリームは、液糖等の水性成分を用いた場合でも、起泡性に優れたものである。
【0060】
(食品)
本発明の食品は、本発明のバタークリームを用いて製造したことを特徴とする。
本発明の食品は、本発明のバタークリームと菓子、パン等とを組み合わせたものである。
本発明の食品は、本発明のバタークリームと菓子、パン等とを接触させたものであれば、組み合わせ方法は特に制限されないが、組み合わせ方法としては、挟む、注入、トッピング、被覆等が挙げられる。
【0061】
本発明のバタークリームと組み合わせる、菓子、パンの具体例としては、ビスケット、クッキー、クラッカー、乾パン、プレッツェル、カットパン、ウェハース、サブレ、ラングドシャ、マカロン等の焼き菓子、バターケーキ類(パウンドケーキ、フルーツケーキ、マドレーヌ、バウムクーヘン、カステラ等)、スポンジケーキ類(ショートケーキ、ロールケーキ、トルテ、デコレーションケーキ、シフォンケーキ等)、シュー菓子、発酵菓子、パイ、ワッフル等の洋生菓子、菓子パン、フランスパン、シュトーレン、パネトーネ、ブリオッシュ、ドーナツ、デニッシュ、クロワッサン等が挙げられる。
【実施例】
【0062】
次に、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例になんら制限されるものではない。
【0063】
<測定方法>
以下に示す油脂組成物中の各脂肪酸含量、油脂組成物のSFC、油脂組成物中の各トリアシルグリセロール含量の測定は以下の方法により測定した。
油脂組成物中の各脂肪酸含量は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f−96準拠)により測定した。
油脂組成物のSFCは、社団法人日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の「2.2.9−2003 固体脂含量(NMR法)」に準じて測定した。
油脂組成物中の各トリアシルグリセロール含量は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol.70,No.11,1111−1114(1993)準拠)及び銀イオンカラム−HPLC法(J.High Resol.Chromatogr.,18,105−107(1995)準拠)により測定した。
油脂のヨウ素価は、社団法人日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の「2.3.4.1−1996 ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」に準じて測定した。
【0064】
<C44〜C48TAG含有油脂の調製>
パーム核油(日清オイリオグループ株式会社製造品)40質量部とパーム油(日清オイリオグループ株式会社製造品)60質量部とを混合した混合油を、減圧下120℃に加熱することにより十分に乾燥させた後、対油0.2質量%のナトリウムメチラートを添加し、減圧下、110℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、ナトリウムメチラートを水洗除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、C44〜C48TAG含有油脂(C44〜48TAG含量45.9質量%、M2L+ML2含量22.2質量%、SU2+U3含量12.7質量%、炭素数14以下の飽和脂肪酸含量29.6質量%、炭素数20〜24の飽和脂肪酸含量0.3質量%、不飽和脂肪酸含量36.6質量%)を得た。
【0065】
<油脂Aの調製>
パームステアリン(日清オイリオグループ株式会社製造品)50質量部とパーム核オレイン(日清オイリオグループ株式会社製造品)50質量部とを混合した混合油を、減圧下120℃に加熱することにより十分に乾燥させた後、対油0.1質量%のナトリウムメチラートを添加し、減圧下、110℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、ナトリウムメチラートを水洗除去し、脱色した後、ニッケル触媒を用いて160〜200℃にて水素添加を行い、ヨウ素価を2以下に調整した。ヨウ素価が2以下になったのを確認した後、温度を100℃以下に下げ、ニッケル触媒をろ過により除去し、脱色、脱臭して、油脂A(M2L+ML2含量54.7質量%、炭素数14以下の飽和脂肪酸含量33.1質量%、炭素数16〜18の飽和脂肪酸含量65.1質量%、炭素数20〜24の飽和脂肪酸含量0.4質量%、不飽和脂肪酸含量1.4質量%、ヨウ素価0.1)を得た。
【0066】
<その他の原料>
(エステル交換油1の調製)
パーム油(日清オイリオグループ株式会社製造品)を分別して得られた軟質部であるパームオレイン(ヨウ素価56)を、減圧下120℃に加熱することにより十分に乾燥させた後、対油0.1質量%のナトリウムメチラートを添加し、減圧下、110℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、ナトリウムメチラートを水洗除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、エステル交換油1(パームオレインのエステル交換油、ヨウ素価56)得た。
(分別油1の調製)
パーム油(日清オイリオグループ株式会社製造品)を分別することで軟質部の分別油1(パームオレイン、ヨウ素価56)を得た。
(分別油2の調製)
分別油1を、さらに分別することで硬質部の分別油2(パーム中融点、ヨウ素価45)を得た。
(分別油3の調製)
分別油1を、さらに分別することで軟質部のパームスーパーオレイン(ヨウ素価65)を得た。35質量部の分別油1と65質量部のパームスーパーオレインとを混合して、分別油3(パームスーパーオレイン、ヨウ素価60)を得た。
(原料油脂)
菜種油(日清オイリオグループ株式会社製造品、5℃で流動性及び透明性を有する)
大豆油(日清オイリオグループ株式会社製造品、5℃で流動性及び透明性を有する)
パーム油(日清オイリオグループ株式会社製造品)
(乳化剤)
乳化剤1:ソルビタン脂肪酸エステル(商品名:ポエムO−80V、理研ビタミン株式会社製、構成脂肪酸:オレイン酸)
乳化剤2:グリセリン脂肪酸エステル(蒸留モノグリセライド)(商品名:エマルジーMU、理研ビタミン株式会社製、構成脂肪酸:リノール酸)
乳化剤3:グリセリン脂肪酸エステル(蒸留モノグリセライド)(商品名:エマルジーP−100、理研ビタミン株式会社製、構成脂肪酸:パルミチン酸、ステアリン酸)
乳化剤4:グリセリン脂肪酸エステル(蒸留モノグリセライド)(商品名:エマルジーHRO、理研ビタミン株式会社製、構成脂肪酸:オレイン酸)
乳化剤5:ショ糖脂肪酸エステル(商品名:リョートーシュガーエステルS−170、三菱化学フーズ株式会社製、構成脂肪酸:ステアリン酸)
乳化剤6:ショ糖脂肪酸エステル(商品名:リョートーシュガーエステルER−290、三菱化学フーズ株式会社製、構成脂肪酸:エルカ酸)
乳化剤7:ポリグリセリン脂肪酸エステル(ジグリセリン脂肪酸エステル)(商品名:サンソフトQ−18D、太陽化学株式会社製、構成脂肪酸:ステアリン酸)
乳化剤8:プロピレングリコール脂肪酸エステル(商品名:リケマールPS−100、理研ビタミン株式会社製、構成脂肪酸:ステアリン酸)
乳化剤9:レシチン(商品名:レシチンDX、日清オイリオグループ株式会社製)
(酸化防止剤)
トコフェロール(商品名:トコフェロール80、日清オイリオグループ株式会社製)
【0067】
<バタークリームの評価>
表1〜3の配合の原料を溶解混合し、オンレーターを用いて急冷可塑化することで、実施例1〜8の油脂組成物、比較例1〜5の油脂組成物を得た。
品温20℃の各油脂組成物190gを、縦型ミキサー(商品名:N−50、ホバートジャパン株式会社製)を用いて高速モードで20秒攪拌した。攪拌後、各油脂組成物に水あめ(商品名:酵素水飴、日本食品化工株式会社社製、Brix70)160gを加えて縦型ミキサーの高速モードで10秒攪拌した。得られた各混合物にミルクペースト(Brix70、脱脂練乳25質量%、水あめ75質量%)100g及び異性化液糖(商品名フジフラクトH−100、日本食品化工株式会社製、Brix70)50gを加えて縦型ミキサーの低速モードで10秒、高速モードで20秒攪拌した後、更に縦型ミキサーの高速モードで300秒攪拌することで各バタークリームを得た。製造直後の各バタークリームの比重を測定し、下記基準により各バタークリームの起泡性を評価した(比重は値が低いほど、バタークリームの起泡性が高いことを示している。)。また、製造直後の各バタークリームを食することにより、各バタークリームの口溶けを評価した。起泡性及び口溶けの評価は、3点以上を良好であるとした。評価結果を表1〜3に示した。
【0068】
<起泡性の評価基準>
5点:比重が0.65未満
4点:比重が0.65以上0.72未満
3点:比重が0.72以上0.79未満
2点:比重が0.79以上0.86未満
1点:比重が0.86以上
【0069】
<口溶けの評価基準>
5点:口溶け著しく良好で、呈味性を強く感じる。
4点:口溶け良好で、呈味性を感じる。
3点:口溶け良好で、呈味性をやや感じる。
2点:口溶け不良で、呈味性をやや感じる。
1点:口溶け不良で、呈味性を感じにくい。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
表1及び2から分かるように、実施例1〜8の油脂組成物を用いたバタークリームは、起泡性及び口溶けが良好であった。
また、表3から分かるように、比較例1〜5の油脂組成物を用いたバタークリームは、起泡性又は口溶けが良好ではなかった。