特許第5747091号(P5747091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5747091-高純度銅スパッタリングターゲット 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747091
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月8日
(54)【発明の名称】高純度銅スパッタリングターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20150618BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20150618BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20150618BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20150618BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20150618BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20150618BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
   C23C14/34 B
   H01L21/28 301R
   H01L21/285 S
   H01L21/88 M
   H01L21/88 B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-553238(P2013-553238)
(86)(22)【出願日】2012年12月25日
(86)【国際出願番号】JP2012083396
(87)【国際公開番号】WO2013105424
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2014年3月3日
(31)【優先権主張番号】特願2012-3781(P2012-3781)
(32)【優先日】2012年1月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX日鉱日石金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】岡部 岳夫
(72)【発明者】
【氏名】大月 富男
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 茂
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−535518(JP,A)
【文献】 特開平10−330923(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/085316(WO,A1)
【文献】 特開2011−127160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 21/28
H01L 21/285
H01L 21/3205
H01L 21/768
H01L 23/532
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度銅スパッタリングターゲットであって、該ターゲットのフランジ部の(111)配向率が20〜30%であり、ターゲットの中央のエロージョン部の(111)配向率が57〜68%であることを特徴とする高純度銅スパッタリングターゲット。
【請求項2】
高純度銅スパッタリングターゲットであって、該ターゲットのフランジ部のビッカース硬度が90〜100Hvの範囲であり、ターゲットの中央のエロージョン部のビッカース硬度が55〜70Hvの範囲にあり、かつエロージョン部の結晶粒径が80μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の高純度銅スパッタリングターゲット。
【請求項3】
銅の純度が99.999%(5N)以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の高純度銅スパッタリングターゲット。
【請求項4】
冷間加工組織を有するフランジ部を備えていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の高純度銅スパッタリングターゲット。
【請求項5】
ターゲットの外周から20mm〜50mmの範囲をフランジ部とすることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の高純度銅スパッタリングターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング中の変形が少なく、使用効率の高い高純度銅スパッタリングターゲットを提供するものであり、特に半導体用銅合金配線を形成するために有用な高純度銅スパッタリングターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の配線材料としてAl合金(比抵抗:3.0μΩ・cm程度)が使われてきたが、配線の微細化に伴い、より抵抗の低い銅配線(比抵抗:2.0μΩ・cm程度)が実用化されてきた。銅配線の形成プロセスとしては、配線又は配線溝にTaやTaNなどの拡散バリア層を形成した後、銅をスパッタ成膜することが一般に行われる。銅は通常、純度4N(ガス成分抜き)程度の電気銅を粗金属として湿式や乾式の高純度化プロセスによって、5N〜6Nの高純度のものを製造し、これをスパッタリングターゲットとして使用されている。
【0003】
このように、デバイスの高性能化によりCu配線が使用されるようになり、今後もこの比率は上がっていくことが予想される。一方、コスト削減のため、使用効率を上げる要望が高く、その要求を満たすためには一体型ターゲットが最適である。しかしながら、昨今のスパッタ投入パワーは非常に高く、変形の問題が指摘されている。
【0004】
ウエハ径が300mm用のターゲットでは、投入パワーが高く使用中の変形防止にバッキングプレート(冷却板、以下「BP」と言う。)として高強度銅合金が使用されている。このため、変形量は少ないが、このBPが存在すると、その分だけターゲットを薄くしなければならないために、ターゲットの使用効率は低下する。
【0005】
また、本願発明において提案する一体型のターゲットと同じ考え方で、ECAE(Equal Channel Angular Extrusion)により歪導入により強度を持たせるという方法もある。しかし、これはターゲットスパッタ部の配向も歪をもった(220)が主配向となり膜厚均一性に影響を与えるという問題がある。
【0006】
従来技術を見ると、下記特許文献1に、タンタル、ニオブ、コバルト、チタン、バルブ金属からなる一体型ターゲット(モノリス型ターゲット)で、径を拡大させたフランジがあり、それを冷却体(BP)にボルト止めする構造のスパッタリングターゲットが提案されている。そして、そのフランジ部を冷間加工等により耐力、剛性を持たせることが記載されている。その目的は明確ではないが、フランジ部をBPにボルト止めするために、強度を高めたと予想される。しかし、その強度向上の目的と具体的内容は、明確でない。
【0007】
下記特許文献2には、Al、Al−Ti、Al−Crのターゲットの機械的強度が低いことに鑑み、ターゲットとバッキングプレートをAl又はAl合金の軟質金属材料で一体化することが記載され、冷却水の水圧により、ターゲット全体の反りの発生による水漏れ、異常放電の不具合が発生するのを抑制する提案がなされている。
この場合、ターゲットとバッキングプレートを一体化することが前提となっているので、従来の使用効率の面では劣ることが必然である。
【0008】
下記特許文献3には、Al−Ti、Al−Crのターゲットの機械的強度が低いことに鑑み、ターゲットとバッキングプレートをAl合金の軟質金属材料で一体化すること、そしてこれをさらに冷間による塑性加工を行って、マイクロビッカース硬度を36以上にする記載がある。そして、これにより冷却水の水圧により、ターゲット全体の反りの発生による水漏れ、異常放電の不具合が発生するのを抑制する提案がなされている。
この場合、ターゲットとバッキングプレートを一体化することが前提となっているので、従来の使用効率の面では劣ることが必然である。その他の参考例(特許文献4参照)として、重量で少なくとも99.99%の銅と、少なくも1〜50ミクロンの平均結晶粒度と、約15ksi以上の降伏強さを有する、銅を含むスパッタリングターゲットが挙げられる。
【0009】
一般に、高純度銅スパッタリングターゲットの製作に際しては、溶解鋳造した銅インゴットを加工して、所定の寸法のターゲット形状に加工した後、表面を切削して製作される。
この場合、ターゲット材料の変形の抑制が要求される。ターゲットの変形が少ないと、表面の平滑性を維持することができ、均一性(ユニフォーミティ)に優れた薄膜を形成することができる。しかしながら、従来技術では、バッキングプレートを使用せずに、ターゲットのみで変形抑制し、使用効率を高めることを意図して高純度銅スパッタリングターゲット材料が開発された例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2005−533930号公報
【特許文献2】特開2001−107227号公報
【特許文献3】特開2002−121662号公報
【特許文献4】特表2005−533187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、バッキングプレート(BP)との接合を必要としない高純度銅スパッタリングターゲットに関し、該ターゲットのフランジ部の強度(硬度、降伏応力)を高めて、ターゲットの反り量を少なくすることにより、均一性(ユニフォーミティ)に優れた薄膜を形成できる高純度銅スパッタリングターゲットを提供することを課題とする。また、同ターゲットにおいて、エロージョン部とフランジ部の(111)配向率を調製し、膜厚の均一性を向上させるものである。これによって、微細化・高集積化が進む半導体製品の歩留まりや信頼性を向上させ、半導体用銅合金配線の形成に有用な高純度銅スパッタリングターゲットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の発明を提供するものである。
【0013】
1)高純度銅スパッタリングターゲットであって、該ターゲットのフランジ部の(111)配向率が20〜30%であり、ターゲットの中央のエロージョン部の(111)配向率が57〜68%であることを特徴とする高純度銅スパッタリングターゲット。
【0014】
2)高純度銅スパッタリングターゲットであって、該ターゲットのフランジ部のビッカース硬度が90〜100Hvの範囲であり、ターゲットの中央のエロージョン部のビッカース硬度が55〜70Hvの範囲にあり、かつエロージョン部の結晶粒径が80μm以下であることを特徴とする上記1)に記載の高純度銅スパッタリングターゲット。
【0015】
3)銅の純度が99.999%(5N)以上であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の高純度銅スパッタリングターゲット。
【0016】
4)冷間加工組織を有するフランジ部を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高純度銅スパッタリングターゲット。
【0017】
5)ターゲットの外周から20mm〜50mmの範囲をフランジ部とすることを特徴とする上記1)〜4)のいずれか一項に記載の高純度銅スパッタリングターゲット。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、バッキングプレート(BP)との接合を必要としない高純度銅スパッタリングターゲットを提供するものであり、該ターゲットのフランジ部の強度(硬度、降伏応力)を高めて、ターゲットの反り量を少なくすることができ、均一性(ユニフォーミティ)に優れた薄膜を形成できる高純度銅スパッタリングターゲットを提供することができる優れた効果を有する。また、同ターゲットにおいて、エロージョン部とフランジ部の(111)配向率を調製し、膜厚の均一性を向上させることができる。これによって、微細化・高集積化が進む半導体製品の歩留まりや信頼性を向上させ、半導体用銅合金配線の形成に有用な高純度銅スパッタリングターゲットを提供することができる。
さらに、近年使用材料のリサイクルを考える必要があり、BP材を使用するターゲットに比べ、一体型は全てが同一材料のため、再生が容易であり、経済的にも有利であるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ターゲットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
純度が99.999%(5N)以上である高純度銅のスパッタリングターゲットは、機械的特性(強度)が低く、バッキングプレート(BP)を使用しなければ、使用中に反りを発生するという問題がある。このため、ターゲットに加工歪を与え強度を付加するという手法もあるが、この場合には、ターゲットは歪の残った(220)主配向となり、膜厚均一性が悪くなるという問題がある。
【0022】
このため、本願発明は、ターゲットの強度の向上と、ターゲットの組織の双方を同時に改善するために、熱処理によりターゲットの中央のエロージョン部の組織、配向を調整後、ターゲットのフランジ部のみ塑性加工を施し、機械的特性(強度)を改善するものである。
ターゲットのフランジ部は、ターゲットのサイズにもよるが、通常ターゲットの外周から20〜50mm程度の範囲とする。この範囲は、通常のターゲットで実施する寸法であり、必要に応じて、この範囲外のターゲットを製造できることは言うまでもない。また、フランジ部は、エロージョンを受けない。ターゲットの説明図を、図1に示す。
【0023】
本願発明は、高純度銅スパッタリングターゲットのフランジ部のビッカース硬度を90〜100Hvの範囲とし、ターゲットの中央のエロージョン部のビッカース硬度を55〜70Hvの範囲であり、エロージョン部の結晶粒径が80μm以下である高純度銅スパッタリングターゲットを提供するものである。
通常、高純度銅スパッタリングターゲットには、純度が99.999%(5N)以上、さらには純度が99.9999%(6N)以上の銅を使用する。これによって、スパッタリング中又はスパッタリング後の反りを低減でき、均一性(ユニフォーミティ)に優れた薄膜を形成できる。なお、一般に反りは、エロージョン面側が凸状に発生するが、この反りを低減できる効果を有する。
【0024】
高純度銅スパッタリングターゲットであって、該ターゲットの該ターゲットのフランジ部の(111)配向率が20〜30%であり、ターゲットの中央のエロージョン部の(111)配向率が57〜68%である高純度銅スパッタリングターゲットを提供できる。この配向率は、膜厚の均一性を向上させる効果がある。上記に対して加工歪が残存した(220)配向が増加すると、膜厚の均一性が悪くなる傾向がある。
【0025】
以上により、本願発明の高純度銅スパッタリングターゲットは、該ターゲット使用後の反り量を2.0mm以下とすることができる。ターゲット変形がなくなるので、均一性(ユニフォーミティ)に優れた薄膜を形成することができる。
【0026】
高純度銅スパッタリングターゲットの製造は、カーボンルツボ(坩堝)内に純度が5N以上である高純度銅を入れて溶解する。このようにして得た溶湯を鋳造して、本発明の高純度の銅インゴットを得ることができる。その後、この銅のインゴットを、所定の鍛造比で熱間鍛造し、その後所定の圧下率で圧延して銅圧延板を得る。
【0027】
これをさらに、所定の温度及び時間で熱処理する。このようにして製造した再結晶組織を備えた銅圧延板を、型鍛造等の加工手段により外周部のみに加工を施す。冷間鍛造等による加工は、30%以上とするのが良い。この時に、予定するターゲットのエロージョン部には、歪が導入されないようにする。このように、フランジ部は冷間加工組織を有する。この後、研削及び研磨等の表面加工し、さらに仕上げ加工して、前記高純度銅から作製されたスパッタリングターゲットに製造する。
【0028】
以上の工程は、溶解品であるが、焼結体として作製することもできる。この場合は、いずれも加工手段により外周部のみに加工を施す工程が必須となる。この時に、予定するターゲットのエロージョン部には、歪が導入されないようにする。
以上のようにして作製した高純度銅スパッタリングターゲットは、バッキングプレートには原則として溶接、拡散接合等の手段による接合はしない。
【0029】
使用済みのターゲットはバッキングプレートとの接合部(拡散部又は溶接部)がないので、汚染されず、ターゲットの再生が容易であり、高純度材をそのまま再生できるという大きな利点がある。
【実施例】
【0030】
次に、実施例に基づいて本発明を説明する。以下に示す実施例は、理解を容易にするためのものであり、これらの実施例によって本発明を制限するものではない。すなわち、本発明の技術思想に基づく変形及び他の実施例は、当然本発明に含まれる。
【0031】
(実施例1)
純度6Nの高純度銅(Cu)を、カーボンルツボ(坩堝)を用いて高真空雰囲気中で溶解した。この銅の溶湯を、高真空雰囲気中でカーボン鋳型に鋳込んでインゴットを得た。次に、製造したインゴットを400°Cで温間鍛造を行った。次に、必要量を切断後、圧延(冷間加工度82%)して、φ530×30tとした後、300°Cで1時間熱処理後、外周より20mmの位置までを冷間鍛造(加工度50%)した。
【0032】
次に、これを、機械加工でターゲット部直径430mm、トータル厚さ25mmのターゲットに加工した。以上の結果、ターゲット部は35μm程度の再結晶組織を有し、フランジ部は冷間加工により加工組織となった。この場合、フランジ部は、加工組織のため、結晶粒径は確認できない。
【0033】
このようにして作製した高純度銅スパッタリングターゲットについて、フランジ部の硬さ(ビッカース硬度Hv)、エロージョン部の(111)配向率(%)、結晶粒径(μm)を調べた。
この結果、フランジ部の硬さは100Hv、エロージョン部の(111)配向率は65.5%、結晶粒径は35μmとなった。この結果を、表1に示す。
【0034】
次に、このターゲットを用いて、スパッタリングを実施した。スパッタリング終了後の最大反りは、0.8mmとなり、後述する比較例と較べて格段に向上していた。また、成膜後のユニフォーミティは、2.1%となり、膜厚均一性(ユニフォーミティ)が良好な結果を示していた。
【0035】
なお、表1において、フランジ部の硬さ(Hv)、エロージョン部の(111)配向率(%)、結晶粒径(μm)を同時に評価して掲載したが、これらについて、それぞれ単独で評価した場合においても、スパッタリング終了後の最大反り及び成膜後のユニフォーミティは、同様に評価できる結果を得た。
【0036】
【表1】
【0037】
(実施例2)
純度6Nの高純度銅(Cu)を、カーボンルツボ(坩堝)を用いて高真空雰囲気中で溶解した。この銅の溶湯を、高真空雰囲気中でカーボン鋳型に鋳込んでインゴットを得た。
次に、製造したインゴットを400°Cで温間鍛造を行った。次に、必要量を切断後、圧延(冷間加工度80%)して、φ530×30tとした後、325°Cで1時間熱処理後、外周より30mmの位置までを冷間鍛造(加工度40%)した。次に、これを、機械加工でターゲット部直径430mm、トータル厚さ25mmのターゲットに加工した。
【0038】
このようにして作製した高純度銅スパッタリングターゲットについて、フランジ部の硬さ(ビッカース硬度Hv)、エロージョン部の(111)配向率(%)、結晶粒径(μm)を調べた。
この結果、フランジ部の硬さは95Hv、エロージョン部の(111)配向率は64.3%、結晶粒径は40μmとなった。この結果を、表1に示す。
【0039】
次に、このターゲットを用いて、スパッタリングを実施した。スパッタリング終了後の最大反りは、1.3mmとなり、後述する比較例と較べて格段に向上していた。また、成膜後のユニフォーミティは、2.2%となり、膜厚均一性(ユニフォーミティ)が良好な結果を示していた。
【0040】
なお、表1において、フランジ部の硬さ(Hv)、エロージョン部の(111)配向率(%)、結晶粒径(μm)を同時に評価して掲載したが、これらについて、それぞれ単独で評価した場合においても、スパッタリング終了後の最大反り及び成膜後のユニフォーミティは、同様に評価できる結果を得た。
【0041】
(実施例3)
純度6Nの高純度銅(Cu)を、カーボンルツボ(坩堝)を用いて高真空雰囲気中で溶解した。この銅の溶湯を、高真空雰囲気中でカーボン鋳型に鋳込んでインゴットを得た。次に、製造したインゴットを400°Cで温間鍛造を行った。次に、必要量を切断後、圧延(冷間加工度80%)して、φ530×30tとした後、325°Cで1時間熱処理後、外周より40mmの位置までを冷間鍛造(加工度40%)した。次に、これを、機械加工でターゲット部直径430mm、トータル厚さ25mmのターゲットに加工した。
【0042】
このようにして作製した高純度銅スパッタリングターゲットについて、フランジ部の硬さ(ビッカース硬度Hv)、エロージョン部の(111)配向率(%)、結晶粒径(μm)を調べた。
この結果、フランジ部の硬さは95Hv、エロージョン部の(111)配向率は67.1%、結晶粒径は40μmとなった。この結果を、表1に示す。
【0043】
次に、このターゲットを用いて、スパッタリングを実施した。スパッタリング終了後の最大反りは、1.2mmとなり、後述する比較例と較べて格段に向上していた。また、成膜後のユニフォーミティは、2.3%となり、膜厚均一性(ユニフォーミティ)が良好な結果を示していた。
【0044】
なお、表1において、フランジ部の硬さ(Hv)、エロージョン部の(111)配向率(%)、結晶粒径(μm)を同時に評価して掲載したが、これらについて、それぞれ単独で評価した場合においても、スパッタリング終了後の最大反り及び成膜後のユニフォーミティは、同様に評価できる結果を得た。
【0045】
(実施例4)
純度6Nの高純度銅(Cu)を、カーボンルツボ(坩堝)を用いて高真空雰囲気中で溶解した。この銅の溶湯を、高真空雰囲気中でカーボン鋳型に鋳込んでインゴットを得た。次に、製造したインゴットを400°Cで温間鍛造を行った。次に、必要量を切断後、圧延(冷間加工度78%)して、φ530×30tとした後、350°Cで1時間熱処理後、外周より50mmの位置までを冷間鍛造(加工度30%)した。次に、これを、機械加工でターゲット部直径430mm、トータル厚さ25mmのターゲットに加工した。
【0046】
このようにして作製した高純度銅スパッタリングターゲットについて、フランジ部の硬さ(ビッカース硬度Hv)、エロージョン部の(111)配向率(%)、結晶粒径(μm)を調べた。
この結果、フランジ部の硬さは90Hv、エロージョン部の(111)配向率は68.3%、結晶粒径80μmとなった。この結果を、表1に示す。
【0047】
次に、このターゲットを用いて、スパッタリングを実施した。スパッタリング終了後の最大反りは、1.6mmとなり、後述する比較例と較べて格段に向上していた。また、成膜後のユニフォーミティは、2.5%となり、膜厚均一性(ユニフォーミティ)が良好な結果を示していた。
【0048】
なお、表1において、フランジ部の硬さ(Hv)、エロージョン部の(111)配向率(%)、結晶粒径(μm)を同時に評価して掲載したが、これらについて、それぞれ単独で評価した場合においても、スパッタリング終了後の最大反り及び成膜後のユニフォーミティは、同様に評価できる結果を得た。
【0049】
(比較例1)
純度6Nの高純度銅(Cu)を、カーボンルツボ(坩堝)を用いて高真空雰囲気中で溶解した。この銅の溶湯を、高真空雰囲気中でカーボン鋳型に鋳込んでインゴットを得た。次に、製造したインゴットを400°Cで温間鍛造を行った。次に、必要量を切断後、圧延(冷間加工度78%)して、φ530×30tとした後、375°Cで1時間熱処理後、これを、機械加工でターゲット部直径430mm、トータル厚さ25mmのターゲットに加工した。
【0050】
このようにして作製した高純度銅スパッタリングターゲットについて、フランジ部の硬さ(ビッカース硬度Hv)、エロージョン部の(111)配向率(%)、結晶粒径(μm)を調べた。
この結果、フランジ部の硬さは58Hv、エロージョン部の(111)配向率は66.3%、結晶粒径は120μmとなった。この結果を、表1に示す。
【0051】
次に、このターゲットを用いて、スパッタリングを実施した。スパッタリング終了後の最大反りは、4.2mmとなり、実施例と較べて悪化した。また、成膜後のユニフォーミティは、3.8%となり、膜厚均一性(ユニフォーミティ)も悪くなった。
【0052】
(比較例2)
純度6Nの高純度銅(Cu)を、カーボンルツボ(坩堝)を用いて高真空雰囲気中で溶解した。この銅の溶湯を、高真空雰囲気中でカーボン鋳型に鋳込んでインゴットを得た。次に、製造したインゴットを400°Cで温間鍛造を行った。次に、必要量を切断後、圧延(冷間加工度78%)して、φ530×30tとした後、350°Cで1時間熱処理後、外周より30mmの位置までを冷間鍛造(加工度10%)した。これを、機械加工でターゲット部直径430mm、トータル厚さ25mmのターゲットに加工した。
【0053】
このようにして作製した高純度銅スパッタリングターゲットについて、フランジ部の硬さ(ビッカース硬度Hv)、エロージョン部の(111)配向率(%)、結晶粒径(μm)を調べた。
この結果、フランジ部の硬さは63Hv、エロージョン部の(111)配向率は68.1%、結晶粒径は70μmとなった。この結果を、表1に示す。
【0054】
次に、このターゲットを用いて、スパッタリングを実施した。スパッタリング終了後の最大反りは、3.6mmとなり、実施例と較べて悪化した。また、成膜後のユニフォーミティは、3.3%となり、膜厚均一性(ユニフォーミティ)も悪くなった。
【0055】
(比較例3)
純度6Nの高純度銅(Cu)を、カーボンルツボ(坩堝)を用いて高真空雰囲気中で溶解した。この銅の溶湯を、高真空雰囲気中でカーボン鋳型に鋳込んでインゴットを得た。次に、製造したインゴットを400°Cで温間鍛造を行った。次に、必要量を切断後、圧延(冷間加工度80%)して、φ530×30tとした後、325°Cで1時間熱処理後、外周より40mmの位置までを冷間鍛造(加工度10%)した。これを、機械加工でターゲット部直径430mm、トータル厚さ25mmのターゲットに加工した。
【0056】
このようにして作製した高純度銅スパッタリングターゲットについて、フランジ部の硬さ(ビッカース硬度Hv)、エロージョン部の(111)配向率(%)、結晶粒径(μm)を調べた。
この結果、フランジ部の硬さは65Hv、エロージョン部の(111)配向率は67.2%、結晶粒径は45μmとなった。この結果を、表1に示す。
【0057】
次に、このターゲットを用いて、スパッタリングを実施した。スパッタリング終了後の最大反りは、3.5mmとなり、実施例と較べて悪化した。また、成膜後のユニフォーミティは、3.6%となり、膜厚均一性(ユニフォーミティ)も悪くなった。
【0058】
(比較例4)
純度6Nの高純度銅(Cu)を、カーボンルツボ(坩堝)を用いて高真空雰囲気中で溶解した。この銅の溶湯を、高真空雰囲気中でカーボン鋳型に鋳込んでインゴットを得た。次に、製造したインゴットを400°Cで温間鍛造を行った。次に、必要量を切断後、圧延(冷間加工度82%)して、φ530×30tとした後、300°Cで1時間熱処理後、外周より50mmの位置までを冷間鍛造(加工度20%)した。これを、機械加工でターゲット部直径430mm、トータル厚さ25mmのターゲットに加工した。
【0059】
このようにして作製した高純度銅スパッタリングターゲットについて、フランジ部の硬さ(ビッカース硬度Hv)、エロージョン部の(111)配向率(%)、結晶粒径(μm)を調べた。
この結果、フランジ部の硬さは68Hv、エロージョン部の(111)配向率は65.3%、結晶粒径は35μmとなった。この結果を、表1に示す。
【0060】
次に、このターゲットを用いて、スパッタリングを実施した。スパッタリング終了後の最大反りは、3.3mmとなり、実施例と較べて悪化した。また、成膜後のユニフォーミティは、3.7%となり、膜厚均一性(ユニフォーミティ)も悪くなった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の高純度銅スパッタリングターゲットは、バッキングプレート(BP)との接合を必要としない高純度銅スパッタリングターゲットを提供するものであり、該ターゲットのフランジ部の強度(硬度)を高めて、ターゲットの反り量を少なくすることができ、均一性(ユニフォーミティ)に優れた薄膜を形成できる高純度銅スパッタリングターゲットを提供することができる優れた効果を有する。また、同ターゲットにおいて、エロージョン部とフランジ部の(111)配向率を調製し、膜厚の均一性を向上させることができる。これによって、微細化・高集積化が進む半導体製品の歩留まりや信頼性を向上させ、半導体用銅合金配線の形成に有用な高純度銅スパッタリングターゲットに有用である。
さらに、近年使用材料のリサイクルを考える必要があり、BP材を使用するターゲットに比べ、一体型は全てが同一材料のため、再生が容易であり、経済的にも有利であるという効果を有する。
図1